説明

粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法、該二本鎖DNAを用いる組換えDNAの作製方法および該組換えDNAを含む形質転換体または形質導入体

【課題】所望する粘着末端(突出末端)を有する二本鎖DNAを容易に調製する方法、さらに当該方法によって調製したDNA断片を用いた簡便で汎用性の高い組換えDNAならびにベクターの作製方法を提供する。
【解決手段】傷害バイパス活性欠損(傷害塩基不耐性)のDNAポリメラーゼと、傷害塩基を含むプライマーを用いてDNA鎖を合成し、DNAポリメラーゼの停止によって粘着末端(突出末端)を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着末端(突出末端)を有する二本鎖DNAを調製する方法に関する。さらに当該方法によって調製したDNA断片を用いた組換えDNAの作製方法、および該組換えDNAを含む形質転換体または形質導入体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.組換えDNAの作製における粘着末端を有するDNA断片の調製
DNAまたはタンパク質の機能を研究するため、また産業上有用な遺伝子またはタンパク質を開発するために、遺伝子のクローニングまたはエンジニアリングの技術が広く使用されている。遺伝子のクローニング、複数のDNA配列間のドメイン交換、または複数のDNA断片からの配列アセンブリなどのDNAエンジニアリングは、最も一般的には、制限酵素によりDNAを切断する工程とリガーゼによりDNAを結合する工程とを含む手法によって行われている。その多くの場合は、制限酵素による消化によって粘着末端を有するDNA断片が調製される。
【0003】
一方で、制限酵素を使用せずに粘着末端を有するDNA断片を調製する方法として、DNAポリメラーゼのTdT(Terminal deoxynucleotidyl transferase)活性を利用するTAクローニング法が知られている。TAクローニング法は簡便な方法であるが、効率が低い、古細菌由来DNAポリメラーゼなどの高忠実性ポリメラーゼを使用できない、または方向性を保った断片挿入ができない等の欠点もある。
【0004】
また別の方法として、T4 DNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を利用して粘着末端を調製するLIC(ligation−independent cloning)法が知られている(非特許文献1)。
【0005】
またFASTR(fully automatic single−tube recombination)法では、タイプIIS制限酵素とDNAリガーゼとを利用して、制限酵素の認識配列とは別の任意の配列を有する粘着末端の調製、およびそのライゲーションを遂行できる(特許文献1、非特許文献2)。
【0006】
また別の粘着末端を有するDNA断片の調製法として、化学修飾塩基を含むケージドプライマーの使用、およびUV照射による修飾部位の分解を利用したLACE−PCR(light−assisted cohesive−ending PCR)法がある(特許文献2、非特許文献3)。
【0007】
このように最も古典的な制限酵素消化による粘着末端を有するDNA断片の調製法が、今も根強く使用されている一方で、新しい様々な粘着末端を有するDNA断片の調製法が開発されてきている。しかし、引き続き、より簡便で汎用性の高い粘着末端を有するDNA断片の調製法およびそれを利用する組換えDNAの作製法が求められていた。
【0008】
2.高忠実性DNAポリメラーゼの傷害塩基不耐性
PCR(polymerase chain reaction)において一般的に使用されているDNA合成酵素は、主にThermus aquaticus由来のDNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼ)またはその誘導体である。一方で、一般的なTaqポリメラーゼよりも合成エラー率の低い、高忠実性DNAポリメラーゼが知られており、それらはDNAのクローニングなどで重宝されている。
【0009】
高忠実性DNAポリメラーゼとして、ファミリーB(またはタイプBと呼ばれる)のDNAポリメラーゼおよびその誘導体が知られており、また古細菌由来のDNAポリメラーゼおよびその誘導体が知られている。
【0010】
例えば、Pyrococcus furiosus由来の酵素またはその誘導体としてPfu DNA polymerase(Stratagene)、PfuTurbo DNA polymerase(Stratagene)およびPfuUltra DNA polymerase(Stratagene)などがあり、Pyrococcus sp.GB−D由来の酵素またはその誘導体としてDeep Vent DNA polymerase(New England BioLabs)などがあり、Pyrococcus spp由来の酵素またはその誘導体としてProofStart DNA Polymerase(Qiagen)などがある。
【0011】
また、例えば、Thermococcus litoralis由来の酵素またはその誘導体としてVent DNA polymerase(New England BioLabs)などがあり、Thermococcus kodakarensis由来の酵素またはその誘導体としてPlatinum Pfx DNA polymerase(Invitrogen)およびKOD(HiFi)DNA Polymerase(Toyobo/Novagen)などがあり、Thermococcus gorgonarius由来の酵素またはその誘導体としてTgo DNA polymerase(Roche)などがある。
【0012】
しかしながら、これらの高忠実性DNAポリメラーゼは、一般に傷害バイパス活性(lesion bypass activity)を示さないポリメラーゼ(以下、傷害バイパス活性欠損DNAポリメラーゼ、または傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼともいう)であるため、鋳型DNA鎖の中にdUまたはdIなどの傷害が存在すると、DNA合成反応が停止してしまうことが知られている(非特許文献4)。
【0013】
前記DNA合成反応の停止は、DNAポリメラーゼの“read−ahead”機能によることが分かっている。DNAポリメラーゼは、進行方向の4塩基前方にある鋳型鎖中の傷害塩基を特異的に認識して、強固に結合する。その結果、DNA合成反応は停止してしまう。様々なDNAポリメラーゼについて、このような合成阻害効果の詳細が報告されている(非特許文献5〜10)。
【0014】
また、プライマー鎖中に傷害塩基が含まれている場合も、高忠実性DNAポリメラーゼによるDNA合成反応は阻害されるとの報告がある(非特許文献11〜13)。
【0015】
さらに、DNA合成基質であるdNTPsの中に傷害塩基が存在している場合も、結果的に高忠実性DNAポリメラーゼのDNA合成反応は阻害される(非特許文献14および15)。
【0016】
このように、高忠実性DNAポリメラーゼを用いたDNA合成反応において、傷害塩基が、鋳型鎖、プライマー鎖およびdNTPのいずれの中に存在しても、DNA合成反応を阻害する原因となる。このような高忠実性DNAポリメラーゼの傷害塩基不耐性(lesion base intolerant)のため、当業者の間では、高忠実性DNAポリメラーゼを用いるPCRでは、反応系に傷害塩基を含むことは避けるべきであると考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2009/025209号
【特許文献2】国際公開第2009/113709号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Aslanidis C, de Jong PJ. Ligation-independent cloning of PCR products(LIC-PCR). Nucleic Acids Res. 1990 Oct 25;18(20):6069-74.
【非特許文献2】Kotera I, Nagai T. A high-throughput and single-tube recombination of crude PCR products using a DNA polymerase inhibitor and type IIS restriction enzyme. J Biotechnol. 2008 Oct 10;137(1-4):1-7. Epub 2008 Jul 23.
