説明

粒子群の充填方法及び充填装置

【課題】セル内への粒子群充填時における粒子の破損や充填ムラ、粒子充填材に疵が発生するのを回避し、情報表示用パネルの表示品質低下の発生を解消した、粒子群の充填方法及び充填装置を得る。
【解決手段】少なくとも一方の表示画面領域が透明な2枚の基板を有する情報表示用パネルの、基板間の隔壁で区画されたセル内に、表示媒体とする粒子群を充填する充填方法であって、JIS−A硬度が30°以上60°以下でかつ厚さが0.4mm以上1.2mm以下の弾性材料と、厚さが0.1mm以上0.3mm以下の補強用材料との二層構造とした粒子充填部材の上記弾性材料側の面の先端領域を、マスクの面に押し付けて撓ませた状態で上記マスク上を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子群の充填方法及び充填装置に関し、特に、情報表示用パネルに粒子群を充填する際に従来懸念された粒子の損傷や充填ムラを解消し、もって情報表示用パネルにおける表示品質の向上を図ろうとするものである。
【0002】
従来、情報表示用パネルの隔壁で区画されたセル内に表示媒体としての粒子群を充填するに際しては、図5(a)に示すように、隔壁4上にマスク15を配置し、マスク15とマスク15上に粒子群3を載せ、板状の硬質ゴム材料で構成した粒子充填部材20をマスク15と接触させた状態でマスク15の一端から他端まで移動させることで、マスク15を介して、粒子群3をセル7内に充填する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の粒子充填部材20を用いて粒子群3をセル7内に充填する場合、粒子充填部材20をマスク15に強く押し付ける必要があるため、粒子群3を形成する各粒子が、粒子充填部材20とマスク15とによって強く擦られて損傷する場合があった。このように損傷した粒子がセル7内に充填された情報表示用パネルは、コントラスト低下のような、表示品質が低下するという問題が生じる。
また、粒子充填部材20をマスク15に押し付ける際に強い力を加える必要があるため、粒子充填部材に対して均一に力をかけることが難しく、セル7内への粒子群3の充填量にムラが生じ、その結果、情報表示用パネルの表示品質が低下するという問題もあった。
さらに、上記理由により損傷した粒子は凝集し易いため、マスク15上で容易に凝集体を形成する。この凝集体は、マスク15上に残留する場合があるが、その状態で粒子充填部材20を移動させると、図5(b)に示すように、粒子充填部材20に疵17が生じるおそれがある。このように疵17が付いた粒子充填部材20を用いて粒子群3の充填を行うと、粒子充填部材の疵17の部分では押し付け力が作用しないため、粒子充填が行われず、情報表示用パネルにスジ状の粒子充填ムラが生じ、結果、スジ状の表示不良が発生するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するもので、セル内への粒子群充填時における粒子の破損や充填ムラ、さらには粒子充填部材における疵の発生を回避することにより、従来懸念されていたコントラストの低下やスジ状の表示不良の発生を解消した、情報表示用パネルにおいて表示媒体とする粒子群の充填方法を、その実施に用いて好適な充填装置と共に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
さて、本発明者らは、上記の目的を達成するために従来の粒子充填部材の厚さを薄くすることで粒子充填部材の剛性を低くし、マスクへの押圧力を低減させることを試みた。しかしながらこの場合、粒子の損傷を回避することはできるものの、粒子充填部材の剛性が低くなり過ぎて粒子群を充分に移動させることができず、今度は、粒子群をセル内へうまく充填することができないとの問題が生じることがわかった。そこで、本発明者らは、この問題を解決すべくさらに鋭意研究を重ねた結果、粒子充填部材の材料及び厚さに改良を加えることで粒子充填部材に適度な剛性を持たせることが可能であり、かかる粒子充填部材を用いて粒子群をマスク上にて移動させながら充填することによって、粒子の破損や充填ムラ、さらには粒子充填部材の疵の発生を有利に回避することができるとの知見を得た。
【0007】
本発明は上記の知見に立脚し、さらに改良を加えて完成されたものである。すなわち、本発明は、
少なくとも一方の表示画面領域が透明な2枚の基板を有する情報表示用パネルの、当該基板間の隔壁で区画されたセル内に、表示媒体とする粒子群を充填するに際し、
上記隔壁上にマスクを配置するマスク配置ステップと、
上記マスク上に上記粒子群を載置する粒子群載置ステップと、
上記マスク上に載置された粒子群を、粒子充填部材を用いて上記セル内に充填する粒子群充填ステップと、
を含む粒子群の充填方法であって、
