説明

精米方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鼠の糞の除去に適した精米方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】業務的に玄米を精白米に仕上げるには、選別機器を組み込んだ、いわゆる精米プラントにより行われるのが一般的であり、これら精米プラントでは、精米機の工程の前に、収穫時や保管作業時に混入する石や保存袋の破片等の異物が取り除かれる。この異物の除去には、石に対しては米粒との比重差を利用した公知の石抜き機が、また保存袋の破片や紐等、玄米粒よりも大幅に大きい非粒状異物については、公知の粗選機による選別が用いられる。又、精米機を通した後の工程には、精米工程で発生する砕粒や、精米工程後の搬送路等に付着後剥離する糠玉を除去する公知の粒大選別機(シフター)や、精白米粒の中のヤケ米(黒粒)を除去する公知の色彩選別機等が設置されている。上記のように、精米機の前工程に設置する選別機と、後工程に設置する選別機とに分かれているのは、次の理由にによるものである。すなわち、粒大選別機(シフター)は精米機の後工程でないと、精白米中に混入されている砕粒や糠玉が除去できないし、また色彩選別機を後工程に設置するのは、精白米中のヤケ米は黒白の色彩差が生じて選別効率が高まるからであって、黄茶色の玄米中のヤケ米を除去するよりも、はるかに効率的だからである。従って、精米機の前工程で米粒より僅かに大きい異物の粒大選別や、色彩選別が行われることは無かったのである。
【0003】ところで、それらの選別機を用いた従来の精米プラントでも、鼠の糞がたまたま除去されることがあるが、極めて稀なことであった。しかしそれは選別除去率が低いのではなく、それだけしか混入していないと認識されており、従ってその除去対策としても充分だと考えられてきた。それは石抜き機での比重選別ではある程度の見逃しがあるとしても、色彩(白と黒)の差で選別する色彩選別機では、白い精白米粒中の黒い鼠の糞の除去は完璧と考えられていたからである。しかも実際に商品化された精白米粒中には、鼠の糞は皆無であった。このように、従来の米粒中の鼠の糞の除去対策としては、精米機の後工程に設けた色彩選別機にて完全に除去されているし、誰もそれについての疑いを感じることも無かった。また鼠の糞の混入率も微々たるものでしかないと認識されてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら本発明者は鼠の生態を詳細に研究した結果、色彩選別等によって除去されている鼠の糞の量が少ないのではないか、或いは鼠の糞の選別除去を精米機の工程の後で行うこと自体が間違っているのではないか、という言う点に思い至った。すなわち、玄米を精米機に通すまでに(精米機の前の工程において)鼠の糞の除去が行われない場合は、鼠の糞は米粒とともに精米機内に入ることになり、その場合は鼠の糞は米粒よりはるかに軟らかく且つ粘性が高い為、精米機内での高圧の粒粒摩擦によって米粒に練りつぶされて精白米の表面に塗りたくられ、糞の原形が消えているために精米機から排出された精白米の中には鼠の糞が少ないのではないか、という可能性に着目した。そして実際の調査により、これまで知られていなかった驚くべき事実を突き止めた。本発明者の測定では、後述するような大きさの鼠の糞が、実に玄米1トン当たり平均3個も混入していることが判明した。さらに判明したことは、従来の石抜き機で選別される鼠の糞は、何らかの理由で特別に比重の高いものであり、また精米工程後に色彩選別機で選別される鼠の糞は、これも何らかの理由で精米機での高圧にも耐えられるほど特別に壊れにくい強固なもので、いずれも鼠の糞としては異常な糞であり、大多数を占める通常の鼠の糞はそれらとは異なり比重が米粒と同じかそれより軽く、その為に石抜き機で除去されずに玄米中に混入したまま精米機に入り、しかもこれらの糞は強度が無く軟粘状ゆえに精米機内で米粒群とともに高圧攪拌される結果すりつぶされ、精白米粒に塗りたくられて原形が消失していたという点である。従って、従来の粒のまま精米機より排出されていた糞は、何らかの事情ですりつぶされにくい硬化した特殊な糞で、極めて稀にしかないものであったことがわかる。換言すれば、精米機より排出された精白米には、原形を保った鼠の糞はほとんど存在しなかったことと、玄米の段階では玄米も鼠の糞もともに暗色の為に肉眼では判別しづらかったことにより、誰もその混入存在に気付かなかっただけのことである。まして商品としての精白米粒の表面に糞が塗りたくられていたなどとは、誰も知る由も無かったのである。従って我々が食していた精白米は、炊飯前の洗米処理にて洗浄されるにせよ、鼠の糞にまみれていたことを知るにつけ慄然とする。
