説明

粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材

【課題】耐光漏れ性および耐久性に優れる粘着層を形成できる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】0〜9質量部のカルボキシル基含有モノマー、0〜1.8質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.9〜89.2質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり(ただし、カルボキシル基含有モノマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーとの合計量は0質量部ではない)、重量平均分子量が100万〜200万である(メタ)アクリル系共重合体100質量部;およびカルボジイミド系架橋剤0.05〜5質量部を含む粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。さらに詳細には、本発明は、耐熱性および柔軟性に優れる粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL装置などのフラットパネルディスプレイ(FPD)の使用が拡大している。これに伴い、FPDに使用される粘着剤の耐久性の向上が求められている。また、粘着剤がLCDに使用される場合、偏光板の収縮による光漏れを防ぐというような特性も求められてきている。
【0003】
特許文献1には、アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とし、イソシアネート基と反応可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体組成物とイソシアネート基を含有するカルボジイミド化合物を含む粘着剤組成物が開示されている。上記特許文献1によれば、前記イソシアネート基と反応可能なエチレン性不飽和単量体は、共重合体組成物を基準に、(イ)(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体2〜6重量%、(ロ)カルボキシル基含有単量体0.5〜1重量%からなることが記載される。上記特許文献1の粘着剤組成物は、架橋速度が速く、高い凝集力と強い接着力を有するため、ガラス、陶磁器、タイル等の無機材質に貼着するのに適し、凝集力の立ち上がりが速く常態での接着力、耐水性、耐湿性に優れ、更に高温でのふくれや浮きが発生しない耐熱性、および被着体から剥がす際に糊残りがないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4067173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている粘着剤組成物から形成される粘着層を特に偏光板に用いた場合、経時的に剥がれ等の不具合が発生するなど耐光漏れ性および耐久性に劣るという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、耐光漏れ性および耐久性に優れる粘着層を形成できる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の組成を有する(メタ)アクリル系共重合体と、カルボジイミド系架橋剤とを含有する粘着剤組成物が、優れた耐光漏れ性および耐久性を発現させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、0〜9質量部のカルボキシル基含有モノマー、0〜1.8質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.9〜89.2質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり(ただし、カルボキシル基含有モノマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーとの合計量は0質量部ではない)、重量平均分子量が100万〜200万である(メタ)アクリル系共重合体 100質量部;およびカルボジイミド系架橋剤 0.05〜5質量部を含む粘着剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着性組成物は、優れた柔軟性および耐久性を有する。よって、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着層は、経時的な偏光板の収縮に追従しうるような柔軟性を有するため、優れた耐光漏れ性を有する。加えて、本発明の粘着剤組成物は優れた耐久性を有するため、加熱処理や高湿処理により粘着層の浮きや剥がれがほとんど生じない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、0〜9質量部のカルボキシル基含有モノマー、0〜1.8質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.9〜89.2質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり(ただし、カルボキシル基含有モノマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーとの合計量は0質量部ではない)、重量平均分子量が100万〜200万である(メタ)アクリル系共重合体 100質量部;およびカルボジイミド系架橋剤 0.05〜5質量部を含む粘着剤組成物である。本発明は、(メタ)アクリル系共重合体を構成するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの量を、当該共重合体のモノマー全量に対して、1.8質量%以下とすることを特徴とする。このようにヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの量を制御することで、粘着層に経時的な偏光板の収縮に追従しうるような柔軟性を付与することができ、粘着層に優れた耐光漏れ性および耐久性を付与することができる。また、本発明は、架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を使用することを特徴とする。これにより、(メタ)アクリル系共重合体を直鎖状にかつ適度な架橋度で架橋することができ、粘着層に、経時的な偏光板の収縮に追従しうるような柔軟性および耐久性を有する架橋構造を提供でき、粘着層に優れた耐光漏れ性を付与することができる。このため、本発明の粘着剤組成物を使用して形成された粘着層は、光学部材用粘着剤として優れた耐光漏れ性を発現させる。加えて、本発明の粘着剤組成物を使用して形成された粘着層は優れた耐久性を有するため、加熱処理や高湿処理により粘着層の浮きや剥がれがほとんど生じない。