上記粒子充填部材として、JIS−A硬度が30°以上60°以下でかつ厚さが0.4mm以上1.2mm以下の弾性材料と、厚さが0.1mm以上0.3mm以下の補強用材料との二層構造の粒子充填部材を用い、上記粒子充填部材の上記弾性材料側の面の先端領域を、上記マスクの面に押し付けて撓ませた状態で上記マスク上を移動させることによって、上記粒子群を上記セル内に充填する、
ことを特徴とする粒子群の充填方法である。
【0008】
ここで「粒子充填部材の弾性材料側の面の先端領域」とは、粒子充填部材の、移動方向側にある弾性材料の側面の先端部であって、移動時にマスクと接触する、端辺から5mm程度までの領域のことを言う。
【0009】
また本発明は、
情報表示用パネルの基板上に形成された隔壁上に配置されたマスクと、該マスク上に載置された表示媒体とする粒子群を、上記隔壁で区画されたセル内に充填するための、粒子充填部材を備える粒子群の充填装置であって、
上記粒子充填部材は、JIS−A硬度が30°以上60°以下でかつ厚さが0.4mm以上1.2mm以下の弾性材料と、厚さが0.1mm以上0.3mm以下の補強用材料との二層構造になる
ことを特徴とする粒子群の充填装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、情報表示用パネルの基板上のセル内へ表示媒体とする粒子群を充填する時に、粒子の破損や充填ムラ、さらには粒子充填部材における疵の発生を回避することができ、ひいては情報表示用パネルにおける表示品質の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの一例を説明するための図である。
【図2】(a)は本発明に従う粒子群の充填要領の一例を説明するための図であり、(b)は本発明に従う粒子群の充填に用いる粒子充填部材を説明するための図である。
【図3】本発明に従う粒子群の充填に用いる、他の粒子充填部材を説明するための図である。
【図4】図3に示した他の粒子充填部材を2つ用いた、ダブル粒子充填部材構造を説明するための図である。
【図5】従来法に従う粒子群の充填要領を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の対象となる情報表示用パネルの一例である、帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。この情報表示用パネルでは、対向する基板間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、表示媒体が電界による力やクーロン力等によって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時或いは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付け合う力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力等が考えられる。
【0013】
本発明の対象である帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの一例を、図1(a)、(b)に基づいて説明する。
図1(a)、(b)に示す例では、光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと、正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、表示画面領域において隔壁4で区画形成された各セル7内で、基板1に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側の表示画面領域が透明な基板2に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向直交交差して形成する電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と略垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を、或いは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行う。マトリックス配置した電極対によって、画素(ドット)となる白黒のドットマトリックス表示を行うことができる。
なお、図1(a)、(b)において、図面手前にある隔壁は省略している。ここではセルと画素(ドット)とが一対一に対応する例を示しているが、セルと画素とは対応していなくてもよい。隔壁4と基板1とは接着剤8を介して接着している。
【0014】
