説明

粒状物体払い出し装置

【課題】石炭等の粒状物体を払い出す払い出し装置において、スクレーパに入手が容易でしかも脱落しづらい難摩耗材を備えるようにする。
【解決手段】払い出し装置は、コンベア13によって粒状物体を、コンベアからコンベアの下側に配置されたホッパに払い出す。払い出し装置はスクレーパ装置を有し、スクレーパ装置はコンベア側に向かって延びる板状の払い出し体を有し、払い出し体の少なくとも先端側にはセラミック部が装着されており、払い出し体をコンベアの搬送方向に交差する方向に駆動してコンベア上の粒状物体をホッパに払い出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアを搬送される粒状物体を払い出す粒状物体払い出し装置に関し、特に、スクレーパを用いてコンベアを搬送中の粒状物体である石炭をホッパに払い出すための荷貨物払い出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石炭を燃料として用いる火力発電所等では、貯炭場からベルトコンベア(コールバンカコンベア)によって石炭をホッパに搬送して、石炭を一旦ホッパに蓄えるようにしている(例えば、このホッパはボイラー毎に備えられている)。コンベアを搬送中の石炭をホッパに払い出す際には、スクレーパが用いられており、例えば、スクレーパを石炭搬送方向に交差する方向に駆動して、コンベア上の石炭をホッパに払い出すようにしている。
【0003】
このような石炭払い出し装置において、コンベアによって搬送される石炭を、コンベアの上方に配置されるスクレーパに交差させて、コンベアの下方に配置したホッパへ石炭を投入する際、コンベアベルトの両側部を上げたトラフ構造の搬送面により石炭を搬送して、払い出しの際可動ローラによってコンベアベルトの搬送面を平坦として、スクレーパを降下させてスクレーパ底部をコンベアベルトの搬送面に近接させ、スクレーパの表面を搬送物に交差させることにより搬送物を外側方に誘導して払い出すようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−236543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の石炭払い出し装置においては、コンベアベルト上の石炭をホッパに払い出す際には、スクレーパの払い出し体(払い出し板)の先端部がコンベアベルトの表面に近接しており(例えば、間隔は1mm程度である)、払い出し体を搬送方向に交差する方向に駆動して、石炭をホッパに払い出しているため、払い出し体は不可避的に石炭と触れ合う事になる。このため、払い出し体の先端には難摩耗材である所謂超硬チップが取り付けられている。
【0005】
上記の超硬チップは払い出し体において板に挟持されているが、その取り付けが難しく、所望の挟力を得ることが困難であって、超硬チップが脱落することがある。超硬チップが脱落した場合には、給炭機及びスクレーパ自体にトラブルが発生することがあり、このような事態を避ける必要がある。
【0006】
さらに、超硬チップを新たに納入するとなると、その納期は最低でも30日程度必要であり、超硬チップの納期まで石炭払い出しを行えないという事態にもなりかねない。つまり、超硬チップが脱落した際のような不適合時の対応が困難となるという課題がある。
【0007】
従って、本発明は、スクレーパが、入手が容易でしかも脱落しづらい難摩耗材を備える粒状物体払い出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、コンベアによって粒状物体を、該コンベアから前記コンベアの下側に配置された貯留部に払い出す粒状物体払い出し装置において、前記コンベアの上方に配置されたスクレーパ装置を有し、該スクレーパ装置は前記コンベア側に向かって延びる板状の払い出し体を有し、前記払い出し体の少なくとも先端側にはセラミック部が装着されており、前記払い出し体を前記コンベアの搬送方向に交差する方向に駆動して前記コンベア上の粒状物体を前記貯留部に払い出すことを特徴とするものである。
【0009】
(1)に記載の粒状物体払い出し装置では、スクレーパ装置の板状払い出し体の少なくとも先端側にはセラミック部が装着するようにしたので、粒状物体との摩擦による払い出し体の摩耗を適切に防止することができ、しかもセラミックは入手が容易であるので、その補修も容易である。
【0010】
(2)本発明は、(1)に記載の粒状物体払い出し装置において、前記払い出し体は前記スクレーパ装置の筐体と押さえ部材とによって挟持されてボルトによって固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
(2)に記載の粒状物体払い出し装置では、板状の払い出し体自体を粒状物体を払い出す部材として用いて、払い出し体をスクレーパ装置の筐体と押さえ部材とによって挟持してボルトによって固定するようにしたので、払い出し体が脱落することがない。
【0012】
(3)本発明は、(1)又は(2)に記載の粒状物体払い出し装置において、前記払い出し体には複数のセラミック片が装着されて、これらセラミック片によって前記セラミック部が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
(3)に記載の粒状物体払い出し装置では、払い出し体には複数のセラミック片を装着して、これらセラミック片によってセラミック部が形成するようにしたので、払い出し体へのセラミック部の装着が極めて容易となる。
【0014】