【0011】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0012】
(A)(メタ)アクリル系共重合体
本発明で用いられる(メタ)アクリル系共重合体(以下、単に「成分(A)」とも称する)は、(a−1)カルボキシル基含有モノマー 0〜9質量部、(a−2)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー 0〜1.8質量部、および(a−3)(メタ)アクリル酸エステルモノマー 99.9〜89.2質量部(ただし、カルボキシル基含有モノマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーとの合計量は0質量部ではない)からなる。そして、該(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は100万〜200万である。
【0013】
(a−1)カルボキシル基含有モノマー
本発明に係るカルボキシル基含有モノマー(以下、単に「成分(a−1)」とも称する)は、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和モノマーである。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、以下に制限されないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0014】
これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0015】
本発明において、カルボキシル基含有モノマーの量は、0〜9質量部であり、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.2〜5質量部である。使用量が9質量部を超えると、共重合体(A)中のカルボキシル基が過剰になり、該カルボキシル基とカルボジイミド系架橋剤(B)とが反応してできる架橋点が過度になるため、本発明の粘着剤組成物の柔軟性が低下し、粘着層の耐光漏れ性が低下する。
【0016】
(a−2)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー
本発明に係るヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー(以下、単に「成分(a−2)」とも称する)は、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル系モノマーである。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、以下に制限されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0017】
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0018】
ヒドロキシ基含有アクリル系モノマーの使用量は、0〜1.8質量部であり、好ましくは0.1〜1.5質量部であり、より好ましくは0.1〜1.4質量部である。使用量が1.8質量部を越えると、共重合体(A)中のヒドロキシ基が過剰になり、該ヒドロキシ基とカルボジイミド系架橋剤(B)とが反応してできる架橋点が過度になるため、本発明の粘着剤組成物の柔軟性が低下し、粘着層の耐光漏れ性および耐久性が低下する。
【0019】
(a−3)(メタ)アクリル酸エステルモノマー
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(以下、単に「成分(a−3)」とも称する)は、分子中にヒドロキシ基を有さない(メタ)アクリル酸のエステルである。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、以下に制限されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの量は、99.9〜89.2質量部であり、99.8〜90.5質量部であることが好ましく、99.7〜93.6質量部であることがより好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも重合開始剤を使用する溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、モノマーの合計量100質量部に対して、重合開始剤を好ましくは0.01〜0.50質量部を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度60〜90℃で、3〜10時間反応させることで得られる。前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0023】
必要に応じて、上記成分(a−1)〜(a−3)と共重合可能なその他のモノマーが用いられる。その他のモノマーは特に制限されず、具体的な例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリル系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するアクリル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するアクリル系モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリル系モノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリル系モノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリル系モノマー;p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有するアクリル系ビニルモノマー;、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。これらその他のモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0024】
これらのその他のモノマーの中でも、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
その他のモノマーを使用する場合の使用量は、成分(a−1)〜(a−3)の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましく、0.3〜2質量部であることが特に好ましい。
【0026】
上記各成分を共重合することによって得られる(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は100万〜200万であり、好ましくは110万〜180万であり、より好ましくは120万〜170万である。重量平均分子量が100万未満であると、耐熱性が不足する。一方、重量平均分子量が200万を超えると、タックが低く、貼合性が低下する。なお、本発明において、重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0027】
