説明

粘接着剤組成物

【課題】粘接着特性に優れかつ性能バランスも良好で、さらには優れた溶解性、加熱安定性及び塗工性を有する粘接着剤組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1)を含むブロック共重合体:100質量部と、重量平均分子量が1,000〜9,000、分子量分布が1.02〜2.0であるビニル芳香族化合物を主体とする樹脂:10〜100質量部と、粘着付与剤:20〜300質量部と、軟化剤:1〜150質量部と、を含有する粘接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶液型、ホットメルト型の接着剤や粘着剤のベースポリマーとして、ビニル芳香族単量体−共役ジエン単量体系ブロック共重合体(SBS:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、SIS:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)が広く使用されている。例えば、下記特許文献1及び特許文献2には、SBSを用いた接着剤組成物又は粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、SBSやSISを用いた接着剤組成物又は粘着剤組成物は、加工性と保持力等の粘接着剤特性とのバランスが不十分であり、溶融粘度が高く、溶解性、加熱安定性及び塗工性の面においても不十分である。従って、これらの性能面での改良が望まれおり、これらの改良方法として、下記特許文献3や下記非特許文献1には、トリブロック共重合体とジブロック共重合体を含有する接着剤組成物が開示されている。
また、下記特許文献4には、特定の2官能性カップリング剤(脂肪族系モノエステル、特定のジハロゲン化合物)でカップリングさせて得られるブロック共重合体よりなる粘着剤組成物が開示されている。
しかしながら、上述したいずれの粘着剤組成物及び接着剤組成物においても、上記各種性能面の改良効果は不十分である。
このような改善要求に対して、下記特許文献5には、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体を特定の割合で水添したブロック共重合体に粘着付与剤を付与した組成物が開示されている。また、特許文献6には、両末端のポリスチレンブロックとゴムブロックからなるトリブロック共重合体にスチレン系樹脂及びクマロンインデン樹脂を付与した組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭44−17037号公報
【特許文献2】特公昭56−49958号公報
【特許文献3】特開昭61−278578号公報
【特許文献4】特開昭61−261310号公報
【特許文献5】特公平5−69874号公報
【特許文献6】特開2001−271049号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】石井逸朗、「SISベース粘着剤の品質設計」、接着、高分子刊行会、1988年(昭和63年)1月25日、第32巻、第1号、27頁〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5、特許文献6に開示されている組成物も、保持力と粘着性とのバランス性能に加えて、溶解性、加熱安定性及び塗工性の観点において、なお一層の改善が要望されている。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、保持力や粘着性等の粘接着剤特性バランスに優れ、かつ優れた溶解性、加熱安定性及び塗工性を有する粘接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造のブロック共重合体と特定の分子量及び分子量分布を有するビニル芳香族化合物を主体とする樹脂成分及び粘着付与剤からなる粘接着剤組成物が、上記課題を効果的に解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
〔1〕
少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1)を含むブロック共重合体:100質量部と、
重量平均分子量が1,000〜9,000、分子量分布が1.02〜2.0であるビニル芳香族化合物を主体とする樹脂:10〜100質量部と、
粘着付与剤:20〜300質量部と、
軟化剤:1〜150質量部と、
を、含有する粘接着剤組成物。
〔2〕
前記ビニル芳香族単量体単位がスチレンであり、
前記共役ジエン単量体単位がブタジエン及び/又はイソプレンである、前記〔1〕に記載の粘接着剤組成物。
〔3〕
前記ブロック共重合体が、
少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1):10〜90質量%と、
1個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と1個の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1´):90〜10質量%と、
を、含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の粘接着剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保持力や粘着性等の粘接着剤特性の性能バランスに優れ、溶融粘度が低く、優れた溶解性、加熱安定性及び塗工性を有する粘接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
〔粘接着剤組成物〕
本実施形態の粘接着剤組成物は、
少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1)を含むブロック共重合体:100質量部と、
重量平均分子量が1,000〜9,000、分子量分布が1.02〜2.0であるビニル芳香族化合物を主体とする樹脂:10〜100質量部と、
粘着付与剤:20〜300質量部と、
軟化剤:1〜150質量部と、
