説明

粗糸搬送装置

【目的】 粗糸ボビンの自動搬送による労力の軽減と設備投資額の節減。
【構成】 粗紡機(S)と満管粗糸ボビン(13)のストックレール(B)との間に、バッテリーカー(N)、複数台の搬送台車(R)、及び粗糸ボビン支持ペッグを植設したパレット(P)からなり、誘導手段(L)に沿って自走する無人走行式の搬送装置を介在させると共に、ストックレール(B)の下方に、フォークの昇降駆動装置とパレット(P)及び搬送台車(R)の位置決めステップ送り機構を具えた粗糸ボビン受渡し装置(M)を設置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は粗糸搬送装置に関するものであり、詳細には、粗紡機から精紡機へ満管粗糸ボビンを無人で自動搬送する粗糸搬送システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近時、精紡機への粗糸ボビンの供給は次のように行われている。
【0003】即ち、各精紡機の列に沿ってハンガーレールを架設し、このハンガーレールにマガジンを走行自在に吊り下げ支持し、このマガジンに複数個(例えば6個)の満管粗糸ボビンをボビンホルダを介して回転自在に吊り下げ支持している。そして、このハンガーレールは、粗紡機側と連結されており、粗紡機で生産された満管粗糸ボビンは、マガジン毎、一旦、ストックヤードに貯留され、ここから各精紡機へ搬送される。各精紡機に搬送されたマガジンは、定位置に停止し、マガジンに吊り下げ支持された粗糸ボビンは、マガジンから外さず、そのままの姿勢で粗糸の始端が精紡機の各錘に供給され、以後粗糸がなくなる迄粗糸の繰り出しが行なわれる。粗糸がなくなると、空の粗糸ボビンは、マガジンに吊り下げられたまま精紡機から搬出され、空ボビンの回収部で空ボビンがマガジンのボビンホルダから外され回収される。回収された空ボビンは、残留粗糸を取除いた後、粗紡機に供給され、粗糸が巻き付けられて満管の粗糸ボビンが生産される。一方、空のマガジンは、粗紡機側に搬送され、粗紡機で生産された満管粗糸ボビンを装着し、ストックヤードを経由して精紡機へ搬送される。尚、マガジンは、各精紡機の全錘数分に相当する粗糸ボビンを一斉に交換するため、所要数だけ連結して使用されている。
【0004】従来、精紡機への満管粗糸ボビンの搬入と、空になった粗糸ボビンの精紡機からの搬出は、マガジンを作業者が手で押してハンガーレールに沿って移動させることによって行なっていた。
【0005】一方、粗紡機用のボビン移送装置として、例えば、特開平3−25525号公報に記載されたように、粗紡機の機台前面の作業通路に周回式のペッグコンベアーを配設したものが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のマガジンを手で押して粗紡機、または、ストックヤードから満管粗糸ボビンを精紡機に導入する方式では、高速精紡機の導入により、ボビン1本当りの粗糸の巻取り重量が増大するのに伴ない、精紡機1台当りの錘数が増大していることも影響して、マガジンの重量が増大し、満管粗糸ボビンをマガジンに手で直接装着すること及びマガジンを手で押して長い搬送経路を移動させることが困難になり、作業者の労力負担の軽減が大きな課題となって来た。
【0007】また、特開平3−25525号公報に記載するボビン移送装置を粗紡機側に設置することによって、満管粗糸ボビンのストックと精紡幾への搬送が容易化されるものの、既設の粗紡幾の機台前面に周回式のペッグコンベア装置を配設すると、この分だけ機台前面の作業スペースが狭くなり、粗糸切れ補修や管替等の作業がやりにくくなる。
