説明

粒子線治療計画連携システム及び粒子線治療計画連携方法

【課題】再治療計画時に、他施設の適合性と共に、患者の治療経過情報を取り込んで、継続性のある再治療計画を作成する粒子線治療計画連携システムを得る。
【解決手段】自施設での治療中断に際して、他施設の機器パラメータと患者の患部情報と患者治療経過情報を基に、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定し、選定された他施設の機器パラメータと患者の患部情報と患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で患者が治療を受ける治療計画を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、治療途中の患者を自施設から他施設に移動して再治療する場合において、他施設の機器パラメータをチェックし、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定し、継続した治療計画を作成する粒子線治療計画連携システム及び粒子線治療計画連携方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線治療連携システムは、複数の放射線治療計画装置と複数の放射線治療装置とをネットワークで接続し、それぞれの放射線治療計画装置に複数の放射線治療装置のビームライン機器のパラメータを持たせることで、任意の放射線治療計画装置で任意の放射線治療装置を使った放射線治療計画の立案及び承認を可能としている(例えば、特許文献1)
又、特許文献2には、患者の患部情報を入力することにより個々の放射線治療装置の情報を照会し、治療に利用可能な放射線治療装置を提示する放射線治療連携システムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−242722号公報(段落0011−0013、図1,図2)
【特許文献2】特開2008−206619号公報(実施の形態1、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の粒子線治療計画連携システムでは、他施設固有の条件をチェックして治療計画を作成しているが、初期治療からの継続性に欠けるという問題があった。
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、再治療計画時に、他施設の適合性と共に、患者の治療経過情報を取り込んで、継続性のある再治療計画を作成する粒子線治療計画連携システム及び粒子線治療計画連携方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる粒子線治療計画連携システムは、自施設及び他施設に設置され粒子線を照射する機器をそれぞれ有する複数の粒子線治療装置と、自施設及び他施設に設置され、患者が前記粒子線治療装置で治療を受ける治療計画を作成する複数の粒子線治療計画装置とを有する粒子線治療計画連携システムにおいて、前記各粒子線治療計画装置は、自施設及び他施設の複数の前記粒子線治療装置がそれぞれ有する機器のパラメータを記憶する機器情報と、患者の患部情報を記憶する患者基本データベースとを備え、前記機器情報に記憶されている自施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報を基に、患者の治療計画を作成すると共に、患者治療経過情報を記憶する患者治療経過データベースと、自施設での治療中断に際して、前記機器情報に記憶されている他施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定する適合性チェック手段と、前記適合性チェック手段で選定された他施設の、前記機器情報に記憶されている機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で患者が治療を受ける治療計画を作成する治療計画作成手段とを備え、治療途中で自施設から前記他施設への移動に際して、継続した治療計画を作成するようにしたものである。
【0006】
