説明

粘着テープロールおよび同粘着テープロールの製造方法ならびに製造装置

【課題】粘着テープを切断するための切れ目を常に一定の位置に形成することができる粘着テープロールの製造技術を提供する。
【解決手段】マザーロール31から繰り出された粘着テープ2を巻き取る巻取ローラ32と、マザーロール31と巻取ローラ32との間に設けられ、粘着テープ2に所定間隔で切れ目4を形成する切れ目形成ローラ33とを有し、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とを所定のギア40を介して同期して回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着面が表側を向くようにして巻回された清掃用の粘着テープロールに関し、さらに詳しく言えば、1周長毎に切断用の切れ目を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
絨毯などに絡みついた毛髪や埃等は、掃除機を用いて吸引しても、繊維同士が絡み合っており、完全に取り除くことは困難である。そこで、この種のゴミを除去する方法として、清掃用の粘着テープロールがある。
【0003】
例えば特許文献1に示すように、この粘着テープロールは、紙などのシート体からなる基材の一方の面に粘着部を形成した粘着テープを、その粘着部が表側に露出するように巻回されたものであって、図示しない専用治具を用いてその粘着面を被清掃対象面としての床面上で転がすことにより、埃等が強制的に除去される仕組みになっている。
【0004】
この種の粘着テープロールは数回使用すると、粘着部に汚れが付着することにより粘着部の粘着力が低下する。したがって、粘着力の低下後は、ミシン目などの切れ目に沿って汚れた面を引き剥がして捨てることにより、再び粘着力が回復され、再使用することができる。
【0005】
従来、この種の切れ目は、例えば押し切り刃を粘着テープロールに差し込むことにより、ミシン目が形成されていたが、押し切り刃でミシン目を形成すると、押し切り刃を引き抜く際に、刃の側面に粘着テープの一部が引っ掛かるように持ち上げられるため、ミシン目部分が他の部分と比べて隆起して、全体がたまねぎ状に変形してしまう場合があった。
【0006】
そこで、この変形を防止するため、レーザー加工で切れ目を形成したり、粘着テープの搬送レール上に回転刃を設けておき、切れ目を形成しながら巻き取る方法などが提案されたが、この種の方法には次のような問題があった。
【0007】
すなわち、レーザー加工ではレーザによって粘着テープの一部が焼き切られるために、焼け焦げなどができて見映えが悪い。また、基材は紙製のため、難燃処理などを施す必要がある。
【0008】
また、回転刃を用いて切れ目を形成する場合、クラッチなどを使って一定周期で回転刃を回転させることで切れ目を形成することは可能であるが、全ての切れ目を同じ位置に配置するためには、1周長毎に増える粘着テープの厚さを考慮しなくてはならず、その分制御が面倒になり、送り速度を遅くするなど生産性が悪くなってしまう。
【0009】
さらに、この種の粘着テープロールには、使用済みの粘着テープを切り離すため、切断用の切れ目がほぼ1周長毎に設けられており、そこから汚れた粘着テープを切り離すことで、未使用の新しい粘着テープが露出するようになっている。
【0010】
しかしながら、表面に髪の毛や糸くずが切れ目を跨ぐように貼り付いていると、粘着テープを切り離すときに、切れ目の途中から粘着テープが縦方向(繰り出し方向)に裂けてしまうことがあり、切り離しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本特許第3272710号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、粘着テープを切断するための切れ目を常に一定の位置に形成することができ、かつ、切り離しやすい粘着テープロールの製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなり、上記粘着テープには、切断用の切れ目が上記粘着テープの繰り出し方向に沿って所定間隔をもって連続的に形成されている粘着テープロールの製造方法において、マザーロールから繰り出された上記粘着テープを巻き取る巻取ローラと、上記マザーロールと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記粘着テープに所定間隔で上記切れ目を形成する切れ目形成ローラとを有し、 上記巻取ローラ側のギアと、上記切れ目形成ローラ側のギアとのギア比が1未満:1で互いの回転が同期されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、n(nは正の整数)周目の円周長をLn、上記巻芯の半径をr、粘着テープの厚さをt、n周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目までの上記粘着テープの長さをLn’、上記巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目の間隔の角度差をθとしたとき、上記ギア同士が以下の式1の条件を満たすように噛み合わされていることを特徴としている。