を、含有する粘接着剤組成物である。
【0011】
(ブロック共重合体)
<ブロック共重合体(1)>
本実施形態の粘接着剤組成物を構成するブロック共重合体に含まれるブロック共重合体(1)は、少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体である。
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の「主体とする」とは、ビニル芳香族単量体単位を50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有することを意味し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体ブロック及び/又はビニル芳香族単独重合体ブロックである。
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)の「主体とする」とは、共役ジエン単量体単位を50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有することを意味し、共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック及び/又は共役ジエン単独重合体ブロックである。
【0012】
前記ブロック共重合体は、ポリマー構造が、下記の一般式により表される。
(A−B)n、(A−B)pA、(B−A)qB、(A−B)m
上式において、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。また、nは2以上の整数、p、qは1以上の整数である。mは2、3、4のいずれかであり、Xは、各カップリング剤の残基又は各官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。
【0013】
前記ブロック共重合体を構成する重合体ブロック(A)のビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びp−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレンが好ましい。
【0014】
前記ブロック共重合体を構成する重合体ブロック(B)の、共役ジエン化合物は、共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物として、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0015】
前記ブロック共重合体の重合方法としては、特に限定されないが、配位重合、アニオン重合またはカチオン重合等の重合方法が挙げられる。構造の制御の容易さの点で、アニオン重合が好ましい。
アニオン重合によるブロック共重合体成分の製造方法としては、公知の方法でよく、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36975号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
上述した方法により、ポリマー構造が(A−B)n、(A−B)pA、(B−A)qBのブロック共重合体を重合できる。
上記のように、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。nは2以上の整数、p、qは1以上の整数である。
また上述した方法により、ポリマー構造が(A−B)mXのブロック共重合体を重合できる。
上記のように、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。Xは、各カップリング剤の残基又は各官能基有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。mは2、3、4のいずれかであり、各数値は官能数を示す。
【0016】
前記カップリング剤は、目的とするブロック共重合体の一般式中、mの値により選択する。
すなわち、前記カップリング剤のうち、2官能カップリング剤としては、公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、エポキシ化合物、ジクロルジメチルシラン、フェニルメチルジクロロシランのようなハロゲン化ケイ素化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランのようなアルコキシケイ素化合物、ジクロルジメチルスズのようなスズ化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類のようなエステル化合物、ジビニルベンゼン等のようなビニルアレン類等が挙げられる。
【0017】
3官能カップリング剤としては、公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、メチル三塩化スズ、トリブチルクロロスズのようなスズ化合物、トリメトキシシラン、トリエトキシシランのようなシラン化合物、メチル三塩化ケイ素、トリメチルクロロケイ素のようなハロゲン化ケイ素化合物等が挙げられる。
【0018】
4官能カップリング剤としては、公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、四塩化スズのようなハロゲン化スズ化合物、テトラアリルスズ、テトラ(2−オクテニル)スズのようなアリルスズ化合物、テトラフェニルスズ、テトラベンジルスズのようなスズ化合物、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素のようなハロゲン化ケイ素化合物、テトラフェノキシケイ素、テトラエトキシケイ素のようなアルコキシケイ素化合物等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の粘接着剤組成物を構成するブロック共重合体(1)は、例えば不活性炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を重合開始剤としてビニル芳香族炭化水素を重合させ、次いで、共役ジエン化合物を重合させ、さらに場合によりこれらの操作を繰り返す方法や、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体を重合しておき、カップリング反応する方法等により作製できる。