なお、上記成分(a−1)および成分(a−2)の使用量の合計は、0質量部ではない。すなわち、(メタ)アクリル系共重合体(A)中に、成分(a−1)に由来する構成単位および成分(a−2)に由来する構成単位の少なくとも一方が、必ず含まれていることを意味する。好ましくは、成分(a−1)、成分(a−2)および成分(a−3)の合計量が100質量部となるようにする。
【0028】
上記成分(A)は、単独で使用してもよいし2種以上のポリマーを組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)カルボジイミド系架橋剤
上記成分(A)に加えて、本発明の粘着剤組成物は、カルボジイミド系架橋剤(以下、単に「成分(B)」とも称する)を含む。カルボジイミド系架橋剤は、上記の(メタ)アクリル系共重合体(A)中のヒドロキシ基および/またはカルボキシル基と反応・結合し、架橋構造を形成する。
【0030】
本発明で用いられるカルボジイミド系架橋剤(B)は、特に制限されない。具体的には、例えば、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
【0031】
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。
【0032】
このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
【0033】
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0034】
カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを利用することができる。
【0035】
このような高分子量ポリカルボジイミドは、合成してもよいし市販品を使用してもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられる。その中でもカルボジライト(登録商標)V−01、V−03、V−05、V−07、V−09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0036】
本発明において、成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部である。この範囲にあれば、適度な架橋構造を形成して、優れた耐熱性がさらに達成しうる。上記カルボジイミド架橋剤(B)の配合量が0.05質量部未満であると、十分な架橋構造が形成できず、耐熱性が低下する。一方、5質量部を超えると、架橋反応が進行しすぎて粘着力が低下し、経時的な偏光板の収縮に追従できなくなり、耐光漏れ性および耐久性が低下する。該配合量は、より好ましくは0.1〜4質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
【0037】
(C)イソシアネート系架橋剤
上記成分(A)および(B)に加えて、本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(C)(以下、単に「成分(C)」とも称する)を含むことが好ましい。イソシアネート系架橋剤(C)を添加することにより、得られる粘着層の耐光漏れ性および耐久性がより向上する。
【0038】
本発明で用いられる成分(C)は、特に制限されない。具体的には、例えば、トリアリルイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類;トランスシクロヘキサンー1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6−XDI(水添XDI)、H12−MDI(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート類;上記ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート類;またはこれらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート類などが挙げられる。また、上記イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体も好適に使用することができる。
【0039】
上記成分(C)は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。成分(C)の市販品としては、例えば、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、コロネート(登録商標)2030、コロネート(登録商標)2031(以上、日本ポリウレタン工業株式会社製)、タケネート(登録商標)D−102、タケネート(登録商標)D−110N、タケネート(登録商標)D−200、タケネート(登録商標)D−202(以上、三井化学ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(商標)24A−100、デュラネート(商標)TPA−100、デュラネート(商標)TKA−100、デュラネート(商標)P301−75E、デュラネート(商標)E402−90T、デュラネート(商標)E405−80T、デュラネート(商標)TSE−100、デュラネート(商標)D−101、デュラネート(商標)D−201(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
これら成分(C)の中でも、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、タケネート(登録商標)D110N、デュラネート(商標)24A−100が好ましく、コロネート(登録商標)L、タケネート(登録商標)D110Nがより好ましく、コロネート(登録商標)Lが特に好ましい。なお、これら成分(C)は、単独で使用されてもよいし2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0041】
成分(C)を使用する場合の使用量は、成分(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましい。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物が優れた耐光漏れ性および耐久性を有しうる。該配合量は、より好ましくは0.1〜4質量部、さらに好ましくは0.15〜3質量部である。
【0042】
