説明

粘着テープ、その貼設方法、及び粘着テープを用いた配線設備のメンテナンス方法

【課題】特別な器具を必要とせず、粘着テープの両端に折り曲げたタブ部分を作成し、配線工事やメンテナンス時の作業性を向上する
【解決手段】テープ状の基材2と、この基材2の一方の面に形成された粘着面2aとを有する粘着テープ1であって、基材2に、基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で容易に粘着テープを切り離すことができる筋目4が形成されている。そして、巻回体20の積層表面から基材2を切り離す際、基材2の剥離させた先端部分20aを筋目4に直交するように折り曲げて、粘着面2a同士が貼り合わされた折曲部6を形成し、折曲部6を横断する前記筋目4aに沿って切断しする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に貼り付ける粘着テープ、その貼設方法、及び粘着テープを用いた配線設備のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サーバー類やネットワークの配線工事やメンテナンス時において、その作業対象物を明確にするため、対象物以外のサーバー又は、ケーブル等の範囲にマスキングテープ等の粘着テープを貼り付けして仮留めし、対象物以外の誤操作を防止する手法が行われている。しかし、この仮留め終了後、粘着テープを剥離する場合に、この粘着テープが粘着面の全面が対象物に貼り付けられていると、粘着テープを掴む部分がなく、粘着テープを対象物から剥離することが困難となっていた。
【0003】
このような粘着テープの剥離作業を容易化するために、例えば特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された技術では、この特許文献1に開示された技術は、粘着テープをセットした器具により、ロール状の粘着テープをカットする際に、粘着テープの粘着面同士を折り曲げ状態で粘着して、テープの先端側にタブ部分を形成させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−343642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、テープカット時に、切り離した方の粘着テープには、一方のテープ端にタブ部分を作成することができるものの、他方のテープ端には、タブ部分が作成されることはなく、切離したテープの両端にタブ部分が必要なときには、作業者が他端側にタブ部分を作成する作業を行う必要があり、作業効率の低下を招いていた。また、特許文献1に開示された発明では、粘着テープを器具にセットして作業する必要があり、作業現場の環境によっては、その器具を用いることが作業の繁雑さを増大させる場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、特別な器具を必要とせず、粘着テープの両端に折り曲げたタブ部分を作成し、配線工事やメンテナンス時の作業性を向上することできる粘着テープ、その貼設方法、及び粘着テープを用いた配線設備のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、テープ状の基材と、この基材の一方の面に形成された粘着面とを有する粘着テープであって、基材に、基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目が形成されている。このような発明によれば、テープ状の基材に筋目が形成されているので、作業者が基材を切り離す際、この筋目に沿って、作業者の力を伝達することができ、特別な器具を必要とせず、容易に粘着テープを切り離すことができ、作業効率を向上することができる。
【0008】
上記発明において、筋目は、基材の繊維方向、又はミシン目であることが好ましい。この場合には、筋目は、基材の繊維方向又は、ミシン目であるので、テープ状の基材を切り離す際、作業者は、その筋目に沿って切り離すことで、特別な器具を必要とせず、容易に切り離ができ、作業効率を向上することができる。
【0009】
上記発明において、基材の粘着面と反対側の表面に、筋目と直交する方向に目印線が表示されているが好ましい。この場合には、目印線は、筋目と直交する方向にあるので、その目印線に合わせて、基材の粘着面を貼り合わせることで、基材の重ね合う部分の筋目は、上下で重なり合うようになる。したがって、作業者は、基材が重ね合った場合においても、この重ね合った部分の筋目に沿って基材を巻回体から切り離すことができる。
【0010】
また、他の発明は、テープ状の基材と、この基材の一方の面に形成された粘着面とを有する粘着テープを対象物に貼り付ける貼設方法であって、基材に、基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目を形成するとともに、芯材の表面に巻き付けて積層させた巻回体を形成し、巻回体の積層表面から基材を切り離す際、基材の剥離させた部分を筋目に直交するように折り曲げて、粘着面同士が貼り合わされた折曲部を形成し、折曲部を横断する筋目に沿って切断し、基材の剥離された部分を巻回体から切り離し、切り離された基材のうち、少なくとも折曲部の近傍部分を対象物に貼り付けることを特徴とする。