(4)本発明は、(3)に記載の粒状物体払い出し装置において、前記払い出し体には複数の穴部が形成されており、前記セラミック片には予め穴部が形成され、前記払い出し体の穴部と前記セラミック片の穴部とを合わせた状態で当該穴部にボルトを挿通して該ボルトで前記セラミック片を前記払い出し体に装着することを特徴とするものである。
【0015】
(4)に記載の粒状物体払い出し装置では、払い出し体の穴部と前記セラミック片の穴部とを合わせた状態でボルトでセラミック片を払い出し体に装着するようにしたので、セラミック片を容易に払い出し体に装着することができる。
【0016】
(5)本発明は、(1)〜(4)のいずれかの粒状物体払い出し装置において、前記粒状物体は石炭であることを特徴とするものである。
【0017】
(5)に記載の粒状物体払い出し装置では、粒状物体は石炭であるため、石炭火力発電所等における石炭の払い出しを効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、スクレーパ装置の板状払い出し体の少なくとも先端側にはセラミック部が装着するようにしたから、石炭等の粒状物体との摩擦による払い出し体の摩耗を適切に防止することができ、しかもセラミックは入手が容易であるので、その補修が容易であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による粒状物体払い出し装置について、火力発電所において貯炭場から石炭をホッパに払い出す石炭払い出し装置を例に挙げて説明する。
【0020】
図1は本実施の形態による石炭払い出し装置の一例を上方から見た図であり、図2は本実施の形態による石炭払い出し装置の一例を側方から見た図である。また、図3は図2のA−A線断面図(スクレーパ装置の断面図)、図4は図2のB−B線断面図、そして、図5は図2のC−C線断面図である。また、図6はスクレーパ装置を一部分破断して上方から見た図、図7はスクレーパ装置を一部分破断して側方から見た図、図8は図7のD−D断面図、そして、図9はスクレーパ装置の払い出し体の一部を詳細に示す図である。
【0021】
図1、図2、図4、及び図5において、コンベア(コールバンカコンベア)装置11は、例えば、7つのスクレーパ装置12を有しており、これらスクレーパ装置12はコンベア13の搬送方向(図中実線矢印で示す方向)に沿って配置されている。そして、これら7つのスクレーパ装置12を指令室(図せず)からの制御によって選択的に駆動して、コンベア13上を搬送される石炭をホッパ14に払い出す(図示の例では、コンベア13の下側には合計4つのホッパ14が配設されている)。
【0022】
図示のコンベア13はコンベアベルト15を有しており、コンベアベルト15は搬送方向に沿って配置された多数のキャリーローラ16で支持されている。コンベア13の一端部(図2において左端部)には電動機17が配置され、電動機17の回転軸はローラチェーン18によって、駆動ローラ(駆動プーリ)21に取り付けられたスプロケット19に連結されている。従って、電動機17の回転駆動によって、コンベアベルト15を搬送方向に駆動できることになる。
【0023】
コンベア13はコンベアベルト15によって石炭を搬送するものであって、貯炭場(図示せず)から順次搬送手段(図示せず)で搬送された石炭は、最終的にコンベア13に送られる。そして、コンベア13の一端側から順次石炭が搬送され、後述するようにして、スクレーパ装置12によってホッパ14に払い出される。
【0024】
なお、コンベアベルト15上に残った(つまり、払い出されなかった)石炭は、コンベア13の他端(図2において右端)側に配置された供給シュート20で回収される。なお、コンベアベルト15は駆動ローラ21と供給シュート20の近傍に配置されたテールローラ(テールプーリ)22との間に張架されている。
【0025】
図3、図6、及び図7を参照すると、スクレーパ装置12は、装置筐体30を有しており、この装置筐体30を貫通してコンベア13(コンベアベルト15)が配置されている。スクレーパ装置12は払い出し体(スクレーパ部)31を有しており、この払い出し体31には後述するようにセラミック材が装着されている。
【0026】
図6に示すように、払い出し体31は一対の薄板31aを有し、これら薄板31aはコンベアベルト15の搬送方向に交差する方向に所定の間隔をおいて配置されており、軸部材31bによって連結されている。
【0027】
図3及び図7に示すように、薄板31aの先端は、コンベアベルト15の僅か上方に位置しており、つまり、薄板31aとコンベアベルト15の表面との間には所定のギャップが形成されている。払い出し体31の上面側には、支持部体32が形成されており、この支持部体32に対して回動可能にリンク部材33が取り付けられている。
【0028】
図7において、リンク部材33の上端は連結部34が形成されており、この連結部34は装置筐体30に備えられた支持部35に配置されている。さらに、連結部34にはアーム部材36が取り付けられ、このアーム部材36はパワーシリンダー装置37に連結されている。パワーシリンダー装置37を駆動すると、アーム部材36が移動し、これによって払い出し体31が、図7において紙面の表側から裏側の方向に又はその逆方向に移動して、コンベアベルト15上の石炭をホッパ14に払い出す。
【0029】
コンベア13の両側には、装置筐体30に備えられたライナー体38がそれぞれ位置づけられており、ライナー体38は、図7に示すように、コンベア13の両側においてコンベアベルト15を上側から下側に横切るようにして下方に延びている。このライナー体38はセラミックライナー38a及び高分子樹脂ライナー38bによって構成されており、コンベアベルト15から石炭がこぼれ落ちるのを防止している。
