説明

精製ポリマー材料及び精製ポリマー材料の製造方法

【課題】本方法は粒状不純物量の低減した濾過ポリマー組成物を得る。こうして得られた濾過ポリマー組成物はデータ記憶媒体用途での使用に適している。
【解決手段】ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を含有するメルトを溶融濾過システムで濾過してポリマー材料を精製する方法について開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含むメルトを濾過してポリマー材料を精製する方法に関する。本発明は特に、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含むメルトを濾過して、粒状不純物量の低減した濾過ポリマー材料を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光、磁気及び光磁気媒体は、記憶量1メガバイト当たりの価格が手頃で高い記憶容量が可能な高性能記憶技術の主供給源である。通例ディスク表面積1平方インチ当たりの10億ビット数(ギガビット/平方インチ(Gbit/in))で表される面積密度は、線密度(トラック1インチ当たりの情報ビット数)に、1インチ当たりのトラック数であるトラック密度を乗じたものに等しい。面積密度の向上がメガバイト当たりのコスト低下の原動力であったが、業界では面積密度をさらに高めることが絶えず求められている。
【0003】
光記憶の分野では、アクセス時間、システムボリューム、コスト競争に開発目標が当てられている。面積密度の向上は、(近接場光学系を用いた)光学系の回折限界の探求、三次元記憶の検討、可能性のあるホログラフィ記録法その他の技術の検討によって対処されている。
【0004】
ポリマーデータ記憶媒体はコンパクトディスク(CD−ROM)及び追記型又は書換可能コンパクトディスク(例えば、CD−RW)並びに同様に面積密度の低い(例えば約1Gbit/in未満)デバイスのような分野に使用されてきたが、これらは通例、複屈折の低い良好な光学品質の基板の使用が必要とされる読出デバイスである。
【0005】
CDとは異なり、高い面積密度容量を有する通例約5Gbit/in前後の記憶媒体では、面積密度を高めるために第一面又は近接場光読取・書込技術(first surface or near field read/write techniques)が用いられる。こうした記憶媒体では、基板の光学的品質は関係なく、むしろ基板の物理的及び機械的特性の重要性が増している。高面積密度用途では、第一面用途も含めて、記憶媒体の表面品質が読取装置の精度、データ記憶能及び基板の複製品質に影響を及ぼしかねない。
【特許文献1】米国特許第3306874号明細書
【特許文献2】米国特許第3306875号明細書
【特許文献3】米国特許第3365422号明細書
【特許文献4】米国特許第3383435号明細書
【特許文献5】米国特許第3639656号明細書
【特許文献6】米国特許第3642699号明細書
【特許文献7】米国特許第3661848号明細書
【特許文献8】米国特許第3733299号明細書
【特許文献9】米国特許第3838102号明細書
【特許文献10】米国特許第3962181号明細書
【特許文献11】米国特許第3973890号明細書
【特許文献12】米国特許第4054553号明細書
【特許文献13】米国特許第4083828号明細書
【特許文献14】米国特許第4092294号明細書
【特許文献15】米国特許第4373065号明細書
【特許文献16】米国特許第4421470号明細書
【特許文献17】米国特許第4760118号明細書
【特許文献18】米国特許第4808262号明細書
【特許文献19】米国特許第4845142号明細書
【特許文献20】米国特許第4987194号明細書
【特許文献21】米国特許第4992222号明細書
【特許文献22】米国特許第4994217号明細書
【特許文献23】米国特許第5017655号明細書
【特許文献24】米国特許第5053288号明細書
【特許文献25】米国特許第5102591号明細書
【特許文献26】米国特許第5204410号明細書
【特許文献27】米国特許第5250486号明細書
【特許文献28】米国特許第5586110号明細書
【特許文献29】米国特許第5607700号明細書
【特許文献30】米国特許第5833848号明細書
【特許文献31】米国特許第6306978号明細書
【特許文献32】米国特許第6365710号明細書
【特許文献33】米国特許第6372175号明細書
【特許文献34】米国特許第6407200号明細書
【特許文献35】米国特許第6437084号明細書
【特許文献36】米国特許第6444779号明細書
【特許文献37】米国特許第6469128号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2002/0062054号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2002/0094455号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2002/0197438号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2002/0197441号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2003/0044564号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2003/0067089号明細書
【特許文献44】欧州特許出願公開第0225801号明細書
【特許文献45】欧州特許出願公開第0271000号明細書
【特許文献46】欧州特許出願公開第0295891号明細書
【特許文献47】欧州特許出願公開第0303209号明細書
【特許文献48】欧州特許出願公開第0642124号明細書
【特許文献49】欧州特許出願公開第0724259号明細書
【特許文献50】欧州特許出願公開第0770637号明細書
【特許文献51】欧州特許出願公開第1031972号明細書
【特許文献52】欧州特許出願公開第1047055号明細書
【特許文献53】欧州特許出願公開第1130587号明細書
【特許文献54】欧州特許出願公開第1167419号明細書
【特許文献55】欧州特許出願公開第1167420号明細書
【特許文献56】欧州特許出願公開第1167421号明細書
【特許文献57】特開平2−107651号公報
【特許文献58】特開平9−237437号公報
【特許文献59】特開平1−92209号公報
【特許文献60】特開平2−208342号公報
【特許文献61】特開昭63−13722号公報
【特許文献62】特開昭63−256427号公報
【特許文献63】特開昭63−301247号公報
【特許文献64】特開昭63−309547号公報
【特許文献65】特開昭63−86738号公報
【特許文献66】特開昭63−91231号公報
【特許文献67】特開昭63−91232号公報
【特許文献68】特開昭64−42601号公報
【特許文献69】国際公開第01/11618号パンフレット
【特許文献70】国際公開第02/43943号パンフレット
【特許文献71】特開平11−268098号公報
【特許文献72】特開昭58−147332号公報
【特許文献73】特開平6−093014号公報
【非特許文献1】Paul F.Ranken“FlameRetardants”,PlasticsAdditivesHandbook,5th Edition, Hanser Publishers, Munich, 2001, pp.681−696
【非特許文献2】R.Scherrer, “Colorants”, PlasticsAdditivesHandbook,5th Edition, Hanser Publishers, Munich, 2001, pp.813−882
【非特許文献3】http://www.atofina.com/groupe/actucomm/print.cfm?IdComm=5052
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、データ記憶媒体用に適した様々な材料が利用可能であるが、データ記憶媒体用途で厳格さを増しつつある条件を満たすのに必要な属性を併せもつ新たなポリマー材料に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、上述のニーズは、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を押出機で溶融ブレンディングしてメルト(メルト混合物ともいう)を形成し、メルトを溶融濾過システムで濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含む本発明のポリマー材料の精製方法によって満足される。
【0008】
別の実施形態では、溶融濾過システムにはスクリーンパック、燒結金属フィルター又はこれらの組合せを利用する。別の実施形態では、押出機内でのメルトの平均滞留時間は約5分以下である。
【0009】
他の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を含む組成物であって、平均粒径30μmの粒子の数が組成物1g当たり30個未満、好ましくは20個未満、さらに好ましくは10個未満である組成物を提供する。
【0010】
他の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を含有する組成物であって、平均粒径20μmの粒子の数が組成物1g当たり200個未満、好ましくは140個未満、さらに好ましくは100個未満である組成物を提供する。
【0011】
他の実施形態では、平均粒径30μmの粒子の数が濾過組成物1g当たり30個未満、好ましくは20個未満、さらに好ましくは10個未満であり、かつ平均粒径20μmの粒子の数が濾過組成物1g当たり200個未満、好ましくは140個未満、さらに好ましくは100個未満である濾過ポリマー組成物を提供する。
【0012】
他の実施形態では、上述の濾過組成物を含めて、平均粒径174μm以上、好ましくは140μm以上、さらに好ましくは100μm以上の粒子が濾過組成物1g当たりゼロである濾過組成物を提供する。上記濾過ポリマー材料から製造した物品を含む他の実施形態については後述する。
【0013】
高面積密度の記憶媒体には良好な表面品質が要求されるので、現行のデータ記憶媒体を粒状不純物量が制限された材料から製造するのが望ましい。ゲルやポリマー材料の炭化物のような可視粒状不純物は美的欠陥として消費者には品質の劣った製品とうつるので望ましくない。粒度約50μm超の粒子は成形品内で応力集中部分として働き、成形品の衝撃強さを下げるおそれがある。粒度約1μmの粒状不純物はヘーズの増加に寄与し、ヘーズの増加は、かかる不純物を含有する材料から成形した物品を通しての光の透過、即ち物品の透明性に影響を与える。最も重要なこととして、粒状不純物は記憶媒体の表面品質に影響し、読取精度、データ記憶(ストレージ)及び複製性に影響する。
【0014】
可視粒子つまり「黒班」は、通常拡大しなくても人の目で視認できる平均粒径30μm以上の暗色又は着色粒子である。人によっては、拡大しなくても平均粒径30μm未満の粒子を視認できたり、平均粒径30μm超の粒子でないと視認できなかったりするが、本明細書で特定の平均粒径に言及せずに用いる「可視粒子」、「可視粒状物」及び「黒班」という用語は、平均粒径30μm以上の粒子を意味する。ポリ(アリーレンエーテル)は高温で酸化分解するので、ポリ(アリーレンエーテル)組成物には典型的には黒班や他のもっと小さい微細粒子が存在する。ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)樹脂の組成物の製造時に通例採用されるように、押出機で高い剪断速度及び/又は高温で長時間加工されると、ポリ(アリーレンエーテル)は、炭化した「黒班」が形成される傾向がある。
【0015】
上述のニーズは、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、メルトを溶融濾過システムで濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含む本発明のポリマー材料の精製方法によって満足される。通常、押出機内でのメルトの平均滞留時間は約5分以下である。濾過によって、ポリマー材料中に存在する粒状不純物を除去して、粒状不純物量の低減した濾過ポリマー材料を得る。
【0016】
本明細書で用いる「ポリマー材料」という用語には、ポリ(アリーレンエーテル)樹脂とポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有する組成物が包含される。
【0017】