’=L×(360−θ)/360 ・・・式(1)
ただし、L=2π{r+(n−1)×t}
【0015】
請求項3に記載の発明は、上記請求項2において、上記角度差θは、6°≦θ≦19°または−6°≦θ≦−19°の範囲内であることを特徴としている。
【0016】
本発明には、粘着テープロールの製造装置も含まれる。すなわち、請求項4に記載の発明は、基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなり、上記粘着テープに切断用の切れ目を上記粘着テープの繰り出し方向に沿って所定間隔をもって連続的に形成する粘着テープロールの製造装置において、マザーロールから繰り出された上記粘着テープを巻き取る巻取ローラと、上記マザーロールと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記粘着テープに所定間隔で上記切れ目を形成する切れ目形成ローラとを有し、上記巻取ローラ側のギアと、上記切れ目形成ローラ側のギアとのギア比が1未満:1で互いの回転が同期されていることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明は、上記請求項4において、上記切れ目形成ローラに向けて切断ガイド部材を送り出すガイド部材送出手段をさらに備え、上記切れ目ローラには、切れ目形成用のロータリー刃が設けられており、上記ロータリー刃は、上記切れ目の形成と同時に、上記ガイド部材の一部を切断し、上記切れ目に沿って上記ガイド部材を貼り合わせることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明は、上記請求項4において、n(nは正の整数)周目の円周長をLn、上記巻芯の半径をr、粘着テープの厚さをt、n周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目までの上記粘着テープの長さをLn’、上記巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目の間隔の角度差をθとしたとき、上記ギア同士が以下の式1の条件を満たすように噛み合わされていることを特徴としている。
’=L×(360−θ)/360 ・・・式(1)
ただし、L=2π{r+(n−1)×t}
【0019】
請求項7に記載の発明は、上記請求項6において、上記角度差θは、6°≦θ≦19°または−6°≦θ≦−19°の範囲内であることを特徴としている。
【0020】
本発明には、請求項1ないし3のいずれか1項の粘着テープロールの製造方法を用いて作製された粘着テープロールも含まれる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1および4に記載の発明によれば、基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなり、粘着テープには、切断用の切れ目が上記粘着テープの繰り出し方向に沿って所定間隔をもって連続的に形成されている粘着テープロールの製造方法において、マザーロールから繰り出された上記粘着テープを巻き取る巻取ローラと、上記マザーロールと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記粘着テープに所定間隔で上記切れ目を形成する切れ目形成ローラとを有し、上記巻取ローラと上記切れ目形成ローラとは、巻取ローラ側のギアと切れ目形成ローラ側のギアのギア比を1未満:1で互いの回転が同期されていることにより、切れ目の間隔が周長にして360°以上となるため、使用済みの粘着面と、その境界部分を含めた粘着テープの一部を除去することで、未使用の粘着テープロールを全周に露出させることができる。
【0022】
請求項2および6に記載の発明によれば、n(nは正の整数)周目の円周長をLn、上記巻芯の半径をr、粘着テープの厚さをt、n周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目までの上記粘着テープの長さをLn’、上記巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目の間隔の角度差をθとしたとき、上記ギア同士が以下の式1の条件を満たすように噛み合わされている。
’=L×(360−θ)/360 ・・・式(1)
ただし、L=2π{r+(n−1)×t}
これによれば、角度差θを一定とする条件で切れ目を所定間隔で自由に形成することができる。
【0023】
