説明

精算機の設置構造

【課題】 破損を防止して現金の盗難を確実に防止することのできる精算機の設置構造を提供する。
【解決手段】 精算機1の本体2とこの本体2を基礎部11に固定するためのベース部材6とを本体2の周辺部分で第1ボルト14および第1ナット15により連結するとともに、本体2に形成され地面に対してほぼ直交する方向に立設された本体側フランジ5とベース部材6に形成され本体側フランジ5に対応するように立設されたベース側フランジ10とを第2ボルト16および第2ナット17により連結し、第1ボルト14および第1ナット15が装着されるねじ穴13は、変形しやすい構造に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精算機の設置構造に係り、特に、破損を防止して現金の盗難を確実に防止することを可能とした精算機の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、時間貸しの駐車場においては、所定時間駐車場を利用した利用者に対して精算を行うための精算機が設置されている。
【0003】
このような精算機には、内部に現金が貯められていることから、精算機を壊して内部の現金を盗難するといった被害が続出している。
【0004】
そのため、従来から、例えば、基礎部に固定される底板部と精算機の側面部に固定される側板部とを有する補強部材により、精算機とベース部材との間の固定部を補強して、精算機の破損を防止するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4318972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明によれば、精算機自体の強度は増加するが、近年、例えば、精算機の外周にロープなどを掛け、このロープを自動車などで引っ張って精算機を倒すことにより、精算機を破損して盗難を行うといった被害があり、このような精算機の強度を増加したとしても、地面の基礎部に固定するためのアンカーボルトごと引きはがされて精算機が破損されてしまうおそれがあり、より一層確実な精算機の現金の盗難防止が望まれている。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、破損を防止して現金の盗難を確実に防止することのできる精算機の設置構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1の発明に係る精算機の設置構造は、精算機の本体と、
前記本体を地面に形成された基礎部に固定するためのベース部材と、
前記本体と前記ベース部材とを前記本体の周辺部分で連結する第1ボルトおよび第1ナットと、
前記本体の第1ボルトによる連結部分より内側に形成され地面に対してほぼ直交する方向に立設された本体側フランジと、
前記ベース部材に形成され本体側フランジに対応するように立設されたベース側フランジと、
前記本体側フランジと前記ベース側フランジとを連結する第2ボルトおよび第2ナットと、を備えており、
前記第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴は、変形しやすい構造に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴は、十字状の切欠きが形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴は、長穴状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記第1ボルトおよび第1ナットは、前記第2ボルトおよび第2ナットより強度が弱く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、本体とベース部材とを本体の周辺部分で第1ボルトおよび第1ナットにより連結するとともに、本体側フランジとベース側フランジとを第2ボルトおよび第2ナットにより連結するようにしているので、例えば、精算機の本体の周囲にロープなどを掛けて、このロープを強い力で引っ張った場合など、本体を引き倒そうとする力が加わった場合に、第1ボルトおよび第1ナットが固定されているねじ穴が変形しやすい構造を有しているので、ねじ穴が変形して第1ボルトが外れ、これにより、本体とベース部材とが外れてベース部材に対して本体が傾くことになり、本体に掛けたロープは外れやすくなる。一方、地面に対してほぼ直交する方向に立設された本体側フランジとベース側フランジとを固定する第2ボルトおよび第2ナットには、剪断応力が大きい第2ボルトの軸方向と直交する方向への力が加わることになるため、第2ボルトと第2ナットとの締め付けが外れてしまうことがないので、本体の破損を防止して、精算機の現金の盗難を確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴を、十字状の切欠きが形成されるようにしているので、第1ボルトに力が加わった場合に、ねじ穴が変形して第1ボルトが外れ、本体を容易に傾かせることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴を、長穴状に形成するようにしているので、第1ボルトに力が加わった場合に、ねじ穴が変形して第1ボルトが外れ、本体を容易に傾かせることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、第1ボルトおよび第1ナットを、第2ボルトおよび第2ナットより強度が弱く形成するようにしているので、第1ボルトに力が加わった場合に、第1ボルトから破損させることができ、第1ボルトの外れにより本体を傾斜させることができるとともに、第2ボルトによる締め付けを強固に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態を示す内部平面図である。