【0008】本発明は、従来の粗糸搬送システムやボビン移送装置に認められた上記問題点の解決手段を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題の解決手段として本発明は、精紡機の列に沿って配置された精紡機用レールと、この精紡機用レールから離れた位置に配置された満管粗糸ボビンのストックレールと、上記各レール間を接続し、かつ、各レールとの接続点にポイント切換機構を配置した連絡用レールと、精紡機の錘数に対応する複数本の粗糸ボビンを着脱可能に分割支持し、一列に連結されて上記各レールに走行自在に支持された複数のマガジンと、上記各レール上の所定位置にマガジンに対して接触離隔可能に設置され、接触時、1個以上のマガジンに跨って接触し、当該マガジン列を正逆両方向に走行駆動するマガジン駆動機構と、上記各レールの終始端及びマガジン列の両端に位置を異ならせて設置され、上記マガジン駆動機構で走行するマガジン列の走行方向最後端の通過を検出して上記マガジン駆動機構の動作を停止させる検出器と、上記マガジン駆動機構の始動操作と手動操作を行う操作部とを具備した粗糸搬送装置において、
【0010】粗紡機と上記満管粗糸ボビンのストックレールとの間に、磁気誘導、無線誘導、または光学的な誘導手段を介して無人走行するバッテリカーと、このバッテリカーに牽引され精紡機の錘数に対応する複数本の満管粗糸ボビンを一括搬送する複数台の搬送台車と、上面に上記マガジンに装着されたボビンホルダと同一の配列ピッチで複数本の粗糸ボビン支持ペッグを直立させ、上記搬送台車上に位置決め状態で積載されるパレットとからなる無人走行式の搬送装置を介在させると共に、上記ストックレールの設置域に、当該ストックレール及び上記マガジンと対向して上昇下降可能に、かつ、上記搬送台車に対して係脱可能に支持されたフォークと、このフォーク上に送り込まれた上記パレットをフォークと共に上昇下降させる昇降駆動機構と、上記パレット及び搬送台車の位置決め及びステップ送り機構とからなる粗糸ボビン受渡し装置を配設したことを特徴とする粗糸搬送装置を提供するものである。
【0011】
【作用】搬送台車上に積載されたパレットの粗糸ボビン支持ペッグに、粗紡機側で所定個数の満管粗糸ボビンを嵌装する。尚、上記パレットの上面には、精紡機へ満管粗糸ボビンを一括搬送するためのマガジン側ボビンホルダと同一の配列ピッチで所定本数の粗糸ボビン支持ペッグが植設されている。この粗糸ボビン支持ペッグに嵌込むことによって、パレットに積載された満管粗糸ボビンは、ストックレール及び精紡機への移し換えに先立ってマガジン側のボビンホルダと同心配置状態を保持するように位置決め固定される。精紡機で一斉に交換される本数に対応した複数本の満管粗糸ボビンを一括搬送するため、上面に上記パレットを積載した搬送台車は、複数台連結され、磁気誘導、無線誘導、または光学的な誘導手段を介してバッテリーカーに牽引されストックレールの設置域に向って自動走行する。上記ストックレールの設置域には、当該ストックレールと対向して上昇下降可能に、かつ、上記搬送台車に対して係脱可能に支持されたフォークと、このフォーク上に送り込まれた上記パレットをフォークと共に上昇下降させる昇降駆動機構と、上記パレット及び搬送台車の位置決め及びステップ送り機構とからなる粗糸ボビン受渡し装置が設けられている。粗糸ボビン受渡し装置に到達した満管粗糸ボビンは、パレット1個単位でストックレールに向って上昇し、ストックレールに走行自在に支持されているマガジンのボビンホルダに移し替えられる。この後、マガジン駆動機構が起動し、満管粗糸ボビンは、連絡用レール及び精紡機用レールに沿って移動し、マガジンに吊り下げられたまま精紡機の真上の所定位置に送り込まれる。一方、空になった粗糸ボビンは、マガジン駆動機構の逆起動によって精紡機からマガジン毎送りだされ、残留粗糸を除去された後、上記の自走式搬送装置または手押車等の手動式搬送具を利用して粗紡機へ送り返される。
【0012】
【実施例】図1は本発明装置の全体構造を示す概略平面図であって、(A)は精紡機用レール、(B)は満管粗糸ボビンのストックレール、(C)は空ボビンの待機レール、(D)は連絡用レール、(E)はマガジン駆動機構、(F)は操作部、(G)は精紡機、(I)はポイント切換機構、(M)は粗糸ボビン受渡し装置、(L)は粗紡機(S)と満管粗糸ボビンのストックレール(B)の間に設けられた磁気誘導経路、(N)はバッテリーカー、(P)は粗糸ボビン搬送用のパレット、(R)は搬送台車を示している。