また、この発明に係わる粒子線治療計画連携方法は、自施設及び他施設に設置され粒子線を照射する機器をそれぞれ有する複数の粒子線治療装置と、自施設及び他施設に設置され、患者が前記粒子線治療装置で治療を受ける治療計画を作成する複数の粒子線治療計画装置とを有する粒子線治療計画連携方法において、前記各粒子線治療計画装置は、自施設及び他施設の複数の前記粒子線治療装置がそれぞれ有する機器のパラメータを機器情報に記録するステップと、患者の患部情報を患者基本データベースに登録するステップとを有して、前記機器情報に記憶されている自施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報を基に、患者の治療計画を作成すると共に、患者治療経過情報を患者治療経過データベースに記録するステップと、自施設での治療中断に際して、前記機器情報に記憶されている他施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定するステップと、前記適合性チェック手段で選定された他施設の、前記機器情報に記憶されている機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で患者が治療を受ける治療計画を作成するステップとを有し、治療途中で自施設から前記他施設への移動に際して、継続した治療計画を作成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の粒子線治療計画連携システム及び粒子線治療計画連携方法によれば、自施設での治療中断に際して、他施設の機器パラメータと患者の患部情報と患者治療経過情報を基に、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定し、選定された他施設の機器パラメータと患者の患部情報と患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で患者が治療を受ける治療計画を作成するようにしたので、治療途中で自施設から前記他施設への移動に際して、継続した治療計画を迅速に作成することができる上に、同等又は許容できる違いの治療が継続できる。このように、治療初期に自施設による治療計画を立てた診断医・治療計画医が、治療途中で他施設の治療計画をも立てることができ、治療の主体性継続性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
患者が治療を受けている自施設の粒子線治療装置が故障又は点検で長時間停止する場合がある。このような場合でも、ある期間に亘って患者に対して現在の治療と同等又は許容できる違いの粒子線治療を継続して提供させるために、複数の治療施設が連携する粒子線治療計画連携システムでは、患者を送り出す自施設側で再治療計画を実施し、他施設の固有の条件・機器パラメータをチェックし、正常部位のダメージを極力減らすために他施設の機器の特性(ガントリーの有無,臥位/座位治療台,ノンコプラナ治療台,治療エネルギー,リッジフィルタ特性)を考慮して、他施設の適合性を評価し、自施設と同等の性能を有する連携先である他施設の粒子線治療施設を選択する。
【0009】
図1はこの発明の実施の形態1である粒子線治療計画連携システムを示すブロック構成図である。図1は連携する粒子線治療施設A,B,Cが3施設である場合の構成例を示すが、2施設以上であれば良い。各施設はネットワークを介して相互に接続されてデータを相互に授受しているが、CD(compact disk)等の記録媒体により他施設の機器パラメータのデータを相互に取り込んでも良い。各粒子線治療施設A,B,Cは、それぞれ、粒子線治療装置1を有している。さらに、計算機を利用し治療計画装置を構成する治療計画端末2と治療情報管理サーバ3を有し、保守端末4によりネットワークを介して他の粒子線治療施設と接続されてデータ授受が行われる。治療計画端末2は入力手段とディスプレー(表示手段)を有している。図1の構成により、保守端末4によりデータの書き出しと取り出しが行われると共に、他の粒子線治療施設へのデータの送り出し、他の粒子線治療施設からのデータの受け取りが行われる。
【0010】
図2は実施の形態1における粒子線治療施設Aの治療計画装置におけるソフトウエア構成のデータベース(D/Bと略称する)と機能手段を示すブロック図である。これらのD/Bと機能手段は図1の粒子線治療施設Aの治療情報管理サーバ3に収納されている。自施設(施設A)の機器パラメータであるA機器ジオメトリデータD/BとA機器線源データD/Bを保有すると共に、他施設(施設B)の機器パラメータであるB機器ジオメトリデータD/BとB機器線源データD/Bを保有し、同様に他施設(施設C)の機器パラメータであるC機器ジオメトリデータD/BとC機器線源データD/Bも保有して、これらで機器情報6を構成している。さらに、患者基本データD/B7、患者治療経過D/B8、治療プロトコールD/B9、治療計画D/B10を有し、治療計画作成手段11、適合性チェック手段12を有している。前記では粒子線治療施設Aの治療計画装置5について示しているが、粒子線治療施設B,C
