説明

粒状物の成分推定方法

【課題】路盤材のような粒状物について、その成分(CaOとMgOの合計濃度)を簡便且つ迅速に知ることができる方法、特に、舗装面上からの測定により路盤材の成分を簡便且つ迅速に知ることができる方法を提供する。
【解決手段】土壌検知機で粒状物のアルカリ度を測定し、該アルカリ度から粒状物のCaOとMgOの合計濃度を推定する。特に路盤材を対象とする場合、舗装面上から土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定し、該アルカリ度から路盤を構成する路盤材のCaOとMgOの合計濃度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤材などに用いられる粒状物の成分推定方法に関するもので、例えば、路盤材が施工された道路や駐車場などのアスファルトコンクリート舗装において、舗装面が隆起する可能性を非破壊で予測するために、路盤材を構成する粒状物の成分を推定するために用いられる方法である。
【背景技術】
【0002】
道路や駐車場などのアスファルトコンクリート舗装では、路盤が膨張することにより舗装面が突然隆起することがある。このように路盤膨張を生じる主たる原因は、路盤材としてCaOやMgOを比較的多く含む材料(例えば、鉄鋼スラグ)が使用されている場合に、固結した路盤材中にCa(OH)やMg(OH)が生成し、体積膨張を生じるためであると考えられる。
本出願人は、上記のような路盤膨張による舗装面の隆起の予防策として、膨張性のある路盤を含む舗装の一部を全層厚方向で除去することにより、路盤の膨張によってそれまでに蓄積されてきたひずみ(膨張圧)を開放するとともに、舗装除去部内に固結しない路盤材を再施工し、この路盤材で補修後の路盤の膨張を吸収することで、路盤膨張による舗装の隆起を適切に予防することができる補修方法をさきに提案した。
【0003】
このような補修方法を実施するには、既設のアスファルトコンクリート舗装が隆起を生じる可能性があるかどうかを判定する必要がある。しかし、従来、舗装面の隆起の可能性を非破壊の方法で簡便且つ迅速に判定できる方法は知られていない。特許文献1には、路盤形状測定装置により路盤の異常を探知する方法が示されているが、この方法は、舗装面隆起を予測できる方法ではない。
一方、アスファルトコンクリート舗装面の隆起の主因であると考えられるCa(OH)やMg(OH)の生成による路盤膨張が生じるか否かは、使用されている路盤材の成分(CaO+MgOの濃度)に依存するところ大きく、したがって、既設のアスファルトコンクリート舗装について、使用されている路盤材の成分が判れば、舗装面の隆起の可能性を予測することが可能であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−180224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、路盤材の成分(CaO+MgOの濃度)を調べるには、アスファルトコンクリート舗装を開削し、路盤材を回収して成分分析を行う必要があり、しかも、その成分分析は蛍光X線などの化学分析により行う必要があり、多大な手間と時間がかかる。
したがって本発明の目的は、路盤材のような粒状物について、その成分(CaO+MgOの濃度)を簡便且つ迅速に知ることができる方法、特に、舗装を破壊(開削)することなく路盤材の成分を簡便且つ迅速に知ることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、公知の土壌探知機で測定される路盤材などの粒状物のアルカリ度から、その成分(CaO+MgOの濃度)を推定できることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
【0007】
[1]土壌検知機で粒状物のアルカリ度を測定し、該アルカリ度から粒状物のCaOとMgOの合計濃度を推定することを特徴とする粒状物の成分推定方法。
[2]上記[1]の成分推定方法において、舗装面上から、土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定し、該アルカリ度から路盤を構成する路盤材のCaOとMgOの合計濃度を推定することを特徴とする粒状物の成分推定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粒状物の成分推定方法によれば、土壌検知機で粒状物のアルカリ度を測定するだけで、粒状物の成分(CaOとMgOの合計濃度)を簡便且つ迅速に知ることができる。このため既設の舗装においては、舗装面上から土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定するだけで、路盤を構成する路盤材の成分(CaOとMgOの合計濃度)を簡便且つ迅速に知ることができる。このため、舗装を破壊(開削)することなく、舗装面が隆起する可能性を容易に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】土壌探知機で測定された粒状物のアルカリ度と化学分析により測定された粒状物のCaO+MgO濃度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
土壌探知機(主たる用途が金属探知である機器の場合もある)として、土壌のアルカリ度(Ground Balance)を測定できるものが知られている。本発明では、そのような土壌探知機を用いて粒状物のアルカリ度を測定し、このアルカリ度から粒状物のCaOとMgOの合計濃度(含有量)を推定する。対象が路盤の場合には、舗装面上から土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定し、このアルカリ度から路盤を構成する路盤材のCaOとMgOの合計濃度を推定する。
【0011】
ここで、本発明が対象とする粒状物の種類や大きさに特別な制限はないが、本発明は既設の路盤を構成する路盤材の成分推定に特に有用であり、路盤材には各種の鉄鋼スラグ(例えば、溶銑予備処理スラグや転炉脱炭スラグなどの製鋼スラグ、高炉スラグ、特殊鋼スラグなど)、天然砕石、廃コンクリート(コンクリート破砕物)などが用いられるので、これらが代表的な粒状物である。また、路盤材などに使用される粒状物の粒度は、通常40mm以下である。
【0012】
路盤材などとして使用されるCaOやMgOを含有する粒状物は、水と接触するとその水はアルカリ性を呈する。一般に路盤は10mass%程度の水分を含有しており、したがって、路盤材としてCaOやMgOを含有する粒状物が使用されている場合には、粒状物が含有している水がアルカリ性(粒状物のCaO+MgO濃度に応じて弱アルカリ姓〜強アルカリ性)となる。検討の結果、土壌探知機により測定される粒状物のアルカリ度が、粒状物のCaOとMgOの合計濃度と高い相関を有することが判った。
【0013】
路盤材として使用される各種の粒状物について、土壌探知機(米国ホワイト社製金属探知機「ゴールドマスター GMT」)によりアルカリ度を測定するとともに、化学分析によりCaO,MgOの濃度を測定した。アルカリ度の測定試験では、数十kgの試料に金属探知機のセンサーを約100mm程度の距離まで近づけて、アルカリ度の測定を行った。測定の結果を表1に示す。また、図1に、上述のように測定された粒状物のアルカリ度とCaO+MgO濃度との関係を示す。
【0014】
【表1】