また、本発明の粘着剤組成物は、上記成分に加えて、シランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤を使用することで、反応性が向上し、架橋物の機械的強度や粘着力を向上させることができる。このようなシランカップリング剤は、特に限定されない。具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基を含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤、ポリイソシアネートなどを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
【0043】
上記シランカップリング剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
これらシランカップリング剤の中でも、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007が好ましく、KBM−403がより好ましい。なお、上記シランカップリング剤は、単独で使用されてもよいし2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0045】
本発明において、上記シランカップリング剤の使用量は、特に制限されない。具体的には、上記シランカップリング剤の配合量は、成分(A)〜成分(C)の合計量 100質量部に対して、好ましくは0〜1質量部、より好ましくは0〜0.5質量部、さらに好ましくは0〜0.1質量部である。この範囲にあれば、優れた耐熱性および接着性を発揮しうる。上記シランカップリング剤(C)の配合量が1質量部を超えると、耐熱性が低下する場合がある。
【0046】
上記シランカップリング剤に加えてまたは上記シランカップリング剤に代えて、本発明の粘着剤組成物は、硬化促進剤、イオン性液体、リチウム塩、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、紫外線遮断剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤および溶剤のような添加剤を含んでもよい。これらのうち、硬化促進剤としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、JCS−50(城北化学工業社製)、フォーメートTK−1(三井化学ポリウレタン社製)等が挙げられる。イオン性液体としては、例えば、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、グアニジニウムイオン、アンモニウムイオン、イソウロニウムイオン、チオウロニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、スルホニウムイオン等のカチオン成分と、アニオン成分としては、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硫酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、蟻酸イオン、蓚酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のアニオン成分と、を有する物質が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(登録商標)1010、イルガノックス(登録商標)1035FF、イルガノックス(登録商標)565(いずれも、チバ スペシャリティ ケミカルズ社製)等が挙げられる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸およびロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂ならびに石油樹脂等が挙げられる。上記添加剤を使用する場合の、添加剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、上記成分(A)〜(C)の合計量 100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
【0047】
本発明の粘着剤組成物は、上記で述べた各成分を一括に混合するか、各成分を順次混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合するなどして、均一な混合物となるように撹拌することにより製造することができる。より具体的には、必要に応じて加温、例えば30〜40℃の温度に加温し、スターラーなどで均一になるまで、例えば10分〜5時間撹拌することにより調製することができる。
【0048】
本発明の粘着剤組成物は、種々の基材の貼り合わせに使用することができる。ここで使用できる基材としては、ガラス、プラスチックフィルム、紙または金属箔等が挙げられる。ガラスとしては、一般的な無機ガラスが挙げられる。プラスチックフィルムにおける、プラスチックとしては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、非結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体および塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。非結晶性ポリオレフィン系樹脂は、通常、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状ポリオレフィンの重合単位を有するものであり、環状オレフィンと鎖状環状オレフィンとの共重合体であってもよい。市販されている非結晶性ポリオレフィン系樹脂として、JSR株式会社の商品名アートン、日本ゼオン株式会社のZEONEX(登録商標)、ZEONOR(登録商標)、三井化学株式会社のAPO、アペル(登録商標)などがある。非結晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムにするには、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。また、紙としては、模造紙、上質紙、クラフト紙、アートコート紙、キャスターコート紙、純白ロール紙、パーチメント紙、耐水紙、グラシン紙および段ボール紙等を挙げることができ。金属箔としては、例えばアルミニウム箔等を挙げることができる。
【0049】
したがって、本発明は、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着層を備える、光学部材をも提供する。
【0050】
光学部材としては、例えば、偏光板、位相差板、プラズマディスプレイ用光学フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどが好ましく挙げられる。このうち、本発明の粘着剤組成物は、偏光板とガラスとの接着性に優れている。もちろん、本発明は、上記の形態に限定されるものではなく、他の部材の接着に使用することも可能である。