本明細書で説明する通り、ポリマー混合物、例えばポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)の混合物のメルトを溶融濾過すれば、粒状不純物を除去できる。押出機内でのメルトの滞留時間、温度及び剪断速度を制御して、ポリマー材料、特にポリ(アリーレンエーテル)成分の分解を最小限に抑える必要がある。ポリ(アリーレンエーテル)は高温に維持されると、酸化し、ゲルを形成することが知られている。これらの樹脂は、高温で長時間加工されると、炭化した「黒班」を形成したり、色が劣化する(黒ずむ)。したがって、押出機長さ及び押出機スクリュー設計の選択、及びスクリュー速度及び供給速度の制御によって、メルトの滞留時間を最小限に抑えるのが好ましい。平均滞留時間が約5分以下であればよいが、約2分以下が好ましく、約1分以下がさらに好ましい。
【0018】
また、溶融濾過システムを通過するメルトの滞留時間を最小限に抑えるのも好ましい。溶融濾過システムは、様々な選択肢の中でも、特にフィルターの表面積、フィルターのタイプ及び溶融濾過ハウジングの容量の選択によって、滞留時間が短くなるように設計することができる。フィルター表面積が大きく、ハウジング容量が小さいほど、滞留時間を短縮できる。
【0019】
押出機の溶融濾過システムは、好ましくは押出機の最後のバレル、さらに好ましくは押出機のダイヘッドに配置する。押出機は、単一の溶融濾過システムを備えていても、異なるタイプの溶融濾過システムの組合せなどの多重溶融濾過システムを備えていてもよい。
【0020】
押出機は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)及び/又は追加の樹脂及び添加剤の均質メルトを形成することができれば、どのようなタイプの押出機でも使用できる。有用なタイプの押出機には、例えば、異方向回転二軸押出機、同方向回転二軸押出機、単軸押出機、単軸往復押出機、ニーダー、リング押出機、これらの組合せなどがある。単一の押出機を用いるのが好ましいが、複数の押出機を用いてもよい。
【0021】
単軸押出機を使用してもよいが、溶融濾過システムを通しての輸送能力が大きいので、多軸押出機を用いるのが概して好ましい。異方向回転二軸押出機、例えばLeistritz Extrusionstechnik and NFM Welding−Engineers社製の押出機が有用であり、高圧又は長い滞留時間が望ましい場合に好ましいことが多い。コニカル異方向回転二軸押出機、例えばMilacron社製の押出機も、供給能力が大きく、輸送効率に優れるので好ましい。噛合式同方向回転二軸押出機、例えばCoperion Werner−Pfleiderer社製の押出機が、高い押出量、短い滞留時間、融通のきくスクリュー設計、傑出したアロイ形成能その他の設計上の利点などから、特に好ましい。一般に三ローブ押出機も二ローブ押出機も有用であるが、通常二ローブ押出機が押出量が大きいので好ましい。リング押出機、例えば3+ Extruder GmbH社製の押出機も有用であり、典型的には3〜12個の小スクリュー又は溝付ロールのリングを静止ロッド又はコアの周囲に配置した構成である。スクリューが両側で同方向回転し、噛み合って、良好な分散・分配混合を達成するとともに、押出機内での材料の滞留時間を制御する能力をもつ。また、噛合式設計によってスクリューの剪断、混合及び混練要素に2つのクリーンワイプ部材が得られる。
【0022】
押出機の長さは、ポリマー成分及び追加の添加剤の溶融・均一混合を実現し、適宜メルト混合物のベントに十分な長さとする必要がある。5つのバレル区分のような短い押出機を使用してもよいが、長い押出機も有用である。
【0023】
ポリ(アリーレンエーテル)のブレンドを製造する場合、溶剤、単量体及び他の低分子量材料を押出機からベント系を通して除去する。ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)樹脂ブレンドからの揮発性物質の除去を改良するのに特に有用な方法には、米国特許第5204410号(Baneviciusら)、米国特許第5102591号(Hassonら)、米国特許第4994217号(Banevicius)及び米国特許第4992222号(Baneviciusら)に記載されているような、スチームストリッピングがある。スチームストリッピングは典型的には、水又はスチームの注入ポートを有し、ストリッピングされた揮発物及び水を除去するのに十分な真空ベント能力を備える押出機で行う。水又はスチームがストリッピング剤として好ましく、使用割合はポリマー組成物の約15重量%以下であり、これを押出機バレルの長さに沿って配置された2つ以上の注入口間で均等又は不均等に分割する。使用割合は約0.25〜約15重量%が好ましい。通常この範囲内の量が、真空系に負荷をかけることなく、揮発物を除去するのに極めて効果的であるからである。0.5〜約5重量%が最も好ましい。
【0024】
押出機の内部自由空間を不活性ガスでガスシールして溶融ポリマーの酸素への露呈を低減するのも、ゲル化や黒班形成を抑制するのに有効である。本明細書で「不活性ガス」とは、通常実質的に酸素を含有しない場合にそうであるように、溶融したポリマー組成物の酸化や他の化学反応をもたらさないガスを意味する。一般に、入手しやすく低コストであるので窒素を使用するが、他の不活性ガスも想定できる。窒素(又は他の不活性ガス)を、溶融ポリマーが酸素と接触する可能性のある、フィーダ系、押出機供給ゾーン、ベント、溶融濾過システム及び押出機の他の区域の1つ以上に添加することができる。
【0025】
メルトに追加の成分を供給するのに適当な、押出機バレルに沿って1つ以上の側部フィーダを有する押出機も想定されている。追加の成分とは、追加の樹脂、官能化剤及び/又は添加剤などである。
【0026】
押出機は、メルト混合物を構成する諸成分の均一なブレンドを生成するのに適当な高温であるが、メルト混合物の分解を抑制するのに十分な低さの温度で運転するのが好ましい。使用できる押出機温度の範囲は約260℃〜約380℃である。この範囲内で、約340℃以下の温度を使用でき、約320℃以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、約280℃以上の温度を使用でき、約290℃以上が好ましい。押出機温度の上記範囲内で、メルト混合物は約280℃〜約340℃の温度になる。
【0027】
溶融ブレンド及び溶融濾過操作を開始、終了するために選択する条件は、加工プロセス中にゲルや黒班の形成を抑制するように制御するのに重要である。押出機を使用する場合、残留物が残り、これが長期間高温にさらされ、ゲル及び黒班の形成につながるおそれがある。本発明の実施にあたっては、空の装置セッティングで始動できるように、一旦分解し、クリーニングして残留物を除いた、装置で加工プロセスを開始するのが好ましいが、商業的な運転では、かかる分解はほとんどの場合実行しにくい。一般に、樹脂組成物と相溶性であり、良好な熱安定性と酸化安定性を有する材料、例えばポリスチレンを用いて機械を始動する。定常運転状態に達したら、組成物を調節して所望の処方を実現する。典型的には、始動操作及びそれに続く定常状態への移行時にかなりの数のゲル及び黒班が形成され、このことはオンライン又はオフライン品質モニターシステムにより測定される。
【0028】
二軸押出機を使用する場合、押出機の操作は、約0.5kg/hr/cm〜約8.0kg/hr/cmの比押出量により規定することができる。比押出量は、メルトの押出量を押出機バレルの直径の3乗で割った商として定義される。この範囲内で、約7.5kg/hr/cm以下の比押出量を使用することができ、約7kg/hr/cm以下が好ましい。またこの範囲内で、約3kg/hr/cm以上の比押出量を使用することができ、約5kg/hr/cm以上が好ましい。
【0029】
一実施形態では、溶融ポンプ又はギヤポンプを押出機と組み合わせて使用し、溶融濾過システムを通してのメルト流に十分な速度と圧力を与える。溶融ポンプはまた、押出機システムを通してのメルトの均等な流れを制御・維持する能力をもち、その結果より均一なポリマー材料となる。
【0030】
一実施形態では、溶融ブレンド工程に先立って、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルキレン芳香族)及び所望の追加成分を一緒に混合することができる。諸成分を均質混和することができれば、公知の装置のいずれを使用してもよく、例えば成分に剪断力を加えることのできるミキサ、コニカル・スクリューミキサ、Vブレンダ、二軸配合機、ヘンシェルミキサ、リボンブレンダなどを使用できる。
【0031】
溶融濾過システム又は装置は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルキレン芳香族)又は両者の組合せを含有するメルト混合物から粒状不純物を除去することができれば、何を用いてもよい。メルトを単一の溶融濾過システムで濾過するのが好ましいが、多重溶融濾過システムも想定されている。
【0032】
適当な溶融濾過システムには、種々の材料、例えば燒結金属、金属メッシュ又はスクリーン、金属繊維フェルト、セラミック又はこれらの材料の組合せなどから形成されたフィルターがある。フィルターとしては、Pall社製及びMartin Kurz社製の焼結金網フィルターなどの、くねり度の高い燒結金属フィルターが特に有用である。
【0033】
溶融フィルターの幾何形状は、コーン、プリーツ、キャンドル、積重ね、平坦、巻回、スクリーン、カートリッジ、パックディスク及びこれらの組合せなどのいずれを使用してもよい。幾何形状の選択は、例えば押出機の寸法、望ましい押出量並びに望ましい粒子濾過度合など種々のパラメータに応じて変わる。好ましい構成材料には、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、その他の金属及び合金がある。平織、ダッチ織、スクェア織及び綾織など種々の織りのワイヤ織物を使用できる。内部容量及び流れ面積を最小にし、また繰り返しのクリーニングサイクルに耐えるように設計されたフィルターが特に有用である。
【0034】
溶融濾過システムは、定期的又は連続的にスクリーンを交換するフィルター或いはバッチ式フィルターでもよい。例えば、連続的にスクリーンを交換するフィルターには、リボン状のスクリーンフィルターがあり、これを押出機のメルト流れの通路にゆっくりと通過させる。メルト混合物がフィルターを通過し、フィルターはメルト中の粒状不純物を集め、フィルターリボンがリボンの新しい部分で定期的又は連続的に更新されるにつれて、これらの不純物はフィルターリボンにより押出機の外に運び出される。
【0035】
溶融フィルターの孔径は、約0.5μm〜約200μmの範囲の寸法とすることができる。この範囲内で、孔径は約100μm以下を使用でき、約50μm以下が好ましく、約20μm以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、孔径は約1μm以上を使用でき、約7μm以上が好ましく、約15μm以上がさらに好ましい。
【0036】
溶融濾過システムの温度は、材料を溶融状態に、かつ過度の圧力降下を伴わずに材料がフィルターを通過するのに十分な低い粘度に維持するのに十分な温度である。一般に、有用な温度は約260℃〜約380℃の範囲にある。この範囲内で、約340℃以下の温度を使用でき、約320℃以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、約280℃以上の温度を使用でき、約290℃以上が好ましい。
【0037】
溶融濾過プロセス全体を長期間連続的に運転するために、溶融濾過システム又は装置用のバイパスシステムを用いるのが多くの場合に望ましい。バイパスシステムでは、連続な溶融流れを維持し、それをリザーブ溶融濾過システム又は装置に方向転換する。バイパスシステムは、所定の値、例えば所定の圧力降下で、或いは所定量の材料を濾過し終わった後で開閉するようにセットされた一連の自動弁によって作動させることができ、或いはインライン又はオフライン品質モニターシステムと相互連結することができ、或いは手動で操作又は開閉してもよい。好適な実施形態では、クリーン濾過システムで得られる初期圧力降下と比較して、5倍未満、好ましくは3倍未満の圧力降下が観察されるような条件下で溶融濾過プロセスを実施する。溶融濾過プロセスを長期間連続的に運転することは、一般に、始動及び停止運転中に形成されるゲルや黒班の形成を減少させるのに役立ち、より定常状態のプロセスを実現することを可能にする。始動及び停止運転中に得られる、所望の粒子レベルの範囲外の処理済み材料を再処理して材料の無駄を回避することができる。
【0038】
こうして得られる濾過ポリマー材料は、可視粒子を実質的に含有しないことが好ましい。「可視粒状不純物を実質的に含有しない」とは、ライトボックスで見たとき、10gのポリマー材料を50mlのクロロホルム(CHCl)に溶解したサンプル中に観察される可視斑点の数が5個未満であることを意味する。前述したように、肉眼に見える粒子は典型的には直径30μm超の粒子である。
【0039】
好ましい実施形態では、押出機から回収された濾過ポリマー材料は、約20μm超、さらに好ましくは約10μm超の粒状不純物を実質的に含有しない。「約20μm(又は約10μm)超の粒状不純物を実質的に含有しない」とは、40gのポリマー材料を400mlのCHClに溶解したサンプルにおいて、平均直径約20μm(又は10μm)の粒子の1g当たりの数が200個未満であることを意味する。この数は、ABS2アナライザー(Pacific Instruments社製)を用い、20mlのポリマー材料溶液をアナライザーに1ml/分(±5%)の流量で流して測定した場合の、各20mlのポリマー材料溶液の5つのサンプルの平均に基づいている。
【0040】
