説明

粒子配置方法

【課題】情報表示パネルの製造において実行される粒子配置方法で、基板上の隔壁で区切られて形成された複数の領域に、表示媒体とする粒子を確実に配置する粒子配置方法を提供する。
【解決手段】2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示パネルの製造において、基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、マスク上に、粒子を載せる粒子載置ステップと、マスク上に載置された粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、マスクの開口部を介して、複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子配置方法であって、板状の粒子移動部材12が、角部をカットして形成した平坦部12−1を有し、板状の粒子移動部材の移動が、平坦部の少なくとも一部の面をマスク11のマスク面に押し当てて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示パネルの製造方法に関し、より詳細には、基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、マスク上に粒子を載せる粒子載置ステップと、マスク上に載置された粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、マスクの開口部を介して、複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも一方の情報表示画面領域が透明な2枚の基板を対向配置した基板間の情報表示画面領域を、隔壁で区切って形成した複数の領域に、表示媒体とする粒子群を配置し、粒子を移動させて情報を表示する情報表示パネルが知られている。
【0003】
そして、上述した情報表示パネルを製造する際に実行される粒子配置工程で、スクリーンおよび板状部材を用いて粒子を配置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、情報表示パネルのパネル基板に形成した隔壁上にスクリーンを配置し、スクリーン上に載せた表示媒体とする粒子を板状部材でスクリーン上を移動させながらスクリーンの開口部から落下させる。これにより、パネル基板上の隔壁で囲まれた領域(セル)内に粒子を配置する技術である。このようにスクリーンおよび板状部材による粒子配置工程を行えば、情報表示パネルを製造する際に、効率良くセル内に粒子を配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された技術では、粒子を配置するときに板状部材をスクリーンに押し当てながら、前後に往復動作させてスクリーン開口部から粒子を落下させてセル内へ配置している。そして、この特許文献1では、ゴム材などの弾性部材で形成した板状部材を用いる場合を開示している。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように板状部材をマスクに対して傾けて移動すると板状部材の角部がスクリーン(マスクとなる場合もある)に当たるために、板状部材の角部が傷ついたり、一部に欠損が発生したりする場合がある。このように損傷した板状部材を用いて粒子配置工程を行なうと、板状部材が通過した後のマスク面に筋状のむらが発生し、基板上のセル内には粒子が均一に配置されないという問題があった。また、板状部材を、その進行方向側に傾けずに、板状部材の厚さ方向にあたる面をマスク面に接するようにして板状部材を移動させると、板状部材がスティック・スリップを発生してスムーズに移動しないことがあり、この場合にも、基板上のセル内には粒子が均一に配置されないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、情報表示パネルの製造において実行される粒子配置方法で、基板上の隔壁で区切られて形成された複数の領域に、表示媒体とする粒子を確実に配置する粒子配置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粒子配置方法は、2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示パネルの製造において、前記基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、前記複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、前記マスク上に、前記粒子を載せる粒子載置ステップと、前記マスク上に載置された前記粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、前記マスクの開口部を介して、前記複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子配置方法であって、前記板状の粒子移動部材が、角部をカットして形成した平坦部を有し、前記板状の粒子移動部材の移動が、前記平坦部の少なくとも一部の面を前記マスク面に押し当てて行われることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の粒子配置方法の好適例としては、前記マスク面に押し当てる、前記平坦部の少なくとも一部の面が、前記板状の粒子移動部材の移動方向に対する後端を含む一部の面であること、前記平坦部の幅が、0.2mm〜20mmであること、前記板状の粒子移動部材が、JIS−A硬度60度〜80度の弾性材料で構成されていること、前記板状の粒子移動部材の移動が、前記板状の粒子移動部材の移動方向側にある面と、マスク面と、の形成する角度を45°〜85°の範囲にして行なわれること、前記粒子が、帯電性粒子を含んだ粒子であること、がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、マスク上に、粒子を載せる粒子載置ステップと、マスク上に載置された粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、マスクの開口部を介して、複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子配置方法であって、板状の粒子移動部材が、角部をカットして形成した平坦部を有し、板状の粒子移動部材の移動が、平坦部の少なくとも一部の面を前記マスク面に押し当てて行われることで、筋状のムラの発生をなくすことができ、各セルに対して均一な粒子配置を行える粒子配置方法を得ることができる。