請求項3および7に記載の発明によれば、角度差θは、6°≦θ≦19°または−6°≦θ≦−19°の範囲内であることにより、θが6°未満(θ<6°)もしくは−6°未満(θ<−6°)の場合は、巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目と終端側の切れ目との間隔Δdが2mm以下となってしまうため、粘着力の低下が抑えられずレール引き現象が発生するおそれがある。逆に、θが19°超(θ>19°)もしくは−19°超(θ>−19°)であると、間隔Δdが10mmを越えるため、未使用の粘着テープを無駄に切り捨てることとなり経済的ではない。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、切れ目形成ローラに向けて切断ガイド部材を送り出すガイド部材送出手段をさらに備え、切れ目ローラには、切れ目形成用のロータリー刃が設けられており、ロータリー刃が切れ目の形成と同時に、ガイド部材の一部を切断し、切れ目に沿って上記ガイド部材を貼り合わせることにより、切れ目の形成と同時にガイド部材を貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープロールの模式的な斜視図。
【図2】(a)ギア比が1:1の場合、(b)ギア比が1未満:1および(c)ギア比が1超:1の粘着テープの切れ目構造を説明する説明図。
【図3】上記粘着テープロールの製造方法を説明するための説明図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る粘着テープロールの部分拡大断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る粘着テープロールの製造装置の模式図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る粘着テープロールの製造方法を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこの限りではない。図1に示すように、この粘着テープロール1は、テープ基材21のゴミ取り用の粘着面22が形成された粘着テープ2を有し、その粘着面22が表側(外側)を向くように巻芯3に沿ってロール状に巻回したものからなる。
【0027】
この例において、巻芯3はボール紙などの紙製巻芯が用いられているが、これ以外に合成樹脂製の巻芯であってもよい。さらには、巻芯3を用いることなく粘着テープロール1を巻回する、いわゆるコアレス構造であってもよく、本発明において、巻芯3の構成は任意である。
【0028】
テープ基材21は、例えば紙製で裏面には、テープ基材21の補強と、次層に対する剥離用としての図示しないラミネートフィルムが設けられている。本発明において、ラミネートフィルムの有無やその材質などについては任意的事項であり、例えば樹脂フィルムをテープ基材21として用いることにより、ラミネートフィルムは不要となる。
【0029】
粘着面22には、所定の粘着剤塗工によって形成された粘着剤が一様に塗布されておりその両端には、粘着性を持たない非粘着部23,23が設けられている。本発明において、粘着面の粘着剤の種類や形状、塗布方法や塗布条件などは任意であってよい。
【0030】
この例において、粘着面22は、粘着テープ2の繰り出し方向に沿って延在するいわゆるベタ塗りの粘着剤層からなるが、例えばスジ状やドット状などの複雑な形状に形成されていてもよい。さらには、2種類以上の粘着剤を組み合わせてベタ塗りの粘着剤層の上にストライプ状の粘着剤層を積層するなどしてもよく、粘着面22の構成は仕様に応じて任意に変更可能である。
【0031】
粘着テープ2には、粘着テープ2を所定の間隔で切断するための切れ目4が設けられている。切れ目4は、切断部と未切断部とが交互に連続して形成された、いわゆるミシン目であって、この例では粘着テープ2の幅方向に沿って直線上に形成されている。
【0032】
この例において、切れ目4は、切断部と未切断部とが交互に連続するミシン目からなるが、これ以外に例えばマイクロカットなどがもちいられてもよく、粘着テープ2の他の部分と比べて脆弱になっていて、手などで簡単に切断することができれば、その形態は任意である。
【0033】
切れ目4は、粘着テープ2をロール状に巻回した際に、ほぼ1周長毎に形成されている。
すなわち、最外層の切れ目4aと、次層の切れ目4bとは所定の間隔Ln’をもって配置されている。間隔Lは、粘着テープ2の巻数によって変化する。
【0034】
すなわち、n(nは正の整数)周目の円周長をLn、上記巻芯の半径をr、粘着テープの厚さをt、n周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目までの上記粘着テープの長さをLn’、上記巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目の間隔の角度差をθとしたとき、
上記ギア同士が以下の式1の条件を満たすように噛み合わされている。
’=L×(360−θ)/360 ・・・式(1)
ただし、L=2π{r+(n−1)×t}
【0035】