別の実施形態では、濾過ポリマー材料は、平均直径が100μmを超える黒班の数が濾過ポリマー材料15g当たり10個未満、好ましくは5個未満、さらに好ましくは2個未満である。別の実施形態では、濾過ポリマー材料は、平均直径が140μmを超える黒班の数が濾過ポリマー材料15g当たり5個未満、好ましくは2個未満、さらに好ましくは0である。別の実施形態では、濾過ポリマー材料は、平均直径20〜100μmの黒班の数が濾過ポリマー材料15g当たり100個未満、好ましくは75個未満、さらに好ましくは50個未満である。
【0041】
押出後、濾過ポリマー材料を公知の方法でペレット化することができる。例えば、押出機又は同様の装置から押出した濾過ポリマー材料のストランドを清浄水浴で冷却するか、水スプレーにより冷却し、ついで細断してペレットにする。水は、水浴又はスプレーに使用する前に、濾過して不純物を除去することができる。同様に、水をリサイクルループでリサイクルし、濾過することができる。典型的には、水を濾過して約20μmを超える粒子を除去する。また一般に濾過した脱イオン化水から、濾過材料に付着するおそれのあるイオン性不純物を除去するのが好ましい。水浴又はスプレーを用いて切断前の押出物の温度を調節する場合には、押出物の温度を、ダストの発生を抑制し、比較的均一なペレット寸法を得るのに役立つように調節するのが好ましい。水浴及び/又は水スプレーを用いる場合、典型的には押出物の切断前にエアーナイフを用いる。エアーナイフに濾過空気を使用して、熱いストランドがミクロン寸法の粒子で汚染されるのを回避するのが好ましい。ストランドの温度は約130℃未満とするのが好ましく、多くの場合約90℃未満とするのがさらに好ましい。
【0042】
ペレットの寸法は典型的には約2〜3mmであるが、それより小さいか大きいペレットが望ましいこともある。押出物を所望の寸法のペレットに切断するのに種々の装置を使用できるが、多くの場合、複数の回転ブレード及び金属ローラ、例えばステンレス鋼ローラを有する切断装置が好ましい。ゴムローラの使用は、濾過ポリマー材料の汚染の原因となり得る。多くの場合、ペレット篩機を用いて小さすぎるか、大きすぎる望ましくないペレットを除去するのが好ましい。ペレットの取り扱いに篩機その他の装置、例えばトランスファーシステムを用いる場合、通常、ペレットの汚染につながるエラストマー成分を有する装置を避ける。当技術分野で標準的な乾燥方法、例えば遠心乾燥機、バッチ又は連続オーブン乾燥機、流動床などを用いてペレットを乾燥することができる。適宜、濾過ポリマー材料をペレットとして、例えば周囲からの汚染を防止するためHEPA空気濾過を用いる「クリーンルーム」内で移送し、単離することができる。典型的には、クラス100環境で濾過樹脂材料を収集し、取り扱うのが好ましい。容器が濾過ポリマー材料の汚染につながらないならば、ペレットは種々の容器にパッケージすることができる。好適な実施形態では、ペレットを真空パックして容器を内容物に密着させ、取り扱い及び輸送中にペレットがもっと小さい粒子に変形したり、破砕したりするのを抑制する。さらに、真空パックは酸素を含まずかつ汚染物を含まない環境を保つことを可能にする。
【0043】
ある好適なペレット化法では、水中ダイフェースペレタイザ装置を用いる。別の好適なペレット化法では、水リングペレタイザ装置を用いる。適当なペレット化法全般が米国特許第6372175号に記載されている。ダイフェースペレタイザを含む有用なペレット化機械全般が米国特許第3973890号、同第4421470号及び同第5607700号に記載されている。
【0044】
ペレットを押出すのではなく、濾過ポリマー材料をダイアセンブリを適切に選択することにより繊維、チューブ、フィルム、シートなどに押出すことができる。
【0045】
また、種々のインライン又はオフラインモニターを用いて、濾過プロセス中の濾過材料の品質を判定することができる。かかるモニターは、大抵の場合、光又はレーザー感知装置を用いて押出物及び/又はペレット中の可視斑点を検出する。モニターは、加工装置の動作と相互連結し、所定の基準に基づいてプロセスを自動的に調節するようにプログラムすることができる。同様に、モニターは所定の基準に基づいてアラーム音を鳴らしてオペレータに警告することができる。
【0046】
用語「ポリ(アリーレンエーテル)」は、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)共重合体;グラフト共重合体;ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー;及びアルケニル芳香族化合物、ビニル芳香族化合物及びポリ(アリーレンエーテル)などのブロック共重合体;これらの少なくとも1つを含む組合せなどを含む。ポリ(アリーレンエーテル)自体は、次式(I)で表される複数個の構造単位を含む公知のポリマーである。
【0047】
【化1】

各構造単位について、各Qは独立にハロゲン、第1又は第2低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第1又は第2低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などである。用語「ハロアルキル」は、部分的に又は完全にハロゲン置換されたアルキル基など、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を含む。好ましくは、各Qがアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qが水素又はC1−4アルキル基である。
【0048】
ポリ(アリーレンエーテル)のホモポリマーもコポリマー(共重合体)も含まれる。ホモポリマーとしては2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものが好ましい。共重合体としては、例えば2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせて含有するランダム共重合体や、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合により得られる共重合体が適当である。また、ビニル単量体やポリスチレンのようなポリマーをグラフトすることにより製造した部分を含有するポリ(アリーレンエーテル)や、カップリング剤、例えば低分子量ポリカーボネート、キノン類、複素環類及びホルマール類が2つのポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基を公知の態様で反応してより高分子量のポリマーを生成するカップリング型ポリ(アリーレンエーテル)も包含される。本発明で用いるポリ(アリーレンエーテル)はさらに、上記のすくなくとも1つを含む組合せも包含する。ポリ(アリーレンエーテル)としては、米国特許第6407200号(Singhら)及び米国特許第6437084号(Birsakら)に記載されているものなど、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)及びポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)が好適である。
【0049】
ポリ(アリーレンエーテル)は通常、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定して、数平均分子量が約3000〜40000原子質量単位(amu)、重量平均分子量が約20000〜80000amuである。ポリ(アリーレンエーテル)は、固有粘度(IV)が、クロロホルム中25℃で測定して、約0.10〜約0.60デシリットル/グラム(dl/g)とすることができる。この範囲内で、固有粘度約0.48以下が好ましく、約0.40以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、固有粘度約0.29以上が好ましく、約0.33dl/g以上がさらに好ましい。高固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)と低固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)との組合せを用いることもできる。2つの固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)を使用する場合、両者の比の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度と望ましい最終的な物性とにある程度依存する。
【0050】
適当なポリ(アリーレンエーテル)としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−ステアリロキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロー1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(3−ブロモ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、及び上記ポリ(アリーレンエーテル)の混合物などがあるが、これらに限らない。
【0051】
塩基滴定可能な官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂としては、適切な酸又は無水物官能化剤との反応で製造したものが適当であるが、これらに限らない。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)と、α,β−不飽和カルボニル化合物、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水アコニット酸、アコニット酸、及びこれらのエステル及びアミン;α−ヒドロキシカルボニル化合物、例えばカルボン酸、具体的にはクエン酸、マレイン酸;5−ヒドロキシベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸無水物の誘導体、例えば5−アセチル誘導体又は4−エステル誘導体、具体的にはフェニルエステル;無水トリメリト酸アリールエステル、例えば無水トリメリト酸フェニルサリチレート;並びにこれらの1種以上を含む反応生成物及び組合せとの溶融反応で製造したものを使用できる。或いはまた、ポリ(アリーレンエーテル)を適当な溶剤中で酸性基又は潜在的酸性基で官能化することができる。かかるプロセスの例には、ポリ(アリーレンエーテル)をテトラヒドロフラン(THF)中でメタレーション(炭素−金属結合形成)した後、二酸化炭素でクエンチする方法や、ポリ(アリーレンエーテル)をトルエン溶液中で無水トリメリト酸酸クロリドで封止する方法がある。典型的には、(ポリ(フェニレンエーテル)及び官能化剤の重量を基準にして)約10重量%以下の官能化剤を使用でき、約6重量%以下が好ましく、約1.5重量%〜約4重量%が特に好ましい。
【0052】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は封止されたポリ(アリーレンエーテル)を含む。封止は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖の末端ヒドロキシ基の酸化を抑制するのに用いることができる。末端ヒドロキシ基は、例えばアシル化反応を介して不活性化封止剤で封止することにより不活性化することができる。封止(キャッピング)剤は、反応性の低いポリ(アリーレンエーテル)をもたらすものを選ぶのが望ましく、高温での加工中のポリマー鎖の架橋及びゲル又は黒班の形成を低減又は防止する。封止剤としては、例えばサリチル酸、アントラニル酸又はこれらの置換誘導体などのエステルがあり、中でもサリチル酸のエステル、特にサリチル酸カーボネート及び線状ポリサリチレートが好ましい。本明細書で用いる用語「サリチル酸のエステル」は、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はその両方がエステル化された化合物を含む。サリチル酸エステルとしては、例えばサリチル酸フェニルなどのアリールサリチレート、アセチルサリチル酸、サリチル酸カーボネート、線状ポリサリチレート及びジサリチリド及びトリサチリリドのような環状化合物を含むポリサリチレートが適当である。封止剤としてはサリチル酸カーボネート及びポリサリチレートが好ましく、特に線状ポリサリチレートが好ましい。封止する場合、ポリ(アリーレンエーテル)を80%以下の任意の所望の程度まで封止することができるが、ヒドロキシ基の約90%以下、特に100%以下を封止するのが好ましい。適当な封止されたポリ(アリーレンエーテル)及びその製造方法が米国特許第4760118号(Whiteら)及び同第6306978号(Braatら)に記載されている。
【0053】
ポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封止することは、また、ポリ(アリーレンエーテル)鎖中に存在するアミノアルキル終端基の量を減らすと考えられる。アミノアルキル基は、ポリ(アリーレンエーテル)を生成するプロセスにアミンを使用する酸化カップリング反応の結果である。ポリ(アリーレンエーテル)の末端ヒドロキシ基に対してオルト位にあるアミノアルキル基は、高温で分解を受けやすい。分解は、結果として第1又は第2アミンを再生し、キノンメチド末端基を生成すると考えられ、それが今度は2,6−ジアルキル−1−ヒドロキシフェニル末端基を発生するおそれがある。アミノアルキル基を含有するポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封止することは、かかるアミノ基を取り去り、その結果ポリマー鎖の末端ヒドロキシ基が封止状態となり、2−ヒドロキシ−N,N−アルキルベンズアミン(サリチルアミド)が形成されると考えられる。アミノ基の除去及び封止により、ポリ(アリーレンエーテル)が高温に対して一層安定になり、この結果としてポリ(アリーレンエーテル)の加工中のゲルや黒班のような分解物が一層少なくなる。
【0054】
以上の通り、本発明で想定されているポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、構造単位や副次的な化学的特徴は色々異なるが、現在知られているポリ(アリーレンエーテル)樹脂の多くを含むことが、当業者に明らかである。
【0055】
ポリ(アリーレンエーテル)は典型的には、触媒系及び溶剤の存在下での1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングにより製造する。ポリ(アリーレンエーテル)の合成に使用する一価フェノールは特に限定されない。モノヒドロキシ芳香族化合物としては、次式(II)で表されるものが適当である。
【0056】
【化2】

式中、各Qは独立にハロゲン、第1又は第2低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第1又は第2低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などである。好ましくは、各Qがアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qが水素又はC1−4アルキル基である。モノヒドロキシフェノール類としては、2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールが好ましい。
【0057】
一実施形態では、モノヒドロキシフェノールが、純度約99重量%超、好ましくは99.67重量%超、さらに好ましくは99.83重量%超の2,6−ジメチルフェノールである。2,6−ジメチルフェノールは、フェノール含量が約0.004重量%未満、特に0.003重量%未満であるのが好ましい。2,6−ジメチルフェノールは、クレゾール含量が約0.12重量%未満、特に0.087重量%未満であるのが好ましい。クレゾールには、例えばo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール又はこれらのクレゾール類の1種以上を含む組合せが含まれる。好適な実施形態では、2,6−ジメチルフェノールは、他のモノ−、ジ−及び/又はトリアルキルフェノール含量が約0.107重量%未満、特に0.084重量%未満である。本明細書で他のモノ−、ジ−及び/又はトリアルキルフェノールとは、例えば、2,3,6−トリメチルフェノール、2,6−エチルメチルフェノール、2−エチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール又はこれらの他のモノ−、ジ−及び/又はトリアルキルフェノールの1種以上を含む組合せである。別の好適な実施形態では、2,6−ジメチルフェノールは、2,6−ジメチルフェノール以外の他のジメチルフェノールの含量が約0.072重量%未満、特に約0.055重量%未満である。本明細書で他のジメチルフェノールとは、例えば2,4−ジメチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール又はこれらのジメチルフェノールの1種以上を含む組合せである。2,6−ジメチルフェノール単量体中のフェノール、クレゾール、他のジメチルフェノール及びモノ−、ジ−及び/又はトリアルキルフェノールの量を最小限にすることは、望ましくない枝分かれ反応や連鎖停止反応の抑制につながり、また得られるポリ(アリーレンエーテル)の物性を完全に維持するのに役立つ。
【0058】
一価フェノールの酸化カップリングは酸素含有ガスを使用し、酸素含有ガスは典型的には酸素(O2)又は空気であり、酸素が好ましい。
【0059】
酸化カップリングに適当な有機溶剤には、溶剤が酸化反応に干渉したり、参加したりしない限りで、脂肪族アルコール、ケトン、脂肪族及び芳香族炭化水素、クロロ炭化水素、ニトロ炭化水素、エーテル、エステル、アミド、混成エーテル−エステル、スルホキシドなど及びこれらの有機溶剤の1種以上を含む組合せがある。溶剤としては、C〜C18芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン及びクロロホルム;及びハロゲン化芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼン及びジクロロベンゼンが好ましい。
【0060】
溶剤は、C〜C18芳香族炭化水素に加えて、ポリ(アリーレンエーテル)の貧溶剤であるC〜C脂肪族アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノールなど、及びこれらのC〜C脂肪族アルコールの1種以上を含む組合せを含有してもよい。溶剤は、C〜C18芳香族炭化水素及びC〜C脂肪族アルコールに加えて、さらに、ポリ(アリーレンエーテル)の反溶剤として作用するメタノール又はエタノールを含有してもよい。C〜C18芳香族炭化水素、C〜C脂肪族アルコール及びメタノール又はエタノールはどのような割合で組み合わせてもよいが、特定の実施形態では、溶剤が約50重量%以上のC〜C18芳香族炭化水素を含有するのが好ましい。
【0061】
有用な触媒系は、典型的には、1種以上の重金属化合物、例えば銅、マンガン又はコバルト化合物を、通常他の材料との組合せで含有する。適当な触媒系には、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅、テトラアミン硫酸第一銅、テトラアミン硫酸第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、プロピオン酸第一銅、酪酸第二銅、ラウリル酸第二銅、パルミチン酸第一銅及び安息香酸第一銅;及び同様のマンガン塩及びコバルト塩がある。上記金属塩を直接添加する代わりに、金属又は金属酸化物と無機酸、有機酸又はそのような酸の水溶液とを添加し、対応する金属塩又は水和物を形成することも可能である。
【0062】
触媒系は、モノ−又はジアルキルアミン、芳香族アミン又はN,N’−ジアルキルアルキレンジアミンと錯形成してもよい。適当な第1、第2及び第3アミンの例には、モノ−及びジメチルアミン、モノ−及びジエチルアミン、モノ−及びジブチルアミン、モノ−及びジベンジルアミン、モノ−及びジシクロヘキシルアミン、モノ−及びジエタノールアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、エチルイソプロピルアミン、ベンジルメチルアミン、オクチルクロロベンジルアミン、メチルフェネチルアミン、ベンジルエチルアミン、ジメチルブチルアミン、N,N’−ジアルキルエチレンジアミン類、例えばN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’−トリアルキルエチレンジアミン類、N,N’−ジアルキルプロピレンジアミン類及びN,N,N’−トリアルキルプロピレンジアミン類があるが、これらに限らない。
【0063】
公知のポリ(フェニレンエーテル)製造方法には、欧州特許出願公開第1167421号、同第1167419号及び同第1167420号(すべて本発明の先行技術として援用する)がある。別のポリ(フェニレンエーテル)の製造方法が、例えば米国特許第6407200号、同第5250486号、同第5017655号、同第4092294号、同第4083828号、同第4054553号、同第3962181号、同第3838102号、同第3733299号、同第3661848号、同第3642699号、同第3639656号、同第3365422号、同第3306875号及び同第3306874号に記載されている。以上の通り、本発明で想定されているポリ(アリーレンエーテル)は、処理条件、反応試薬、触媒などは様々に変わりうるが、現在知られているあらゆる方法で製造できることが当業者に明らかである。
【0064】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は、沈殿により単離され、銅含量が好ましくは約15ppm未満、さらに好ましくは5ppm未満である。さらに、沈殿したポリ(フェニレンエーテル)は、滴定可能なアミン含量が約1.27重量%未満、好ましくは1.18重量%未満である。滴定可能なアミン含量が多すぎると、強い臭いのあるポリ(フェニレンエーテル)となり、一方アミン含量が少なすぎると、機械的特性に劣るポリマーとなるおそれがある。別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)反応混合物を濾過して、ゲル及び他の粒状物を少なくとも部分的に除去してから、ポリ(アリーレンエーテル)を単離する。
【0065】
本明細書で用いる用語「ポリ(アルケニル芳香族)樹脂」は、塊状重合、懸濁重合及びエマルジョン重合など当技術分野で周知の方法により製造したポリマーであって、以下の構造(III)を有するアルケニル芳香族単量体から誘導された構造単位を少なくとも25重量%含有するポリマーを含む。
【0066】
【化3】

式中、Rは水素、C1〜C8アルキル又はハロゲンであり、Zはビニル、ハロゲン又はC〜Cアルキルであり、pは0〜5である。アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、クロロスチレン及びビニルトルエンが好ましい。ポリ(アルケニル芳香族)樹脂には、アルケニル芳香族単量体のホモポリマー;アルケニル芳香族単量体、例えばスチレンと1種以上の異なる単量体、例えばアクリロニトリル、ブタジエン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸とのランダム共重合体;及びゴム変性剤と(上述の)アルケニル芳香族単量体のホモポリマーとのブレンド及び/又はグラフトを含むゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂がある。本明細書で、ゴム変性剤は1種以上のC〜C10非芳香族ジエン単量体、例えばブタジエン又はイソプレンの重合生成物とすることができ、またゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、アルケニル芳香族単量体のホモポリマー約98〜約70重量%とゴム変性剤約2〜約30重量%とからなり、好ましくはアルケニル芳香族単量体のホモポリマー約88〜約94重量%とゴム変性剤約6〜約12重量%とからなる。かかるゴム変性ポリスチレンには耐衝撃性ポリスチレン(通常HIPSと略称)がある。
【0067】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂には、非弾性ブロック共重合体、例えばスチレンと1種以上のポリオレフィンとのジブロック、トリブロック及びマルチブロック共重合体もある。スチレンとブタジエンの非弾性ブロック共重合体組成物を用いることもでき、これらは直鎖状ブロック、ラジアルブロック又はテーパードブロック共重合体骨格を有し、ブタジエン成分が約35重量%まで存在する。これらは、数社から、例えばAtofina社からFINACLEARという登録商標及びChevron Phillips Chemical社からK−RESINSという登録商標で市販されている。
【0068】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、スチレン−ポリオレフィン−メチルメタクリレートのブロック共重合体、特にAtofina社から入手できる、ポリスチレン、1,4−ポリブタジエン及びシンジオタクチックなポリメチルメタクリレートのブロックを含有するポリ(スチレン−β−1,4−ブタジエン−β−メチルメタクリレート)(SBM)も包含する。Atofina社から入手できるSBMブロック共重合体には、AF−X223、AF−X333、AF−X012、AF−X342、AF−X004及びAF−X250がある。
【0069】
ポリ(アルケニル芳香族)としては、Rが水素、低級アルキル又はハロゲン、Zがビニル、ハロゲン又は低級アルキル、pが0〜5である式(III)のアルケニル芳香族単量体のホモポリマーが好ましい。アルケニル芳香族単量体のホモポリマーとしては、スチレンから誘導されたホモポリマー、即ちホモポリスチレンが特に好ましい。ホモポリスチレンはその重量の99%以上、特にその重量の100%がスチレンであるのが好ましい。