次に、上記の粒子群を隔壁で区画された基板上のセル内へ充填する、本発明に従う好適な充填要領について、図2を用いて説明する。図2(a)は表示媒体とする粒子群3を基板上のセル7内に充填している様子を示している。
【0015】
まず、本発明に従い粒子群を充填するには、図2(a)に示すように、隔壁4上にマスク15を配置するステップと、マスク15上に、表示媒体とする粒子群3を載置するステップとを実行する。その後、板状の粒子充填部材22をマスク15に押し付け、撓ませた状態で、マスクの一端から他端まで粒子群3を帯同させつつ移動させることで、マスク15の開口を介して、粒子群3をセル7内に充填する。
【0016】
このように、本発明では、粒子充填部材を撓ませ、粒子充填部材の側面先端領域を粒子群に当接させた状態で、マスク上を移動させることが重要である。これにより、以下に述べる効果が得られる。まず、粒子の損傷による表示品質の劣化の発生を抑制することができる。また、粒子充填部材全体に対して力を均一に付与し、且つ、粒子の損傷による粒子充填部材の疵の発生を防止することができるので、粒子群の充填ムラを抑制することができる。
【0017】
本発明において、粒子充填部材22は、移動方向側に位置して粒子群と接触する弾性材料22aと、移動方向とは反対側に位置する補強用材料22bとの、少なくとも二層構造とすることが肝要である。粒子充填部材22の移動方向は、図に示す矢印方向である。
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。まず、本発明に従う粒子群の充填に用いて好適な粒子充填部材について、図2(b)を用いて説明する。
【0019】
以下に、本発明の対象となる粒子群の充填方法及び充填装置で用いる、粒子充填部材22の基本的な構成について説明する。本発明において、粒子充填部材を構成する弾性材料と補強用材料としてはシート状の材料を用い、それらの好適素材は次の通りである。
【0020】
<弾性材料>
弾性材料22aとしては、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDMゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムや天然ゴム等のゴム弾性材料が有効であり、中でも、シリコーンゴムやブタジエンゴム、フッ素ゴムのような低摩擦係数のゴム弾性材料を用いることが好ましい。粒子充填部材22の、粒子群3と接触する側の面に上記のような弾性材料を用いることによって、粒子やマスク面との接触状態が好適となり、粒子充填部材がマスク上を滑らかに移動しながら、粒子をスムーズに移動させるようになるからである。また、特にシリコーンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムを用いた場合、マスク面との低摩擦が得られるだけでなく、粒子を適度な力で押し出せるようになるからである。
ここに、弾性材料22aは、JIS−A硬度が30°以上60°以下、好ましくは30°以上40°以下であることが望ましい。すなわち、JIS K6253におけるタイプAデュロメータで求められる硬さでシート材の弾性率に対する代用特性値である。
【0021】
<補強用材料>
補強用材料22bとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)等の樹脂シートや、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属シートが有利に適合する。
【0022】
<弾性材料及び補強用材料の二層構造>
弾性材料22a及び補強用材料22bの各材料は上記の通りであるが、弾性材料22aの厚さLAは、0.2mm〜1.4mmとする必要がある。一方、弾性材料22aよりも高弾性の補強用材料22bの厚さLBは、弾性材料22aの厚さLAによって幾分変化するが、0.1mm〜0.3mmとする必要がある。
そして、本発明の粒子充填部材22は、これら弾性材料22a及び補強用材料22bの少なくとも2枚を、弾性材料22aがマスク面及びマスク上の粒子と接するように配置した、少なくとも二層の構造を形成する。弾性材料22aの厚さは、補強用材料22b以上として、厚くすることが好ましい。これは、二層構造の粒子充填部材22が適度に撓むようにするためである。粒子充填部材22の撓み易さは、部材の材料の弾性率に基づく剛性に加えて、材料の厚さにも影響される。すなわち、低弾性率材料の方が、高弾性材料よりも撓み易く、薄い材料の方が厚い材料よりも撓み易い。従って、上記の関係を与えることにより、二層構造の粒子充填部材22が適度な撓みを有するようにすることができる。具体的には、弾性材料22aの厚さは、補強用材料22bの厚さの3〜8倍であることが好ましく、更に好ましくは、弾性材料22aの厚さは補強用材料22bの厚さの4.5〜5.5倍である。
