説明

糖尿病関連マーカおよびその使用

糖尿病または前糖尿病状態を持つ対象を識別する方法、糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を識別する方法、糖尿病または前糖尿病状態に関連する疾患を他の疾患からまたは糖尿病の下位分類内で差別的に診断する方法、患者の糖尿病または前糖尿病状態への進行のリスクを評価する方法、糖尿病または前糖尿病状態を持つ対象における治療の有効性を評価する方法、および糖尿病または前糖尿病状態を治療する療法を選択する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参考としての援用)
本願は、2005年10月11日に出願された米国仮特許出願第60/725,462号の優先権を主張する。
【0002】
本テキストで引用する各出願および特許は、各出願および特許で引用された各文書または参考文献(各交付済み特許の手続処理中を含む;「出願引用文書」)、ならびにこれらの出願および特許のいずれかに一致する、および/またはそれからの優先権を主張する米国および各外国出願および特許、ならびに各出願引用文書で引用または参照された各文書と同様に、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。さらに一般的には、文書または参考文献は本テキストにおいて、請求項の前の参考文献リストまたはテキスト自体のどちらかに引用され;これらの各文書または参考文献(「本明細書引用参考文献」)は、各本明細書引用参考文献で引用された各文書または参考文献(いずれの製造者の仕様書、説明書なども含む)と同様に、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。参照により本テキストに組み入れられる文書は、本発明の実施で利用されうる。
【0003】
(発明の分野)
本発明は一般に、糖尿病を発症するリスクの上昇に関連する生物学的マーカの同定はもちろんのこと、このような生物学的マーカを糖尿病の診断および予後に使用する方法にも関するものである。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
真性糖尿病は、インスリン分泌、インスリン作用、またはその両方の欠陥から生じる炭水化物、脂質およびタンパク質代謝の乱れを伴う慢性的高血糖によって特徴付けられる代謝障害を説明している。真性糖尿病の影響は、各種臓器の長期にわたる損傷、機能障害および不全を含む。糖尿病は、口渇、多尿、視界のぼやけ、慢性感染症、創傷治癒遅延、および体重減少などの特徴的な症状と共に呈されうる。その最も重篤な形では、ケトアシドーシスまたは非ケトン性高浸透圧状態が発生して、無感覚、昏睡、そして有効な治療のない場合には死に至ることがある。しばしば症状は重篤でなく、認識されないか、または症状がないことがある。結果として、通常、定期健康診断中に一晩絶食後の尿中での高レベルのグルコース検出によって診断が行われる前に、病態生理学的および機能的変化を引き起こすのに十分な高血糖が、長期、場合により最大10年間にわたって存在することがある。真性糖尿病の長期の影響としては、失明の可能性を伴う網膜症、腎不全に至ることがある腎症、ニューロパシー、微小血管の変化、および自律神経機能障害などの合併症の進行的発症が挙げられる。糖尿病患者は、心血管、末梢血管、および脳血管疾患(まとめて「動脈」疾患)のリスク上昇にも瀕している。癌のリスク上昇もある。複数の病原性プロセスが、糖尿病発症に関与している。これらは膵臓のインスリン分泌ベータ細胞を破壊するプロセスと結果としてのインスリン欠乏、そしてインスリン取り込みに対する抵抗を生じる肝臓および平滑筋細胞の変化を含む。炭水化物、脂質およびタンパク質代謝の異常は、インスリンに対する非感受性またはインスリン欠乏から生じる標的組織に対する不十分なインスリン作用のためである。
【0005】
根底にある原因とは無関係に、真性糖尿病は1型糖尿病および2型糖尿病に細分される。1型糖尿病は、膵臓のベータ細胞の自己免疫介在破壊から生じる。破壊速度は変化しやすく、急速進行形は一般に小児に見られるが、成人でも発生しうる。1型糖尿病の低速進行形は一般に成人で発生して、時には成人の潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)と呼ばれる。一部の患者、特に小児および青年は、疾患の最初の顕在化としてケトアシドーシスを示しうる。他の患者は、感染または他のストレスの存在下で重症高血糖および/またはケトアシドーシスに急速に変化しうる中程度の空腹時高血糖を有する。なお他の患者、特に成人は、長年にわたってケトアシドーシスを予防するのに十分な残存ベータ細胞機能を保持しうる。この形の1型糖尿病を持つ患者は、生存のためにインスリンに依存するようになることが多く、ケトアシドーシスのリスクに瀕している。1型糖尿病を持つ患者は、低レベルのまたは検出不可能なレベルの血漿Cペプチドによって明示されるように、インスリン分泌をほとんどまたは全く示さない。しかしながら既知の病因を持たない1型糖尿病のある形があり、これらの患者の一部は、持続性インスリン減少を有し、ケトアシドーシスになりやすいが、自己免疫の証拠を持たない。これらの患者は「特発性1型」と呼ばれる。
【0006】
2型糖尿病は、糖尿病の最も一般的な形であり、どちらも有力な特徴でありうるインスリン作用およびインスリン分泌の障害によって特徴付けられる。どちらも通例、この形の糖尿病が臨床的に明示された時点で存在する。2型糖尿病患者は、絶対的というよりもむしろ相対的なインスリン欠乏によって特徴付けられ、インスリンの作用に対して抵抗性である。少なくとも初期に、そしてその生涯中にしばしば、これらの個体は生存するためにインスリン治療を必要としない。2型糖尿病は、糖尿病の全症例の90〜95%を占める。この形の糖尿病は、高血糖が糖尿病の顕著な症状を誘発するのに十分なほど重要でないので、または症状が単に認識されないので、長年にわたって診断未確定となりうる。2型糖尿病の患者の大多数が肥満であり、肥満自体がインスリン抵抗性を引き起こしうるか、または悪化させうる。在来の体重基準によって肥満でない人の多くは、主に腹部領域に分布した体脂肪(内蔵脂肪)のパーセンテージ上昇を有することがある。ケトアシドーシスはこの種の糖尿病では珍しく、通例は別の疾病のストレスに関連して発生する。この形の糖尿病患者は正常または高く見えるインスリンレベルを有しうるが、これらの糖尿病患者では高い血中グルコースレベルは、そのベータ細胞機能が正常であっても、なおより高いインスリン値を生じることが予想される。それゆえインスリン分泌はしばしば不足しており、インスリン抵抗性を代償するには不十分である。これに対して、一部の高血糖者は本質的に正常なインスリン作用を、しかし明らかに障害のあるインスリン分泌を有する。
【0007】
糖尿病性高血糖は、体重減少、身体活動の向上、および/または薬理学的治療によって低下させられうる。インスリン抵抗性、インスリン分布、および糖新生などの、高血糖と関連している複数の生物学的機構があり、これらの機構の1つ以上に作用する経口活性薬がある。ライフスタイルおよび/または薬物介入により、グルコースレベルはほぼ正常レベルに戻りうるが、これは通例、一時的である。時間と共に、治療手法に加えて追加の第2薬物が必要とされることが多い。しばしば時間と共に、これらの多剤手法も失敗すると、その時点でインスリン注射が開始される。
【0008】
米国で1800万人を超える人々が2型糖尿病を有し、そのうち約500万人がその疾患を有することを知らない。疾患を有することを知らず、糖尿病の古典的な症状を示さないこれらの人々は、重大な診断および治療上の難問を与えている。
【0009】
米国には、2型糖尿病を発症する重大なリスクに瀕している、ほぼ4100万人の大規模なグループがある。彼らは概して文献で「前糖尿病患者」と呼ばれる。「前糖尿病患者」、すなわち「前糖尿病」を持つ対象は、所与の期間中での2型糖尿病への転換に関して、幅広い母集団よりも高いリスクを持つ人または母集団を表す。2型糖尿病を発症するリスクは、年齢、肥満度、および身体活動の不足とともに上昇する。それは妊娠前糖尿病を有する女性において、そして高血圧および/または異脂肪血症を有する個体においてより頻繁に発生する。その頻繁さは、各種の人種下位集団にて変化する。2型糖尿病は強い家族性、おそらく遺伝性素因に関連することが多いが、この形の糖尿病の遺伝学は複雑であり、明らかに定義されていない。
【0010】
前糖尿病は、正常および明白な糖尿病レベルの間の空腹時グルコースレベルをしばしば有する。研究では時々、これらの人々はグルコースに対するその耐性が試験される。異常グルコース耐性、すなわち「耐糖能障害」は、個体が糖尿病へ向かう途上にあるという指標でありうる;それはその検出のために2時間の経口耐糖能試験の使用を必要とする。しかしながら耐糖能障害はそれ自体、完全に無症候性であり、いずれの機能的障害とも関連付けられていないことが示されている。実際にインスリン分泌は通例、純粋なグルコース負荷に応答するよりも、混合食に応答するほうが高い;結果として、耐糖能障害の大半の人々は、診断用耐糖能試験を受けるときを除いて、その日常生活では、そうだとしても、高血糖であることはまれである。それゆえ耐糖能障害の重要性は排他的に、将来の疾患のリスクが上昇した人を識別する能力に存在する(Sternら、2002)。Sternおよび他者が実施した研究において、2型糖尿病への将来の転換の前兆としての、耐糖能障害の感度および偽陽性率は50.9%および10.2%であり、それぞれ77.5%の受信者動作特性曲線下面積および0.20のp値を表した。そのコスト、信頼性、および不都合のために、経口耐糖能試験は日常的な臨床業務で使用されることはまれである。その上、糖尿病が経口耐糖能試験のみに基づいて診断される患者は、追跡調査で正常への高い復帰率を有し、実際に偽陽性診断となりうる。Sternおよび他者は、このような症例が、在来の空腹時または臨床診断基準を満足する人々と比較して、7〜8年の追跡調査後に非糖尿病状態へほぼ5倍戻りやすいことを報告した。明らかに、将来の糖尿病のリスクを評価する改善された方法への要求がある。
【0011】
耐糖能障害の人はしばしば、少なくとも1つ以上の一般的な動脈疾患リスク因子を有することが見出されるであろう。このクラスタリングは一部の研究者によって「シンドロームX」または「メタボリックシンドローム」と呼ばれており、前糖尿病状態を示しうる。クラスタの各成分は単独で動脈および糖尿病リスク上昇を伝達するが、それらは組合せとして一緒に、はるかに重大となる。これは、高血糖およびメタボリックシンドロームの他の特徴を持つ人々の管理が、血中グルコース制御に集中するだけでなく、他の動脈疾患リスク因子の低下のための方法も含むことを意味する。さらにこのようなリスク因子は糖尿病または前糖尿病に特異的でなく、それ自体は糖尿病の、または糖尿病状態の診断の根拠ではない。
【0012】
さらに糖尿病への転換のリスク上昇が、動脈疾患および事象への転換のリスク上昇を示すことに注目すべきである。糖尿病自体は、動脈疾患の最も重大な単一リスク因子の1つであり、実際に単独でしばしば「冠動脈心疾患等価物」と呼ばれ、安定狭心症と同様の範囲内で、先の動脈事象の生存率などの最も重大な独立リスク因子よりわずかに低い、動脈事象の20%を超える10年リスクを示している。他の動脈疾患、たとえば末梢動脈疾患または脳血管疾患にも同じことが当てはまる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前糖尿病が糖尿病などの血糖障害の検出前に10年以上存在しうることが文書に十分に記録されている。アカルボース、メトホルミン、トログリタゾンおよびロシグリタゾンなどの薬物による前糖尿病の治療は、糖尿病を延期または予防しうる;なお前糖尿病はほとんど治療されない。主な理由は上記のように、糖尿病を発症する個体の実際のリスクを判定する簡単な実験室試験が存在しないことである。それゆえ当分野には、まだ糖尿病ではないが、糖尿病を発症する重大なリスクに瀕している個体を識別および診断する方法への要求が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、一部は、ある生物学的マーカ、たとえばタンパク質、核酸、多形性、代謝産物、および他の検体が、ある生理学的状態および状況と同様に、真性糖尿病または前糖尿病状態、たとえばこれに限定されるわけではないが、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、グルコース調節異常および/またはインスリン抵抗性を特徴とする状態、たとえば耐糖能障害(IGT)および空腹時高血糖(IFG)を発症するリスクの上昇した対象に、このような対象がこれらの状態の在来のリスク因子の一部または全部を示さない場合、またはこれらの状態について無症候性である患者を除いて存在するという発見に関するものである。
【0015】
したがって本発明は、このような糖尿病または前糖尿病状態を経験している対象のリスクを監視または評価するために、糖尿病または前糖尿病状態を持つ対象を診断または同定するために、糖尿病または前糖尿病状態の発症のリスクを監視するために、糖尿病または前糖尿病状態の治療を受けている対象を監視するために、糖尿病または前糖尿病状態に関連する疾患状況を他の疾患から、または糖尿病または前糖尿病状態の下位分類内で差別的に診断するために、糖尿病または前糖尿病状態のリスクの変化を評価するために、糖尿病または前糖尿病状態を持つ対象を治療するのに使用される療法を選択するために使用されうる、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕している対象を治療するのに使用するための、糖尿病または前糖尿病状態の生物学的マーカを提供する。好ましくは、本発明は生物学的マーカの使用を提供し、その一部は、糖尿病に関連していないか、またはこれまでに糖尿病に関連するとして認識されていないが、糖尿病の症状のいずれも示さない対象、すなわち糖尿病または前糖尿病状態について無症候性であるか、あるいは潜在的な前糖尿病状態の非特異的な指標、たとえば動脈リスク因子のみを有する、または糖尿病の在来のリスク因子を全くまたはほとんど示さない対象を検出または識別するために、糖尿病または前糖尿病状態の発症につながりうる早期の生物学的変化に関連付けられている。重要なことに、本明細書で開示するバイオマーカの多くは、糖尿病の診断で個々の重大性をほとんどしめしていないが、他の開示されたマーカと組合せて(「パネル」で)使用され、本明細書で開示された数学的分類アルゴリズムと併用されたときに、前糖尿病でないものからの、前糖尿病患者または母集団の重大な識別物となる。
【0016】
したがって一態様において、本発明は、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態の発症のリスクを評価するために所定レベルの予測性を用いる方法を提供し、該方法は:対象からのサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と、サンプル中の1つ以上、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化であって、対象において真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す変化を測定する工程とを含む。
【0017】
一実施形態において、真性糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む。他の実施形態において、前糖尿病状態はIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む。
【0018】
DBRISKMARKERのレベルは、電気泳動により、または免疫化学的に測定されうる。検出が免疫化学的である場合、検出はラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイによって、あるいは酵素結合免疫吸着アッセイによって可能である。検出は特異性オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによっても達成されうる。
【0019】
ある実施形態において、対象は真性糖尿病または前糖尿病状態を有するとして以前に診断または同定されていない。他の実施形態において、対象は真性糖尿病または前糖尿病状態について無症候性である。
【0020】
本発明によって定義されるサンプルは、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、腹水、骨髄、間質液、痰、または尿でありうる。
【0021】
本発明の一実施形態において、5つ以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定されるが、しばしばより多い、25以上の、または50以上のDBRISKMARKERの測定も含まれうる。
別の態様において、真性糖尿病または前糖尿病状態を有する対象を診断または同定するために所定レベルの予測性を用いる方法が提供され、該方法は、対象からのサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と、1つ以上の(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを基準値と比較する工程とを含む。
【0022】
一実施形態において、基準値は指数値である。基準値は、糖尿病または前糖尿病状態についての1つ以上のリスク予測アルゴリズムまたは算出指数から導出されうる。
【0023】
本発明の別の態様は、対象からのサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と、サンプル中の1つ以上(あるいは2つ以上)のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化であって、対象における耐糖能障害を示す変化を測定する工程とを含む、対象における耐糖能障害のリスクを評価するために所定レベルの予測性を用いる方法を提供する。
【0024】
一実施形態において、対象は耐糖能障害を有するとして以前に診断されていない。別の実施形態において、対象は耐糖能障害について無症候性である。
【0025】
別の態様において、耐糖能障害を有する対象を診断または同定するために所定レベルの予測性を用いる方法が提供され、該方法は、対象からのサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と、1つ以上の(好ましくは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを基準値と比較する工程とを含む。基準値は指数値でありうる。
【0026】
あるいは基準値は、耐糖能障害についての1つ以上のリスク予測アルゴリズムまたは算出指数から導出されうる。
本発明の別の態様は、第1期間に対象からの第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;第2期間に対象からの第2サンプル中の1つ以上、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;工程(a)で検出された1つ以上(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを、工程(b)で検出された量と、または基準値と比較する工程とを含む、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態の進行を評価するために所定レベルの予測性を用いる方法を提供する。
【0027】
一実施形態において、対象は真性糖尿病または前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断または同定されている。他の実施形態において、対象は真性糖尿病または前糖尿病状態について以前に治療されている。なお別の実施形態において、対象は真性糖尿病または前糖尿病状態に以前に罹患しているとして診断または同定されていない。他の実施形態において、対象は真性糖尿病または前糖尿病状態について無症候性である。
【0028】
本発明の文脈では、第1サンプルは、真性糖尿病または前糖尿病状態について治療される前に対象から採取されうる。第2サンプルは、真性糖尿病または前糖尿病状態について治療された後に対象から採取されうる。基準値は、真性糖尿病または前糖尿病状態に罹患した1人以上の対象から導出されうる。
【0029】
本発明の別の態様において、第1期間に対象からの第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;第2期間に対象からの第2サンプル中の1つ以上、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;工程(a)で検出された1つ以上(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを、工程(b)で検出された量と、または基準値と比較する工程とを含む、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する耐糖能障害の進行を評価するために所定レベルの予測性を用いる方法が提供される。
【0030】
対象は真性糖尿病または前糖尿病状態について以前に治療された対象でありうる。対象は耐糖能障害を有するとして、または真性糖尿病または前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断または同定されていない対象でもありうる。あるいは対象は、耐糖能障害について無症候性でありうるか、または真性糖尿病または前糖尿病状態について無症候性である。
【0031】
なお別の態様において、真性糖尿病または前糖尿病状態の治療の有効性を監視するために所定レベルの予測性を用いる方法が提供され、該方法は、第1期間に対象からの第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;第2期間に対象からの第2サンプル中の1つ以上、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;工程(a)で検出された1つ以上(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを、工程(b)で検出された量と、または基準値と比較する工程とを含み、治療の有効性は、対象からの1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルの変化によって監視される。
【0032】
一実施形態において、真性糖尿病または前糖尿病状態の治療は、運動療法、食事補充物、治療剤、外科的介入、および予防剤を含む。別の実施形態において、基準値は、真性糖尿病または前糖尿病状態の1つ以上の治療の結果として糖尿病リスク因子の改善を示す1人以上の対象から導出される。治療の有効性は、ボディマス指数(BMI)、インスリンレベル、血中グルコースレベル、HDLレベル、収縮期および/または拡張期血圧、あるいはその組合せの変化を検出することによってさらに監視されうる。血中グルコースレベルの変化は、経口耐糖能試験によって検出されうる。
【0033】
本発明の別の態様は、第1期間に対象からの第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;場合により、第2期間に対象からの第2サンプル中の1つ以上、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;工程(a)で検出された1つ以上(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを、基準値、または場合により工程(b)で検出された量と比較する工程とを含む、真性糖尿病または前糖尿病状態と診断されたか、またはそのリスクを有する対象に治療計画を選択するために所定レベルの予測性を用いる方法を提供する。
【0034】
本発明は、真性糖尿病を持たない1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、真性糖尿病基準発現プロファイルも提供する。
【0035】
耐糖能障害を持たない1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、耐糖能障害基準発現プロファイルも提供される。
【0036】
別の態様において、真性糖尿病を有する、真性糖尿病を発現するリスクを有する、または真性糖尿病の治療を受けている1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、真性糖尿病対象発現プロファイルが提供される。
【0037】
別の態様において、耐糖能障害を有する、耐糖能障害を発現するリスクを有する、または耐糖能障害の治療を受けている1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、耐糖能障害対象発現プロファイルが提供される。
【0038】
本発明は、本発明のプロファイルを生成するのに十分な、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される対応するDBRISKMARKERを検出する、複数のDBRISKMARKER検出試薬を含むキットも提供する。検出試薬は、1つ以上の抗体またはその断片を含みうる。あるいは、または加えて、検出試薬は1つ以上のオリゴヌクレオチドまたは1つ以上のアプタマーを含みうる。
【0039】
本発明は別の態様において、本発明による1つ以上の真性糖尿病基準発現プロファイル、または本発明による1つ以上の真性糖尿病対象発現プロファイル、そして場合により追加の試験結果および対象情報を含む機械読み取り可能な媒体も提供する。
【0040】
本発明による1つ以上の耐糖能障害基準発現プロファイル、または本発明による1つ以上の耐糖能障害対象発現プロファイル、そして場合により追加の試験結果および対象情報を含む機械読み取り可能な媒体も考慮される。
【0041】
別の態様において、真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する生理学的および/または生化学的経路を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDB WSKMARKERパネルが提供される。一実施形態において、生理学的および生化学的経路は、自己免疫調節、炎症および内皮機能(サイトカイン−サイトカイン受容体相互作用、細胞接着分子(CAM)、接着点、白血球経内皮移動、ナチュラルキラー細胞媒介細胞毒性、アクチン細胞骨格の調節、接着/密着/ギャップ結合、および細胞外マトリクス(ECM)−受容体相互作用を含む)、脂肪細胞の発達および維持(アディポサイトカイン、細胞周期、アポトーシス、および神経刺激性リガンド−受容体相互作用を含む)はもちろんのこと、造血細胞系統、補体および凝固カスケード、細胞内および細胞外細胞シグナル伝達経路(mTOR、TGF−β、MAPK、インスリン、GnRH、トール様受容体、Jak−STAT、PPAR、T細胞受容体、B細胞受容体、FcεRI、カルシウム、Wnt、およびVEGFシグナル経路および他の細胞伝達機構を含む)も、1型および2型真性糖尿病と一般に関連付けられる経路に加えて含む。