【非特許文献3】Tanaka K, Katada H, Shigi N, Kuzuya A, Komiyama M. Direct preparation of sticky-ended duplexes within PCR by using caged primers. Nucleic Acids Symp Ser(Oxf). 2008;(52):467-8.
【非特許文献4】Hogrefe HH, Borns MC, Highfidelity PCR Enzymes, Stratagene Newsletter Volume 17 Number 2.(Reproduced with permissionfrom C.W. Dieffenbach, G.S. Dveksler(eds.)PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2003).
【非特許文献5】Lasken RS, Schuster DM, Rashtchian A. Archaebacterial DNA polymerases tightly bind uracil-containing DNA. J Biol Chem. 1996 Jul 26;271(30):17692-6.
【非特許文献6】Greagg MA, Fogg MJ, Panayotou G, Evans SJ, Connolly BA, Pearl LH. A read-aheadfunction in archaeal DNA polymerases detects promutagenic template-strand uracil. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 Aug 3;96(16):9045-50.
【非特許文献7】Gruz P, Shimizu M, Pisani FM, Defelice M, Kanke Y, Nohmi T. Processing of DNA lesions by archaeal DNA polymerasesfrom Sulfolobus solfataricus. Nucleic Acids Res. 2003 Jul 15;31(14):4024-30.
【非特許文献8】Shuttleworth G, Fogg MJ, Kurpiewski MR, Jen-Jacobson L, Connolly BA. Recognition of the pro-mutagenic base uracil byfamily B DNA polymerases from archaea. J Mol Biol. 2004 Mar 26;337(3):621-34.
【非特許文献9】Gill S, O'Neill R, Lewis RJ, Connolly BA. Interaction of the family-B DNA polymerasefrom the archaeon Pyrococcus furiosus with deaminated bases. J Mol Biol. 2007 Sep 28;372(4):855-63.
【非特許文献10】Connolly BA. Recognition of deaminated bases by archaeal family-B DNA polymerases. Biochem Soc Trans. 2009feb;37(Pt 1):65-8.
【非特許文献11】Knittel T, Picard D. PCR with degenerate primers containing deoxyinosinefails with Pfu DNA polymerase. PCR Methods Appl. 1993 May;2(4):346-7.
【非特許文献12】Fujiwara H,fujiwara K, Hashimoto K. PCR with deoxyinosine-containing primers using DNA polymerases with proofreading activity. PCR Methods Appl. 1995 Feb;4(4):239-40.
【非特許文献13】Sakaguchi AY, Sedlak M, Harris JM, Sarosdy MF. Cautionary note on the use of dUMP-containing PCR primers with Pfu and VentR DNA polymerases. Biotechniques. 1996 Sep;21(3):368-70.
【非特許文献14】Slupphaug G, Alseth I, Eftedal I, Volden G, Krokan HE. Low incorporation of dUMP by some thermostable DNA polymerases may limit their use in PCR amplifications. Anal Biochem. 1993 May 15;211(1):164-9.
【非特許文献15】Hogrefe HH, Hansen CJ, Scott BR, Nielson KB. Archaeal dUTPase enhances PCR amplifications with archaeal DNA polymerases by preventing dUTP incorporation. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Jan 22;99(2):596-601.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、高忠実性DNAポリメラーゼの能力を利用し、所望する粘着末端(突出末端)を有する二本鎖DNAを容易に調製する方法を提供することである。さらに当該方法によって調製したDNA断片を用いた簡便で汎用性の高い組換えDNAおよびベクターの作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。前述のごとく、所望するDNAの複製において有用な高忠実性DNAポリメラーゼは、傷害バイパス活性欠損(傷害塩基不耐性)であるために、反応系中に傷害塩基が存在するとDNA合成反応が阻害されてしまう、というのが当業者の常識であった。
【0021】
しかしながら、本発明者らは、プライマーの塩基配列において、ある特定の位置に傷害塩基が存在する場合は、例外的に高忠実性DNAポリメラーゼのDNA合成反応が阻害されないことを見出した。
【0022】
本発明者らはさらに鋭意検討を重ね、その結果、高忠実性DNAポリメラーゼの能力と、傷害塩基を含むプライマーを使用することによって、所望する粘着末端(突出末端)を有する二本鎖DNAを容易に調製し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0023】
すなわち本発明は以下の通りである。
1.少なくとも1つの粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法であって、以下の(a)〜(d)の工程;
(a)鋳型DNAと、該鋳型DNAにアニーリング可能な第1のプライマーとを接触させる工程
(b)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第1のプライマーを伸長させ、該鋳型DNAに対して相補的な第1の相補DNA鎖を合成する工程
(c)該第1の相補DNA鎖と、該相補DNA鎖にアニーリング可能な第2のプライマーとを接触させる工程
(d)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第2のプライマーを伸長させ、第1の相補DNA鎖に対して相補的な第2の相補DNA鎖を合成する工程
を含み、
前記第1のプライマーおよび第2のプライマーの少なくとも一方が、その5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むプライマーであり、
前記DNAポリメラーゼ活性を有する酵素が、有意な傷害バイパス活性を示さないDNAポリメラーゼである方法。
2.(a)〜(d)の工程が繰り返し行われる前項1に記載の方法。
3.(a)〜(d)の工程がポリメラーゼ連鎖反応中に行われる前項1または2に記載の方法。
4.傷害塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、キサンチンおよびオキサニンからなる群より選択される前項1〜3のいずれか1に記載の方法。
5.傷害塩基が、ウラシルおよびヒポキサンチンから選択される前項4に記載の方法。
6.有意な傷害バイパス活性を示さないDNAポリメラーゼが、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼおよびその誘導体から選択される前項1〜5のいずれか1に記載の方法。
7.有意な傷害バイパス活性を示さないDNAポリメラーゼが、古細菌由来のファミリーBに属するDNAポリメラーゼおよびその誘導体から選択される前項1〜6のいずれか1に記載の方法。
8.前項1〜7のいずれか1に記載の方法によって作製した二本鎖DNAの粘着末端と、該粘着末端と相補的な粘着末端を有するDNAとをライゲーションする組換えDNAの作製方法。