【0005】そこで、玄米中に混入する鼠の糞を完全に除去することが必要となるが、上記の公知方法によって玄米の段階で鼠の糞を除去することを考えても、玄米粒の大きさおよび形状は、5〜5.5mm×2.9〜3mm×1.7〜2.3mmの偏平形であるのに対して、鼠の糞の大きさおよび形状は、約15〜20mm×3〜4mmの紡錘形、またはソーセージ形であり、玄米粒に対して僅かに大きいかまたは略同じ大きさである。従って、もっと大きい異物しか除去できない前記粗選機では除去することができるはずがない。またほとんどの鼠の糞は、米粒と比重の差が少ないので、比重選別の石抜き機でも除去できないことは前述のとおりである。
【0006】また上記例以外にも、玄米中に混入している異物を除去するための粒大選別装置は無くもなく、これを鼠の糞の除去に転用することも本発明者は考えた。その装置例として図12に示したものがある。図12は、従来の粒大選別装置50の断面構造を表している。図示するものは、壁面に多数の小孔52が穿設された選別筒54をほぼ水平に固定設置し、この選別筒54内に設けられたスクリュー羽根56に攪拌羽根58を付設したものである。原料玄米は投入口60から投入され、スクリュー羽根56の回転によって排出口62まで選別筒54内を搬送される。この時、選別筒54内で移送される原料玄米を攪拌羽根58の回転によって攪拌し、含まれる微小異物を選別筒54の周面から排出するものである。すなわち本装置は、大多数を占める玄米粒を選別筒54の先端から取り出す一方、微量の混入異物は選別筒54の周面から取り出す構成であり、除去対象となる異物は微小異物に限定されてしまう。
【0007】以上のように、上記従来の粒大選別装置50は、大多数の玄米粒中に混入した少量の微小異物の除去を対象としたものであり、玄米粒より僅かに大きい異物、又は体積が同程度の異物については除去できなかった。また、選別筒54の小孔52の径を玄米粒よりも若干大きくしておき、選別筒54の壁面から大多数の玄米粒を排出する一方、選別筒54の先端から少量の異物を排出することも考えられるが、図の構造からも明らかなように、玄米粒は小孔52から排出されるものの、その多くは排出口62からも流下してしまい、それを避けるには処理能力が著しく低下してしまう。
【0008】さらに、この異物を除去する他の方法として一般的に用いられているものに、メッシュ篩を使用する方法もある。このメッシュ篩を用いる場合、当然ながら図13のように、メッシュ64の開口対角線長xを玄米粒の長径よりも若干長く設定する。ところが、開口対角線長xをこのように設定すると、開口部66が大きくなる結果、かなり大きな異物しか除去できなくなる。しかも開口部66に対して玄米粒が斜めにならないとメッシュ64を通過することができないため、処理能力が著しく低下してしまう。そこで、開口部66に対する玄米粒の方向如何に係わらずメッシュ64を通過可能とする為、メッシュ64の開口辺長yを玄米粒の長径より若干長く設定する方法が取られるが、この場合には、メッシュ64の開口部66が一層大きくなり、極めて大きい異物のみしか除去することはできない。そして当然ながら、これでは鼠の糞は除去できない。
【0009】以上説明したように、玄米を精米機に通す前での、粒大選別による鼠の糞を除去する適当な選別機は無かった。しかも粒大選別以外の選別手段も無かったのである。例えば精白米の「焼け米」の選別除去を目的とした色彩選別機を玄米中の鼠の糞の除去に用いる発想自体も無かったし、仮にあったとしても通常の色彩選別機のままでは、糞の選別率は極めて低くなるので選別できなかった。そして、その他の選別機で玄米中の糞を除去するという発想自体も無く、その機能を有する選別機も存在しなかった。
