説明

粘膜表面への、薬剤化合物の送達に適する薬剤キャリアデバイス

【課題】当該分野で必要とされることは、患者には最小限の不愉快さしか与えずに、良好な接着性および薬剤の局所送達を提供する、水浸食性の薬剤送達デバイスである。
【解決手段】粘膜表面と接触して配置される第一の水浸食性接着層、ならびにヒドロキシプロピルセルロースおよびアルキルセルロースを含む第二の水浸食性非接着裏張り層を有する層状のフィルムを含む薬剤キャリアデバイスであって、ここで該デバイスは、該第一層、該第二層、または両方の層内に組み込まれた薬剤を有し得、そして該アルキルセルロースが、エチルセルロースであり、ヒドロキシプロピルセルロースのエチルセルロースに対する比が1000:1〜3:1である、薬剤キャリアデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、薬剤化合物の局所送達、および処置部位の保護のために、粘膜表面へ接着する、水浸食性の薬剤キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
身体組織、疾患、および創傷の局所処置は、有効な時間にわたって処置部位において特定の薬剤成分が維持されることが必要である。自然の体液が局所的に適用した薬剤成分を迅速に洗い流す傾向を考慮すると、湿った粘膜組織の局所処置には問題がある。口内では唾液、粘膜組織の自然の置換、および食物、飲み物の摂取や会話時の動きが、薬剤キャリアの有効性および残留時間を制限するといういくつかの問題がある。
【0003】
生体接着キャリアは、当該分野で公知であり、そしてゲル、ペースト物、錠剤、およびフィルムを含む。しかし、これらの製品は、効率的および商業的に受容可能な薬剤送達デバイスとしての好ましい特徴のうちの1つまたはいくつかを欠き得る。生体接着キャリアの使用者によって好ましいいくつかの特徴としては、水浸食性;処置部位への取扱いおよび適用が容易であること;快適になるのが容易であること;異物感が最小限であること;および粘膜組織への単一方向かつ特異的放出が挙げられる。粘膜表面の処置のために効果的かつ使用者が取り扱いやすい製品の他の好ましい特徴としては、薬学的に認可された成分または材料の使用;適用時の粘膜表面上への即時的な接着;患部組織の保護または薬剤成分の送達のための残留時間の増加;および患部組織からの送達デバイスの除去の容易さまたは送達部位での送達デバイスの自然浸食が挙げられる。
【0004】
粘膜組織、およびとりわけ口腔での適用に使用される生体接着ゲルは当該分野で公知である。一例として、米国特許第5,192,802号では、カルボキシメチルセルロースナトリウムとキサンタンガムとの混合物から製造された生体接着性の歯発生(teething)ゲルが記載されている。このゲルはまた、アフタ、熱性疱疹、および痔疾の処置における使用可能性を有し得る。しかし、この種類の薬剤キャリアは、唾液のような体液がそれを処置部位から迅速に洗い流すことを考慮すると、非常に限られた残留時間しか有さない。生体接着ゲルはまた、米国特許第5,314,915号;第5,298,258号;および第5,642,749号に記載される。これらの特許に記載されているゲルは、水性または油性の媒体と、種々のタイプの生体接着剤およびゲル化剤とを使用している。
【0005】
義歯接着ペーストは、当該分野で公知の別のタイプの生体接着製品である。しかし、これらの調製物は、組織の保護または薬物の局所送達のためよりも、局所麻酔剤のような薬物は歯肉の潰瘍を軽減するためにこのペースト中に使用され得るが、義歯を歯肉に接着させるために接着特性のために主として使用される。米国特許第4,894,232号および第4,518,721号は、義歯接着ペーストを記載している。米国特許第4,518,721号にはカルボキシメチルセルロースナトリウムとポリエチレングリコール中のポリエチレンオキシドとの組合せが記載されている。
【0006】
ペーストはまた、フィルム保護材として、および薬物送達システムとして使用されている。フィルム形成特性および接着特性を有するこのような一つの例は、商品名Orabase(登録商標)−Bで市販される製品であり、これは口内の潰瘍を軽減するための濃いゲルまたはペーストである。成分としては、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガカントガム、およびペクチンが挙げられる。それは、適用領域にしびれを与えるにも関わらず、そのフィルム形成挙動および生体接着性は持続しない。従って、この製品には限られた残留時間しか有さない。
【0007】
生体接着性の錠剤は、米国特許第4,915,948号に記載される。このデバイスで用いられる水溶性の生体接着性材料は、ポリオールのような接着増強材料と組み合わされたキサンタンガムまたはペクチンである。生体接着性の錠剤を用いることにより残留時間は改善されたが、それらは特に口腔内で使用される場合、錠剤の堅さ、サイズが大きいこと、および遅い溶解時間に伴った不快感を与え、使用者が取り扱いにくい。
【0008】
生体接着性の錠剤はまた、米国特許第4,226,848号;第4,292,299号;および第4,250,163号に記載され、そしてこれは、平均厚さが0.2mm〜2.5mmの単層または二層のデバイスである。これらの特許に記載される生体接着性の錠剤は、セルロースエーテルの様な非接着性の成分、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはポリビニルピロリドンの様な生体接着性成分、および錠剤化の目的のための結合剤を利用している。セルロース誘導体は水浸食性であってもよいし、水浸食性でなくてもよい。
【0009】
より薄く可撓性であり、従って異物感が減少した、包帯または生体接着性積層フィルムの使用が、米国特許第3,996,934号および第4,286,592号に記載されている。これらの製品は、皮膚または粘膜を通して薬物を送達するのに使用される。積層フィルムは通常、接着層、リザーバ層、および裏張り層を含む。所定の速度でかつ一定の期間にわたって皮膚を通して薬物を放出するように設計された生体接着性のデバイスは、通常、水溶性でなく、それゆえに体液によって溶解されないか洗い流されない。
【0010】
皮膚を通しての薬物の送達のためのフィルムシステムに加えて、粘膜表面上での使用のためのフィルム送達システムもまた公知である。これらのタイプのシステムは、水に不溶性で通常、積層フィルム、押出しフィルムまたは複合フィルムの形態であり、米国特許第4,517,173号;第4,572,832号;第4,713,243号;第4,900,554号;および第5,137,729号に記載される。特許第4,517,173号には、薬剤層、低水溶性層、および中間層を含む、少なくとも3つの層からなる膜接着性フィルムが記載され、請求されている。薬剤層は、薬物、ならびにヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されるセルロース誘導体を含む。低水溶性層は、低水溶性の脂肪酸と1以上のセルロース誘導体とを組合せて作られ、そして中間層はセルロース誘導体から作られる。特許第4,572,832号は口内送達用の軟質フィルムに関し、このフィルムは水溶性タンパク質、ポリオール、および多価アルコール(例えばセルロースおよび多糖)の組み合わせ使用によって作られ、そしてまたこの特許は、着色剤または矯味矯臭剤を用いることを教示している。特許第4,713,243号には、40〜95%の水溶性のヒドロキシプロピルセルロース、5〜60%の水不溶性のエチレンオキシド、0〜10%の水不溶性のエチルセルロース、プロピルセルロース、ポリエチレンまたはポリプロピレン、および医薬から製造される単層または多層の、生体接着性の薄いフィルムが記載されている。このフィルムは、3層の積層体であり、そして生体接着層、リザーバ層、および水に不溶性である外側の保護層を含む。特許第5,137,729号では、全身性薬物を含み、水に不溶性の酢酸ビニルホモポリマー、アクリル酸ポリマー、およびセルロース誘導体の混合物を含む口腔粘膜に適用可能な軟質の接着性フィルムを教示している。最後に、特許第4,900,554号では、アクリル酸ポリマー、水に不溶性のセルロース誘導体、および薬剤調製物の混合物を含む接着層、ならびに水に不溶性または難溶性の裏張り層を有する、口腔内での使用のためのデバイスを記載する。この接着層は薬剤を含み、粘膜表面への適用によって、薬物を送達する。特許第4,990,554号はまた、「身体組織への適用のための接着デバイスを達成することは、3つの成分すべて、すなわち、アクリル酸ポリマー、水不溶性のセルロース誘導体、および水不溶性または難溶性の裏張り層が揃わなければ不可能である。」と記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
JP56−100714には、被覆層および活性成分層を含む調製が記載される。被覆層は粘膜に接着し、セルロースエーテル、またはアクリル酸ポリマーもしくは塩を含む。活性成分層は、脂肪および油、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコールまたはグリセロールエステルのような水不溶性物質を含む軟膏基剤を含んでいる。界面活性剤および活性成分もまた、活性成分層に存在する。従って、活性成分層は、本質的に非水浸食性の物質と混合されている。粘膜組織上への接着によって口腔で適用される薄いフィルムの従来の例はすべて、本来水不溶性であるか、または架橋することにより水不溶性にされるポリマーを利用し、長い残留時間を請求している。従って、残念ながら上述した薄いフィルムの例は、良好な接着特性を有する、水浸食性のデバイスを提供しない。従って、所望の量の薬物の放出の際に、この水不溶性ポリマーから成る薄いフィルムは、適用部位からはがされねばならない。このようなはがすことは、粘膜組織から組織をしばしば剥離させ、患者に痛みを伴う。当該分野で必要とされることは、患者には最小限の不愉快さしか与えずに、良好な接着性および薬剤の局所送達を提供する、水浸食性の薬剤送達デバイスである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(項目1) 粘膜表面と接触して配置される第一の水浸食性接着層、ならびにヒドロキシプロピルセルロースおよびアルキルセルロースを含む第二の水浸食性非接着裏張り層を有する層状のフィルムを含む薬剤キャリアデバイスであって、ここで該デバイスは、該第一層、該第二層、または両方の層内に組み込まれた薬剤を有し得る、薬剤キャリアデバイス。
(項目2) 前記アルキルセルロースが、メチルセルロースまたはエチルセルロースである、項目1に記載のデバイス。
(項目3) 前記アルキルセルロースが、エチルセルロースである、項目1に記載のデバイス。
(項目4) 前記ヒドロキシプロピルセルロースのエチルセルロースに対する比が1000:1〜3:1である、項目3に記載の薬剤キャリアデバイス。
(項目5) 前記ヒドロキシプロピルセルロースのエチルセルロースに対する比が、200:1〜4:1である、項目3に記載のデバイス。
(項目6) 前記ヒドロキシプロピルセルロースのエチルセルロースに対する比が、200:1〜8:1である、項目3に記載のデバイス。