9.得られる組換えDNAがベクターである前項8に記載の組換えDNAの作製方法。
10.前項8または9に記載の作製方法により得られる組換えDNAを含む形質転換体または形質導入体。
【発明の効果】
【0024】
上述したように、高忠実性DNAポリメラーゼ等の傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼによるDNA合成反応において、鋳型鎖、プライマー鎖およびdNTPsのいずれの中に傷害塩基が存在しても、DNA合成反応が阻害される原因になると考えられていた。
【0025】
しかしながら、本発明の方法によれば、5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むプライマーを使用することにより、傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼであっても例外的にプライマーを伸長させることができる。
【0026】
したがって、本発明の方法によれば、一般的なTaqポリメラーゼよりも合成エラー率の低い、高忠実性DNAポリメラーゼを用いて、所望する粘着末端(突出末端)を有する二本鎖DNAを容易に調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法(SEEPS法;Sticky End Engineering by Polymerase Stop)の原理を模式的に表す図である。
【図2】SEEPS法を利用した組換えDNAの作製法の一例(粘着末端を有するDNA断片の増幅と、そのベクターへの挿入)を模式的に表す図である。
【図3】5’領域に付加配列を有するSEEPSプライマーの例を模式的に表す図である。
【図4A】正常塩基とその様々な傷害塩基の例について、それらの化学構造を示す図である。
【図4B】正常塩基とその様々な傷害塩基の例について、それらの化学構造を示す図である。
【図4C】正常塩基とその様々な傷害塩基の例について、それらの化学構造を示す図である。
【図4D】正常塩基とその様々な傷害塩基の例について、それらの化学構造を示す図である。
【図5】鋳型DNAとSEEPSプライマーとのアニーリングの様子を示す模式図である。
【図6】様々なdI含有プライマーと傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼを用いたPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
【図7】付加配列にdIを含む様々なプライマーと傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼを用いたPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
【図8】様々なdU含有プライマーと傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼを用いたPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
【図9】付加配列にdUを含む様々なプライマーと傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼを用いたPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
【図10】SEEPS法を利用して作製した組換えDNAのインサートDNAとベクターDNAとの結合様式および接合部の塩基配列を示す図である。
【図11】SEEPS法を利用して作製した組換えDNAを制限酵素で消化した結果を示す電気泳動像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0029】
なお本明細書中では、本発明の粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法を「SEEPS法」(Sticky End Engineering by Polymerase Stop)と呼ぶ場合がある。
【0030】
また、SEEPS法で使用する5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むプライマーを「SEEPSプライマー」と呼ぶ場合がある。
【0031】
またSEEPS法に適合する酵素、すなわちDNAポリメラーゼ活性を有する酵素であって、有意な傷害バイパス活性を示さない[傷害バイパス活性欠損(傷害塩基不耐性)]酵素を、「SEEPS適合DNAポリメラーゼ」と呼ぶ場合がある。
【0032】
1.本発明の粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法の概要
本発明の粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法(SEEPS法)は、以下の(a)〜(d)の工程を含む。
(a)鋳型DNAと、該鋳型DNAにアニーリング可能な第1のプライマーとを接触させる工程、
(b)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第1のプライマーを伸長させ、該鋳型DNAに対して相補的な第1の相補DNA鎖を合成する工程
(c)該第1の相補DNA鎖と、該相補DNA鎖にアニーリング可能な第2のプライマーとを接触させる工程
(d)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第2のプライマーを伸長させ、第1の相補DNA鎖に対して相補的な第2の相補DNA鎖を合成する工程
【0033】
前記第1のプライマーおよび第2のプライマーの少なくとも一方は、その5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むプライマー(SEEPSプライマー)である。また、前記DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、有意な傷害バイパス活性を示さないポリメラーゼ(SEEPS適合DNAポリメラーゼ)である。
【0034】
工程(a)〜(d)の反応は、当業者に公知の条件(例えば、「バイオ実験イラストレイテッド2 遺伝子解析の基礎」中山広樹・西方敬人著、1995年、秀潤社発行、および「バイオ実験イラストレイテッド3 本当にふえるPCR」中山広樹著、1996年、秀潤社発行)で行うことができる。また、工程(a)〜(d)は繰り返し行われることが好ましい。工程(a)〜(d)を繰り返すサイクル数は、鋳型DNAの種類、第1のプライマーおよび第2のプライマーの長さおよび反応条件等により適宜設定することが好ましく、特に限定されないが、通常10〜50サイクルが好ましく、20〜30サイクルがより好ましい。
【0035】
鋳型DNAの長さは特に限定されず、20塩基〜ゲノムサイズのDNAまで広く適用可能である。鋳型から合成するDNAの長さは特に限定されないが、通常20〜500,000塩基であることが好ましく、50〜50,000塩基であることがより好ましく、80〜10,000塩基であることが更に好ましい。
【0036】
第1のプライマーおよび第2のプライマーの長さは、特に限定されないが、通常7〜100塩基であることが好ましく、10〜80塩基であることがより好ましく、16〜60塩基であることが更に好ましい。
【0037】
第1のプライマーの塩基配列は使用される反応条件において鋳型DNAにアニーリングするように、実質的に鋳型DNAに相補的な塩基配列であることが好ましい。また、第2のプライマーの塩基配列は使用される反応条件において第1の相補DNA鎖にアニーリングするように、実質的に第1の相補DNA鎖に相補的な塩基配列であることが好ましい。
【0038】
第1のプライマーおよび第2のプライマーがSEEPSプライマーである場合、後述する「4.SEEPSプライマーの設計」に従って設計する。
【0039】
以下、工程毎に説明する。SEEPS法の中心的な機構を、図1に模式的に示す。なお、図1においては、第1のプライマーがSEEPSプライマー(傷害塩基含有プライマー)である場合を説明する。
【0040】
(a)鋳型DNAと、該鋳型DNAにアニーリング可能な第1のプライマーとを接触させる工程
工程(a)は、鋳型DNAと、該鋳型DNAにアニーリング可能な第1のプライマーとを接触させることにより、鋳型DNAと第1のプライマー[図1(a)においては、傷害塩基含有プライマー]とをアニールさせる工程である[図1(a)]。
【0041】
(b)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第1のプライマーを伸長させ、鋳型DNAに対して相補的な第1の相補DNA鎖を合成する工程
工程(b)は、SEEPS適合DNAポリメラーゼの作用によって、鋳型DNAにアニールした第1のプライマーを伸長させて、鋳型DNAに対して相補的な第1の相補鎖を合成する工程である[図1(b)]。
【0042】
(c)第1の相補DNA鎖と、該相補DNA鎖にアニーリング可能な第2のプライマーとを接触させる工程
工程(c)は、第1の相補DNA鎖と、該相補DNA鎖にアニーリング可能な第2のプライマーとを接触させることにより、第1の相補鎖に第2のプライマーをアニールさせる工程である。