【0013】精紡機用レール(A)は、各精紡機(G)のギヤエンドからアウトエンド迄、機台の略全長に亘って配置されている。各精紡機(G)には、所定本数の紡糸スピンドルが前後面2列で配置されており、この紡糸スピンドル列に対応して、各精紡機(G)の1台について2本の精紡機用レール(A)が配置されている。図1は精紡機(G)が3台の場合を例示している。満管粗糸ボビンのストックレール(B)及び空ボビン待機レール(C)は、精紡機用レール(A)から離れた位置に配設されており、満管粗糸ボビンのストックーレール(B)と精紡機用レール(A)と、空ボビン待機レール(C)は、ポイント切換機構(I)及び連絡用レール(D)を介して接続され、図5に示すマガジン(J)の移動経路を形成している。図1に示す粗糸搬送装置では、バッテリーカー(N)の無人誘導手段として、フロア面に磁気テープ(L)を貼着した磁気誘導方式が採用されているが、これに限定されるものではなく、誘導ワイヤをフロア内に埋設した磁気誘導方式や無線誘導方式、あるいは光学的な誘導方式を利用することができる。
【0014】バッテリーカー(N)は、粗糸ボビン(B)を積載した複数台の搬送台車(R)を連結状態で牽引する無人自走車である。
【0015】搬送台車(R)は、図2に示すように底面に走行車輪(40)を具え、上面対角線位置にパレット(P)の位置決め固定用のペッグ(41)を2本直立させた移動可能な台車であって、精紡機(G)で1度に交換される粗糸ボビン(13)と同本数の満管粗糸ボビンを一括搬送し得るように複数台を連結した状態で使用する。
【0016】一方、パレット(P)は、同じく図2に示すように平板状の粗糸ボビン支持部材であって、上面に後記マガジン(J)に装着されたボビンホルダ(12)と同一の配列ピッチで複数本、例えば12本の粗糸ボビン支持ペッグ(42)を直立させると共に、角隅部に上記搬送台車(R)側に設けられた位置決め固定用のペッグ(41)が嵌まり込む貫通穴(43)を設けている。
【0017】そして、パレット(P)の中央部分には、図3に示す粗糸ボビン受渡し装置(M)のフォーク(44)の上面に設けられた位置決めピン(45)と位置合わせした状態で2個の貫通穴(46)が所定の間隔を置いて穿設されている。
【0018】搬送台車(R)の連結台数は、精紡機(G)で1度に交換される粗糸ボビン(13)の本数と、1個のパレット(P)にもうけられる粗糸ボビン支持ペッグ(42)の本数に応じて調整する。
【0019】例えば、精紡機(G)で1度に交換される粗糸ボビン(13)の本数が96本で、パレット(P)1個当りの粗糸ボビン支持ペッグ(42)の本数が12本(6本×2列)である場合には、8台の搬送台車(R)を連結することによって、粗糸ボビン一斉交換の基本単位を構成する。尚、粗紡機(S)の1台当りのスピンドル数と、パレット(P)に植設される粗糸ボビン支持ペッグ(42)の総数は、粗紡機(S)のドツフイング効率を高めるため、同数に設定することが好ましい。図2は搬送台車(R)及びパレット(P)の1列を示すものであるが、これに限定されるべきものではなく、精紡機(G)で1度に交換される粗糸ボビンの本数、ならびに粗紡機(S)の錘数に応じて搬送台車(R)の連結台数、従ってパレット(P)の個数を調整する。
【0020】図3(a)は粗糸ボビン受渡し装置(M)と搬送台車(R)の上面図、図3(b)は、その正面図である。図3に基いて粗糸ボビン受渡し装置の一具体例を説明する。
【0021】粗糸ボビン受渡し装置(M)は、ストックレール(B)の設置域に設けられたパレット(P)の送り装置であって、ストックレール(B)及びマガジン(J)と対向して上昇下降可能に、かつ、搬送台車(R)に対して係脱可能に支持されたフォーク(44)と、このフォーク(44)上に送り込まれたパレット(P)及び粗糸ボビン(13)を、フォーク(44)と共に上昇下降させる昇降駆動機構(47)と、パレット(P)及び搬送台車(R)の位置決め及びステップ送り機構(61)とによって構成されている。
