説明

粘性化粧料用容器

【課題】収納部内の粘性化粧料を、塗布面に広範囲で且つ均等に吐出させて、被塗布部に円滑且つ迅速に粘性化粧料を塗布する。また、粘性化粧料の塗布ムラ等を防止して、仕上がり感を向上させる。
【解決手段】
粘性を備えた粘性化粧料13を、筒状又はチューブ状の収納部10に収納し、この収納部10の先端壁11に、粘性化粧料13の分配口14を1個又は複数個形成して先端壁11の外側に塗布面12を設け、収納部10内に収納した粘性化粧料13を押圧して、分配口14から外方に押し出し可能とする。この分配口14は、形成軸を塗布面12に対して傾斜するよう形成するとともに、各分配口14の形成軸を異なる傾斜方向に傾斜させて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性を備えた粘性化粧料を収納する収納部、及びこの粘性化粧料を塗布するための塗布面を設けた粘性化粧料用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リップグロス等の粘性を有する粘性化粧料を筒状又はチューブ状の収納部に収納し、この収納部の先端壁に、粘性化粧料を吐出するための分配口を形成し、収納部内の粘性化粧料を少量ずつ分配口から外方へ吐出させながら、唇等の被塗布部に塗布する粘性化粧料用容器が存在する。
【0003】
このような粘性化粧料用容器として、図15、図16に示す従来例1の如く、収納部(1)の先端に、複数の分配口(2)を形成した先端壁(3)を収納部(1)の軸方向に対して直角に設けるとともに、収納部(1)の内部に、収納部(1)の内径に対応した円形平板状の中皿(4)を、収納部(1)内に軸方向に対して直角に配置したものが存在する。そして、前記先端壁(3)の外側に、被塗布部に接触させる塗布面(5)を形成するとともに、先端壁(3)に形成した分配口(2)は、形成軸を収納部(1)の軸方向に対して平行で、且つ塗布面(5)に対して直角に形成している。このような構成とする事により、中皿(4)を水平状態に保ちながら先端軸方向に移動する事によって、収納部(1)内に収納した粘性化粧料(6)を先端壁(3)側に押圧し、分配口(2)から塗布面(5)側に押し出す事ができる。
【0004】
また他の異なる従来例2として、特許文献1に示す如く、収納部の先端に形成した先端壁を、収納部の軸方向に対して傾斜させて設けるとともに、収納部内に軸方向に進退可能に中皿を配置したものが存在する。この中皿を先端壁方向に移動させる事により、収納部内の粘性化粧料が分配口から外方へ吐出されるものである。この特許文献1では、塗布面の傾斜に対応させて分配口を湾曲状又は軸方向に対して傾斜させて形成し、分配口の形成軸が、塗布面に対して略直角となるように形成した実施例が存在する。
【0005】
また、この先端壁を傾斜させた他の異なる従来例3として、図17に示す如く、収納部(1)の軸方向に対して傾斜させて設けた先端壁(3)に、複数の分配口(2)を、その形成軸が中皿(4)による粘性化粧料の押し出し方向と平行となるよう形成し、分配口(2)の形成軸を先端壁(3)の塗布面に対して傾斜させたものが存在する。
【特許文献1】特開平8−229461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図15、図16に示す従来例1では、粘性化粧料(6)の分配口(2)の形成軸を、中皿(4)での押し出し方向に平行で、かつ塗布面(5)に対して直角に形成しているので、分配口(2)からの吐出時に、粘性化粧料(6)の外周には、分配口(2)の内周面からほぼ均等な流動抵抗が作用して、押し出し方向に平行に吐出する。そして、図16(b)に示す如く、粘性化粧料(6)が分配口(2)の周囲に同心円状に肉厚に盛り上がって滞留し、塗布面(5)に点在するだけで、塗布面(5)に広く吐出されるものではなかった。
【0007】
従って、この塗布面(5)で唇等の被塗布部に、粘性化粧料(6)を伸ばしながら塗布する必要があり、被塗布部全体に満遍なく塗布するのは手間がかかったり、塗りムラ等を生じる事があった。また、分配口(2)を塗布面全体に数多く形成する事により、塗布面の全面に粘性化粧料(6)を配置する事ができるが、分配口(2)の数があまりに多いと、でこぼこした接触感や違和感を与えて使用者の使い心地を低下させる場合があるし、粘性化粧料(6)の漏れを生じたり、衛生面でもあまり好ましいものではなかった。
【0008】