【図3】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態を示す内部正面図である。
【図4】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態を示す内部側面図である。
【図5】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態におけるねじ穴の例を示す内部平面図である。
【図6】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態におけるねじ穴の例を示す内部平面図である。
【図7】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態の変形例を示す内部平面図である。
【図8】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態の変形例を示す内部平面図である。
【図9】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態の変形例を示す内部平面図である。
【図10】本発明に係る精算機の設置構造の実施形態における本体とベース部材との結合状態の変形例を示す内部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る精算機の設置構造の実施形態を示す概略構成図であり、図1に示すように、本実施形態においては、精算機1は、四角柱状の本体2を有しており、本体2の下部には、本体底板3が一体に固着されている。図2から図4に示すように、本体底板3のほぼ中央部には、四角形状の本体開口4が形成されており、この本体開口4の両側縁には、本体開口4の両側縁に沿って延在する本体側フランジ5が上方に向かって立設されている。また、本体2の下部には、四角枠状のベース部材6が設けられており、ベース部材6には、ベース部材6の上面を閉塞するベース上板7およびベース部材6の下面を閉塞するベース底板8がそれぞれ一体に形成されている。ベース部材6のベース上板7のほぼ中央部の本体開口4に対応する位置には、ベース開口9が形成されており、ベース開口9の両側縁には、ベース開口9の両側縁に沿って延在し本体開口4を通って本体2の内部に位置するようにベース側フランジ10が立設されている。
【0019】
また、ベース部材6は、地面に設けられた基礎部11の上面に設置されるようになっており、ベース部材6のベース底板8は、基礎部11に打ち込まれたアンカーボルト12を介して基礎部11に固定されるように構成されている。また、本体2の本体底板3およびベース部材6のベース上板7の四隅には、ねじ穴13(図5または図6参照)が形成されており、本体2の本体底板3とベース部材6のベース上板7とは、ねじ穴13を貫通する第1ボルト14および第1ナット15により締め付け固定されている。
【0020】
ここで、本実施形態においては、本体底板3に形成されたねじ穴13は、第1ボルト14の頭部が外れやすい構造となっている。具体的には、例えば、図5に示すように、ねじ穴13をその外周部に十字状の切り込みを形成した形状に形成するようにしてもよいし、例えば、図6に示すように、第1ボルト14の頭部の径より大きい幅寸法を有する長穴形状に形成するようにしてもよい。このように構成することにより、本体2を傾斜させて本体2とベース部材6とを引き離すような力が加わり、第1ボルト14および第1ナット15部分に力が加わった場合に、本体底板3のねじ穴13が変形して第1ボルト14の頭部がねじ穴13から抜けてしまうように作用するものである。
【0021】
また、本実施形態においては、本体側フランジ5とベース側フランジ10とは、本体側フランジ5とベース側フランジ10とを貫通する第2ボルト16および第2ナット17により締め付け固定されている。このように構成することにより、本体2を傾斜させ本体2とベース部材6とを引き離すような力が加わり、第2ボルト16および第2ナット17部分に力が加わった場合に、第2ボルト16の軸方向と直交する方向に力が加わることになるため、大きな剪断応力を確保することができ、第2ボルト16と第2ナット17とが破損してしまうことを防止するように作用するものである。
【0022】