貼り合わせ手段は特に限定されるものではなく、一般的な接着剤や粘着剤を用いて貼り合わせる方法、また熱を利用して貼り合わせる方法等が使用できる。また、一方のシート材に粘着性があれば、重ね合わせることによっても貼り合わせることができ、この場合には、単に重ね合わせるだけでよい。弾性材料22aと補強用材料22bとは積層配置されていればよいが、例えば、両材料の一部又は全体を貼り合わせて固定した積層構造体としてもよい。また、ここでは、一層の弾性材料と一層の補強用材料からなる二層構造の例を示したが、例えば補強用材料をさらに複数層とした、複数積層構造体とすることもできる。
【0023】
上記のように、粒子群と接触する側の粒子充填部材を弾性率の低い材料で形成すれば、粒子充填部材全体の剛性も低くなるので、これをマスク面へ当接させる際に、粒子充填部材に対して鉛直方向にかける力、すなわち粒子充填部材によるマスク面への押圧力が低減される。従って、マスク面に粒子充填部材を押し当てながら移動する際に発生する摩擦力が低減され、粒子群を構成する各粒子へのダメージは低下する。その結果、粒子の損傷に起因した、コントラスト低下のような表示品質の劣化の発生を抑制することができる。さらに、マスク面に押し付けられる面となる弾性材料シートを、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムのように低摩擦係数を有するとともに低弾性である材料で構成すれば上記効果がより得られやすくなる。
また、粒子充填部材及びマスク面への全体の押圧力が低減されるので、粒子充填部材全体に対して、均一に力を負荷し易くなる。加えて、上記の通り、粒子の損傷を防ぐことができるため、損傷した粒子の凝集体によって粒子充填部材に疵が発生することも防ぐことができる。結果、粒子群が均一にマスク上を移動して基板上のセル内へ充填され、情報表示用パネルにおける表示媒体とする粒子群の充填ムラを回避して、スジ状の表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0024】
このように、弾性材料の厚さを調整して、粒子充填部材の厚さを従来の厚さよりも薄くして剛性を低くすれば、粒子充填部材をマスク面に押し付ける押圧力が小さくなり、既に説明した通り、マスク面上で粒子充填部材を移動させる際に発生する摩擦力を低減して、粒子の損傷を防ぐことができる。なお、弾性材料の厚さを0.4mm〜1.2mmとしたのは、0.4mmに満たないと、裏側面に補強用材料を積層した構造となっている板状の粒子充填部材全体で実現する弾性率が、補強用材料に支配されて粒子充填部材が好適に撓まなくなってしまうからであり、1.2mmを超えると、低弾性率材料で構成した弾性材料自体の剛性が高くなり、粒子充填部材全体の剛性も高くなり、好適に撓まなくなってしまうからである。
【0025】
しかしながら、粒子充填部材の厚さを単に薄くしただけでは、今度は剛性が低くなり過ぎて、粒子充填部材が粒子群及びマスク面との抵抗に耐えることができずに反り過ぎてしまうおそれがある。その結果、粒子群を十分に移動させることができず、所望量の粒子を基板上のセル内に充填することができなくなり、充填ムラが発生するおそれがある。従って、剛性の低い低弾性率の弾性材料に対して、これよりも剛性の高い補強用材料を裏当て補強材として配置した層構造とすれば、粒子充填部材全体の剛性は高くなる。このように、それぞれ機能が異なる2枚の材料を重ねて配置した層構造とすれば、粒子充填部材をマスクに押し付けながら移動するときにマスク上の粒子に負けて反り過ぎることが無く、所望量の粒子をセル内へ充填することが可能となる。
【0026】
また、上記補強用材料の厚さを0.1mm〜0.3mmとしたのは、0.3mmより厚いと、裏面からの補強が強過ぎて、粒子充填部材全体の剛性が高くなってしまい、結局、従来の粒子充填部材を用いる場合と同様に、押圧力を大きくして、粒子に損傷を与えるおそれがあり、一方、0.1mmより薄くなると、今度は弾性材料を裏面から補強する役割を果たすことができず、粒子充填部材全体が移動時に粒子に負けて反り過ぎてしまい、粒子を移動させることができなくなってしまうからである。
【0027】
さらに、弾性材料の厚さと補強用材料の厚さとの関係は、前述したとおり、弾性材料の厚さが補強用材料よりも厚くなるようにし、弾性材料の厚さが、補強用材料の厚さの3〜8倍、好ましくは4.5〜5.5倍とすることが望ましい。このような厚み関係とすることにより、情報表示用パネルの表示品質がより良好となり、スジ状のムラの発生がさらに抑制可能であることが確認されている。
【0028】
なお、上記例では、弾性材料22a及び補強用材料22bが各単層である粒子充填部材について示したが、本発明の粒子充填部材22は、弾性材料22a及び補強用材料22bが各々複数層で構成されるものであっても良い。