【0010】
【課題を解決するための手段】このように、精米工程において混入する鼠の糞の量は、従来考えられていたレベルよりはるかに多いことが確かめられたが、この鼠の糞を精米工程中に持ち込まない精米方法が無かった。しかし、このような課題は、精米プラントにおいて、精米機よりも前の工程で米粒の短径よりもやや大きい短径を持ち、玄米粒が最短径の向きとなって流出可能な選別用長による粒大選別によって玄米中に混入している鼠の糞を除去する精米方法により解決できる。そして粒大選別では具体的には、筒体の周面に多数の前記長孔を開口した選別筒において、回転力と移送抵抗によって選別筒の長軸方向で異なる加圧力を付与しながら、原料玄米を前記選別筒の長軸方向に移送することで、玄米粒を前記長孔より流出させる一方、原料玄米中に混在する前記長孔の短径よりもやや大きい鼠の糞を、選別筒の移送方向先端側から排出させることによって原料玄米中の玄米粒と鼠の糞とを分離する粒大選別を行う精米方法、又は、筒体の周面に多数の前記長孔を、その長軸が該筒体の中心線方向と交差する方向に開口した選別筒において、渦巻き状の軌跡を描くような移送力を加えることにより、原料玄米を前記選別筒の長軸方向に移送することで、玄米粒を前記長孔より流出させる一方、原料玄米中に混在する長孔の短径よりもやや大きい鼠の糞を、選別筒の移送方向先端側から排出させることによって原料玄米中の玄米粒と鼠の糞とを分離する粒大選別を行う精米方法となる。又、前記選別筒の適所の通路を絞ったり、羽根板を前記選別筒内に設けた回転軸の長軸方向の複数箇所に設けると共にその取り付け角度を変化させることで該選別筒の長軸方向で異なる加圧力を付与しながら、原料玄米を前記長軸方向に移送してなる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の精米方法は、玄米を精米プラントにおける精米機よりも前の工程で、すなわち玄米を精米機に投入する前に、粒大選別または光電選別を行うものである。この時には、選別除去の時間当たり処理量を、精米機の時間当たり処理量と同等かそれ以上にしておくことが望ましい。具体的には、精米機の前工程に鼠の糞の除去手段を設けておいて玄米を投入すると、鼠の糞の除去から精米機への投入までの流れが連続的に行える構成としておくとよい。
【0012】先ず選別筒による選別方法については、原料玄米を、筒体の周面に玄米粒の短径よりもやや大きい短径を持つ多数の選別用長孔を開口した選別筒内において、回転力と移送抵抗によって選別筒の長軸方向で異なる加圧力を付与しながら、例えば選別筒の先端開口部近傍以外は加圧力を付与しながら選別筒の長軸方向に移送すると、個々の玄米粒は押圧力を受けながら回転するので、玄米粒の長軸が選別筒の長軸方向と交差する方向、すなわち玄米粒の長軸と選別筒の長軸方向とのなす角度が、直交に近い状態を取りやすい。またその際には、玄米粒に加わる加圧力は選別筒の位置によって異なっているので、移送方向における各部が、原料玄米の送入部、同加圧部、同送出部、異物(鼠の糞)の排出部としてそれぞれ機能する。そして選別筒の周壁面には、玄米粒の短径よりもやや大きい短径を持つ選別用長孔を開口しているので、原料玄米への加圧力と回転力の付与と相まって、更に玄米粒は丸みがある上に比較的摩擦係数が小さいことと相まって、玄米粒は選別筒周壁面に開口している選別用長孔にさしかかると、同長孔から出やすい方向、すなわち長孔に対して最も短径となる向き(長孔の開口方向と一致した姿勢)に自転し、選別用長孔から選別筒の外部に連続的に流出する。なお選別用長孔の長軸を、当該筒体の中心線方向と交差する方向に開口させておくと、玄米粒は一層効率よく流出する。