【0011】
また、本発明の好適例に従って、マスク面に押し当てる、平坦部の少なくとも一部の面が、板状の粒子移動部材の移動方向に対する後端を含む一部の面である場合、平坦部の幅が、0.2mm〜20mmである場合、板状の粒子移動部材が、JIS−A硬度60度〜80度の弾性材料で構成されている場合、板状の粒子移動部材の移動が、板状の粒子移動部材の移動方向側にある面と、マスク面と、の形成する角度を45°〜85°の範囲にして行なわれる場合、粒子が、帯電性粒子を含んだ粒子である場合は、いずれの場合も、本発明の粒子配置方法を好適に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子配置方法の対象となる粒子を表示媒体とする情報表示パネルの一例を説明するための図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子配置方法の対象となる粒子を表示媒体とする情報表示パネルの他の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の粒子配置方法における粒子充填ステップの一例を説明するための図である。
【図4】本発明の粒子配置方法における粒子充填ステップの他の例を説明するための図である。
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の粒子配置方法で用いる粒子移動部材の一例の構成を説明するための図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子配置方法における粒子移動部材のマスク面への押し当て方の一例を説明するための図である。
【図7】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子配置方法における粒子移動部材のマスク面への押し当て方の他の例を説明するための図である。
【図8】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子配置方法における粒子移動部材のマスク面への押し当て方のさらに他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の粒子配置方法の対象となるパネル構造について>
まず、本発明の粒子配置方法の対象となる表示媒体として粒子を用いる情報表示パネルの一例である帯電粒子駆動型情報表示パネルの基本的な構成について説明する。この情報表示パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子として構成した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時あるいは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0014】
本発明の粒子配置方法の対象となる帯電粒子駆動型の情報表示パネルの例を、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)に基づき説明する。
【0015】
図1(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セル7において、背面側のパネル基板1に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側の透明なパネル基板2に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図1(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示しているが、セルと画素とを対応させない構成にすることもできる。
【0016】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT(薄膜トランジスタ)付き画素電極)と基板2に設けた電極6(共通電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図2(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示しているが、セルと画素とを対応させない構成にすることもできる。
【0017】
<本発明の粒子配置方法における粒子充填ステップについて>
図3および図4はそれぞれ本発明の粒子配置方法における粒子充填ステップの一例を説明するための図である。
【0018】
図3に示す例では、マスク11と隔壁4の頂上とは離して配置し、マスク11上に載せた白色粒子群3Wを粒子移動部材12でマスク11上を移動させる。なお、13は板状の弾性体である粒子移動部材12を固定させるための固定用治具である。マスク11の開口部11−1から落下した白色粒子群3Wは、パネル基板1上で隔壁4で囲まれて形成された所定の領域(セル)7内に配置される。粒子移動部材12で押されたマスク11が隔壁4の頂上に接地した状態で、粒子移動部材12で押された白色粒子群3Wがマスク11の開口部11−1から落下する。なお、図3における左端の図は、粒子移動部材12が移動した後、マスク11が変形から解放されて元に戻った状態を示す。また、図3における中央の図は、粒子移動部材12が移動することで押された白色粒子群3Wがマスク11の開口部11−1からセル7内に落下して配置されている状態を示す。この状態では、隔壁4の頂上とマスク11のマスク部11−2とは接触している。さらに、図3における右端の図は、粒子移動部材12が通過する前のマスク11と隔壁4との関係を示す。