【0029】
粒子充填部材22は、上述したように、移動させたい粒子と接触するとともにマスクとも接する、弾性力が低く、低摩擦を実現できる弾性材料22aと、この弾性材料22aを裏面から補強する、弾性材料22aよりも弾性力の高い補強用材料22bとを用いた、二層構造が特徴的な粒子充填部材となっている。この特徴的な粒子充填部材22を用いた本発明の粒子群の充填方法によれば、粒子充填部材22が適度に撓み、移動中の粒子充填部材22は、弾性材料22aの面の先端領域Sがマスク面及び粒子群3と接触するようになる(以下では、特に、粒子群と接触する領域を「面の先端領域S」と呼ぶ)。そして、この面の先端領域Sによって粒子群3を帯同して、所定量の粒子を基板上のセル7内に充填させることができる。
すなわち、マスク15面への押圧力を小さくしつつも、適度な撓みを保ちながら粒子充填部材22を移動させることで、面の先端領域S全体を使って十分な量の粒子群3を移動させることが可能となり、結果、粒子を損傷させることがなく、かつ、セルごとに充填量がムラにならない、粒子群の充填方法を提供することができるのである。
【0030】
なお、粒子充填部材22に適度な撓みを付与するためには、図2(b)に示すように、粒子充填部材22を粒子充填部材固定治具24に取り付けた際、粒子充填部材22の露出長LLを5mm〜20mm、好ましくは7mm〜10mmとするのが望ましい。粒子充填部材22の露出長LLを短くし過ぎると、粒子充填部材22が撓み難く、また面の先端領域Sで十分な量の粒子群を移動させることができず、粒子充填部材22としての役割を果たさないからである。また、粒子充填部材22の露出長LLを長くし過ぎると、粒子充填部材22の撓みをコントロールして、適度な押圧力でm適度な撓みにすることが難しく、粒子群を好適に移動させて、基板上のセル内に、粒子群を好適に充填することができないからである。
但し、必ずしもこの長さに限定されるわけではなく、弾性材料及び補強用材料の材料や厚さ、さらには粒子充填部材に付与する押圧力に応じて、適宜変更することができる。
【0031】
また、粒子充填部材22を取り付けた粒子充填部材固定治具24は、粒子充填部材22がマスク15面に対して45°以上85°未満の角度を維持した状態で、マスク15面に平行に移動できる粒子充填部材移動装置に装着される。この角度が45°未満の場合には、粒子充填部材22が粒子に負けて反り返り易くなり、粒子充填部材22で粒子群3を移動させにくくなるからであり、この角度が85°以上の場合には、粒子充填部材を所望の方向に撓ませることが難しくなるからである。
【0032】
また、本発明で用いる粒子充填部材22は、図3に示すように、押出し部材や、振動発生器を備える構成とすることもできる。具体的には、図3に示すように、粒子充填部材固定治具24に対して、押出し部材30と振動発生器32とが設置されている。
【0033】
押出し部材30は、例えば図3に示すように、上下方向中間部で進行方向に屈曲させて上側板状部30−1と下側板状部30−2とを区画した形状とし、下側板状部30−2と進行方向(図中白抜き矢印の方向)とが成す角度θが0°〜90°となるように設定することができる。このように、押出し部材30を設けることにより、押出し部材30の上側板状部30−1乃至下側板状部30−2で粒子群3を進行方向へ押出すことができ、従って、粒子充填部材22により粒子群3をセル内に充填するに先立ち、粒子群3中に散在する粒子の凝集体を解きほぐすことができる。その結果、粒子充填部材22をマスク15に強く押し付けなくとも粒子群3の充填ムラを解消することができる。なお、押出し部材30は、粒子充填部材固定治具24に対して、両矢印Aで示す方向に位置調節可能に固定され、これにより押出し部材30とマスク15との間隔を調節することができる。また、押出し部材30の下端形状は、ここでは図示していないが、平坦形状、鋸歯形状又は櫛歯形状等とすることができる。
【0034】
一方、振動発生器32は、例えば図3に示すように、粒子充填部材固定治具24の進行方向とは反対側の側面に設置される。これにより、押出し部材30で粒子群3を押し出す際に、粒子群3に振動を与え、粒子群3中の凝集体を効果的に解きほぐすことができ、また、粒子充填部材22により粒子群3をセル内に充填する際にも粒子群3に振動を与えることにより、スムーズにセル内に粒子群3を充填することができる。なお、振動発生器32としては、エア式バイブレータ、電動式バイブレータ、超音波発信機等を使用することができる。また、振動発生器32は、図3では粒子充填部材固定治具24の進行方向とは反対側の側面に設置しているが、進行方向側の側面に設置してもよい。
【0035】
