説明

精液採取装置

【課題】陰茎の大きさや位置変化に追随して、被覆層を変形させ密着感を維持して、効率的な精液採取作業をする。
【解決手段】外ケース1内に内装具10を収容して精液採取装置30を構成する(a)(b)。内装具10は、多孔質である発泡ウレタン系材料からなる基本筒体20の内面21に、エラストマー系のゲル状樹脂材料からなる被覆層25を形成して構成する(a)(b)。使用者は、精液採取装置30の内装具10の開口部14から、中空部15に向けて陰茎を挿入すれば、大きさや動きなどに併せて、基本筒体20が伸縮変形し、これに追随して被覆層25が移動変形して、常にゲル状樹脂材料からなる被覆層25、25の表面26が陰茎に当接する(c)(d)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、男性の陰茎を挿入して精液を採取する精液採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精子採取装置では、陰茎を挿入する内装具について、陰茎の大きさなどに対応して密着性を高めるために様々な工夫が提案されている。
【0003】
例えば、ケース内に、肉厚筒状スポンジ体(内装具)内に高柔軟樹脂製の円筒体(内装具)を装填した精液採取装置(特許文献1)、ケース内に挿入口を有し伸縮する弾辱体(内装具)を設けた精液処理具(特許文献2)、ケース内に人体感触のエラストマーのゲルからなる挿入体(内装具)を取り付けた精液採取装置(特許文献3)、ケース内に、コア本体とリブからなるゲル状の樹脂製コア部材(内装具)を備えた精子採取装置(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用登録第3076183号公報
【特許文献2】実用登録第3082408号公報
【特許文献1】特許3272631号公報
【特許文献1】国際公開WO2006/132125公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の技術の内、特許文献1では「肉厚筒状スポンジ体」と「高柔軟樹脂製の円筒体」との組合せの効果が無く夫々の良さを生かせない問題点がり、特許文献2では「弾辱体」の性質についての記載がないが、いずれの材料で構成してもその材料単独の機能しか発揮できない問題点があった。また、特許文献3ではエラストマーのゲルからなる挿入体の単独の機能しか無く、さらに特許文献4でもゲル状の樹脂製のコア部材単独の機能しかなく、更にリブがあるが反発性が無い問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかし、この発明は、内装具を、「軸方向及び内径変化可能である柔軟な多孔質な樹脂材料」から構成して、「内面を形状変化に追随して変形できるゲル状樹脂材料で被覆層を形成した」ので、前記問題点を解決した。
【0007】
即ちこの発明は、上方に向けて開口部を有する筒状の外ケース内に、上方に向けて挿入開口部を有する筒状の内装具を収容して、以下のように構成したことを特徴とする精液採取装置である。
(1) 前記内装具の内面に凹凸面を形成した。
(2) 前記内装具の外側面は、前記外ケースの内面に略密着させて収容した。
(3) 前記内装具は、基本筒体の内面に、ゲル状樹脂材料を密着して被覆した被覆層を形成して構成した。
(4) 前記基本筒体は、軸方向変形及び内径変形可能である柔軟な多孔質な樹脂材料から形成する。
(5) 前記ゲル状樹脂材料は、前記基本筒体の軸方向の形状変形及び内径変形に伴う「前記基本筒体の内面の形状変化」に追随して、変形して被覆状態を維持する構造とした。
(6) 前記内装具の内面の凹凸面は、「前記基本筒体の内面」及び/又は、「被覆層の内面」に凹凸面を形成して構成する。
【0008】
また、前記において、以下のように構成した精液採取装置である。
(1) 上面に凹凸面を有する板状の基材の上面に、ゲル状樹脂材料を密着して被覆して被覆層を形成する。
(2) 前記基材を、前記凹凸面が内側になるように、丸めて筒状の内装具を構成した。
【0009】
さらに、前記において、以下のように構成した精液採取装置である。
(1)外ケースは、開口部を塞ぐ蓋を着脱自在に取り付けた。
(2)内装具は、非加圧状態で、その上端部が外ケースの開口部から上方に突出して配置した。
(3)前記内装具は、前記外ケースに蓋を取り付けた状態で、前記外ケース内に収容される。
【0010】
前記における外ケースの形状は、主に円筒であるが、筒状であれば、三角筒、四角筒、六角筒など角筒、あるいはハート形、花形など断面形状は任意である。また、軸方向で断面形状が変化する形状でも可能である。