上記従来例と同様に、従来例2の特許文献1に記載の粘性化粧料用容器でも、分配口を形成軸に対して略直角に形成しているので、粘性化粧料が分配口の開口部の周囲に肉厚に盛り上がって滞留し、塗布面に点在するだけで、塗布面全体に拡散するものではなかった。この場合も、塗布面の全体に多数の分配口を形成した実施例が記載されているが、分配口の数があまりに多いと、やはりでこぼこした接触感や違和感を与えて使用者の使い心地を低下させたり、粘性化粧料の漏れや衛生面での問題も生じていた。
【0009】
また、図17に示す従来例3では、分配口(2)を塗布面(5)に対して傾斜させて形成しているので、図17の(a)に示す如く、粘性化粧料(6)が分配口(2)の傾斜方向に沿って、塗布面(5)に対して斜めに押し出され、塗布面(5)上に長尺に吐出する。従って、前記従来例に比べて、粘性化粧料(6)を塗布面(5)上に広範囲に付着させる事ができる。しかしながら、互いの分配口(2)の形成軸が平行であるので、(a)に示す如く、粘性化粧料(6)は同一方向に押し出され、塗布面(5)上に片寄って吐出されるものとなり、やはり塗りムラ等を生じる可能性があった。
【0010】
本発明は、上述の如き課題を解決しようとするものであって、収納部内に収納した粘性化粧料を、比較的少ない数の分配口によって塗布面に広範囲で且つ均等に吐出させて、被塗布部への円滑且つ迅速な粘性化粧料の塗布を可能とするものである。また、粘性化粧料の塗布ムラ等を防止して、仕上がりの良い塗布を可能とするとともに、使用感の良好な粘性化粧料の塗布を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の如き課題を解決するため、粘性を備えた粘性化粧料を、筒状又はチューブ状の収納部に収納し、この収納部の先端壁に、粘性化粧料の分配口を複数個形成して先端壁の外側に塗布面を設けるとともに、収納部内に収納した粘性化粧料を押圧して、粘性化粧料を分配口から外方に押し出し可能としたものに於いて、分配口は、形成軸を塗布面に対して傾斜するよう形成するとともに、各分配口の形成軸を異なる傾斜方向に傾斜させて成るものである。
【0012】
また、筒状の収納部は、粘性化粧料を分配口から外方に押し出し可能とする中皿を内部に装着しても良い。
【0013】
また、先端壁は、収納部の軸方向に対して交差するよう傾斜して形成しても良い。
【0014】
また、中皿は、先端形状を、先端壁の内面の形状に対応する形状としても良い。
【0015】
また、分配口は、収納部側の開口部を先端壁の中心寄りに配置し、この収納部側の開口部よりも外方寄りに、塗布面側の開口部を配置して形成し、分配口から塗布面に、粘性化粧料が中心から外方向に放射状に流出可能としても良い。
【0016】
また、分配口は、塗布面側の開口部を先端壁の中心寄りに配置し、この塗布面側の開口部よりも外方寄りに、収納部側の開口部を配置して形成し、分配口から塗布面に、粘性化粧料が外方から中心方向に放射状に流出可能としても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、塗布面に複数個設けた分配口の形成軸を、塗布面に対して傾斜するよう形成しているので、粘性化粧料が分配口から外部に吐出する際に、塗布面に対して傾斜方向に押し出されながら吐出し、分配口の周囲にのみ粘性化粧料が滞留する事がない。更に、各分配口の形成軸を異なる傾斜方向に傾斜させているので、各分配口から粘性化粧料を異なる方向に吐出する事ができる。従って、塗布面に粘性化粧料を広範囲で且つ均等に吐出させる事ができ、唇等の被塗布部に、円滑且つ迅速に粘性化粧料を塗布する事が可能となるとともに、粘性化粧料の塗布ムラ等を防止して、仕上がりの良い塗布が可能となる。
【0018】
また、分配口の数を比較的少なくしても、傾斜方向の異なる分配口から塗布面への広い面積の粘性化粧料の吐出が可能となるので、分配口が与える被塗布部へのでこぼこ感や違和感を減少させ、使用者に快適な使用感を与える事ができる。また、分配口を少なくする事により、未使用時の粘性化粧料の外部への漏れを防止するとともに、外気や雑菌等との接触機会も少なくなって衛生面でも好ましいものとなり、酸化や劣化の防止効果を高めて、粘性化粧料の品質を保持する事が可能となる。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1を図1及び図2に於いて説明すれば、(10)は収納部であって、先端から基端までの内周径を均一に形成するとともに、先端には円形平面状に形成した先端壁(11)を設けている。この先端壁(11)は、収納部(10)の軸方向に対して直角に形成し、この先端壁(11)の外面を唇等の被塗布部に接触させる塗布面(12)としている。また、この先端壁(11)には、図2に示す如く、直径1mmの円筒形の分配口(14)を6箇所形成し、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)をこの分配口(14)から外方に吐出可能なものとしている。また、各分配口(14)は、形成軸を塗布面(12)に対して互いに傾斜させて形成している。