【0070】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂の立体規則性は、アタクチックでもシンジオタクチックでもよい。特に好ましいポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、アタクチック及びシンジオタクチックホモポリスチレンである。適当なアタクチックなホモポリスチレンが、例えばChevron社からEB3300として、またBASF社からP1800として市販されている。アタクチックなホモポリスチレンは「結晶ポリスチレン」樹脂と称することもある。有用なシンジオタクチックなポリスチレン樹脂(SPS)がDow Chemical社からQUESTRAという登録商標で市販されている。
【0071】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、数平均分子量約20000〜100000原子質量単位(amu)で、重量平均分子量約10000〜300000amuとすることができる。
【0072】
得られる濾過ポリマー材料は、ポリ(アルケニル芳香族)樹脂及びポリ(アリーレンエーテル)樹脂の全重量を基準にして、約90〜約10重量%の量のポリ(アリーレンエーテル)と約10〜約90重量%の量のポリ(アルケニル芳香族)とを含有することができる。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約80重量%以下とすることができ、約70重量%以下が好ましく、約60重量%以下が特に好ましい。またこの範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約20重量%以上とするのが好ましく、約30重量%以上がさらに好ましく、約40重量%以上が特に好ましい。この範囲内で、ポリ(アルケニル芳香族)の量は約80重量%以下とすることができ、約70重量%以下が好ましく、約60重量%以下が特に好ましい。またこの範囲内で、ポリ(アルケニル芳香族)の量は約20重量%以上とするのが好ましく、約30重量%以上がさらに好ましく、約40重量%以上が特に好ましい。
【0073】
ポリマー組成物はさらに、組成物の延性を改良する目的で種々の耐衝撃性改良剤を含有することができる。有用な耐衝撃性改良剤には、弾性ブロック共重合体、例えばA−B−Aトリブロック共重合体及びA−Bジブロック共重合体並びに他のマルチブロック共重合体、例えばA−B−A−B及びB−A−B−A−Bブロック共重合体がある。これらの種々のブロック共重合体は、通常スチレンブロックであるアルケニル芳香族ブロックと、ブタジエンブロックのような、部分的に又は完全に水素添加可能なゴムブロックとからなる熱可塑性ゴムである。典型的な種類のブロック共重合体の例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン(SBR)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)(SEP)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)並びにこれらの選択的に水素添加したものがある。高温での長期保存後又は高温での加工後に物性を維持するために、多くの場合、部分的に或いは完全に水素添加したブロック共重合体が好ましい。種々の物品に成形したときに光学的明澄性を維持するために、ブロック寸法を調節することもできる。有用なブロック共重合体が、多数の供給元から、例えばPhillips Petroleum社から登録商標SOLPRENEで、Kraton Polymers社から登録商標KRATONで、Dexco Polymers LP社から登録商標VECTORで、旭化成(株)から登録商標ASAFLEX及びTUFTECで、クラレ社から登録商標SEPTONで市販されている。
【0074】
他の有用な耐衝撃性改良剤に、ゴム状コアの上に1つ以上のシェルがグラフトされた構成の所謂コア−シェルポリマーがある。コアは通常実質的にアクリレートゴム、ブタジエンゴム又はケイ素系ゴムからなる。1つ以上のシェルがコアにグラフトされている。通常これらのシェルは、大部分が、ビニル芳香族化合物及び/又はシアン化ビニル及び/又はアルキル(メタ)アクリレート及び/又は(メタ)アクリル酸から構成される。好適な実施形態では、耐衝撃性改良剤及びポリマー組成物との相溶性を良好にするために、シェルが主としてビニル芳香族化合物、好ましくはスチレン及び/又はα−メチルスチレンから誘導される。コア及び/又はシェルは、しばしば、架橋剤及び/又はグラフト剤として作用しうる多官能性化合物を含有する。これらのポリマーは通常、周知のエマルジョン化学を用いて数段階で製造する。粒径及び組成は、種々の物品に成形したときに光学的明澄性と優れた延性を維持するように調節することができる。コア−シェルポリマーは、多数の供給元から、例えばRohm and Haas社からPARALOIDという登録商標で市販されている。
【0075】
他の耐衝撃性改良剤として、ポリ(アリーレンエーテル)とポリシロキサンのブロック及びグラフト共重合体がある。一般にブロック共重合体がさらに好ましく、A−B及びA−B−A構造(Aブロックがポリ(アリーレンエーテル)を示す)を有する。これらの共重合体の製造は当技術分野で周知であり、典型的にはヒドロキシ終端シロキサンをポリ(アリーレンエーテル)で再分配する方法がある。各成分、即ちヒドロキシ終端シロキサン及びポリ(アリーレンエーテル)の分子量並びにその重量比は、少なくとも部分的に、濾過ポリマー組成物に望まれる目標物性に基づいて、簡単に最適値を求めることができる。
【0076】
耐衝撃性改良剤はポリマー組成物中に、組成物の延性を増加するのに有効な量存在すればよく、典型的には、ポリマー組成物の全重量を基準にして、約12.0重量%以下の量使用し、約6.0重量%の量使用するのが好ましい。
【0077】
本発明では、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルキレン芳香族)に加えてさらに他の樹脂を含有する濾過ポリマー材料も想定されている。かかる他の樹脂の例には、ポリアミド、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエーテルイミド、ポリオレフィンなどがある。
【0078】
適宜、濾過ポリマー材料はさらに、難燃剤、離型剤及び他の滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、導電剤、充填剤など及びこれらの添加剤の1種以上を含む組合せから選択される添加剤を含有することができる。当業者であれば特定の添加剤及びその添加量を適切に選択することができる。添加剤が濾過以前にポリマー材料中に存在する場合には、その添加剤は本発明の方法に選んだ特定の濾過システムを妨害しないようなものを選択するべきである。適宜、添加剤を濾過ポリマー材料に濾過工程後に周知の方法で添加することができ、それは濾過ポリマー材料の単離前でも後でもよい。さらに、用途によっては、添加剤の存在が、ポリマー材料から成形される物品の表面品質や半径方向チルト(傾き)特性に悪影響を与えてはならない。充填剤含有物品の成形時に適切な平滑表面を確保するには、成形時に特別な加工条件が必要になることもある。
【0079】
当技術分野で知られた顔料及び染料の例には、”Plastic Additives Handbook,4th Edition”,R.Gachter and H.Muller(eds.),P.P.Klemchuck(assoc.ed.),Hansen Publishers,New York,1993中の章「着色剤」に記載されたものがある。
【0080】
着色剤には有機及び無機の顔料及び染料がある。適当な無機着色剤には、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などがある。適当な有機着色剤には、以下の化学物質類:アンタントロン、アントラキノン、ベンズイミダゾロン、ジケトピロロ−ピロール、ジオキサジン、ジアゾ、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ナフトール、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロン、キナクリドン、キノフタロンなどから選択されるものがある。
【0081】
濾過ポリマー材料は、リン酸塩難燃剤のような非ハロゲン化難燃剤及びハロゲン化難燃剤を含む、難燃剤を含有してもよい。適当な難燃剤の例には、前掲の”Plastic Additives Handbook”の章「難燃剤」に記載されたものがある。
【0082】
一実施形態では、溶融濾過の前に、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)を適当な溶剤に溶解して溶液を形成し、この溶液を1つ以上の溶液濾過システムを通して濾過して濾液を形成することができる。メルトを形成するのに用いる押出機に導入する前に、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)を濾液から単離してもよい。適宜、濾液を適当な固形分レベルまで濃縮してコンセントレートを形成することができ、つぎにコンセントレートを溶融濾過システムを備える押出機に供給する。ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)を含有するコンセントレートの固形分レベル(重量%)は、ポリマー材料及び溶剤の全重量を基準にして約10〜約99重量%の範囲とすることができる。
【0083】
上述の実施形態において濾過すべき溶液に用いるのに適当な溶剤には、ハロゲン化芳香族溶剤、ハロゲン化脂肪族溶剤、非ハロゲン化芳香族溶剤、非ハロゲン化脂肪族溶剤又はこれらの混合物がある。ハロゲン化芳香族溶剤としては、ハロベンゼン類、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼンなどが適当であるが、これらに限らない。ハロゲン化脂肪族溶剤としては、クロロホルム、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタンなどが適当であるが、これらに限らない。非ハロゲン化芳香族溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ニトロベンゼンなどが適当であるが、これらに限らない。非ハロゲン化脂肪族溶剤としては、アセトン、酢酸エチルなどが適当であるが、これらに限らない。溶剤は、ポリ(アリーレンエーテル)樹脂の製造プロセスで使用する重合溶剤と同じでもよい。
【0084】
適当な溶液濾過システムには、種々の材料、例えば燒結金属繊維、布、ポリマー繊維、天然繊維、紙、金属メッシュ、パルプ、セラミック又はこれらの材料の組合せなどから作製されたフィルターがある。
【0085】
溶液濾過システムに用いるフィルターの幾何形状は、コーン、プリーツ、キャンドル、積重ね、平坦、巻回又はこれらの組合せなどとすることができる。
【0086】
溶液濾過システムに用いるフィルターの孔径は、0.01〜100μmの範囲の寸法又はそれ以上とすることができる。この範囲内で、孔径は約50μm以下を使用でき、約20μm以下が好ましく、約15μm以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、孔径は約0.1μm以上が好ましく、約3μm以上がさらに好ましく、約5μm以上が特に好ましい。
【0087】
適当な溶液濾過プロセスには、重力濾過、圧力濾過、真空濾過、バッチ濾過、連続濾過、又はこれらの濾過法の組合せなどがある。
【0088】
ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)を濾液から単離する方法は特に限定されない。一般に、濾過材料に有意な数の不純物や黒班を再導入しない単離方法及び関連プロセスが好ましい。一般に、当技術分野で周知の樹脂から溶剤を除去する適当なプロセスを適用できる。かかるプロセスには、沈殿、蒸留、スプレー乾燥、フィルム蒸発、脱蔵、及び溶剤を蒸発させるフラッシュ容器の使用があるが、これらに限らない。ここに記載したいくつかの単離プロセスを単独でも組み合わせても使用できる。単離されたとき、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)は粉末、ペレット又はフレークの形態でも、単離プロセスから溶融濾過システムを備える押出機に直接供給する供給物の形態でもよい。
【0089】
上述の単離プロセスの多くは、それを用いて濾液を濃縮するが、その時濾液から溶剤を完全に除去するのではなく、固形分含率の増加したコンセントレートを形成し、このコンセントレートを溶融濾過に用いる押出機に供給することができる。コンセントレートを押出機に供給する場合、押出機がメルト中の溶剤を除去することのできる脱蔵押出機であるのが好ましい。
【0090】
脱蔵押出機及びプロセスは当技術分野で周知であり、典型的には、溶剤除去用の複数のベントセクションを設けた二軸押出機を含む。脱蔵押出機は、ほとんどの場合、単純な供給、脱蔵及び液体シール形成などの作用に適合した様々なタイプの要素を有するスクリューを備える。これらの要素には、単純な輸送用に設計された前向き羽根付きスクリュー要素、並びに強力な混合を達成する及び/又はシールを生成する逆向き羽根付きスクリュー円筒要素がある。片方のスクリューを他方より長くして、押出中の材料のダイを通しての効率よい流れを促進するよう構成した、異方向回転、非噛合式二軸押出機が特に好適である。かかる装置は、Welding Engineers社を始めとして多数の製造業者から入手できる。