【0011】
なお、この場合、内装具の基本筒体の外面は、外ケースの内面に沿って変形して収容される。
【0012】
また、前記における内装具の内面とは、内装具は筒状であり中空部を有するので、その中空部の内壁面を指す。
【0013】
また、前記実施例において、内装具の内面への凹凸面の形成は、結果として被覆層の内面に凹凸面が形成されていれば良いので、以下のような構成を採用することができる。
(a)前記基本筒体の内面に凹凸面を形成し、凹凸面に沿って略同一厚さの被覆層を形成して、被覆層の内面に凹凸面を形成する。
(b)前記基本筒体の内面に凹凸面を形成し、厚さの異なる被覆層を形成して、被覆層の内面に基本筒体の内面に凹凸面を形成する。
(c)前記基本筒体の内面を平坦面とし、厚さの異なる被覆層を形成して、被覆層の内面に基本筒体の内面に凹凸面を形成する。
【0014】
また、内装具は、平板状の基材を丸めて、筒状に形成することが安価で好ましいが、最初から筒状に成形することも可能である。また、軸方向、軸に直角な方向あるいは軸に斜めな方向に、2つ又は3つ以上に切断して分割した形状で成形することもできる。
【発明の効果】
【0015】
軸方向及び内径変化可能である柔軟な多孔質な樹脂材料からなる「基本筒体」を構成して、基本筒体の内面に、形状変化に追随して変形できるゲル状樹脂材料で「被覆層」を形成して内装具を構成したので、陰茎を基本筒体の内側の中空部の断面形状・大きさが幅広く変形でき、かつ中空部の断面形状・大きさの変化に追随して、被覆層が変形できる。また、陰茎が内装具に対して、軸方向、軸に直角な方向、あるいは軸に対して斜め方向に移動しても、この動きに追随して、陰茎に対する密着感を維持できる。従って、効率的な精液採取作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はこの発明の実施態様で、(a)は使用前の概略した縦断面図で、(b)は(a)のA−A線における断面図で、(c)は使用中の概略した縦断面図で、(d)は(c)のB−B線における断面図である。
【図2】図2はこの発明の他の実施態様で、(a)は使用前の概略した縦断面図で、(b)は使用中の縦断面図である。
【図3】図3は、内装具の製造を表す図で、(a)は板状の平面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図、(d)は丸めて内装具を形成した状態の横断面図である。
【図4】図4はこの発明の実施例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1の実施形態
【0018】
(1)外ケース1の構造
底板3を有する円筒形の側板2で、かつ上方に向けて開口した形状で、円筒形の外ケース1を形成する(図1(a)(b))。外ケース1は、防水材料から構成し、あるいは紙製などで形成して少なくとも内面(底板3の内面3a及び側板2の内面2a)に防水加工を施して構成する。防水加工は、防水フィルムで覆う、防水材料を表面に塗布する、防水材料を含浸させるなど任意である。
【0019】
(2)内装具10の構造
内装具10は、基本筒体20の内面21及び上面23に被覆層25、25を形成して構成する(図1(a)(b))。内装具10は上方に向けて開口して開口部14を形成している。下方は開口、密閉のいずれでも可能である。
基本筒体20は、上方に向けて開口して、微細な気泡を内蔵する多孔質である発泡ウレタン系材料からなる。また、内面21の全面に亘り多数の突起24、24を有する。
被覆層25は、エラストマー系のゲル状樹脂材料からなり、基本筒体20の内面21及び上面24に沿ってほぼ均一の厚さで形成される。従って、基本筒体20の内面21の突起24、24に対応して、被覆層25の表面26(即ち内装具10の内面11)には突起24、24に対応した凹凸面が形成されている。
【0020】
(3)精液採取装置30
内装具10を外ケース1内に収容して精液採取装置30を構成する(図1(a)(b))。内装具10の開口部14が挿入口を構成する。
内装具10の外面12(基本筒体20の外面22)は、外ケース1の側板2の内面2aにほぼ密着する(多少の隙間が生じる場合もある)。また、内装具10の下面13aも外ケース1の下面(底板3の内面3a)に当接する。この状態で、内装具10の上面13から内面11にかけて、被覆層25、25が形成されるので、内装具10の上面13から内面11にかけて、ゲル状樹脂材料が露出している。
【0021】
(4)精液採取装置30の使用
