説明

粘着付与剤及びホットメルト接着剤組成物

【課題】 良好な接着力を維持しつつ、適正な分子量を有する粘着付与剤を使用することで、優れた耐熱クリープ性を発現することができるホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 下記の(i)〜(iii)で規定される共重合体を含む粘着付与剤。
(i)α−メチルスチレンおよびイソプロペニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、スチレンとの共重合体であり、
(ii)スチレンから導かれる構成単位の含有率が50〜80モル%であり、
(iii)軟化点(Tm)が70〜160℃である共重合体
並びに、ベースポリマーと前記の粘着付与剤からなるホットメルト接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着付与剤及びホットメルト接着剤組成物に関する。より詳しくは、ベースポリマーに優れた粘着性を付与する粘着付与剤、及びこの粘着付与剤を添加することにより、良好な接着性が維持され、さらに優れた凝集力を発現することができるホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナプキン、紙おむつ等の衛生材料に塗布して加熱により接着効果を発揮する接着剤としてSIS、SBS、SEBSなどのスチレンブロックコポリマーをベースとし、これに粘着付与樹脂を添加してなるホットメルト接着剤がよく知られている。通常、この種のホットメルト接着剤の粘着付与樹脂には、清潔感を得るため各種水添樹脂およびスチレン系樹脂が配合されている。
【0003】
しかし、この用途に使用される水添樹脂はホットメルト接着剤に配合すると接着力を低下させるという問題点がある。近年、接着力に優れたスチレン系樹脂が使用される様になったが、更に高い耐熱クリープ性を持ったホットメルト接着剤が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、適正な分子量を有する特定のスチレン共重合系粘着付与剤を添加することで、優れた接着力及び耐熱クリープ性を発現することができるホットメルト接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の課題を検討し、特定の共重合体を含む粘着付与剤をベースポリマーに添加することにより、目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の粘着付与剤及びホットメルト接着剤を提供するものである。
[1]下記の(i)〜(iii)で規定される共重合体を含む粘着付与剤(B)。
(i)α−メチルスチレンおよびイソプロペニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、スチレンとの共重合体であり、
(ii)スチレンから導かれる構成単位の含有率が50〜80モル%であり、
(iii)軟化点(Tm)が70〜160℃である共重合体
[2]前記共重合体が、軟化点(Tm(℃))と重量平均分子量(Mw)との関係が下記の式(1)を満足する共重合体である[1]に記載の粘着付与剤(B)。
Tm<0.027×Mw+44.965 (1)
[3]共重合体の重量平均分子量(Mw)が1000〜5000である[1]に記載の粘着付与剤(B)。
[4]ベースポリマー(A)100重量部と[1]に記載の粘着付与剤(B)10〜300重量部からなるホットメルト接着剤組成物。
[5]ベースポリマー(A)が、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体及び/又はその水添物である[4]に記載のホットメルト接着剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘着付与剤は、ベースポリマーに添加した場合、他のスチレン系単独又は各共重合体と比べ良好な接着性を維持したまま、同一軟化点で比較すると優れた耐熱クリープ性を発現させることができる。
【0008】
また、本発明のホットメルト接着剤組成物は、他のスチレン系単独又は各共重合体と比べ良好な接着性を維持したまま、同一軟化点で比較すると優れた耐熱クリープ性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の粘着付与剤(B)の成分である共重合体は、α−メチルスチレンおよびイソプロペニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、スチレンとの共重合体である。
【0011】
前記共重合体中の、スチレンから導かれる構成単位の含有率は50〜80モル%の範囲であり、好ましくは55から70モル%である。スチレンから導かれる構成単位の含有率がこの範囲であれば、ホットメルト接着剤組成物は、接着強度を保ったまま耐熱クリープ性が向上する。
【0012】
また、前記共重合体の軟化点(Tm)(JIS K 2207に規定された環球法により測定される軟化点)は70〜160℃、好ましくは80〜150℃である。軟化点がこの範囲であれば、ホットメルト接着剤組成物は、接着強度を保ったまま耐熱クリープ性が向上する。
【0013】
さらに、前記共重合体は、軟化点(Tm(℃))と重量平均分子量(Mw)との関係が下記の式(1)を満足する共重合体が好ましく、この関係式を満足すれば、ホットメルト接着剤組成物は接着強度を保ったまま、さらに耐熱クリープ性が向上する。
Tm<0.027×Mw+44.965 (1)
【0014】
また、前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000〜5000である。
【0015】
本発明で用いられる、α−メチルスチレンおよびイソプロペニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーとスチレンとの共重合体は、触媒の存在下にモノマーを重合反応させることにより得ることができる。
【0016】
重合に用いられる触媒としては、一般にフリーデルクラフツ触媒として知られているものなどがあげられ、例えば塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ジクロルモノエチルアルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、三フッ化ホウ素などの各種錯体等をあげることができる。触媒の使用量はモノマーの合計に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。
【0017】