【0091】
一実施形態では、単離は、濾液の予備濃縮(溶剤の部分的蒸発)及び脱蔵押出工程を含む。予備濃縮中、溶剤の大部分を蒸発により除去し、好ましくは高温、例えば約150〜約300℃の範囲の温度、さらに好ましくは約180〜約260℃の範囲の温度及び/又は高圧、例えば約2〜約75バールの範囲の圧力、さらに好ましくは約5〜約50バールの範囲の圧力での蒸発により除去する。予備濃縮により、濾液中に存在する溶剤の約1.0〜99%を除去する。この範囲内で、溶剤の約90%以下、特に約80%以下を除去するのが好ましい。予備濃縮の後に、脱蔵押出を行って残留溶剤を除去する。
【0092】
予備濃縮工程を脱蔵工程より前に採用する場合、濾液を、溶剤及びポリマー材料の合計を基準にして約10〜約90重量%の固形分レベルまで濃縮するのが好ましい。濾液の濃縮溶液は、脱蔵プロセスにより残りの溶剤から単離することができる。
【0093】
別の実施形態では、ポリマー材料の精製方法は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を二軸押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含み、本発明で用いる押出機の比押出量が約0.5kg/cm〜約8kg/cmである。
【0094】
一実施形態では、ポリマー材料の精製方法は、ポリ(フェニレンエーテル)及びポリスチレンの全重量を基準にして約60〜約30重量%のポリ(フェニレンエーテル)と約40〜約70重量%のポリスチレンとを押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含み、得られる濾過ポリマー材料は可視粒状不純物を実質的に含まず、また押出機内でのメルトの滞留時間が約1分以内である。
【0095】
別の実施形態では、本発明の方法のいずれかにより製造した濾過ポリマー材料から物品を作製する。特に好ましい物品には、データ記憶媒体、具体的には光、磁気及び光磁気データ記憶媒体があるが、これらに限らない。かかる媒体には、コンパクトディスク、書換可能なコンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、データアーカイブ技術用の高密度ディスク(ブルーレイディスクなどのDVR)などがある。
【0096】
好適な実施形態では、記憶媒体用の基板層を、本発明の方法のいずれかにより製造した濾過ポリマー材料から作製する。これらの記憶媒体は、波長が405nmであり、また好ましくは対物レンズ開口数0.85を有するの光源で読取可能であるのが好ましい。或いはまた、これらの記憶媒体は、波長が450nmであり、対物レンズ開口数が0.65である光源で読取可能であるのが好ましい。記憶媒体の全体容量を増加するために短い波長と大きな対物レンズ開口数を有する媒体も想定されているが、光学的公差が減少する可能性がある。
【0097】
物品は種々の成形及び加工技術で作製することができる。物品を形成する技術としては、射出成形、発泡プロセス、射出−圧縮、回転成形、2個取成形、微孔質成形、フィルムキャスティング、押出、プレス成形、ブロー成形、ダイレクト成形(概略をAdedejiらの国際公開第02/43943号参照)などが適当である。成形技術としては射出成形が好ましい。
【0098】
一実施形態では、基板層を製造するのに、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)の濾過ポリマー組成物を射出成形して、射出成形パラメータの制御を通して応力を低減させたディスク基板を形成する。基板の成形応力の低減の結果として、得られるディスクアセンブリは寸法安定性が増大し、高温に付されたときのアセンブリのチルトが小さくなる。ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)の濾過ポリマー組成物を射出成形する際、溶融温度約330℃〜約370℃を使用することができる。この範囲内で、溶融温度約340℃以上が好ましく、約350℃以上がさらに好ましい。またこの範囲内で、溶融温度約360℃以下が好ましく、約355℃以下がさらに好ましい。
【0099】
また、上記実施形態において、モールド温度約90〜約130℃を使用することができる。この範囲内で、モールド温度約100℃以上を用いることができ、約110℃以上が好ましく、約115℃以上がさらに好ましい。またこの範囲内で、モールド温度約125℃以下が好ましく、約120℃以下がさらに好ましい。型締力約12トン以上を使用でき、約20トン以上が好ましく、約35トン以上がさらに好ましい。
【0100】
濾過ポリマー組成物から基板を製造する射出成形において、冷却時間約1〜約35秒を使用できる。この範囲内で、冷却時間約5秒以上が好ましく、約7秒以上がさらに好ましく、約12秒以上が特に好ましい。またこの範囲内で、冷却時間約25秒以下を使用でき、約20秒以下が好ましく、約15秒以下がさらに好ましい。
【0101】
さらに、濾過ポリマー組成物から基板を製造する射出成形において、保持圧力約1〜約40kgf/cmを使用できる。この範囲内で、保持圧力約5kgf/cm以上が好ましく、約10kgf/cm以上がさらに好ましく、約15kgf/cm以上が特に好ましい。またこの範囲内で、保持圧力約35kgf/cm以下を使用でき、約30kgf/cm以上が好ましく、約25kgf/cm以下がさらに好ましい。
【0102】
濾過ポリマー材料を用いて、例えばデータ記憶媒体基板を形成する場合、追加の加工工程、例えば当技術分野で周知の方法の中でも特に、電気メッキ、コーティング技術(スピンコーティング、スプレーコーティング、蒸着、スクリーンプリンティング、塗布、浸漬、スパッタリング、真空堆積、電着、メニスカスコーティングなど)、ラミネーション、データスタンピング、エンボス加工、表面研磨、付着及びこれらの方法の少なくともいずれかを含む組合せを使用して、ポリマー材料基板の上に所望の層を設層することができる。本質的には、基板には、適宜、基板の片面又は両面に配置された所望の表面造形部、片面又は両面に(例えば光磁気材料の)データ記憶層、また保護、誘電及び/又は反射層をその場で形成することができる。基板は実質的に均質か、テーパか、凹状か、凸状の幾何形状を持つことができ、適宜種々のタイプ及び幾何形状の補強を施して、表面一体性や平滑性を劣化することなく、剛性を増すことができる。
【0103】
ポリマー材料記憶媒体の一例は、射出成形された濾過ポリマー材料基板を備え、基板は適宜、中空(バブル、キャビティなど)コア又は充填(繊維、球など様々な形態の金属、プラスチック、ガラス、セラミックなど)コアを有してもよい。基板上には、データ層、誘電層、反射層及び/又は保護層を含む種々の層が配置される。これらの層は、通常の材料から構成され、製造する媒体のタイプに応じて配置される。例えば、第一面媒体では、これらの層は、保護層、誘電層、データ記憶層、誘電層、基板に接触して配置される反射層とすることができる。本発明のポリマー材料から製造することのできる好適なデータ記憶媒体は、「SUBSTRATE AND STORAGE MEDIA FOR DATA PREPARED THEREFROM」と題する2003年8月26日出願の米国特許出願第10/648609号に開示されている。
【0104】
一実施形態では、記憶媒体は、本発明の方法のいずれかにより製造した濾過ポリマー組成物から作製した、好ましくは厚さ1.1mmの、基板層を備える。記憶媒体はさらに、基板層に隣接して設けられたデータ及びデータに隣接しかつ基板層とは反対側に設けられたカバー層を備え、基板層/データ/カバー層構造を構成するが、追加の層、例えば反射層及び接着層をこの構造の順次の層間に配置してもよい。カバー層は、データを読取るか、書込むか、読取りかつ書込むために光源がを通過し得る100μm以下の厚さである。上記構造はしばしば「単層ディスク」と称される。別の好適な実施形態では、記憶媒体は、基板層が、本発明の方法のいずれかにより製造した濾過ポリマー材料から作製され、好ましくは厚さ1.1mmであり、さらに厚さ25μmのスペーサ層を介して基板層に隣接して設けられた第1記録層、第2記録層、及び記録層に対してデータを読取るか、書込むか、読取りかつ書込むために光源が通過し得る厚さ75μmのカバー層を備える。上述の層配列はしばしば「二層ディスク」と称される。すべての場合に、カバー層が、所望の厚さに関する高い精度、レーザー光、例えば405nmでの高い透過率及び低い複屈折をもつことが重要である。さらに、保護ケースに収容しない記憶媒体では、カバー層が耐引掻性及び耐指紋性を備える必要がある。その結果、多くの場合に、カバー層は、合わせて所望の厚さとなる複数層を含む。例えば、所望の100μmの「カバー層」が、98μmの実際のカバー層と、所望の耐引掻性及び耐指紋性を実現する2μmのハードコート層とを含む。
【0105】
本発明の方法のいずれかにより製造した濾過ポリマー材料から作製された基板層とカバー層との間の実際の層組成は、記憶媒体のフォーマット形式に応じて、広い範囲で変わる。例えば、再生専用型媒体、追記型媒体及び書換可能な媒体に応じて、また単層媒体及び二層媒体、種々の光波長及び対物レンズ開口数に応じて異なる層を使用する。なお、本発明の方法のいずれかにより製造した濾過ポリマー材料は、使用する補助層に関わりなく、記憶媒体の基板層に利用できる。
【0106】
本発明は、組成物1g当たり平均粒径175μm、好ましくは140μm、さらに好ましくは100μmの粒子の数が平均で1個未満、好ましくは0.5個未満、さらに好ましくはゼロであるポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物、並びにその組成物の製造方法を包含することが明らかである。また、本発明は、組成物1g当たり平均粒径50μmの粒子の数が平均で10個未満、好ましくは5個未満、さらに好ましくは3個未満であるポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物、並びにその組成物の製造方法を包含することも明らかである。さらに、本発明は、組成物1g当たり平均粒径40μmの粒子の数が平均で10個未満、好ましくは5個未満、さらに好ましくは3個未満であるポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物、並びにその組成物の製造方法を包含することが明らかである。さらに、本発明は、組成物1g当たり平均粒径30μmの粒子の数が平均で30個未満、好ましくは20個未満、さらに好ましくは10個未満、さらに好ましくは5個未満であるポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物、並びにその組成物の製造方法を包含することが明らかである。またさらに、本発明は、組成物1g当たり平均粒径20μmの粒子の数が平均で200個未満、好ましくは50個未満、さらに好ましくは40個未満、さらに好ましくは25個未満であるポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物、並びにその組成物の製造方法を包含することが明らかである。またさらに、本発明は、組成物15g当たり平均粒径20〜100μmの範囲にある粒子の数が60個未満、好ましくは50個未満、さらに好ましくは40個未満であるポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物、並びにその組成物の製造方法を包含することが明らかである。サンプル中に存在する粒子の数は、40.0gの量の各サンプルを400mlのHPLCグレードのCHClに溶解し、20mlの量の各サンプル溶液をABS2アナライザーの検出器に流量1ml/分(±5%)で流し、検出器で測定した。上記粒径は、各サンプルについて行った5回の測定、即ち5回のサンプル測定の平均に基づく。
【0107】
本発明はまた、本発明で提供されるポリ(アリーレンエーテル)樹脂とポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有する濾過ポリマー組成物を含有する基板層を備えるデータ記憶媒体を提供し、基板層は平均粒径20〜100μmの範囲、特に30〜100μmの範囲にある粒子の数が50個未満である。好適な実施形態では、上記基板はさらに、平均粒径175μm超の粒子を含まず、特に平均粒径100μm超の粒子を含まない。
【0108】
一実施形態では、ポリマー組成物を精製する方法は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー組成物を得る工程を含み、得られる濾過ポリマー組成物が、5回のサンプル測定の平均値に基づいて、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、
(d)平均粒径20〜100μmの粒子数が濾過ポリマー材料15g当たり50個未満、
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
の少なくともいずれかを有する。本方法はさらに、
(a)濾過ポリマー組成物をペレット化する工程、
(b)ポリ(アリーレンエーテル)の溶剤への溶液を溶液濾過システムで濾過して濾液を形成し、濾液から溶剤を除去してポリ(アリーレンエーテル)を含むコンセントレートを形成する工程、
(c)押出機を約0.5kg/cm〜約8kg/cmの比押出量で運転し、押出機として二軸押出機を用いる工程、