【0013】一方、原料玄米中に混在する、前記選別用長孔の短径よりもやや大きい鼠の糞は、選別用長孔から流出することなく選別筒の移送方向先端側まで移送され、選別筒の移送方向先端側に設けられた異物排出口より外部に排出される。ここで、鼠の糞が選別用長孔から流出しないのは、前述のように、玄米粒は丸みがある上に比較的摩擦係数が小さく、選別用長孔にさしかかると同長孔から出やすい方向、すなわち長孔に対して最も短径となる向きに自転するのに対して、鼠の糞は選別用長孔の短径よりも大きいかまたは略同じ大きさであっても不定形状であり、また表面も丸みが無く比較的摩擦係数が大きいため玄米粒のように自転することも無く、選別用長孔を通過できないからである。従って原料玄米中に混入している取り除きたい鼠の糞は選別筒の先端から、また大多数を占める玄米粒は選別筒の周壁面からそれぞれ取り出されることになる。
【0014】ここで、前記加圧力を、移送方向先端近傍で無くすると、ほぼ鼠の糞しか存在しない選別筒の先端近傍では異物に加圧力がかからず、鼠の糞の割れも発生することもない。
【0015】
【0016】
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。本発明はいずれの場合でも、精米プラントにおいて精米機よりも以前の工程に鼠の糞を除去する選別機を設けることが特徴であるが、その選別除去方法が数方式あるので、先ず実施例1にて、選別筒を用いた粒大選別による鼠の糞の除去方法について説明する。
【0018】〔実施例1〕図1には、本発明の精米方法に用いられる選別筒1の全体構造を模式的に表している。図例は、円筒の周面5に対象となる玄米粒の短径よりもやや大きい短径、例として幅が2.3mmで長さが12mmである選別用長孔3を、その長軸が当該円筒の中心線方向と交差する方向(本図では90°交差を図示しているが、斜めにする場合もある)に開口したものである。内部には、当該選別筒1内の原料玄米に回転力を付与するための羽根板7を設けた回転軸9が内装され、選別筒1の両端はそれぞれ開口されている。
【0019】このような選別筒1に対して、一端側の開口端11から原料玄米を連続的に送入するとともに、図示しない機械的加圧手段や、空気等の流体によって異物排出口13の方向に圧力を加える。更にこの状態で回転軸9を回転させると、選別筒1の異物排出口13に向かう移送力と、羽根板7の回転力とが送入された原料玄米に同時に働くことになる。すなわち図2に示すように、例えば一端側開口端11から送入された回転軸9近傍の原料玄米には、一端側開口端11からの押圧力と羽根板7による回転力の合力により、矢印で示す渦巻き状の軌跡を描くような移送力が加わることになる。そして、選別筒1の適所の通路を絞ったり、羽根板7を回転軸9の長軸方向に複数箇所設けるとともに、その取り付け角度を変化させることで原料玄米の移送にブレーキとなる抵抗力を与え、その結果選別筒1内の原料玄米に対して異なる加圧力を付与することができる。そして原料玄米にこのような加圧力が加わると、個々の被選別物は選別筒1内を回転しながら押圧力を受けるとともに、玄米粒は丸みがある上に比較的摩擦係数が小さい為、選別用長孔3に差しかかると自転して選別筒1に開口している選別用長孔3から出やすい方向、すなわち玄米粒は前述した大きさおよび形状であり、その最短径方向が幅が2.3mmの選別用長孔3を通過する向きになって選別用長孔3に臨み、選別用長孔3から選別筒1の外部に連続的に流出する。この時の玄米粒と選別用長孔3との位置関係は図3に示すように、玄米粒は最短径の向きとなって(イ)の長軸先端が選別用長孔3方向に向かって立った状態(姿勢A1 )または、(ロ)の選別用長孔3の長軸方向と玄米粒の長軸方向とが略一致して寝た状態(姿勢A2 )、又は斜めの状態のいずれかとなり、選別用長孔3から連続的に流出することになる。特に本実施例では選別用長孔3の長軸方向を、原料玄米の回転方向にほぼ沿って選別筒1の中心線方向と直交する方向に開口させているので、玄米粒が選別用長孔3から効率よく流出する。