の治療計画装置についても同様(共通)のD/B及び機能手段並びに治療計画端末2を有している。
【0011】
A,B,C機器ジオメトリデータD/Bのジオメトリデータは、それぞれ粒子線治療施設A,B,Cの粒子線治療装置1の装置内部の構成部品の座標を示すデータである。A,B,C機器線源データD/Bの線源データは、それぞれ粒子線治療施設A,B,Cの粒子線治療装置1の線源に関するデータである。患者基本D/B7のデータは、患者ID,患者名,患者の患部情報である診断名,患部(腫瘍)の分類記号,放射線に弱い重要臓器の場所と大きさ,患部の大きさと最大深さなどである。患者治療経過D/B8の患者治療経過情報は、患者毎の患者が治療を開始してからの経過情報であり、すでに照射した合計線量,照射開始日,照射回数,ビーム方向,ビーム本数,ビームの情報,患部経過観察情報などである。治療プロトコールD/B9の治療プロトコールデータは、粒子種,処方線量,ビーム数,分割回数,リッジフィルタ(RGF)の適合性,治療部位の適合性,治療室の適合性を識別するデータでる。
【0012】
治療計画作成手段11は、患者の治療に当たって、機器情報6に記憶されている自施設の機器パラメータと患者基本D/B7の患者の患部情報を基に、患者に照射される粒子線の線量分布の計算などを行い患者の治療計画を作成する。自施設Aの粒子線治療装置1が故障したり、点検停止して、自施設での治療が中断した際には、施設Aの治療計画装置5は、適合性チェック機能12において、機器情報6に記憶されている他施設の機器パラメータと患者基本D/B7の患者の患部情報と患者治療経過D/B8の患者治療経過情報を基に、治療プロトコールD/B9を用いて同等又は許容できる違いの治療が継続できるように、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定する。それに続いて、治療計画作成手段11では適合性チェック手段12で選定された他施設の、機器情報6に記憶されている機器パラメータと患者基本D/B7の患者の患部情報と患者治療経過D/B8の患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で継続して患者が治療を受ける最適な治療計画(再治療計画)を作成する。作成された治療計画データは治療計画D/B10に記録される。
【0013】
このように他施設の線源データ,ジオメトリデータ及び治療プロトコールD/B9を予め保有することにより、患者の患部情報と患者治療経過情報を有する患者に対して、治療初期からの経過を受けて継続した状態で治療途中で他施設による粒子線治療施設のパラメータによる治療計画が立てられる。これにより、治療初期に自施設による治療計画を立てた診断医・治療計画医が、治療途中で他施設の治療計画をも立てることができ、治療の主体性継続性を保つことができる。自施設の診断医・治療計画医が、他施設でたとえ機器が異なっても継続して治療計画に当たることができる。自施設の機器のパラメータと他施設の機器のパラメータが異なる部分にはワーニングを出し、注意を喚起することもできる。
【0014】
具体的に説明すると、粒子線治療施設Aにおける治療計画端末2と治療情報管理サーバ3で構成する治療計画装置5は、粒子線治療施設AのA機器ジオメトリデータとA機器線源データと患者の患部情報を基に患者を治療する治療計画を作成し、それに基づいて粒子線治療装置1における治療を開始する。治療を開始し、まだ治療が継続している期間中に施設Aの粒子線治療装置1が故障したり、点検停止して、自施設での治療が中断したりすることがある。この場合は、連携する他施設の粒子線治療装置1で治療を継続することが求められる。図3は実施の形態1における治療中断時において、連携する他施設で治療が受けられるように再治療計画し運用するフローチャートである。つまり、治療途中で、治療を中断したので、他の粒子線治療施設B又はCで治療が受けられるように、粒子線治療施設Aの治療計画装置5で再治療計画を作成し運用するフローチャートである。
【0015】
粒子線治療施設Aは粒子線治療を受ける患者の検査及び診断を行う主要な機器として、コンピュータ断層撮影装置CT,磁気共鳴画像撮影装置MR、ポジトロン断層撮影装置PETを保有している。図3において、粒子線治療施設Aでは、患者登録/CT・MR登録21(ステップ21を示し、図3の符号は各ステップを示す)で、患者の登録と,このとき診断に用いられたCT,MRデータと,患部情報を患者基本D/B7に登録する。治療計画22で、患者基本D/B7の患者の患部情報,A機器ジオメトリデータ及びA機器線源データを基に治療計画装置5での治療計画を実施し、患者個々の腫瘍に対して最適な照射を行うためのパラメータ(例えば、どの範囲に、どの方向から、どれ位の線量を照射するか、許容できる誤差やマージン、各ビームの位置、重み)を決定し、作成した治療計画データを治療計画D/B10に登録する。登録された治療計画により治療23で患者に対して治療を行う。患者の治療経過情報は患者治療経過D/B8に登録されていく。