また重合反応の際に、反応熱の除去や反応混合物の高粘度化の抑制等のために、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒中で重合反応を行うのが好ましい。好ましい炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素またはこれらの混合物;またはこれらとペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素および/またはシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素との混合物などをあげることができる。これらの反応溶媒の使用量は、反応混合物中のモノマーの初期濃度が10〜80重量%となる量が好ましい。
【0018】
重合温度は使用するモノマーや触媒の種類および量などにより適宜選択できるが、通常−30〜+50℃である。重合時間は一般には0.5〜5時間程度であり、通常1〜2時間で重合はほとんど完結する。重合様式としては、回分式または連続式のいずれの方式を採用することもできる。また多段重合を行うこともできる。
【0019】
重合終了後は洗浄して触媒残さを除去するのが好ましい。洗浄液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を溶解したアルカリ水溶液;メタノール等のアルコールなどを用いるのが好ましく、特にメタノールによる洗浄脱灰が好ましい。洗浄終了後は未反応モノマー、重合溶媒などを減圧留去して、本発明で用いる重合体または共重合体を得ることができる。
【0020】
本発明のホットメルト接着剤組成物に使用されるベースポリマー(A)は、ホットメルト接着剤に通常使用されるスチレンブロックポリマーを用いることができるが、特に制限されず、例えば、以下のものを例示することができる。
【0021】
ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体、およびその水添物:具体的には、スチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチレン・イソプレンランダム共重合体、ブタジエン・ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン・ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)、ポリ(α−メチルスチレン)・ポリブタジエン・ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体、およびこれらの水添物、例えば、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)の水添物(SEBS)、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)の水添物(SEPS)等を挙げることができる。
【0022】
これらの重合体は、市販品として入手することができ、また水添品も市販されている。例えば、カリフレックスTR−1101、TR−1107、TR−4113(シェル化学社製)、クレイトンG−6500、G−6521、G−1650、G−1652、G−1657(シェル化学社製)、ソルブレン、水素化ソルブレン(フィリップス社製)等の商品名で上市されているものを例示することができる。
【0023】
本発明の組成物において、これらのベースポリマー(A)は1種単独でも2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明のホットメルト接着剤組成物において、前記のベースポリマー(A)と粘着付与剤(B)との配合割合は、ベースポリマー(A)100重量部に対して、(B)粘着付与剤10〜300重量部の割合であり、ベースポリマー(A)、粘着付与剤(B)の働きがバランス良く発揮され、さらに、良好な接着性を維持したまま、優れた耐熱クリープ性を発現することができる点で、ベースポリマー(A)100重量部に対して、粘着付与剤(B)50〜250重量部割合が好ましい。
【0025】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、前記ベースポリマー(A)、粘着付与剤(B)以外に、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲において、配合剤、例えば、各種ワックス、軟化剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤等を配合することができる。
【0026】
本発明のホットメルト接着剤組成物の調製は、前記ベースポリマー(A)、粘着付与剤(B)、ならびに必要に応じて、前記各種の成分を、所定の配合割合でブラベンダー等の混合機に供給し、加熱して溶融混合し、これを所望の形状、例えば、粒状、フレーク状、棒状等に成形することによって行うことができる。
【0027】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、これを加熱溶融して、不織布、クラフト紙、アルミ箔、ポリエステルフィルム等の被塗布体に、通常の方法によって塗布してホットメルト接着剤層を形成し、使用に供することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等制限されるものではない。
【0029】
各実施例および比較例における測定方法は以下の通りである。
【0030】
分子量:テトラヒドロフランを溶媒としてGPC法により測定した。
【0031】
軟化点(Tm):JIS K 2207に規定された環球法により測定した。
【0032】
実施例1
<粘着付与剤の合成>
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとα−メチルスチレンとのモル比は60/40の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・α−メチルスチレン共重合体(1)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(1)は軟化点(Tm)=124℃、数平均分子量(Mn)=1670、重量平均分子量(Mw)=3360、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は58/42モル%であった。結果を表1に示す。
【0033】
<ホットメルト接着剤の合成>
ベースポリマーとしてスチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体の水添物(シェル化学製、クレイトンG−1657)100重量部に対して粘着付与樹脂としてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(1)を200重量部の割合で配合し、ラボプラストミルを使用して180℃で15分混練しホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0034】
<ホットメルト接着剤の性能評価>