【0022】パレット(P)の昇降駆動機構(47)は、支柱(48)の上端及び下端に回転可能に支持されたチェーンスプロケット(49)(50)、これらのチェーンスプロケット(49)(50)に巻回されたチェーン(51)、フロア側チェーンスプロケット(50)と同軸に取付けられた第1のVプーリ(52)、支柱(48)の下端に設置されたモータ(53)、モータ(53)の出力軸に固着された第2のVプーリ(54)、第1のVプーリ(52)と第2のVプーリ(54)に巻回されたVベルト(55)、上記チェーン(51)にパレット(P)の基端部を片持梁状に支持する昇降台(56)から構成されている。
【0023】一方、上記昇降駆動機構(47)には、フォーク(44)に水平運動を発生させるための水平送り機構(57)が組込まれている。図3の(b)に示す実施例においては、昇降台(56)側に小型モータ(58)と、この小型モータ(58)の出力軸に固着されたピニオン(59)を配置し、これに対応してフォーク(44)の下面に上記ピニオン(59)と噛合うラック(60)を取付けることによって水平送り機構(57)を構成している。
【0024】パレット(P)及び搬送台車(R)の位置決め及びステップ送り機構(61)は、図3の(a)及び(b)に例示するように搬送台車(R)が粗糸ボビン受渡し装置(M)に到達したとき、フォーク(44)とパレット(P)との係合に先立ってパレット(P)と搬送台車(R)をストックレール(B)の真下にステップ送り可能に位置決め停止させる装置である。この位置決め及びステップ送り機構(61)は、搬送台車(R)がストックレール(B)の下方に送り込まれたとき、フロア面から突出して搬送台車(R)の前端を堰止める上下動可能な係止部材(62)、搬送台車(R)が移動状態にあるときには開放位置に保持され、搬送台車(R)が通過したときには回動して搬送台車(R)の後端を押圧する揺動型のストッパ(63)、この揺動型ストッパ(63)の設置域に進入する搬送台車(R)を両側から抱持して進入方向を規制する固定式のガイドプレート(64)、ならびに、上記係止部材(62)及びストッパ(63)と搬送台車(R)が非係合状態にあるとき、搬送台車(R)の側端面に摺接して回転し、搬送台車(R)を1台単位でステップ送りする複数個のガイドローラ(65)(65)…とその駆動モータ(66)および動力伝達用の歯車列(67)から構成されている。
【0025】ポイント切換機構(I)は、図4の(a)及び(b)に示すように、直進用レール(1)と分岐用レール(2)との合流点(3)を含む部分を扇形に切除し、この切除部に適合する切替用レール(4)を、合流点(3)を中心としてエアシリンダその他適宜の切換アクチュエータ(5)により回動させて、いずれか一方を択一的に切換接続する構成である。各接続点には、上記構成のポイント切換機構(I)が設置してある。各レール(A)(B)(C)(D)の断面形状は、すべて同一形状であって、図4の(b)にその断面形状を示すように、底面中央に長手方向全長に沿って開口した溝(6)を有する溝型断面材で構成されている。
【0026】各レール(A)(B)(C)(D)に沿ってマガジン(J)が走行自在に支持される。このマガジン(J)は、図5の(a)(b)(c)に示すように、複数の台車(7)を介して支持板(8)が吊り下げ支持されている。台車(7)は、例えば、レール(A)の底面上を転走する荷重支持車輪(9)とレール(A)の側面に接触する横振れ防止車輪(10)とを有し、支持杆(11)を介して支持板(8)と連結している。支持板(8)には、上記パレット(P)上に支持されている粗糸ボビン(13)の数に対応して複数個(例えば、12個)のボビンホルダ(12)が吊り下げ支持してある。ボビンホルダ(12)は、粗糸ボビン(13)をワンタッチで着脱できる構成であって、公知のものを使用している。各マガジン(J)は連結部材(14)により一列に連結され、各レール(A)(B)(C)(D)のコーナー部を通過できるように連結ピン(15)とスリット(16)とで連結し、屈折可能とされている。マガジン(J)の連結数は、1台の精紡機(G)の前面側及び後面側で所定本数、例えば合計96本の粗糸ボビン(13)を一斉に交換するのに必要な数だけ連結される。