【0030】
前述のように、払い出し体31は一対の薄板31aを有しているが、この薄板31aは、図8に示すように、ホルダー40によって装置筐体30に取り付けられている。つまり、装置筐体30には、板状の薄板支持体41が備えられており、一方、ホルダー40は押さえ部材42とボルト43とを有している。そして、薄板支持体41と押さえ部材42とで薄板31aを挟持して、ボルト43で薄板31aを、薄板支持体41と押さえ部材42の間に固定する。なお、ボルト43は複数用いられ、複数箇所で薄板31aを固定する。
【0031】
このようにして、薄板31a自体を、石炭を払い出す部材として用いているから、つまり、超硬チップを用いていないから、薄板31a自体の固定は確実に行え、脱落することはない。
【0032】
上述のように、超硬チップを用いていない関係上、個々では、薄板31aにセラミック片50を装着して、薄板31aの先端部(下端部)にセラミック部51を形成して、薄板31aの摩耗を防止するようにした。図9(a)及び(b)に示すように、薄板31aには、複数のセラミック片50がボルト52等の固定手段で固定されている。セラミック片50の大きさは、割れない程度で取り付けが容易な寸法であり、予めセラミック片50に穴部を形成するとともに、薄板31aにも穴部を形成しておき、セラミック片50の穴部と薄板31aの穴部とを合わせて、ボルト52でセラミック片50を薄板31aに固定する。
【0033】
セラミック片50は、薄板31aの先端側を基準位置として上方向に配置するようにすればよく、石炭との接触を考慮して、セラミック片50を装着する高さ、つまり、セラミック部51の高さHを決定するようにする。もちろん、薄板31aの表面全体にセラミック片50を装着するようにしてセラミック部51を形成するようにしてもよいが、石炭と接触する部分にのみセラミック片50を装着するようにすればよい(つまり、セラミック部51を形成するようにすればよい)。
【0034】
このようにして、薄板31aにセラミック片50を装着するようにしたので、薄板31aの摩耗を防止できるばかりでなく、セラミック片50は入手し易いので、補修も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の本実施の形態による石炭払い出し装置の一例を上方から見た図である。
【図2】本発明の本実施の形態による石炭払い出し装置の一例を側方から見た図である。
【図3】図2のA−A線断面図(スクレーパ装置の断面図)である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】図1に示す石炭払い出し装置で用いられるスクレーパ装置を一部分破断して上方から見た図である。
【図7】スクレーパ装置を一部分破断して側方から見た図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【図9】スクレーパ装置の払い出し体の一部を詳細に示す図であり、(a)は正面から見た図、(b)は側方から見た図である。
【符号の説明】
【0036】
11 コンベア(コールバンカコンベア)装置
12 スクレーパ装置
13 コンベア
14 ホッパ
15 コンベアベルト
16 キャリーローラ
17 電動機
18 ローラチェーン
19 スプロケット
30 装置筐体
31 払い出し体
37 パワーシリンダー装置
50 セラミック片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアによって粒状物体を、該コンベアから前記コンベアの下側に配置された貯留部に払い出す粒状物体払い出し装置において、
前記コンベアの上方に配置されたスクレーパ装置を有し、
該スクレーパ装置は前記コンベア側に向かって延びる板状の払い出し体を有し、
前記払い出し体の少なくとも先端側にはセラミック部が装着されており、
前記払い出し体を前記コンベアの搬送方向に交差する方向に駆動して前記コンベア上の粒状物体を前記貯留部に払い出すことを特徴とする粒状物体払い出し装置。
【請求項2】
前記払い出し体は前記スクレーパ装置の筐体と押さえ部材とによって挟持されてボルトによって固定されていることを特徴とする請求項1記載の粒状物体払い出し装置。
【請求項3】
前記払い出し体には複数のセラミック片が装着されて、これらセラミック片によって前記セラミック部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の粒状物体払い出し装置。
【請求項4】
前記払い出し体には複数の穴部が形成されており、
前記セラミック片には予め穴部が形成され、
前記払い出し体の穴部と前記セラミック片の穴部とを合わせた状態で当該穴部にボルトを挿通して該ボルトで前記セラミック片を前記払い出し体に装着することを特徴とする請求項3記載の粒状物体払い出し装置。
【請求項5】
前記粒状物体は石炭であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の粒状物体払い出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−30717(P2010−30717A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193297(P2008−193297)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】