すなわち、θ=0°とした場合には、図2(a)に示すように、ロール状に巻回された粘着テープ2の一定の位置に切れ目4が半径方向に沿って直線上に並ばせることができる。これによれば、押し切り刃などによって切れ目4を形成した場合に粘着テープロール1がタマネギ状に変形するのを効果的に防止でき、粘着テープ2を無駄なく使い切ることができる。
【0036】
θ>0°とした場合には、図2(b)に示すように、粘着テープ2の最外層の切れ目4aから次層の切れ目4bが+Δdだけずれた位置、すなわち、粘着テープ2の周長にして360°未満の位置に切れ目4が形成されることで、いわゆる逆段差構造となる。
【0037】
これによれば、次層の粘着テープ2の先端に前の粘着テープの使用済み粘着面が表れるため、粘着テープ2の先端部分の粘着力を弱めることができ、新しい粘着面を床に頃がした際に生じやすいレール引き現象を抑えることができる。
【0038】
θ<0°とした場合には、図2(c)に示すように、粘着テープ2の最外層の切れ目4aから次層の切れ目4bが−Δdだけずれた位置、すなわち、粘着テープ2の周長にして360°超となる位置に切れ目4が形成されることで、いわゆる順段差構造となる。
【0039】
これによれば、使用済みの粘着面と未使用粘着面の境界部分を含むを除去することができ、未使用の粘着テープロールを確実に全周に露出させることができる。
【0040】
ここで、角度差θは、6°≦θ≦19°もしくは−6°≦θ≦−19°の範囲内、より好ましくは9°≦θ≦12°もしくは−9°≦θ≦−12°の範囲内であることが好ましい。これによれば、θが6°未満(θ<6°)もしくは−6°未満(θ<−6°)の場合は、Δdが2mm以下となってしまうため、粘着力の低下が抑えられずレール引き現象が発生するおそれがある。逆に、θが19°超(θ>19°)もしくは−19°超(θ>−6°)であると、Δdが10mmを越えるため、未使用の粘着テープを無駄に切り捨てることとなり経済的ではない。
【0041】
次に、図3を参照して、切れ目4の形成工程について説明する。図3に示すように、この粘着テープロールの製造装置30は、粘着テープ2のマザーロール31と、マザーロール31から送り出された粘着テープ2を巻き取る巻取ローラ32と、マザーロール31と巻取ローラ32との間の搬送路上に設けられる切れ目形成ローラ33とを備えている。
【0042】
この例において、搬送路上にはさらに、2個の送りローラ34,35と、切れ目形成ローラ33に対向的に配置される受けローラ36とを備えている。この実施形態において、マザーロール31,送りローラ34,35ならびに受けローラ36の具体的な構成は任意であってよい。
【0043】
巻取ローラ32は、図示しない駆動手段によって回転駆動されるローラであって、外周に粘着テープ2が巻き取られるようになっている。この例において、巻取ローラ32は、切れ目4の形成と同時に成形するため、粘着面22が表側を向くように巻回される。
【0044】
切れ目形成ローラ33は、円筒状のローラ本体の一部に切れ目4を成形するための刃板37が一体的に取り付けられており、切れ目形成ローラ33の回転に併せて、刃板37を粘着テープ2に刺入するようになっている。この例において、刃板37は、単純な切れ目4を形成する波打ち刃が用いられているが、より複雑な切れ目4を形成するように加工されていてもよく、刃板37の形状は仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0045】
本発明において、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とはギア40を介して同期して回転するようになっている。すなわち、巻取ローラ32の駆動軸には、3種類のギア41〜43が同軸的に設けられており、切れ目形成ローラ33の駆動軸(ともに図示しない)には、ギア44が同軸的に設けられている。これらギア40は、所定の選択手段を介して選択的に歯合するようになっている。
【0046】
3種類のギア41〜43のうち、1つめのギア41(以下、第1ギア41とする)は、ギア44(以下、第4ギア44とする)とのギア比が1:1となるように形成されており、この例では、第1ギア41および第4ギア44の歯数はともに87枚である。
【0047】
これによれば、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とがギア比:1で同期的に連結されていることにより、上述したθ=0°の場合の切れ目4を簡単に形成することができる。
【0048】
3種類のギア41〜43のうち、2つめのギア(以下、第2ギア42とする)は、第1ギア41よりも外径が大径なギアであって、第4ギア44とのギア比が1超:1となるように形成されている。この例において、第2ギア42の歯数は90枚で、第4ギア44の歯数は87枚である。
【0049】
これによれば、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とがギア比1超:1で同期的に連結され、すなわち、ギア歯比が90:87(角度比では360°:348°)で連結されていることにより、上述したθ>0°となるθ=12°の角度差で逆段差構造の切れ目4を簡単に形成することができる。