【0020】
更に、この形成軸を異なる傾斜方向に傾斜させるため、6個の分配口(14)は、図2(a)、図3に示す如く、各分配口(14)の収納部(10)側の開口部(19)を先端壁(11)の中心寄りに配置し、この収納部(10)側の開口部(19)よりも外方寄りに、塗布面(12)側の開口部(19)を配置して形成する。このように形成する事により、図2に示す如く、6個の分配口(14)が収納部(10)側から塗布面(12)側に、放射状に開口するものとなり、各分配口(14)から粘性化粧料(13)を異なる方向に吐出する事が可能となる。
【0021】
また、図1、図2に示す如く、収納部(10)内には、粘性化粧料(13)を先端壁(11)方向に押圧するための中皿(15)を配置している。この中皿(15)は、円柱状に形成されており、収納部(10)内で軸方向に摺動可能なものとしている。また、中皿(15)は、先端形状が先端壁(11)の内面(16)の形状に対応するよう、先端壁(11)側の上面(17)を、先端壁(11)と平行に形成し、中皿(15)を先端壁(11)側に最大限に摺動させた際に、その上面(17)を先端壁(11)の内面(16)に当接可能なものとしている。
【0022】
また、中皿(15)の先端壁(11)側の上面(17)とは反対側の底面(21)には、外周螺溝を形成した繰出棒(22)を基端部方向に接続している。この繰出棒(22)は、中皿(15)側の一端に嵌合突部(23)を突出形成しており、この嵌合突部(23)を中皿(15)の底面(21)中央に形成した嵌合受部(24)に嵌合させる事により、中皿(15)に対して回動可能に接続している。また、繰出棒(22)は、中皿(15)に接続して収納部(10)内に組み付けた際に、中皿(15)が先端壁(11)まで移動可能となる形成長さを有している。
【0023】
また、収納部(10)内の基端部側には、繰出棒(22)を先端方向に送り出すための送出環(25)を、軸方向に垂直に設けている。この送出環(25)は、収納部(10)の内周面に移動不能に固定されており、中央に貫通口(26)を開口している。そして、この貫通口(26)の内周面には、繰出棒(22)の外周螺溝と螺合可能な内周螺溝を形成し、繰出棒(22)は、この内周螺溝に外周螺溝を螺合させた状態で、収納部(10)内に組み付けられている。
【0024】
また、図1に示す如く、収納部(10)の基端には、収納部(10)とは別体に回動体(27)を設けている。そして、この回動体(27)の収納部(10)側の外周面に、係合突部(28)を突出形成し、この係合突部(28)を、収納部(10)の基端部側の内周面に形成した環状の係合受部(30)に係合する事により、回動体(27)を収納部(10)に定位置で回動可能に接続している。
【0025】
また、回動体(27)の内周面には、係合片(31)を軸方向に突設している。そして、繰出棒(22)の外周面に、この係合片(31)と係合可能な係合凹溝(32)を軸方向に形成し、係合片(31)に係合凹溝(32)を係合する事により、繰出棒(22)が、回動体(27)の回動時に回動体(27)と一体となって回動するよう構成している。また、係合片(31)と係合凹溝(32)との間に間隙を設ける事により、繰出棒(22)は、回動体(27)に対して軸方向に摺動自在となるよう組み付けられている。
【0026】
また、収納部(10)は、不透明な材質にて形成し、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)が外光の影響を受けないよう構成している。そのため、外光による粘性化粧料(13)の変質や劣化などの品質の低下を防ぐ事ができる。尚、収納部(10)の内部には粘性化粧料(13)としてリップグロスを収納している。
【0027】