【0019】
このように、板状の粒子移動部材12を進行方向側に傾ける(傾き角度θ)とともに、板状の粒子移動部材12の平坦部12−1の少なくとも一部がマスクに接するようにすることが肝要である。図3には、平坦部12−1全面がマスクに接する様子を示している。板状の粒子移動部材を進行方向側に傾けることによって、スティック・スリップを発生させないで板状の粒子移動部材を移動することが容易にできるようになり、板状の粒子移動部材の平坦部の少なくとも一部がマスクに接するようにすることによって、板状の粒子移動部材に損傷を起こさない板状の粒子移動部材の移動が可能となり、基板上のセル内に粒子群をむらなく配置することができる。
【0020】
図4に示す例では、マスク11を隔壁4の頂上と接地させて配置し、マスク11上に載せた白色粒子群3Wを粒子移動部材12でマスク11上で移動させる。なお、13は板状の弾性体である粒子移動部材12を固定させるための固定用治具である。マスク11の開口部11−1から落下した白色粒子群3Wは、パネル基板1上で隔壁4で囲まれて形成された所定の領域(セル)7内に配置される。マスク11が隔壁4の頂上に常に接地した状態で、粒子移動部材12で押された白色粒子群3Wがマスク11の開口部11−1から落下する。本例では、図4における左端の図、中央の図、右端の図のいずれにおいても、隔壁4の頂上とマスク11のマスク部11−2とが接触している。
【0021】
この場合も、板状の粒子移動部材12を進行方向側に傾ける(傾き角度θ)とともに、板状の粒子移動部材12の平坦部12−1の少なくとも一部がマスクに接するようにすることが肝要である。図4には、平坦部12−1全面がマスクに接する様子を示している。板状の粒子移動部材を進行方向側に傾けることによって、スティック・スリップを発生させないで板状の粒子移動部材を移動することが容易にできるようになり、板状の粒子移動部材の平坦部の少なくとも一部がマスクに接するようにすることによって、板状の粒子移動部材に損傷を起こさない板状の粒子移動部材の移動が可能となり、基板上のセル内に粒子群をむらなく配置することができる。
【0022】
<本発明の粒子配置方法で用いる粒子移動部材12について>
本発明の粒子配置方法における特徴部分は、上述した図3および図4に示す粒子充填ステップにおいて、板状の粒子移動部材12をその移動方向(図3および図4における右矢印方向)に傾けるとともに一定の幅を有する平坦部12−1を含んで構成し、平坦部12−1をマスク11に押し当てた時に平坦部12−1の少なくとも一部がマスク11(マスク部11−2)と面接触した状態でマスク11に対して移動させる点にある。
【0023】
図5(a)〜(d)はそれぞれ本発明の粒子配置方法で用いる粒子移動部材の一例の構成を説明するための図である。図5(a)〜(d)に示す例において、粒子移動部材12は、角部をカットして少なくとも幅Wの平坦部12−1を有している。図5(a)に示す例では、角部の一部をカットして、1つの平坦部12−1を有する断面が五角形の粒子移動部材12を構成している。図5(b)に示す例では、角部の全体をカットして、1つの平坦部12−1を有する断面が四角形の粒子移動部材12を構成している。図5(c)に示す例では、角部の一部を二段にカットして、2つの平坦部12−1、12−2を有する断面が六角形の粒子移動部材12を構成している。図5(d)に示す例では、角部の全体を二段にカットして、2つの平坦部12−1、12−2を有する断面が五角形の粒子移動部材12を構成している。
【0024】
図6(a)、(b)〜図8(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子配置方法における粒子移動部材のマスク面への押し当て方の一例を説明するための図である。図6(a)、(b)〜図8(a)、(b)に示す例において、板状の粒子移動部材12の角部をカットして形成した平坦部12−1の少なくとも一部をマスク11の面に押し当てて、粒子移動部材12を矢印の方向に移動する。この時、粒子移動部材12の全面とマスク11のマスク面とで形成される角度θを、45°〜85°の範囲にすることが好ましい。
【0025】
図6(a)、(b)に示す例では、図5(a)に示した1つの平坦部12−1を有する断面が五角形の粒子移動部材12を用いており、図6(a)に平坦部12−1の一部を、ここでは移動方向に対する後端を含む一部を、マスク11のマスク面に押し当てた状態を示すとともに、図6(b)に平坦部12−1の全面をマスク11のマスク面に押し当てた状態を示している。いずれの場合も、弾性材料である粒子移動部材の変形によって、マスク面とは面で接触している。図7(a)、(b)に示す例では、図5(d)に示した2つの平坦部12−1、12−2を有する断面が五角形の粒子移動部材12を用いており、図7(a)に平坦部12−1の一部を、ここでは移動方向に対する後端を含む一部を、マスク11のマスク面に押し当てた状態を示すとともに、図7(b)に平坦部12−1の全面をマスク11のマスク面に押し当てた状態を示している。いずれの場合も、弾性材料である粒子移動部材の変形によって、マスク面とは面で接触している。図8(a)、(b)に示す例では、図5(c)に示した2つの平坦部12−1、12−2を有する断面が六角形の粒子移動部材12を用いており、図8(a)に平坦部12−1の一部を、ここでは移動方向に対する後端を含む一部を、マスク11のマスク面に押し当てた状態を示すとともに、図8(b)に平坦部12−1の全面をマスク11のマスク面に押し当てた状態を示している。いずれの場合も、弾性材料である粒子移動部材の変形によって、マスク面とは面で接触している。
【0026】