【0051】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材の片面あるいは両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいし、剥離フィルム上に粘着剤層を予め形成し、これを光学部材の片面あるいは両面に転写することにより使用されてもよい。
【0052】
本発明の粘着剤組成物の塗工は、従来公知の方法に従えばよく、例えば、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、ベーカーアプリケーターおよびグラビアコーター等の装置を用いる種々の塗工方法が挙げられる。また、本発明の粘着剤組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ)は、使用する基材および用途に応じて選択すればよいが、好ましくは5〜30μmであり、より好ましくは15〜25μmである。
【0053】
本発明の粘着剤組成物の粘度は、特に制限されない。しかしながら、塗工のしやすさ、該組成物から形成される粘着層の膜厚の制御のしやすさなどを考慮すると、25℃における粘度が好ましくは500〜5000mPa・s、より好ましくは1000〜3000mPa・sである。
【0054】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着層は、上記のような粘着剤組成物を架橋して得られるものである。その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着層を基材などに転写することも可能である。この粘着剤組成物の架橋は、通常、温度20〜40℃、相対湿度30〜70%RH、常圧(大気圧)の条件下で静置することにより行われる。
【0055】
本発明の粘着剤組成物は、優れた柔軟性を示すことから、特に偏光板に用いた場合、経時的な偏光板の収縮に追従でき、優れた耐光漏れ性を得ることができる。
【0056】
加えて、本発明の粘着剤組成物は優れた耐久性を有するため、加熱処理や高湿処理により粘着層の浮きや剥がれがほとんど生じない。
【実施例】
【0057】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0058】
なお、合成例で得られた重合体溶液の固形分および粘度、ならびに重合体(A)の重量平均分子量の測定は、以下の方法で行った。
【0059】
<固形分>
重合体溶液 約1gを、精秤したガラス皿に精秤する。105℃で1時間乾燥した後室温に戻し、ガラス皿と残存固形分との合計の質量を精秤する。ガラス皿の質量をX、乾燥する前のガラス皿とポリマー溶液との合計の質量をY、ガラス皿と残存固形分との合計の質量Zとして、下記数式1により固形分を算出した。
【0060】
【数1】

【0061】
<粘度>
ガラス瓶に入れたポリマー溶液を25℃に温調し、B型粘度計により測定した。
【0062】
<重量平均分子量>
下記表1の測定方法・測定条件により測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
(合成例1)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、n−ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)99質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社日本触媒製)1質量部、および酢酸エチル120質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら65℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04質量部を加え、65℃を維持しつつ6時間重合を行った。重合反応終了後、酢酸エチル 280質量部を加えて希釈を行い、重合体(サンプル名:A−1)の溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分は20質量%、粘度は4500mPa・sであった。また、得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は160万であった。
【0065】
(合成例2〜18)
合成例1において、単量体成分の組成を、表1に示されるような組成に変更したことを除いては、合成例1と同様の操作を行なうことによって、重合体(A−2)〜(A−18)の溶液を得た。また、得られた重合体(A−2)〜(A−18)溶液の固形分および粘度、ならびに重合体(A−2)〜(A−18)の重量平均分子量を測定した。その結果を下記表2に示す。なお、下記表2において、「BA」は、ブチルアクリレートであり;「2EHA」は、2−エチルヘキシルアクリレートであり;「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートであり;「4HBA」は、4−ヒドロキシブチルアクリレートであり;「HEAA」は、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミドであり;「AA」は、アクリル酸である。
【0066】
【表2】

【0067】
(実施例1)
上記合成例1で得られた重合体溶液を500質量部(重合体の固形分として100質量部)、カルボジイミド系架橋剤(B)であるカルボジライト(登録商標) V−01(日清紡ケミカル株式会社製、試料名 B−1) 1質量部、イソシアネート系架橋剤(C)であるコロネート(登録商標)L(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、日本ポリウレタン工業株式会社製、試料名 C−1) 0.2質量部、およびシランカップリング剤であるKBM−403(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、信越化学工業株式会社製) 0.1質量部を室温(25℃)で10分間混合し、粘着剤組成物が溶解している溶液を得た。
【0068】
この溶液を、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、偏光板に貼り合わせをし、粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0069】
(実施例2〜10、比較例1〜8)
下記表2に示すような組成比で、上記合成例で合成した重合体、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤およびイソシアネート系架橋剤以外の他の架橋剤、およびシランカップリング剤を使用したことを除いては、実施例1と同様にして、粘着剤組成物が溶解している溶液の調製および粘着剤層付き偏光板の作製を行った。なお、カルボジイミド系架橋剤B−2およびB−3、ならびに他の架橋剤D−1の詳細は下記表3の通りである。
【0070】
【表3】

【0071】
上記のようにして得られた実施例1〜10および比較例1〜8の粘着剤層付き偏光板について、下記の方法に従って、各性能を評価した。