【0050】
3種類のギア41〜43のうち、3つめのギア(以下、第3ギア43とする)は、第1ギア41よりも小径なギアであって、第4ギア44とのギア比が1未満:1となるように形成されている。この例において、第3ギア43の歯数は84枚で、第4ギア44の歯数は87枚である。
【0051】
これによれば、巻取ローラと切れ目形成ローラ33とがギア比1未満:1で同期的に連結され、すなわち、ギア歯比が84:87(角度比では348°:360°)で連結されていることにより、上述したθ<0°となるθ=−12°の角度差で順段差構造の切れ目4を簡単に形成することができる。
【0052】
この例において、ギア40は、巻取ローラ32側に3種類のギア41〜43が設けられ、切れ目形成ローラ33側には固定の第4ギア44が設けられているが、巻取ローラ32側に第4ギア44を設け、切れ目形成ローラ33側に3種類のギア41〜43を設けてもよい。
【実施例】
【0053】
次に、本発明のより具体的な実施形態について説明する。巻芯3の半径rを20mm,粘着テープ2の厚さtを0.1mmとし、この粘着テープを90周分巻き付けた場合のθ=0°,θ=+12°およびθ=−12°とした場合の切れ目4の位置を算出した。
【0054】
〔θ=0°の場合〕
θ=0°とした場合、1周目の長さLnは、L=2π{r+(n−1)×t}であるため、125.60mmとなり、Δdのズレを生じない分、粘着テープ2の巻数に応じて長さLn’が徐々に長くなってゆく。その計算結果を表1に示す。これによれば、巻数が増える毎に厚さtの増量分に応じて長さLn’が徐々に長くなり、切れ目4が同じ位置に配置される。
【0055】
【表1】

【0056】
〔θ=+12°の場合〕
θ=+12°とした場合、1周目の長さLnは、L=2π{r+(n−1)×t}であるため、125.60mmとなる。次の2層目は、そのまま計算すると126.228mmとなるが、θ=+12°のズレを設けるためには、L2’=L2×(360−12)/360=122.02mmとなり、Δdが4.208mmとなる。これにより、切れ目4が逆段差となるように形成される。その計算結果を表2に示す(以下、同様)。
【0057】
【表2】

【0058】
〔θ=−12°の場合〕
同様にθ=−12°とした場合、1周目の長さLnは、L=2π{r+(n−1)×t}であるため、125.60mmとなる。次の2層目は、そのまま計算すると126.228mmとなるが、θ=−12°のズレを設けるためには、L2’=L2×(360+12)/360=130.436mmとなり、Δdが−4.208mmとなる。これにより、切れ目4が順段差となるように形成される。その計算結果を表3に示す(以下、同様)。
【0059】
【表3】

【0060】
これによれば、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とのギア比を変えるだけで、切れ目の位置を重ねて配置したり、前後にずらすことができるため、1台の装置で使用に応じた切れ目4を有する粘着テープロール1を簡単に生産することができる。
【0061】
次に、図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態について参照する。なお、上述した実施形態と同一もしくは同一と見なされる箇所には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0062】
この粘着テープロール1aには、粘着テープ2を切れ目4に沿って確実に切断するための切断ガイド部材5が設けられている。この第2実施形態において、切れ目4は、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とがギア比1未満:1となるように、すなわち、ギア43とギア44とを歯合した状態に設定されている。これにより、各切れ目4が周長にして360°超となるように形成された、いわゆる順段差ミシン目が形成される。
【0063】
切断ガイド部材5は、切れ目4の巻芯側(反繰り出し方向)に沿って設けられている。切断ガイド部材5は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)などの合成樹脂フィルムからなる。この例において、切断ガイド部材5は、テープ基材21よりも引き裂き強度が強い樹脂材が用いられいるが、例えば紙などの柔軟な素材などあってもよく、基材21と切断ガイド部材5とを重ね合わせた強度が、基材21単独の強度よりも強靱であればよい。なお、切断ガイド部材5は、切れ目4の位置を一目で把握できるように、例えばオレンジ色などに着色されていることが好ましい。
【0064】
切断ガイド部材5は、幅Wが1〜10mm、より好ましくは2〜5mmの短冊状に形成されている。これによれば、幅Wが1mm未満の場合には、強度が弱くなり、切れ目4に沿って綺麗に切り離せなくなるおそれがある。逆に、幅Wが10mmを越えると、粘着面積が減り、集塵能力が落ちる。