平坦部12−1の幅Wは、特に限定しないが、0.2mm〜20mmの範囲であることが好ましい。平坦部12−1の幅Wが0.2mm未満であると、平坦部を形成したことにならずマスク面との十分な面接触が得られないためか、板状の粒子移動部材が通過した後のマスク面に筋状のむらが発生する場合があり、平坦部12−1の幅Wが20mmを超えると、板状の粒子移動部材とマスク面の界面に入り込んだ粒子に対して過度のストレスが与えられ、マスク上に載せた粒子群の性状にばらつきが発生するためか、粒子充填ステップを続けていくと板状の粒子移動部材が通過後のマスク面に次第に筋状のむらが発生するようになってくる不都合がある。また、粒子移動部材12の材質は、特に限定しないが、平坦部の硬度がJIS−A硬度60度〜80度であることが好ましい。JIS−A硬度が60度未満であると、板状の粒子移動部材の平坦部とマスク面との摩擦力が大きいためか、初回の粒子充填ステップで板状の粒子移動部材がスティック・スリップを発生する場合があり、80度を超えると、板状の粒子移動部材の平坦部の少なくとも一部の面をマスクに対して面接触させようとしても粒子移動部材が十分に変形しないため面接触が得られにくくなるためか、粒子がマスク開口部を通過しにくくなることがある。
【0027】
このようなJIS−A硬度を有する材料の一例としてゴム材料が挙げられ、このようなゴム材料としては、天然ゴムの他、ウレタンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ハイパロンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムなどを好適に用いることができる。さらに、平坦部12−1の少なくとも一部の面をマスクに接地させた場合の粒子移動部材12の移動方向前面とマスク面とが形成する角度(図中θに相当)は、特に限定しないが、45°〜85°の範囲にあることが好ましい。θが45°未満であると、板状の粒子移動部材が粒子を移動させる機能と、マスクの開口部に対して粒子を通過させる機能とのバランスが崩れるるためか、粒子が基板上の所定領域に対して所定量配置できない場合があり、θが85°を超えると、板状の粒子移動部材の平坦部とマスク面との摩擦力と、板状の粒子移動部材の弾性とのバランスが崩れるためか、初回の粒子充填ステップで板状の粒子移動部材がスティック・スリップを発生する場合があり、初回から良好に粒子充填ステップを行なえない不都合がある。なお、粒子移動部材12のJIS−A硬度は、JIS K6253で規定するタイプAデュロメータによる硬度、または、ASTM D2240で規定するタイプAデュロメータによる硬度のことで、(株)テクロック製、デュロメータGS−710Gで測定することができる。
【0028】
<本発明の粒子配置方法で用いる表示媒体とする粒子群について>
本発明の粒子配置方法を適用する情報表示パネルにおいて表示媒体とする粒子群は、平均粒子径d(0.5)が、1μm〜20μmの範囲であり、一種類の粒子で構成したり、複数種類の粒子を組み合せて構成したりする。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。なお、本発明の粒子配置方法でマスク上に載置される粒子(粒子群)は粉の状態であり、液状やペースト状ではない。
【0029】
さらに、表示媒体とする粒子(粒子群)の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、表示媒体とする粒子のサイズが揃い、表示媒体(粒子群)としての均一な移動が可能となる。
【0030】
さらにまた、表示媒体として複数の粒子群を使用する場合には、使用した粒子群の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)に対する、最小の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)の比を10以下とする。 たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、複数の粒子群は表示媒体として互いに反対方向に動くので、互いの粒子群を構成している粒子サイズが近い方が表示媒体として容易に移動できるようになるので好適であり、それがこの範囲となる。
【0031】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子群を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、平均粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
【0032】
さらに、帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として、気体(真空を含む)中空間で駆動させる方式とする場合には、パネル基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、表示媒体(3B、3W)の占有部分、隔壁4の占有部分、パネル基板間のシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるようにパネル基板間に封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール剤、シール方法を施すことが肝要である。
【0033】
本発明の対象とする情報表示パネルの基板と基板との間隔は、表示媒体が駆動できて、表示コントラストを維持できればよいが、通常2μm〜500μm、好ましくは5μm〜200μmに、表示媒体とする粒子群を構成する粒子の大きさや充填量に合わせて調整される。