(項目7) 粘膜表面と接触して配置される第一の水浸食性接着層、および第二の水浸食性非接着裏張り層を有し、少なくとも1つの該層が、浸食反応速度を変化させる量の水溶性非可塑性賦形剤を含む、層状のフィルムを含む薬剤キャリアデバイスであって、ここで該デバイスは、該第一層、該第二層、または両方の層内に組み込まれた薬剤を有し得る、薬剤キャリアデバイス。
(項目8) 前記賦形剤が、水溶性塩である、項目7に記載のデバイス。
(項目9) 前記塩が、クロリド、カーボネート、バイカーボネート、シトレート、トリフルオロアセテート、ベンゾエート、ホスフェート、フルオリド、スルフェート、またはタルトレートのナトリウム塩またはカリウム塩である、項目8に記載のデバイス。
(項目10) 前記塩が、安息香酸ナトリウムである、項目8に記載のデバイス。
(項目11) 前記裏張り層が、前記賦形剤を含む、項目7〜10のいずれかに記載のデバイス。
(項目12) 前記裏張り層が、浸食反応速度を変化させる量の水溶性非可塑性賦形剤を含む、項目1〜6のいずれかに記載のデバイス。
(項目13) 前記賦形剤が、水溶性塩である、項目12に記載のデバイス。
(項目14) 前記賦形剤が、安息香酸ナトリウムである、項目12に記載のデバイス。(項目15) 前記第一の水浸食性接着層が、アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース、および生体接着ポリマーを含む、項目1〜14のいずれかに記載のデバイス。
(項目16) 前記第一の水浸食性接着層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、多糖および誘導体、またはキチンおよびキトサンから、単独または組み合わせて選択されるフィルム形成ポリマー、ならびにポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムから単独または組み合わせて選択される生体接着ポリマーを含む、項目15に記載のデバイス。
(項目17) 前記層状のフィルムが、2つの層を有し、そして厚さの合計が0.1mm〜1mmである、項目1〜16のいずれかに記載のデバイス。
(項目18) 前記第一の接着層と前記第二の裏張り層との間に第三の層をさらに含み、そしてここで該第三の層が、該第一の接着層を取り囲みかつ前記粘膜表面に接触するのに十分な表面積を有する水浸食性接着層である、項目1〜17のいずれかに記載のデバイス。
(項目19) 前記第一の層、前記第二の層、または両方の層内に組み込まれ得る前記薬剤が、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、殺菌剤、消毒剤、血管収縮剤、止血剤、化学療法剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、血圧降下剤、気管支拡張剤、抗コリン作用剤、アンチメニミック化合物、ホルモン、高分子、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを、単独または組み合わせて含む、項目1〜18のいずれかに記載のデバイス。
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、適用部位、周囲の組織、および血液またはリンパ液のような他の体液の保護、および適用部位への薬剤の局所送達を提供するための、有効な残留時間を有し、最小限の不快さしか有さず、使用が簡便な、粘膜表面への適用のための新規の水浸食性の薬剤キャリアデバイスに関する。1つの実施態様では、薬剤送達デバイスは水浸食性の層状のフィルムディスクを含んでいる。このデバイスは、接着層および裏張り層を有する層状のフィルムディスクを含み、この二層は両方とも水浸食性であり、これらの層の1つ以上には薬剤を有している。
【0014】
別の実施態様では、薬剤送達デバイスは第一の接着層と第二の裏張り層の間に、第三の層をさらに含んでいる。第三の層は上述した第一の接着層を取囲み、かつ粘膜表面に接触するのに十分な表面積を持つ、水浸食性の接着層である。このように、薬剤の局所送達が、粘膜層に向かって一方向の様式で、達成され得る。
【0015】
接着層は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよびその誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖類および誘導体、キチンまたはキトサンのようなフィルム形成ポリマーを単独または組み合わせて含み、そしてポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムのような生体接着ポリマーを単独または組み合わせて含む。
【0016】
非接着性裏張り層は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーを単独または組み合わせて含む。
【0017】
本発明の別の実施態様では、デバイスの1つ以上の層はさらに、浸食性の反応速度を調整するように作用する成分を含み、そして薬剤の放出およびデバイスの寿命を変化させる簡便な方法を提供する。浸食性の反応速度を調整するように作用する成分は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド−グリコリドコポリマー、ポリ−M−カプロラクトンおよび誘導体、ポリオルトエステルおよび誘導体、ポリ無水物および誘導体、エチルセルロース、酢酸ビニル、酢酸セルロース、ならびにポリイソブチレンを単独または組み合わせた、水ベースのエマルジョンである。浸食性の反応速度を調整するように働く別の成分は、アルキルグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレエート、セバカート、ステアレートもしくはグリセロールのエステル、またはフタレートの単独または組み合わせである。
【0018】
本発明の別の実施態様では、デバイスの層の数はさらに、浸食性の反応速度を調整し、ならびに薬剤の放出およびデバイスの寿命を変える簡便な様式を提供するように変化させ得る。
好ましい実施態様では、裏張り層は、異なる浸食性の反応速度を有する2つ以上の層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、三層を成しているフィルムディスクであり、ここで層2および層3は生体接着層であり、層1は裏張り層である。
【図2】図2は、三層を成しているフィルムディスクであり、ここで二つの層は生体接着層であり、もうひとつの層は裏張り層である。生体接着層である層3(これは粘膜組織に接着する)はより小さな表面積の層であり、第二の生体接着層である層2によって取囲まれ、一方向の送達を与える。層1は裏張り層である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される用語「水浸食性」とは、成分、デバイス、層などが唾液のような水ベースの媒体中で経時的に浸食することを意味する。そのような水中での浸食は、溶解、分散、摩擦、重力などの要素に起因し得る。
【0021】
本明細書中で使用される用語「浸食性の反応速度」または「浸食の反応速度」は、キャリアデバイスからの薬剤の放出のタイミング(放出のプロフィール)、およびそのデバイス自体の時間の経過による浸食のタイミング(寿命、またはデバイスの残留時間)をいう。本明細書で記載のように、浸食性の反応速度は、デバイス中の成分のタイプおよび量、デバイス中の層の厚さおよび数、ならびにデバイス中の添加剤または賦形剤のような要素に基づいている。デバイスの成分全てが水溶性が極めて高い場合、浸食性の反応速度は溶解性の反応速度と極めて似ている。
【0022】
本発明においては、粘膜表面に接着する新規の水浸食性薬剤デバイスが提供される。本発明は濡れた表面を持ち、体液の影響を受けやすい体内組織(例えば口、膣、または他のタイプの粘膜表面)、疾病、または創傷の局所的処置における特別の用途が見出されている。このデバイスは薬剤を送達し、そして粘膜表面への適用および接着において保護層を提供し、そして、組織、および他の体液に包まれた処置部位へ薬剤を送達する。このデバイスは水溶液または唾液などの体液中での浸食の調整、および送達と同時、または送達に続くフィルムの遅い自然な浸食が与えられると、処置部位での効果的な薬剤送達のために適切な残留時間を提供する。1つの実施態様において、薬学成分送達デバイスは、接着層および裏張り層(両方、水浸食性であり、両方、もしくは一方に薬剤成分を有している)を有する、層状フィルムディスクを含む。
【0023】
処置部位からゲルを洗い流してしまう唾液などの体液の性質による極めて限られた残留時間しか持たない、当該分野で公知である生体接着ゲル、およびペーストとは異なり、本発明はそれの薄膜性の一貫性および成分によって残留時間の増加を示す。Orajel(登録商標)、Orabase(登録商標)、もしくはKanka(登録商標)などの水性のゲル、またはペーストの代表的な残留時間は数分である。この短い残留時間は限られた、または低い接着性による結果である。代表的な水性ゲルでは、粘膜接着性成分は溶液、懸濁液、もしくは膨潤体(swollen)中のいずれかにある。しかし、一旦粘膜表面へ適用されると、水ベースのゲルは、親油性の粘膜表面にすぐには浸透しない。これらのゲルの組成および親水性は、唾液とすぐに混合する傾向があり、ゲルの異なる成分をすぐに引き離すこと、および残留時間を制限することをもたらす。同様の傾向として、ペーストに関して、粘度の増加のタイミングがわずかだけ遅れることが予想される。本発明は、その固体形成、および粘膜表面へのその即効的な接着によって、接着を保証する長持ちする接触(高分子鎖および粘膜組織の糖タンパク質のからみ合いの結果による)を与える。唾液および他の水性媒体における、浸食の反応速度は、デバイスの物理的な状態の影響を受ける。ゲル、または溶液が唾液および/または他の体液とすぐに混合するのに対して、同じかまたは類似の組成物の固体形態(例えば、本発明のフィルム)は、より遅く溶解(浸食)する。
【0024】
また、当該分野で公知である生体接着性の錠剤とは異なり、本発明の薬剤デバイスは、処置部位へ効果的な薬剤送達を提供するのに十分な時間の間の、異物の適用に関わる不快感を最小限にする。しばしば先行技術の生体接着性の錠剤の使用者は、とりわけ口腔での使用時の硬さ、大きさ、および浸食性の場合の遅い溶解時間による不快な感覚を経験している。さらに、生体接着性の錠剤の代表的な厚さが水溶性であり得てもそうでなくても、2、3ミリメーターで厚いことから、好ましい適用部位は上部歯肉領域である。送達される化合物のタイプ、それらの生物学的利用能、および薬物動態が制限されるので、この部位は、特定領域への送達に通常、満足なものでない。錠剤とは対照的に、本発明のデバイスは、不快感が最小かつ使用が簡便であると共に、効果的な残留時間の利点を提供し、その薄さや可撓性の形態のため、局所的および全身的な薬剤の送達のための適切なビヒクルでもある。
【0025】
最後は、当該分野で公知である、皮膚または粘膜を通しての薬剤の送達に使用されるフィルムシステムとは異なり、本発明のデバイスは水浸食性の成分から作られ、したがって生体浸食性である。水浸食性の成分の使用は、薬剤が適用部位に残留する間、自然の体液がキャリアをゆっくりと溶解し、または浸食して、デバイスを一定時間を超えて浸食させる。包帯や他の非水浸食性フィルムシステムとは異なり、本発明の使用者は処置後のデバイスを除去する必要がない。適用の際に、水吸収がデバイスを軟化させ、そして時間が経つにつれてデバイスは徐々に溶解または浸食されるので、使用者は粘膜表面か体腔内に異物の存在の感覚を経験することもない。