【0027】マガジン駆動機構(E)は、図1に示すように、各レール(A)(B)(C)(D)の出入口等の適所に、マガジン(J)に対して接触離隔可能に設置され、接触時、1個以上のマガジン(J)に跨って接触して当該マガジン列を正逆方向に走行駆動させるものである。図1の実施例では、マガジン駆動機構(E)は、各精紡機用レール(A)の入口部と、満ボビンストックレール(B)の入口及び出口と、空ボビン待機レール(C)の入口及び出口と、連絡用レール(D)の送出端又は途中の中継点適所、及び粗糸ボビン受渡し装置(M)の入口部と出口部に設置してあるが、これに制約されない。
【0028】マガジン駆動機構(E)の具体的な構成は、図6の(a)(b)及び図7の(a)(b)に示すように、マガジン(J)の荷重支持車輪(9)が走行するレール(17)と、このレール(17)上に駆動ローラ(18)、従動ローラ(19)及びガイドローラ(20)(21)を介して無端状に張設され、駆動モータ(22)により、上記レール(7)に沿って正逆方向に走行駆動される所要長さ(少なくとも、マガジン(J)の1個半以上)の駆動ベルト(23)と、この駆動ベルト(23)をシリンダ(24)を介してマガジン(J)の荷重支持車輪(9)にその上面から圧接してこのマガジン(J)を前記レール(17)に沿って走行駆動させるための圧接プレート(25)とを有する。レール(17)は、マガジン(J)の横振れ防止車輪(10)及び支持杆(11)が通過するように分割されている。このレール(17)に両側板(26)(26)が一体に取付けられ、この両側板(26)(26)に駆動ローラ(18)の軸(18a)が回転可能に軸承されている。駆動モータ(22)は、両側板(26)(26)上に固設され、減速機(27)を介して駆動ローラ(18)を正逆回転駆動するものである。従動ローラ(19)は、軸(19a)に回転可能に軸承され、この軸(19a)の両端はスライダ(28)(28)に固着され、このスライダ(28)(28)は、両側板(26)(26)にスライド可能に支持され、かつ、張力調整ボルト(29)(29)によりスリット(30)(30)内で位置調整可能とされている。
【0029】圧接プレート(25)は、基端をブラケット(25a)を介して両側板(26)(26)間に支点軸(31)を介して回動可能に支持され、先端側に連結した復帰スプリング(32)により、駆動ベルト(23)の圧接を解除するように支持されている。この復帰スプリング(32)は、一端を両側板(26)(26)の上部頂板(26a)に係止し、他端を圧接プレート(25)に連結している。
【0030】シリンダ(24)は、圧接プレート(25)の途中上方に設置されている。即ち、シリンダ(24)は、その基端を両側板(26)(26)間にピン(33)を介して枢着され、そのピストンロッド(24a)の先端がクッションロッド(34)に連結されている。このクッションロッド(34)は、基部側ロッド(34a)と先端側ロッド(34b)とに分割して構成され、その間にクッションスプリング(34c)が介在させてあり、かつ、両ロッド(34a)(34b)は、長手方向に伸縮可能に貫挿されている。そして、基部側ロッド(34a)がシリンダ(24)のピストンロッド(24a)の先端に連結してあり、先端側ロッド(34b)は、連結ピン(35)を介してアーム(36)の一端に連結してある。このアーム(36)は、その中間を枢軸ピン(37)により両側板(26)(26)間に回動可能に枢着されている。このアーム(36)の他端は、圧接プレート(25)の途中に固設したブラケット(25b)に連結ピン(38)で連結されている。
【0031】圧接プレート(25)の基端側及び先端側には、ガイドローラ(20)(21)が軸(20a)(21a)を介して装着されている。