【0042】
真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する部位を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネルも提供され、該部位は、ベータ細胞、内皮細胞、骨格および平滑筋、あるいは末梢、心血管または脳血管動脈を含みうる。
【0043】
他の態様において、真性糖尿病または前糖尿病状態の進行を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネルも提供される。
【0044】
本発明はさらに、真性糖尿病または前糖尿病状態の進行速度を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネルも提供する。本発明は、真性糖尿病の1種類以上に特異的である1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネルおよび前糖尿病状態に特異的である1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネルにも関する。
【0045】
対象の関連する過去のコホート、またはこのような過去のコホートで発生された算出指数を利用する、数学的分類アルゴリズムおよび因子分析手法から選択される1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネルも提供される。特に、レプチン(LEP)、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(ILGFBP3)、レジスチン(RETN)、マトリクスメタロペプチダーゼ2(MMP−2)、アンギオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)−1(ACE)、補体成分4A(Rogers血液型)(C4A)、CD14分子(CD14)、セレクチンE(内皮接着分子)(SELE)、コロニー刺激因子1(マクロファージ)(CSF1)、および血管内皮成長因子(VEGF)、c反応性タンパク質、ペントラキシン関連(CRP)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ1A(TNFRSF1A)、RAGE(最終糖化産物特異的受容体[AGER])、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)、ならびにこれらのDBRISKMARKERの1つ以上を使用する数学的分類アルゴリズム内のその統計的および/または機能的同等物を含む、開示されたDBRISKMARKERのサブセットから選択された、1つ以上、好ましくは1つ以上のDBRISKMARKERのDBRISKMARKERパネル。
【0046】
1人以上の対象からのサンプル中に存在する、少なくとも1つの、好ましくは2つの別個のDBRISKMARKERのレベル上昇の存在を検出する工程と;少なくとも1つの、好ましくは2つの別個のDBRISKMARKERの変化したレベルが真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの低い1人以上の対象で測定されたベースライン値、または1つ以上の糖尿病調節薬による治療の結果として糖尿病リスクマーカの改善を示す1人以上の対象で測定されたベースライン値に戻るまで、1人以上の対象を1つ以上の糖尿病調節薬によって治療する工程とを含む、真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する1人以上の対象を治療する方法も本発明によって考慮される。
【0047】
糖尿病調節薬は、スルホニル尿素;ビグアナイド;インスリン、インスリンアナログ;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体−γ(PPAR−γ)アゴニスト;二重作用性PPARアゴニスト;インスリン分泌促進物質;グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)のアナログ;ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)の阻害薬;膵臓リパーゼ阻害薬;α−グルコシダーゼ阻害薬;およびその組合せを含みうる。一実施形態において、1つ以上の糖尿病調節薬による治療の結果としての糖尿病リスクマーカの改善は、ボディマス指数(BMI)の低下、血中グルコースレベルの低下、インスリンレベルの上昇、HDLレベルの上昇、収縮期および/または拡張期血圧の低下、あるいはその組合せを含む。
【0048】
本発明の別の態様において、第1期間に対象からの第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;場合により、第2期間に対象からの第2サンプル中の1つ以上、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;工程(a)で検出された1つ以上(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを、基準値、または場合により工程(b)の量と比較する工程とを含む、前糖尿病状態と診断されたか、またはそのリスクを有する対象における耐糖能障害のリスクの変化を評価する方法が提供される。
【0049】
本発明はさらに、対象からの第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;工程(a)で検出された1つ以上(あるいは2つ以上の)DBRISKMARKERの有効量のレベルを、本発明の真性糖尿病対象発現プロファイル、本発明の耐糖能障害対象発現プロファイル、または基準値と比較する工程とを含む、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する疾患状況を差異的に診断する方法を提供する。
【0050】
さらに糖尿病リスク因子を分析することによって糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定する方法において、本発明は、対象からのサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と、サンプル中の1つ以上の(または2つ以上の)DBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化であって、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す変化を測定する工程とを含む、改良を提供する。
【0051】
本発明のなお別の態様では、糖尿病リスク因子を分析することによって糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定する方法において、本発明は:レプチン(LEP)、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(ILGFBP3)、レジスチン(RETN)、マトリクスメタロペプチダーゼ2(MMP−2)、アンギオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)−1(ACE)、補体成分4A(Rogers血液型)(C4A)、CD14分子(CD14)、セレクチンE(内皮接着分子)(SELE)、コロニー刺激因子1(マクロファージ)(CSF1)、および血管内皮成長因子(VEGF)、c反応性タンパク質、ペントラキシン関連(CRP)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ1A(TNFRSF1A)、RAGE(最終糖化産物特異的受容体[AGER])、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)から成る群より選択される1つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを選択する工程と、サンプル中の1つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化であって、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す変化を測定する工程とを含む、改良を提供する。
【0052】
糖尿病リスク因子を分析することによって糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定する方法において、本発明は:レプチン(LEP)、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(ILGFBP3)、レジスチン(RETN)、マトリクスメタロペプチダーゼ2(MMP−2)、アンギオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)−1(ACE)、補体成分4A(C4A)、CD14分子(CD14)、セレクチンE(内皮接着分子)(SELE)、コロニー刺激因子1(マクロファージ)(CSF1)、および血管内皮成長因子(VEGF)、c反応性タンパク質、ペントラキシン関連(CRP)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ1A(TNFRSF1A)、RAGE(最終糖化産物特異的受容体[AGER])、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)から成る群より選択される2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを選択する工程と、サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化であって、対象における真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す変化を測定する工程とを含む、改良を提供する。
【0053】
別途定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的擁護は、本発明が関連する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するのと同様または同等の方法および材料が本発明の常法で使用されうるが、適切な方法および材料が以下で説明される。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み入れられている。矛盾がある場合には、定義を含む本明細書が制御する。加えて、本明細書に記載する材料、方法、および実施例は例証のためのみであり、制限するものではない。
【0054】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかとなり、それらに含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
(発明の詳細な説明)
本発明は、糖尿病または前糖尿病状態を有する、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症する素因のある対象に関連したバイオマーカの識別に関するものであろう。したがって本発明は、本明細書で開示するバイオマーカの検出により、糖尿病または糖尿病状態について無症候性である対象を含めて、糖尿病または前糖尿病状態の素因がある対象を識別する方法を特徴とする。これらのバイオマーカは、糖尿病または前糖尿病状態の治療および療法を受けている対象を監視するのに、そして糖尿病または前糖尿病状態を有する対象において効果的である療法および治療を選択するのにも有用であり、このような治療および療法の選択および使用は、糖尿病または前糖尿病状態の進行を低速化させるか、あるいはその開始を実質的に遅延または予防する。
【0056】
「真性糖尿病」は本発明の文脈において、自己免疫性および特発性の両方の1型糖尿病ならびに2型糖尿病(合せて「糖尿病」)を含む。世界保健機関は、真性糖尿病について空腹時血漿グルコース濃度7.0mmol/L(126mg/dL)以上(全血6.1mmol/Lまたは110mg/dL)、または2時間グルコースレベル≧11.1mmol/L(>200mg/dL)の診断値を定義している。真性糖尿病に対するハイリスクを示す他の値としては、高い動脈圧>140/90mmHg;高い血漿トリグリセリド(>1.7mmol/L;150mg/dL)および/または低いHDLコレステロール(男性では<0.9mmol/L、35mg/dL;女性では<1.0mmol/L、39mg/dL);中心性肥満(男性:腹囲対臀囲比>0.90;女性:腹囲対臀囲比>0.85)および/または30kg/mを超えるボディマス指数;ミクロアルブミン尿症、尿中アルブミン排泄率>20μg/分またはアルブミン:クレアチニン比>30mg/gの場合)が挙げられる。
【0057】
「前糖尿病状態」は、正常グルコース恒常性および代謝と、明白な真性糖尿病で見られる状況との中間である代謝状況を指す。前糖尿病状態としては制限なく、メタボリックシンドローム(「シンドロームX」)、耐糖能障害(IGT)、および空腹時高血糖(IFG)が挙げられる。IGTは、グルコース調節の食後異常を指すが、IFGは空腹状態で測定される異常を指す。世界保健機関は、IGFの値を6.1mmol/L(100mg/dL)以上(全血5.6mmol/L;100mg/dL)であるが、7.0mmol/L(126mg/dL)未満(全血6.1mmol/L;110mg/dL)の空腹時血漿グルコース濃度として定義している。全米コレステロール教育プログラム(NCEP)基準によるメタボリックシンドロームは、次:血圧>130/85mmHg;空腹時血漿グルコース>6.1mmol/L;胴囲>102cm(男性)または>88cm(女性);トリグリセリド>1.7mmol/L;およびHDLコレステロール<1.0mmol/L(男性)または1.3mmol/L(女性)の少なくとも3つを有するとして定義される。
【0058】
本発明の文脈における「前糖尿病」は、明白な2型真性糖尿病への疾患転換の正常よりも高い予想率を有する個体または母集団における生理学的状況を示す。前糖尿病母集団における明白な2型糖尿病へのこのような絶対予想転換率は、1年につき最高1パーセント以上、好ましくは1年につき2パーセント以上でありうる。それは本発明から得られるものを含めて、リスクの四分位数間の正常からの相対リスクによって、または各種のバイオマーカおよび指数スコア間の尤度比としても示されうる。別途記載しない限り、そして制限なく、前糖尿病の分類的陽性診断が本明細書で示されるときに、それは今後7.5年にわたり1年につき2パーセント(2%)の2型糖尿病への予想転換率を持つ患者のグループ、または所与の閾値(選択された前糖尿病臨床カットオフ)にて試験するその15パーセント(15%)によって実験的に定義される。前糖尿病転換リスクの連続的尺度が生成されるとき、「前糖尿病状態」を有することは、正常な基準または一般的な未選択正常罹患率母集団で見られる上のいずれの予想年転換率も含む。
【0059】
「耐糖能障害」(IGT)は、通常よりは高いが、真性糖尿病として分類されるほど高くない血中グルコースレベルを有するとして定義される。IGTを有する対象は、75g経口耐糖能試験で140〜199mg/dL(7.8〜11.0mmol)の2時間グルコースレベルを有するであろう。これらのグルコースレベルは、正常より上であるが、糖尿病と診断されるレベルよりは低い。耐糖能障害または空腹時血糖異常を持つ対象は、糖尿病を発症する重大なリスクを有し、それゆえ一次予防の重要な標的グループである。
【0060】
「インスリン抵抗性」は、体の細胞がインスリンの効果に対して抵抗性となる、すなわち所与の量のインスリンに対する正常な応答が低下する状態を指す。結果として、インスリンがその効果を発揮するために、より高いレベルのインスリンが必要とされる。
【0061】
「正常グルコースレベル」は、「血糖正常の」という用語と互換的に使用され、6.1mmol/L(110mg/dL)未満の空腹時静脈血漿グルコース濃度を指す。この量は任意であるが、このような値は正常耐糖能が証明された対象にて観察されており、しかし一部は経口耐糖能試験(OGTT)によって測定されるようにIGTを有することがある。
【0062】
260のバイオマーカが、糖尿病を有する、または前糖尿病状態に特徴的な症状を示す、または前糖尿病(本明細書で定義するような)を有する対象、たとえばインスリン抵抗性である、変化したベータ細胞機能を有する、あるいは既知の臨床パラメータまたはリスク因子、たとえば糖尿病の家族歴、低い活動レベル、質の悪い食事、過体重(特に胴囲付近)、45歳を超えた年齢、高血圧、高レベルのトリグリセリド、35未満のHDLコレステロール、以前に識別された耐糖能障害、以前の妊娠中の糖尿病(「妊娠真性糖尿病」)または体重が9ポンド超の新生児の出産、および民族性に基づいて糖尿病を発症する危険に瀕している対象における、変更または調整された存在または濃度レベルを有することが見出されるとして識別されている。
【0063】
本発明のバイオマーカおよび方法は、当業者が、糖尿病または前糖尿病状態のいずれの症状も示さないが、それにもかかわらず糖尿病を発症するリスクを有する、または前糖尿病状態に特徴的な症状を経験している対象を識別、診断、またはそうでなければ評価できるようにする。
【0064】
本発明の文脈における「バイオマーカ」という用語は、制限なく、タンパク質、核酸、タンパク質および核酸の多形、元素、代謝産物、および他の検体を含む。バイオマーカは、変異タンパク質または変異核酸も含みうる。「検体」という用語は本明細書で使用するように、測定されるいずれの物質も意味して、電解質および元素、たとえばカルシウムを含みうる。最後にバイオマーカは、他の臨床的特徴、たとえば制限なく、年齢、民族性、拡張期および収縮期血圧、ボディマス指数、および安定時心拍数を含む健康状況の非検体生理学的マーカも指しうる。
【0065】
糖尿病または前糖尿病状態を有する、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症する素因のある対象においてレベルが変化するタンパク質、核酸、多形、および代謝産物は、表1にまとめられており、本明細書では集合的に、特に「糖尿病リスク関連タンパク質」、「DBRISKMARKERポリペプチド」、または「DBRISKMARKERタンパク質」と呼ばれる。ポリペプチドをコードする対応する核酸は、「糖尿病リスク関連核酸」、「糖尿病リスク関連遺伝子」、「DBRISKMARKER核酸」、または「DBRISKMARKER遺伝子」と呼ばれる。別途指摘しない限り、「DBRISKMARKER」、「糖尿病リスク関連タンパク質」、「糖尿病リスク関連核酸」は、本明細書で開示する配列のいずれも指すものとする。DBRISKMARKERタンパク質または核酸の対応する代謝産物も、制限なく、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS);c−ペプチド;コルチゾール;ビタミンD3;5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT;セロトニン);オキシントモジュリン;エストロゲン;エストラジオール;および本明細書では「DBRISKMARKER代謝産物」と呼ばれるジギタリス様因子などの代謝産物を含む、先に開示された上述の在来のリスクマーカ代謝産物のいずれとも同様に測定されうる。健康状況の非検体生理学的マーカ(たとえば年齢、民族性、拡張期および収縮期血圧、ボディマス指数、および在来のリスク因子として一般に使用される他の非検体測定値)は、「DBRISKMARKER生理学」と呼ばれる。1つ以上の、好ましくは2つ以上の上述のクラスのDBRISKMARKERの数学的組合せ測定から生成された算出指数は、「DBRISKMARKER指数」と呼ばれる。タンパク質、核酸、多形、変異タンパク質および変異核酸、代謝産物、および他の検体は、先の実体のいずれかから構築された一般的な生理学的測定値および指数と同様に、DBRISKMARKERの広義の分類に含まれる。
【0066】
「対象」は本発明の文脈において、好ましくは哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシでありうるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、真性糖尿病または前糖尿病状態の動物モデルとなる対象として好都合に使用されうる。対象はオスまたはメスでありうる。対象は、糖尿病または前糖尿病状態を有するとして以前に診断または同定されており、場合により糖尿病または前糖尿病状態の治療をすでに受けている対象でありうる。あるいは対象は、糖尿病または前糖尿病状態を有するとして以前に診断されていない対象でもありうる。たとえば対象は、糖尿病または前糖尿病状態の1つ以上のリスク因子を示す対象、あるいは糖尿病リスク因子を示さない対象、あるいは糖尿病または前糖尿病について無症候性である対象でありうる。対象は、糖尿病または前糖尿病状態に罹患している、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕している対象でもありうる。
【0067】
「サンプル」は本明細書の文脈において、対象から単離された生物学的サンプルであり、たとえば血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、リンパ液、腹水、間質液(「細胞外液」としても既知であり、特に歯肉溝滲出液を含む、細胞間の空間に見出される液を含む)、骨髄、痰、または尿が挙げられる。
【0068】
1つ以上の、好ましくは2つ以上のDBRISKMARKERが本発明の常法で検出されうる。たとえば2、5、10、15、20、40、50、75、100、125、150、175、200、210、220、230、240、250以上のDBRISKMARKERが検出されうる。ある態様において、本明細書で開示される全260のDBRISKMARKERが検出されうる。DBRISKMARKERの数が検出されうる好ましい範囲としては、既知のDBRISKMARKER全部までのいずれかの最大値と対にされた、1〜260から選択されるいずれかの最小値、特に2、5、10、20、50、75、100、125、150、175、200、210、220、230、240、250によって境界を示された範囲、特に5、10、20、50および75が挙げられる。特に好ましい範囲としては、2〜5、2〜10、2〜50、2〜75、2〜100、5〜10、5〜20、5〜50、5〜75、5〜100、10〜20、10〜50、10〜75、10〜100、20〜50、20〜75、20〜100、50〜75、50〜100、100〜125、125〜150、150〜175、175〜200、200〜210、210〜220、220〜230、230〜240、240〜250、ならびに250およびそれ以上が挙げられる。
診断および予後方法
糖尿病または前糖尿病を発症するリスクは、「所定レベルの予測性」を用いて、試験サンプル(たとえば対象由来サンプル)中のDBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、および他の検体の「有効量」を検査することと、複数の個々のDBRISKMARKERの結果からの情報を単一の測定値または指数にまとめるために、しばしば数学的アルゴリズムを利用して、有効量を基準または指数値と比較することとによって、検出されうる。糖尿病または前糖尿病状態のリスク上昇を有するとして識別された対象は場合により、治療計画、たとえば本明細書で定義するような「糖尿病調節薬」などの予防または治療化合物の投与、あるいは糖尿病または前糖尿病の開始を遅延するための運動計画または食事補充物の実施を受け入れることが選択されうる。対象から単離されたサンプルはたとえば血液、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、リンパ液、血清、骨髄、腹水、間質液(たとえば歯肉溝滲出液を含む)、尿、痰、または他の体液を含みうる。
【0069】
試験サンプル中のDBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体の量は測定されて、正常対照レベルと比較されうる。「正常対照レベル」という用語は、たとえば高齢まで監視され、糖尿病または前糖尿病状態を発症しないことが見出されなかった若年対象から採取されたサンプルと比較して、糖尿病または前糖尿病状態に罹患しておらず、糖尿病または前糖尿病状態を有さないと思われる対象で通例見出される、DBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体のレベル、あるいはDBRISKMARKER生理学または指数を意味する。あるいは正常対照レベルは、糖尿病または前糖尿病状態に罹患している患者に通例見出されるDBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体のレベルを意味しうる。正常対照レベルは、範囲または指数でありうる。あるいは正常対照レベルは、以前に試験された対象からのパターンのデータベースでありうる。正常対照レベルと比較されたDBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体の対象に由来するサンプル中でのレベルの変化は、対象が糖尿病または前糖尿病状態に罹患している、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕していることを示しうる。対照的に、方法が予防的に利用されるとき、DBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体の対象に由来するサンプルにおける正常対照レベルと比較された同様のレベルは、対象が糖尿病または前糖尿病状態に罹患していない、糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕していない、あるいは発症するリスクが低いことを示しうる。
【0070】
DBRISKMARKERのレベルの差は、好ましくは統計的に有意である。「統計的に有意である」とは、変化が偶然だけで起こることが予想されうるよりも大きいことを意味する。統計的有意性は、当業界で既知のいずれの方法によっても決定されうる。たとえば統計的有意性は、p値によって決定されうる。p値は、実験中のグループ間の差が偶然によって起こった確率の指標である。(P(z>zobserved))。たとえば0.01のp値は、結果が偶然起こった確率が100分の1であることを意味する。p値が小さくなればなるほど、グループ間の差が治療によって引き起こされた可能性がより高くなる。p値が少なくとも0.05である場合に、変化は統計的に有意である。好ましくはp値は、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001またはそれ以下である。下記のように、本発明の制限なしに、統計的有意性を達成することは、必ずではないが一般に、DBRISKMARKERの組合せがパネルで共に使用されて、統計的に有意なDBRISKMARKER指数を達成するために数学的アルゴリズムと併用されることが必要である。