上記の如く構成したものに於いて、回動体(27)を一方向に回動させる事により、回動体(27)に係合した繰出棒(22)が同一方向に回動する。この回動により、繰出棒(22)は、外周螺溝と螺合している送出環(25)の内周螺溝によって、先端方向に送り出される。この時繰出棒(22)は、回動体(27)とは独立して軸方向に摺動可能となるよう回動体(27)に係合しているため、円滑に先端軸方向に移動する。そして、この繰出棒(22)の移動に伴って、繰出棒(22)の先端側の一端に設けた中皿(15)が先端方向に移動するため、収納部(10)内に収納された粘性化粧料(13)は中皿(15)によって先端壁(11)方向に押し出され、塗布面(12)の6箇所の分配口(14)から外方に吐出される。
【0028】
また、図15、図16に示す従来例1及び特許文献1に示す従来例2では、分配口(2)の形成軸を先端壁(3)に対して直角に形成しているので、図16(b)に示す如く、粘性化粧料(6)は分配口(2)の周囲に盛り上がって滞留し、塗布面(5)に点在するだけであった。そのため、被塗布部への粘性化粧料(6)の塗布時には、塗布面(5)で粘性化粧料(6)を広く伸ばしながら塗布する必要があり、手間や塗りムラを生じていた。
【0029】
しかし、本発明の実施例1の分配口(14)は、前述の如く、形成軸が塗布面(12)に対して傾斜して形成されているので、図3(b)に示す如く、塗布面(12)に於いて、各分配口(14)の傾斜の延長方向に、粘性化粧料(13)が押し出される。更に、分配口(14)を互いに異なる方向に傾斜しているので、6箇所の分配口(14)から、図3(a)に示す如く、粘性化粧料(13)が塗布面(12)の中心から外方向に放射状に押し出され、塗布面(12)全体に広範囲で且つ均等に粘性化粧料(13)を付着させる事ができる。その結果、唇等の被塗布部に、粘性化粧料(13)を円滑且つ迅速に塗布する事ができるとともに、粘性化粧料(13)の塗布ムラ等を防止して、仕上がり感の良好な塗布が可能となる。
【0030】
また、使用時に於いて、中皿(15)を、粘性化粧料(13)を押圧しながら先端方向に移動させ、最終的に中皿(15)の上面(17)を先端壁(11)の内面(16)に当接させる事により、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)の全量を、分配口(14)から外部に吐出させる事が可能となる。従って、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)を全量使い切る事ができるため、経済的な使用が可能となる。また、分配口(14)が6箇所と少ないので、不使用時の分配口(14)からの粘性化粧料(13)の染み出しを防止するとともに、外気や雑菌との接触機会も少なくなって衛生面でも好ましく、粘性化粧料(13)を高品質に保つ事が可能となる。更に、分配口(14)が与える被塗布部へのでこぼこ感や違和感を減少させる事ができ、快適な使用感が得られる。尚、分配口(14)の塗布面(12)側の開口部(19)をRに形成しても良く、被塗布部への当たりを更に柔らかくする事ができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例2を図4〜図6に於いて説明する。上記実施例1では収納部(10)の先端壁(11)を、収納部(10)の軸方向に対して直角に形成して、塗布面(12)を円形平面状としている。そのため、収納部(10)を被塗布部に直角に接触させる必要があり、この収納部(10)の直角の配置のために、使用者が手首や肘を不自然に捻る必要があった。また、鏡で被塗布部を確認しながら粘性化粧料を塗布する際に、被塗布部と手や収納部(10)が重なって映り、これらが邪魔になって被塗布部を確認しづらくなる場合がある。
【0032】
そこで、実施例2では、図4に示す如く、先端壁(11)を、収納部(10)の軸方向に対して交差するよう傾斜して形成し、図5に示す如く、塗布面(12)を楕円平面状としている。従って、使用者は手首や肘を不自然に捻って収納部(10)をわざわざ直角に被塗布部に接触させる必要がなく、手首を自然に伸ばした状態で収納部(10)を保持し、被塗布部に近づけるだけで、斜めに傾斜した塗布面(12)を被塗布部に接触させる事ができる。その結果、使用者に過度な負担をかける事なく、容易かつ円滑に粘性化粧料(13)を被塗布部に塗布する事が可能となるとともに、鏡を使用した際にも、手や収納部(10)に邪魔される事なく、被塗布部を鏡で容易に確認しながら粘性化粧料(13)の塗布を行う事ができる。
【0033】