使用者は、精液採取装置30の内装具10の開口部14から、内装具10の中空部15に向けて陰茎を挿入すれば、大きさや動きなどに併せて、発泡ウレタン材料からなる基本筒体20が伸縮変形し、かつ、基本筒体20が伸縮変形に追随して被覆層25が移動変形して、常にゲル状樹脂材料からなる被覆層25、25の表面26が陰茎に当接する。従って、常に陰茎の密着性を維持できる(図1(c)(d))。この際、図1(c)(d)で変形前の内装具10の内面11(即ち被覆層25の表面26)の位置を鎖線10Bで示す。
例えば、内装具10の軸方向41に対して(図1(c))、軸方向41と同じ方向、軸方向41に直角な方向、軸方向41に斜めの方向など、陰茎のあらゆる動きに追随して内装具10の中空部15(基本筒体20の内面21)が移動しても、中空部15(基本筒体20の内面21)の動きに追随して被覆層25、25が移動変形でき、被覆部25、25は常に陰茎に密着可能となる。
そして、放出された精液は、外ケース1の内に収容できる。また、外ケース1の底部(底板3の内面3a)付近に収容された精液は、開口部14から回収でき、この際に、外ケース1から内装具10を取り出して回収作業を行うこともできる(図示していない)。
【0022】
(5)内装具10の形成方法
前記における内装具10は、予め筒状に成型する場合の他、以下のように基材を板状に形成した後に筒状に変形させることもできる(図3)。
発泡ウレタン材料からなり、板状で一面に、全面に亘り多数の突起24、24を施して凹凸面を形成して基本筒体基材20Aとする。基本筒体基材20Aの一面21(凹凸面)の全体を覆うように、エラストマー系のゲル状樹脂材料を液体状態で流して、略同一厚さで被覆する。ゲル状樹脂材料は、基本筒体基材20Aの一面21の多孔質の微細の形状に浸透して、基材20の一面21と一体に固化して、被覆層25を形成する。被覆層25は固化した状態で、ゲル状で極めて柔軟伸び、かつ表面にある程度の粘着性を有する。また、被覆層25の表面26には、基本筒体基材20Aの一面21(凹凸面)に沿った凹凸面が形成される。基本筒体基材20Aの一面21に被覆層25を形成した状態で、内装具基材10Aとする。
また、基本筒体基材20Aの一長縁部43(丸めた際に上面23になる)は、角を丸く形成して一面21の被覆層25に連続して、一長縁部43の端面にも被覆層25が連続して形成されている。
以上のように形成した内装材基材10A(基本筒体基材20A)を、被覆層25が内側になり、一長縁部43が上を向くように、丸めて、円筒状に形成して内装具10を構成する。一長縁部43に隣接する短端面44、44は、互いに当接する。よって、前記のように、内装具10の中空部15の内面は全体に被覆層25が形成される。この丸めた状態で、基本筒体基材20Aが基本筒体20を構成する。
【0023】
(6)他の実施形態
一長縁部43に形成した被覆層25、即ち内装具10の上面13の被覆層25は省略することもできる(図示していない)。
また、被覆層25は、基本筒体20の内面21(中空部)の全体に形成したが、一部を省略することもできる(図示していない)。
また、「内装具10の外面12又は下面13a」と「外ケース1の側板2の内面2a又は底板3の内面3a」との間に、何らかの係止手段(嵌合する段差、接着など)を設けて、使用時に外ケース1から内装具10が抜けないように、あるいは内装具10の軸方向41の移動を多少規制することもできる(図示していない)。
また、内装具10を外ケース1から着脱自在とすることもできる。
【0024】
2.第2の実施態様
【0025】
(1) 第2の実施態様は、第1の実施態様と同様にして、内装具10を形成して(図3)、実施形態1と同様の外ケース1に収容する。この場合、この実施形態では、外ケース1の上縁5から、内装具10の上端部が突出して、上端突出部17を形成した精液採取装置30となっている(図2(a))。
【0026】
(2) 従って、内装具10の開口部14から中空部15内に、陰茎を挿入した際に、第1の実施態様で説明した動きに加えて、内装具10の基本筒体20が、軸方向41に大きく変形することもでき、この場合にも、当初位置10Bに対して、内装具10の中空部15(基本筒体20の内面21)の移動変形に追随して、被覆層25、25が同様に追随でき、被覆状態を維持できる(図2(b))。
【実施例1】
【0027】
図4に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【0028】
(1) 円筒形の側板2に底板3を有し上方に開口したケース1内に、内装具10を挿入収容して、この発明の精液採取装置30を構成する(図4)。ケース1は、紙製で形成されている。