【0043】
(d)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第2のプライマーを伸長させ、第1の相補DNA鎖に対して相補的な第2の相補DNA鎖を合成する工程
工程(d)は、SEEPS適合DNAポリメラーゼの作用によって、第1の相補DNA鎖にアニールした第2のプライマーを伸長させて、第1の相補鎖を鋳型とした第2の相補鎖の合成(すなわち元の鋳型と同じ配列を有するDNA鎖の合成)を進行させる工程である[図1(c)]。
【0044】
しかしながら、傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼである第1のDNAポリメラーゼが持つ‘read−ahead’機能のため、進行方向の4塩基前方の鋳型鎖(第1の相補鎖)に傷害塩基が存在する位置で、第2の相補鎖の合成は停止する。従って、DNA合成は、第1のプライマーに含まれる5’端の傷害塩基を認識し、その4塩基前方で停止する[図1(d)]。
【0045】
この結果、合成された二本鎖DNA上に、第1の相補鎖の5’端が4塩基突出した粘着末端が作製される[図1(e)]。
【0046】
傷害バイパス活性欠損(傷害塩基不耐性)のDNAポリメラーゼは、DNA合成反応において、傷害塩基が、鋳型鎖、プライマー鎖およびdNTPsのいずれの中に存在しても、反応阻害の原因となると考えられていた。しかしながら、本発明のSEEPS法においては、5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むプライマーを使用する。本発明者らの検討の結果によれば、傷害塩基がプライマーの5’末端に位置する場合は、傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼであっても例外的にプライマーを伸長させることができるのである。
【0047】
2.核酸増幅反応の中で粘着末端を作製する方法
SEEPS法は、核酸増幅反応の中で実施することが好ましく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)中で実施することがより好ましい。
【0048】
PCR中でSEEPS法を行う実施形態について、図2に模式図を示して説明する。図2に示すように、PCRにおいて、SEEPS適合DNAポリメラーゼを用い、上流側および下流側プライマーとして5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むSEEPSプライマーを用いると、得られる標的DNAの増幅産物は、両末端に粘着末端を有する二本鎖DNAとなる。従って、各粘着末端とライゲーション可能な末端を有するベクターDNAを用意すれば、該増幅産物は制限酵素処理することなく、容易にベクターに連結可能である。
【0049】
プライマー配列を目的に応じて任意に設計してもよく、上流側のSEEPSプライマーと下流側のSEEPSプライマーを適切に設計し、標的DNAの各末端に異なる配列の粘着末端を作製することができる。そうすることで、ベクター中に標的DNAが所望する方向で挿入されるようにすることができる。また、目的に応じて、両末端に同じ配列の粘着末端を作製するようにSEEPSプライマーを設計することも可能である。
【0050】
本実施形態では、PCR反応中に粘着末端を有するDNAが蓄積されることから、まれに反応中の粘着末端どうしのアニーリングが(それが可能な配列の場合は)起こり、それによって標的DNAが2コピー以上連結された長い増幅産物が、副産物または主産物として生成することがある。該長い増幅産物の生成を所望しない場合は、通常のPCRよりもアニーリング温度を若干高めに設定したサーマルサイクリングを行うことで、該長い増幅産物の生成を完全に抑えられる。
【0051】
また、目的に応じて、上流側または下流側プライマーのいずれか一方のみにSEEPSプライマーを使用し、増幅産物の片方の末端だけに粘着末端を作製してもよい。
【0052】
本実施形態において、SEEPSプライマーは、図1に例示したようなプライマー全体が標的配列にアニールする配列である必要はない。ポリメラーゼによるプライマー伸長が可能な範囲で、ミスマッチ、挿入または欠損等を含んでいてもよい。ミスマッチ、挿入または欠損等を含むプライマーを用いることで、標的DNAに部位特異的変異導入が可能である。
【0053】
また本実施形態において、SEEPSプライマーは、図3(a)に示すように5’端領域が標的DNAに直接アニールしない付加配列であってもよい。図3(b)に示すように、5’端領域が標的DNAに直接アニールしない付加配列のSEEPSプライマーを用いた場合には、粘着末端に付加配列を含む増幅産物が得られる。SEEPS法によれば粘着末端の配列を相当自由な範囲で作製することができる。
【0054】
また本実施形態において、SEEPSプライマーは縮重プライマーであってもよい。また、SEEPSプライマーはその機能を失わない範囲であれば、公知の様々な修飾、例えば、蛍光標識、放射性標識または化学修飾などを有していてもよい。
【0055】
2.SEEPS適合DNAポリメラーゼ
本発明のSEEPS法に用いるSEEPS適合DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素であって、有意な傷害バイパス活性を示さない(傷害塩基不耐性)酵素である。ここで、傷害バイパス活性(lesion bypass activity)とは、酵素が鋳型鎖中の傷害塩基を通過してDNAを合成する活性である(Steitz TA,Yin YW.Accuracy,lesion bypass,strand displacement and translocation by DNA polymerases.Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci.2004 Jan 29;359(1441):17−23)。また、「有意な傷害バイパス活性を示さない」とは、酵素が鋳型鎖中の障害塩基を通過してDNAを合成する能力が無い、または正常塩基を通過してDNAを合成する速度と比較して遅い(例えば1/1000以下)ために、DNA合成反応が実質的に停止しDNA合成産物を観測できないことをいう。
【0056】
SEEPS適合DNAポリメラーゼとしては、例えば、高忠実性DNAポリメラーゼが挙げられる。高忠実性ポリメラーゼの中でも、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましく、古細菌由来のファミリーBに属するDNAポリメラーゼがより好ましい。
【0057】
なお、PCRなどの核酸増幅反応においてSEEPS法を実施する場合は、前記DNAポリメラーゼの中でも、サーマルサイクリングに耐え得る耐熱性を有するDNAポリメラーゼであることが更に好ましい。
【0058】
また、SEEPS適合DNAポリメラーゼには、前述の様々な酵素の誘導体、すなわちクローニングによって作製した組換え酵素、および一部のアミノ酸またはドメイン等に改変を加えて酵素学的性質を改善したものなども含まれる。そのようなDNAポリメラーゼおよびその誘導体は、その多くが酵素試薬として市販されており、容易に入手可能である。
【0059】
SEEPS適合DNAポリメラーゼとしては、例えば、次のような酵素が挙げられる;
Thermococcus litoralis DNA polymerase(Vent);
Pyrococcus sp. DNA polymerase(Deep Vent);
Pyrococcusfuriosus DNA polymerase(Pfu);
JDF−3 DNA polymerase;
Sulfolobus solfataricus DNA polymerase(Sso);
Thermococcus gorgonarius DNA polymerase(Tgo);
Thermococcus species TY DNA polymerase;
Thermococcus species strain KODI(KOD)DNA polymerase;
Thermococcus acidophilium DNA polymerase;
Sulfolobus acidocaldarius DNA polymerase;
Thermococcus species 9°N−7 DNA polymerase;
Pyrodictium occultum DNA polymerase;
Methanococcus voltae DNA polymerase;
Methanococcus thermoautotrophicum DNA polymerase;
Methanococcus jannaschii DNA polymerase;
Desulfurococcus strain TOK DNA polymerase(D.Tok Pol);
Pyrococcus abyssi DNA polymerase;
Pyrococcus horikoshii DNA polymerase;
Pyrococcus islandicum DNA polymerase;
Thennococcusfumicolans DNA polymerase;および
Aeropyrum pernix DNA polymerase.