【0026】
本発明のデバイスの残留時間は、処方物に使用されている水浸食性ポリマーの浸食速度、およびそれらのそれぞれの濃度に依存する。浸食速度は、例えば、異なる溶解特性を有する成分または化学的に異なるポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース)を一緒に混合することによって;分子量グレードが異なる同じポリマーを使用すること(例えば、低分子量、および中分子量のヒドロキシエチルセルロースを混合すること)によって;種々の親油性の度合、または水溶性の特性(本質的に不溶性の成分を含む)の賊形薬、または可塑剤を使用することによって;可溶性の有機塩および無機塩を使用することによって;架橋剤(例えば、グリオキサール)を部分的な架橋のためにヒドロキシエチルセルロースのようなポリマーと併用して使用することによって;または、放射線照射もしくは硬化の後処理(post−treatment)(これらは一度得られたフィルムの結晶性または相転移を含むフィルムの物理状態を変え得る)によって調節され得る。これらのストラテジーは、デバイスの浸食の速度を変更するために単独、または組み合わせて使用され得る。
【0027】
適用において、薬剤送達デバイスは粘膜表面に接着し、適所で保持される。水吸収はデバイスを軟化させ、それにより、異物の感覚が減少する。デバイスは粘膜表面に残るので、薬剤の送達が起こる。残留時間は、選択された薬剤の送達の所望のタイミングおよびキャリアの所望の寿命に依存する広範にわたって調節され得る。しかし一般に、残留時間は約数秒から約数日の間に調節される。好ましくは、ほとんどの薬剤についての残留時間は約30分から約24時間に調節される。より好ましくは、残留時間は約1時間から約8時間に調節される。薬物送達を供することに加えて、デバイスは、一旦粘膜表面に接着すると、それは処置部位の保護も提供し、浸食性の包帯として作用する。
【0028】
一つの実施態様において、本発明は、接着層、および類似しているかまたは異なる親水性を有する成分からなり得る非接着性の裏張り層を有するフィルムディスクを含む。薬剤成分は、各層中に含まれ得るが、好ましくは接着層中に含まれる。接着層は処置部位に最も近く、そして裏張り層が内部を保護するのでより遅い浸食時間を有し、接着層は典型的には最初に浸食する。
【0029】
接着層は少なくとも一つのフィルム形成水浸食性ポリマー(「フィルム形成ポリマー」)および生体接着性能が公知の、少なくとも一つの薬理学的に受容可能なポリマー(「生体接着ポリマー」)を含有し得る。フィルム形成ポリマーは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖類および誘導体、キチンおよびキトサンを、単独かまたは組み合わせて含み得る。好ましくは、フィルム形成ポリマーは、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含む。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースの場合、平均分子量(固有粘度の測定から見積もられたMw)は、102〜106の範囲であり、そしてより好ましくは103〜105の範囲であり、一方、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、平均分子量(サイズ排除クロマトグラフィー測定から得られたMw)は、50×103〜1.5×106の範囲であり、そしてより好ましくは80×103〜5×105の範囲である。
【0030】
接着層の生体接着性ポリマーは、ポリアクリル酸(PAA)(これは、部分的に架橋されていてもよいし、もしくは架橋されていなくてもよい)、カルボキシメチルセルロース
ナトリウム(NaCMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせを包含し得る。これらの生体接着性ポリマーは、乾燥したフィルムの状態において、良好かつ即効性の粘膜付着性の特性を有するため、好ましい。カルボキシメチルセルロースナトリウムの場合は、0.7の置換度で、50,000〜700,000の典型的平均分子量、そして好ましくは60,000から500,000の典型的平均分子量を包含する。置換範囲は、0.5と1.5との間、好ましくは0.6と0.9との間で変動する。ポリビニルピロリドンは、その平均分子量によって特徴付けられ得、5,000と150,000との間、そして好ましくは10,000と100,000との間の平均分子量を包含する。PAAとあるグレードのPVPとの同時使用は、1つもしくは両方の成分の沈澱をもたらし得る。この沈澱は、均一な層を得るために理想的であり得ず、そしてそのデバイスの全体的な接着特性を僅かに変化させ得る。
【0031】
特定の理論に縛られることは望まないが、本発明の接着特性は、ポリマー鎖のもつれ、および粘膜表面の糖タンパク質との相互作用の結果である、と考えられている。鎖および側基ならびに架橋剤を含む生体接着性ポリマーの化学的性質は、粘膜構成成分とポリマーとの間、またはポリマー間の相互作用(例えば、物理的もつれ、ファンデルワールス力、および水素結合)を発生させる。粘膜組織の成分が、個体別に異なっており、経時的に自然に変化すると仮定すると、生体接着性ポリマーの組み合わせの使用、または同じポリマーの異なるグレードの物の組み合わせの使用が好ましい。少なくとも2つの生体接着性ポリマーの組み合わせを使用することは、デバイスの接着能力を最大化するが、単一の生体接着性ポリマーを使用することも、同様に効果的である。
【0032】
接着層においてフィルムを形成しているポリマーに対する、生体接着性ポリマーの割合は、薬剤のタイプ、および用いられる薬剤の量に依存して変動し得る。しかしながら、接着層において組み合わせられた成分の含有量は、通常、5重量%と95重量%との間であり、好ましくは、10重量%と80重量%との間である。異なった生体接着性ポリマー(PAA、NaCMC、およびPVP)の重量パーセントの面から、いくつかの実施例を、以下に提供する。そして当業者は、この実施例を用いて、所定の適用に対する所望の特徴を有する薬剤デバイスを得るためのパーセンテージを容易に調節できる。好ましい組み合わせには、PAAとNaCMC、NaCMCとPVP、もしくはPAAとPVPが包含され、そして、同じポリマーの異なるグレードを使用することも包含される。
【0033】
非接着性裏張り層は、水浸食性のフィルムを形成する、薬学的に受容可能なポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖類および誘導体、キチンおよびキトサン)を単独もしくは組み合わせて含有し得る。裏張り層成分は、所望の浸食反応速度に依存して、架橋されてもよいし、もしくは架橋されなくともよい。1つの実施態様では、好ましい裏張り層成分は、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはヒドロキシプロピルセルロースを含有し、そして、より好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースを含有する。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースの場合、その平均分子量(固有粘度の測定から見積もられたMw)は、102〜106の範囲内であり、そしてより好ましくは、103〜105の範囲内である。一方、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、その平均分子量(サイズ排除クロマトグラフィー測定から得られたMw)は、50×103〜1.5×106の範囲内であり、そしてより好ましくは、80×103〜5×105の範囲内である。
【0034】
さらに、裏張り層の特に好ましい組み合わせは、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアルキルセルロース(例えば、メチルセルロースまたはエチルセルロース)を含むことが、見出されている。そのような組み合わせは、アルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、および適切な溶媒のフィルム形成量が含まれる。有利なことに、ゲルから形成されるフィルムの特徴は、アルキルセルロースに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率に依存して変更され得る。そのような変更可能な特徴は、浸食性の反応速度を有利に含む。
【0035】
代表的には、アルキルセルロースに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率は、適切なフィルムを形成する必要がある。この比率は、他の成分およびアルキルセルロースの型に基づいて変化し得る。しかし、エチルセルロースが、使用される場合、次いでエチルセルロースに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率は、通常約1000:1〜約3:1であり、好ましくは、約200:1〜約4:1であり、さらに好ましくは、約200:1〜約8:1である。代表的に、アルキルセルロースに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が増加した場合、水浸食性が増加する(すなわち、フィルムは、より容易に洗浄される)。従って、エチルセルロースは、デバイスの浸食性の反応速度の調節に作用する成分である。
【0036】
上記のように、1つ以上の層(接着層、裏張り層、もしくは両方)の浸食反応速度は、残留時間および薬物の放出プロフィールを変更するため、多くの異なった方法で変化させ得る。1つの方法は、フィルム形成ポリマーを架橋する、もしくは可塑化することによるものである。当該分野で公知の架橋剤は、本発明において使用するのに適しており、グリオキサール、プロピレングリコール、グリセロール、異なった大きさのジヒドロキシ−ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。用いられる架橋剤の量は特定のポリマーおよび架橋剤に依存して変動し得るが、通常は、ポリマー材料の5%モル当量を越えるべきでなく、そして、好ましくは、0〜3%モル当量のポリマー材料を含有する。
【0037】
残留時間および放出プロフィールを変化させる別の方法は、層の浸食能力の反応速度を調節するように作用する、1つ以上の層において成分を利用することである。これらの成分は、利用される特定の薬剤送達デバイスに広く依存して変化するが、好ましい成分は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド−グリコリドコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトンおよび誘導体、ポリオルトエステルおよび誘導体、ポリ無水物および誘導物、エチルセルロース、酢酸ビニル、酢酸セルロース、シリコン、ポリイソブチレンおよび誘導体の水ベースエマルジョンを、単独でもしくは組み合わせて含む。