また、収納部(10)の先端壁(11)には、直径1mmの分配口(14)を三角形状に3箇所、その形成軸が塗布面(12)に対して傾斜するよう形成している。そして、先端側の1箇所の分配口(14)の形成軸は、収納部(10)の軸方向に対して平行に形成しているが、他の2箇所の分配口(14)は、図5、図6に示す如く、分配口(14)を収納部(10)の中心側から塗布面(12)の外方側に、放射状に開口させる事により、各分配口(14)の形成軸を異なる傾斜方向に傾斜させている。
【0034】
上記の如く構成した実施例2の粘性化粧料用容器では、円筒状の中皿(15)を摺動させると、収納部(10)内に収納された粘性化粧料(13)は中皿(15)によって先端壁(11)方向に押し出され、塗布面(12)の分配口(14)から外方に吐出する。尚、図17に示す従来例等でも、収納部(1)の軸方向に対して塗布面を傾斜して形成し、この塗布面に対して形成軸を傾斜させて複数の分配口(2)を形成している。そのため、各分配口(2)から塗布面上に長尺に粘性化粧料(6)を押し出す事ができた。しかし、各分配口(2)の形成軸の傾斜方向が同じなので、粘性化粧料(6)が同一方向に押し出され、塗布面に不均等に付着するものとなり、被塗布部への塗布に手間や塗りムラを生じる事があった。
【0035】
しかし、本発明の実施例2では、各分配口(14)の形成軸を異なる傾斜方向に放射状に傾斜させているから、粘性化粧料(13)が中心から外方向に放射状に塗布面(12)に押し出されるものとなる。従って、塗布面(12)に広範囲で且つ均等に粘性化粧料(13)を付着させる事ができ、唇等の被塗布部に、粘性化粧料(13)を円滑且つ迅速に塗布する事ができるとともに、粘性化粧料(13)の塗布ムラ等を防止して、仕上がり感の良好な塗布が可能となる。また、分配口(14)が3個と少ない数であるため、被塗布部への当たりも滑らかで柔らかいものとなるとともに、外気や細菌等の遮断効果が高く、粘性化粧料(13)の酸化や劣化等を良好に防止する事が可能となる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の実施例3を図7、及び図5、図6を用いて説明する。上記実施例2では、図4に示す如く、先端壁(11)の形状を収納部(10)の形成軸と傾斜して形成し、収納部(10)内に配置した中皿(15)を円筒状に形成し、先端壁(11)の内面形状と中皿(15)の先端形状が異なるため、中皿(15)の先端壁(11)側の上面(17)を先端壁(11)の内面(16)に当接させる事ができない。従って、実施例2では、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)の全量を分配口(14)から外方へ押し出す事ができず、粘性化粧料(13)が収納部(10)内に残留してしまうものとなり、不経済である。
【0037】
そこで、実施例3では、図7に示す如く、中皿(15)の先端壁(11)側の上面(17)を、先端壁(11)の傾斜角度と同様の傾斜角度に傾斜させて形成する事により、上面(17)を先端壁(11)の内面(16)に当接可能なものとしている。また、図7に示す如く、中皿(15)の側面軸方向にキー溝(18)を1箇所形成するとともに、収納部(10)の内周面にこのキー溝(18)と嵌合可能な嵌合片(20)を軸方向に突設している。そして、このキー溝(18)を、嵌合片(20)に嵌合させて中皿(15)を収納部(10)内に組み付ける事により、中皿(15)は、収納部(10)内で円周方向に回動せずに、軸方向にのみ摺動する事が可能となっている。
【0038】
そして、製造時にあらかじめ、中皿(15)の先端形状が先端壁(11)の内面形状に対応するよう中皿(15)のキー溝(18)と収納部(10)の嵌合片(20)を配置して、中皿(15)を収納部(10)内に組み付ける事により、中皿(15)の上面(17)が先端壁(11)の内面(16)に当接可能となるようにしている。
【0039】
また、実施例2と同様に、図5、図6に示す如く、軸方向に対して傾斜させた先端壁(11)に、直径1mmの分配口(14)を3箇所、その形成軸が塗布面(12)に対して傾斜し、且つ互いの形成軸が異なる傾斜方向に傾斜するよう放射状に形成している。そして、3個の分配口(14)から、粘性化粧料(13)が外方に放射状に吐出可能としている。
【0040】
この実施例3の粘性化粧料用容器に於いても、実施例2と同様に、異なる傾斜方向で放射状に配置した3個の分配口(14)から、粘性化粧料(13)が、肉厚とならず塗布面(12)に放射状に押し出される。従って、塗布面(12)に広範囲で且つ均等に粘性化粧料(13)を付着させる事ができ、唇等の被塗布部に、粘性化粧料(13)を円滑且つ迅速に塗布する事ができるとともに、粘性化粧料(13)の塗布ムラ等を防止して、仕上がり感の良好な塗布が可能となる。また、分配口(14)を少なくして、使用者に快適な使用感を与えるとともに、粘性化粧料(13)の品質保持をも可能とするものとなる。