【0032】駆動ベルト(23)は、断面が台形状のVベルト又は平ベルトであって、外周側、即ち、台形断面の広い底面部をマガジン(J)の荷重支持車輪(9)に圧接するようにしている。この駆動ベルト(23)は、マガジン(J)の荷重支持車輪(9)に対応させて2条設置されている。
【0033】上記したマガジン駆動機構(E)は、各レール(A)(B)(C)(D)の所定部にレールを切除して置換設置される。
【0034】マガジン駆動機構(E)は、以上の構成であって、これを始動させるのは、図1に示した操作部(F)で行う。この操作部(F)は、各精紡機用レール(A)、満ボビンストックレール(B)及び空ボビン待機レール(C)毎に夫々マガジン(J)が入っているか否かを各系統絵図と共に表示し、また、例えば、第1番目の精紡機用レール(A)に満ボビンを搬入する場合には、該当する精紡機用レール(A)の押釦スイッチを押し、また、満ボビンストックレール(B)の中の任意の1つの押釦スイッチを押すことによって、該当する満ボビンストックレール(B)から目的の精紡機用レール(A)に連絡用レール(D)を経由してマガジン(J)を搬入する経路にあるマガジン駆動機構(E)を駆動させるように構成する。このとき、必要な位置のポイント切換機構(I)も切換動作させるものである。このように、各レール(A)(B)(C)に対応して押釦スイッチを設置し、作業者が、これを選択して押すことにより、マガジン(J)の搬出又は搬入を行わせる。この操作部(F)には、非常停止釦や単独手動操作釦等を装備させておくものである。
【0035】上記マガジン駆動機構(E)を夫々自動的に停止させるために、精紡機用レール(A)の終始端の位置、満ボビンストックレール(B)の終始端位置及び空ボビン待機レール(C)の終始端位置に図8の(a)(b)に示すように、検出器(K)を設置し、これと対応して、各マガジン(J)の連結体の両端の作動手段(Ka)を設置して、マガジン(J)の搬入、搬出が完了すると、マガジン駆動機構(E)を自動的に停止させるように構成している。具体的に説明すると、図8の(a)(b)は、精紡機用レール(A)の場合を示しており、レール(A)の始端一側と終端一側とに反射型光電センサー等の検出器(K)を設け、これに対応してマガジン(J)の列の先端両側に反射ミラー等の作動手段(Ka)を取付けておく。そして、マガジン(J)の搬入時には、始端一側の検出器(K)を不作動化しておき、終端他側の検出器(K)だけ作動可能としておき、マガジン(J)の先端がレール(A)の終端まで搬入されてくると、マガジン駆動機構(E)を停止させる。搬出時には、終端側の検出器(K)を不作動化しておき、始端側の検出器(K)だけ作動可能としておき、マガジン(J)が搬出されて行くとき、その最後尾が通過するマガジン駆動機構(E)を停止させる。
【0036】上記説明は、精紡機用レール(A)について行なったが、満ボビンストックレール(B)及び空ボビン待機レール(C)についても同様な構成とする。但し、誤動作を防止するめに、検出器(K)及び作動手段(Ka)の設置位置をマガジン(J)の同一走行ライン上からずらせておくものとする。また、連結用レール(D)に設けられるマガジン駆動機構(E)についても同様な停止手段を採用する。
【0037】次に、図1において、空ボビンの取外し装置(T)を説明する。この装置は、空ボビン待機レール(C)に戻されてきたマガジン(J)から空ボビンを自動的に外し、残っている粗糸を除去する装置であって、自動ロボット装置等が使用されている。この装置(T)で外された空ボビンは、前記搬送台車(R)とパレット(P)とからなる自走式の搬送装置、または手押車等の手動搬送具を利用して粗紡機へ供給される。
【0038】以下、本発明装置の動作順序を説明する。