【0071】
試験、アッセイ、または方法の「診断精度」は、試験、アッセイ、または方法の、糖尿病または前糖尿病状態を有する、あるいは糖尿病または前糖尿病状態のリスクを有する対象を区別する能力が、対象がDBRISKMARKERのレベルにおける「臨床的に有意な存在」または「臨床的に有意な変化」を有するかどうかに基づくことに関与している。「臨床的に有意な存在」または「臨床的に有意な変化」とは、対象(通例は対象からのサンプル)におけるDBRISKMARKERの存在(たとえばミリグラム、ナノグラムなどの質量、または当たりのミリグラムなどの体積当たりの質量または単位体積当たりの転写のコピー数))あるいはDBRISKMARKERの存在の変化が、そのDBRISKMARKERの所定のカットオフ点(または閾値)よりも高く、したがってそのタンパク質、核酸、多形、代謝産物または検体の十分に高い存在がマーカである糖尿病または前糖尿病状態を対象が有するとを示すことを意味する。
【0072】
本発明は、2型糖尿病へ転換のリスクの分類的または連続的測定を行うために、それゆえ前糖尿病と定義された対象の分類を診断するために使用されうる。
【0073】
分類的計画では、本発明の方法は正常対象コホートと前糖尿病対象コホートを区別するために使用されうる。本発明のこの分類的使用において、「高度の診断精度」および「非常に高度の診断精度」という用語は、前糖尿病の存在または非存在を正しく(精密に)示す所定のカットオフ点を持つそのDBRISKMARKER(またはDBRISKMARKER指数;DBRISKMARKER値が、単一のDBRISKMARKERからの、またはDBRISKMARKERの指数から導出されたいずれかの個々の測定値を含む場合)についての試験またはアッセイを指す。完璧な試験は完璧な精度を有する。それゆえ前糖尿病を有する対象では、該試験は陽性試験結果のみ示し、「陰性」とされる対象のいずれも報告しない(「偽陰性」はない)。言い換えれば、試験の「感度」(真の陽性率)は100%であろう。他方、それゆえ前糖尿病を有さなかった対象では、該試験は陰性試験結果のみ示し、「陽性」とされる対象のいずれも報告しない(「偽陽性」はない)。言い換えれば「特異性」(真の陰性率)は100%であろう。たとえば試験、たとえば臨床診断試験の特異性、感度、ならびに陽性および陰性予測値について議論している、たとえばO’Marcaigh AS,Jacobson RM,“Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test,How To Prevent Misleading Or Confusing Results,”Clin.Ped.1993,32(8):485−491を参照。他の実施形態において、本発明は前糖尿病を糖尿病から、糖尿病を正常から区別するために使用されうる。このような使用は、異なるDBRISKMARKERパネル、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフ点を必要とするが、所期の用途のために診断精度の同じ上述の測定を受ける。
【0074】
疾患の分類的診断において、試験(またはアッセイ)のカット点または閾値を変更することは通常、感度および特異性を、ただし定性的に反比例関係で変化させる。たとえばカット点が低くされると、試験された母集団内のさらなる対象が通例、カット点または閾値を超える試験結果を有するであろう。カット点を超える試験結果を有する対象は、試験が実施される疾患、状態、または症候群を有するとして報告されるので、カット点を低くすることは、より多くの対象が陽性結果(対象が糖尿病、前糖尿病、または前糖尿病状態を有すること)を有するとして報告されるようになるだろう。それゆえ糖尿病または前糖尿病を有する対象のより高い割合が試験によって、それを有することが示されるであろう。したがって試験の感度(真の陽性率)が上昇するであろう。しかしながら同時に、疾患、状態、または症候群を持たないより多くの人々(たとえば真に「陰性」である人々)が試験によって、カット点を超えたDBRISKMARKER値を有することが示され、したがって試験によって陰性であると正しく示されるのではなく、むしろ陽性として(すなわち疾患、状態、または症候群を有するとして)報告されるので、さらなる偽陽性があるであろう。したがって試験の特異性(真の陰性率)が低下されるであろう。同様にカット点を上昇させることは、感度を低下させて、特異性を上昇させる傾向がある。したがって対象の状態を評価するための提案された医学的試験、アッセイまたは方法の精度および有用性を評価する場合、感度と特異性の両方を常に考慮すべきであり、感度および特異性がカット点の範囲にわたって著しく変化するので感度および特異性が報告されるカット点がどれであるか注意すべきである。
しかしながら試験(またはアッセイ)のカット点の範囲全体にわたって、試験、アッセイ、または方法の感度および特異性の表現を単一の値のみによって可能にする指標がある。その指標は、その問題の試験、アッセイまたは方法の受信者動作特性(「ROC」)曲線から導出される。たとえばShultz,“Clinical Interpretation Of Laboratory Procedures,”chapter 14 in Teitz,Fundamentals of Clinical Chemistry,Burtis and Ashwood(eds.),4th edition 1996,W.B.Saunders Company,pages 192−199;およびZweigら、“ROC Curve Analysis:An Example Showing The Relationships Among Serum Lipid And Apolipoprotein Concentrations In Identifying Subjects With Coronory Artery Disease,”Clin.Chem.,1992,38(8):1425−1428を参照。
【0075】
ROC曲線は、0から1のスケール(たとえば100%)のx軸上の1マイナス特異性に等しい値に対する、0から1のスケール(たとえば100%)のy軸上の感度のx−yプロットである。言い換えれば、それはその試験、アッセイ、または方法での偽陽性率に対する真の陽性率のプロットである。問題の試験、アッセイ、または方法のROC曲線を構築するには、対象は、対象が疾患、状態、または症候群について真に陽性または真性であるかどうかを判定するために、たとえば問題の試験、アッセイ、または方法とは独立している完全に精密な、または「基準」方法を使用して評価されうる(たとえば冠動脈造影は、アテローム性冠状動脈硬化の存在についての基準試験である)。対象はまた、問題の試験、アッセイまたは方法を使用して、各種のカット点について試験され、対象は試験、アッセイ、または方法に従って陽性または陰性として報告される。感度(真の陽性率)および1マイナス特異性に等しい値(偽陽性値と等しい値)が各カット点について決定され、x−y値の各対がx−y図に1つの点としてプロットされる。これらの点を連結する「曲線」がROC曲線である。
【0076】
ROC曲線は、感度および特異性が最大化される最適な単一の臨床カットオフまたは治療閾値を決定するためにしばしば使用される;このような状況は、曲線の下に描かれうる1個の最大の長方形の左上角を描くROC曲線上の点を表す。
曲線下面積(「AUC」)全体は、試験のカット点の範囲全体にわたって、試験、アッセイ、または方法の感度および特異性の表現を単一の値のみによって可能にする指標である。最大AUCは1であり(完全な試験)、最小面積は2分の1である(たとえば正常対疾患の区別がない面積)。AUCが1に近づけば近づくほど、試験の精度はより良好である。すべてのROCおよびAUCにおいて、興味のある疾患および試験後時間水平の定義が暗黙であることに注目すべきである。
【0077】
「高度の診断精度」とは、AUC(試験またはアッセイのROC曲線下面積)が少なくとも0.70、望ましくは少なくとも0.75、さらに望ましくは少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85、さらに好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.95である、試験またはアッセイ(たとえば糖尿病または前糖尿病状態の存在をそれによって示すDBRISKMARKERの臨床的に有意な存在を判定するための本発明の試験)を意味する。
【0078】
「非常に高度の診断精度」とは、AUC(試験またはアッセイのROC曲線下面積)が少なくとも0.80、望ましくは少なくとも0.85、さらに望ましくは0.875、好ましくは少なくとも0.90、さらに好ましくは少なくとも0.925、最も好ましくは少なくとも0.95である試験またはアッセイを意味する。
【0079】
あるいは低い罹患率の試験済み母集団(1年につき1%未満の発生率の母集団として定義される)において、ROCおよびAUCは、試験の臨床有用性に関して誤解を招くおそれがあり、診断精度の程度を判定するために本開示の別の箇所で定義される絶対および相対リスク比が利用されうる。試験される対象の母集団も四分位数へ分類可能であり、上位四分位数(母集団の25%)は、糖尿病または前糖尿病状態を発症または罹患する最も高い相対リスクを持つ対象のグループを含み、下位四分位数は、糖尿病または前糖尿病状態を発症する最も低い相対リスクを有する対象のグループを含む。一般に低い罹患率の母集団における上位四分位数から下位四分位数への2.5倍を超える相対リスクを有する試験またはアッセイから導出された値は、「高度の診断精度」を有すると見なされ、各四分位数について5〜7倍の相対リスクを有するそれらは非常に高度の診断精度を有すると見なされる。それにもかかわらず各四分位数についてわずか1.2〜2.5倍の相対リスクを有する試験またはアッセイから導出された値は、臨床的に有用なままであり、疾患のリスク因子として広範に使用される;そのようなことは、総コレステロールを伴う、そして将来の心血管事象の予測に関する多くの炎症マーカでの場合である。
【0080】
いずれの試験の予測値も、試験の感度および特異性に、そして試験される母集団における状態の罹患率に依存する。この概念は、ベイズ定理に基づいて、スクリーニングされる状態が対象または母集団に存在する可能性(試験前確率)が大きければ大きいほど、陽性試験の妥当性はより大きく、結果が真の陽性である可能性がより大きいことを規定する。それゆえ状態が存在する可能性が低いいずれかの母集団において試験を使用することについての問題は、陽性結果が限定された値を有する(すなわち偽陽性となりやすい)ことである。同様に非常に高いリスクの母集団では、陰性試験結果が偽陰性となりやすい。診断精度、すなわちROC曲線上のカット点を定義することによって、許容されるAUC値を定義することおよび本発明のDBRISKMARKERの有効量を構成するものの相対濃度の許容される範囲を決定することは、当業者がDBRISKMARKERを使用して所定レベルの予測性によって対象を診断または同定できるようにする。
【0081】
診断精度を決定する代わりの方法は、疾患分類またはリスク分類(たとえば前糖尿病)が関連する医学会および医学慣行によってなお明確に定義されていないときに一般に使用される、リスクの連続的測定と共に使用されねばならない。
【0082】
「リスク」は本発明の文脈において、特定の期間にわたって事象が発生する確率パーセンテージを指す、「絶対」リスクを意味しうる。絶対リスクは、関連時間コホートの実見後測定に関連して、または関連する期間にわたって追跡された統計的に妥当な歴史的コホートから発生させた指数値に関連してのどちらかで測定されうる。「相対」リスクは、低リスクコホートまたは平均母集団リスクのどちらかと比較した対象のリスクの絶対リスクの比であり、臨床リスク因子が評価される方法によって変化しうる。オッズ比、所与の試験結果で陰性事象に対する陽性事象の比も、無転換に対して一般に使用される(オッズは式p/(1−p)により、式中、pは事象の確率であり、(1−p)は事象なしの確率である)。本発明の文脈で評価されうる代わりの連続尺度としては、糖尿病転換までの時間および治療的糖尿病転換リスク軽減比が挙げられる。
【0083】
このような連続尺度では、算出指数の診断精度の尺度は通例、予測された連続値と実際の観察値(または歴史的指数算出値)との間の線形回帰曲線当てはめに基づいており、R2乗、p値および信頼区間などの尺度を利用する。Genomic Health(Redwood City,California)によって商品化された将来の乳癌再発のリスクに関する試験におけるように、歴史的な観察されたコホートの予測に基づく信頼区間(通常、90%または95%CI)を含む、このようなアルゴリズムを使用する予測値が報告されることは珍しくはない。
【0084】
糖尿病への真のリスク転換の最終的な決定因子および基準は、十分に大きい母集団内での実際の転換であり、要求される時間長にわたって観察される。しかしながらこのことは、必然的に遡及的視点であり、予防的介入のいずれの機会の後から起こるので問題がある。結果として、糖尿病または前糖尿病状態に罹患している、または糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象は一般に、当分野で既知の方法によって診断または同定され、将来のリスクは歴史的経験および登録機関の研究に基づいて概算される。このような方法としては、これに限定されるわけではないが、収縮期および拡張期血圧の測定、ボディマス指数の測定、血液サンプルからの総コレステロール、LDL、HDL、インスリンおよびグルコースレベルの試験管内決定、経口耐糖能試験、ストレス試験、ヒト血清C反応性タンパク質(hsCRP)の測定、心電図(ECG)、c−ペプチドレベル、抗インスリン抗体、抗ベータ細胞抗体、およびグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)が挙げられる。加えて上記の方法のいずれも、対象が「糖尿病リスク因子の改善」を示したかどうかを評価するために別個にまたは組合せて使用されうる。このような改善としては、制限なく、ボディマス指数(BMI)の低下、血中グルコースレベルの低下、HDLレベルの上昇、収縮期および/または拡張期血圧の低下、インスリンレベルの上昇、あるいはその組合せが挙げられる。
【0085】
経口耐糖能試験(OGTT)は主に、妊娠中に、または疫学研究において血中グルコースレベルが不定であるときに、真性糖尿病または前糖尿病状態の診断に使用される(Definition,Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus and its Complications,Part 1,World Health Organization,1999)。OGTTは、少なくとも3日間の制限されない食事(炭水化物1日当たり150g超)および通常の身体活動後の朝に実施すべきである。試験前の晩には、合理的な(30〜50g)炭水化物を含有する食事を摂取すべきである。試験の前に8〜14時間の一晩絶食を行うべきであり、その間に水は摂取してもよい。空腹時血液サンプルの採取後に、対象は水250〜300mL中の無水グルコース75gまたはグルコース1水和物82.5gを5分間のうちに飲むべきである。小児の場合、試験負荷は体重1kg当たりグルコース1.75gで、グルコース総量は75gである。試験のタイミングは、飲用開始からである。血液サンプルは試験負荷の2時間後に採取する必要がある。先に記載したように、耐糖能障害(IGT)は、WHOのカットオフ点を使用したときの7.5年間での糖尿病への転換の場合、わずか50%の感度で、>10%の偽陽性であると記載されている。比較的高リスクの民族グループですら、他のリスク因子によって別途増強されない限りこのような期間にわたってわずか10%の糖尿病転換率を有するので、このことは試験の臨床有用性にとって重大な問題である;任意抽出の一般母集団において、このような期間にわたる転換率は通例、1年につき5〜6%、または1%未満と概算される。
【0086】
血中のグルコースを測定する他の方法としては、当分野で既知の還元測定法、たとえばこれに限定されるわけではないが、ソモギ−ネルソン法、ヘキソキナーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼを使用する方法、固定化グルコースオキシダーゼ電極、o−トルイジン法、フェリシアニド法およびネオクプロイン自動分析器法が挙げられる。全血グルコース値は通常、正常ヘマトクリット読取値を持つ患者の対応する血漿値よりも約15%低く、動脈値は対応する静脈値よりも約7%高い。インスリンを摂取する対象は、1日のうち所定の時刻における血中グルコースの自己測定によって「血糖プロファイル」を構築することを頻繁に要求される。各食事の前および90分後、そして就寝直前にサンプルを採取する「7点プロファイル」が有用である。
【0087】
糖尿病または前糖尿病状態に罹患している、または糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕している対象は、動脈疾患、高血圧または肥満にも罹患しているか、または動脈疾患、高血圧または肥満を発症するリスクにも瀕していることがある。特に2型糖尿病および動脈疾患は共通のリスク因子を多く有し、これらのリスク因子の多くは相互に高度に相関している。これらのリスク因子間の関係は、少数の生理学的現象、おそらく単一の現象にさえ起因しうる。糖尿病、動脈疾患、高血圧または肥満に罹患している、または糖尿病、動脈疾患、高血圧または肥満を発症するリスクに瀕している対象は、当分野で既知の方法によって識別される。たとえば糖尿病は、空腹時血中グルコースレベルまたはインスリンを測定することによって頻繁に診断される。正常な成人グルコースレベルは60〜126mg/dLである。正常なインスリンレベルは7mU/mL±3mUである。高血圧は、常に140/90以上の血圧によって診断される。動脈疾患のリスクは、コレステロールレベルを測定することによっても診断されうる。たとえば137を超えるLDLコレステロールまたは200を超える総コレステロールは、動脈疾患のリスク向上を示す。肥満はたとえば、ボディマス指数によって診断される。ボディマス指数(BMI)は測定される(kg/m(またはlb/inx704.5))。あるいは胴囲(脂肪分布を推定)、腹囲対臀囲比(脂肪分布を推定)、皮下脂肪厚(複数部位で測定される場合、脂肪分布を推定)、または生体インピーダンス(除脂肪量は脂肪量よりも良好に電流を伝導する(すなわち脂肪量は電流を妨害する)という原理に基づき、脂肪%を推定)が測定される。正常、過体重、または肥満個体のパラメータは次の通りである:体重不足:BMI<18.5;正常:BMI 18.5〜24.9;過体重:BMI=25〜29.9。過体重個体は、胴囲>94cm(男性)または>80cm(女性)および腹囲対臀囲比>0.95(男性)および0.80(女性)を有するとして特徴付けられる。肥満個体は、身長に対する「正常」体重より20%超であるBMI 30〜34.9を有し、体脂肪パーセンテージ>30%(女性)および25%(男性)を有し、胴囲>102cm(40インチ)(男性)または88cm(35インチ)(女性)を有するとして特徴付けられる。重症または病的肥満の個体は、BMI>35を有するとして特徴付けられる。糖尿病と動脈疾患とのの相互関係のために、本発明の個々のDBRISKMARKERおよびDBRISKMARKERパネルの一部または全部が重複するか、または動脈疾患のバイオマーカに含まれることがあり、実際に動脈疾患のリスクの診断に有用でありうる。
【0088】
真性糖尿病または前糖尿病状態のリスク予測は、対象が歴史的コホートに関連して糖尿病または前糖尿病状態を発症する絶対リスクを評価および概算する、リスク予測アルゴリズムおよび算出指数も含みうる。このような予測的数学的アルゴリズムおよび算出指数を使用するリスク評価は、診断試験および治療のガイドライン内にますます含まれるようになり、特に代表的母集団からの多段階層化サンプルから得られ、それにより検証された指数を含む。複数の在来の糖尿病リスク因子が予測モデルに包含される。このようなアルゴリズムの著名な例としては、Framingham Heart Study(Kannel,W.B.,ら、(1976)Am.J.Cardiol.38:46−51)およびFramingham研究の改良、たとえばNCEP/ATPIIIとしても既知であるNational Cholesterol Education Program Expert Panel on Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults(Adult Treatment Panel III)が挙げられ、NCEP/ATPIIIは、真性糖尿病、または前糖尿病状態に罹患している、または真性糖尿病、または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕している対象で一般に見出される動脈疾患を発症するヒトの10年リスクを概算するために、患者の年齢、総コレステロール濃度、HDLコレステロール濃度、喫煙状況、および収縮期血圧を包含する。同じFraminghamアルゴリズムは、真性糖尿病、または前糖尿病状態を発症するリスクを適度に予測することが見出されている。
【0089】
他の糖尿病リスク予測アルゴリズムとしては、制限なく、San Antonio Heart Study(Stern,M.P.ら、(1984)Am.J.Epidemiol.120:834−851;Stern,M.P.ら、(1993)Diabetes 42:706−714;Burke,J.P.ら、(1999)Arch.Intern.Med.159:1450−1456)、Archimedes(Eddy,D.M.and Schlessinger,L.(2003)Diabetes Care 26(11):3093−3101;Eddy,D.M.and Schlessinger,L.(2003)Diabetes Care 26(11):3102−3110)、Finnish−based Diabetes Risk Score(Lindstrom,J.and Tuomilehto,J.(2003)Diabetes Care 26(3):725−731)、およびEly Study(Griffin,S.J.ら、(2000)Diabetes Metab.Res.Rev.16:164−171)が挙げられ、その内容は参照により本明細書に明示的に組み入れられている。
【0090】
Archimedesは、ヒトごとに、目的ごとに疾患状況をシミュレートする数学モデルであり、実際に連続している生物学的詳細事項、たとえば関係する臓器系、50を超える連続的に相互作用する生物学的変数、ならびに糖尿病に一般に関連する主要な症状、試験、治療、および結果を含む。
【0091】
Archimedesは、単一の統合された生理学の中に多くの疾患を同時および相互作用的に含み、共存症、症候群、治療および他の複数の効果などの特徴に対処することを可能にしている。Archimedesモデルは、糖尿病およびその合併症、たとえば冠動脈疾患、うっ血性心不全、および喘息などを含む。該モデルは、オブジェクト指向プログラミングおよび「特徴」と呼ばれるコンストラクトを使用して各種の式で表される。該モデルは、対象の構造(シミュレートされた対象はすべて、臓器、たとえば心臓、肝臓、膵臓、消化管、脂肪、筋肉、腎臓、目、肢、循環系、脳、皮膚、および末梢神経系を有する)、疾患の経過を決定して、実際の身体現象を示す「特徴」(たとえば血漿1デシリットル中のグルコースのミリグラム数、行動的現象、または概念的現象(たとえば疾患の「進行」)、疾患のリスク因子、発生率、および進行、グルコース代謝、徴候および試験、診断、症状、グルコース代謝の健康上の結果、治療、合併症、糖尿病およびその合併症による死、他の原因による死、治療プロセスおよび医療システム資源を含む。該モデルの代表的な利用では、数千名のシミュレートされた対象がおり、それぞれシミュレートされた構造および生理学を備え、シミュレートされた疾患を得て、シミュレートされた医療施設での治療を求めることが可能であり、シミュレートされた施設でシミュレートされた医療従事者に面会して、シミュレートされた試験および治療を受けて、シミュレートされた結果を得るであろう。実際と同様に、シミュレートされた患者はそれぞれ異なっており、異なる特質、生理学、行動、および治療に対する応答を備え、すべて実際に見られる個別の変化に適合するように設計されている。
【0092】
該モデルは、現在の情報によって最も良好に理解されるような、関連する生物学および病理学の非定量的または概念的記述−変数および関係−の開発により構築される。次に変数および関係に関する研究が識別され、通例、当分野の専門家が疾患についての独自の知識の基礎として認識する基礎研究、疫学、および臨床研究を含む。その情報は、変数を関連付ける各種の式を開発するために使用される。Archimedesモデルのいずれかの特定の式の開発は、変数に関して入手可能な情報に最良に適合する形および係数を見出すことを含み、その後に式はオブジェクト指向言語へプログラミングされる。この後にモデルの部分が、最初は1回に1つずつ、次に適切な組合せで、既知の出力を有する入力を使用して試験およびデバッグされる、一連の演習が続く。次にモデル全体を使用して、モデルの個々の部分だけでなく、すべての部分間の連結も実証する複合試験をシミュレートすることができる。Archimedes計算は、分散コンピューティング技法を使用して実施される。Archimedesは、糖尿病およびその合併症に関連する構造、病態生理学、治療および結果の実際的な表現として検証されきた(Eddy,D.M.and Schlessinger,L.(2003)Diabetes Care 26(11)3102−3110)。
【0093】
フィンランドを拠点とする糖尿病リスクスコア(Finnish−based Diabetes Risk Score)は、母集団内の高リスク対象を識別するための、そして改善可能なリスク因子および健康的なライフスタイルへの認識を向上させるためにスクリーニングツールとして設計されている。糖尿病リスクスコアは、ベースラインにて抗糖尿病薬治療を受けていない35〜64歳のフィンランドの男女のランダム母集団サンプルから決定して、10年間追跡した。多変量ロジスティック回帰モデル係数を使用して各変数カテゴリにスコアを割り当てた。糖尿病リスクスコアは、これらの個々のスコアの合計を含み、5年間の前向き追跡調査を伴う1992年に実施された独立母集団調査で検証された。年齢、BMI、胴囲、降圧薬治療および高血中グルコースの履歴、身体活動、果実、液果、または野菜の日常消費が分類変数として選択された。
【0094】
フィンランドを拠点とする糖尿病リスクスコア値は、それらを5つの種類に分類することによってロジスティックモデルの係数から導出された。リスク因子のいずれかの組合せについての10年間の期間にわたる薬物治療糖尿病の概算確率(p)は、次の係数から計算できる:
【0095】
【化1】