【0041】
更に、実施例3では、先端壁(11)の内面(16)に対応した傾斜形状で中皿(15)の上面(17)を形成しているから、使用時に於いて中皿(15)を、粘性化粧料(13)を押圧しながら先端方向に移動させた際に、図7に示す如く、最終的に中皿(15)の上面(17)を先端壁(11)の内面(16)に当接させる事が可能となり、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)の全量を、分配口(14)から外部に吐出させる事が可能となる。従って、収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)を全量使い切る事ができるため、経済的な使用が可能となる。
【0042】
また、上記各実施例では、収納部(10)を不透明な材質にて形成し、外光の影響を受けないものとしているが、他の異なる実施例として、収納部(10)を透明な材質にて形成する事により収納部(10)内を透視可能なものとし、使用後の収納部(10)内の粘性化粧料(13)の残量を、外観により容易に確認する事を可能としても良い。
【0043】
従って、使用者は、あとどれくらいで粘性化粧料(13)を使い切るかという事を予測する事ができるため、使用途中で突然に粘性化粧料(13)がなくなってしまう等の不都合を防ぐ事が可能となる。また、中皿(15)の上面(17)が先端壁(11)の内面(16)に当接した時点で、使用者は収納部(10)内に収納した粘性化粧料(13)を全量使い切った事を容易に確認する事ができ、また、経済的な使用を完了した満足感を得る事ができる。尚、本実施例では収納部(10)を透明な材質にて形成している事から、外光の影響を少なくするため、使用時以外は不透明な袋や箱等に収納する事が好ましい。
【実施例4】
【0044】
また、上記実施例1〜3では、筒状の収納部(10)に粘性化粧料(13)を収納しているが、図8に示す実施例4では、軟弾性の樹脂材で形成したチューブ状の収納部(10)に粘性化粧料(13)を収納している。そして、このチューブ状に形成した収納部(10)の口部(33)に、円形平面状の先端壁(11)を設けた中栓(34)を接続固定している。そして、この中栓(34)の先端壁(11)に、図3と同様の分配口(14)を、形成軸が先端壁(11)に対して傾斜させるとともに各分配口(14)の形成軸が異なる傾斜方向に傾斜するよう、中心から外方に放射状に配置形成している。また、この中栓(34)を接続固定した収納部(10)の口部(33)外周に、キャップ(図示せず)を装着して、収納部(10)内を密閉して粘性化粧料(13)の品質を保持して衛生的な使用を可能とするとともに、分配口(14)からの外部への粘性化粧料(13)の漏れを防止可能としている。
【0045】
上述の如き粘性化粧料用容器では、チューブ状の収納部(10)を手指で押圧変形させる事により、収納部(10)内の粘性化粧料(13)が、中栓(34)の先端壁(11)に設けた分配口(14)から外方に吐出する。そして、この吐出の際に、先端壁(11)に対して傾斜させた各分配口(14)から、塗布面(12)上に粘性化粧料(13)が放射状に押し出され、塗布面(12)に広範囲で且つ均等に付着させる事ができる。従って、被塗布部に粘性化粧料(13)を円滑且つ迅速に塗布して、塗りムラ等のない良好な仕上がり感を得る事ができる。また、チューブ状であるから、構成が単純で廉価な製品が得られるとともに、収納部(10)を押圧変形するだけで粘性化粧料(13)を吐出させる事ができるので、手軽な使用が可能となる。
【実施例5】
【0046】
上記実施例1〜4では、分配口(14)は、収納部(10)側の開口部(19)を先端壁(11)の中心寄りに配置し、この収納部(10)側の開口部(19)よりも外方寄りに、塗布面(12)側の開口部(19)を配置して形成する事により、各分配口(14)から粘性化粧料(13)が、塗布面(12)の中心から外方に放射状に押し出されるようにしている。これに対して、図9に示す実施例5では、分配口(14)は、形成軸を塗布面(12)に対して傾斜させて形成するとともに、塗布面(12)側の開口部(19)を先端壁(11)の中心寄りに配置し、この塗布面(12)側の開口部(19)よりも外方寄りに、収納部(10)側の開口部(19)を配置している。