【0065】
この例において、切断ガイド部材5の表面は、未粘着面であるが、切断ガイド部材5の表面に粘着剤を薄く塗布しておき、切断ガイド部材5でも除塵できるようにしてもよい。なお、その場合、粘着テープ2の端部におけるレール引き現象を抑制するため、粘着力を他の部分より弱めておくことが好ましい。
【0066】
これによれば、切断ガイド部材5を切れ目4に沿って設けたことにより、粘着テープ2の端部に髪の毛などが跨ぐように貼り付いても、最外層の粘着テープ2を切れ目4に沿って綺麗に切断でき、剥がし取ることができる。
【0067】
次に、図5および図6を参照して、この粘着テープロール1の製造方法について説明する。なお、この粘着テープロール製造装置は、図示しない筐体を備え、その中に組み込まれている。
【0068】
図5に示すように、粘着テープロール1の製造装置は、上記実施例1と同じく、粘着テープ2のマザーロール31と、マザーロール31から送り出された粘着テープ2を巻き取る巻取ローラ32と、マザーロール31と巻取ローラ32との間の搬送路上に設けられる切れ目形成ローラ33とを備えており、巻取ローラ32と切れ目形成ローラ33とが、ギア43,44を介して互いに同期回転するように連結されている。これらの基本的な構造は、上記第1実施形態と同一である。
【0069】
この製造装置には、切断ガイド部材5を粘着テープ2に向けて送り出す送出手段80が設けられている。送出手段80は、シート状の切断ガイド部材5a(切断ガイド部材シート5a)が巻回された切断ガイド部材の原反ロール81と、同原反ロール81から切れ目形成手段70に向けて切断ガイド部材シート5aを送り出す搬送ローラ82,83と、切断ガイド部材シート5aをガイドするガイド板84とを備えている。
【0070】
搬送ローラ82,83は、図示しない駆動手段によって回転駆動され、切断ガイド部材シート5aを切れ目形成ローラ33に向けて一定の間隔で所定の幅(W:1〜10mmとなるように)送り出す。この例において、搬送ローラ82,83の上流側には補助ローラ85,86が設けられている。
【0071】
ガイド板84は、一端(上流側)が搬送ローラ82,83の出口側に向けて配置され、他端がを切れ目形成ローラ33の入口側に向けて斜めに配置された、いわゆる滑り台からなり、その上面に沿って切断ガイド部材シート5aがガイドされる。
【0072】
ガイド板84の先端841(図3ではロータリー刃331側)は、ロータリー刃331および送りローラ36に向けて切断ガイド部材シート5aをほぼ水平に送り出すように湾曲されている。
【0073】
これによれば、ガイド板84によってガイドされた切断ガイド部材シート5aの先端を確実にロータリー刃331と送りローラ36の間に導くことができ、粘着面22に切断ガイド部材シート5aを貼り付けることができる。
【0074】
次に、図6(a)〜(c)を参照して、切断ガイド部材5の形成手順の一例について説明する。まず初期設定として、粘着テープ2を予めテープ搬送路に沿ってセットし、その先端を巻き取りローラ32の巻芯(図示しない)に固定する。
【0075】
また、切断ガイド部材シート5aを搬送ローラ82,83の搬送路上にセットし、その先端をガイド板84の先端部841まで引き出しておく。さらに、切断ガイド部材5の形成幅Wを(この例ではW:1〜10mm)設定する。
【0076】
初期設定が完了したのち、図示しないスタートボタンを操作すると、制御手段は、図示しない駆動手段を駆動し、これにより、粘着テープ2が巻き取りローラ32に沿って徐々に巻き取られ始める。
【0077】
図6(a)に示すように、粘着テープ2がほぼ1周長の一定長さに繰り出されると、制御手段は搬送ローラ82,83に指令を出し、これを受けて、搬送ローラ82,83は、予め設定された設定値に基づいて切断ガイド部材シート5aを所定長さ繰り出す。
【0078】
繰り出され切断ガイド部材シート5aは、ガイド板84に沿って移動してゆき、図6(b)に示すように、切れ目形成ローラ33と送りローラ36との間に送り込まれる。このとき、切断ガイド部材シート5aは、その先端が粘着テープ2の粘着面22に沿って貼り合わせられながらロール間に導き入れられる。
【0079】
切れ目形成ローラ33がさらに回転し、ロータリ刃331が真下に到来すると、その先端が粘着テープ2内に差し込まれ、切れ目4を形成すると同時に切断ガイド部材シート5aが切断される。
【0080】
さらに、送りローラ36が回転をすると、図6(c)に示すようにほぼ切断された切断ガイド部材5は、切れ目4に沿って粘着テープ2に貼り合わせられた状態で引き剥がされ、粘着テープ2とともに巻き取り側に巻き取られてゆく。
【0081】
その際、搬送ローラ82,83は、上記切れ目形成ローラ33と同期されていることにより、毎回、異なる位置に形成される切れ目4に沿って切断ガイド部材5を確実に貼着することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 粘着テープロール
2 粘着テープ
3 巻芯
4 切れ目
5 切断ガイド部材