【0060】
3.傷害塩基
SEEPS法に用いる第1のプライマーおよび第2のプライマーの少なくとも一方は、その5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含む。傷害塩基(lesion base)とは、正常な塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が、化学修飾を受けて、本来の化学構造とは異なる構造となったものである。
【0061】
化学修飾としては、例えば、脱アミノ化、酸化若しくはアルキル化またはそれらの組合せなどが挙げられるが、これらに限られない。一般的な傷害塩基の例とその化学構造を図4A〜Dに示す。
【0062】
アデニン由来の傷害塩基としては、例えば、ヒポキサンチン(Hx)、8−オキソアデニン(8−oxoA)、4,6−ジアミノ−5−ホルムアミドピリミジン(FapyA)、1−メチルアデニン(mA)、7−メチルアデニン(mA)、N−メチルアデニン(mA)、3−メチルアデニン(mA)および1,N−エテノアデニン(εA)などが挙げられる(図4A)。
【0063】
グアニン由来の傷害塩基としては、例えば、キサンチン(Xan)、オキサニン(Oxa)、8−オキソグアニン(8−oxoG)、2,6−ジアミノ−4−ヒドロキシ−5−ホルムアミドピリミジン(FapyG)、2,6−ジアミノ−4−ヒドロキシ−5−N−メチルホルムアミドピリミジン(Me−FapyG)、N−メチルグアニン(mG)、3−メチルグアニン(mG)、1−メチルグアニン(mG)、O−メチルグアニン(mG)、1,N−エテノグアニン(1,N−εG)および7−メチルグアニン(mG)などが挙げられる(図4B)。
【0064】
シトシン由来の傷害塩基としては、例えば、ウラシル(U)、5−ヒドロキシシトシン(hoC)、ウラシルグリコール(Ug)、5,6−ジヒドロウラシル(hU)、5−ヒドロキシウラシル(hoU)、アロキサン、O−メチルシトシン(mC)、3−メチルシトシン(mC)および3,N−エテノシトシン(εG)などが挙げられる(図4C)。
【0065】
チミン由来の傷害塩基としては、例えば、5−ヒドロキシメチルウラシル(hmU)、5,6−ジヒドロチミン(hT)、β−ウレイドイソ酪酸、チミングリコール(Tg)、5−ホルミルウラシル(fU)、尿素、O−メチルチミン(mT)、3−メチルチミン(mT)およびO−メチルチミン(mT)などが挙げられる(図4d)。
【0066】
またこの他にも、化学合成または化学修飾によって正常塩基とは異なる構造を与えられたヌクレオチド類縁体、類似体、誘導体または構造異性体などであって、SEEPS適合DNAポリメラーゼによる相補鎖伸長反応を停止させ得るものも、傷害塩基に含まれる。
【0067】
SEEPSプライマーに含有させる傷害塩基は、使用するSEEPS適合DNAポリメラーゼに応じて適当なものを選択すればよい。傷害塩基は、自然発生的に正常塩基が傷害を受けて生じたものでもよいが、人為的処理によって正常塩基を傷害塩基に変換したものでもよい。また化学合成的手法若しくは酵素学的手法、またはそれらの組合せによって作製したものでもよく、出発物質は必ずしも正常塩基である必要はない。
【0068】
SEEPS法において、特に好ましいSEEPSプライマーの傷害塩基は、DNAポリメラーゼの傷害塩基不耐性についてよく知られている脱アミノ化傷害を受けた塩基である。例えば、ウラシル(U)、ヒポキサンチン(Hx)、キサンチン(Xan)およびオキサニン(Oxa)などが挙げられる。
【0069】
SEEPS法において、最も好ましいSEEPSプライマーの傷害塩基は、一般的なプライマーの化学合成技術によって容易に5’端に導入できるウラシルおよびヒポキサンチンである。なお、ヒポキサンチン(Hx)は、デオキシイノシン(dI)の塩基であり、DNAの配列表記においてはIと記載されることも多い。
【0070】
4.SEEPSプライマーの設計
SEEPS法に用いる第1のプライマーおよび第2のプライマーの少なくとも一方は、その5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むSEEPSプライマーである。SEEPSプライマーの設計は、5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むヌクレオチドとする以外には特に制約が無く、一般的なプライマーの設計と何ら変わりがない。従って、当業者は相当な自由度をもってSEPPS法により得られる二本鎖DNAにおける粘着末端の配列を設計することができる。
【0071】
また、SEEPS法で作製したDNAの粘着末端を、後に他のDNAの末端とライゲーションすることまでを考慮すると、粘着末端配列の相補的ペアの間で、例えば、傷害塩基ウラシルはアデニンと塩基対を、また傷害塩基ヒポキサンチンはシトシンと塩基対を形成するように粘着末端の配列を設計することが好ましい。
【0072】
このように、SEEPS法は、通常のPCRを行うのとほぼ同様に、目的DNAを増幅するだけで、同時に粘着末端が作製できる、極めて簡便な方法である。
【0073】
5.末端のリン酸化
SEEPS法により得られる二本鎖DNAをリガーゼによって連結するためには、その5’末端を必要に応じてリン酸化することが好ましい。SEEPS法で得られる二本鎖DNAの5’末端をリン酸化された粘着末端とするには、第1のプライマーおよび第2のプライマーの少なくとも一方に、5’末端がリン酸化されたSEEPSプライマーを使用すればよい。
【0074】
ポリヌクレオチドキナーゼなどの酵素を用いて、5’末端がリン酸化されていないプライマーの5’端をリン酸化する方法は、公知の方法である。また通常のDNAの化学合成法によって、あらかじめ5’末端がリン酸化されたプライマーを調製することもできる。
【0075】
また別の方法として、5’末端がリン酸化されていない第1のプライマーおよび第2のプライマーを用いたSEEPS法により粘着末端を有する二本鎖DNAを作製した後、該二本鎖DNAの粘着末端に対して、ポリヌクレオチドキナーゼなどの酵素を用いて5’末端をリン酸化してもよい。
【0076】
SEEPS法により得られる二本鎖DNAの粘着末端と、該末端と相補的な粘着末端を有するDNAをライゲーションすることにより、組換えDNAを作製することができる。このようにして得られる組換えDNAとしては、例えば、ベクターが挙げられる。
【0077】
また、得られる組換えDNAを適当な宿主に形質転換または形質導入して形質転換体または形質導入体を得ることができる。該形質転換体または形質導入体を培養して、該培養破砕液より組換えDNAを調製することができる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0079】
<実施例1> dI含有プライマーと傷害塩基不耐性DNAポリメラーゼを用いたPCR
(1)プライマー中のdI含有位置の違いによる増幅の有無
デオキシイノシン(dI)の塩基であるヒポキサンチンを含むプライマーを用いてPCRを実施した。まず50μlのPCR反応液を調製した。
【0080】
その組成は次の通りである;1×PCR buffer(東洋紡製、KOD Plus付属品)、各終濃度200μMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP、終濃度1mM 硫酸マグネシウム、各終濃度300nMのdI含有上流および下流プライマー、99ngの大腸菌Escherichia coli K−12株由来ゲノムDNA、および古細菌由来DNAポリメラーゼKOD Plus(東洋紡製)1ユニット。