さらに、本発明の粒子充填装置は、図4に示すように、粒子充填部材を互いにハの字状に対向して配置した一対の粒子充填部材として構成し、各粒子充填部材には上下移動を司る昇降装置を設けたダブル粒子充填部材構造としてもよい。
具体的には、図3で説明したような粒子充填部材22、ここでは粒子充填部材22−1、22−2を固定した、2つの粒子充填部材固定治具24−1、24−2を、それぞれ、マスク15の面に対して所定の角度αとなるように取り付ける。この2つの粒子充填部材固定治具24−1、24−2は、それぞれ独立に上下に可動となるように粒子充填部材押し付け装置34へ、および左右に可動となるように粒子充填部材移動装置36へ装着されている。図4に示すように、一方の粒子充填部材22−1をマスク15の面に押し当てた状態の場合には、もう一方の粒子充填部材22−2はマスク15から離した状態となる。そして、上記粒子充填部材移動装置36によって、2つの粒子充填部材22−1、22−2が左右に移動される。ここで、2つの粒子充填部材22−1、22−2は、上述の通りハの字状に対向し、かつ、粒子群3と接触する側の弾性材料22−1a、22−2aの側面が相互に向き合うように取り付けられることが肝要である。
このように、ダブル粒子充填部材構造として、2つの粒子充填部材22−1、22−2を上下左右に移動させることにより、効率的な粒子充填を行うことができる。
なお、図4では、粒子充填部材22として、図3に示した押出し部材30を備える場合について説明したが、図2(b)に示したような、二層構造の粒子充填部材のみを用いることができるのは言うまでもない。
【0036】
以下、本発明の対象となる情報表示用パネルを構成するその他の部材について説明する。
【0037】
まず、マスクとしては、材料にステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、鉄、銅等の金属を用いたメタルマスクや、汎用プラスチックを用いた樹脂製マスク及びメタルと樹脂とを組み合わせた積層マスク等が用いられる。少なくともマスクのパネル基板上のセル開口と対向する側の面は導電性にするが、マスク全体を導電性金属としたメタルマスクとしてもよい。また、部分的に絶縁性部分を有する導電性メタルマスクとしたり、樹脂製のマスクの一方の面に導電層を設けて、導電性樹脂製マスクとしてもよい。マスクの開口は、パネル基板上のセル開口と対応するように形成されていることが好ましい。マスクをパネル基板上の隔壁上に配置する際は、マスク開口とセル開口とのアライメントをとって、マスクが隔壁と接するようにするか、1mm以内でわずかに離して配置するようにする。
【0038】
隔壁の形状は、表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適に設定され、特に限定はされないが、隔壁の幅は2μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μmとし、隔壁の高さは10μm〜500μm、好ましくは10μm〜200μmとすることが望ましい。基板間ギャップを確保するために配置する隔壁の高さは、確保したい基板間ギャップと合わせる。基板間空間をセルに仕切るために配置する隔壁の高さは、基板間ギャップと同じにしても、幾分低くしてもよい。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に使用できる。この隔壁により区画されるセルの形状は、基板平面方向からみて四角状、三角状、六角状、円形状、ライン状が例示され、配置としては格子状やハニカム状、網目状が例示される。なお、隔壁の幅はできるだけ小さくした方が良く、表示状態の鮮明さが増す。ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明を用いて製造する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法は特に好適である。
【0039】
情報表示用パネルの少なくとも一方の基板の表示画面領域は、パネル外側から表示媒体を確認できるように透明とする。基板の透明領域は、可視光の透過率が高い材料が好適である。もう一方の、表示画面領域を有していない基板は、透明でも不透明でも構わない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフィン(PES)、アクリル等の有機高分子系材料や、ガラス、石英、金属等がある。表示画面領域にはこのうち透明な材料が配置されたシートを基板として用いる。基板の厚みは、好ましくは2μm〜2000μmであり、さらに好ましくは5μm〜1000μmである。薄すぎると、強度、基板間のギャップの均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、薄型の情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0040】