【0047】
この実施例5の如き分配口(14)では、広面積の開口部(19)を介して塗布面(12)に、粘性化粧料(13)が外方から中心方向に放射状に押し出されるものとなる(図9の(b))。この中心方向に粘性化粧料(13)が押し出される場合も、分配口(14)の形成位置を塗布面(12)の、なるべく外周寄りに形成する事により、従来の如く粘性化粧料(6)が肉厚に盛り上がって点在する場合比べて、中心方向に長尺に粘性化粧料(13)を吐出させて、塗布面(12)に粘性化粧料(13)を中心付近のより広い範囲に均等に付着させる事ができる。従って、被塗布部への粘性化粧料(13)の円滑且つ迅速な塗布が可能となるとともに、塗りムラ等を防止して良好な仕上がり感を得る事ができる。また、この場合も、分配口(14)の数を少なく且つ小径にする事ができ、粘性化粧料(13)の外部への漏れや酸化、劣化等を防止して、衛生的で快適な使用を持続させる事ができる。
【0048】
また、前記実施例1〜4では、外方に放射状に粘性化粧料(13)を吐出させるので、塗布面(12)に、より広範囲で且つ均等に粘性化粧料(13)を付着させる事ができ、比較的広い被塗布部への迅速な塗布が可能となる。これに対して、本実施例5の如く、中心方向に粘性化粧料(13)を吐出させる場合は、塗布面(12)の中心に多く粘性化粧料(13)を付着させる事ができ、比較的狭い面積の被塗布部に、輪郭からのはみ出しや塗りムラ等を生じる事のない良好な塗布が可能となる。
【実施例6】
【0049】
また、図10に示す実施例6では、収納部(10)の先端壁(11)を、軸方向に対して傾斜させて形成したものに於いて、分配口(14)を、形成軸を塗布面(12)に対して傾斜させて形成する際に、塗布面(12)側の開口部(19)を先端壁(11)の中心寄りに配置し、この塗布面(12)側の開口部(19)よりも外方寄りに、収納部(10)側の開口部(19)を配置して形成している。この場合も、3箇所の分配口(14)を介して塗布面(12)に、粘性化粧料(13)を外方から中心方向に放射状に吐出させる事ができ、使用目的に応じて、粘性化粧料(13)の円滑且つ仕上がり感の良い塗布が可能となる。
【実施例7】
【0050】
また、上記各実施例では、分配口(14)を円筒形に形成しているが、形成軸が塗布面(12)に対して傾斜して形成され、粘性化粧料(13)を塗布面(12)に対して斜めに吐出させる事が可能であれば、他の何れの形状で分配口(14)を形成しても良い。例えば、図11に示す実施例7では、分配口(14)を、円筒状の孔を二つ、中心軸を偏芯させて積層した形状とし、一方の円筒の底面を塗布面(12)側の開口部(19)とし、他方の円筒の底面を収納部(10)側の開口部(19)として、分配口(14)の形成軸を塗布面(12)に対して傾斜させて形成するとともに、複数設けた分配口(14)の各々の形成軸を、異なる方向に傾斜させている。
【実施例8】
【0051】
また、図12に示す実施例8では、断面形状を直角三角形とする円錐を点対称に二つ組み合わせた形状とし、分配口(14)の塗布面(12)側の開口部(19)と収納部(10)側の開口部(19)とが偏芯するように配置して、分配口(14)の形成軸を塗布面(12)に対して傾斜させて形成するとともに、複数設けた分配口(14)の各々の形成軸を、異なる方向に傾斜させている。
【実施例9】
【0052】
また、図13に示す実施例9では、分配口(14)の収納部(10)側を円筒形とし、この円筒形に連続して塗布面(12)側を断面形状を直角三角形とする円錐形とする事により、各分配口(14)の形成軸を塗布面(12)に対して傾斜させて形成するとともに、複数設けた分配口(14)の各々の形成軸を、異なる方向に傾斜させている。
【実施例10】
【0053】
また、図14に示す実施例10では、分配口(14)の塗布面(12)側の開口部(19)が大径となり、収納部(10)側の開口部(19)が小径となるよう、断面形状を直角三角形とする漏斗状分配口(14)としている。そして、この漏斗状の分配口(14)の各々の形成軸が、塗布面(12)に対して異なる方向に傾斜するように配置するとともに、複数設けた分配口(14)の各々の形成軸を、異なる方向に傾斜させている。
【0054】