(d)溶融濾過を、押出機内でのメルトの平均滞留時間が約1分以下となるように行う工程、
(e)難燃剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、導電剤及びこれらの添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される添加剤とメルトを溶融ブレンドする工程、
(f)メルトを耐衝撃性改良剤と溶融ブレンドする工程、
(g)溶融濾過システムを押出機のダイヘッドに配置する工程、
(h)押出機の内部自由空間を不活性ガスでガスシールする工程、
(i)溶融ポンプを使用する工程、
(j)溶融濾過を、生じる圧力降下がクリーン溶融濾過システムで得られる初期圧力降下と比較して5倍未満となるような条件下で行う工程、
(k)インライン又はオフライン品質モニターシステムを用いる工程、
(l)メルトを脱イオン化濾過水で冷却する工程、
(m)メルトをクラス100環境で溶融濾過する工程、
(n)濾過ポリマー組成物をクラス100環境内でパッケージする工程、
(o)溶融濾過システムがバイパスシステムを含む、
(p)濾過ポリマー組成物を水中ダイフェースペレタイザ装置又は水リングペレタイザ装置でペレット化する工程
の少なくともいずれかを含む。
【0109】
一実施形態では、データ記憶媒体は、基板層、データ及びカバー層を含み、データは基板層とカバー層との間に位置し、カバー層は、データの読取、書込又は読取・書込のため光源が透過できる100μm以下の厚さを有し、基板層は濾過ポリマー組成物を含有し、上記濾過ポリマー生成物が約90〜約10重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂と約10〜約90重量%のポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有し、上記濾過ポリマー生成物が、5回のサンプル測定の平均値に基づいて、以下の特性:(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、(d)平均粒径20〜100μmの粒子数が濾過ポリマー材料15g当たり50個未満、(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個の少なくともいずれかを有する。
【0110】
本明細書で引用した特許、特許出願、その他の文献はすべてその全体を本発明の先行技術として援用する。本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0111】
4つの実施例ラン(実施例ラン1〜4)を行って、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレンからなるメルトを溶融濾過して、粒状不純物量の低減したポリマー材料を形成する方法を具体的に説明する。
【0112】
実施例ラン1:
ポリフェニレンエーテル(PPE、粉末、IV0.33、GE Advanced Materials,Plastics社製)とポリスチレン(xPS、Novacor2272、Mw214000、Mn71600、Mw/Mn2.99、Nova Chemical社製)の40/60wt%ブレンドを、真空ベント付き40mm二軸コンパウンダーでコンパウンディングした。ベントを約20インチ水銀(508mmHg)の真空に引いた。コンパウンド材料を3つのバレル(ゾーン)を有する単軸押出機に供給した。押出機には、押出機ダイヘッドの位置に焼結金属繊維フィルター(PALL、孔径3μm、キャンドル形状)を取り付けた。
【0113】
押出溶融ストランドをクリーン濾過水浴に通した。なお、水浴の水は10μmフィルターで濾過して錆や不純物を除去してある。押出ポリマー材料の冷却ストランドを乾燥し、ペレット化した。押出メルトのバッチをラン全体を通して約半時間毎に集めた。押出機加工条件を表1に示す。
【0114】
実施例ラン2では、30mm二軸押出機を使用した以外は、実施例ラン1の手順を繰り返した。実施例ラン2についての押出機加工条件も表1に示す。
【0115】
実施例ラン3及び4では、実施例ラン1の手順を繰り返した。実施例ラン3及び4のPPE−xPS処方は、IV0.33のPPEとEB3300グレードxPS(Mw276000、Mn51500、Mw/Mn5.36、Chevron Phillips Chemical社製)の50/50wt%ブレンドであった。実施例ラン3では40mm二軸押出機を使用し、実施例ラン4では30mm二軸押出機を使用した。実施例ラン3及び4の加工条件も表1に示す。すべての実施例で、ドライブ、押出量、圧力及び溶融温度はラン全体で平均する。
【0116】
【表1】

実施例1〜4のランからのサンプルを、以下の手順で可視粒子について試験した。各ランについてポリマー材料を実施例ラン1〜4各々について約半時間毎にサンプリングした。各サンプルを可視粒子の有無について2回試験した。平均粒径30μm以上の粒子は拡大しなくとも容易に観察される。ポリシールキャップ付の2オンスのサンプルボトルを濾過空気流に当てて粒状物をすべて除去した。ボトルを少量のHPLCグレードのクロロホルム(CHCl)でリンスし、50mlのHPLCグレードのCHClを各サンプルボトルに加えた。ライトボックスを用いて、可視斑点又は粒子の数を各CHClブランクについて記録した。10.00gの量のサンプルを清浄アルミニウムパン上で秤量し、CHCl含有ボトルの1本に加えた。この手順をサンプル毎に繰り返した。サンプルを溶解した後、ライトボックスで可視斑点の有無について観察した。黒班の平均数は、全4つのラン(実施例1〜4)の各ランについて計算した。実施例ラン1〜4についての可視粒子の分析結果を表1に示す。溶融フィルターを用いずに製造した同様の組成物の典型的な可視斑点数は、10gサンプルについて50超である。このデータはまったく予想外である。未濾過材料中に比較的多数の黒班が見られる場合、これらの実施例で使用したような孔径の小さいフィルターはすぐに詰まってしまうと予想されたからである。さらに、ゲル化粒子がフィルターをゆがめまたフィルターを通過し、有意に多い粒子数になると予想された。比較の目的で、開口25μmの500メッシュ金属スクリーンフィルターから得られる濾過材料は、サンプル10g当たり可視斑点、即ち30μmを超える黒班の数が10を超えた。本発明の一実施形態は、サンプル10g当たり可視斑点20個未満、好ましくは可視斑点10個未満、さらに好ましくは可視斑点5個未満のポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)含有組成物の製造方法であることが明らかである。
【0117】
実施例1〜4のランからの数個のサンプルをさらに分析して、材料中に存在する粒状汚染物の粒度分布を求めた。実施例ラン2からの2つのサンプル(実施例2−S1及び実施例2−S2)、実施例ラン3からの1つのサンプル(実施例3−S1)及び実施例ラン4からの2つのサンプル(実施例4−S1及び実施例4−S2)の粒子含量を以下の手順で試験した。レーザー光散乱法を用いるABS2アナライザー(Pacific Instruments)を用いて、サイズが5μm〜100μmの範囲にある粒子の量を測定した。40.0gの量の各サンプルを清浄ポリエチレンボトルに入れた400mlのHPLCグレードのCHClに溶解した。20mlの量の各サンプル溶液をABS2アナライザーの検出器に流量1ml/分(±5%)で流した。この間に、サンプル中に存在する様々な粒度の粒子の量を検出器で測定した。各サンプルを5回試験し、平均して最終数を得た。2つの比較例を製造し、試験した。比較例1は、IV0.33のPPEとEB3300グレードのxPSの50/50重量%の未濾過ブレンドであった。比較例2は光学的品質のポリカーボネート(OQ−PC、登録商標LEXAN1050、GE Advanced Materials,Plastics社製)であった。1g当たりの粒子のABS2アナライザーによる粒子分析の結果を表2に、ブランクデータ(CHCl単独)と共に示す。
【0118】
【表2】

上記実験の結果から、未濾過サンプル(比較例1)と濾過サンプル(実施例2−S1、実施例2−S2、実施例3−S1、実施例4−S1及び実施例4−S2)との間で、粒状不純物の全数に有意な減少が認められる。さらに、本発明の方法の実施例の粒状不純物レベルは、15μm以上の粒子に関して、OQ−PC(比較例2)と同等か優れている。燒結金属繊維フィルターを用いることによって、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物中の1g当たりの粒子数のこのように大きな減少を、粒径範囲20〜100μmで達成できたことは、まったく予想外である。以前に説明したように、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物は、フィルターをすぐに汚染するか詰まらせるかし、また大きな粒子をフィルターに押し込むかフィルターを崩壊させるだろうと予想された。それとは対照的に、40mm二軸押出機を用いる実施例ラン1の手順を、同じ溶融濾過システムを用いて、連続40時間以上のラン時間で繰り返したところ、溶融濾過システムの直前の位置で測定した背圧の増加が10%未満であり、予期せざることには、40時間の連続操作後でも濾過ポリマー組成物に観察される粒子の数の有意な増加がなかった。さらに、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)組成物は、極めて低い比押出量で処理しなければならないだろうと予測された。しかし、対照的に、予期に反して、5kg/hr/cmを超る比押出量が達成された。
【0119】
以上、本発明を種々の実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、実施形態に種々の変更を加えたり、本発明の構成要素を均等物に置き換えたりできることが当業者に明らかである。さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、特定の状況や材料を本発明の教示に適合させるよう種々の変更を加えることができる。したがって、本発明は、発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内に入るすべての実施形態を包含する。
[発明の態様]
[1]
約90〜約10重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂と約10〜約90重量%のポリ(アルケニル芳香族)樹脂とを含む濾過ポリマー組成物であって、
当該濾過ポリマー生成物が、5回のサンプル測定の平均値で、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、
(d)平均粒径20〜100μmの粒子数が濾過ポリマー材料15g当たり50個未満、
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
の少なくともいずれかを有する、濾過ポリマー組成物。
[2]
前記ポリ(アリーレンエーテル)が(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び(b)ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)の1種以上を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度がクロロホルム中25℃で測定して約0.10〜約0.60dl/gであり、前記ポリ(アルケニル芳香族)が(i)アタクチックホモポリスチレン及び(ii)スチレンと1種以上のポリオレフィンとの非弾性ブロック共重合体の1種以上である、1記載の濾過ポリマー組成物。
[3]
ポリマー組成物の精製方法であって、当該方法が、
ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、
メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー組成物を得る工程を含んでおり、
得られる濾過ポリマー組成物が、5回のサンプル測定の平均値で、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、
(d)平均粒径20〜100μmの粒子数が濾過ポリマー材料15g当たり50個未満、
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
の少なくともいずれかを有する、方法。
[4]
さらに、
(a)濾過ポリマー組成物をペレット化する工程、
(b)ポリ(アリーレンエーテル)の溶剤への溶液を溶液濾過システムで濾過して濾液を形成し、濾液から溶剤を除去してポリ(アリーレンエーテル)を含むコンセントレートを形成する工程、
(c)押出機を約0.5kg/cm〜約8kg/cmの比押出量で運転し、押出機として二軸押出機を用いる工程、
(d)溶融濾過を、押出機内でのメルトの平均滞留時間が約1分以下となるように行う工程、
(e)難燃剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、導電剤及びこれらの添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される添加剤とメルトを溶融ブレンドする工程、