【0072】
1.金属腐食抑制・防止性
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置した各表面保護フィルムの粘着層面をアルミホイルに貼り合わせて、60℃、90%RHの雰囲気下で2日間放置し、そのときの腐食性を観察した。なお、下記表4中、「○」は変化なしを、「×」は白化したことを、それぞれ表す。
【0073】
2.耐光漏れ性
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置した粘着剤層を有する偏光板を、120mm(偏光板MD方向)×60mm、および120mm(偏光板TD方向)×60mmに裁断し、それぞれガラス板の各面に重なり合うように貼り合わせし、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、80℃雰囲気下で120時間および500時間放置した後の外観を観察した。下記表4中、「◎」は120時間後および500時間後に光漏れが観察されなかったことを、「○」は120時間後に光漏れが観察されなかったことを、「×」は光漏れが観察されたことを、それぞれ表す。
【0074】
3.耐久性
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置した粘着剤層を有する偏光板を、120mm(偏光板MD方向)×60mmに裁断し、ガラス板に貼り合わせし、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、100℃雰囲気下または80℃、90%RHの雰囲気下で120時間放置した後の外観を観察した。下記表4中、「○」は発泡、浮き、剥がれが観察されなかったことを、「×」は発泡、浮き、剥がれが観察されたことを、それぞれ表す。
【0075】
4.粘着力
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置した粘着剤層を有する偏光板を25mm幅に裁断し、ガラス板に貼り合わせ、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件下で20分間オートクレーブ処理を行った。引っ張り試験機を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で剥離角90度、剥離速度0.3m/分で、JIS Z0237(2000年)に記載の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて粘着力の測定を行った。
【0076】
5.基材に対する密着性
上記4.粘着力の測定時に密着性を観察した。下記表4中、「○」は粘着剤が基材からまったく剥がれなかったことを、「×」は粘着剤が基材から剥がれたことを、それぞれ表す。
【0077】
6.被着体汚染性
上記4.粘着力の測定前後のガラス板面の接触角を測定した。下記表4中、「○」は粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化がなかったことを、「×」は粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化があったことを、それぞれ表す。
【0078】
7.低温安定性
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置した粘着剤層を有する偏光板を120mm(偏光板MD方向)×60mmに裁断し、ガラス板に貼り合わせし、50℃、0.49MPa(5kg/cm2)の条件下で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、−40℃雰囲気下で120時間放置した後の外観を観察した。下記表4中、「○」は発泡、浮き、剥がれ、再結晶物が観察されなかったことを、「×」は発泡、浮き、剥がれ、再結晶物が観察されたことを、それぞれ表す。
【0079】
8.リワーク性
上記4.粘着力の測定時に、剥離状態を観察した。下記表4中、「○」は界面破壊が観察されたことを、「×」はガラス板(被着体)に粘着剤が転着および/または凝集破壊が観察されたことを、それぞれ表す。
【0080】
9.ゲル分率
各実施例、比較例で作製した粘着剤層を有する偏光板の代わりに、剥離処理したポリエステルフィルムを使用して、塗工7日後におけるゲル分率を測定した。ゲル分率は、23℃、50%RHの雰囲気下で放置した粘着剤組成物約0.1gを秤量して、重量W(g)を測定した。これをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを約30g加えて24時間放置した。所定時間経過後の該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網(膜の重量をW2(g))にてろ別し、金網および残留物を90℃で1時間乾燥させた全体の重量W(g)を測定した。ゲル分率は、これらの測定値から下記数式2により算出した。
【0081】
【数2】

【0082】
各評価結果をまとめて、下記表4に示す。なお、表4中の比較例6は、粘着層の製造時にゲル化していたため、各評価を行うことができなかった。
【0083】
【表4】

【0084】
上記表4から明らかなように、本発明の粘着剤組成物を用いた偏光板(実施例1〜10)は、本発明の範囲外である粘着剤組成物(比較例1〜8)を用いた偏光板に比して、耐光漏れ性および耐久性に優れる。特に、イソシアネート系架橋剤(C)を含む実施例1、2、3、5、6、8および10の粘着剤組成物から得られる粘着層は、耐光漏れ性が一段と向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0〜9質量部のカルボキシル基含有モノマー、0〜1.8質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.9〜89.2質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり(ただし、カルボキシル基含有モノマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーとの合計量は0質量部ではない)、重量平均分子量が100万〜200万である(メタ)アクリル系共重合体 100質量部;および
カルボジイミド系架橋剤 0.05〜5質量部
を含む粘着剤組成物。
【請求項2】
さらに、イソシアネート系架橋剤 0.05〜5質量部を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材。

【公開番号】特開2011−122053(P2011−122053A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280732(P2009−280732)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】