式中、βは切片であり、β、βなどは、リスク因子x、xなどの各種の種類の回帰係数を表す。
【0096】
感度は、試験が将来薬物治療糖尿病に罹患する対象に対して陽性である確率に関連しており、特異性は、試験が薬物治療糖尿病でない対象に対して陰性である確率を表す。95%信頼区間(CI)の感度および特異性は、薬物治療糖尿病を発症した対象を発症しなかった対象から区別するときに、各糖尿病リスクスコアレベルについて計算された。ROC曲線は糖尿病リスクスコアについてプロットされ、感度はy軸上にプロットされ、偽陽性率(1−特異性)はx軸上にプロットされた。試験がより精密に識別的であればあるほど、ROC曲線の上昇部分がより鋭くなり、AUCがより高くなり、最適カット点は曲線のピークである。
【0097】
糖尿病リスクスコアにおける将来の薬物治療糖尿病の統計的に有意な独立した前兆は、年齢、BMI、胴囲、降圧薬治療、および高い血中グルコースレベルの履歴である。糖尿病リスクスコアモデルには、これらの統計的に有意な変数のみを含む簡易モデルと、身体活動ならびに果実および野菜消費を含むフルモデルがある。
【0098】
San Antonio Heart Studyは、メキシコ系アメリカ人および非ヒスパニック白人における糖尿病および動脈疾患の長期にわたるコミュニティーを拠点とする前向き観察研究である。試験は当初、メキシコ系アメリカ人3,301名および非ヒスパニック白人男性および非妊婦1,857名を1979〜1988年の2回の時期に登録した。参加者は登録時に25〜64歳であり、テキサス州サンアントニオで低所得、中所得、高所得地区からランダムに選択した。7〜8年間の追跡試験は、試験に当初登録した生存個体の約73%を追跡した。糖尿病の病歴、年齢、性別、民族性、BMI、収縮期および拡張期血圧、空腹時および2時間血漿グルコースレベル、空腹時血清総コレステロール、LDL、およびHDLコレステロールレベルはもちろんのこと、トリグリセリドレベルなどのベースライン特質を収集および評価した。従属変数としての糖尿病新規発症を用いた多変量ロジスティック回帰モデルおよび上述ベースライン特質は、独立変数として利用した。このモデルを使用すると、単変量オッズ比を男性および女性について別個に、そして両方の性別で合せて、潜在的各リスク因子について計算できる。連続的なリスク因子では、オッズ比は1−SD増分について示されうる。両方の性別を合せた多変量予測モデルは、個別に調査したときに統計的に有意なオッズ比を示した変数をモデルに入れることが許容される段階的ロジスティック回帰手順を使用して開発できる。多変量モデルは次に、ROC曲線およびDeLongによって記載されたような(DeLong E.R.ら、(1988)Biometrics 44:837−45)ノンパラメトリックアルゴリズムによって概算されたROC曲線下面積の95%CIによって解析される。San Antonio Heart Studyは、前糖尿病対象がリスク因子のアテローム発生パターン(おそらく肥満、高血糖、および特に高インスリン血症)を有し、それが多年にわたって存在することがあり、臨床的糖尿病自体の期間と同じだけ大血管疾患のリスクの原因となりうることを示している。
【0099】
糖尿病および前糖尿病状態のリスクを評価するために使用されてきた多くの研究およびアルゴリズムにもかかわらず、証拠に基づく多リスク因子評価手法は、無症候性個体またはそうでなければ健常被験者において糖尿病または前糖尿病状態を顕在化させる短期および長期リスクの予測のために、きわめて適度に精密である。このようなリスク予測アルゴリズムは、興味のある母集団内の対象を区別して糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスク層別化を決定するために、本発明のDBRISKMARKERと組合せて好都合に使用されうる。本明細書で開示するDBRISKMARKERおよび使用方法は、無症候性であり、在来のリスク因子を示さない対象を評価、識別、または診断するために、このようなリスク予測アルゴリズムと組合せて使用されうるツールを提供する。
【0100】
リスク予測アルゴリズムから、そして本発明の方法から導出されたデータは、線形回帰によって比較されうる。線形回帰解析は、線形式を観察されたデータに当てはめることによって2つの変数間の関係をモデル化する。1つの変数は説明変数と見なされ、他方は従属変数と見なされる。たとえばArchimedesまたはSan Antonio Heart解析から得た値は、算出されたアルゴリズムスコアに潜在する基礎を成す生物学をさらに十分に定義する目的で、従属変数として使用され、説明変数としての1つ以上のDBRISKMARKERのレベルに対して解析されうる(実施例を参照)。あるいはこのようなリスク予測アルゴリズム、または一般にDBRISKMARKER自体であるその個々の入力は、本発明の常法に直接包含され、組合されたアルゴリズムは、歴史的コホートにおける実際の観察結果と比較される。
【0101】
線形回帰直線はY=a+bXという形の式を有し、式中、Xは説明変数であり、Yは従属変数である。線の傾きはbであり、aは切片(x=0のときのyの値)である。2つの変数の間の関連の数値尺度は、相関係数、すなわちRであり、2つの変数について観察されたデータの関連の強度を示す−1〜1の値である。これはしばしば、「決定係数」、すなわちRとしての、相関係数の2乗としても報告される;この形では、それは直線を適合させることによって説明されるYの全変動の割合である。回帰直線を適合させる最も一般的な方法は、最小2乗法である。この方法は、各データ点から線までの垂直偏差(点が最良適合線上に正確に存在する場合、その垂直偏差は0である)の2乗の合計を最小化することによって、観察されたデータについて最良適合線を計算する。偏差が最初に2乗されて、次に合計されるので、正と負の値の間に相殺はない。
【0102】
データグループについて回帰直線が算出された後に、ラインから離れて位置する(それゆえ大きい残差値を有する)点は異常値として既知である。このような点は誤データとなりうるか、または不適合回帰線を示しうる。点が水平方向で他のデータから離れている場合、それは影響を及ぼす観測値として既知である。この区別の理由は、これらの点が回帰直線の傾きに重大な影響を有しうることである。回帰モデルがデータグループにいったん適合されると、残差(適合直線から観測値までの偏差)の検定によって当業者は、線形関係が存在するという仮定の妥当性を調査できる。x軸上の説明変数に対して残差をy軸上にプロットすることは、変数間の考えられるいずれかの非線形関係を明らかにするか、または当業者に「潜在変数」を調査するように警告しうる。「潜在変数」は、2つの変数間の関係が、モデル化作業に含まれていなかった第3の変数の存在によって著しく影響されるときに存在する。
【0103】
線形回帰解析は特に、対象からのサンプル中のDBRISKMARKERのレベルを、その対象の実際の観測された臨床結果と相関させることに基づいて、あるいはたとえば算出されたArchimedesリスクスコア、San Antonio Heartリスクスコア、または糖尿病または前糖尿病状態の罹患率を診断または予測する他の既知の方法と組合されて、糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを予測するために使用されうる。しかしながら特に有用なのは、糖尿病の既知の予測モデルと対象サンプル中で検出されたDBRISKMARKERのレベルとの間の関係を決定するための非線形式および解析である。特に興味深いのは、構造および構文分類アルゴリズム、ならびにK近傍法、ブースティング、意志決定樹図、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および隠れマルコフモデルなどの確立された技法を含む、パターン認識機能を特徴を利用するリスク指数構築の方法である。最も一般的に使用されるのは、Framingham、Finnish、およびSan Antonio Heartリスクスコアの基礎であるロジスティック回帰を使用する分類アルゴリズムであろう。さらにこのような技法の複数のDBRISKMARKERのパネルへの応用は、複数のDBRISKMARKER入力からの情報を含む単一数値「リスク指数」または「リスクスコア」を生成するためのこのような組合せの使用と同様に、本発明の範囲によって、または範囲内に含まれている。ロジスティック回帰を使用する例は本明細書で実施例に記載されている。
【0104】
因子分析は、多数の相関変数(たとえば糖尿病リスク因子)が、元の変数の分散の大部分を説明する異なる属性を表すより少ない「因子」まで減少されうる数学的技法である(Hanson,R.L.ら、(2002)Diabetes 51:3120−3127)。それゆえ因子分析は、真性糖尿病および前糖尿病状態の成分、たとえばIGT、IFG、およびメタボリックシンドロームを識別するのに大変適している。これらの解析による因子「スコア」の疫学研究は、メタボリックシンドロームの成分と糖尿病の発症との関係をさらに決定しうる。因子分析の基礎を成す前提は、1組の変数で観測された相関が少数の独自の未測定変数、すなわち「因子」によって説明されうるということである。因子分析は2つの手順を含む:1)因子の数を推定するための因子抽出、2)元の変数に関する各因子の構成物を決定するための因子回転。
【0105】
因子抽出は、主成分の方法によって実施されうる。これらの成分は、構築される元の成分の線形組合せであるので、各成分は残りの成分それぞれとゼロの相関を有する。各主成分は、その成分によって説明される元の変数における分散を表す「固有値」と関連付けられる(各元の変数は分散1を有するように標準化される)。構築されうる主成分の数は、元の変数の数と等しい。因子分析では、因子の数は慣習的に、いすれの単一の元の変数よりも全分散のより多くを説明する成分(すなわち>1の固有値を持つ成分)のみの保持によって決定される。
【0106】
因子の数がいったん確定されると、次に元の変数に関して最も節減された解釈を有する因子の組成を決定するための因子回転が実施される。因子回転において、各因子と元の変数との相関を表す「因子負荷量」が変更されるので、これらの因子負荷量はできるだけ0または1に近づけられる(因子によって説明される分散の総量が未変化のままであるという制約を伴う)。因子回転のための多数の方法が開発されており、それらが最後の因子の組に相互に非相関のままであることを要求するかどうか(「直交法」)によって、またはそれらが因子を相関させるかどうか(斜交法)によって区別されうる。因子解析の解釈では、元の変数のどれが各因子の主構成要素を表すかを決定するために、因子負荷量のパターンが調査される。慣習的には、>0.4(または−0.4未満)の因子負荷量を特定の因子と共に有する変数がその主構成要素と見なされる。因子分析は、DBRISKMARKERパネルをその構成要素から構築するのに、そしてマーカの代用可能なグループをグループ化するのに非常に有用でありうる。
【0107】
DBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体の有効量のレベルも、糖尿病または前糖尿病状態の治療の経過が監視できるようにする。本方法では、糖尿病の治療計画、たとえば薬物治療を受けている対象から生体サンプルが供給されうる。このような治療計画としては、これに限定されるわけではないが、運動計画、栄養補充、外科的介入、および糖尿病または前糖尿病状態と診断または同定された対象で使用される治療薬または予防薬による治療が挙げられる。所望ならば生体サンプルは、対象から治療前、治療中、または治療後の各種の時点にて採取される。DBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、および他の検体の有効量のレベルは次に決定されて、基準値、たとえばその糖尿病状況が既知である対象または母集団あるいは指数値またはベースライン値と比較されうる。基準サンプルあるいは指数値またはベースライン値は、治療を受けた1人以上の対象から取得または導出されうるか、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクに瀕している1人以上の対象から取得または導出されうるか、あるいは治療受診の結果として糖尿病リスク因子の改善を示している対象から取得または導出されうる。あるいは基準サンプルあるいは指数値またはベースライン値は、治療を受診していない1人以上の対象から取得または導出されうる。たとえばサンプルは、治療の進展を監視するために、糖尿病または前糖尿病状態の初期治療および糖尿病または前糖尿病状態の次の治療を受診した対象から採取されうる。基準値は、リスク予測アルゴリズムまたは本明細書で開示したような母集団研究による算出指数から導出された値も含みうる。
本発明のDBRISKMARKERはそれゆえ、糖尿病または耐糖能障害などの前糖尿病状態を持たない、そして糖尿病または前糖尿病状態を発症することが予想されない対象の「基準発現プロファイル」を生成するために使用されうる。本明細書で開示するDBRISKMARKERは、糖尿病または耐糖能障害などの前糖尿病状態を有する対象から得た「対象発現プロファイル」を生成するためにも使用されうる。対象発現プロファイルは、糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定するために、疾患の進行はもちろんのこと、疾患の進行速度も監視するために、そして糖尿病または前糖尿病状態治療様式の有効性を監視するために、基準発現プロファイルと比較されうる。本発明の基準および対象発現プロファイルは、これに限定されるわけではないが、特にVCRによって読み取り可能なものなどのアナログテープ、CD−ROM、DVD−ROM、USBフラッシュメディアなどの機械読み取り可能な媒体に含有されうる。このような機械読み取り可能な媒体は、制限なく、収縮期および拡張期血圧、血中グルコースレベル、インスリンレベル、BMI指数、およびコレステロール(LDLおよびHDL)レベルなどの在来の糖尿病リスク因子の測定値などの追加の試験結果も含有しうる。あるいは、または加えて機械読み取り可能な媒体は、病歴およびいずれかの関連する家族暦などの対象情報も含みうる。機械読み取り可能な媒体は、本明細書で開示されているものなどの他の糖尿病リスクアルゴリズムおよび算出指数に関連する情報も含有しうる。
【0108】
対象の遺伝子構造の相違は、糖尿病または前糖尿病状態の症状またはリスク因子を調節しうる各種の薬物を代謝するその相対的能力の相違を生じうる。糖尿病または前糖尿病状態を有する、あるいは糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象は、年齢、民族性、ボディマス指数(BMI)、総コレステロールレベル、血中グルコースレベル、血圧、LDLおよびHDLレベル、ならびに他のパラメータが異なりうる。したがって本明細書で開示したDBRISKMARKERの使用は、選択された対象において試験される推定治療薬または予防薬が対象において糖尿病または前糖尿病状態を治療または予防するのに適するであろうという、所定レベルの予測性を見込んでいる。
【0109】
特定の対象に適切である治療薬または薬物を識別するために、対象からの試験サンプルを治療剤または薬物に暴露させて、DBRISKMARKERタンパク質、核酸、多形、代謝産物、または他の検体の1つ以上のレベルを決定できる。1つ以上のDBRISKMARKERのレベルは、治療あるいは治療剤または薬物への暴露の前後の対象に由来するサンプルと比較可能であるか、あるいはこのような結果または暴露の結果として糖尿病または前糖尿病リスク因子の改善を示した1人以上の対象に由来するサンプルと比較可能である。糖尿病治療で頻繁に使用され、糖尿病の症状またはリスク因子を調節しうるこのような治療薬または薬物の例としては、これに限定されるわけではないが、スルホニル尿素、たとえばグリメピリド、グリブリド(当分野でグリベンクラミドとしても既知)、グリピジド、グリクラジド;ビグアナイド、たとえばメトホルミン;インスリン(エクスベラなどの吸入製剤を含む)、およびインスリンアナログ、たとえばインスリンリスプロ(ヒューマログ)、インスリングラルギン(ランタス)、インスリンデテミル、およびインスリングルリジン;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体−γ(PPAR−γ)アゴニスト、たとえばトログリタゾン(リズリン)、ピオグリタゾン(アクトス)、ロシグリタゾン(アバンディア)、およびイサグリタゾン(ネトグリタゾンとしても既知)を含むチアゾリジンジオン;二重作用性PPARアゴニスト、たとえばBMS−298585およびテサグリタザル;レパグリニドおよびナテグリニドなどのmetglitinideを含むインスリン分泌促進物質;グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)のアナログ、たとえばエクセナチド(AC−2993)およびリラグルチド(インスリノトロピン);ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)の阻害薬、たとえばLAF−237;膵臓リパーゼ阻害薬、たとえばオルリスタット;α−グルコシダーゼ阻害薬、たとえばアカルボース、migitol、およびボグリボース;ならびにその組合せ、特にメトホルミンおよびグリブリド(グルコバンス)、メトホルミンおよびロシグリタゾン(アバンダメット)、ならびにメトホルミンおよびグリピザイド(メタグリップ)が挙げられる。このような治療薬または薬物は、糖尿病または前糖尿病状態と診断された対象に処方されており、糖尿病または前糖尿病状態の症状またはリスク因子を調節しうる。
【0110】
対象サンプルは候補剤の存在下でインキュベートさせることができ、試験サンプル中のDBRISKMARKER発現のパターンは測定されて、基準プロファイル、たとえば糖尿病基準発現プロファイルまたは非糖尿病基準発現プロファイルあるいは指数値またはベースライン値と比較される。試験剤は、いずれかの化合物または組成物あるいはその組合せでありうる。たとえば試験剤は、糖尿病治療計画で頻繁に使用され、本明細書に記載されている。
【0111】
表1は、本発明の260のDBRISKMARKERを含む。当業者は、本明細書で示すDBRISKMARKERが、これに限定されるわけではないが、多形、アイソフォーム、突然変異体、誘導体、核酸を含む前駆体、受容体(溶解性および膜貫通受容体を含む)、リガンド、および翻訳後修飾変異体はもちろんのこと、完全構築構造の構成要素サブユニットとしてのDBRISKMARKERのいずれかより成る多ユニット核酸、タンパク質および糖タンパク質構造も含む、すべての形および変異体を含むことを認識するであろう。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
【表9】