得られたホットメルト接着剤組成物をアルミ箔(50μm)に厚さ25μmに塗工し、次いで塗工面同士を張り合わせ、上部バー120℃,下部バー120℃、3kg/cm2 ,10秒加熱の条件でヒートシールし、さらに25mm幅に切断し、接着試料を作成した。この接着試料を、0℃〜80℃の測定温度下でT型剥離試験に供し、接着強度を測定した(引張速度:300mm/min)。また、この接着試料に500gの荷重をかけ、昇温速度25℃/hrの雰囲気下で荷重の落下温度を測定し、耐熱クリープ性を測定した。接着強度,耐熱クリープ性の測定結果を表2に示した。
【0035】
実施例2
<粘着付与剤の合成>
実施例1と同様な装置、方法で触媒の供給量を108ミリリットル/時間とすることでスチレン・α−メチルスチレン共重合体(2)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(2)は軟化点(Tm)=136℃、数平均分子量(Mn)=2300、重量平均分子量(Mw)=4700、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は57/43モル%であった。結果を表1に示す。
【0036】
実施例3
<粘着付与剤の合成>
実施例1と同様な装置、方法でスチレンとα−メチルスチレンとのモル比を70/30とし、触媒の供給量を81ミリリットル/時間とすることでスチレン・α−メチルスチレン共重合体(3)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(4)は軟化点(Tm)=123℃、数平均分子量(Mn)=1840、重量平均分子量(Mw)=3700、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は66/34モル%であった。結果を表1に示す。
【0037】
実施例4
<粘着付与剤の合成>
(1)スチレン・イソプロペニルトルエン共重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、イソプロペニルトルエンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとイソプロペニルトルエンとのモル比は70/30の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は81ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・イソプロペニルトルエン共重合体(4)を得た。得られたスチレン・イソプロペニルトルエン共重合体(4)は軟化点(Tm)=122℃、数平均分子量(Mn)=1730、重量平均分子量(Mw)=3450、樹脂中のスチレン/イソプロペニルトルエン比は56/44モル%であった。結果を表1に示す。
【0038】
実施例5
<粘着付与剤の合成>
重合温度を15℃とし、触媒の供給量を112ミリリットル/時間とした以外は実施例1と同様な装置、方法でスチレン・α−メチルスチレン共重合体(5)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(5)は軟化点(Tm)=98℃、数平均分子量(Mn)=1160、重量平均分子量(Mw)=2260、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は59/41モル%であった。結果を表1に示す。
【0039】
実施例2〜5の<ホットメルト接着剤の合成>
ベースポリマーとしてスチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体の水添物(シェル化学製、クレイトンG−1657)100重量部に対して粘着付与樹脂としてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(1)を200重量部の割合で配合し、ラボプラストミルを使用して180℃で15分混練しホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0040】
実施例2〜5の<ホットメルト接着剤の性能評価>
実施例1と同様に、得られたホットメルト接着剤組成物をアルミ箔(50μm)に厚さ25μmに塗工し、次いで塗工面同士を張り合わせ、上部バー120℃,下部バー120℃、3kg/cm2 ,10秒加熱の条件でヒートシールし、さらに25mm幅に切断し、接着試料を作成した。この接着試料を、0℃〜80℃の測定温度下でT型剥離試験に供し、接着強度を測定した(引張速度:300mm/min)。また、この接着試料に500gの荷重をかけ、昇温速度25℃/hrの雰囲気下で荷重の落下温度を測定し、耐熱クリープ性を測定した。接着強度,耐熱クリープ性の測定結果を表2に示した。
【0041】
比較例1
<粘着付与剤の合成>
(1)スチレン・α−メチルスチレン共重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとα−メチルスチレンとのモル比は40/60の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・α−メチルスチレン共重合体(6)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(6)は軟化点(Tm)=125℃、数平均分子量(Mn)=1580、重量平均分子量(Mw)=2680、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は37/63モル%であった。結果を表1に示す。
【0042】
比較例2
<粘着付与剤の合成>
(1)スチレン・α−メチルスチレン共重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとα−メチルスチレンとのモル比は20/80の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・α−メチルスチレン共重合体(7)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(7)は軟化点(Tm)=120℃、数平均分子量(Mn)=1100、重量平均分子量(Mw)=1930、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は19/81モル%であった。結果を表1に示す。
【0043】
比較例3
<粘着付与剤の合成>
(1)スチレン・α−メチルスチレン共重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとα−メチルスチレンとのモル比は85/15の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は81ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・α−メチルスチレン共重合体(8)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(8)は軟化点(Tm)=120℃、数平均分子量(Mn)=1840、重量平均分子量(Mw)=3860、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は82/18モル%であった。結果を表1に示す。