その際、ブロック共重合体の分子量は、有機リチウム化合物量を制御することにより調整できる。
【0020】
ブロック共重合体は、重合反応を終了するために、水、アルコール、酸等を添加して活性種を失活し、溶液を例えばスチームストリッピング等を行って重合溶媒を分離した後、乾燥することにより得られる。
ブロック共重合体の重合工程において使用する不活性炭化水素溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素溶媒が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
また、ブロック共重合体の重合工程において使用する有機リチウム化合物としては、公知の化合物、例えば、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、プロペニルリチウム、ヘキシルリチウム等が挙げられる。特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。有機リチウム化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
なお、ブロック共重合体を構成する共役ジエン単量体単位の成分である共役ジエンに由来する不飽和二重結合の一部又は全てを水素化されていてもよい。その水素化方法は特に限定されるものではなく、公知の技術を用いて行われる。
【0022】
本実施形態の粘接着剤組成物において、ブロック共重合体(1)は、少なくとも2個のビニル芳香族単量体を主体とする重合体(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上含有する。10質量%未満では、粘着力、保持力が劣る。
【0023】
<ブロック共重合体(1´)>
本実施形態の粘接着剤組成物は、上記ブロック共重合体(1)に加え、上記(1)以外のブロック共重合体(1´)として、粘着性、粘着力、及び保持力の各粘接着剤特性のバランス及び溶解性、加熱安定性及び塗工性から、1個のビニル芳香族単量体を主体とする重合体(A)と1個の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を含有するブロック共重合体を混合することが好ましい。
ブロック共重合体(1´)は、上述したブロック共重合体(1)と同様の方法により製造することができる。
ブロック共重合体(1)/ブロック共重合体(1´)の割合は特に限定されないが、10〜90/90〜10質量%が好ましく、より好ましくは15〜85/85〜15質量%、さらに好ましくは20/80〜80/20質量%である。
少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1)と、1個のビニル芳香族単量体を主体とする重合体(A)と1個の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を含有するブロック共重合体(2)の混合方法は、重合終了後の各溶液を混合する方法、あるいは乾燥して得られた各ブロック共重合体成分をロール等でブレンドする方法が挙げられる。
【0024】
本実施形態において、ブロック共重合体(1)、(1´)のビニル芳香族単量体単位の含有量は、特に限定されないが、粘着性、接着力、及び保持力の各粘接着剤特性のバランスから10〜60質量%が好ましい。さらに、好ましくは20〜50質量%である。ビニル芳香族単量体単位の含有量が10質量%以下では、接着力、保持力が劣り、ビニル芳香族単量体単位の含有量が60質量%以下では、粘着性が劣る。
【0025】
また、本実施形態において、ブロック共重合体(1)中の共役ジエン化合物のビニル結合量は、20%未満が好ましい。
ブロック共重合体中の共役ジエン化合物のビニル結合量を調整するために、例えば、エーテル類や第三級アミン類等、具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、α−メトキシテトラヒドロフラン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン等から選ばれる1種又は2種以上の混合物が使用される。
これにより、高度な熱安定性が得られる。
【0026】
本実施形態の粘接着剤組成物を構成するブロック共重合体(1)、(1´)の製造工程においては、必要に応じ、重合開始剤等に由来する金属類を脱灰する工程を採用することができる。また、必要に応じ、反応停止剤、酸化防止剤、中和剤、界面活性剤等を用いてもよい。
本実施形態で使用するブロック共重合体(1)、(1´)は、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、スズから選ばれる極性基含有官能基が重合体に結合した変性重合体やブロック共重合体成分を無水マレイン酸等の変性剤で変性した変性ブロック共重合体も含まれる。
また、ブロック共重合体(1)の数平均分子量は特に限定されないが、粘着性、粘着力、及び保持力の各粘接着剤特性のバランス及び溶解性、塗工性から数平均分子量の範囲は、40,000〜300,000、好ましくは50,000〜200,000、さらに好ましくは60,000〜150,000である。
【0027】
(ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂)
本実施形態の粘接着剤組成物を構成する、「ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂」とは、スチレン及び/又はα−メチルスチレンを主成分とする重合体であり、好ましくはスチレン又はスチレンとα−メチルスチレンとの合計が80質量%以上の重合体であり、一部共役ジエン化合物が共重合されたものであってもよい。
ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の重量平均分子量は1,000〜9,000である。これにより、後述する本実施形態の粘接着剤組成物において、優れた粘・接着力、保持力、溶解性、加熱安定性及び塗工性が得られる。
ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の重量平均分子量は、2,000〜8,000であることが好ましく、3,000〜7,000であることがより好ましい。
さらに、前記ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の分子量分布は1.02〜2.0である。これにより、後述する粘接着剤組成物において、優れた粘・接着力、保持力、溶解性が得られる。前記ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の分子量分布は、好ましくは、1.02〜1.5であり、より好ましくは1.02〜1.2である。
【0028】
前記ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の重量平均分子量、及び分子量分布は、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の重合法は、特に限定はされず、ラジカル開始剤を用いた、又は用いない、熱によるラジカル重合、有機リチウム化合物等を用いたアニオン重合、メタロセン化合物を用いた配位重合、連鎖移動剤を用いた重合等、公知の重合法が用いられる。
重合形態についても特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等何れの方法であってもよい。
特に、好ましい重合法は、有機リチウム化合物を用いたリビングアニオン重合法である。
アニオン重合法により、重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mn(分子量分布)が1.02〜2.0の範囲のスチレン系樹脂が得られやすく、スチレン系樹脂中の、残留スチレンモノマー、スチレンダイマー、トリマーの量の削減が容易となり好ましい。
また、ポリスチレンは、上記製法により単独で調製してもよいが、リビングアニオン重合法におけるブロック共重合体(1)の製造時に調製してもよい。
例えば、ブロック共重合体(1)の製造時に、ビニル芳香族炭化水素化合物を重合させブロック部を調製するが、その最中に、活性リビングアニオン種の一部をメタノール等の活性水素化合物を添加して失活せることにより、ポリスチレンを生成させる。その後、活性のあるリビングアニオン種は、さらに共役ジエン化合物のブロック部を作り、A−Bタイプ等のブロック共重合体が調製される。
この製法により生成したポリスチレンは、ブロック共重合体(1)の分子量を測定する際に、低分子成分として検出されるので、その重量平均分子量及びその分子量分布が評価される。
【0029】
(粘接着剤組成物の構成)
本実施形態の粘接着剤組成物は、上述した(ブロック共重合体(1)を含有するブロック共重合体、ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂成分)と、後述する(粘着付与剤)、及び後述する(軟化剤)とを含有するものであり、必要に応じて後述する(その他の成分)を含有するものである。
好ましい粘接着剤組成物の配合割合は、前記ブロック共重合体:100質量部に対して、前記ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の配合量が20〜80質量部であり、より好ましくは30〜70質量部である。
【0030】
より好ましい後述する粘着付与剤の配合量は、30〜250質量部であり、さらに好ましい粘着付与剤の配合量は、50〜200質量部である。
より好ましい後述する軟化剤の配合量は、10〜120質量部以下であり、さらに好ましい粘着付与剤の配合量は、20〜80質量部未満である。
【0031】
(粘着付与剤)
本実施形態の粘接着剤組成物を構成する粘着付与剤は、得られる粘接着剤組成物の用途、要求性能によって、多種多様に選択することができる。
例えば、クマロン系樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、水添テルペン系樹脂、水添ロジン系樹脂等の公知の粘着付与剤樹脂が挙げられ、肪族系環状炭化水素樹脂(例えば、荒川化学工業(株)製:アルコンM100)、ポリテルペン樹脂(例えば、ヤスハラケミカル(株)製:クリアロンM115)等を好ましく使用できる。
これらの粘着付与剤樹脂は単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。
【0032】
(軟化剤)
本実施形態の粘接着剤組成物を構成する軟化剤は、特に制限されるものではなく、公知のパラフィン系やナフテン系のプロセスオイル及びこれらの混合オイルを使用することができ、軟化剤としては、色調の観点から、パラフィン系プロセスオイル(例えば、出光興産(株)製:PW−90)を好ましく使用でき、色調の観点から、パラフィン系プロセスオイル(例えば、出光興産(株)製:PW−90)を好ましく使用できる。
【0033】
(その他の成分)
本実施形態の粘接着剤組成物には、必要により、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤、及びその他の添加剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−0−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロビオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトールーテトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
酸化防止剤の添加量は任意であるが、好ましくは粘接着剤組成物100質量部に対して5質量部以下である。
光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0034】