【0038】
デバイスの浸食の反応速度を調節することもまた、水に非常に可溶性の賦形剤(例えば、水溶性の有機塩および無機塩)を添加することにより可能である。そのような適切な賦形剤は、クロリド、カーボネート、バイカーボネート、シトレート、トリフルオロアセテート、ベンゾエート、ホスフェート、フルオリド、スルフェートまたはタルトレートのナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられ得る。添加される量は、浸食反応の反応速度をどのくらい変化させるのか、ならびにデバイス中の他の成分の量および性質に依存して変化する。
【0039】
上記の水ベースエマルジョンにおいて使用される代表的な乳剤は、好ましくは、リノール酸、パルミチン酸、ミリストオレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セトレイン酸、もしくはオレイン酸および、ナトリウムもしくはカリウム水酸化物から選択される場合にインサイチュで得られるか、あるいはソルビトールおよびソルビトール無水物のラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルもしくはオレイン酸エステル、モノオレイン酸、モノステアリン酸、モノパルミチン酸、モノラウリン酸、脂肪アルコール、アルキルフェノール、アリール(alyl)エーテル、アルキルアリールエーテル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、およびモノパルミチン酸ソルビタンを包含するポリオキシエチレン誘導体から選択される。
【0040】
さらに、ポリエステル脂肪族ファミリー(ラクチド−グリコリドのコポリマー、カプロラクトンのコポリマーなど)のような水不溶性のポリマー材料の場合、平均分子量(Mw)は、102〜105の範囲内であり、そしてより好ましくは、103〜104の範囲内である。一方、セルロース誘導体ファミリー(エチルセルロース、酢酸セルロースなど)の場合、平均分子量(固有粘度の測定から見積もられたMw)は、102〜106の範囲内で、そしてより好ましくは、103〜105の範囲内である。
【0041】
任意の層における、浸食反応速度を変更する、さらに別の方法は、フィルムを同時に可塑化する賦形剤を使用することによる。この賦形剤または可塑剤は、しばしばデバイスの機械的特性を改善し、そして/または薬物放出プロフィールもしくは分解時間を変更する。層(複数層)の浸食挙動を変更する、適した賦形剤もしくは可塑剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなアルキルグリコール、オレイン酸、セバシン酸、ステアリン酸もしくは、グリセロールエステル、フタル酸エステルおよびその他のエステルを包含し得る。他の適切な可塑剤は、エステル(例えば、アセチルシトレート、オレイン酸アーネル(arnyl)、酢酸ミリストイル、オレイン酸ブチル、およびステアリン酸ブチル)、セバシン酸ジブチル、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、およびフタル酸ジエトキシエチルなど)、脂肪酸(例えば、オレイン酸およびステアリン酸)、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール、ミリストイルアルコール、およびステアリルアルコール)が挙げられる。さらに、いくつかの例においては、ポリマー、薬剤、または溶媒残渣が、可塑剤として作用し得る。
【0042】
層の厚さおよび数を調節することにより、本発明のデバイスの浸食反応速度を変更することもまた、可能である。典型的には、層が厚くなるほど、薬剤の放出が遅くなり、かつ放出プロフィールが長くなる。対応して、層が多く存在するほど、薬剤の放出が遅くなり、かつ放出プロフィールが長くなる。1つの好ましい実施態様では、裏張り層は、異なった浸食反応速度を有する2つ以上の層を包含する。
【0043】
さらに、明確な分子量特徴を有する異なったポリマー、もしくは類似したポリマーの組み合わせは、どの層においても、好ましいフィルム形成能力、力学的特性、および溶解の反応速度を達成するために使用され得る。本発明において使用されるいくつかの組み合わせは、以下の実施例で提供され、そして3/4のヒドキシエチルセルロース、および1/4のヒドロキシプロピルセルロース;4/5の低分子量ヒドロキシエチルセルロースおよび1/5の中分子量ヒドロキシエチルセルロース;ならびに、8/9の低分子量ヒドロキシエチルセルロースおよび1/9の高分子量ヒドロキシエチルセルロースを包含する。前記のように、水浸食性ポリマーの組み合わせは、デバイスの浸食速度を変更するために使用され得る。特に好ましい組み合わせには、1/2のヒドロキシエチルセルロース、1/6のヒドロキシプロピルセルロース、および2/6のシュードラテックス(pseudolatex)(すなわち、ポリマーのエマルジョン、ラクチド−グリコリドコポリマーのエマルジョンである)が挙げられる。
【0044】
本発明の薬剤成分は、単独薬剤、もしくは薬剤の組み合わせを包含し、これは接着層、裏張り層、もしくはその両方において組み込まれ得る。単独、もしくは組み合わせて使用され得る薬剤は、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、殺菌剤および消毒剤、血管収縮神経剤、止血剤、化学療法剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、血圧降下剤、気管支拡張剤、抗コリン作用剤、アンチメニミック(antimenimic)化合物、ホルモンおよび高分子、ペプチド、タンパク質、およびワクチンを包含する。
【0045】
抗炎症性鎮痛剤の例には、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマック、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、チアラミド塩酸塩などが挙げられ、ステロイド性抗炎症剤の例には、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニソロン、メチルプレドニソロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フルオシノニドなどが挙げられる。
【0046】
抗ヒスタミン剤の例としては、ジフェンヒドラミン塩酸塩、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸イソチペンジル塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、メスジラジン塩酸塩などを包含する。局所麻酔薬の例としては、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイ
ン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカイン、p-ブチルアミノ安息香酸−2−(ジ(die)−エチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、クロロプロカイン塩酸塩、オキシプロカイン塩酸塩、メピバカイン、コカイン塩酸塩、ピペロカイン塩酸塩、ジクロニン、ジクロニン塩酸塩などが挙げられる。
【0047】
殺菌剤及び消毒剤の例には、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩酸セチルピリジニウム、オイゲノール、臭化トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。血管収縮剤の例には、硝酸ナファゾリン、テトラヒドロゾリン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩、フェニルエフェリン塩酸塩、トラマゾリン塩酸塩などを包含する。止血剤の例には、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロム硫酸ナトリウム、ルチン、ヘスペリジンなどを包含する。
【0048】
化学療法剤の例には、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフィソキサゾール、スルフィソミジン、サルファメチゾール、ニトロフラゾンなどが挙げられる。抗生物質の例には、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロジン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、シクロセリンなどが挙げられる。
【0049】
角質溶解剤の例としては、サリチル酸、ポドフィルム樹脂、ポドリフォックス(podolifox)、およびカンタリジンが挙げられる。焼灼剤の例としては、クロロ酢酸および硝酸銀が挙げられる。抗ウイルス剤の例としては、プロテアーゼインヒビター、チミジン(thymadine)キナーゼインヒビター、糖もしくは糖タンパク質合成インヒビター、構造タンパク質合成インヒビター、接着もしくは吸着インヒビター、およびヌクレオシド類似体(例えば、アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、およびガンシクロビル)が挙げられる。
【0050】
タンパク質、ペプチド、ワクチン、遺伝子などの例としては、ヘパリン、インスリン、LHRH、TRH、インターフェロン、オリゴヌクリド(oligonuclide)、カルシトニン、およびオクトレオチドが挙げられる。
【0051】
使用され得る他の薬剤としては、オメプラゾン(omeprazone)、フルオキセチン、エチニルエストラジオール、アムロジピン(amiodipine)、パロキセチン、エナラプリル、リジノプリル、ロイプロリド、プラバスタチン(prevastatin)、ロバスタチン、ノルエチンドロン、リスペリドン(risperidone)、オランザピン(olanzapine)、アルブテロール、ヒドロクロロチアジド、偽エフェドリン(pseudoephridrine)、ワルファリン、テラゾシン、シサプリド、イプラトロピウム、ブスピロン(busprione)、メチルフェニデート、レボチロキシン、ゾルピデム、レボノルゲストレル(levonorgestrel)、グリブリド、ベナゼプリル(benazepril)、メドロキシプロゲステロン、クロナゼパム、オンダンセトロン、ロサルタン、キナプリル(quinapril)、ニトログリセリン、ミダゾラムバースト(midazolam versed)、セチリジン(cetirizine)、ドキサゾシン、グリピジド、ワクチンB型肝炎、サルメテロール(salmeterol)、スマトリプタン、トリアムシノロンアセトニド、ゴセレリン、ベクロメタゾン、グラニセトロン(granisteron)、デソゲストレル(desogestrel)、アルプラゾラム、エトラジオール、ニコチン、インターフェロンβ1A、クロモリン、フォシノプリル(fosinopril)、ジゴキシン、フルチカソン(fluticasone)、ビソプロロール、カルシトリオール(calcitril)、カプトプリル(captorpril)、ブトルファノール、クロニジン、プレマリン(premarin)、テストステロン、スマトリプタン、クロトリマゾール、ビサコジル、デキストロメトルファン、ニトログリセリンインD(nitroglycerin In D)、ナファレリン(nafarelin)、ジノプロストン、ニコチン、ビサコジル、ゴセレリン、およびグラニセトロンが挙げられる。