上述の実施例7〜10では、何れも分配口(14)の形成軸が塗布面(12)に対して傾斜して形成され、塗布面(12)に対して粘性化粧料(13)を異なる方向に斜めに吐出させる事が可能となる。従って、少ない分配口(14)であっても、より広範囲且つ均等に粘性化粧料(13)を塗布面(12)に付着させる事ができ、粘性化粧料(13)の被塗布部への塗布を塗りムラ等を生じる事なく円滑且つ仕上がり良く行う事ができる。また、この実施例7〜10の如き形状の分配口(14)では、先端壁(11)を設けて収納部(10)を金型成形するための金型と中子とを、容易に形成する事が可能となる。
【0055】
尚、上記各実施例では、粘性化粧料(13)としてリップグロスを使用しているが、他の異なる実施例に於いてはこれに限らず、口紅用下地、液状の口紅、液状のファンデーション、液状のクリーム等、他の粘性化粧料(13)を使用する事も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1を示す粘性化粧料用容器の断面図。
【図2】粘性化粧料の吐出時の先端部分の拡大断面図。
【図3】実施例1の先端壁部分の拡大斜視断面図(a)及び分配口から粘性化粧料を吐出した状態を示す平面図(b)。
【図4】本発明の実施例2を示す粘性化粧料用容器の断面図。
【図5】実施例2、3の収納部の先端壁部分を示す拡大斜視図。
【図6】図5のA−A線断面図(a)及びB−B線断面図(b)。
【図7】本発明の実施例3を示す粘性化粧料用容器の断面図。
【図8】本発明の実施例4を示す粘性化粧料用容器の断面図。
【図9】本発明の実施例5の収納部の先端壁部分を示す拡大斜視断面図(a)及び分配口から粘性化粧料を吐出した状態を示す平面図(b)。
【図10】本発明の実施例6の収納部の先端壁部分を示す拡大斜視断面図(a)及び収納部の先端壁部分の断面図(b)。
【図11】本発明の実施例7に於ける、分配口付近の拡大斜視断面図。
【図12】本発明の実施例8に於ける、分配口付近の拡大斜視断面図。
【図13】本発明の実施例9に於ける、分配口付近の拡大斜視断面図。
【図14】本発明の実施例10に於ける、分配口付近の拡大斜視断面図。
【図15】従来例1を示す粘性化粧料容器の断面図。
【図16】従来例1に於ける、先端壁部分の拡大斜視断面図(a)及び分配口から粘性化粧料を吐出した状態を示す平面図(b)。
【図17】従来例2に於ける、分配口から粘性化粧料を吐出した状態を示す先端壁部分の拡大斜視断面図(a)及び収納部の先端壁部分の断面図(b)。
【符号の説明】
【0057】
10 収納部
11 先端壁
12 塗布面
13 粘性化粧料
14 分配口
15 中皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性を備えた粘性化粧料を、筒状又はチューブ状の収納部に収納し、この収納部の先端壁に、粘性化粧料の分配口を複数個形成して先端壁の外側に塗布面を設けるとともに、収納部内に収納した粘性化粧料を押圧して、粘性化粧料を分配口から外方に押し出し可能としたものに於いて、分配口は、形成軸を塗布面に対して傾斜するよう形成するとともに、各分配口の形成軸を異なる傾斜方向に傾斜させた事を特徴とする粘性化粧料用容器。
【請求項2】
筒状の収納部は、粘性化粧料を分配口から外方に押し出し可能とする中皿を内部に装着した事を特徴とする請求項1の粘性化粧料用容器。
【請求項3】
先端壁は、収納部の軸方向に対して交差するよう傾斜して形成した事を特徴とする請求項1又は2の粘性化粧料用容器。
【請求項4】
中皿は、先端形状を、先端壁の内面の形状に対応する形状とした事を特徴とする請求項2又は3の粘性化粧料用容器。
【請求項5】
分配口は、収納部側の開口部を先端壁の中心寄りに配置し、この収納部側の開口部よりも外方寄りに、塗布面側の開口部を配置して形成し、分配口から塗布面に、粘性化粧料が中心から外方向に放射状に流出可能とした事を特徴とする請求項1、2又は3の粘性化粧料用容器。
【請求項6】
分配口は、塗布面側の開口部を先端壁の中心寄りに配置し、この塗布面側の開口部よりも外方寄りに、収納部側の開口部を配置して形成し、分配口から塗布面に、粘性化粧料が外方から中心方向に放射状に流出可能とした事を特徴とする請求項1、2又は3の粘性化粧料用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−55206(P2006−55206A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237389(P2004−237389)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)