30 粘着テープロール製造装置
31 マザーロール
32 巻取ローラ
33 切れ目成形ローラ
40 ギア
80 送出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなり、上記粘着テープには、切断用の切れ目が上記粘着テープの繰り出し方向に沿って所定間隔をもって連続的に形成されている粘着テープロールの製造方法において、
マザーロールから繰り出された上記粘着テープを巻き取る巻取ローラと、上記マザーロールと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記粘着テープに所定間隔で上記切れ目を形成する切れ目形成ローラとを有し、 上記巻取ローラ側のギアと、上記切れ目形成ローラ側のギアとのギア比が1未満:1で互いの回転が同期されていることを特徴とする粘着テープロールの製造方法。
【請求項2】
n(nは正の整数)周目の円周長をLn、上記巻芯の半径をr、粘着テープの厚さをt、n周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目までの上記粘着テープの長さをLn’、上記巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目の間隔の角度差をθとしたとき、
上記ギア同士が以下の式1の条件を満たすように噛み合わされていることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープロールの製造方法。
’=L×(360−θ)/360 ・・・式(1)
ただし、L=2π{r+(n−1)×t}
【請求項3】
上記角度差θは、6°≦θ≦19°または−6°≦θ≦−19°の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の粘着テープロールの製造方法。
【請求項4】
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなり、上記粘着テープに切断用の切れ目を上記粘着テープの繰り出し方向に沿って所定間隔をもって連続的に形成する粘着テープロールの製造装置において、
マザーロールから繰り出された上記粘着テープを巻き取る巻取ローラと、上記マザーロールと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記粘着テープに所定間隔で上記切れ目を形成する切れ目形成ローラとを有し、上記巻取ローラ側のギアと、上記切れ目形成ローラ側のギアとのギア比が1未満:1で互いの回転が同期されていることを特徴とする粘着テープロールの製造装置。
【請求項5】
上記切れ目形成ローラに向けて切断ガイド部材を送り出すガイド部材送出手段をさらに備え、上記切れ目ローラには、切れ目形成用のロータリー刃が設けられており、上記ロータリー刃は、上記切れ目の形成と同時に、上記ガイド部材の一部を切断し、上記切れ目に沿って上記ガイド部材を貼り合わせることを特徴とする請求項4に記載の粘着テープロールの製造装置。
【請求項6】
n(nは正の整数)周目の円周長をLn、上記巻芯の半径をr、粘着テープの厚さをt、n周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目までの上記粘着テープの長さをLn’、上記巻芯の中心から見たn周目の始端側の切れ目から終端側の切れ目の間隔の角度差をθとしたとき、
上記ギア同士が以下の式1の条件を満たすように噛み合わされていることを特徴とする請求項4に記載の粘着テープロールの製造装置。
’=L×(360−θ)/360 ・・・式(1)
ただし、L=2π{r+(n−1)×t}
【請求項7】
上記角度差θは、6°≦θ≦19°または−6°≦θ≦−19°の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の粘着テープロールの製造装置。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか1項の粘着テープロールの製造方法を用いて作製されたことを特徴とする粘着テープロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−224327(P2011−224327A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209198(P2010−209198)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【分割の表示】特願2010−209013(P2010−209013)の分割
【原出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【特許番号】特許第4805402号(P4805402)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(390003562)株式会社ニトムズ (64)