表示媒体とする粒子群に帯電性粒子を用いる場合は、基板と基板との間隔は10μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μmの範囲で調整される。 さらに、基板間の気体(真空を含む)中空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体としての粒子の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0034】
本発明に係る情報表示パネルに用いる表示媒体とする粒子群は、帯電性粒子を含む粒子群としたり、導電性粒子を含む粒子群としたり、磁性粒子を含む粒子群としたり、半導体性粒子を含む粒子群としたりすることができる。これらの粒子群に対して、例えば、電界を付与したり、電荷を注入したり、正孔を注入したり、磁界を付与したりすることによってこれらの粒子群を表示媒体として移動させることができ、この表示媒体を視認することによって表示された情報を認識する。
【実施例】
【0035】
A5判サイズの情報表示パネルを作製するため、100nm厚の透明なITO膜が設けられた700μm厚のガラス基板を用いて、ITO膜の上に積層した、ニチゴーモートン社製のドライフィルムレジスト材(アルフォNIT2 厚さ:50μm)をフォトリソグラフィー加工して、300μm×300μmの正方形セルを形成する格子状隔壁を、幅30μmで形成した。このガラス基板のセル内に、下記の白色粒子群を配置する粒子配置方法を実行して、粒子充填ステップ実行中の状態を目視観察するとともに、粒子配置後の基板の状態を、数十倍に拡大して目視観察し、評価した。
【0036】
(白色粒子群)
ポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100重量部と、着色剤として二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)100重量部と、負帯電の荷電制御剤としてフェノール系縮合物(ボントロンE89:オリエント化学製)5重量部とを2軸混練機により溶融混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック(株)製)で細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニュ−マチック工業)を用いて分級し、溶融球状化装置(MR−10:日本ニュ−マチック工業)を用いて溶融球状化して得た、平均粒子径が、9.5μmの負帯電性の白色粒子群を得た。実施例では、この白色粒子群を用いた。
【0037】
(粒子配置方法)
負帯電性の白色粒子を含んだ粒子群を載せた後述する開口部を有するマスクを、ガラス基板上の隔壁上に接するようにして、基板上のセル開口と、マスクの開口部とが対応するように位置決めして配置した後、ウレタンゴム製板状の粒子移動部材を1回だけ移動させて、マスク上の白色粒子群をガラス基板上のセル内に配置した。この方法でセル内に白色粒子群が充填配置されたガラス基板を10枚連続して作製した。粒子移動部材として用いたウレタンゴム製の板状部材は、マスクと接触する部分となる平坦部の硬さ(JIS−A硬度)が異なるもの、板状の角部をカットして形成する平坦部の構成を変えるもの(一例を図5(a)〜(d)に粒子移動部材の断面形状にて示した)として数種類準備して順次取り替えて使用した。
【0038】
以下、上述した粒子、粒子配置方法の条件のもとで、本発明を評価するために実行した「平坦部の接触状態および粒子移動部材の移動方向側前面とマスク面とで形成する角度θ」、「平坦部の幅」、「粒子移動部材の硬度」について、実施例、参考例、比較例を説明する。
【0039】
<平坦部の接触状態および粒子移動部材の移動方向側前面とマスク面とで形成する角度θについて>
JIS−A硬度が70度で厚さ10μmのウレタンゴム製板状の粒子移動部材(断面:長方形)の角部を45°にカットしてマスク面に押し当てる平坦部を形成した実施例の粒子移動部材(図5(a)に示したもの)および角部をカットしない比較例の粒子移動部材のそれぞれを、粒子群を載せたマスク上を、以下の表1に記載するように、マスク面との接触状態を変えて、一方向に1回だけ移動させた。その後、粒子移動部材が通過した後のマスク面の状態を目視で観察し、また、粒子が配置された基板上のセル内の状態を数十倍に拡大して目視観察して評価した。マスクには角丸付き正方形の開口部(300μm×300μm)をセルの中央に配置したものを用いた。また、マスクは電鋳法で作製したニッケル製(厚さ25μm)を用いて、各10枚のガラス基板に対して、粒子移動部材を1回だけ移動させて粒子を配置した。結果を以下の表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、角部をカットしていない粒子移動部材を用いた比較例1、2では、弾性材料である粒子移動部材の変形によって形成される平面部分が十分でなく、マスク面とは線接触に近い状態で接触しているためか、粒子移動部材の平坦部の少なくとも一部の面とマスク面とを面接触させることができた実施例1〜8は、粒子移動部材の角部とマスク面とを面接触させることができなかった比較例1、2と比べて、良好な粒子充填配置を行えることがわかった。
【0042】
また、表1の結果から、粒子移動部材の移動方向側前面とマスク面とが形成する角度θが45°〜85°にあり、粒子移動部材の平坦部の少なくとも一部の面がマスク面と面接触するように粒子充填ステップを実行している実施例1〜8では、良好な粒子充填配置を行えることがわかった。
【0043】
<平坦部の幅について>