【0121】
【表10】

【0122】
【表11】

【0123】
【表12】

【0124】
【表13】

【0125】
【表14】

【0126】
【表15】

【0127】
【表16】

【0128】
【表17】

【0129】
【表18】

【0130】
【表19】

【0131】
【表20】

【0132】
【表21】

【0133】
【表22】

【0134】
【表23】

当業者は、上に挙げたDBRISKMARKERが、糖尿病に関連付けられることが一般に受け入れられていない多くを含む多様な一連の生理学的および生化学的経路に由来することに注目するであろう。便宜上および解析を容易にするために、開示したDBRISKMARKERの約50の代表的なサブセットを徹底的に調査して、より重要な経路を解明した。図1は、Kyoto University Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)の経路番号および説明を参照した、DBRISKMARKERの生理学的および生化学的経路を示すマトリクスである。これらのKEGGへのデータベース問合せ(および続いてのそのデータベースを更新するための文献調査)は、実施例の部分で詳細に後述するように、完全母集団コホートからの実際のヒト血清サンプルを調査する実験作業と組合された。これは、DBRISKMARKERのこの代表的なグループの発現、翻訳および血清存在のレベルを確認して、正常、前糖尿病、および糖尿病コホートに関するDBRISKMARKERの結果を較正するために実施された。
【0135】
図1において、マトリクスの強調された水平行は、本発明を構成するDBRISKMARKERパネルに対して最も有意なバイオマーカシグナルおよびアルゴリズム寄与物を示す。強調された垂直列は、正常非糖尿病母集団からの前糖尿病、または前糖尿病状態を持つ個体またはコホートの分類についての、最も統計的に有意なDBRISKMARKERによる表示を有する、KEGG経路番号およびその説明を示す。図の下部行の合計カウントは、強調されたDBRISKMARKERのみによる記載を示す。1つまたは別のDBRISKMARKERによる記載された経路の大半にわたる広範な一般表現があったが、経路の異なる濃度は、より有意でないDBRISKMARKERと対比して、統計的により有意なDBRISKMARKERにおいて明らかと思われる。詳細に後述するように、高度に有意なセグメント内でも、異なるDBRISKMARKERのこのようなグループ分けは、疾患の進行のステージまたは速度の異なるシグナルの前兆となりうる。
【0136】
最強のシグナルは、サイトカイン−サイトカイン受容体およびアディポサイトカインシグナル経路、ならびに著しくはJak−STATシグナル経路で濃縮された炎症マーカに由来しており、これはLEP(レプチン)およびHP(ハプトグロビン)を含むマーカのグループにおいて濃縮される。別の重複シグナルも、MAPKおよびインスリンシグナル経路、そして興味深いことに,ILGFBP3(インスリン様成長因子結合タンパク質3)およびVEGFなどのDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERに由来するmTORシグナル経路を含む。このグループは、おそらく内皮および血管変化を示す補体および凝固カスケードならびに造血細胞系統およびトール様受容体経路と共に、ECM−受容体相互作用および細胞接着分子(CAM)経路の重複含有も有し、さらにCD14およびCSFl(M−CSF)によっても表される。VEGFおよびSELE(E−セレクチン)などのDBRISKMARKERを含む最終シグナルは接着点、ECMおよび血管および内皮再構築に関連する他の経路に集中される。前糖尿病リスクの状況に対するこれらの発現の動力学は確認および検証されていないが、このように明確なパターンはDBRISKMARKERからのさらに生物学的に詳細で臨床的に有用なシグナルはもちろんのこと、バイオマーカシグナルを組合せるDBRISKMARKERパネルアルゴリズム内のパターン認識の機会も可能にしうることが考えられる。
【0137】
上の議論は便宜上、DBRISKMARKERのサブセットに集中している;他のDBRISKMARKERおよび上の表に挙げられてないが、これらの生理学的および生化学的経路に関連したバイオマーカでさえ、これらの研究から得られた信号および情報を考慮すれば有用であることが判明しうる。DBRISKMARKERのリスト全体における他の関与物も前糖尿病の関連経路関与物である程度まで、それらはこれまで開示されたバイオマーカの機能的等価物でありうる。DBRISKMARKERが供給されると、それらはこの生物学的プロセスの関与と、また有用な信号雑音比での、および血清などの有用なサンプルマトリクスにおける前記マーカの生物学的利用能などの分析的に重要な特性との両方を含む、良好なバイオマーカのある定義された特質をさらに共有する。このような要件が通例、生物学的KEGG経路の多くのメンバの有用性を制限するのは、このことが一般に当てはまるとは思われず、分泌物質、細胞の原形質膜上で到達可能な物質はもちろんのこと、前糖尿病または糖尿病の疾患進行に関連すると言われていようとなかろうと、アポトーシスのための、あるいは内皮再構築または他の細胞回転または細胞壊死プロセスなどの他の理由での細胞死のときに血清中に放出される物質も構成する経路メンバにおいてのみ頻繁に発生するためである。しかしながらDBRISKMARKERのこの高い基準を満足する残りのおよび将来のバイオマーカは、かなり貴重であると思われる。我々の発明は、上に挙げたDBRISKMARKERのこのような機能的および統計的等価物を含む。さらにこのような追加のDBRISKMARKERの統計的有用性は、マーカ間の相互相関に実質的に依存しており、新しいマーカは基礎を成す生物学の意味を説明するためのパネル内で作用することがしばしば要求されるであろう。
【0138】
図2に示すように、上述の50の代表的なセットの中の多くのDBRISKMARKERは密接に相関しており、相互に(または相互に対して反対方向で)その濃度がこのように上昇または下降するグループにクラスタ化される。このことは既知の、および先に開示された生化学的経路内で新しく有用なDBRISKMARKERへの複数の機会を与えうるが、我々の発明は本明細書によって、記載したバイオマーカの機能的または統計的等価物であるこのように有用なバイオマーカ、およびこのような相関を予測および主張して、本明細書に引用され、本明細書で開示されたDBRISKMARKER濃度は、他の生化学的経路メンバの潜在的同一性と同様に開示されている。
【0139】
図2は、正常からの前糖尿病および糖尿病の対象の診断に有用であるマーカの複数の異なるパターンを示す;マーカの複数の特異的なクラスタが上述のヒトサンプルデータから、そして図において明らかに観察される。先に言及したように、個々のDBRISKMARKERは、異なる経路および生理学的情報を与え、本発明の一態様は、在来のリスク評価技法に勝る性能の改善のために十分な情報を与えるDBRISKMARKERに到達する方法である。図3および4は、色アイコンとして関連経路内でそれぞれ強調された上に挙げる3つ以上の(図3の場合)、またはわずか1または2つの(図4の場合)DBRISKMARKERを持つ、KEGG経路のリストを含む。
【0140】
記載した個々のマーカの多くが単独でそしてDBRISKMARKERの多マーカパネルのメンバとしてでなく使用されるときに、正常、前糖尿病、および糖尿病母集団間のその濃度レベルに統計的に有意な相違をほとんどまたは全く持たず、それゆえこれら3つの状況(正常、前糖尿病、および糖尿病)間でいずれかの患者を分類するのに単独では信頼して使用できないことが以前注目されていた。また先に言及されたように、統計的有意性の一般的な尺度はp値であり、p値は観測結果が相関または因果関係よりも、むしろ偶然によって生じた確率を示す;好ましくはこのようなp値は0.05未満であり、興味のある観測結果が偶然以外によって生じた95%の偶然を表す。図5は、DBRISKMARKER濃度を開示し、確立された一元配置ANOVA(分散分析)統計技法に基づいて、3つの対象母集団すべてにわたって患者サンプル間および患者サンプル内の分散を調査する、50のDBRISKMARKERの我々の代表的なリスト全体についてのこのような統計解析を詳説する。50の調査済みDBRISKMARKERの1つのみ(IL−18)が疾患分類において信頼できる有用性を示す0.05未満のp値を有することが特に注目に値する;多くの場合で、p値は、対象母集団の間または中で観測された濃度分散を説明するのに主な役割を有した無作為偶然の非常に有意な確率を示す。個別に考慮すると、このようなDBRISKMARKERは、糖尿病または前糖尿病の診断には有用性が限られていることが結論付けられる。
【0141】
このような個々のマーカの性能にかかわらず、我々の発明の主題は、本発明の2つ以上のDBRISKMARKERのある特定の組合せも、1つ以上の生理学的および生化学的経路に関与することが既知であるDBRISKMARKERの組合せを含む多マーカパネルとして使用可能であることと、このような情報が組合されて、ロジスティック回帰などの一般に使用されるものを含む各種の統計分類アルゴリズムの使用によって臨床的に有用とされうることである。実際に本発明のさらに詳説された主題は、このようなアルゴリズムが、2型糖尿病への転換のリスクの連続測定値として潜在的に分布するDBRISKMARKERのかなり大規模なグループにわたるその最良臨床分類能力(Rなどの直線適合統計学によって測定されたような)について最適化されたときに、多数の別個の多マーカ成分モチーフおよび組合せの1つを一般に共有することである。これらは、先にアッセイしたDBRISKMARKERの代表的なグループ内だけに、マーカレプチン(LEP)を取り巻くグループ化を取り巻く強い有意性を、そして特に制限なく、上記マーカそれぞれの2つ以上の各種サブセット、およびこれらのセットと追加のマーカとの組合せを含む、レプチン、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)、およびレジスチン(RETN)の各種の順列および成分組合せを含む。レプチンおよびパートナーマーカのその支持クラスタを使用する方法に対する代わりの一般的な方法は、TNFR1およびCD26の、通例共にクラスタとしての、しかし単独で、または他のマーカとのいずれかでの使用を含む(レプチンおよび3つ以上のDBRISKMARKERのパネル内の他の個々に言及したマーカのファミリのいずれかの使用と共に含む)。第3の、LEPの方法よりも一般に性能が低い方法は、炎症のより一般化されたマーカ、たとえば開示されたその他の中でもC反応性タンパク質(CRP)、最終糖化産物受容体(RAGE、現在AGER)、および一般のサイトカイン、アディポサイトカイン、ならびに補体および凝固カスケードメンバ、たとえばIL−18、アディポネクチン(ADIPOQ)、アディプシン(aka補体因子またはCFD)、およびPAI−1(セルピン1)を、多数でまたは他のより特異的性のDBRISKMARKERと組合せて使用することである。
【0142】
あまり特異性でなくより、低い性能のバイオマーカを組合せて前糖尿病を診断するための新規でより有用な組合せとする方法の一般的な概念が、本発明の主題および主要な態様である。例証的な例、図6は、各マーカを単独で示す上2つのパネルにレプチンおよびハプトグロビンに対する個々のマーカの性能を示している。左下のパネルには、簡単な臨床分類で共に組合せて使用された2つの試験が示されており、ここで試験された対象は、どちらかのマーカが個々のROC定義臨床カットオフレベル(前のパネルで使用されたもの)を超える場合に、疾患に関して陽性パネル試験と見なされる。この種の「AまたはBのどちらか」ルールは、医学では非常に一般的である;たとえば3つの総コレステロール、HDLまたはトリグリセライド測定値のいずれか1つがその試験でのある個々のカットオフを超えている場合、患者は脂質異常症と見なされる。
【0143】
左下パネルが示すように、試験の間その感度は維持されている(より大規模な患者コホートは改善を示しうるが、レプチンは優れた開始性能を有しており、1つの偽陰性のみが残存している)。しかしながら特異性は、要求されたより多数の偽陰性のために、どちらのマーカ単独よりも低いレベルまで劇的に下降した(レプチン単独の29またはハプトグロビン単独の45に対して、共にでは58)。より通例には、2つのマーカがこのように共に使用されるときに、特異性の低下を犠牲にした感度の改善が予想される。
【0144】
対照的に右下パネルでは、同じ2つのマーカが標準ロジスティック回帰アルゴリズムを使用して組合されるときに共に試験される。この計画では、感度は維持されたままであるが、特異性はどちらかのマーカが単独で可能であるよりも高いレベルまで上昇した。ロジスティックアルゴリズム計画は、次のROC曲線におけるすべてのカットオフで示され、単独のどちらのマーカよりも高いAUCを有する(あいにく再び疾患コホートの小規模なサンプルサイズのために、このAUCの差は、統計的有意性をあまり生じない;しかしながら先の分類分析より、組合せが優れた試験であり、偽陽性率および偽陰性率が低いことが明らかである))。
【0145】
この例は、複数の概念を示した。第1は、適正な数学および臨床アルゴリズムが使用されるときには、複数のマーカが個々の成分よりも良好な性能を生じうることである;このことは感度および特異性の両方でしばしば明らかであり、より大きいAUCを生じる。第2の主要な概念は、特異性の新しいアルゴリズム組合せレベルを達成するために必要であったように、既存のマーカにはしばしば新規の認知されていない情報が存在することである。最後の概念は、例における、わずかに感度が62.5%および特異性が41.5%であるハプトグロビンがそうであったように、この隠れた情報が一般にそれ自体で最適以下の臨床性能を有すると見なされているマーカでも当てはまることであり、アルゴリズムを用いて2つのマーカを共に試験する前には明らかでなかった結論である。実際に、個々の試験における高い偽陽性率に関する最適以下の性能はおそらく、ある重要な追加情報−第2のマーカとの組合せおよび数学アルゴリズムがなければ解明されない情報が試験結果内に含有されるという指標でありうる。図6の例は、実際の患者のマーカデータおよび算出した糖尿病リスク結果を使用して示す。
【0146】
図7は、多マーカ手法の相乗効果ならびにしばしば予見できない利点および影響のさらなる例証である。それは、単独で、あるいは1つまたは複数の他のマーカとさえ使用されたときに貴重であり重度に重み付けされた決定因子として認識されるマーカが、追加のバイオマーカの形での新たな情報の追加によってその寄与において著しく変化しうることを証明している。このグラフは、2〜48番目のマーカが添加されるときの、第1マーカのロジスティック回帰係数(またはマーカ負荷量)の変化を示す。それはマーカの重み付けが、再度最適化されたアルゴリズムに対するあるマーカおよびさらなる情報の供給によって変化したことを示す。これは再度、50のグループから最良の追加マーカを探索する検索アルゴリズムを使用して各工程においてアルゴリズムに追加して、各追加マーカによってアルゴリズム出力または臨床指数測定を改善することによって、本発明者らが本明細書で開示した多マーカ手法のいくつかを開発した方法の実際の例を使用している。図8は、すべての考えられる残りの追加を各所与のパネルサイズのパネルと比較する「前向き選択」を利用し、次に性能が最高に改善されたものを選択する、複数のDBRISKMARKERの段階的な追加によって、算出された基準糖尿病予想転換率曲線に対してRによって測定されたように、各DBRISKMARKER追加における同じ改善されたその同じ性能を示す。
【0147】
このような前向き選択技法の欠点は、非段階的解決策の可能性であり、そこでは相乗的方法は、寄与のままである各既存のマーカ(記載したように、ベータ係数は変化する)を再評価するために、そして現在のパネルサイズを得るために講じられた旧来の工程によって覆い隠されうるこのような相乗効果について試験するために、「後向き工程」を試験することによっても得ることができる。この前向きおよび後向き技法は、より多くのマーカの追加の複雑さがさらなるマーカ追加への増分利得を超えるときに、「段階的」検索アルゴリズムと一般に呼ばれる検索技法に従って、バランス因子供給入力と組合されうる。図8のRグラフより、追加のマーカへの戻りは、各工程が最適な方法で講じられる場合に経時的に減少することが明らかである−最終的に、アルゴリズムに供給されるさらなる関連臨床情報はまさになく、追加のマーカは主に複雑さおよび冗長情報をもたらして、アルゴリズムの有用性および信頼性を低下させる。
【0148】
複数の技法を使用して、各工程にて最適DBRISKMARKER追加を構築する、このような最良マーカ追加アルゴリズムを生成できる。図9は、コンピュータの能力の向上を考えると、ますます可能であるが、あるサイズおよび複雑さに関する問題のために通例は利用されない、非段階的技法−可能性すべての列挙全体の図である。グラフは、x、y、および軸のそれぞれにおける全マーカのリストと共に3次元立方体を示している。マーカの組合せは、ベース立方体の内側にある内部立方体によって示されている;対話式ユーザインタフェースが、観測者にアルゴリズムを特定のメンバまたは性能のレベルによって強調させる。描かれた立方体は、切片、係数およびRがそれぞれ算出された約60のDBRISKMARKERの考えられるすべての組合せを含む、合計200000超の個々のロジスティック回帰計算を表す。立方体内に懸垂された「ロッド」は、1つ以上の第2マーカパートナーに対して、その第3パートナーとは無関係に平均アルゴリズム性能よりはるかに高い性能を有し、それゆえ立方体を通じて直線を描く高寄与マーカ、たとえばレプチン、TNFR1、およびCD26を表す。最良のDBRISKMARKERを選択するための機構を含む、本発明の固有の部分であるこのような技法は、完全な傾向が−より大きなパネルで継続され、最終的にマーカ相互関係および生物学へのより深い洞察を可能にしうる傾向が確率の空間全体で見られるようにして、DBRISKMARKERパネル構築におけるより高い有効性を許容する、追加の利点を有する。
【0149】
図10は、図9で先に示した考えられる3つのマーカの組合せのセット全体でのR性能尺度の分布を示すヒストグラムである。明らかに、パネル構築で使用した技法とは無関係に、高性能アルゴリズムの比較的ごく少数の分割がある。
【0150】
因子およびクロスマーカ相関/共分散分析などの他の統計ツールは、パネル構築へのより合理的な手法を可能にする。図11は、図1および2に示したようなDBRISKMARKER間のユークリッド標準化距離を示す数学的クラスタリングおよび分類ツリーである。このようなグルーピングは理想的な前糖尿病アルゴリズムに関する生物学および所望の情報内容標的への直接の洞察を与える、または与えないが、それは同じ情報内容を持つマーカの収集をグループ化するための因子分析の方法の結果である(一般に利用されるさらなる統計技法については下の実施例を参照)。
【0151】
図12は、DBRISKMARKERパネルの各種の種類を構築するのに有用である、主要個別マーカおよび主要組合せマーカの2つの主要なクラスにそれらを分類する、選択されたDBRISKMARKERの表を示す。上記のように、個々のDBRISKMARKERのパネルでの位置は、アルゴリズムの増分情報内容のその準備に密接に相関しているので、寄与順序はパネル内の他の構成要素DBRISKMARKERに大きく依存する。
【0152】
DBRISKMARKERパネルは、一連の個々のDBRISKMARKER成分より成る。50の代表的なDBRISKMARKERを使用する我々の研究では、DBRISKMARKERパネルでの高い性能を達成するために、独立して、またはより大きなパネルが所望されるときには組合されて使用されうる、3つの核となるマーカ手法がある:我々が図11の主要個別マーカ手法と呼ぶ第1は最初に、Rへの最高の個別寄与を備えた核となるマーカとしてレプチンに集中して、ハプトグロビン、ILGFBP、レジスチン、MMP2、ACE、COMPC4、およびCD14などの他の主要個別マーカ位置のランク順序で継続する。この手法との置換が可能であるが、複数の前向き検索アルゴリズムは下に示す核となるマーカの順序を、前糖尿病の正常からの診断のための代表的母集団でのRへの高い相対寄与として証明および確認した。一般に、より小規模なパネルでは、8つのマーカ位置それぞれが占有されているときに最高性能レベルを持つ、主要個別マーカで挙げた核となるマーカから、より高性能のパネルが一般に最初に選択される。マーカ位置1(レプチン)などの早期の位置は通例、最高寄与の可能性を有する。
【0153】
第2の代わりの手法は、我々が図11で主要組合せマーカとして定義したものを使用してDBRISKMARKERパネルの構築を開始することであり、主要組合せマーカは、主にセットで、最も詳細にはTNFR1−CD26対形成でのその密接な相互作用によって、しかし主要個別マーカがDBRISKMARKERパネル全体の高い性能になお到達する一般的な置換方法として識別される、主要個別マーカの各種のメンバの対形成および支持によっても高い性能を達成する。実際にグループとして、主要組合せマーカでの主要個別マーカの一部の置換は、特に主要マーカ置換がすでに行われているときに、またはパネルサイズが核となる8つの主要マーカ位置を超えているときに、あるサイズを超えるパネルには有利である。
【0154】
主要組合せマーカは、設定された階層順序またはTNFR1およびCD26の、そして他のメンバのいくつかと主要個別マーカ、特にE−セレクチン、MCSF、およびVEGFとの一般的な事前(upfront)対形成を超える順序を持たない。主要組合せマーカはしばしば、DBRISKMARKERパネル構築手法の後のほうで追加される、そのときに因子および情報冗長性が最適なDBRISKMARKERパネルへの複数の統計的に同様な高性能解決策を可能にする。
【0155】
最後の第3の手法は、CRP、RAGE、IL−18、アディポネクチン、アクチビン_A、およびアディプシンを含む、さらに一般化された炎症サイトカイン、アディポカインおよび凝固マーカのグループ内で作用するものである。これが主要個別または主要組合せマーカで開始する手法のための一般的な補助方法であるのは、これらの多能性マーカ(たとえば特にCRPおよびRAGE)の一部のより一般化された幅広い情報内容が情報冗長性を生成することなく多くの各種パネル組合せに添加されるようにするためである。
【0156】
上の一般的技法を使用する特定のDBRISKMARKERパネル構築の例も、マーカパネル構築の我々の技法の、あるいは代わりのDBRISKMARKERまたはまた同じ構成生理学的および生化学的経路に関与する機能的に同等のクラスからのバイオマーカの適用性の制限なく、本明細書で開示される。
【0157】
【表24】