【0016】
患者の治療を行っている期間の途中に、粒子線治療施設Aが故障又は点検で使用できなくなったときには、治療中断24で治療を中断しなければならない。このときは、粒子線治療施設Aで治療計画装置5のソフトウェア構成を利用して、患者の再治療計画25を実施する。図4は図3における再治療計画時の他施設選択の詳細を示すフローチャートである。自施設での治療中断に際して、機器情報6に記憶されている他施設の機器パラメータと患者基本D/B7の患者の患部情報と患者治療経過D/B8の患者治療経過情報を基に、同等又は許容できる違いの治療が継続できるように、連携先他施設の適合性を順次評価して、最適な治療が提供できる治療可能な他施設を選定する。
【0017】
評価方法は、機器情報に含まれる各施設のコース、ガントリー角度、ビームパラメータ等を照合し、合致しているか、パラメータ許容範囲内かを識別評価し、結果をリストアップする。リストアップ時には差異内容を表示させ、グループとしてまとめ、計画的に再治療計画が行えるようにする。再治療計画25において、治療部位の適合性41(ステップ41を示し、図4の符号は各ステップを示す)では、治療部位である骨軟部,前立腺,肝臓,肺,乳腺,頭頸部,骨盤部等についてその適合性を評価する。図5は治療部位による各施設の適合性の評価結果を示すチェック図であり、これにより治療部位に対応した治療が提供できる施設が選択でき、治療連携時の処理をスムーズに行うものである。
【0018】
核種の適合性42では、炭素線,陽子線等についてその適合性を評価する。治療室の適合性43では、コース(ガントリー,水平,垂直,斜め45°,それ以外の任意の角度の治療室),臥位/座位治療台,照射角度(コプラナ照射,ノンコプラナ照射),天板種類(ショート,ロング,固定,中抜き),治療エネルギー,呼吸同期(呼吸同期無し、呼吸同期有り)等についてその適合性を評価する。図6は各施設の治療室の設備状況による適合性の評価結果を示すチェック図であり、これにより治療連携時の処理をスムーズに行うものである。リッジフィルタの適合性44では、治療部位サイズに最適な照射野とSOBP(Spread-Out Bragg Peak)を有する施設についてその適合性を評価し選択する。図7はA施設,B施設,C施設で設定し得るSOBPの各大きさを示す図である。相手施設決定45では、前記治療部位の適合性41,核種の適合性42,治療室の適合性43,リッジフィルタの適合性44を総合評価して最適な治療が提供できる連携先粒子線治療施設(他施設)を選択する。このようにして、経過患部情報,治療部位の寸法等によって、正常部位への影響か同等か違いが最小となる他施設が選択できる。
【0019】
選定された他の粒子線治療施設(他施設)について、他施設の機器ジオメトリデータ及び機器線源データ、並びに患者基本D/Bの患者の患部情報及び患者治療経過D/Bの患者治療経過情報を基に、選定された他施設で治療経過を引き継いで患者を治療する治療計画を作成する。このとき、リッジフィルタ(RGF)の適合性について、適合しているSOBPのRGFがあれば、適合SOBPのRGFを採用するが、無い場合はマージンの見直しで対応するか適合SOBPを超える最小SOBPのRGFを適用する。作成された治療計画の治療計画データを治療計画D/Bに登録する。
【0020】
図8はA施設でのディスプレイの画面例を示す画面図である。図8(a)では、施設連携先選択 → 適用度グループ分けを示す画面例で、複数の頭頸部の患者に対して、施設連携先を選択し、施設連携先毎の適用度をグループ分けする。
画面例では、例えば、B施設を選択し、B施設向け適用度を、適用度別に表示する。
適用可能
患者ID 00123 山田太郎
患者ID 00125 伊藤次郎
---------- --------
適用要検討
患者ID 00124 高橋一郎: ノンコプラナ照射
【0021】
図8(b)では、ノンコプラナ照射を受けていた頭頸部の特定の患者に対して、連携先のどの施設が適用できるかを示す画面例である。
患者ID 00123 山田 太郎:頭頸部をノンコプラナ照射で治療していた。
患者ID 00123 山田 太郎の適用可能施設を示す。
B施設: ○:適用可能