【0015】
図1によれば、土壌探知機で測定されるアルカリ度(Ground Balance)と、化学分析によるCaOとMgOの合計濃度との間には、ほぼ下記(1)式のような相関があることが判る。
y=−0.885x+65.5 …(1)
ここで y:土壌探知機で測定されるアルカリ度(−)
x:化学分析によるCaOとMgOの合計濃度(質量%)
したがって、土壌探知機で測定される粒状物のアルカリ度から、例えば、上記(1)式に基づきCaOとMgOの合計濃度を推定することができる。
また、図1に示されるように、基本的に1種類の粒状物が単独で使用されている場合には、土壌探知機で測定される粒状物のアルカリ度から粒状物の種類(例えば、A:天然砕石、B:廃コンクリート、C:溶銑予備処理スラグ、D:高炉スラグ、E:特殊鋼スラグの別)も推定することができる。
【0016】
なお、土壌探知機で測定されたアルカリ度から上記(1)式に基づいて推定されるCaO+MgO濃度の推定値と化学分析による実測値との間には、最大で12〜13%程度の誤差が生じる場合があるが、例えば、スラグの場合、製造ロットによってもCaO+MgO濃度は10質量%程度のバラツキを有するものであるので、この程度の誤差があっても実用上問題はない。
ここで、本発明の粒状物の成分推定方法は、上記(1)式による成分推定方法に限定されるものではない。具体的には、3点以上の化学分析によるCaO+MgO濃度とアルカリ度の測定結果について、下記(2)式で表される相関関係を求めることにより、土壌探知機で測定されたアルカリ度からCaOとMgOの合計濃度を推定することができる。
y=ax+b …(2)
ここで y:土壌探知機で測定されるアルカリ度(−)
x:化学分析によるCaOとMgOの合計濃度(質量%)
【0017】
対象が路盤の場合には、舗装面上から、土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定し、このアルカリ度から路盤を構成する路盤材のCaOとMgOの合計濃度を推定することができる。この場合、土壌探知機は、舗装面上で適宜移動させつつ、路盤のアルカリ度を測定する。適宜移動させる要領は、土壌中の金属を探知する方法と同様である。
この方法によれば、路盤材のCaOとMgOの合計濃度を簡便且つ迅速に知ることができるため、舗装を破壊(開削)することなく、舗装面が隆起する可能性を容易に予測することができる。
なお、土壌探知機としては、例えば、米国ホワイト社製の金属探知機「ゴールドマスター GMT」などを使用することができる。
本発明は、路盤材以外にも、例えば、仮設道路材などに用いる土工用スラグの成分推定や、一般土壌中のアルカリ(CaO+MgO)濃度の推定などにも適用できる。
【実施例】
【0018】
既設のアスファルトコンクリート舗装について、舗装面上から、土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定し、このアルカリ度から上記(1)式に基づきCaOとMgOの合計濃度を推定した。その結果を、舗装を開削して路盤材のCaO濃度とMgO濃度を化学分析した結果とともに、表2に示す。なお、土壌探知機は、米国ホワイト社製の金属探知機「ゴールドマスター GMT」を使用した。
【0019】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌検知機で粒状物のアルカリ度を測定し、該アルカリ度から粒状物のCaOとMgOの合計濃度を推定することを特徴とする粒状物の成分推定方法。
【請求項2】
舗装面上から、土壌検知機で路盤のアルカリ度を測定し、該アルカリ度から路盤を構成する路盤材のCaOとMgOの合計濃度を推定することを特徴とする請求項1に記載の粒状物の成分推定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−174898(P2011−174898A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41161(P2010−41161)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)