図12は、本明細書に開示した方法に従って位置カテゴリから選択した3つのDBRISKMARKERを使用する、25の高性能DBRISKMARKERパネルのリストを示す。前記パネルを使用するロジスティック回帰アルゴリズムは、記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときに、0.300〜0.329の範囲にわたるR^2値を算出した。
【0158】
図13は、AICフィードバックループを用いた後向き探求アルゴリズムを使用して組立てたマーカの基本セットからの単一マーカ置換(下の方法を参照)を使用した、本明細書で開示した方法による位置カテゴリから選択した8つのDBRISKMARKERを使用する、25の高性能DBRISKMARKERパネルのリストである。前記パネルを使用するロジスティック回帰アルゴリズムは、記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときに、0.310〜0.475の範囲にわたるR値を算出した。
【0159】
図14は、AICフィードバックループを用いた後向き探求アルゴリズムを使用して先に組立てたマーカの開始セットからの3つのオプションによる単一マーカ置換(下の方法を参照)を使用した、本明細書で開示した方法による位置カテゴリから選択した18のDBRISKMARKERを使用する、55の高性能DBRISKMARKERパネルのリストである。前記パネルを使用するロジスティック回帰アルゴリズムは、記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときに、0.523〜0.6105の範囲にわたるR値を算出した。
【0160】
DBRISKMARKERのレベルは、当分野で既知のいずれがの方法を使用してタンパク質または核酸レベルで決定できる。たとえば核酸レベルでは、ノザンおよびサザンハイブリダイゼーション分析はもちろんのこと、これらの配列の1つ以上を特異的に認識するプローブを使用するリボヌクレアーゼ保護アッセイも遺伝子発現を決定するために使用できる。あるいは発現は、たとえば遺伝子の差次的発現配列に特異的なプライマーを使用する逆転写ベースPCRアッセイ(RT−PCR)を使用して測定されうる。発現は、たとえば本明細書に記載する遺伝子産物によってコードされるペプチドのレベル、またはその活性を測定することによってタンパク質レベルで決定されうる。このような方法は当業者に周知であり、たとえば遺伝子、アプタマーまたは分子インプリントによってコードされたタンパク質に対する抗体をベースとするイムノアッセイを含む。いずれの生体物質もタンパク質またはその活性の検出/定量化に使用されうる。あるいは分析された各タンパク質の活性に従って、マーカ遺伝子によってコードされたタンパク質の活性を決定するための適切な方法が選択されうる。
【0161】
DBRISKMARKERタンパク質、ポリペプチド、その突然変異、および多形は、いずれかの適切な方法で検出されうるが、通例は対象からのサンプルにDBRISKMARKERタンパク質、ポリペプチド、突然変異、および多形に結合する抗体を接触させて、次に反応生成物の存在または非存在を検出することによって検出されうる。抗体は、上で詳細に議論したように、モノクローナル、ポリクローナル、キメラまたは上記の断片であり、反応生成物を検出する工程はいずれの適切なイムノアッセイによっても実施されうる。対象からのサンプルは通例、上記のような生体液であり、上記の方法を実施するのに使用した生体液の同じサンプルでもよい。
【0162】
本発明に従って実施されるイムノアッセイは、同種アッセイまたは異種アッセイでもよい。同種アッセイでは、免疫反応は通常、特異性抗体(たとえば抗DBRISKMARKERタンパク質抗体)、標識検体、および興味のあるサンプルを含む。標識から生じるシグナルは、抗体の標識検体への結合時に直接または間接的に修飾される。免疫反応およびその程度の検出はどちらも均質溶液中で実施されうる。利用されうる免疫化学標識としては、フリーラジカル、放射性同位体、蛍光染料、酵素、バクテリオファージ、または補酵素が挙げられる。
【0163】
異種アッセイ手法では、試薬は通例サンプル、抗体、および検出可能なシグナルを生成する手段である。上記のようなサンプルが使用されうる。抗体は、支持体、たとえばビーズ(たとえばタンパク質Aおよびタンパク質Gアガロースビーズ)、プレートまたはスライドに固定されて、抗体を含有することが疑われる試料と液相中で接触されうる。支持体を次に液相から分離して、支持相または液相のどちらかを検出可能なシグナルについてこのようなシグナルを生成する手段を使用して検査する。シグナルはサンプル中の検体の存在に関連付けられる。検出可能な信号を生成する手段としては、放射性標識、蛍光標識、または蛍光標識の使用が挙げられる。たとえば検出される抗体が第2結合部位を含有する場合、その部位に結合する抗体は検出可能な基にコンジュゲートされて、分離工程の前に液相反応溶液に添加されうる。固体支持体での検出可能な基の存在は、試験サンプル中の抗原の存在を示す。適切なイムノアッセイの例は、オリゴヌクレオチド、免疫ブロッティング、免疫蛍光法、化学発光法、電気化学発光または酵素結合イムノアッセイである。
【0164】
当業者は、本明細書で開示した方法を実施するのに有用でありうる多数の特異的イムノアッセイ形式およびその変形に精通するであろう。一般にE.Maggio,Enzyme−Immunoassay,(1980)(CRC Press,Inc.,Boca Raton,FIa.)を参照;また“Methods for Modulating Ligand−Receptor Interactions and their Application”という名称のSkoldらへのU.S.Pat.No.4,727,022、“Immunoassay of Antigens”という名称のForrestらへのU.S.Pat.No.4,659,678、“Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies”という名称のDavidらへのU.S.Pat.No.4,376,110、“Macromolecular Environment Control in Specific Receptor Assays”という名称のLitmanらへのU.S.Pat.No.4,275,149、“Reagents and Method Employing Channeling”という名称のMaggioらへのU.S.Pat.No.4,233,402、“Heterogenous Specific Binding Assay Employing a Coenzyme as Label”という名称のBoguslaskiらへのU.S.Pat.No.4,230,767も参照。
【0165】
抗体は、既知の技法、たとえば受動的結合に従って、診断アッセイに適切な固体支持体(たとえばタンパク質Aまたはタンパク質Gなどのビーズ、ミクロスフェア、プレート、スライドあるいはラテックスまたはポリスチレンなどの材料から形成されたウェル)にコンジュゲートされうる。本明細書に記載する抗体は、既知の技法に従って同様に、検出可能な標識または基、たとえば放射性標識(たとえば35S、125I、131I)、酵素レベル(たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(たとえばフルオレセイン、アレクサ、緑色蛍光タンパク質)にコンジュゲートされうる。
【0166】
抗体は、DBRISKMARKERタンパク質、ポリペプチド、突然変異、および多形の翻訳後修飾、たとえばチロシンホスホリル化、トレオニンホスホリル化、セリンホスホリル化、グリコシル化(たとえばO−GlcNAc)を検出するのにも有用でありうる。このような抗体は、興味のある1つまたは複数のタンパク質中のホスホリル化アミノ酸を特異的に検出して、本明細書で記載する免疫ブロッティング、免疫蛍光法、およびELISAアッセイで使用されうる。これらの抗体は当業者に周知であり、市販されている。翻訳後修飾は、リフレクタマトリクス支援レーザ脱離イオン化飛行時間質量分析(MALDI−TOF)で準安定イオンを使用しても決定されうる(Wirth,U.ら、(2002)Proteomics 2(10):1445−51)。
【0167】
酵素活性を有することが既知であるDBRISKMARKERタンパク質、ポリペプチド、突然変異、および多形では、活性は当分野で既知の酵素アッセイを使用して試験管内で決定されうる。このようなアッセイとしては制限なく、他の多くのアッセイの中でキナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、レダクターゼアッセイが挙げられる。酵素活性の動力学の調節は、既知のアルゴリズム、たとえばヒルプロット、ミカエリスメンテン式、線形回帰プロット、たとえばラインウィーバー・バーク解析、およびスキャッチャードプロットを使用して速度定数Kを測定することによって判定できる。
【0168】
DBRISKMARKERのデータベースエントリによって与えられる配列情報を使用して、DBRISKMARKER配列の発現は(存在する場合に)、当業者に周知の技法を使用して検出および測定される。たとえばDBRISKMARKER配列に一致する配列データベースエントリ内の、または本明細書で開示した配列内の配列を使用して、たとえばノザンブロットハイブリダイゼーション解析または特異的核酸配列を特異的および好ましくは定量的に増幅する方法において、DBRISKMARKER RNA配列を検出するためのプローブを構築できる。別の例として、配列を使用して、たとえば逆転写ベースのポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)などの増幅ベース検出方法においてDBRISKMARKER配列を特異的に増幅するためのプライマーを構築できる。遺伝子配列の改変が遺伝子増幅、欠失、多形、および突然変異に関連付けられるとき、試験および基準細胞母集団内の調査されたDNA配列の相対量を比較することによって、試験および基準母集団における配列比較を行うことができる。
【0169】
本明細書で開示した遺伝子の発現は、当分野で既知のいずれかの方法を使用してRNAレベルで測定されうる。たとえばこれらの配列の1つ以上を特異的に認識するプローブを使用するノザンハイブリダイゼーション解析を使用して、遺伝子発現を判定できる。あるいは発現は、たとえば差次的発現配列に特異的なプライマーを使用する逆転写ベースPCRアッセイ(RT−PCR)を使用して測定されうる。
【0170】
あるいはDBRISKMARKERタンパク質および核酸代謝産物が測定されうる。「代謝産物」という用語は、代謝産物のいずれかの化学または生化学生成物、たとえば生体分子(たとえばタンパク質、核酸、炭水化物、または脂質)の処理、開裂または消費によって生成されたいずれかの化合物を含む。代謝産物は、屈折率分光法(RI)、紫外線分光法(UV)、蛍光分析、放射化学分析、近赤外分光法(近IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、光散乱分析(LS)、質量分析、熱分解質量分析、比濁法、分散ラマン分光法、質量分析と組合されたガスクロマトグラフィー、質量分析と組合された液体クロマトグラフィー、質量分析と組合された飛行時間型マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI−TOF)、質量分析と組合されたイオンスプレー分光法、キャピラリー電気泳動、NMRおよびIR検出を含む、当業者に既知の各種方法で検出されうる。(WO04/056456およびWO04/088309を参照、そのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられている)。この点で他のDBRISKMARKER検体は、上述の検出方法、または当業者に既知の他の方法を使用して測定されうる。
キット
本発明は、DBRISKMARKER核酸またはDBRISKMARKER核酸にコードされたタンパク質に対する抗体の一部に対して相補性である相同核酸配列、たとえばオリゴヌクレオチド核酸がキットの形で共に包装されることによる、DBRISKMARKER検出試薬、たとえば1つ以上のDBRISKMARKER核酸を特異的に同定する核酸も含む。オリゴヌクレオチドは、DBRISKMARKER遺伝子の断片でありうる。たとえばオリゴヌクレオチドは、長さが200、150、100、50、25、10の、またはそれ以下のヌクレオチドでありうる。キットは個別の容器内に核酸または抗体(固体マトリクスにすでに結合されているか、またはそれらをマトリクスに結合するための試薬と共に個別に包装されているかのどちらかである)、対照調合物(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識を含有する。アッセイを実施するための説明書(たとえば書面、テープ、VCR、CD−ROMなど)がキットに含まれうる。アッセイはたとえば、当分野で既知のようなノザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAの形でありうる。
【0171】
たとえばDBRISKMARKER検出試薬は、少なくとも1個のDBRISKMARKER検出部位を形成するために多孔性ストリップなどの固体マトリクスに固定化されうる。多孔性ストリップの測定または検出領域は、核酸を含有する複数の部位を含みうる。試験ストリップは、陰性および/または陽性対照の部位も含有しうる。あるいは対照部位は試験ストリップとは別のストリップに位置しうる。場合により各種の検出部位は、異なる量の、たとえば第1検出部位より多い量の、そして次の部位より少ない量の固定化酢酸を含有しうる。試験サンプルの添加時に、検出可能なシグナルを提示する多数の部位がサンプル中に存在するDBRISKMARKERの量の定量的表示を与える。検出部位はいずれかの適切に検出可能な形状で構成され、通例は試験ストリップの幅におよぶ棒または点の形状である。
【0172】
あるいはキットは、1つ以上の核酸配列を含む核酸基質アレイを含有する。アレイ上の核酸は、DBRISKMARKER 1〜260で表される1つ以上の核酸配列を特異的に同定する。各種の実施形態において、DBRISKMARKER 1〜260で表される2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、50、100、125、150、175、200、210、220、230、240またはそれ以上の配列は、アレイへの結合のために同定されうる。基質アレイはたとえば固体基質上に、たとえばU.S.Patent No.5,744,305に記載されている「チップ」上にありうる。あるいは基質アレイは、液体アレイ、たとえばxMAP(Luminex,Austin,TX)、Cyvera(Illumina,San Diego,CA)、CellCard(Vitra Bioscience,Mountain View,CA)およびQuantum Dots’Mosaic(Invitrogen,Carlsbad,CA)でありうる。
【0173】
当業者は、表1のDBRISKMARKERのいずれに対しても、抗体、核酸プローブ、たとえばオリオヌクレオチド、アプタマー、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドを日常的に作製できる。
【実施例】
【0174】
(実施例1)
タンパク質バイオマーカパネルは、96名の正常者、前糖尿病者、および糖尿病者のグループに由来するヒト血清サンプル中の64のタンパク質を分析することによって決定した。
原試薬:アッセイ開発のための開始点として免疫試薬を調達するために使用した大規模および多様な一連の販売元は、たとえばこれに限定されるわけではないが、Abazyme、Abnova、Affinity Biologicals、AntibodyShop、Biogenesis、Biosense Laboratories、Calbiochem、Cell Sciences、Chemicon International、Chemokine、Clontech、Cytolab、DAKO、Diagnostic BioSystems、eBioscience、Endocrine Technologies、Enzo Biochem、Eurogentec、Fusion Antibodies、Genesis Biotech、GloboZymes、Haematologic Technologies、Immunodetect、Immunodiagnostik、Immunometrics、Immunostar、Immunovision、Biogenex、Invitrogen、Jackson ImmunoResearch Laboratory、KMI Diagnostics、Koma Biotech、LabFrontier Life Science Institute、Lee Laboratories、Lifescreen、Maine Biotechnology Services、Mediclone、MicroPharm Ltd.、ModiQuest、Molecular Innovations、Molecular Probes、Neoclone、Neuromics、New England Biolabs、Novocastra、Novus Biologicals、Oncogene Research Products、Orbigen、Oxford Biotechnology、Panvera、PerkinElmer Life Sciences、Pharmingen、Phoenix Pharmaceuticals、Pierce Chemical Company、Polymun Scientific、Polysiences,Inc.、Promega Corporation、Proteogenix、Protos Immunoresearch、QED Biosciences,Inc.、R&D Systems、Repligen、Research Diagnostics、Roboscreen、Santa Cruz Biotechnology、Seikagaku America、Serological Corporation、Serotec、SigmaAldrich、StemCell Technologies、Synaptic Systems GmbH、Technopharm、Terra Nova Biotechnology、TiterMax、Trillium Diagnostics、Upstate Biotechnology、US Biological、Vector Laboratories、Wako Pure Chemical Industries、およびZeptometrix。捕獲抗体、検出抗体、および検体の検索は、作用サンドイッチイムノアッセイを構築するために実施した。試薬を注文して在庫品に収容した。
【0175】
イムノアッセイは3つの工程:プロトタイピング、検証、およびキット発表で開発した:プロトタイピングは、アッセイで使用する2つの抗体が異なる宿主種によるときは、標準ELISA形式を使用して実施した。標準条件下で、ホースラディッシュペルオキシダーゼとコンジュゲートされた抗宿主2次抗体を標準曲線で評価した。良好な標準曲線が検出された場合、アッセイを次の工程に進める。同じ宿主抗体を有するアッセイは次の工程(たとえばマウス・モノクローナル・サンドイッチ・アッセイ)に直接進んだ。
【0176】
作用アッセイの検証は、Singulex,Inc.(St.Louis,MO)によるZeptosense検出プラットフォームを使用して実施した。検出抗体は最初に蛍光染料Alexa 647にコンジュゲートさせた。コンジュゲーションは、たとえばメーカに従って標準NHSエステル化学を使用した。いったん抗体が標識したらと、標準条件を使用してアッセイをサンドイッチアッセイ形式で試験した。各アッセイウェルは変性緩衝液で可溶化させて、物質をZeptosenseプラットフォームで読み取った。
【0177】
図1は、作用標準曲線の代表的な結果を示す。作用標準曲線がいったん示されたら、アッセイを通例24の血清サンプルに行って、臨床サンプルでの標的検体の正規分布を決定した。アッセイの線形動的範囲内のバイオマーカを測定するために必要な血清量を決定して、アッセイをキット放出に進める。最初の39回の検証アッセイでは、平均でウェル当たり0.004マイクロリットルを使用した。
【0178】
メーカ、カタログ番号、ロット番号、ストックおよび作用濃度、ならびに血清要求量を含むキットの各構成要素は、各バイオマーカアッセイの標準操作手順にまとめた。このキットは次に臨床サンプルへの使用のために放出した。
【0179】
サンプルを複数の供給源から採取した。すべての場合で、Sternら(2002)が開発したモデルを使用してリスク因子を算出するために十分な臨床アノテーションを入手できた。通例、次の最小限の臨床アノテーション:採取日、年齢、性別、身長、体重、胴囲、BMI、民族性、家族暦、拡張期および収縮期血圧、空腹時グルコースレベル、コレステロールを各研究から入手できた。サンプルは標準プロトコルを使用して採取し、採取時から−80℃で貯蔵した。
【0180】
臨床サンプルはドライアイスで凍結されて到着して、各サンプルを−80℃で貯蔵した。各サンプルは通例、それと関連付けられた多くの臨床アノテーションを有していた。各サンプルセットと関連付けられた臨床アノテーションは、インポート前に標準化命名法に持ち込んだ。各サンプルに関連した臨床アノテーションはすべて、次にリレーショナルデータベースにインポートした。
【0181】
臨床サンプルの凍結部分標本を解凍して、実験室での使用のために等分した。各臨床サンプルを氷上で解凍して、部分標本をバーコード付き試験管(娘試験管)に分配した。各娘試験管をイムノアッセイに必要になるまで−80℃で貯蔵した。娘試験管を次にサンプルプレートに配置した。アッセイされる各バーコード付き娘試験管は、バーコード付き96または384ウェルプレート(サンプルプレート)に配置した。娘試験管のサンプルプレートウェルに対するマッピングをリレーショナルデータベースによって追跡した。
【0182】
各サンプルプレートをイムノアッセイ分析用に準備した。384ウェルバーコード付きアッセイプレートは、プレート当たり1つのバイオマーカの専用であった。各アッセイに必要な血清の量に応じて、通例、各サンプルプレートから4〜12個のアッセイプレートを得た。サンプルプレートに一連の希釈を受けさせて、臨床サンプルが各イミノアッセイにとって適切な希釈物であるようにした。臨床サンプルを次に、各マーカについて3つずつアッセイプレートに入れた。再度、各サンプルプレートウェルのアッセイプレートウェルに対する追跡をリレーショナルデータベースで追跡した。次にアッセイは標準イムノアッセイ手順を使用して処理して、アッセイプレートをZeptosense装置で読み取った。各回には約384個の臨床サンプルでの単一バイオマーカのデータが含まれていた。得られたデータファイルを次にインポートによってリレーショナルデータベースに戻し、そこで標準曲線を算出して、各サンプルの各バイオマーカの濃度値を算出した。図2は、25のバイオマーカについて92のサンプルでの単一分子検出データを示す。
【0183】
各臨床サンプルに割り当てられたバイオマーカ値は、元の臨床アノテーションに再度関連付けた。定量的バイオマーカデータを各サンプルに関連した臨床アノテーションに相関させた。7.5年にわたる糖尿病リスクは、Sternら(2002)が開発したモデルを使用して算出した。臨床モデルはロジスティック式の形である
p=1/(l+e−χ
式中、χ=−13.415+0.028(年齢)+0.661(性別)+0.412(MA)+0.079(FG)+0.018(SBP)−0.039(HDL)+0.070(BMI)+0.481(家族暦)。
【0184】
本式では、p=7.5年間の追跡期間にわたって糖尿病を発症する確立;年齢は年である;性別=女性の場合、1、男性の場合、0;MA=メキシコ系アメリカ人の場合、1、非ヒスパニック白人の場合、0;FG=空腹時グルコース(mg/dL);SBP=収縮期血圧(mmHg);HDL=高密度リポタンパク質コレステロールレベル(mg/dL);BMI=ボディマス指数(kg/m);および家族暦=少なくとも1名の親または同胞が糖尿病を有する場合、1、そうでない場合、0(Sternら2002)。
【0185】
コホート患者サンプルでリスクを概算するために、これらのパラメータに次の修正を行った。第1に、アフリカ系アメリカ人およびヒスパニックはメキシコ系アメリカ人と共に高リスクグループに含め、高血圧の診断を受けた患者はSBP=150を有すると仮定し、そうでない患者はSBP=125とした。データの残りは臨床記録で入手可能であった。各マーカの生濃度データはlog10変換して、リスクのロジット変換での複数の線形回帰モデルのための入力として使用した(上の式でx)。
【0186】
マーカセットによる単変量、2変量および3変量ベースでのlog10バイオマーカ濃度のxの線形回帰は、全組合せの完全検索によって実施した。モデルの品質は、判定係数Rに基づいて判定した。
【0187】
3つのマーカより大きいモデルは、Akaike Information Criterion(AIC)に基づいて、前向き、後向き、および段階的選択を使用して開発した。3つのマーカセットの代用は、各マーカを削除して、最良置換について残りのセットを検索することによって同定して、ここで「最良」とはRが最高のマーカである。
【0188】
フルモデルは、ヌルモデルに1個の変数を1つずつ、すべてのマーカが使用されるまで加えることによっても生成した。各マーカは、その点まで使用される完全マーカの判定係数に基づいて選択した。これらのモデルの選択された適合を使用して、いずれかの個別のモデルの感度および特異性を算出した。
【0189】
バイオマーカ濃度の特有性/類似性は、主成分分析(PCA)、階層的クラスタリング、および単純相関を使用した調査した。PCAの結果は、これらのマーカ間にどれだけ独立変動が存在するかを定量するために、スクリープロット、バイプロットおよびサンプル投影を使用して、グラフによって評価した。標準化(平均=0、sd=1)濃度を使用する階層的クラスタリングは、距離測定基準としてユークリッド距離に、凝集手段としてウォード法に基づいていた。クラスタを使用して、同様に挙動するマーカを同定した。
【0190】
下記は、本発明によるタンパク質バイオマーカ試験を開発するのに使用した方法の例証的な例である。アッセイ検体:C−反応性タンパク質
【0191】
【表25】