【0011】
このような発明によれば、巻回体から剥離させた部分を筋目に直交するように折り曲げて、粘着面同士を貼り合わせるので、この貼り合わされた折曲部を横断する筋目に沿って切断することで、特別な器具を必要とせず、容易に基材を切り離すことができる。また、この貼り合わされた折曲部を横断する筋目に沿って、切断するので、一度の動作で、切り離した基材と、巻回体との端にそれぞれ折曲部を形成させることができ、粘着テープを対象物に貼り付けする貼設時における作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、他の発明は、配線設備のメンテナンス方法であって、テープ状の基材と、この基材の一方の面に形成された粘着面とを有する粘着テープにおいて、基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目を基材に形成するとともに、芯材の表面に巻き付けて積層させた巻回体を形成し、巻回体の積層表面から基材を切り離す際、基材の剥離させた部分を筋目に直交するように折り曲げて、粘着面同士が貼り合わされた折曲部を形成し、折曲部を横断する筋目に沿って切断し、基材の剥離された部分を巻回体から切り離し、切り離された基材のうち、少なくとも折曲部の近傍部分を、メンテナンスの対象外となる範囲に貼り付けて、該剥離された基材により該範囲を覆うことを特徴とする。
【0013】
このような発明によれば、巻回体から剥離させた部分を筋目に直交するように折り曲げて、粘着面同士を貼り合わせるので、この貼り合わされた折曲部を横断する筋目に沿って切断することで、特別な器具を必要とせず、容易に基材を切り離すことができる。また、この貼り合わされた折曲部を横断する筋目に沿って、切断するので、一度の動作で、切り離した基材と、巻回体との端にそれぞれ折曲部を形成させることができ、配線設備のメンテナンス時において、作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、この発明の粘着テープ、及びその貼設方法によれば、特別な器具を必要とせず、粘着テープの両端に折り曲げたタブ部分を形成し、作業性を向上することできる。また、この粘着テープ及びその貼設方法を、例えば配線設備のメンテナンスに応用した場合には、簡単な動作で貼り付け及び引き剥がすことができるため、メンテナンスの対象となっていない範囲を、容易に粘着テープにより封鎖することができ、誤作業を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る粘着テープの構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る粘着テープの基材に折曲部を形成させる動作を示す説明図である。
【図3】実施形態に係る折曲部の筋目の状態を示す説明図である。
【図4】実施形態に係る粘着テープを用いたメンテナンス方法を示す説明図である。
【図5】実施形態に係る粘着テープを用いたメンテナンス方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(粘着テープの構成)
以下に添付図面を参照して、本発明に係る粘着テープの実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る粘着テープの構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、粘着テープ1は、テープ状の基材2と、芯材3とから構成され、芯材3を中心部として、芯材3の表面に基材2を巻き付けて積層させ、巻回体20を形成している。
【0018】
基材2は、一方の面に形成された粘着面2aを有し、対象物と粘着面2aとを接触させることで、粘着テープ1を対象物に貼り付けることができる。この基材2の素材としては、紙、布、フィルム(セロハン、OPP、アセテートなど)等であり、その粘着テープの使用用途に合わせて、適時選択することができる。
【0019】
特に、本実施形態において、基材2には、図1(b)に示すように、基材2の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目4が形成されている。この筋目4は、基材2の繊維方向やミシン目によって形成することができ、この筋目4に沿って、積層された巻回体20から基材2を切離することができるように、方向付けされている。
【0020】
また、基材2には、図1(b)に示すように、粘着面2aの反対側となる表面側に、筋目4と直交する方向に目印線5が印刷されている。この目印線5は、作業者が基材2を折り曲げる際に、その目印となる線である。この目印線5は、例えば、1cm間隔というように、所定の間隔をもって印刷されていることが好ましく、この目印線5を数えることにより、切り離す基材2の長さを目測することができる。