【0020】一方、原料玄米中に混在する鼠の糞4については、選別用長孔3から流出することなく選別筒1の移送方向先端側まで移送され、選別筒1の移送方向先端側に設けられた異物排出口(他端側開口端13)より外部に排出される。なお玄米粒が選別用長孔3から流出するのに、鼠の糞4が選別用長孔3から流出しない理由は第3図(ロ)のとおり、玄米粒の形状は体積の割に短径が極めて小さく、すなわち長径が約5mmもありながら、その短径が大きいものでも約2.2mmしかない為に幅2.3mmの選別用長孔3からは流出する一方、鼠の糞4はこれより若干大きいので流出しないためである。尤も鼠の糞4の中には玄米粒同様の大きさのもの、つまり玄米粒の形状や大きさに近似したものが無いわけではない。しかし、鼠の糞4は玄米粒のようにすんなりした丸みのある形状でなく、不定形で表面の摩擦係数も大きい上に曲がっていたりしている為、玄米粒のように選別用長孔3に差しかかった時に、鼠の糞4が選別用長孔3の孔目に沿う方向に自転できず、長孔3より流出しないのである。従って本発明の精米方法では、取り除きたい鼠の糞4は選別筒1の先端から、大多数を占める玄米粒は選別筒1の周面5からそれぞれ取り出されることになる。
【0021】続いて、上述した鼠の糞の除去方法を用いた、精米機の投入口に連結可能な異物選別装置の実施例について説明する。図4は、当該異物選別装置の第1実施例を模式図として表している。図例は、原料玄米を移送するための移送手段であって、回転軸9の外周に、当該回転軸9の母線aに対して所定の角度θ1 ,θ2 ,θ3 で羽根板7を取り付けた単または複数個のスクリュー式移送手段15と;前記スクリュー式移送手段15の外周側に固定的に配置された、円筒または多角筒の筒体の周面に玄米粒の短径よりもやや大きい短径を持つ選別用長孔3をその長軸が当該円筒の中心線方向と交差する方向に開口して設けるとともに、スクリュー式移送手段15による移送下流先端側に異物排出口(他端側開口端13)を設けた選別筒1と;を備えた異物選別装置17である。ここで、スクリュー式移送手段15の回転軸9は中空構造を有し、一端側からモーターシャフト等、駆動用の回転軸9aが嵌入された片持ち構造となっている。さらに選別筒1の一端側適所には、原料玄米の投入口19が設けられている。なお選別筒1と羽根板7とのクリアランスは、基本的には玄米粒の短径の3〜4倍の寸法が望ましい。すなわちこれが狭すぎると砕粒が発生し、逆に広すぎると選別能力が上がらない為であり、実験の上で適正なクリアランスを決めることがより好ましい。そして、前記スクリュー式移送手段15の移送上流基端側を原料玄米の送入部A、移送下流先端側を玄米粒の送出部B、当該送入部Aと送出部Bの間を攪拌部Cとし、送出部Bにおける前記羽根板7と、回転軸9の母線aとのなす角度θ1を最も大きく、かつ攪拌部Cにおける当該角度θ2 を最も小さく、送入部Aにおける当該角度θ3 をθ1 とθ2 の間に設定している。このような構成によって、送入部Aから送入された原料玄米は、送出部Bに差しかかると羽根板7の取り付け角度がθ1 となっている為、単位時間当たりの移送量が減少するので、そこに移送抵抗が働き、送入部Aの先端から攪拌部Cまでの間の原料玄米に加圧力が印加されることになる。従って、前述の通りの作用により、外周に存在する選別用長孔3から、玄米粒は流出する。このような構造および上述の作用により、玄米粒は送出部Bの先端に達する前に、そのほとんどが選別用長孔3から流出してしまい、送出部Bの先端近傍では加圧力が全くかからず、残った少量の鼠の糞のみが他端側開口端13に移送され排出されていく。この時には、鼠の糞には加圧力が加わらず、鼠の糞の割れやその他の異物による擦り傷がスクリュー式移動手段や選別筒内面に発生することが防止できる。
【0022】このような異物選別装置17における作用について、さらに詳細に説明する。図5には、図4に示した本異物選別装置17のI−I断面を、他端側開口端13より眺めたところを表している。スクリュー式移送手段15の回転に伴って、回転軸9の外周に設けられた羽根板7が回転し、この羽根板7の回転によって原料玄米には、他端側開口端13に向かった移送力とともに図中の矢印方向に沿った回転力が付与される。そして、原料玄米はこの回転力により、選別筒1の内周面21に沿った位置まで運ばれ、前記選別方法のところで述べたように、図3に示したような姿勢を取り、玄米粒は効率的に選別筒1の外部に流出する。この選別用長孔3は続く図6に示すように、(イ)の長方形状や(ロ)の両端を円弧形状としたもの等、対象となる玄米粒の種類によって適宜設計すればよい。なお選別用長孔3の寸法は、玄米粒の中で最も短径が大きいものより僅かに大きな幅とし、長さは玄米粒の中で最も長径の大きいものの1.2〜3倍程度がよい。また玄米粒の場合には、その形状が短径断面形状が略円形であるため、選別用長孔3の通過をスムースに行わせるという観点から、(ロ)の形状が好ましい。