前記安定剤以外に、本実施形態の粘接着剤組成物には、必要により、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類;無定形ポリオレフィン、エチレンーエチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂;天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び、本実施形態の粘接着剤組成物を構成するブロック共重合体以外の、所定のスチレン−イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴムを添加してもよい。
【0035】
〔粘接着剤組成物の特性〕
本実施形態の粘接着剤組成物から得られる粘着テープの性能は、ループタックT:(N/15mm)が5.0以上、粘着力P:(N/10mm)が5.5以上、保持力C:(分)/10が7.5以上である。ループタック、粘着力及び保持力は、後述する実施例に記載した方法により測定することができる。
本実施形態の粘接着剤組成物から得られる粘着テープの性能は、後述する実施例において示される条件により作製される粘着テープを用い、実施例中に示された測定条件に従って測定することができる。
【0036】
〔粘接着剤組成物の製造方法〕
本実施形態の粘接着剤組成物は、公知の方法により、上述したブロック共重合体(1)及び必要に応じてブロック共重合体(1´)と、ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂、粘着付与剤、さらに軟化剤とを混合することにより製造できる。
混合方法としては、例えば、ブロック共重合体とビニル芳香族化合物を主体とする樹脂、粘着付与剤、軟化剤とを、混合機、ニーダー等で、加熱条件下で均一混合する方法が挙げられる。
前記混合工程での温度は130℃〜210℃が好ましい。ブロック共重合体を十分に溶融し、分散良好とする観点から130℃以上が好ましい。また、架橋剤や粘着付与剤の低分子量成分の蒸発、粘接着特性の劣化の防止の観点から210℃以下が好ましい。更に、好ましい混合温度は140℃〜200℃、より好ましくは150℃〜190℃である。
混合時間は、5〜90分が好ましい。5分未満では各成分を均一に分散させる観点から5分以上が好ましい。また、架橋剤や粘着付与剤の低分子量成分の蒸発等、粘接着特性の劣化の防止の観点から、90分以内が好ましい。より好ましい混合時間は10分〜80分であり、さらに好ましくは20分〜70分である。
【0037】
〔粘接着剤組成物の用途〕
本実施形態の粘接着剤組成物は、良好な溶解性及び塗工性を示し、粘接着剤特性において優れたバランス性能を有する。
このような特徴を生かして、各種粘着テープ・ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、表面保護シート・フィルム、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊、接着剤等に利用でき、特に粘着性テープ用、粘着性シート・フィルム用、粘着性ラベル用、表面保護シート・フィルム用、衛材用の粘接着剤用として有用である。
【実施例】
【0038】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
なお、以下の実施例及び比較例において、重合体の特性や物性の測定は、下記のようにして行った。
〔(1):ブロック共重合体の特性〕
<(1−1)ビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量>
一定量のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)にて測定し、ビニル芳香族化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
【0040】
<(1−2)数平均分子量>
ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC:装置は、ウォーターズ製)で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。
分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた数平均分子量である。
なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量をいう。
【0041】
<(1−3)共役ジエン化合物(ブタジエン部)のビニル結合含有量>
赤外線分光光度計(パーキンエルマー製モデル1710)を用いて測定し、ハンプトン法(「Analytical Chem.、21、943(’43)」に記載)により測定した。
【0042】
〔(2):ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂の特性〕
<(2−1)重量平均分子量、分子量分布>
ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC:装置は、ウォーターズ製)で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。
分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して重量平均分子量と数平均分子量を求めた。また、分子量分布は、数平均分子量/重量平均分子量より求めた値である。
なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量をいう。
【0043】
〔(3):粘接着剤組成物の物性の測定〕
<(3−1)粘接着剤組成物の溶解性>
混合装置として用いた加圧式ニーダー(株式会社森山製作所製 D0.3−3型ニーダー)のトルク変化を読み取り、変化率が1%以内になったところを溶解した時間とした。
溶解性の判断は、評価が良いものから順に、溶解時間が30分以内を○、30〜60分を△、60分以上を×と表記した。
【0044】
<(3−2)粘接着剤組成物の溶融粘度>
粘接着剤組成物の溶融粘度は、温度180℃でブルックフィールド型粘度計(ブルックフィールド社製 DV−III)により測定した。