【0029】
(2) 内装具10は、発泡ウレタン系材料からなる短円柱状の内装円盤32の上面33に、発泡ウレタン系材料からなる円筒状の基本筒体20を乗せ、更に、基本筒体20の上面23にエラストマー系のゲル状樹脂材料からなる筒状の挿入案内部35を乗せてある。従って、内装具10は、内装円盤32、基本筒体20、挿入案内部35の3つの部材が一体に形成された構造となっている。
基本筒体20の内面21と内装円盤32の上面33の中央部分で囲まれた部分が、内装具10の中空部15を構成し、基本筒体20の内面21と内装円盤32の上面33の中央部分とには、エラストマー系のゲル状樹脂材料で一体に被覆され、被覆層25、25を構成している。
前記におけるエラストマー系のゲル状樹脂材料は、例えば、同種の一般的材料に比して、柔軟で優れたゴム弾性と引っ張り強度を強化した材料とすることが好ましい。
基本筒体20の上面23は、外ケース1の側板上縁5より下方に位置し、挿入案内部の上縁は外ケースより上方に突出している。
基本筒体20の内面21には全面に亘り突起24、24が形成された凹凸面として、凹凸面に沿って被覆層25が形成されているので、内装具10の内面11は被覆層25からなる凹凸面となっている。
【0030】
(3) 外ケース1に挿入案内部35も覆うことができるような蓋8を設けることもできる(図4鎖線図示8)。
前記図1、図2の実施態様と同様に、使用者は、精液採取装置30の内装具10の開口部14(挿入案内部35から、中空部15に向けて陰茎を挿入すれば、大きさや動きなどに併せて、発泡ウレタン材料からなる基本筒体20が伸縮変形し、かつ、基本筒体20が伸縮変形に追随して被覆層25が移動変形して、常にゲル状樹脂材料からなる被覆層25、25の表面26が陰茎に当接する。従って、常に陰茎の密着性を維持できる。
そして、放出された精液は、中空部15内で、内装円盤32の上面33付近の被覆層25付近に溜まるので、開口部14から回収できる。
【符号の説明】
【0031】
1 外ケース
2 外ケースの側板
2a 側板の内面
2b 側板の外面
3 外ケースの底板
3a 底板の内面
4 外ケースの開口
5 外ケースの側板の上縁
8 外ケースの蓋
10 内装具
10A 内装具基材
10B 変化前の内装具
11 内装具の内面
12 内装具の外面
13 内装具の上面
13a 内装具の下面
15 内装具の中空部
17 内装具の上方突出部
20 基本筒体(内装具)
20A 基本筒体基材
21 基本筒体の内面
22 基本筒体の外面
23 基本筒体の上面
24 基本筒体の突起
25 被覆層(内装具)
26 被覆層の表面
30 精液採取装置
32 内装円盤
33 内装円盤の上面
35 挿入導入部
41 基本筒体の軸方向
43 基材の一長縁部
44 基材の短端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて開口部を有する筒状の外ケース内に、上方に向けて挿入開口部を有する筒状の内装具を収容して、以下のように構成したことを特徴とする精液採取装置。
(1) 前記内装具の内面に凹凸面を形成した。
(2) 前記内装具の外側面は、前記外ケースの内面に略密着させて収容した。
(3) 前記内装具は、基本筒体の内面に、ゲル状樹脂材料を密着して被覆した被覆層を形成して構成した。
(4) 前記基本筒体は、軸方向変形及び内径変形可能である柔軟な多孔質な樹脂材料から形成する。
(5) 前記ゲル状樹脂材料は、前記基本筒体の軸方向の形状変形及び内径変形に伴う「前記基本筒体の内面の形状変化」に追随して、変形して被覆状態を維持する構造とした。
(6) 前記内装具の内面の凹凸面は、「前記基本筒体の内面」及び/又は、「被覆層の内面」に凹凸面を形成して構成する。
【請求項2】
以下のように構成した請求項1記載の精液採取装置。
(1) 上面に凹凸面を有する板状の基材の上面に、ゲル状樹脂材料を密着して被覆して被覆層を形成する。
(2) 前記基材を、前記凹凸面が内側になるように、丸めて筒状の内装具を構成した。
【請求項3】
以下のように構成した請求項1記載の精液採取装置。
(1)外ケースは、開口部を塞ぐ蓋を着脱自在に取り付けた。
(2)内装具は、非加圧状態で、その上端部が外ケースの開口部から上方に突出して配置した。
(3)前記内装具は、前記外ケースに蓋を取り付けた状態で、前記外ケース内に収容される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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