【0044】
比較例4
<粘着付与剤の合成>
(1)イソプロペニルトルエン・α−メチルスチレン共重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、イソプロペニルトルエン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。イソプロペニルトルエンとα−メチルスチレンとのモル比は50/50の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、イソプロペニルトルエン・α−メチルスチレン共重合体(9)を得た。得られたイソプロペニルトルエン・α−メチルスチレン共重合体(9)は軟化点(Tm)=122℃、数平均分子量(Mn)=1210、重量平均分子量(Mw)=2060、樹脂中のイソプロペニルトルエン/αメチルスチレン比は51/49モル%であった。結果を表1に示す。
【0045】
比較例5
<粘着付与剤の合成>
(1)イソプロペニルトルエン単独重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、イソプロペニルトルエンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。イソプロペニルトルエンおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、イソプロペニルトルエン単独重合体(10)を得た。得られたイソプロペニルトルエン単独重合体(10)は軟化点(Tm)=120℃、数平均分子量(Mn)=1060、重量平均分子量(Mw)=1600であった。結果を表1に示す。
【0046】
比較例6
<粘着付与剤の合成>
(1)α−メチルスチレン単独重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。α−メチルスチレンおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、α−メチルスチレン単独重合体(11)を得た。得られたα−メチルスチレン単独重合体(11)は軟化点(Tm)=120℃、数平均分子量(Mn)=1300、重量平均分子量(Mw)=2320であった。結果を表1に示す。
【0047】
比較例7
<粘着付与剤の合成>
(1)スチレン・α−メチルスチレン共重合体の調製
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとα−メチルスチレンとのモル比は40/60の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は117ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・α−メチルスチレン共重合体(12)を得た。得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(12)は軟化点(Tm)=98℃、数平均分子量(Mn)=960、重量平均分子量(Mw)=1810、樹脂中のスチレン/αメチルスチレン比は39/61モル%であった。結果を表1に示す。
【0048】
比較例1〜7の<ホットメルト接着剤の合成>
実施例1と同様に、ベースポリマーとしてスチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体の水添物(シェル化学製、クレイトンG−1657)100重量部に対して粘着付与樹脂としてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(1)を200重量部の割合で配合し、ラボプラストミルを使用して180℃で15分混練しホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0049】
比較例1〜7の<ホットメルト接着剤の性能評価>
実施例1と同様に、得られたホットメルト接着剤組成物をアルミ箔(50μm)に厚さ25μmに塗工し、次いで塗工面同士を張り合わせ、上部バー120℃,下部バー120℃、3kg/cm2 ,10秒加熱の条件でヒートシールし、さらに25mm幅に切断し、接着試料を作成した。この接着試料を、0℃〜80℃の測定温度下でT型剥離試験に供し、接着強度を測定した(引張速度:300mm/min)。また、この接着試料に500gの荷重をかけ、昇温速度25℃/hrの雰囲気下で荷重の落下温度を測定し、耐熱クリープ性を測定した。接着強度,耐熱クリープ性の測定結果を表2に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の粘着付与剤は、ベースポリマーに添加した場合、他のスチレン系単独又は各共重合体と比べ良好な接着性を維持したまま、優れた耐熱クリープ性を発現させることができるので、産業上有用である。





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(i)〜(iii)で規定される共重合体を含む粘着付与剤(B)。
(i)α−メチルスチレンおよびイソプロペニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、スチレンとの共重合体であり、
(ii)スチレンから導かれる構成単位の含有率が50〜80モル%であり、
(iii)軟化点(Tm)が70〜160℃である共重合体
【請求項2】
前記共重合体が、軟化点(Tm(℃))と重量平均分子量(Mw)との関係が下記の式(1)を満足する共重合体である請求項1に記載の粘着付与剤(B)。
Tm<0.027×Mw+44.965 (1)
【請求項3】
共重合体の重量平均分子量(Mw)が1000〜5000である請求項1に記載の粘着付与剤(B)。
【請求項4】
ベースポリマー(A)100重量部と請求項1に記載の粘着付与剤(B)10〜300重量部からなるホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
ベースポリマー(A)が、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体及び/又はその水添物である請求項4に記載のホットメルト接着剤組成物。



【公開番号】特開2007−131706(P2007−131706A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324807(P2005−324807)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】