【0039】精紡機(G)で1度に交換される粗糸ボビン(13)の本数に対応して、上面にパレット(P)を積載した複数台の搬送台車(R)を連結し、先頭の搬送台車(R)にバッテリーカー(N)を連結することによって満管粗糸ボビンの自走式搬送装置を構成する。作業者の手作業でパレット(P)の上面に設けられた粗糸ボビン支持ペッグ(42)(42)…に満管粗糸ボビン(13)(13)…を嵌挿する。パレット(P)への満管粗糸ボビン(13)(13)…の位置決め固定が終了した時点でバッテリーカー(N)を発進させる。バッテリーカー(N)は磁気テープ(L)等の誘導経路に沿って自走し、粗糸ボビン受渡し装置(M)に搬送台車(R)を到達させる。先頭の搬送台車(R)を、位置決め及びステップ送り機構(61)の係止部材(62)、揺動型のストッパ(63)、ならびにガイドローラ(65)を利用して、ストックレール(B)に吊り下げられた先頭のマガジン(J)の真下に位置決め固定した後、水平送り機構(57)を起動してフォーク(44)を前進させる。次いで、昇降駆動機構(47)を起動し、位置決めピン(45)を貫通穴(46)内に挿入することによってフォーク(44)の上に満管粗糸ボビン(13)を積載したパレット(P)を位置決め固定する。フォーク(44)が更に上昇することによってパレット(P)がマガジン(J)に接近する。この上昇ストロークの終期に、満管粗糸ボビン(13)(13)…は、マガジン(J)に吊り下げ支持されているボビンホルダ(12)(12)…に移し替えられる。満管粗糸ボビン(13)(13)…の移し替え動作が終了すると、昇降駆動機構(47)が逆起動し、フォーク(44)を空のパレット(P)と一緒に下降させる。この下降ストロークの終期に位置決めピン(45)は貫通穴(46)内から抜け出し、フォーク(44)とパレット(P)との噛み込み係合が解除される。最後に、水平送り機構(57)が逆起動し、パレット(P)を先頭の搬送台車(R)上に移し終えたフォーク(44)を2台目の搬送台車(R)の前進の邪魔にならない位置迄後進させる。
【0040】上記満管粗糸ボビン(13)の移し替え動作は、パレット(P)の1枚単位で搬送台車(R)の連結数だけ繰返される。一方、ストックレール(B)側では、1個のマガジン(J)を最小単位としてマガジン駆動機構(E)によるピッチ送り動作が繰返される。連結された総ての搬送台車(R)(R)…について上記水平送り機構(57)、昇降駆動機構(47)、ならびにマガジン駆動機構(E)の連動による満管粗糸ボビン(13)の移し替え動作が終了すると、粗糸ボビン受渡し装置(M)の上方に送り込まれたマガジン(J)のボビンホルダ(12)(12)…には、精紡機(G)で1度に交換される粗糸ボビン(13)(13)…が、吊り下げ保持される。この後、操作部(F)の押釦スイッチを操作することによって満管粗糸ボビンのストックレール(B)、連絡用レール(D)、ならびに精紡機用レール(A)の適所に設けられたマガジン駆動機構(E)とポイント切換機構(I)を順次起動する。これによって、マガジン(J)に吊り下げられた所定本数の満管粗糸ボビン(13)は、粗糸ボビン(13)の交換が予定されている精紡機(G)の真上に送り込まれる。
【0041】一方、空になった粗糸ボビン(13)(13)…は、マガジン駆動機構(E)の逆起動によって、一括送り出し方式で精紡機(G)の上方からマガジン(J)毎送り出される。
【0042】空ボビンの取外し装置(T)でマガジン(J)のボビンホルダ(12)(12)…から取外され、残っている粗糸を除去された空ボビン(13)(13)…は、バッテリーカー(N)、搬送台車(R)、ならびにパレット(P)からなる自走式の搬送装置、または手押車等の手動搬送具を利用して粗紡機(S)側に返送し、再使用する。
【0043】
【発明の効果】本発明装置を使用すると、粗紡機(S)の整列の間に、バッテリーカー(N)及び搬送台車(R)の進入スペースを確保するだけで済むので、粗紡工程のレイアウトが簡易化される。上記バッテリーカー(N)及び搬送台車(R)の進入スペースは、満管粗糸ボビン(13)の積載時以外は篠継ぎ等の作業スペースとして利用することができるため、周回式のペッグコンベア等を設置した場合に比較して作業スペースの確保が容易である。更に、満管粗糸ボビン(13)が半自動的に搬送され、かつ、マガジンへ装着されるので、作業者の労力軽減に対して大きな効果が発揮される。