NUNC Maxisorp 384ウェルプレートの各別個のウェルを、コーティング緩衝液(0.05Mカーボネート、pH9.6;1μg/mLまで希釈し、使用直前に調製)20μLでコーティングして、室温にて一晩インキュベートした。プレートを次に洗浄緩衝液A(0.1% Tween 20を含むPBS)100μLで3回洗浄して、検体捕獲のために1% BSA、5%スクロース、0.05% NaNを含有するPBS 30μLで少なくとも2時間、室温にてブロッキングした。インキュベーション後、ブロッキング緩衝液を除去して、ブロックされたプレートを室温にて少なくとも5時間空気乾燥させて、Zeptosenseアッセイのために4℃で貯蔵した。
【0192】
サンプルはアッセイ緩衝液(1% BSA、0.1% Triton X−100を含有するBS緩衝液によって1:400で希釈した。ブロッキングおよび乾燥させたプレートに、標準および希釈未知サンプル20μL/ウェルを添加して、室温にて一晩インキュベートさせた。インキュベート後、プレートを洗浄緩衝液B(0.02% Triton X−100および0.0001% BSAを含むBS緩衝液)で5回洗浄して、検出抗体A647をアッセイ緩衝液で50ng/mLまで希釈して、ウェルに20μL/ウェルで添加した。検出抗体を室温にて2時間結合させて、その後、プレートを洗浄緩衝液B 100μLで5回洗浄した。標準曲線は、100ng/mLまで希釈した対照を使用して較正器で生成した。100ng/mLから0.01pg/mLまでの較正器希釈液(アッセイ緩衝液+追加の5% BSA)による連続希釈物を調製した。図1は、IL−1受容体アンタゴニストを使用する代表的な標準曲線である。溶離緩衝液(4M尿素、0.02% Triton X−100を含む1XBS、および0.001% BSA)を20μL/ウェルで添加して、室温にて30分間インキュベートし、その後、サンプルをZeptosense装置で分析した。
【0193】
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上記の説明は例示であり、添付請求項の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではないことが理解されるはずである。他の態様、利点、および修正形態は、次の請求項の範囲内である。
【0194】
参考文献
【0195】
【表26】