情報表示用パネルに電極を設ける場合の電極材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン(例えば、PEDOT:PSS)等の導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。なお、電極の厚みは、導電性や光透過性を鑑みて決定され、0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μmである。表示画面以外や背面側基板に設ける電極の材質や厚みについては、光透過性を鑑みる必要はない。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例では、以下に示す2種類の粒子群(粒子群A、粒子群B)を基板間の同じセル内に充填した情報表示用パネルを作製し、作製工程および作製した情報表示用パネルについて評価を行った。
【0042】
<表示媒体とした粒子群について>
発明例及び比較例では、表示媒体として、帯電特性の異なる白黒2色の粒子群(粒子群A、粒子群B)を用いた。
粒子群Aは、メチルメタクリレートモノマー(関東化学試薬)60重量部、1分子中に重合反応基を複数持つ多官能性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬試薬)40重量部(約25mol%)に、正帯電の荷電制御剤としてニグロシン化合物(ボントロンN07:オリエント化学製)3重量部及び黒色顔料として、カーボンブラック(スペシャルブラック:デグッサ製)5重量部をサンドミルにより分散させ、(アクリル系及びメタクリル系)樹脂一炭化水素系樹脂ブロックコポリマー(モディパーF600:日本油脂製)5重量部を溶解させた後、さらに2重量部のラウリルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂製)を溶解させた液を、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(ラテムルE−118B:花王製)を0.5%添加した精製水に懸濁、重合させ、ろ過、乾燥させた後、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業)を用いて平均粒子径9.2μmの正帯電性黒色粒子群として得たものである。
また、粒子群Bは、ポリエチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100重量部と、着色剤として二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)100重量部と、負帯電の荷電制御剤としてフェノール系縮合剤(ボントロンE89:オリエント化学製)5重量部とを2軸混練機により溶融混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック(株)製)で細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業)を用いて分級し、溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業)を用いて溶融球状化して得た、平均粒子径が、9.5μmの負帯電性白色粒子群として得たものである。
【0043】
<作製した情報表示用パネルについて>
厚さ700μmのガラス基板(ストライプ状ITO電極付き)を2枚準備し、隔壁を形成するリブ材には、新日鐵化学社製ドライフィルムレジストPDF300を用いた。このドライフィルムレジストPDFを、幅300μm、スペース20μmでITOストライプ電極が形成されたガラス基板に積層後、フォトリソグラフィーを行って、一方の基板上に高さ50μmの格子状のリブを形成し、開口が300μm300μm×300μmの正方形セルをマトリックス配置した。セルと電極対とを一対一に対応させ、総画素数180000(600×300)のパッシブマトリックス表示型の情報表示用パネルとした。
【0044】
<マスクの載置及び粒子群の充填>
マスクは、電鋳法で作製した厚さ25μmのニッケル製マスクで、セル開口に対応する位置にマスクの開口部を有するものを用いた。このマスクをリブの上面に接するように配置し、当該マスクに載せた上記粒子群Aを、粒子充填部材を用いて基板上のセルに充填した。粒子群Aをマスクの一端から他端まで1回移動させた後、粒子充填部材が通過した後のマスクの面を観察して、スジムラの発生を評価した。その後、マスクの他端まで移動した粒子群Aを粒子充填部材により反対方向に移動させて、さらに充填を行い、総移動回数4回で粒子群Aを充填した。