【0044】また、ストックレール(B)の下方に、フォーク(44)、昇降駆動機構(47)、水平送り機構(57)、及び位置決め・ステップ送り機構(61)からなる粗糸ボビン受渡し装置(M)を設置した構造としているため、故障が少ないだけでなく、比較的安価な設備投資で半自動型の粗糸搬送システムを提供することができる。
【0045】また、手作業に依る一斉交換方式に対し、精紡への粗糸交換時間が約1/6と短縮できる(400Splsにて)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の全体構造を例示する概略平面図
【図2】搬送台車、パレット、及びバッテリーカーの1例を示す斜視図
【図3】(a)は粗糸ボビン受渡し装置の平面図
(b)は粗糸ボビン受渡し装置の正面図
【図4】(a)はポイント切換機構の一部破断平面図
(b)は(a)図中の線b−bに沿う断面図
【図5】(a)はマガジンの平面図
(b)はマガジンの正面図
(c)はマガジンの端面図
【図6】(a)はマガジン駆動機構の側面図
(b)はマガジン駆動機構の一部破断平面図
【図7】(a)はマガジン駆動機構の駆動ローラ部の縦断正面図
(b)はマガジン駆動機構の圧接プレート部の縦断正面図
【図8】(a)は精紡機用レール部の平面図
(b)は精紡機用レール部の側面図
【符号の説明】
A 精紡機用レール
B 満管粗糸ボビンのストックレール
C 空ボビン待機レール
D 連絡用レール
E マガジン駆動機構
F 操作部
G 精紡機
I ポイント切換機構
J マガジン
K 検出器
Ka 作動手段
L 誘導手段
M 粗糸ボビン受渡し装置
N バッテリーカー
P パレット
R 搬送台車
S 粗紡機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 精紡機の列に沿って配置された精紡機用レールと、この精紡機用レールから離れた位置に配置された満管粗糸ボビンのストックレールと、上記各レール間を接続し、かつ、各レールとの接続点にポイント切換機構を配置した連絡用レールと、精紡機の錘数に対応する複数本の粗糸ボビンを着脱可能に分割支持し、一列に連結されて上記各レールに走行自在に支持された複数のマガジンと、上記各レール上の所定位置にマガジンに対して接触離隔可能に設置され、接触時、1個以上のマガジンに跨って接触し、当該マガジン列を正逆両方向に走行駆動するマガジン駆動機構と、上記各レールの終始端及びマガジン列の両端に位置を異ならせて設置され、上記マガジン駆動機構で走行するマガジン列の走行方向最後端の通過を検出して上記マガジン駆動機構の動作を停止させる検出器と、上記マガジン駆動機構の始動操作と手動操作を行う操作部とを具備した粗糸搬送装置において、粗紡機と上記満管粗糸ボビンのストックレールとの間に、磁気誘導、無線誘導、または光学的な誘導手段を介して無人走行するバッテリカーと、このバッテリカーに牽引され精紡機の錘数に対応する複数本の満管粗糸ボビンを一括搬送する複数台の搬送台車と、上面に上記マガジンに装着されたボビンホルダと同一の配列ピッチで複数本の粗糸ボビン支持ペッグを直立させ、上記搬送台車上に位置決め状態で積載されるパレットとからなる無人走行式の搬送装置を介在させると共に、上記ストックレールの設置域に、当該ストックレール及び上記マガジンと対向して上昇下降可能に、かつ、上記搬送台車に対して係脱可能に支持されたフォークと、このフォーク上に送り込まれた上記パレットをフォークと共に上昇下降させる昇降駆動機構と、上記パレット及び搬送台車の位置決め及びステップ送り機構とからなる粗糸ボビン受渡し装置を配設したことを特徴とする粗糸搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−125626
【公開日】平成5年(1993)5月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−283408
【出願日】平成3年(1991)10月30日
【出願人】(591133572)東和工業株式会社 (1)