【0023】また以上の本発明においては、この選別用長孔3の長軸方向と、選別筒1の中心線方向との間の角度も考慮した方がよい。図7には、この選別用長孔3と選別筒1の中心線方向9cとの位置関係を表している。ここでは図中で示される角度θ4 を90度として扱っている。これは本発明の作用により、玄米粒が選別筒1内を回転するので、その方向に沿って開口させているからである。しかし原料玄米は回転しながら移送方向に進んでいるので、上記角度θ4 は90度として固定的に考えるのではなく、70°程度の斜めにした方がよい場合もある。
【0024】ここで、玄米の品種による長径と短径、およびそれぞれに適合する選別用長孔3の長径と短径を図8R>8に表す。図示するように、玄米粒の大きさの違いによって選別用長孔3の長径と短径を設定すればよい。また本図から明らかなように、玄米粒の場合はその短径断面形状が略楕円形であるので、選別用長孔3の短径は、当然ながらこの短径断面の楕円長軸よりも長くしておく必要がある。
【0025】また、移送方向適所に移送抵抗手段を設け、当該移送抵抗手段よりも移送上流側を原料玄米の加圧部、そして移送抵抗手段よりも移送下流側を、加圧力開放部とすることもできる。この移送抵抗手段とは、選別筒1の適所において移送される原料玄米の流れに抵抗し、それより下流側においては、加圧力を付与せずに他端側開口端13まで移送することを目的とするものである。このようにすることで、他端側開口端13に至るまでに僅かに残っている玄米粒は選別用長孔3より流出してしまい、残された鼠の糞のみが排出される。
【0026】この移送抵抗手段としては、図示しないが、スクリュー式移送手段を少なくとも送入部の移送手段とそれよりも低速回転による送出部の移送手段によって構成し、この低速回転スクリューを移送抵抗とすることで実現できる。
【0027】さらに別の移送抵抗手段としては、図9に示すように、スクリュー式移送手段15の移送方向適所に円盤状の板状部材16を設けてもよい。この板状部材16は、スクリュー式移送手段15の回転軸9の母線aに対して90°に取り付けられており、板状部材16が回転しても、原料玄米には移送力は働かない。しかも選別筒1内の原料玄米の移送通路は、円板状の板状部材16と選別筒1との僅かの隙間しかないから、板状部材16より上流側では効果的な加圧力が付与される一方、下流側では完全に加圧力は開放される。そして、板状部材16と選別筒1との間の空隙から僅かの玄米粒と鼠の糞のみが板状部材16の下流側に押しやられ、その後は僅かに残っている玄米粒は選別用長孔3から排出され、鼠の糞のみが加圧力を付与されずに他端側開口端13まで移送されて排出される。
【0028】さらに別の移送阻止手段としては、図10に示すように、スクリュー式移送手段15を挿通した位置関係で選別筒1の内周面の適所に固設するとともに、移送方向下流側の開口径を移送方向上流側の開口径よりも狭くした円錐形部材18を設けてもよい。この円錐形部材18は、図から明らかなように原料玄米に対してジャマ板として機能するので、その移送がせき止められることになって効率的な加圧力の付与に寄与できる。このように、円錐形部材18より上流側では効果的な加圧力が付与される一方、下流側では完全に加圧力は開放される。そして、円錐形部材18と回転軸9との間の空隙から鼠の糞と僅かの玄米粒が円錐形部材18の下流側に押しやられ、その後は加圧力が付与されない状態で玄米粒は選別用長孔3より排出され、最後に残った鼠の糞については他端側開口端13まで移送されて排出される。以上述べた移送抵抗手段はあくまで一例であって、その他公知の抵抗手段を用いてもよい。