【0196】
【表27】

【0197】
【表28】

【0198】
【表29】

【0199】
【表30】

【0200】
【表31】

【0201】
【表32】

【0202】
【表33】

【0203】
【表34】

【0204】
【表35】

【0205】
【表36】

【0206】
【表37】

【0207】
【表38】

【0208】
【表39】

【0209】
【表40】

【図面の簡単な説明】
【0210】
一例として与えられ、本発明を記載した特定の実施形態に制限するものではない以下の詳細な説明は、参照により本明細書に組み入れられる添付図と併せて理解されうる:
【図1】正常〜前糖尿病〜糖尿病への疾患進行の状況における、DBRISKMARKER生理学的および生化学的経路および種類を描いたフローチャートである。
【図2】DBRISKMARKERのクラスおよび所望の特徴を描き、正常と比較した前糖尿病、および糖尿病を有する対象の診断に有用であるマーカの複数の異なる例証的パターンを示す図である。
【図3A】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。神経刺激性リガンド−受容体相互作用を示す。
【図3B】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。サイトカイン−サイトカイン受容体相互作用を示す。
【図3C】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。アディポサイトカインシグナル経路を示す。
【図3D】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MARK)シグナル経路を示す。
【図3E】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。インスリンシグナル経路を示す。
【図3F】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。2型真性糖尿病経路を示す。
【図3G】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。アポトーシスシグナル経路を示す。
【図3H】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。補体および凝固カスケードを示す。
【図3I】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。Jak−STATシグナル経路を示す。
【図3J】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。造血細胞系統の表示である。
【図3K】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。PPARシグナル経路を示す。
【図3L】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。トール様受容体シグナル経路である。
【図3M】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。T細胞受容体シグナル経路を示す。
【図3N】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。接着点シグナル経路を示す。
【図3O】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。1型真性糖尿病経路を示す。
【図3P】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。膵臓癌シグナル経路を示す。
【図3Q】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。mTORシグナル経路を示す。
【図3R】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。TGF−βシグナル経路を示す。
【図3S】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。カルシウムシグナル経路を示す。
【図3T】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。ナチュラルキラー細胞媒介細胞毒性経路を示す。
【図3U】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。B細胞受容体シグナル経路を示す。
【図3V】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。FcεRIシグナル経路を示す。
【図3W】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。白血球経内皮移動の経路を示す。
【図3X】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。アラキドン酸代謝経路を示す。
【図3Y】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。Wntスシグナル経路を示す。
【図3Z】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。VEGFシグナル経路を示す。
【図3AA】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。細胞接着分子相互作用を示す。
【図3BB】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。アクチン細胞骨格の調節を示す図である。
【図3CC】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。グリオーマに関連する相互作用を示す。
【図3DD】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。ニコチナートおよびニコチンアミド代謝を示す。
【図3EE】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。接着結合のシグナル経路を示す。
【図3FF】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。密着結合のシグナル経路を示す図である。
【図3GG】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。抗原処理および提示に関連する相互作用を示す。
【図3HH】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。長期相乗作用に関連する相互作用を示す。
【図3II】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。GnRHシグナル経路を示す。
【図3JJ】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。結腸直腸癌に関連する相互作用を示す。
【図3KK】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。細胞間結合における相互作用を示す。
【図3LL】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。神経変性障害に関与する経路を示す図である。
【図3MM】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。細胞周期シグナル経路を示す。
【図3NN】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。ECM受容体相互作用を示す。
【図3OO】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。概日リズムに関与する相互作用を示す。
【図3PP】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。長期抑圧に関与する相互作用を示す図である。
【図3QQ】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。ハンチントン舞踏病に関連する相互作用を示す。
【図3RR】開示された各経路において3つ以上のDBRISKMARKERを強調するKEGG経路の図解である。ヘリコバクターピロリ感染に関与するシグナル経路を示す。
【図4A】中にそれぞれ1または2つのみのDBRISKMARKERを持つKEGG経路のリストである。
【図4B】中にそれぞれ1または2つのみのDBRISKMARKERを持つKEGG経路のリストである。
【図4C】中にそれぞれ1または2つのみのDBRISKMARKERを持つKEGG経路のリストである。
【図4D】中にそれぞれ1または2つのみのDBRISKMARKERを持つKEGG経路のリストである。
【図4E】中にそれぞれ1または2つのみのDBRISKMARKERを持つKEGG経路のリストである。
【図4F】中にそれぞれ1または2つのみのDBRISKMARKERを持つKEGG経路のリストである。
【図5A】正常、前糖尿病、および糖尿病コホートからの患者サンプル間での前記マーカのANOVA解析で示すような、選択した個々のDBRISKMARKERの前糖尿病分類性能特徴の例である。
【図5B】正常、前糖尿病、および糖尿病コホートからの患者サンプル間での前記マーカのANOVA解析で示すような、選択した個々のDBRISKMARKERの前糖尿病分類性能特徴の例である。
【図5C】正常、前糖尿病、および糖尿病コホートからの患者サンプル間での前記マーカのANOVA解析で示すような、選択した個々のDBRISKMARKERの前糖尿病分類性能特徴の例である。
【図5D】正常、前糖尿病、および糖尿病コホートからの患者サンプル間での前記マーカのANOVA解析で示すような、選択した個々のDBRISKMARKERの前糖尿病分類性能特徴の例である。
【図5E】正常、前糖尿病、および糖尿病コホートからの患者サンプル間での前記マーカのANOVA解析で示すような、選択した個々のDBRISKMARKERの前糖尿病分類性能特徴の例である。
【図6】特異性低下を犠牲にした感度上昇のトレードオフを示す数学的アルゴリズムなしの、正常コホートからの前糖尿病の分類におけるDBRISKMARKERの対の追加のROC性能特徴を示した表による例である。
【図7】変数増加アルゴリズムを利用する複数のDBRISKMARKERの追加を伴う、R対基準糖尿病転換リスクによって測定された分類アルゴリズム性能の変化を示すグラフである。
【図8】最高性能の組合せを強調した、50のDBRISKMARKERのグループの考えられる3つのマーカの組合せの全セットの性能特徴の3次元レンダリングを示すグラフである。
【図9】図6に示した考えられる3つのマーカの組合せのセット全体での性能分布を示すヒストグラムである。
【図10】図6に示したDBRISKMARKERのユークリッド標準化距離を示す数学的クラスタリングおよび分類ツリーである。
【図11】本明細書に開示した方法に従ってDBRISKMARKERを選択するパネルの構築に有用である8つの位置カテゴリによる選択されたDBRISKMARKERの表を示す。
【図12】本明細書に開示した方法に従って位置カテゴリから選択した3つのDBRISKMARKERを使用する、25の高性能DBRISKMARKERパネルのリストを示す。前記パネルを使用するロジスティック回帰アルゴリズムは、記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときに、0.300〜0.329の範囲にわたるR^2値を算出した。
【図13】本明細書に開示した方法に従って位置カテゴリから選択した8つのDBRISKMARKERを使用する、25の高性能DBRISKMARKERパネルのリストを示す。前記パネルを使用するロジスティック回帰アルゴリズムは、記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときに、0.310〜0.475の範囲にわたるR^2値を算出した。
【図14】本明細書に開示した方法に従って位置カテゴリから選択した18のDBRISKMARKERを使用する、25の高性能DBRISKMARKERパネルのリストを示す。前記パネルを使用するロジスティック回帰アルゴリズムは、記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときに、0.523〜0.6105の範囲にわたるR^2値を算出した。
【図15】記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときの、最高性能の3、8および18のDBRISKMARKERパネルそれぞれのグラフROC曲線およびAUC統計である。
【図16】記載した実施例および非糖尿病患者コホートにおけるサンプルに利用したときの、3つの相対的な最高性能の個々のDBRISKMARKERマーカを示すROC曲線およびAUC統計である。
【図17】本発明の方法による典型的な結果を示す標準曲線である。作用標準曲線がいったん示されたら、アッセイを通例24の血清サンプルに行って、臨床サンプルでの標的検体の正規分布を決定した。
【図18】25のバイオマーカについて92のサンプルでの単一分子検出データを例示するグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における真性糖尿病または前糖尿病状態の発症リスクを評価するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.該対象由来のサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化を測定する工程であって、該変化が、該対象において真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す、工程と;
を含む方法。
【請求項2】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DBRISKMARKERのレベルが電気泳動的または免疫化学的に測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫化学検出がラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイによる、あるいは酵素結合免疫吸着アッセイによる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態を有するとして以前に診断も同定もされていない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について無症候性である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、腹水、骨髄、間質液、痰、または尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
5つ以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
10個以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
25個以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
50個以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
真性糖尿病または前糖尿病状態を有する対象を診断または同定するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.該対象由来のサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを基準値と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項14】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基準値が指数値である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記基準値が糖尿病または前糖尿病状態についての1つ以上のリスク予測アルゴリズムまたは算出指数から導出される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、腹水、骨髄、間質液、痰、または尿である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
対象における耐糖能障害のリスクを評価するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.該対象由来のサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化を測定する工程であって、該変化が該対象における耐糖能障害のリスクの上昇を示す、工程と;
を含む方法。
【請求項20】
DBRISKMARKERのレベルが電気泳動的または免疫化学的に測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
DBRISKMARKERのレベルが特異性オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによって測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫化学検出がラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイによる、あるいは酵素結合免疫吸着アッセイによる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が耐糖能障害を有するとして以前に診断されていない、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が耐糖能障害について無症候性である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルが血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、腹水、骨髄、間質液、痰、または尿である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
5つ以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
10個以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
25個以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
50個以上のDBRISKMARKERの発現レベルが測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
耐糖能障害を有する対象を診断または同定するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.該対象由来のサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを基準値と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項31】
前記サンプルが血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、腹水、骨髄、間質液、痰、または尿である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記基準値が指数値である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記基準値が耐糖能障害についての1つ以上のリスク予測アルゴリズムまたは算出指数から導出される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
対象における真性糖尿病または前糖尿病状態の進行を評価するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.第1期間において該対象由来の第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
b.第2期間において該対象由来の第2サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
c.工程(a)で検出された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを工程(b)で検出された量と、または基準値と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項35】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断または同定されている、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について以前に治療されている、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断も同定もされていない、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について無症候性である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記第1サンプルが前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療される前に前記対象から採取される、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記第2サンプルが前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療された後に前記対象から採取される、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記基準値が真性糖尿病または前糖尿病状態に罹患した1人以上の対象から導出される、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
対象における真性糖尿病または前糖尿病状態に関連した耐糖能障害の進行を評価するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.第1期間において該対象由来の第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
b.第2期間において該対象由来の第2サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
c.工程(a)で検出された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを工程(b)で検出された量と、または基準値と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項45】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患している、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について以前に治療されている、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が耐糖能障害を有するあるいは前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断も同定もされていない、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が前記耐糖能障害について無症候性であるか、あるいは前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について無症候性である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記第1サンプルが前記耐糖能障害、前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療される前に前記対象から採取される、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記第2サンプルが前記耐糖能障害、前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療された後に前記対象から採取される、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記基準値が耐糖能障害、真性糖尿病または前糖尿病状態に罹患した1人以上の対象から導出される、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
真性糖尿病または前糖尿病状態の治療有効性を監視するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.第1期間において該対象由来の第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
b.第2期間において該対象由来の第2サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
c.工程(a)で検出された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを、工程(b)で検出された量と、または基準値と比較する工程であって、該治療の有効性が該対象からの2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルの変化によって監視される、工程と;
を含む方法。
【請求項53】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患している、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について以前に治療されている、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記第1サンプルが前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療される前に前記対象から採取される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記第2サンプルが前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療された後に前記対象から採取される、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態の治療が運動療法、食事補充物、治療剤、外科的介入、および予防剤を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記基準値が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態のための1つ以上の治療の結果として糖尿病リスク因子の改善を示す1人以上の対象から導出される、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記治療の有効性がボディマス指数(BMI)、インスリンレベル、血中グルコースレベル、HDLレベル、収縮期および/または拡張期血圧、あるいはその組合せの変化を検出することによってさらに監視される、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
血中グルコースレベルの変化が経口耐糖能試験によって検出される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
真性糖尿病または前糖尿病状態と診断されたか、またはそのリスクを有する対象に治療計画を選択するための、所定レベルの予測性を用いる方法であって:
a.第1期間において該対象由来の第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
b.第2期間において該対象由来の第2サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを場合により検出する工程と;
c.工程(a)で検出された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを、基準値と、または場合により工程(b)で検出された量と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項64】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患している、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について以前に治療されている、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記対象が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断も同定もされていない、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記第1サンプルが前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療される前に前記対象から採取される、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記第2サンプルが前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態について治療された後に前記対象から採取される、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態の治療が運動療法、食事補充物、治療剤、外科的介入、および予防剤を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項72】
前記基準値が前記真性糖尿病または前記前糖尿病状態の1つ以上の治療の結果として糖尿病リスク因子の改善を示す1人以上の対象から導出される、請求項63に記載の方法。
【請求項73】
前記改善がボディマス指数(BMI)の低下、血中グルコースレベルの低下、インスリンレベルの上昇、HDLレベルの上昇、収縮期および/または拡張期血圧の低下、あるいはその組合せを検出することによって監視される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
血中グルコースレベルの低下が経口耐糖能試験によって測定される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
真性糖尿病を持たない1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、真性糖尿病基準発現プロファイル。
【請求項76】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項75に記載のプロファイル。
【請求項77】
耐糖能障害を持たない1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される好ましくは2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、耐糖能障害基準発現プロファイル。
【請求項78】
真性糖尿病を有するか、該真性糖尿病を発現するリスクを有するか、または該真性糖尿病の治療を受けている1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、真性糖尿病対象発現プロファイル。
【請求項79】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項78に記載のプロファイル。
【請求項80】
耐糖能障害を有するか、耐糖能障害を発現するリスクを有するか、または耐糖能障害の治療を受けている1人以上の対象から採取した、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される2つ以上のマーカの有効量のマーカレベルのパターンを含む、耐糖能障害対象発現プロファイル。
【請求項81】
請求項75、77、78、または80に記載のプロファイルを生成するのに十分な、DBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択される対応するDBRISKMARKERを検出する複数のDBRISKMARKER検出試薬を含むキット。
【請求項82】
前記検出試薬が1つ以上の抗体またはその断片を含む、請求項81に記載のキット。
【請求項83】
前記検出試薬が1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む、請求項81に記載のキット。
【請求項84】
前記検出試薬が1つ以上のアプタマーを含む、請求項81に記載のキット。
【請求項85】
請求項75に記載の1つ以上の真性糖尿病基準発現プロファイル、請求項78に記載の1つ以上の真性糖尿病対象発現プロファイル、そして場合により追加の試験結果および対象情報を含む機械読み取り可能な媒体。
【請求項86】
請求項77に記載の1つ以上の耐糖能障害基準発現プロファイル、請求項80に記載の1つ以上の耐糖能障害対象発現プロファイル、そして場合により追加の試験結果および対象情報を含む機械読み取り可能な媒体。
【請求項87】
真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する生理学的または生化学的経路を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項88】
前記生理学的または前記生化学的経路が自己免疫調節、炎症および内皮機能、接着点、白血球経内皮移動、ナチュラルキラー細胞媒介細胞毒性、アクチン細胞骨格の調節、接着/密着/ギャップ結合、および細胞外マトリクス−受容体相互作用、脂肪細胞の発達および維持、造血細胞系統、補体および凝固カスケード、細胞内および細胞外細胞シグナル伝達経路を含む、請求項87に記載のパネル。
【請求項89】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項87に記載のパネル。
【請求項90】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項87に記載のパネル。
【請求項91】
真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する部位を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項92】
前記部位がベータ細胞、内皮細胞、骨格および平滑筋、あるいは末梢、心血管または脳血管動脈を含む、請求項90に記載のパネル。
【請求項93】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項90に記載のパネル。
【請求項94】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項90に記載のパネル。
【請求項95】
真性糖尿病または前糖尿病状態の進行を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項96】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項95に記載のパネル。
【請求項97】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項95に記載のパネル。
【請求項98】
真性糖尿病または前糖尿病状態の進行の速度を示す1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項99】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項98に記載のパネル。
【請求項100】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項98に記載のパネル。
【請求項101】
真性糖尿病の1種類以上の型に特異的である1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項102】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項101に記載のパネル。
【請求項103】
前糖尿病状態に特異的である1つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項104】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項103に記載のパネル。
【請求項105】
レプチン(LEP)、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(ILGFBP3)、レジスチン(RETN)、マトリクスメタロペプチダーゼ2(MMP−2)、アンギオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)−1(ACE)、補体成分4A(C4A)、CD14分子(CD14)、セレクチンE(SELE)、コロニー刺激因子1(マクロファージ;CSF1)、および血管内皮成長因子(VEGF)、c−反応性タンパク質(ペントラキシン関連;CRP)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ1A(TNFRSF1A)、RAGE(最終糖化産物特異的受容体[AGER])、およびCD26(ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)から成る群より選択される2つ以上のDBRISKMARKERを含むDBRISKMARKERパネル。
【請求項106】
真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する1人以上の対象を治療する方法であって:
a.該1人以上の対象からのサンプル中に存在する少なくとも2つの別個のDBRISKMARKERのレベル上昇の存在を検出する工程と;
b.該2つの別個のDBRISKMARKERの変化したレベルが該真性糖尿病または該前糖尿病状態を発症するリスクの低い1人以上の対象で測定されたベースライン値、または1つ以上の糖尿病調節薬による治療の結果として糖尿病リスクマーカの改善を示す1人以上の対象で測定されたベースライン値に戻るまで、該1人以上の対象を1つ以上の糖尿病調節薬によって治療する工程と;
を含む方法。
【請求項107】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記糖尿病調節薬がスルホニル尿素;ビグアナイド;インスリン、インスリンアナログ;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体−γ(PPAR−γ)アゴニスト;二重作用性PPARアゴニスト;インスリン分泌促進物質;グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)のアナログ;ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害薬;膵臓リパーゼ阻害薬;α−グルコシダーゼ阻害薬;およびその組合せを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項110】
1つ以上の糖尿病調節薬による治療の結果としての糖尿病リスクマーカの前記改善が、ボディマス指数(BMI)の低下、血中グルコースレベルの低下、インスリンレベルの上昇、HDLレベルの上昇、収縮期および/または拡張期血圧の低下、あるいはその組合せを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項111】
前糖尿病状態と診断されたか、またはそのリスクを有する対象における耐糖能障害のリスクの変化を評価する方法であって:
a.第1期間において該対象由来の第1サンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
b.第2期間において該対象由来の第2サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを場合により検出する工程と;
c.工程(a)で検出された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを基準値と、または場合により工程(b)の量と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項112】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記対象が前期前糖尿病状態に罹患している、請求項110に記載の方法。
【請求項114】
前記対象が以前に前期前糖尿病状態について治療されている、請求項110に記載の方法。
【請求項115】
前記対象が前期前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断も同定もされていない、請求項110に記載の方法。
【請求項116】
前記対象が前期前糖尿病状態について無症候性である、請求項110に記載の方法。
【請求項117】
前記第1サンプルが前期前糖尿病状態について治療される前に前記対象から採取される、請求項110に記載の方法。
【請求項118】
前記第2サンプルが前期前糖尿病状態について治療された後に前記対象から採取される、請求項110に記載の方法。
【請求項119】
前期前糖尿病状態の治療が運動療法、食事補充物、治療剤、外科的介入、および予防剤を含む、請求項110に記載の方法。
【請求項120】
前記基準値が耐糖能障害に罹患していた1人以上の対象から導出される、請求項110に記載の方法。
【請求項121】
対象における真性糖尿病または前糖尿病状態に関連する疾患状況を差異的に診断する方法であって:
a.該対象由来のサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを検出する工程と;
b.工程(a)で検出された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを、請求項78に記載の真性糖尿病対象発現プロファイル、請求項80に記載の耐糖能障害対象発現プロファイル、または基準値と比較する工程と;
を含む方法。
【請求項122】
前記真性糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項123】
前期前糖尿病状態がIFG、IGT、メタボリックシンドローム、またはシンドロームXを含む、請求項120に記載の方法。
【請求項124】
前記対象が前記真性糖尿病または前期前糖尿病状態に罹患しているとして以前に診断も同定もされていない、請求項120に記載の方法。
【請求項125】
前記対象が前記真性糖尿病または前期前糖尿病状態について以前に治療されていない、請求項120に記載の方法。
【請求項126】
前記対象が前記真性糖尿病または前期前糖尿病状態について以前に治療されている、請求項120に記載の方法。
【請求項127】
前記対象が前記真性糖尿病または前期前糖尿病状態について無症候性である、請求項120に記載の方法。
【請求項128】
糖尿病リスク因子を分析することによって糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定する方法において:
a.該対象由来のサンプル中のDBRISKMARKER 1〜260から成る群より選択された2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化を測定する工程であって、該変化が、該対象において真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す、工程と;
を含む改良。
【請求項129】
糖尿病リスク因子を分析することによって糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定する方法において:
a.レプチン(LEP)、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(ILGFBP3)、レジスチン(RETN)、マトリクスメタロペプチダーゼ2(MMP−2)、アンギオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)−1(ACE)、補体成分4A(C4A)、CD14分子(CD14)、セレクチンE(SELE)、コロニー刺激因子1(マクロファージ;CSF1)、および血管内皮成長因子(VEGF)、c−反応性タンパク質(ペントラキシン関連;CRP)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ1A(TNFRSF1A)、RAGE(最終糖化産物特異的受容体[AGER])、およびCD26(ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)から成る群より選択される1つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該サンプル中の1つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化を測定する工程であって、該変化が、該対象において真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す、工程と;
を含む改良。
【請求項130】
糖尿病リスク因子を分析することによって糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクを有する対象を診断または同定する方法において:
a.レプチン(LEP)、ハプトグロビン(HP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(ILGFBP3)、レジスチン(RETN)、マトリクスメタロペプチダーゼ2(MMP−2)、アンギオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)−1(ACE)、補体成分4A(C4A)、CD14分子(CD14)、セレクチンE(SELE)、コロニー刺激因子1(マクロファージ;CSF1)、および血管内皮成長因子(VEGF)、c−反応性タンパク質(ペントラキシン関連;CRP)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ1A(TNFRSF1A)、RAGE(最終糖化産物特異的受容体[AGER])、およびCD26(ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)から成る群より選択される2つ以上のDBRISKMARKERの有効量のレベルを測定する工程と;
b.該サンプル中の2つ以上のDBRISKMARKERのレベルの臨床的に有意な変化を測定する工程であって、該変化が、該対象において真性糖尿病または前糖尿病状態を発症するリスクの上昇を示す、工程と;
を含む改良。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図3M】
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【図3N】
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【図3O】
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【図3P】
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【図3Q】
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【図3R】
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【図3S】
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【図3T】
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【図3U】
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【図3V】
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【図3W】
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【図3X】
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【図3Y】
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【図3Z】
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【図3AA】
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【図3BB】
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【図3CC】
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【図3DD】
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【図3EE】
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【図3FF】
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【図3GG】
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【図3HH】
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【図3II】
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【図3JJ】
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【図3KK】
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【図3LL】
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【図3MM】
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【図3NN】
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【図3OO】
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【図3PP】
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【図3QQ】
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【図3RR】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−511911(P2009−511911A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535683(P2008−535683)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/039963
【国際公開番号】WO2007/044860
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506053674)テシス バイオサイエンス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】