【0052】
使用されるべき活性薬剤の量は、所望される処置強度および層の組成に依存するが、好ましくは、薬剤成分は、デバイスの約0.001重量%〜約99重量%、より好ましくは、約0.003重量%〜約30重量%、および最も好ましくは、約0.005重量%〜約20重量%を構成する。
【0053】
可塑剤、矯味矯臭剤および着色剤、ならびに保存剤はまた、接着層、裏張り層、もしくは両方の層において本発明の薬剤送達デバイスに含まれ得る。各々の量は、薬物もしくは他の成分に依存して変動し得るが、代表的には、これらの成分は、デバイス全体の50重量%未満、好ましくは30重量%未満、最も好ましくは15重量%未満を構成する。
【0054】
透過エンハンサーは、薬物の吸収を改良するためにデバイスに添加され得る。代表的には、このような透過エンハンサーは、薬剤が含まれるべき層に添加される。適切な透過エンハンサーは、天然もしくは合成の胆汁塩(例えば、フシジン酸ナトリウム;グリココレート酸もしくはデオキシコレート酸);脂肪酸および誘導体(例えば、ラウリル酸ナトリウム、オレイン酸、オレイルアルコール、モノオレイン、およびパルミトイルカルニチン);キレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム、アゾン、コール酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸ナトリウム、ラウリル酸ソルビタン、グリセリルモノラウレート、オクトキシノニル(octoxynonyl)−9、ラウレト(laureth)−9、ポリソルベートなど)を包含する。
【0055】
デバイスの厚さは、各々の層の厚さおよび層の数に依存して変動し得る。上記に記載のように、層の厚さおよび数は、浸食反応速度を変動させるために調節され得る。好ましくは、デバイスが2層のみを有する場合、厚さは0.05mm〜3mm、好ましくは0.1mm〜1mm、およびより好ましくは0.1mm〜0.5mmの範囲内である。各々の層の厚さは、層状デバイスの全体的な厚さの10%〜90%で変動し得、そして好ましくは、30%〜60%で変動する。従って、各々の層の好ましい厚さは、0.01mm〜0.9mmで、そしてより好ましくは、0.03mm〜0.6mmで変動し得る。
【0056】
本発明のデバイスは、2つの層(すなわち、接着層および裏張り層)のみを必要とするが、さらなる層を有することはしばしば好ましい。このことが有利であり得る1つの例は、薬剤の特異的な一方向性の流れが粘膜層に向かうことが必要とされる場合である。上記に記載された層状デバイスは、いくつかの方向性の放出を提供する(すなわち、放出は、主に粘膜に向かい、そして例えば、口もしくは膣腔には向かわない)。しかし、薄いフィルムの膨張特性に起因して、全ての層がほぼ同じ表面領域の層でありかつ互いに表面の頂部に本質的に存在する場合、少量の薬剤がまた、デバイスおよび裏張り層の側面を通して放出され得る。優先的ではあるが、特異的ではない放出は、多くの薬剤について受容可能であり、そして望ましくさえある一方で、他の薬剤は、粘膜組織への一方向性かつ特異的な放出を必要とし得る。
【0057】
一方向性の放出が所望され得る場合の例は、送達されるべき薬剤が、特異的な治療ウィンドウ(window)を有するか、もしくは胃腸管で吸収された場合に好ましくない副作用を有する場合である。さらにいくつかの薬剤は、酵素的に分解される。それゆえ、経粘膜一方向性送達を可能にし、かつ(例えば口内もしくは膣腔中)に存在する酵素から送達される薬剤を保護することを可能にする、生体浸食性の粘膜接着系は、利点を有する。
【0058】
一方向性の放出が所望されるこのような場合において、付加的な層は第1の接着層と第2の裏張り層との間に位置し得る。第3の層は、この第1番目の接着層を包囲し、そして粘膜表面に接触するために十分な表面積を有する水浸食性接着層である。この第3の層は、第1の接着層について上記される成分のいずれかから構成され得、従って、第1の接着層と同様もしくは異なり得る。図2は、第1の接着層を包囲する第3の層を有するディスクを示す。
【0059】
生体接着層が、他の層よりも表面積がより小さい層であるべきである場合、通常、他の層よりも約5%と約50%との間、好ましくは約10%と約30%との間で小さい。
【0060】
前記の様式において、薬剤の局所送達は、一方向性の様式において達成され得る。例えば、薬剤が第1の接着層に存在している場合には、この薬剤はデバイスの側面および背面を通しての放出が妨げられる。薬剤が裏張り層に存在する場合には、この薬剤は、デバイスが接着している粘膜層に入ることが妨げられる。同様に、薬剤が第1の接着層および裏張り層に存在する場合には、これらの薬剤は混合が妨げられる。
【0061】
本発明の薬剤送達デバイスは、当該分野で公知の多くの方法により調製され得る。1つの実施態様では、成分は、生体適合性溶媒、好ましくは、水性媒体または水と低級アルカノールとの組み合わせ中に溶解されて、コーティングに使用され得る溶液、ゲル、または懸濁液が調製される。本発明において使用する溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、もしくは低級アルキルアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)、またはアセトンを含み得る。他の適切な溶媒としては、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、エトキシジグリコール、プロピレングレコール、ポリエチレングリコールが含まれ得る。フィルム中の最終溶媒含有量もしくは滞留溶媒含有量は、どちらか一方もしくは両方の層の結果であり得る。代表的には、このような最終溶媒含有量は、デバイス全体の少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約1重量%である。同様に、最終溶媒含有量は、デバイス全体の約20重量%以下、好ましくは約15重量%以下、最も好ましくは約10重量%以下である。溶媒は、可塑剤もしくは浸食速度改変剤としても使用され得る。
【0062】
各々の溶液は、次いで基材上に被覆される。結果的に、成分の1つが、懸濁液中に存在し得る。各々の溶液は、当該分野で公知の技術(例えば、フィルム浸漬、フィルムコーティング、フィルムキャスティング、スピンコーティング、もしくは噴霧乾燥(適切な基材を使用する))によりキャストされそして加工されて、薄いフィルムになる。次いで、この薄いフィルムを乾燥させる。乾燥工程は、所望される場合、プロセスを容易にするために、任意の型の乾燥機で達成され得る。しかし、当業者が理解しているように、溶媒残渣(これは、浸食反応速度に影響を与え得る)は、乾燥手順に依存する。このフィルム層は独立してフィルム化され得、次いで共に積層され得るか、または他方のフィルム頂部にフィルム化され得る。
【0063】
2つの層が共に積層された後か、もしくは相互の表面に被覆された後に得られるフィルムは、所望される場合、粘膜組織に適用するために適切な任意の型の形状にカットされ得る。適切な形状としては、円板、楕円、正方形、長方形、平行六面体(parallepiped)、ならびに断片状、網目状、または多孔性のフィルムが挙げられ得、これらは、デバイスが使用されるべき目的および位置に依存する。同様に、本発明のデバイスの表面積は、デバイスが使用されるべき場所に存在する主要な要因と共に多くの要因に依存して、必然的に変動する。代表的には、表面積は、約0.1〜約30平方センチメートル、好ましくは、0.5〜約20平方センチメートルであり得る。
【0064】
局所的および全身的な薬物送達のために、粘膜表面、周辺組織、および体液を処置する方法もまた提供される。1つの実施態様において、本方法は、処置部位および薬物送達に対する保護を提供するために、本発明の接着性フィルムを処置部位へ適用する工程を包含する。接着性フィルムは、本明細書中で提供される層状デバイスのいずれかを含み得る。好ましい実施態様において、本方法は、上記のように第1の接着層と第2の非接着性の裏張り層とを有する層状薬物キャリアデバイスを適用する工程を包含し、それぞれの層は0.01mm〜0.9mmの厚さを有する。薬剤または薬剤の組み合わせは、接着層、非接着性の裏張り層、もしくはその両方の層に存在し得る。
【0065】
当業者に理解されるように、全身性送達(例えば、粘膜送達または経皮送達)が所望される場合、この処置部位は任意の領域を含み得、この領域において、本発明の接着性フィルムは、所望の薬剤レベルを、血液、リンパ、または他の体液中で維持し得る。代表的には、このような処置部位としては、口、肛門、鼻、および膣の粘膜組織、ならびに皮膚が挙げられる。処置部位として皮膚が使用される場合、通常は、上腕もしくは大腿のような、運動によってデバイスの接着が破壊されないより広い面積の皮膚が好ましい。
【0066】
この適用において記載された薬剤キャリアは、粘膜組織(本来湿った組織である)に容易に接着する一方で、皮膚もしくは創傷のようなその他の表面にもまた使用され得る。本発明の水溶性フィルムは、適用する前に皮膚が水性ベースの液体(例えば、水、唾液、および汗)で濡れている場合、皮膚に接着する。このフィルムは、代表的に、例えばシャワー、入浴および洗浄によって水と接触することに起因してフィルムが浸食されるまで皮膚に接着する。このフィルムはまた、組織に著しい損傷を与えることなく剥がすことによって容易に除去され得る。
【0067】
フィルムは皮膚と接触している間、フィルムが適用された領域を保護するための洗浄可能かつ浸食性の包帯膏として作用し得る。治癒過程を促進するため、および創傷または熱傷かつ細菌および細片を含まないままにするために、フィルムを経皮的薬物送達系として使用することもまた可能である。従来の代替品を越える本発明の重要な利点は、洗浄可能なフィルムであるだけでなく、従来の経皮パッチについてのように汗が接着を妨げるもしくは減少させる代わりに、汗がデバイスの接着を助けることである。
【0068】
本発明の薬剤キャリアはまた、創傷用包帯(wound dressing)としても使用され得る。洗浄除去され得る、物理的な、適合性の酸素および水分透過性の可撓性バリアーを提供することによって、フィルムは、創傷を保護するだけでなく、治癒、無菌性(asepty)、乱切を促進して、痛みを和らげるか、または病人の状態を包括的に改善するために、薬剤を送達し得る。以下に記載されるいくつかの実施例は、皮膚または創傷への適用に十分に適している。当業者が理解するように、処方物は、特定の親水性/吸湿性の賦形剤を配合することを必要とし得、この賦形剤は、長期に渡って、乾燥した皮膚上に良好な接着を維持することを助ける。この様式で利用される場合の本発明の別の利点は、フィルムの存在を皮膚上に目立たせたくない場合、色素または着色物質を用いる必要がないことである。一方、フィルムを目立たせることを所望する場合、色素または着色物質が用いられ得る。