【0029】次いで本発明の異物選別装置17の別の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。図11には、本発明の異物選別装置17の第2実施例を模式的に表している。図例は原料玄米を移送するための移送手段であって、回転軸9の外周に、当該回転軸9の母線aに対して所定の角度θ1 ,θ2 ,θ3 で羽根板7を取り付けた単または複数個のスクリュー式移送手段15と;前記スクリュー式移送手段15の外周側に配置され、円筒の周面に玄米粒の短径よりもやや大きい短径を持つ選別用長孔3をその長軸が当該円筒の中心線方向と交差しない方向に開口して設けるとともに、スクリュー式移送手段15による移送下流先端側に異物排出口(他端側開口端13)を設けた選別筒1と;を備えた異物選別装置17である。ここで、スクリュー式移送手段15の回転軸9は中空構造を有し、一端側に駆動用の回転軸9aを嵌入した片持ち構造となっている。そしてこの回転軸9aにはプーリー23が取り付けられており、ベルト25を介して図示しないモーター等の回転駆動手段に接続されている。さらに選別筒1の一端側適所には、原料玄米の投入口19が設けられている。また選別筒1は筐体27に取り付けられ、筐体27の内部は選別筒1の外周部全体から流出した玄米粒の流路となり、筐体27の下部に設けた排出口29につながっている。ここでは構造を判りやすく説明するため、本図では便宜上選別用長孔3の開設密度を粗く描いている。すなわち、選別用長孔3の短径は、少なくとも羽根板7間のピッチよりも小さいことは当然である。
【0030】そして、前記スクリュー式移送手段15の移送上流基端側の原料玄米の送入部をAとすれば、その先端部から送出部Bに至るまでの間を加圧部とし、送出部Bにおける前記羽根板7と、回転軸9の母線aとのなす角度θ1 を最も大きく、かつ送入部Aにおける当該角度θ3 を小さく設定している。このような構成によって、送入部Aから送入された原料玄米は、送出部Bの少移送量の作用によって抵抗を受け、そこに至るまでに存在する原料玄米には、送入部Aからの移送に伴う推力によって加圧力が印加される結果、選別用長孔3から強制的に流出させられることになる。また、送出部Bでのスクリューピッチが、攪拌部Cに近接したところで最も小さいことから、玄米粒は送出部Bの先端に達する前にそのほとんどが選別用長孔3から流出するとともに、送出部Bの先端に近づくほど加圧力は小さくなり、残った少量の鼠の糞のみが他端側開口端13に移送されていく。この時においては、大多数の玄米粒はすでにそのほとんどが選別筒1の内部には存在しない。
【0031】また重複説明は省略するが、本例でも第1実施例と同様、前述の各移送抵抗手段を組み合わせることが有効であることは勿論のことである。
【0032】
【0033】
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の精米方法、具体的には上記各実施例において説明した装置の使用による精米方法によって玄米中に混入している鼠の糞を取り除くことにより、後の精米工程に鼠の糞を持ち込むことが無くなる。その結果として、従来のように食品でありながら、鼠の糞を塗り付けた精白米を消費者に供給することが無くなる。さらに実施例1の方法では、原料玄米を選別筒内において回転力と移送抵抗によって選別筒の長軸方向で異なる加圧力を付与しながら移送すると、個々の玄米粒は送出部に至るまでは押圧力を受ける結果、幅の狭い選別用長孔から玄米粒を効率よく、かつ大きな単位時間処理量でもって排出させることができ、搗精と同等の処理能力での高精度な選別除去が可能なるので、搗精前に新たな一工程を付加することが作業効率上のマイナス面となることも無い。さらに当該異物除去装置は、安定した選別とともに選別筒の先端からは鼠の糞等の異物のみが排出されるので、極めて高精度の選別作業が可能となる。従ってこの方法では、搗精を行う精米機の投入口近傍に上記選別筒を用いた異物選別装置を設けておいて玄米を投入すると、鼠の糞の除去から精米機への投入までの流れが連続的に行える精米方法を実現することができるのように本発明の精米方法によれば、精白米における食品としての衛生上の品質を大幅に向上させることができ、またイメージ向上にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に用いられる選別筒の全体構造を表す説明図
【図2】同原料玄米の受ける移送力を模式的に表す説明図
【図3】同選別筒の内周壁面近傍における、選別用長孔と玄米粒との位置関係を表す説明図