次に、同様に、他のマスクをリブの上面に接するように配置し、当該マスクに載せた上記粒子群Bを、粒子充填部材を用いて、基板上のセルに充填した。粒子群Bをマスクの一端から他端まで1回移動させた後、粒子充填部材が通過した後のマスク面を観察して、スジムラの発生を評価した。その後、マスクの他端まで移動した粒子群Bを粒子充填部材により反対方向に移動させて、さらに充填を行い、総移動回数4回で粒子群Bを充填した。
【0045】
<表示品位の評価>
上述のようにして2種類の粒子群A、Bが充填された基板に、もう一方の基板を接着剤で貼り合わせて、評価用の情報表示用パネルを作製した。
作製した情報表示用パネルにテストパターン(黒べた画像及び白べた画像)を表示させて、目視により、表示品位の評価1〜3を行った。評価1は、23℃室内にて5万回書き換えた後に動かなくなった画素数を求めることにより、不動画素数を評価したものである。評価2は、情報表示用パネル中央部および情報表示用パネルの4隅の5点における、コントラストのユニフォーミティーを評価したものである。評価3は、情報表示用パネル中央部および情報表示用パネルの4隅の5点における白反射率を求めることにより、白表示時反射率のユニフォーミティーを評価したものである。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
評価1では、不動画素数が100個以上であると表示欠陥による画像不良が目立つため、100個未満の場合に良と判断した。また、評価2では、コントラストの最大値―最小値が0.5未満の場合に良と判断した。評価3では、白表示時反射率の最大値―最小値が1.0未満の場合に良と判断した。
結果、表1から明らかなように、本発明に従う粒子群の充填方法を用いることにより、コントラストの低下が大幅に改善され、また充填ムラが発生しない情報表示用パネルを得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、情報表示用パネルの基板上のセル内へ表示媒体とする粒子群を充填する際に、粒子が破損したり、セル内の粒子充填量にムラを発生させたり、さらには粒子充填材による疵の発生を回避することができる。これにより、表示品質が向上した情報表示用パネルを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1、2 基板
3 粒子群
3W 白色表示媒体(白色粒子群)
3Wa 白色粒子
4 隔壁
5、6 ストライプ電極
7 セル
8 接着剤
15 マスク
17 疵
20 粒子充填部材
22 粒子充填部材
22a 弾性材料
22b 補強用材料
24 粒子充填部材固定治具
30 押出し部材
32 振動発生器
34 粒子充填部材押し付け装置
36 粒子充填部材移動装置
S 面の先端領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表示画面領域が透明な2枚の基板を有する情報表示用パネルの、当該基板間の隔壁で区画されたセル内に、表示媒体とする粒子群を充填するに際し、
上記隔壁上にマスクを配置するマスク配置ステップと、
上記マスク上に上記粒子群を載置する粒子群載置ステップと、
上記マスク上に載置された粒子群を、粒子充填部材を用いて上記セル内に充填する粒子群充填ステップと、
を含む粒子群の充填方法であって、
上記粒子充填部材として、JIS−A硬度が30°以上60°以下でかつ厚さが0.4mm以上1.2mm以下の弾性材料と、厚さが0.1mm以上0.3mm以下の補強用材料との二層構造の粒子充填部材を用い、上記粒子充填部材の上記弾性材料側の面の先端領域を、上記マスクの面に押し付けて撓ませた状態で上記マスク上を移動させることによって、上記粒子群を上記セル内に充填する、
ことを特徴とする粒子群の充填方法。
【請求項2】
情報表示用パネルの基板上に形成された隔壁上に配置されたマスクと、該マスク上に載置された表示媒体とする粒子群を、上記隔壁で区画されたセル内に充填するための、粒子充填部材を備える粒子群の充填装置であって、
上記粒子充填部材は、JIS−A硬度が30°以上60°以下でかつ厚さが0.4mm以上1.2mm以下の弾性材料と、厚さが0.1mm以上0.3mm以下の補強用材料との二層構造になる
ことを特徴とする粒子群の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−123341(P2012−123341A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276369(P2010−276369)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】