(f)メルトを耐衝撃性改良剤と溶融ブレンドする工程、
(g)溶融濾過システムを押出機のダイヘッドに配置する工程、
(h)押出機の内部自由空間を不活性ガスでガスシールする工程、
(i)溶融ポンプを使用する工程、
(j)溶融濾過を、生じる圧力降下がクリーン溶融濾過システムで得られる初期圧力降下と比較して5倍未満となる条件下で行う工程、
(k)インライン又はオフライン品質モニターシステムを用いる工程、
(l)メルトを脱イオン化濾過水で冷却する工程、
(m)メルトをクラス100環境で溶融濾過する工程、
(n)濾過ポリマー組成物をクラス100環境内でパッケージする工程、
(o)溶融濾過システムがバイパスシステムを含む、
(p)濾過ポリマー組成物を水中ダイフェースペレタイザ装置又は水リングペレタイザ装置でペレット化する工程
の少なくともいずれかを含む、3記載の方法。
[5]
前記溶融濾過システムが、焼結金属フィルター、メタルメッシュフィルター、金属繊維フェルトフィルター、セラミックフィルター又はこれらのフィルターの少なくともいずれかを含む組合せを含み、溶融濾過システムが孔径約1.0〜約50μmのフィルターを含む、3又は4記載の方法。
[6]
ポリマー材料の精製方法であって、当該方法が、
ポリ(アリーレンエーテル)とポリスチレンの全重量を基準にして約60〜約30重量%のポリ(アリーレンエーテル)と約40〜約70重量%のポリスチレンを押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、
メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含み、
得られる濾過ポリマー材料が可視粒状不純物を実質的に含まず、押出機内でのメルトの滞留時間が約1分以内である、
ポリマー材料の精製方法。
[7]
前記ポリ(アリーレンエーテル)が(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び(b)ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)の1種以上を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度がクロロホルム中25℃で測定して約0.10〜約0.60dl/gであり、前記ポリ(アルケニル芳香族)が(i)アタクチックホモポリスチレン及び(ii)スチレンと1種以上のポリオレフィンとの非弾性ブロック共重合体の1種以上である、3乃至6のいずれか1項記載の方法。
[8]
1又は2記載の濾過ポリマー組成物を含んでなる物品であって、射出成形、ブロー成形、押出、シート押出、フィルム押出、異形押出、引抜成形、圧縮成形、熱成形、圧力成形、油圧成形又は真空成形で成形した物品。
[9]
基板層、データ及びカバー層を含むデータ記憶媒体であって、
データが基板層とカバー層との間に位置し、
カバー層が、データの読取、書込又は読取・書込のため光源が通過できる100μm以下の厚さを有し、
基板層が濾過ポリマー組成物を含有し、
上記濾過ポリマー生成物が約90〜約10重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂と約10〜約90重量%のポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有し、
基板層に存在する平均粒径30〜100μmの範囲の粒子の数が50個未満である、
データ記憶媒体。
[10]
基板層、データ及びカバー層を含むデータ記憶媒体であって、
データが基板層とカバー層との間に位置し、
カバー層が、データの読取、書込又は読取・書込のため光源が通過できる100μm以下の厚さを有し、
基板層が濾過ポリマー組成物を含有し、
上記濾過ポリマー生成物が約90〜約10重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂と約10〜約90重量%のポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有し、
上記濾過ポリマー生成物が、5回のサンプル測定の平均値で、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、
(d)平均粒径20〜100μmの粒子数が濾過ポリマー材料15g当たり50個未満、
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
の少なくともいずれかを有する、
データ記憶媒体。
[11]
前記基板層が平均粒径175μm超の粒子を含有せず、
前記ポリ(アリーレンエーテル)が(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び(b)ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)の1種以上を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度がクロロホルム中25℃で測定して約0.10〜約0.60dl/gであり、前記ポリ(アルケニル芳香族)が(i)アタクチックホモポリスチレン及び(ii)スチレンと1種以上のポリオレフィンとの非弾性ブロック共重合体の1種以上である、
9又は10記載のデータ記憶媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
90〜10重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂と10〜90重量%のポリ(アルケニル芳香族)樹脂とを含む濾過ポリマー組成物であって、
当該濾過ポリマー生成物が、5回のサンプル測定の平均値で、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、及び
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
を有する、濾過ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリ(アリーレンエーテル)が(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び(b)ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)の1種以上を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度がクロロホルム中25℃で測定して0.10〜0.60dl/gであり、前記ポリ(アルケニル芳香族)が(i)アタクチックホモポリスチレン及び(ii)スチレンと1種以上のポリオレフィンとの非弾性ブロック共重合体の1種以上である、請求項1記載の濾過ポリマー組成物。
【請求項3】
ポリマー組成物の精製方法であって、当該方法が、
ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、
メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー組成物を得る工程を含んでおり、
得られる濾過ポリマー組成物が、5回のサンプル測定の平均値で、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、
(d)平均粒径20〜100μmの粒子数が濾過ポリマー材料15g当たり50個未満、
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
の少なくともいずれかを有し、
前記ポリ(アリーレンエーテル)が(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び(b)ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)の1種以上を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度がクロロホルム中25℃で測定して0.10〜0.60dl/gであり、前記ポリ(アルケニル芳香族)が(i)アタクチックホモポリスチレン及び(ii)スチレンと1種以上のポリオレフィンとの非弾性ブロック共重合体の1種以上である、方法。
【請求項4】
さらに、
(a)濾過ポリマー組成物をペレット化する工程、
(b)ポリ(アリーレンエーテル)の溶剤への溶液を溶液濾過システムで濾過して濾液を形成し、濾液から溶剤を除去してポリ(アリーレンエーテル)を含むコンセントレートを形成する工程、
(c)押出機を0.5kg/cm〜8kg/cmの比押出量で運転し、押出機として二軸押出機を用いる工程、
(d)溶融濾過を、押出機内でのメルトの平均滞留時間が1分以下となるように行う工程、
(e)難燃剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、導電剤及びこれらの添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される添加剤とメルトを溶融ブレンドする工程、
(f)メルトを耐衝撃性改良剤と溶融ブレンドする工程、
(g)溶融濾過システムを押出機のダイヘッドに配置する工程、
(h)押出機の内部自由空間を不活性ガスでガスシールする工程、
(i)溶融ポンプを使用する工程、
(j)溶融濾過を、生じる圧力降下がクリーン溶融濾過システムで得られる初期圧力降下と比較して5倍未満となる条件下で行う工程、
(k)インライン又はオフライン品質モニターシステムを用いる工程、
(l)メルトを脱イオン化濾過水で冷却する工程、
(m)メルトをクラス100環境で溶融濾過する工程、
(n)濾過ポリマー組成物をクラス100環境内でパッケージする工程、
(o)溶融濾過システムがバイパスシステムを含む、
(p)濾過ポリマー組成物を水中ダイフェースペレタイザ装置又は水リングペレタイザ装置でペレット化する工程
の少なくともいずれかを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記溶融濾過システムが、焼結金属フィルター、メタルメッシュフィルター、金属繊維フェルトフィルター、セラミックフィルター又はこれらのフィルターの少なくともいずれかを含む組合せを含み、溶融濾過システムが孔径1.0〜50μmのフィルターを含む、請求項3又は請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載の濾過ポリマー組成物を含んでなる物品であって、射出成形、ブロー成形、押出、シート押出、フィルム押出、異形押出、引抜成形、圧縮成形、熱成形、圧力成形、油圧成形又は真空成形で成形した物品。
【請求項7】
基板層、データ及びカバー層を含むデータ記憶媒体であって、
データが基板層とカバー層との間に位置し、
カバー層が、データの読取、書込又は読取・書込のため光源が通過できる100μm以下の厚さを有し、
基板層が濾過ポリマー組成物を含有し、
上記濾過ポリマー生成物が90〜10重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂と10〜90重量%のポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有し、
上記濾過ポリマー生成物が、5回のサンプル測定の平均値で、以下の特性:
(a)平均粒径20μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり200個未満、
(b)平均粒径30μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり30個未満、
(c)平均粒径50μmの粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり5個未満、及び
(e)平均粒径175μm以上の粒子数が濾過ポリマー材料1g当たり0個
を有する、
データ記憶媒体。
【請求項8】
前記基板層が平均粒径175μm超の粒子を含有せず、
前記ポリ(アリーレンエーテル)が(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び(b)ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)の1種以上を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度がクロロホルム中25℃で測定して0.10〜0.60dl/gであり、前記ポリ(アルケニル芳香族)が(i)アタクチックホモポリスチレン及び(ii)スチレンと1種以上のポリオレフィンとの非弾性ブロック共重合体の1種以上である、
請求項7記載のデータ記憶媒体。

【公開番号】特開2012−224865(P2012−224865A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−177343(P2012−177343)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2006−524762(P2006−524762)の分割
【原出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】