【0045】
<(3−3)粘接着剤組成物の加熱安定性>
ブルックフィールド型粘度計を使用して、180℃における混練直後の粘接着剤組成物の溶融粘度をη0とし、粘接着剤組成物を180℃の温度雰囲気下に48時間放置後の180℃の溶融粘度をη1としたとき、以下の溶融粘度変化率を求め、加熱安定性の尺度とした。
η1−η0
溶融粘度変化率(%)=−−−−−−−−−− ×100
η0
加熱安定性の判断は、評価が良いものから順に、溶融粘度変化率が±10%以内を○、±10〜±30%を△、±30%を超えると×と表記した。
【0046】
<(3−4)粘接着剤組成物の軟化点>
粘接着剤組成物の軟化点は、JIS−K2207に準じ、規定の環に試料を充填し、水中で水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速さで上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れたときの温度を測定した。
【0047】
<(3−5)塗工性>
溶融させた粘接着剤組成物を160℃に加熱したホットプレート上に垂らし、160℃に加熱したアプリケーターで塗工した後の粘接着剤塗工面を目視観察した。評価が良いものから順に、全くムラのない状態を○、ムラが20%未満の状態を△〜○、ムラが20%以上50%未満を△、ムラが50%以上を×とした。
【0048】
溶融させた粘接着剤組成物を室温まで冷却し、これをトルエンに溶かし、アプリケーターでポリエステルフィルムにコーティングし、その後、室温で30分間、70℃のオーブンで7分間、トルエンを完全に蒸発させ、厚さ50μmの粘着テープを作製した。
粘接着剤組成物の粘着性(ループタック)、粘着力、保持力を、以下の方法で測定した。
<(3−6)粘着性(ループタック)>
250mm長×15mm幅のループ状の試料を用い、PE(ポリエチレン)板への接触面積:15mm×50mm、接着時間3sec、接着及び引き剥がし速度:500mm/minで測定した。
粘着性の測定値(N/15mm)が、7.0以上であれば実用上優れた性能、5.0以上であれば実用上十分な性能であると判断した。
<(3−7)粘着力>
JIS Z0237の引きはがし粘着力の測定の方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて、25mm幅の試料をポリエチレン板に貼り付け、引き剥がし速度300mm/minで180°粘着力を測定した。
粘着力の測定値(N/10mm)が、6.5以上であれば実用上優れた性能、5.5以上であれば実用上十分な性能であると判断した。
<(3−8)保持力>
保持力は、ステンレス板及びPE板に25mm×25mmの面積が接するように前記粘着テープサンプルを貼り付け、60℃において1kgの荷重を与えて粘着テープがずれ落ちるまでの時間を測定した。
保持力の測定値(分)が、10.0以上であれば実用上優れた性能、7.5以上であれば実用上十分な性能であると判断した。
【0049】
〔(4):ブロック共重合体の調製〕
<ポリマー1:2官能カップリングスチレン−ブタジエンブロック共重合体>
攪拌機及びジャケット付きの内容量10Lのステンレス製オートクレーブを、洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン280gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約40℃に設定した。
次に、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で1.5g)を添加し、スチレンの重合を開始した。
スチレンの重合により、最高温度(53℃)に達してから6分後、最高温度から2℃低下した後に、ブタジエン(1,3−ブタジエン)520gを添加し、重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度(89℃)に達してから30秒後に、カップリング剤として安息香酸エチルを添加し、カップリングさせた。
カップリング剤添加より10分後に、水1.6gを加えて失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル−3−(3,5−ジブチル−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、上記ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加して充分混合した。上記の重合溶液をスチームストリッピングするにあたり、クラム化剤として、α−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステルとモノハイドロジエンリン酸エステルとの混合物をストリッピング帯の水に対して30ppm用い、90〜98℃の温度で溶媒を除去した。
溶媒除去槽内のスラリー中の重合体クラムの濃度は約5質量%であった。
次いで、上記で得られたクラム状ブロック共重合体の水分散スラリーを、回転式スクリーンに送り、含水率45質量%の含水クラムを得た。この含水クラムを1軸スクリュー押出機型水絞り機に送り、脱水した重合体を得た。このクラムを85℃での箱型の熱風乾燥機で1時間乾燥し、ポリマー1を得た。
ポリマー1は、スチレンの含有量がポリマー1全体に対して35質量%であり、数平均分子量が8.3万であった。なお、ブタジエン部のビニル結合量は10.4%であった。
また、スチレン−ブタジエン−スチレン構造のブロック共重合体が30質量%、スチレン−ブタジエン構造のブロック共重合体が70質量%含有していた。
【0050】
<ポリマー2:2官能カップリングスチレン−ブタジエンブロック共重合体>
カップリング剤として添加する安息香酸エチルの量をポリマー1の2/3に調整した。その他の条件は、ポリマー1と全く同様の方法でポリマー2を得た。
ポリマー2は、スチレンの含有量がポリマー2全体に対して35質量%であり、数平均分子量が7.4万であった。
また、スチレン−ブタジエン−スチレン構造のブロック共重合体が30質量%、スチレン−ブタジエン構造のブロック共重合体が70質量%含有していた。なお、ブタジエン部のビニル結合量は10.6%であった。