【0021】
(粘着テープの貼設方法)
以上の構成を有する粘着テープ1は、本発明の貼設方法に用いることができる。図2は、本実施形態に係る粘着テープの基材に折曲部を形成させる動作を示す説明図であり、図3は、本実施形態に係る折曲部の筋目の状態を示す説明図である。
【0022】
先ず、図2(a)に示すように、巻回体20の積層表面から基材2を引き剥がし、その剥離させた部分(先端部分20a)を取り出す。なお、図2(a)では、上面が粘着面2aとなっている。次いで、図2(b)に示すように、この巻回体20の積層表面から剥離した部分のうち、先端側部分1bを、筋目4に直交するように折り曲げる。
【0023】
このとき、粘着テープ1の粘着面2aとは、反対側の表面(図2(a)中における下面)に表示されている目印線5に沿って直角に折り曲げ、粘着面2a同士を貼り合わせる。これにより、巻回体20から剥離させた部分には、粘着面2a同士が貼り合わされ、三角形状をなしたタブ状の折曲部6が形成される。
【0024】
次いで、図2(c)に示すように、この折曲部6において、筋目4に沿って引き裂くことにより、先端部分20aを巻回体20から切り離す。詳述すると、この折曲部6では、粘着面2a同士が貼り合わされて、その表面には粘着面がない状態となっており、且つ、図3(a)に拡大して示すように、この折曲部6内では、筋目4が重なり合あった状態となっている。このため、図3(b)に示すように、折曲部6を横断する筋目4aに沿って引き裂くことにより、基材2の剥離された部分を巻回体1aから切り離すことができる。
【0025】
この筋目4aは、折曲部6の底辺(目印線5)に直交し、折曲部6の頂点6aを通るように、折曲部6を横断しているとともに、折曲部6で重なり合った基材2の筋目4は、同一方向となる。このため、筋目4aに沿って引き裂くことにより、容易に巻回体20の積層表面から基材2を切り離すことができる。そして、図2(c)に示すように、巻回体1aの積層表面から切り離された先端部分20aと、巻回体20に残った基材2の先端部分とには、粘着面同士が貼り合わされた折曲部61,62が、それぞれ形成される。
【0026】
その後、切り離された先端部分20aのうち、少なくとも折曲部62の近傍部分を対象物に貼り付ける。この対象物としては、例えば、段ボールなどの梱包体であったり、建設現場におけるマスキング処理の対象物であったり、後述するような配線設備であってもよい。
【0027】
この先端部分20aは、粘着面のない折曲部62が形成されているため、貼り付け時にあっては、作業者の指などに粘着することがなく、貼り付け作業が円滑となり、また、貼り付けた先端部分20aを剥離する時には、折曲部62を摘んで引っ張ることにより、容易に引き剥がすことができる。一方、巻回体20側には、残った基材2の先端部分に折り曲げ部61が形成されているため、次の使用時には、粘着面が作業者の指に粘着することなく、先端部分20aを引き出して切り離すことができ、作業の円滑性が向上される。
【0028】
(配線設備のメンテナンス方法)
以上説明した粘着テープ及びその貼設方法は、例えば、配線設備のメンテナンスで利用することができる。図4〜図6は、本実施形態に係るメンテナンス方法の例を示す説明図である。
【0029】
図4に示す例では、配電盤やサーバーラックなど、複数の基盤101及び102がブレード状に差し込まれて収納される配線設備100において、メンテナンスの対象となっている基盤(ここでは、基盤101)以外の基盤(ここでは、基盤102)に、作業者が触れないようにする場合を示している。このとき、メンテナンスの対象となっていない基盤102を封鎖するように、巻回体20から切り離した基材2を貼設することにより、作業者が誤って基盤102に触れないようにする。
【0030】
このときの基材2は、上述した貼設方法により貼り付けられる。すなわち、前記巻回体20の積層表面から基材2を切り離す際、基材2の剥離させた先端部分20aを筋目4に直交するように折り曲げて、粘着面2a同士が貼り合わされた折曲部6を形成する。次いで、折曲部6を横断する前記筋目4aに沿って切断し、基材2の剥離された先端部分20aを巻回体20から切り離し、メンテナンスの対象外となる基盤102に貼り付けて、基材2により該範囲を覆う。作業後は、貼り付けた基材には、折曲部61を掴むことにより、容易に引き剥がすことができる。
【0031】
また、図5に示すように、多数のケーブル210を、多数の端子201及び202に接続する配電盤200などのメンテナンスにおいても、上述した貼設方法によって、メンテナンスの対象となっている端子(ここでは、端子201)以外の端子(ここでは、端子202)に、作業者が触れないようにすることができる。すなわち、メンテナンスの対象となっていない端子202を封鎖するように、巻回体20から切り離した基材2を貼設し、作業者が端子201に対してのみ作業できるようにし、作業中に、誤って端子202に触れないようにする。
【0032】
(作用効果)