【0069】
以下の実施例は、薬剤キャリアデバイス、ならびに本発明の薬剤キャリアデバイスを作製および使用する方法を例示するために提供される。
【0070】
(実施例1)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方(USP))、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、および12重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)を使用して作製した。Werner Mathis Labcoaterを使用して、基材(Mylar 1000Dまたは3M ScotchPak 1022のような他のポリエステルフィルム)をセットした。90mlの裏張り層溶液を、1.5mmの開口部を有するロール式ナイフの前にセットした。次いで、この溶液をキャストし、そしてフィルムを60℃で8〜9分間乾燥させた。乾燥工程の後に、赤みを帯びた厚さ0.14mmのフィルムを得た。
【0071】
この手順を使用して、フィルムを乾燥工程の後に基材から容易に剥離し得るか、または後での積層のため、あるいは接着層のための基材として使用するために基材上に残し得、そしてロール(roll)し得る。
【0072】
(実施例2)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、94.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、および5重量%のヒドロキシプロピルセルロースを使用して作製した。実施例1の手順を使用し、厚さ0.16mmのフィルムを得た。
【0073】
(実施例3)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、84.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、12重量%のヒドロキシエチルセルロース、および3重量%のヒドロキシプロピルセルロースを使用して作製した。本実施例では、全体的なポリマー材料は、溶液中に15%の濃度であった。2つの異なるタイプのポリマー材料の混合物を混合することで、裏張りフィルムの全体的な機械的特性および浸食反応速度特性を改変した。次いで、この溶液をポリエステル基材上にキャストし、そして90℃で一晩乾燥させた。ナイフの開口部(opening)を3mmに設定し、厚さ0.3mmのフィルムを得た。
(実施例4)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、10重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、および2重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 7×105)を用いて作製した。本実施例では、2つの異なるタイプのヒドロキシエチルセルロースを混合することで、裏張りフィルムの機械的特性および浸食反応速度を改変した。次いで、この溶液をポリエステル基板上にキャストし、そして135℃で12分間乾燥させた。ナイフの開口部を3mmに設定することで厚さ0.27mmのフィルムを得た。
【0074】
(実施例5)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、11.75重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、および0.25重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 1.3×106)を用いて作製した。実施例1の手順を用いて厚さ0.14mmのフィルムを得た。
【0075】
本実施例では、2つの異なるグレードのヒドロキシエチルセルロースを混合することで、裏張りフィルムの機械的特性および浸食反応速度を改変した。この比率は生体接着ディスクの浸食パターンおよび滞留時間を調整するのに使用され得る。実施例1の裏張り層(これは12重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)から構成され、そして約21分の浸食時間を有する(表2を参照))と比較して、本実施例の裏張り層(2つのグレードのヒドロキシエチルセルロースの組合せから構成される)は、約69分の浸食時間を有した(表2を参照)。
【0076】
(実施例6)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、11.95重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、および0.05重量%の40%グリオキサール水溶液を用いて作製した。実施例1の手順を用いて0.13mmのフィルムを得た。
【0077】
本実施例では、グリオキサールを架橋剤として作用させて、裏張り層の浸食反応速度の低下を誘導した。実施例1の裏張り層(これはグリオキサールを含まず、約21分の浸食時間を有した(表2を参照))と比較して、本実施例の裏張り層(グリオキサールを組み込んでいた)は約57分の浸食時間を有した(表2を参照)。
【0078】
(実施例7)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、11.8重量%のヒドロキシエチルセルロース、0.1重量%の40%グリオキサール水溶液、および0.1%のハッカフレバー(sweet peppermint flavor)を用いて作製した。本実施例では、実施例6のように、グリオキサールは架橋剤として作用させ、グリオキサールを含まない裏張り層と比較して裏張りフィルムの浸食反応速度の低下を誘導した。ハッカを矯味矯臭剤として添加した。
【0079】
(実施例8)
実施例1に記載のように、実施例5、6および7の溶液を、それぞれポリエステル基材上にキャストした。ナイフを用いるかわりにメイヤーバー(meier’s bar)を用いて基材を被覆した。フィルムを90℃で一晩乾燥させた。この乾燥したフィルムは、約0.17mmの厚さを有して、より厚くなった。
【0080】
(実施例9)
実施例1の溶液をビーカー中で調製した。次いでマイクロスライドを完全に浸るまで溶液にすばやく浸し、この溶液から取り出して室温で約1時間放置した。次いでマイクロスライドを90℃で一晩乾燥させた。得られるフィルムは不均質であり、平均の厚さは約0.2mmであった。
【0081】
(実施例10)
非接着性裏張り層のための100mlの溶液を、84重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号色素、11重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、1重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw 7×105)、0.1重量%の40%グリオキサール水溶液、3重量%のグリオキサール、および1重量%のメントールを用いて作製した。本実施例では、グリオキサールは架橋剤として作用し、裏張りフィルムの浸食反応速度の低下を誘導した。また、2つの異なるグレードのヒドロキシエチルセルロースの混合物を用いて、メントールの緩やかな放出を達成した。このフィルムを先に記載したようにポリエステルフィルム上に被覆した。
【0082】
(実施例11)
接着層のための100mlの溶液を、88.6重量%の水(米国薬局方)、1.8重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.6重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標)AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、4.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(セルロースゴム(cellulose gum)7 LF PH(Aqualon))、および2.5重量%の塩酸ジクロニンを用いて作製した。混合して懸濁液を形成した。
【0083】
本実施例では、塩酸ジクロニンは、任意の他の活性薬剤成分で容易に代用され得る。しかし、活性な薬剤の化学的特性(例えば、溶解度、対イオン、および融点)は、特定の溶媒における溶解、溶液の温度の変化などの過程全体に、若干の改変を必要とし得る。次の実施例では、1つのわずかな改変を例示する。
【0084】
(実施例12)
接着層のための100mlの溶液を、74.6重量%の水(米国薬局方)、1.8重量%のヒドロキシエチルセルロース、2.6重量%のポリアクリル酸、4.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.5重量%のベンゾカイン、および14重量%のエチルアルコールを用いて作製した。ベンゾカインの活性な薬剤としての使用の際には、ベンゾカインは水よりもアルコールに溶解度が高いのでまずエチルアルコールに溶解することが必要であった。
【0085】
最終溶液において、ベンゾカインは非常に微細な粉末の形態で沈殿する傾向がある。しかし、フィルムの特性および生体接着特性はインタクトなままである。
【0086】
(実施例13)
接着層のための100mlの溶液を、91重量%の水(米国薬局方)、2重量%のヒドロキシエチルセルロース、2.5重量%のポリアクリル酸、および4.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを用いて作製した。接着層の組成を改変し得、そして以下の表1に記載される範囲内で変更し得る。
【0087】
【表1】

【0088】
各成分の相対部はその成分の化学的適合性および得られる滞留時間に依存する。
【0089】
(実施例14)
接着層のための100mlの溶液を、90重量%の水(米国薬局方)、1重量%の硫酸ブタカイン、2重量%のヒドロキシエチルセルロース、2.5重量%のポリビニルピロリドン、および4.5重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを用いて作製した。この溶液をロール式ナイフを用いてMylar基材上に被覆した。
【0090】
(実施例15)
接着層のための100mlの溶液を作製した。溶液の全組成は48.6%の水、40%のエチルアルコール、1.8%のヒドロキシルエチルセルロース、2.6%のポリアクリル酸、4.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、および2.5%の塩酸ジクロニンであった。しかし本実施例では、塩酸ジクロニンを、まず40mlのエチルアルコールに溶解して、次いで48.6mlの水を塩酸ジクロニン/エチルアルコール溶液に添加し、その後に他の成分を添加した。
【0091】
さらなる溶媒としてエチルアルコールを使用することにより、実施例11(水を唯一の溶媒として使用した)の懸濁液よりもわずかに粘性のある懸濁液を得た。
【0092】
(実施例16)
実施例12の手順に従って、接着層用の100mlの溶液を調製した。次いで、実施例1で用いられる手順に従ってこの溶液を被膜した。得られたフィルムは0.12mmの厚さであった。