C施設: ×:コプラナ照射
D施設: △:炭素線
------- ---------------
【0022】
図3において、患者データ取り出し26で、データ保守され、患者データ取り出しを行って、データ送り出し27により、選択された他の粒子線治療施設へ取り出した患者データを送り出す。送り出す患者データは、CT画像,MR画像,PET画像などを含む患者の患部情報、患者治療経過情報、再治療計画された再治療計画データなどである。患者は患者移動33を行う。他の粒子線治療施設では、データ受け取り28にて送られた患者データを受信し、患者データリストア29で患者データを復元する。他の粒子線治療施設でも同様な粒子線治療計画装置を有しており、患者の患部情報及び患者治療経過情報の確認と共に、治療計画データ確認/再計画30にて、その粒子線治療計画装置を使用して当該施設の運転パラメータを確認し、当該施設で使用できるパラメータであり、治療可能となれば治療計画を承認し、必要に応じて一部修正し、治療指示を出し、治療31を行う。治療後は粒子線治療施設Aにおいて経過観察患者フォローアップ32を行う。なお、治療計画を一部修正した個所には、表記文字の色、寸法、太きさ等を換え視覚に訴えるようにしてもよい。
【0023】
図9は自施設で治療ができない患者に対して治療可能な他の粒子線治療施設での治療を計画し運用するフローチャートである。なお、図3のステップと同一符号は同一又は相当するステップを示し説明を一部省略する。患者登録/CT・MR登録21で図3と同様に患者の登録と、CT,MRデータと、患部情報を患者基本D/B7に登録する。治療計画34で、患者基本D/B7の患者の患部情報,A機器ジオメトリデータ及びA機器線源データを基に治療計画装置5での治療計画を実施するが、自施設での治療が困難(治療不適合)と判断された場合には、治療部位によって最適な核種・治療室がある連携先である他の粒子線治療施設を選択する。
【0024】
選択に当たっては、粒子線治療施設Aで治療計画装置5のソフトウェア構成を利用して、患者の治療計画34を実施する。機器情報6に記憶されている他施設の機器パラメータと患者基本D/B7の患者の患部情報を基に、連携先他施設の適合性を順次評価して、最適な治療が提供できる治療可能な他施設を選定する。評価選定方法は、図3の再治療計画25と同様に、図4の各ステップを経て相手施設決定45では、前記治療部位の適合性41,核種の適合性42,治療室の適合性43,リッジフィルタの適合性44を総合評価して最適な治療が提供できる連携先粒子線治療施設(他施設)を選択する。このようにして、患者の患部情報,治療部位の寸法等によって、有効な他施設が選択できる。
【0025】
選定された他施設について、他施設の機器ジオメトリデータ及び機器線源データ、並びに患者基本D/Bの患者の患部情報を基に、選定された他施設で患者を治療する治療計画を作成する。この場合、リッジフィルタ(RGF)の適合性は、適合する最適なSOBPのRGFがない場合、治療SOBPを超えるSOBPのRGFを適用する。作成された治療計画の治療計画データを治療計画D/Bに登録する。
【0026】
患者データ取り出し26で、データ保守され、患者データ取り出しを行って、データ送り出し27により、選択された他の粒子線治療施設へ取り出した患者データを送り出す。送り出す患者データは、CT画像,MR画像,PET画像などを含む患者の患部情報、治療計画された治療計画データなどである。患者は患者移動33を行う。他の粒子線治療施設では、データ受け取り28にて送られた患者データを受信し、患者データリストア29で患者データを復元する。他の粒子線治療施設でも同様な粒子線治療計画装置を有しており、患者の患部情報の確認と共に、治療計画データ確認/承認35にて、その粒子線治療計画装置を使用して当該施設の運転パラメータを確認し、当該施設で使用できるパラメータであり、治療可能となれば治療計画を承認し、必要に応じて一部修正し、治療指示を出し、治療31を行う。治療後は粒子線治療施設A又はBにおいて経過観察患者フォローアップ32を行う。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態1である粒子線治療計画連携システムを示すブロック構成図である。
【図2】実施の形態1における粒子線治療施設Aの治療計画装置におけるソフトウエア構成のデータベースと機能手段を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1における治療中断時において、連携する他施設で治療が受けられるように再治療計画し運用するフローチャートである。