【図4】本発明の精米方法に使用しうる異物選別装置の第1実施例を表す説明図
【図5】図4に示した異物選別装置の断面を表す説明図
【図6】同選別用長孔の形状を表し、(イ)が長方形状のもの、(ロ)両端を円弧形状としたもの
【図7】同選別用長孔と選別筒およびスクリュー式移送手段の回転軸中心との位置関係を表す説明図
【図8】同玄米粒の品種による長径と短径、およびそれぞれに適合する選別用長孔の長径と短径を表す説明図
【図9】同移送抵抗手段の実施例を表す説明図
【図10】同移送抵抗手段の取り付け構造例を表す説明図
【図11】同本発明の精米方法に使用しうる異物選別装置の第2実施例を表す説明図
【図12】従来の異物選別装置の構造を表す説明図
【図13】従来のメッシュ篩を表す説明図
【符号の説明】
1 選別筒
3 選別用長孔
4 鼠の糞
5 長軸方向壁面
7 羽根板
9 回転軸
9a 駆動用の回転軸
11 一端側開口端
13 他端側開口端
15 スクリュー式移送手段
16 板状部材
17 異物選別装置
18 円錐形部材
19 投入口
21 選別筒の内周面
23 プーリー
25 ベルト
27 筐体
29 排出口
50 従来の異物選別装置
52 小孔
54 選別筒
56 スクリュー羽根
58 攪拌羽根
60 投入口
62 排出口
64 メッシュ
66 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 精米プラントにおいて、筒体の周面に多数の長孔を開口した選別筒内で、回転力と移送抵抗によって選別筒の長軸方向で異なる加圧力を付与しながら、原料玄米を前記選別筒の長軸方向に移送することで、玄米粒を前記長孔より流出させる一方、原料玄米中に混在する前記長孔の短径よりもやや大きい鼠の糞を、選別筒の移送方向先端側から排出させることによって原料玄米中の玄米粒と鼠の糞とを分離する粒大選別を精米機よりも前の工程で行い、前記長孔として、玄米粒の短径よりもやや大きい短径を持ち、玄米粒が最短径の向きとなって流出可能な選別用長孔を用いてなる精米方法。
【請求項2】 筒体の周面に多数の前記長孔を、その長軸が該筒体の中心線方向と交差する方向に開口した選別筒において、渦巻き状の軌跡を描くような移送力を加えることにより、原料玄米を前記選別筒の長軸方向に移送することで、玄米粒を前記長孔より流出させる一方、原料玄米中に混在する長孔の短径よりもやや大きい鼠の糞を、選別筒の移送方向先端側から排出させることによって原料玄米中の玄米粒と鼠の糞とを分離する粒大選別を行う請求項1記載の精米方法。
【請求項3】 前記選別筒の適所の通路を絞ったり、羽根板を前記選別筒内に設けた回転軸の長軸方向の複数箇所に設けると共にその取り付け角度を変化させることで該選別筒の長軸方向で異なる加圧力を付与しながら、原料玄米を前記長軸方向に移送してなる請求項1又は2記載の精米方法。

【図2】
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【図5】
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【図12】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図13】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【特許番号】特許第3204048号(P3204048)
【登録日】平成13年6月29日(2001.6.29)
【発行日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−192761
【出願日】平成7年7月28日(1995.7.28)
【公開番号】特開平9−38509
【公開日】平成9年2月10日(1997.2.10)
【審査請求日】平成9年3月17日(1997.3.17)
【出願人】(000151863)株式会社東洋精米機製作所 (11)
【参考文献】
【文献】特開 平6−296885(JP,A)
【文献】実開 平3−66643(JP,U)
【文献】実開 昭57−99768(JP,U)
【文献】実開 昭57−25774(JP,U)