【0093】
(実施例17)
実施例12の手順に従って、接着層用の100mlの溶液を調製した。この溶液を、実施例1に従って調製した裏張りフィルムの上面に被膜した。裏張りフィルムの厚さを考慮して、ナイフの開口部を調整した。被膜した後、層状のフィルム(layered film)を130℃で15分間乾燥させた。0.27mmの、2層の層状のフィルムが形成された。
【0094】
(実施例18)
フィルムを十分には乾燥させなかったことを除いては、実施例14の手順に従って、生体接着フィルムを調製した。裏張りフィルムを実施例1に従って調製した。この裏張りフィルムをその基材から剥がし、まだ湿気を帯びている間に、生体接着フィルムの上面に積層させ、圧力をかけて2つのフィルムをともに封着させた。圧力をフィルムにかけることで、良好な界面接着を得た。0.38mmの、2層の層状のフィルムが形成された。
【0095】
(実施例19)
実施例1の手順に従い、裏張りフィルム用の様々な溶液を、下の表2の組成に従って調製した。フィルム形成後、1/2インチのディスクをダイカット(die cut)し、両面テープ上に設置した。次いでテープをマイクロスライド上に配置した。浸食反応速度を、水中で評価した:このスライドを、50rpmの一定速度で撹拌される、100mlのビーカーの水に浸した。浸食時間を、ディスクがビーカーの水に完全に浸けられた瞬間から測定した。パーセンテージ(%)とは、溶液中での濃度をいう。
【0096】
【表2】

【0097】
この結果は、それぞれのサンプルについて同様の表面状態と仮定すると、処方物の成分に依存して浸食時間が変化することを示す。水は唾液の組成を正確には模倣せず、そしてこの実験ではインビボでの滞留時間を正確に複製することはできないが、この実験は、本発明の実施において用いる種々の組成物の浸食時間のインビトロでの比較を提供する。
【0098】
(実施例20)
0.19mmと0.21mmとの間の厚さを有する直径1/2インチのディスクを6人の健常なボランティアに投与した。裏張り層を実施例1に従って調製し、そして接着層を実施例15に従って調製した(いくつかは、塩酸ジクロニンを活性薬剤成分として含み、残りは、その代わりにベンゾカインを含む)。接着層を、裏張り層の上面に被膜し、層状のディスクを形成した。この層状のディスクを口腔中に置き、そしてディスクを適所に置いた瞬間から浸食時間を測定した。
【0099】
参加者に、ディスクの取り扱いおよびしびれの影響を0から3のスケール(3は非常に良い、2は良い、1は普通、0は悪い)で評価するために質問した。参加者はまた、接着に必要な時間;滞留時間;もしあれば、異物感(foreign body sensation)、およびその持続時間;ならびにディスクの浸食について評価した。最後に、参加者に、全般的に、ディスクの効果およびその全般的な印象、ならびに塩酸ジクロニン(D)またはベンゾカイン(B)のどちらの薬剤成分を好むかについての評価を質問した。結果を以下の表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
この結果は、初心者にはディスクの取り扱いが困難であり得るが、接着は即時的であり、異物感が少しだけ存在し(ディスクの膨張によって2、3分の後に消失する)、そしてしびれが効果的であることを示す。
【0102】
(実施例21)
裏張り層の1kg調製物を、43.49重量%の水、43.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色色素40号、12重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)および1重量%の40%グリオキサール水溶液を用いて作製した。次いで実施例1に記載された裏張り溶液の別のバッチ1kgを調製した。Wemer Mathis Labcoaterを用いて、基材(Mylar 1000Dまたは3M ScotchPak 1022のような他のポリエステルフィルム)を設置した。実施例1に従って調製した90mlの裏張り層溶液を、0.7mmの開口部を有するロール式ナイフの前に設置した。次いで、溶液を基材上にキャストし、そしてフィルムを130℃で8〜9分乾燥させた。乾燥工程の後に、0.09mmの厚さの赤みを帯びたフィルムが得られた。次いで、本実施例で最初に記載された裏張り溶液を0.8mmの開口部を使用するロール式ナイフ技術を用いて第一層の上面に直接キャストした。この得られた2重層裏張りフィルムは0.15mmの厚さであった。
【0103】
(実施例22)
実施例5に記載されたように得られる裏張り層の調製物を、ロール式ナイフを使用してキャストし、130℃で8〜9分乾燥させた。次いで、43.49重量%の水、43.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色色素40号、12重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)および1重量%の40%グリオキサール水溶液を用いる裏張り層の調製物を、先の乾燥フィルム(第1層は0.05mmの厚さであった)の上面に直接的に被覆した。この得られた2重層裏張りフィルムは、0.12mmの厚さであった。
【0104】
(実施例23)
この処方物に架橋剤を組み込む場合、熱硬化は、生体接着層(単数または複数)がキャストされる前もしくはキャストされた後に、その材料のさらなる架橋を可能にする。フィルムの熱硬化は、フィルムを時間−温度サイクルに曝すことによって行われる。例えば、実施例22の最後で得られたフィルムを、150℃に5分間、120℃に10分間、またはフィルムの成分の安定性の必要条件に適応する任意の温度/時間に曝し得る。
【0105】
(実施例24)
実施例5に記載されたように得られた裏張り層の調製物を、ロール式ナイフを用いてキャストし、130℃で8〜9分乾燥させた。42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色色素40号、11重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、2重量%のポリエチレングリコール6000、および2重量%のプロピレングリコールを用いる裏張り層の調製物を、先の乾燥フィルムの上面に(第1層は、厚さ0.06mmであった)直接的に被覆した。この得られた2重層裏張りフィルムは0.12mmの厚さであった。
【0106】
(実施例25)
42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色色素40号、10重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、4重量%のヒドロプロピルセルロース(Mw 5×105)を用いる、裏張り層の調製物をロール式ナイフ技術を用いて被覆した。次いで、先の乾燥フィルム(第1層は0.07mmの厚さであった)の上面に直接、裏張り調製物(42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色色素40号、12重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、および3重量%のオレイン酸から作製された)を、キャストし、そして乾燥した。この得られた2重層裏張りフィルムは、0.15mmの厚さであった。
【0107】
(実施例26)
接着層用の調製物を、45.6重量%の水(米国薬局方)、45重量%のエチルアルコール、2重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.9重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標)AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、および4.5重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(セルロースゴム7 LF PH(Aqualon))を用いて作製した。この調製物は、生体接着性調製物であるが、いかなる薬剤も含まない。
【0108】
(実施例27)
接着層用の100mlの溶液を、45.1重量%の水(米国薬局方)、45重量%のエチルアルコール、1.8重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.6重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標)AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、4.5%重量のカルボキシメチルセルロースナトリウム(セルロースゴム7 LF PH(Aqualon))、および1重量%の硫酸テルブタリンを用いて作製した。
【0109】
(実施例28)
実施例25に従って得られたフィルムを、本実施例の最終的な多層フィルム用の基材として用いる。実施例26の生体接着性調製物を、実施例25のフィルム上に直接的にキャストし、そして乾燥した。次いで、実施例27の調製物を、ロール式ナイフシステムによりその上面にキャストした。最終的な4層フィルムは、0.240mmであった。このフィルムの組成は、口腔内のテルブタリンの放出を抑制するが、薬剤がなお側面を通って拡散し得るので、完全に抑制するわけではない。この側面拡散を避けるため、本発明者らは、前述の設計を少し変化させなければならない。
【0110】
(実施例29)
実施例25に従って得られたフィルムを、本実施例の最終的な多層フィルム用の基材として用いる。実施例26の生体接着性調製物を、実施例25のフィルム上に直接的にキャストし、そして乾燥する。3層フィルムは、このようにして得られ、最後の層は、生体接着性であるが、いかなる薬物をも含まない。次いで、実施例27の調製物を、マスク(mask)を用いて被覆し、そして乾燥させる(マスクは、0.500mmのポリエステルフィルムであり、ここで、ダイカットした楕円体を3層積層体上に積層した)。この工程は、必要があれば繰り返し得る。次いで、マスクを剥がす。この得られたフィルムは、積層裏張り層、および積層生体接着層から構成される、3/4層フィルムである。ここで、最終的な成分は、薬剤を含み、そして、図に示すようにより小さな表面のものである。このシステムを用いることで、側面もしくは裏側のいずれかの拡散が制限され、そして粘膜組織への薬物の1方向性の放出が可能になる。
【0111】
(実施例30)
ピロカルピンHClの代わりにフルオシノニドを用いることを除いては、先の実施例に従い、マスクを用いる代わりにスクリーンコーティング技術(screen coating technique)を用いて、同じ型のフィルムを構築する。例えば、溶液の堆積、溶液の吹き付け(spraying)、もしくは最終層のダイカット除去(die cutting off)、スロットコーティング、またはグラビアコーティングのような他の技術でも十分である。
【0112】
(実施例31)