このような本実施形態に係る粘着テープ及びその貼設方法によれば、テープ状の基材2に筋目4が形成されているので、作業者が基材2を切り離す際、この筋目4に沿って、作業者の力を伝達することができ、特別な器具を必要とせず、容易に粘着テープを切り離すことができ、作業効率を向上することができる。
【0033】
すなわち、巻回体20から剥離させた部分を筋目4に直交するように折り曲げて、粘着面2a同士を貼り合わせるので、この貼り合わされた折曲部6を横断する筋目4aに沿って切断することで、特別な器具を必要とせず、容易に基材2の先端部分20aを、巻回体20から切り離すことができる。また、この貼り合わされた折曲部6を横断する筋目4aに沿って切断するので、一度の動作で、切り離した先端部分20a側と、巻回体20側とにそれぞれ折曲部61,62を形成させることができ、粘着テープを対象物に貼り付けする貼設時における作業効率を向上させることができる。
【0034】
特に、本実施形態では、筋目4と直交する方向に目印線5が印刷されていることから、目印線5に合わせて、基材2の粘着面2a同士を貼り合わせることで、折曲部6の筋目4は、上下で重なり合うようになる。したがって、作業者は、基材2が重ね合った場合においても、折曲部6の筋目4aに沿って引き裂くことにより、容易に基材2を巻回体20から切り離すことができる。
【0035】
また、この粘着テープ及びその貼設方法を、例えば配線設備のメンテナンスに応用した場合には、簡単な動作で貼り付け及び引き剥がすことができるため、メンテナンスの対象となっていない範囲を、容易に粘着テープにより封鎖することができ、誤作業を未然に回避することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…粘着テープ
1a…巻回体
1b…先端側部分
2…基材
2a…粘着面
3…芯材
4…筋目
4a…筋目
5…目印線
6…折曲部
6a…頂点
20…巻回体
20a…先端部分
61,62…折曲部
100…配線設備
101,102…基盤
200…配電盤
201,202…端子
210…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の基材と、この基材の一方の面に形成された粘着面とを有する粘着テープであって、前記基材に、該基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目が形成されていることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記筋目は、前記基材の繊維方向であることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記筋目は、ミシン目であることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記基材の前記粘着面と反対側の表面に、前記筋目と直交する方向に目印線が表示されていることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項5】
テープ状の基材と、この基材の一方の面に形成された粘着面とを有する粘着テープを対象物に貼り付ける貼設方法であって、
前記基材に、該基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目を形成するとともに、芯材の表面に巻き付けて積層させた巻回体を形成し、
前記巻回体の積層表面から前記基材を切り離す際、該基材の剥離させた部分を前記筋目に直交するように折り曲げて、前記粘着面同士が貼り合わされた折曲部を形成し、
前記折曲部を横断する前記筋目に沿って切断し、前記基材の剥離された部分を前記巻回体から切り離し、
切り離された基材のうち、少なくとも前記折曲部の近傍部分を前記対象物に貼り付ける
ことを特徴とする粘着テープの貼設方法。
【請求項6】
配線設備のメンテナンス方法であって、
テープ状の基材と、この基材の一方の面に形成された粘着面とを有する粘着テープにおいて、該基材の長手方向に対して一定の傾斜角をもって、所定の間隔で筋目を該基材に形成するとともに、芯材の表面に巻き付けて積層させた巻回体を形成し、
前記巻回体の積層表面から前記基材を切り離す際、該基材の剥離させた部分を前記筋目に直交するように折り曲げて、前記粘着面同士が貼り合わされた折曲部を形成し、
前記折曲部を横断する前記筋目に沿って切断し、前記基材の剥離された部分を前記巻回体から切り離し、
切り離された基材のうち、少なくとも前記折曲部の近傍部分を、前記メンテナンスの対象外となる範囲に貼り付けて、該剥離された基材により該範囲を覆う
ことを特徴とする配線設備のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228891(P2010−228891A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80484(P2009−80484)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(307022424)ソフトバンクテレコム株式会社 (42)