【図4】図3における再治療計画時の他施設選択の詳細を示すフローチャートである。
【図5】治療部位による各施設の適合性の評価結果を示すチェック図である。
【図6】各施設の治療室の設備状況による適合性の評価結果を示すチェック図である。
【図7】A施設,B施設,C施設で設定し得るSOBPの各大きさを示す図である。
【図8】A施設でのディスプレイの画面例を示す画面図である。
【図9】自施設で治療ができない患者に対して治療可能な他施設での治療を計画し運用するフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 粒子線治療装置 2 治療計画端末
3 治療情報管理サーバ 4 保守端末
5 治療計画装置 6 機器情報
7 患者基本データD/B 8 患者治療経過D/B
9 治療プロトコールD/B 10 治療計画D/B
11 治療計画作成手段 12 適合性チェック手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自施設及び他施設に設置され粒子線を照射する機器をそれぞれ有する複数の粒子線治療装置と、
自施設及び他施設に設置され、患者が前記粒子線治療装置で治療を受ける治療計画を作成する複数の粒子線治療計画装置とを有する粒子線治療計画連携システムにおいて、
前記各粒子線治療計画装置は、
自施設及び他施設の複数の前記粒子線治療装置がそれぞれ有する機器のパラメータを記憶する機器情報と、
患者の患部情報を記憶する患者基本データベースとを備え、
前記機器情報に記憶されている自施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報を基に、患者の治療計画を作成すると共に、
患者治療経過情報を記憶する患者治療経過データベースと、
自施設での治療中断に際して、前記機器情報に記憶されている他施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定する適合性チェック手段と、
前記適合性チェック手段で選定された他施設の、前記機器情報に記憶されている機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で患者が治療を受ける治療計画を作成する治療計画作成手段とを備え、
治療途中で自施設から前記他施設への移動に際して、事前に継続した治療計画を作成するようにした粒子線治療計画連携システム。
【請求項2】
前記適合チェック手段は、他施設における治療部位の適合性、治療室の適合性、リッジフィルタの適合性を評価し、治療可能な他施設を選定する請求項1記載の粒子線治療計画連携システム。
【請求項3】
自施設及び他施設に設置され粒子線を照射する機器をそれぞれ有する複数の粒子線治療装置と、
自施設及び他施設に設置され、患者が前記粒子線治療装置で治療を受ける治療計画を作成する複数の粒子線治療計画装置とを有する粒子線治療計画連携方法において、
前記各粒子線治療計画装置は、
自施設及び他施設の複数の前記粒子線治療装置がそれぞれ有する機器のパラメータを機器情報に記録するステップと、
患者の患部情報を患者基本データベースに登録するステップとを有して、
前記機器情報に記憶されている自施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報を基に、患者の治療計画を作成すると共に、
患者治療経過情報を患者治療経過データベースに記録するステップと、
自施設での治療中断に際して、前記機器情報に記憶されている他施設の機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、他施設の適合性を評価し治療可能な他施設を選定するステップと、
前記適合性チェック手段で選定された他施設の、前記機器情報に記憶されている機器パラメータと前記患者基本データベースの患者の患部情報と前記患者治療経過データベースの患者治療経過情報を基に、選定された前記他施設で患者が治療を受ける治療計画を作成するステップとを有し、
治療途中で自施設から前記他施設への移動に際して、事前に継続した治療計画を作成するようにした粒子線治療計画連携方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−148534(P2010−148534A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326707(P2008−326707)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】