【0081】
ここで使用した上流および下流プライマーの配列を表1に示す。各プライマーはdIの位置が異なる。配列番号1と2、3と4、5と6、7と8、9と10をそれぞれペアとして用い、各ペアをプライマーセット1〜5と名付けた。各プライマーセットは、大腸菌のnfi遺伝子配列(672bp)内のそれぞれ異なる領域をターゲットとするものである[図5(a)]。
【0082】
コントロール実験として、傷害バイパス活性(傷害塩基耐性)を持つTaq DNAポリメラーゼを用いてPCRを実施した。Taq DNAポリメラーゼはヒポキサンチンによるPCRの阻害を受けないことが知られているDNAポリメラーゼである。
【0083】
コントロールPCR反応液(50μl)は、1×PCR buffer(タカラバイオ製、TaKaRa Taq付属品)、終濃度200μM 各dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP、終濃度300nM dI含有上流および下流プライマー(配列番号9および10)、99ngの大腸菌E.coli K−12株由来ゲノムDNA、1.3ユニットのTaKaRa Taq(タカラバイオ製)を含むよう調製した。
【0084】
サーマルサイクラーはVeriti 96−Well Thermal Cycler(Applied Biosystems製)を使用し、94℃で2分間を1回、94℃で15秒間、58℃で30秒間、68℃で30秒間の温度サイクルを30回繰り返した。
【0085】
反応終了後、各反応液から5μlを分取して、2質量% アガロース電気泳動で増幅産物を分離した。アガロースゲルを臭化エチジウムで染色した後、イメージアナライザーFLA−9000(富士フイルム製)を用いてバンドを可視化し、増幅産物の有無を確認した。
【0086】
その電気泳動結果を図6に示す。図6中、レーン1はDNAサイズマーカー100bp DNA Ladder(東洋紡製)、レーン2〜6はそれぞれプライマーセット1〜5を用いたPCR反応液、レーン7はコントロールPCR反応液、レーン8はプライマーを含まない反応結果である。
【0087】
図6に示すように、レーン3〜6において、増幅産物は検出されなかった。レーン2においては、予期される増幅産物のサイズ(約323bp)に一致する約320bpの位置に単一なバンドが検出された。
【0088】
これらの結果は、5’末端から2番目以降の位置にヒポキサンチンが含まれるプライマーを用いた場合、当業者の従来の知見どおり、PCRが阻害されることを示す。一方、驚くべきことに、ヒポキサンチンが5’末端に位置するプライマーを用いた場合だけは、例外的にPCRが阻害されず、目的とするサイズの増幅産物が得られた。
【0089】
(2)付加配列を有するプライマー中のdI含有位置の違いによる増幅の有無
5’末端に鋳型DNAと相補的でない5ヌクレオチドの付加配列を有するプライマー[図5(b)]を用い、上記(1)と同様の方法でPCRを行った。使用した上流および下流プライマーの配列と使用した組み合わせを表2に示す。
【0090】
各プライマーセットは、大腸菌nfi遺伝子配列内の同じ領域をターゲットとしており、予期される増幅産物のサイズは約367bpである。コントロール実験として、Taq DNAポリメラーゼと、プライマーセット10を用いてPCRを実施した。
【0091】
サーマルサイクラーはVeriti 96−Well Thermal Cycler(Applied Biosystems製)を使用し、94℃で2分間を1回、94℃で15秒間、58.8℃で30秒間、68℃で30秒間の温度サイクルを30回繰り返した。増幅産物の電気泳動および検出は上記(1)の手順と同様に行った。
【0092】
その電気泳動結果を図7に示す。図7中、レーン1はDNAサイズマーカー100bp DNA Ladder(東洋紡製)、レーン2〜6はそれぞれプライマーセット6〜10を用いたPCR反応液、レーン7はコントロールPCR反応液、レーン8はプライマーを含まない反応結果である。
【0093】
図7に示すように、レーン3〜6において、増幅産物は検出されなかった。レーン2においては、予期される増幅産物のサイズ(約367bp)に一致する約370bpの位置に単一なバンドが検出された。
【0094】
これらの結果は、上記(1)の結果と同様、ヒポキサンチンが5’末端に含まれるプライマーを用いた場合のみ、例外的にPCRが阻害されることなく反応が進み、目的とするサイズの増幅産物が得られることを示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
<実施例2> dU含有プライマーを用いたPCR
(1)プライマー中のdU含有位置の違いによる増幅の有無
デオキシウリジン(dU)の塩基であるウラシルを含むプライマーを用いてPCRを実施した。調製した50μlのPCR反応液の組成は、使用したプライマーが異なる以外は、実施例1(1)と同じである。使用した上流および下流プライマーの配列と使用した組み合わせ表3に示す。
【0098】
各プライマーセットは、大腸菌のnfi遺伝子配列(672bp)内のそれぞれ異なる領域をターゲットとするものである[図5(a)]。コントロール実験として、Taq DNAポリメラーゼと、プライマーセット15を用いてPCRを実施した。PCRの温度サイクルは実施例1(1)と同様である。
【0099】
その電気泳動結果を図8に示す。図8中、レーン1はDNAサイズマーカー100bp DNA Ladder(東洋紡製)、レーン2〜6はそれぞれプライマーセット11〜15を用いたPCR反応液、レーン7はコントロールPCR反応液、レーン8はプライマーを含まない反応結果である。
【0100】
図8に示すように、レーン3〜6において、増幅産物は検出されなかった。レーン2においては、予期される増幅産物のサイズ(約367bp)に一致する約370bpの位置に単一なバンドが検出された。
【0101】
これらの結果は、5’末端から2番目以降の位置にウラシルが含まれるプライマーを用いた場合、当業者の従来の知見どおり、PCRが阻害されることを示す。一方、驚くべきことに、ウラシルが5’末端に位置するプライマーを用いた場合だけは、例外的にPCRが阻害されず、目的とするサイズの増幅産物が得られた。
【0102】
(2)付加配列を有するプライマー中のdU含有位置の違いによる増幅の有無
5’末端に鋳型DNAと相補的でない5ヌクレオチドの付加配列を有するプライマー(図5b)を用い、実施例1(2)と同じの反応組成および条件でPCRを行った。使用した上流および下流プライマーの配列と使用した組み合わせ表4に示す。
【0103】
各プライマーセットは、大腸菌nfi遺伝子配列内の同じ領域をターゲットとしており、予期される増幅産物のサイズは約367bpである。コントロール実験として、Taq DNAポリメラーゼと、プライマーセット20を用いてPCRを実施した。
【0104】
その電気泳動結果を図9に示す。図9中、レーン1はDNAサイズマーカー100bp DNA Ladder(東洋紡製)、レーン2〜6はそれぞれプライマーセット16〜20を用いたPCR反応液、レーン7はコントロールPCR反応液、レーン8はプライマーを含まない反応結果である。
【0105】
図9に示すように、レーン3〜6において、増幅産物は検出されなかった。レーン2においては、予期される増幅産物のサイズ(約367bp)に一致する約370bpの位置に単一なバンドが検出された。
【0106】