裏張り層をコーティングするための200グラム(g)の裏張り溶液(または裏張りコロジオン)を、84.865重量%のエチルアルコール 190F、0.01重量%のFD&C赤色色素40号、13.75重量%ヒドロキシプロピルセルロース、1.25重量%のエチルセルロース、および0.125重量%のジエチルフタレート(phathalate)を用いて作製した。この溶液は、エチルセルロースを、エチルアルコール、色素、およびジエチルフタレートの溶液に添加することによって周囲温度で調製した。次いで、ヒドロキシプロピルセルロースを添加して、そしてそのコロジオンを2時間攪拌した。
【0113】
2層状フィルムを続いて、ラボコーター(labcoater)/ドライヤーを使用して得た。Rexam 8024基材上で、上記の50mLの溶液を、ロール式ナイフコーティングデバイスの前にセットした。次いで、濡れたフィルムを、60℃で6分間乾燥した。第2の層を、その上面に直接的に被覆して、そして濡れたフィルムを60℃でさらに6分間乾燥した。最終的なフィルムの厚さは、130ミクロンであると計測された。
【0114】
(実施例32)
裏張り層を被覆するための200gの裏張り溶液(または裏張りコロジオン)を、84.74重量%のエチルアルコール 190F、0.01重量%のFD&C赤色色素40号、12.5重量%のヒドロキシプロピルセルロース、2.5%重量%のエチルセルロース、および0.25重量%のジエチルフタレートを用いたことを除き、実施例31のように作製した。
【0115】
フィルムを、実施例31のように得たが、そのフィルムの厚さは、135ミクロンであった。
【0116】
(実施例33)
120ミクロンの厚さのフィルムを、より高分子量グレードのエチルセルロースを使用したことを除き、実施例32と同様の様式で作製した。
【0117】
(実施例34)
裏張り層を被覆するための200gの裏張り溶液(または裏張りコロジオン)を、84.74重量%のエチルアルコール 190F、0.01重量%のFD&C赤色色素40号、10重量%のヒドロキシプロピルセルロース、5重量%のエチルセルロース、および0.5重量%のジエチルフタレートを用いたことを除き、実施例31のように作製した。
【0118】
フィルムを、実施例31のように得たが、そのフィルムの厚さは、115ミクロンであった。
【0119】
(実施例35)
裏張り層を被覆するための200gの裏張り溶液(または裏張りコロジオン)を、81.99重量%のエチルアルコール 190F、0.01重量%のFD&C赤色色素40号、および18重量%のヒドロキシプロピルセルロースを用いたことを除き、実施例31のように作製した。
【0120】
フィルムを、実施例31のように得たが、そのフィルムの厚さは、170ミクロンであった。
【0121】
(実施例36)
実施例31〜35のフィルムについての水中での崩壊時間を、37±2℃の水浴中にフィルムを配置することによって測定した。表4の結果が示すように、崩壊時間は、エチルセルロースに対するヒドロキシプロピルセルロースの比に従って変化する。
【0122】
【表4】

【0123】
(実施例37)
79.74重量%の水、0.01重量%のFD&C赤色色素40号、0.05重量%安息香酸ナトリウム、2.5%ペパーミントフレバー、13.5重量%ヒドロキシエチルセルロース、および4.5重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含む、裏張り層用のゲルを作製した。次いで、このゲルを、最初に基材上に厚さ0.8mmの処方物層を被覆し、次いでそれを80℃で8分間乾燥することによって、厚さ0.17mmの2層の可撓性裏張りフィルムに作製した。次いで、厚さ0.8mmの第2の層を、第1の層の上面に直接的に被覆し、そして80℃で8分間乾燥した。この2層フィルムのサンプルは、10分以内で水中で崩壊されることが見出された。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、親水性塩が崩壊時間を改変し、そしてヒドロキシプロピルセルロースが、フィルムの引張り強さを改善すると考えられた。
【0124】
45.2重量%の水(米国薬局方)、45.3重量%のエチルアルコール、1.6重量%のヒドロキシエチルセルロース、0.6重量%のヒドロキシプロピルセルロース、2.8重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標)AA1 米国薬局方)、2.5重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.1重量%の二酸化チタン、および1.9重量%の硫酸アルブテロールを含む、生体接着層用のゲルを調製した。このゲルを使用して、0.5mmの第1の生体接着層を、2層の可撓性裏張りフィルムの上に直接的に被覆して、そして60℃で8分間乾燥した。次いで、0.7mmの第2の生体接着層を、第1の生体接着層の上面に直接的に被覆して、そして60℃で20分間乾燥した。最終的なフィルムは、厚さ0.330mmであり、5.92重量%の水を含み、15±3分で水中で崩壊し、そして1.46mg/cm2の硫酸アルブテロールを含んだ。この最終的なフィルムはまた、優れた引張り強さを示した。
【0125】
(実施例38)
42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02重量%のFD&C赤色色素40号、14重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、および1重量%甘味ペパーミントを含む、裏張り層用のゲルを作製した。このゲルを用いて、ロール式ナイフ技術を使用して、0.7mmの第1の裏張り層を基材上に被覆した。この層を、60℃で8分間乾燥した。次いで、0.8mmの第2の裏張り層を、第1の裏張り層の上面に直接的に被覆し、そして60℃で8分間乾燥した。この最終的な2層フィルム裏張りは、厚さ0.20mmであった。
【0126】
45.95重量%の水(米国薬局方)、45.95重量%のエチルアルコール、1.6重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.2重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標) AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、3.4重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロースゴム7 LF PH(Aqualon)、および0.9重量%の硫酸アルブテロールを含む、生体接着層用のゲルを調製した。このゲルを使用して、0.5mmの第1の生体接着層を、2層の裏張り層の上に被覆して、そして60℃で10分間乾燥した。0.8mmの第2の生体接着層を、第1の生体接着層の上に被覆して、そして60℃で20分間乾燥した。最終的なフィルムは、厚さ0.260mmであり、20±5分で水中で崩壊し、5.6重量%の水を含み、そして0.71mg/cm2の硫酸アルブテロールを含んだ。
【0127】
(実施例39)
42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色色素40号、14重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw 9×104)、および1重量%スイートペパーミントを含む、裏張り層用のゲルを作製した。このゲルを用いて、ロール式ナイフ技術を使用して、0.7mmの第1の裏張り層を基材上に被覆した。この層を、60℃で8分間乾燥した。次いで、0.8mmの第2の裏張り層を、第1の裏張り層の上面に直接的に被覆し、そして60℃で8分間乾燥した。この最終的な2層フィルム裏張りは、厚さ0.20mmであった。
【0128】
45.95重量%の水(米国薬局方)、45.95重量%のエチルアルコール、1.6重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.2重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標) AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、3.4重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロースゴム7 LF PH(Aqualon)、および0.9重量%のテストステロンを含む、生体接着層用の懸濁液を調製した。テストステロンは、この処方物中で不溶性であり、懸濁液中に存在する微小化粉末として添加する。この処方物の粘性を、被覆工程を容易にするために、10重量%の1:1比のアルコール:水を添加することによって低下させた。この懸濁液を使用して、0.5mmの第1の生体接着層を、2層の裏張り層の上に被覆して、そして60℃で10分間乾燥した。0.9mmの第2の生体接着層を、第1の生体接着層の上に被覆して、そして60℃で20分間乾燥した。最終的なフィルムは、厚さ0.310mmであり、20±5分で水中で崩壊し、5.3重量%の水を含み、そして約0.64mg/cm2のテストステロンを含んだ。
【0129】
(実施例40)
実施例38および39により得られたフィルムを、直径1/2インチのディスクにダイカットし、3匹のイヌ(20〜25kgの卵巣切除された雌交配猟犬)における全身利用可能性の研究のために特徴付けして、そして使用する。評価するフィルムの1個のディスクを、口内の頬側粘膜上に適用する。わずかな圧力を、10秒間加える。次いで、口腔を試験して、粘膜に対するフィルムの接着を確認し、そして本研究の過程にわたって、ディスクの浸食をモニターする。留置頸静脈カテーテルを使用して、血液サンプルを特定の間隔で採取する。血清を硫酸アルブテロールの場合にはELISAアッセイによって、テストステロン研究に対してはRIA法によって特徴付けする。研究終了時の粘膜組織は、刺激の徴候を全く示さなかった。
【0130】
直径1/2インチのディスクの適用後、異なる間隔で得た全身の血漿レベルを、ng/mlで3匹のイヌの平均値について与える。薬物のロードは、1ディスクあたり0.9mgの硫酸アルブテロールおよび1ディスクあたり0.8mgのテストステロンである。結果を、硫酸アルブテロールについては表5に、そしてテストステロンについては表6に示す。
【0131】
【表5】

【0132】
【表6】

【0133】
これらの結果は、全身送達が、本発明の薬剤キャリアデバイスによって達成され得ることを示す。さらに、本発明の薬剤キャリアデバイスは、活性の速い開始、優れたバイオアベイラビリティ、および持続的送達をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−265319(P2010−265319A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185656(P2010−185656)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【分割の表示】特願2005−233505(P2005−233505)の分割
【原出願日】平成11年4月29日(1999.4.29)
【出願人】(507143369)アリウス・トゥー・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】