JIS−A硬度が70度のウレタンゴム製板状の角部を45°にカットして、以下の表2に示す平坦部の幅Wを有する図5(a)に示した粒子移動部材を実施例11〜16、参考例1、2で用い、図5(b)に示した粒子移動部材を実施例17〜18で用い、比較例11、12では角部をカットしていない粒子移動部材を用いて、それぞれ粒子群を載せたマスク上を、一方向に1回だけ移動させた。その後、粒子移動部材が通過した後のマスク面の状態を目視で観察し、また、粒子が配置された基板上のセル内の状態を数十倍に拡大して目視観察して評価した。マスクには角丸付き正方形の開口部(300μm×300μm)をセルの中央に配置したものを用いた。結果を以下の表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果から、粒子移動部材の平坦部の幅Wを0.2mm〜20mmとし、粒子移動部材の移動方向側前面とマスク面とが形成する角度θを45°〜85°とした実施例11〜18は、粒子移動部材の平坦部を有さない角部をマスク面に押し当てた比較例1や、板状の粒子移動部材の厚みを形成する平坦面をマスク面に押し当てて、粒子移動部材の移動方向側前面とマスク面とが形成する角度θを90°とした比較例2と比べて、良好な粒子充填配置を行えることがわかった。平坦部の幅をそれぞれ0.1mm、25mmとし、平坦部全面をマスク面に押し当てるようにした参考例1、2でも、実施例1〜18に比べるとやや不安定な粒子充填ステップとなっていることがわかった。
【0046】
<粒子移動部材の硬度について>
JIS−A硬度が以下の表3に示すようにJIS−A硬度が60度〜85度のウレタンゴム製板状の粒子移動部材の角部を30°にカットして、図5(a)に示す断面五角形で、平坦部の幅Wが0.2mmの粒子移動部材を準備し、粒子群(平均粒子径9.5μmの白色粒子群)を載せたマスク上を、いずれも粒子移動部材を60°(θ=60°)傾けて、幅10mmの五角形の斜辺にあたる幅0.2mmの平坦部全面をマスクに対して面接触させた状態で、一方向に1回だけ移動させた。その後、粒子移動部材が通過した後のマスク面の状態を目視で観察し、また、粒子が配置された基板上のセル内の状態を数十倍に拡大して目視観察して評価した。マスクには角丸付き正方形の開口部(300μm×300μm)をセルの中央に配置したものを用いた。結果を以下の表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3の結果から、粒子移動部材のJIS−A硬度が60度〜80度とした実施例21〜25は、粒子移動部材のJIS−A硬度をそれ以外の範囲とした参考例11〜12と比べて、良好な粒子充填ステップを行えることがわかった。また、粒子移動部材の平坦部とマスク面とが面接触する幅が0.2mmあれば良好な粒子充填ステップを行えることもわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明を用いて製造する情報表示パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板(ホワイトボード)等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence, Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、リライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0050】
1、2 パネル基板
3W 白色粒子群
3Wa 白色粒子
3B 黒色粒子群
3Ba 黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7 セル
8 接着剤
11 マスク
11−1 マスクの開口部
11−2 マスク部
12 粒子移動部材
12−1、12−2 平坦部
13 固定用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示パネルの製造において、前記基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、前記複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、前記マスク上に、前記粒子を載せる粒子載置ステップと、前記マスク上に載置された前記粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、前記マスクの開口部を介して、前記複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子配置方法であって、
前記板状の粒子移動部材が、角部をカットして形成した平坦部を有し、前記板状の粒子移動部材の移動が、前記平坦部の少なくとも一部の面を前記マスク面に押し当てて行われることを特徴とする粒子配置方法。
【請求項2】
前記マスク面に押し当てる、前記平坦部の少なくとも一部の面が、前記板状の粒子移動部材の移動方向に対する後端を含む一部の面であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配置方法。
【請求項3】
前記平坦部の幅が、0.2mm〜20mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子配置方法。
【請求項4】
前記板状の粒子移動部材が、JIS−A硬度60度〜80度の弾性材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子配置方法。
【請求項5】
前記板状の粒子移動部材の移動が、前記板状の粒子移動部材の移動方向側にある面と、マスク面と、の形成する角度を45°〜85°の範囲にして行なわれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子配置方法。
【請求項6】
前記粒子が、帯電性粒子を含んだ粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子配置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−237543(P2011−237543A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107708(P2010−107708)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】