これらの結果は、上記(1)の結果と同様、ウラシルが5’末端に位置するプライマーを用いた場合のみ、例外的にPCRは阻害されることなく反応が進み、目的とするサイズの増幅産物が得られることを示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
<実施例3> SEEPS法によって作製したDNA断片の組換え
(1)dI含有プライマーを使用した粘着末端の作製と、それを利用した組換えDNAの作製
粘着末端を有するインサートDNAを作製するために、まず300μlのPCR反応液を調製した。
【0110】
前記PCR反応液の組成は、1×PCR buffer(東洋紡製、KOD Plus付属品)、終濃度各200μMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP、終濃度1mM 硫酸マグネシウム、終濃度各300nMの上流および下流プライマー、591ngの大腸菌E.coli K−12株由来ゲノムDNA、6ユニットの古細菌由来DNAポリメラーゼKOD Plus(東洋紡製)とした。
【0111】
使用した上流および下流プライマーの塩基配列を表5に示す(配列番号41および42)。これらは、ヒポキサンチンを5’末端に1ヶ所含み、増幅産物の両末端がBam HIサイトと接続するように、5’側に5塩基の付加配列を持つ。このプライマーセットは、大腸菌nfi遺伝子配列内の領域をターゲットとしており、予期される増幅断片のサイズは約367bpである。
【0112】
調製した反応液に対して、次の温度条件でPCRを行った;94℃で2分間を1回、94℃で15秒間、68℃で30秒間の温度サイクルを30回。
【0113】
反応終了後、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN製)を用いて増幅産物を精製し、30μlの10mM Tris−Cl(pH 8.5)を用いて溶出した。溶出液から2μlを分取して2% アガロース電気泳動を行い、臭化エチジウムで染色した後、イメージアナライザーFLA−9000(富士フイルム製)を用いてバンドを可視化した。その結果、予期されるインサートDNAのサイズと同等な単一のバンドが確認された。
【0114】
続いてT4 polynucleotide kinaseを用いて、前記インサートDNAの5’−リン酸化を行った。100μlのリン酸化反応液を調製した。リン酸化反応液の組成は、1×T4 polynucleotide kinase buffer(タカラバイオ製、T4 polynucleotide kinase付属品)、終濃度1mM ATP、2μgのインサートDNA、20ユニットのT4 polynucleotide kinase(タカラバイオ製)とした。
【0115】
前記リン酸化反応液を37℃で、30分間静置した後、MinElute Reaction Cleanup Kit(QIAGEN製)を用いてインサートDNAを精製し、22μlの10 mM Tris−Cl(pH 8.5)を用いて溶出した。
【0116】
ベクターDNAとしてプラスミドpUC18(タカラバイオ製)を使用した。ベクターDNAをBam HI(タカラバイオ製)で、1×K buffer(タカラバイオ製)存在下、30℃、1時間静置した後、MinElute Reaction Cleanup Kit(QIAGEN製)を用いて精製した。
【0117】
精製した4.7μgのベクターDNAを、120ユニットのAlkaline Phosphatase(CIAP、タカラバイオ製)を用いて37℃、30分間静置することで脱リン酸化を行った。その後、MinElute Reaction Cleanup Kit(QIAGEN製)を用いて精製した。
【0118】
ライゲーション反応を行うため、脱リン酸化したベクターDNA(25fmol)とリン酸化したインサートDNA(250fmol)とを加えたDNA溶液 5μlに、DNA Ligation Kit Mighty Mix(タカラバイオ製、T4 DNA リガーゼ)を5μl加え、16℃、30分間静置した。
【0119】
前記のライゲーション反応の終了後、その反応液でE.coli JM109 コンピテントセル(タカラバイオ製)を形質転換し、LB寒天培地(終濃度50μg/ml アンピシリン、100μM IPTG、および40μg/ml X−Galを含む)上でコロニーを形成させた。出現した白コロニーのうち12クローンを拾いプラスミドを抽出した。
【0120】
表6に示したシーケンシングプライマー(配列番号43および44)を用いて、インサートDNA全長およびベクターDNAとの接続部の両鎖の塩基配列を解読した。12クローン中、7クローンが目的のインサートDNAが1コピー挿入されており、かつインサートDNA全長およびベクターDNAとの接続部の塩基配列が企図した配列と完全に一致した。
【0121】
すなわち、接合部の配列は図10(a)に示すように、インサートDNAの両側の5’末端に存在していたヒポキサンチンが、グアニンに置換されたことを確認した。このように、dI含有プライマーを用いたSEEPS法で作製されたインサートDNAが、制限酵素消化などの末端の加工を行うことなく、ベクターDNAの制限酵素サイト中に挿入された。
【0122】
(2)dU含有プライマーを使用した粘着末端の作製と、それを利用した組換えDNAの作製
ウリジンを5’末端に1つ含むプライマーセットを用いて上記(1)と同様な方法でインサートDNAを作製した。使用した上流および下流プライマーの塩基配列を表7に示す(配列番号45および46)。
【0123】
これらのプライマーは、増幅産物の両末端がSal Iサイトと接続するように、5’側に5塩基の付加配列を持つ。このプライマーセットは、大腸菌nfi遺伝子配列内の領域をターゲットとしており、予期される増幅断片のサイズは約367bpである。
【0124】
PCR終了後に精製した増幅産物の電気泳動結果より、予期したサイズ付近に単一のバンドとしてインサートDNAの存在が確認された。その後、上記(1)と同様な方法でT4 polynucleotide kinaseを用いてインサートDNAのリン酸化処理を行った。
【0125】
次にベクターDNAであるプラスミドpUC18(タカラバイオ製)をSalI(タカラバイオ製)で、1×H buffer(タカラバイオ製)存在下、37℃、17時間静置した。その後、上記(1)と同様の手順でベクターDNAを調製した。
【0126】
続いて、インサートDNAとベクターDNAとのライゲーションおよび大腸菌JM109の形質転換を、上記(1)の方法と同様に実施した。出現した白コロニーのうち12クローンを拾いプラスミドを抽出した。
【0127】
これらのプラスミド中の挿入断片の有無およびサイズを確認するために、抽出したプラスミドをSalIで消化し、その反応液を1.5% アガロースゲル電気泳動にかけ、臭化エチジウムで染色した後、イメージアナライザーFLA−9000(富士フイルム製)を用いてバンドを可視化した。
【0128】
その電気泳動結果を図11に示す。レーンM1はλ/Hind III digest(東洋紡製)、レーンM2はLowRanger 100bp DNA Ladder(Norgen Biotek製)、レーンCはpUC18のSalI消化物、レーン1〜12は12のクローンから抽出した各プラスミドのSalI消化物である。
【0129】
図11に示すように、これら12クローンのうち、10のクローンにおいてインサートDNAのサイズ(約367bp)とほぼ一致する位置に明瞭なバンドが検出された。
【0130】