なお、本体側フランジ5およびベース側フランジ10の形状は、例えば、図7に示すように、本体開口4の周縁部全域に本体側フランジ5を形成し、ベース側フランジ10を本体側フランジ5に対応するようにベース開口9の周縁部全域に形成するようにしてもよいし、図8に示すように、本体開口4の各辺の中央部分に本体側フランジ5を形成し、ベース側フランジ10を本体側フランジ5に対応するようにベース開口9の各辺の中央部分に形成するようにしてもよい。また、図9に示すように、本体開口4の各辺の両端部分に本体側フランジ5を形成し、ベース側フランジ10を本体側フランジ5に対応するようにベース開口9の各辺の両端部分に形成するようにしてもよいし、図10に示すように、本体開口4の両側縁に下方に向かって本体側フランジ5を形成し、ベース側フランジ10を本体側フランジ5に対応するようにベース開口9の両側縁に下方に向かって形成するようにしてもよい。さらに、図示していないが、例えば、本体底板3およびベース上板7の中央部分に、1枚の本体側フランジ5およびベース側フランジ10を形成するようにしてもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、第1ボルト14の強度はアンカーボルト12の強度より弱く、第2ボルト16の強度はアンカーボルト12の強度と同等かそれ以上の強度を有するように形成されており、本体2に力が加わった場合に、第1ボルト14から破損するように構成されている。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0025】
本実施形態においては、例えば、精算機1の本体2の周囲にロープなどを掛けて、このロープを強い力で引っ張った場合など、本体2を引き倒そうとする力が加わった場合に、第1ボルト14および第1ナット15が固定されているねじ穴13が変形しやすい形状を有しているので、ねじ穴13が変形して第1ボルト14が外れることになる。これにより、本体2とベース部材6とが外れてベース部材6に対して本体2が傾くことになり、本体2に掛けたロープは外れやすくなる。なお、本体2に加わる力の強度によっては、第1ボルト14がねじ穴13から外れなくても、第1ボルト14が破損することにより、本体2とベース部材6とが外れる場合もある。
【0026】
一方、本体側フランジ5とベース側フランジ10とを固定する第2ボルト16および第2ナット17には、剪断応力が大きい第2ボルト16の軸方向と直交する方向への力が加わることになるため、第2ボルト16と第2ナット17との締め付けが外れてしまうことがない。そのため、本体2は傾斜するものの、本体2とベース部材6との連結は確保され、本体2がベース部材6から完全に外れてしまうことはない。
【0027】
以上述べたように、本実施形態においては、本体2に傾斜する方向の力が加わった場合に、第1ボルト14および第1ナット15の連結は外れて本体2は傾斜するものの、第2ボルト16および第2ナット17による連結は強固に確保することができるので、本体2の破損を防止して、精算機1の現金の盗難を確実に防止することができる。
【0028】
なお、本発明に係る精算機1の設置構造は、自動販売機や券売機など内部に現金が貯められるものであれば、いずれのものにも適用することができる。
【0029】
また、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 精算機
2 本体
3 本体底板
4 本体開口
5 本体側フランジ
6 ベース部材
7 ベース上板
8 ベース底板
9 ベース開口
10 ベース側フランジ
11 基礎部
12 アンカーボルト
13 ねじ穴
14 第1ボルト
15 第1ナット
16 第2ボルト
17 第2ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精算機の本体と、
前記本体を地面に形成された基礎部に固定するためのベース部材と、
前記本体と前記ベース部材とを前記本体の周辺部分で連結する第1ボルトおよび第1ナットと、
前記本体の第1ボルトによる連結部分より内側に形成され地面に対してほぼ直交する方向に立設された本体側フランジと、
前記ベース部材に形成され本体側フランジに対応するように立設されたベース側フランジと、
前記本体側フランジと前記ベース側フランジとを連結する第2ボルトおよび第2ナットと、を備えており、
前記第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴は、変形しやすい構造に形成されていることを特徴とする精算機の設置構造。
【請求項2】
前記第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴は、十字状の切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の精算機の設置構造。
【請求項3】
前記第1ボルトおよび第1ナットが装着されるねじ穴は、長穴状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の精算機の設置構造。
【請求項4】
前記第1ボルトおよび第1ナットは、前記第2ボルトおよび第2ナットより強度が弱く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に精算機の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−209804(P2011−209804A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74356(P2010−74356)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】