【0051】
<ポリマー3:スチレン−ブタジエンブロック共重合体>
上述したポリマー1の製造方法において、カップリングを行う前段階で水2.3gを加えて失活させた。その他の条件は、ポリマー1と同様の方法でポリマー3を得た。
ポリマー3は、スチレンの含有量がポリマー3全体に対して35質量%であり、数平均分子量が6.2万であった。
また、スチレン−ブタジエン構造のブロック共重合体が100質量%含有していた。なお、ブタジエン部のビニル結合量は10.4%であった。
【0052】
〔(5):ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂成分の調製〕
<ポリマーA:ポリスチレン>
攪拌機及びジャケット付きの内容量10Lのステンレス製オートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン6930g、予め精製したスチレン990gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約70℃に設定した。
次に、n−ブチルリチウムシクロヘサン溶液84mL(濃度0.152g/mL)を添加し、スチレンの重合を開始した。
得られたポリスチレンにオクタデシル−3−(3,5−ジブチル−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオネートを0.3質量部添加し、その後、溶媒を加熱除去してポリマーAを得た。
ポリマーAの重量平均分子量は5,400、分子量分布は1.04であった。
【0053】
〔実施例1〕
ブロック共重合体(ポリマー1)100質量部に対して、ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂成分としてポリマーAを30質量部、粘着付与剤としてアルコンM100(荒川化学工業(株)製)を130質量部、軟化剤として、ダイアナプロセスオイルPW−90(出光興産(株)製を70質量部の配合比で配合し、180℃×30分間、加圧双腕型ニーダー(型式:D0.3−3、(株)森山製作所)で溶融混練し、淡黄色の均一な、ホットメルト型粘接着剤組成物を得た。
なお、粘接着剤組成物には、前記ブロック共重合体(ポリマー1)100質量部に対して、安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを1質量部配合した。
上述した粘接着剤組成物の物性の測定方法に従い、測定した結果、溶融粘度(at.160℃)は7,000mPa・sであり、軟化点は119℃であった。
また、塗工性は良好であり、ループタックは7.5N/15mm、粘着力は6.0N/10mm、保持力は8.1分であり、実用上十分に良好であった。
【0054】
〔実施例2、3〕、〔比較例1〜9〕
下記表1、表2に示す配合に従い、実施例1と同様の方法で、ビニル芳香族化合物を主体とする樹脂成分には、ポリマーB(市販品:ポリαメチルスチレン(重量平均分子量:3,950、分子量分布:2.63、クリスタレックス5140:理化ハーキュレス(株)製))、ポリマ
ーC(市販品:ポリスチレン(重量平均分子量:13,900、分子量分布:2.79、ハイマーST120:三洋化成工業(株)製))、粘着付与剤にはアルコンM100、軟化剤にはダイ
アナプロセスオイルPW−90を使用して、それぞれ粘接着剤組成物を作製し、特性を評価した。
なお、30分混練してもトルクが安定しない場合は、トルクが安定するまで混練した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
実施例1〜3の粘接着剤組成物は、いずれもループタック(粘着性)、粘着力、保持力の各粘接着剤特性が良好で、かつこれらの性能バランスに優れ、溶解性、加熱安定性及び塗工性にも優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の粘接着剤組成物は、各種粘着テープ・ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、表面保護シート・フィルム、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊、接着剤等に利用でき、特に、粘着性テープ用、粘着性シート・フィルム用、粘着性ラベル用、表面保護シート・フィルム用、衛生材料用の粘接着剤用として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1)を含むブロック共重合体:100質量部と、
重量平均分子量が1,000〜9,000、分子量分布が1.02〜2.0であるビニル芳香族化合物を主体とする樹脂:10〜100質量部と、
粘着付与剤:20〜300質量部と、
軟化剤:1〜150質量部と、
を、含有する粘接着剤組成物。
【請求項2】
前記ビニル芳香族単量体単位がスチレンであり、
前記共役ジエン単量体単位がブタジエン及び/又はイソプレンである請求項1に記載の粘接着剤組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体が、
少なくとも2個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1):10〜90質量%と、
1個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と1個の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(1´):90〜10質量%と、
を、含有する、請求項1又は2に記載の粘接着剤組成物。

【公開番号】特開2013−82793(P2013−82793A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222885(P2011−222885)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(000228109)日本エラストマー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】