次にプラスミド中のインサートDNA全長およびベクターDNAとの接続部の塩基配列を上記(1)と同様の方法で解読した。その結果、12クローン中、9クローンにおいて、目的のインサートDNAが1コピー挿入されており、かつインサートDNA全長およびベクターDNAとの接続部の塩基配列が企図した配列と完全に一致した。
【0131】
すなわち、接合部の配列は図10(b)に示すように、インサートDNAの両側の5’末端に存在していたウラシルが、チミンに置換されたことを確認した。このように、dU含有プライマーを用いたSEEPS法で作製されたインサートDNAも、制限酵素消化などの末端の加工を行うことなく、ベクターDNAの制限酵素サイト中に挿入された。
【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
<実施例4> SEEPS法によって作製したDNA断片の方向性を持った組換え(I)
ヒポキサンチンを5’末端に含む上流プライマー(配列番号41)と、ウラシルを5’末端に含む下流プライマー(配列番号46)を用いて、実施例3(1)と同様の手順でインサートDNAを作製し、リン酸化反応を行った。
【0136】
pUC18をSalIで37℃、17時間処理した後、BamHIで30℃、1時間処理した。以降、実施例3(1)と同様にベクターDNAを脱リン酸化し、インサートDNAとライゲーションを行い、形質転換後に出現した白コロニー12クローンからプラスミドを抽出した。
【0137】
これらのクローンの塩基配列を解読したところ、12クローン中、7クローンにおいて、図10cのように、インサートDNAが方向性を持って1コピー挿入されており、かつインサートDNAおよび接続部の塩基配列が企図した配列と完全に一致した。
【0138】
これとは別に、ウラシルを5’末端に含む上流プライマー(配列番号45)と、ヒポキサンチンを5’末端に含む下流プライマー(配列番号42)を用いて、上記と同様な方法で、12プラスミドを取得し、それらの塩基配列を解読した結果、4つのクローンにおいて、図10(d)に示すように、インサートDNAが方向性を持って1コピー挿入されており、かつインサートDNAおよび接続部の塩基配列が企図した配列と完全に一致した。すなわち、SEEPS法で調製したインサートDNAを使用し、方向性を持った組換えDNAの作製が可能であることが示された。
【0139】
<実施例5> SEEPS法によって作製したDNA断片の方向性を持った組換え(II)
ベクターDNAの脱リン酸化は行わず、それ以外は実施例4と同様な手順でインサートDNAおよびベクターDNAを調製した。プライマーセットは、ヒポキサンチンを5’末端に含む上流プライマー(配列番号41)と、ウラシルを5’末端に含む下流プライマー(配列番号46)を用いた。
【0140】
ここで、実施例3(1)と同様T4 DNAリガーゼを用いてライゲーション反応を行ったサンプルAと、大腸菌DNAリガーゼを用いてライゲーション反応を行ったサンプルBとを作製した。
【0141】
サンプルBについては、60ユニットの大腸菌DNAリガーゼ(タカラバイオ製)を用い1×E.coli DNA ligase reaction buffer(New England Biolabs製)存在下、16℃、1時間で、ベクターDNA(25fmol)とインサートDNA(250fmol)のライゲーション反応を行った。
【0142】
その後、サンプルAおよびBそれぞれについて、形質転換後に出現した白コロニー12クローンからプラスミドを抽出し、それらの塩基配列を解読した。サンプルA(T4 DNAリガーゼ使用)においてもサンプルB(大腸菌DNAリガーゼ使用)においても、それぞれ12クローン中、6クローンにおいて、図10(c)に示すように、インサートDNAが方向性を持って1コピー挿入されており、かつインサートDNAおよび接続部の塩基配列が企図した配列と完全に一致した。
【0143】
またSEEPS法によって作製したDNA断片の組換えを行う際に、ベクターDNAの脱リン酸化処理を行わなくても目的の組換えDNAの作製が可能であることも示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの粘着末端を有する二本鎖DNAを作製する方法であって、以下の(a)〜(d)の工程;
(a)鋳型DNAと、該鋳型DNAにアニーリング可能な第1のプライマーとを接触させる工程
(b)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第1のプライマーを伸長させ、該鋳型DNAに対して相補的な第1の相補DNA鎖を合成する工程
(c)該第1の相補DNA鎖と、該相補DNA鎖にアニーリング可能な第2のプライマーとを接触させる工程
(d)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の作用によって第2のプライマーを伸長させ、第1の相補DNA鎖に対して相補的な第2の相補DNA鎖を合成する工程
を含み、
前記第1のプライマーおよび第2のプライマーの少なくとも一方が、その5’末端のヌクレオチドに傷害塩基を含むプライマーであり、
前記DNAポリメラーゼ活性を有する酵素が、有意な傷害バイパス活性を示さないDNAポリメラーゼである方法。
【請求項2】
(a)〜(d)の工程が繰り返し行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)〜(d)の工程がポリメラーゼ連鎖反応中に行われる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
傷害塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、キサンチンおよびオキサニンからなる群より選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
傷害塩基が、ウラシルおよびヒポキサンチンから選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有意な傷害バイパス活性を示さないDNAポリメラーゼが、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼおよびその誘導体から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有意な傷害バイパス活性を示さないDNAポリメラーゼが、古細菌由来のファミリーBに属するDNAポリメラーゼおよびその誘導体から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって作製した二本鎖DNAの粘着末端と、該粘着末端と相補的な粘着末端を有するDNAとをライゲーションする組換えDNAの作製方法。
【請求項9】
得られる組換えDNAがベクターである請求項8に記載の組換えDNAの作製方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の作製方法により得られる組換えDNAを含む形質転換体または形質導入体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−51940(P2013−51940A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194109(P2011−194109)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】