説明

糖衣液および糖衣ガム

【課題】糖衣によって食感が大きく変わることなく且つ欠けにくく、さらに色素を含む場合は色の発色をより鮮やかに出来る糖衣液、及びその糖衣液をコーティングした糖衣ガムの提供。
【解決手段】平均粒径が10μm〜30μmのセルロースを0.1〜5質量%、糖アルコールを60〜75質量%、及び増粘剤を1〜5質量%含む糖衣液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースを含まない糖衣液と比べて食感が大きく変わることなく且つ欠けにくく、さらに色素を含む場合は、色の発色をより鮮やかに出来る糖衣液、及びその糖衣液をコーティングした糖衣ガムに関する。
【背景技術】
【0002】
糖衣掛けをされた製品は身の周りに多数存在する。例えば、ガムやキャンディー、チョコレートなどの菓子類や、いわゆる糖衣錠と呼ばれている錠剤などの医薬品が挙げられる。糖衣掛けされた製品は通常、センター物を回転釜に入れて糖衣液を吹きかけ、回転により糖衣液をセンター物に均等に伸ばしながら乾燥させて、センター物の表面に少しずつ糖結晶層を成長させていくことによって得られる。
【0003】
糖衣に用いる糖としては、砂糖や、マルチトール、ソルビトールなどの糖アルコールが使用される。表面の平滑性や作業性を考慮すると、砂糖(蔗糖)が最も糖衣掛けに適した結晶性・溶解度を持っている。しかし、近年は、特に糖衣ガムにおいては、カロリーが低く、非う蝕性の糖アルコールを使用する場合が多い。特にセンター物にキシリトールを用い、糖衣液にマルチトールを使用するケースが多い。この場合、センター物と糖衣層の糖質が異なるため、糖衣掛けが困難になったり、糖衣の剥離が起こりやすいという問題があった。特に近年、粒ガムでは個包装ではなく、ボトルに入った形態での流通が多くなっている。このような形態では、運搬時等に粒ガムがボトル内で動くため、糖衣の欠けや剥離が度々問題となっている。
【0004】
糖衣の耐衝撃性を強化するために、特許文献1には、ゼラチン、アラビアガム、結晶セルロースを含んだ蔗糖の糖衣液を用いる方法が開示されている。また、特許文献2には、ラクチトール及び結晶セルロースからなる糖衣液を用いる方法が開示されている。特許文献3には、タルク及び結晶セルロースを含んだ糖衣液を用いた糖衣錠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭40−26918号公報
【特許文献2】特開平6−70688号公報
【特許文献3】特開2001―39862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糖衣層の強度を上げる方法として、結晶セルロースを添加する方法は知られている。しかし、特許文献1及び特許文献3では、結晶セルロースの添加量が5質量%を超える量を添加しないと十分な強度は得られなかった。すなわち、結晶セルロースの添加量が多いため、コスト負荷も高いという課題があった。また、結晶セルロースの添加により、糖衣層が比較的大きな硬さの食感(ガリガリとした食感)になるため、通常、口の中で噛むことのない医薬品では問題はないが、口の中で噛むガムでは使用しにくいという欠点があった。
【0007】
一方、特許文献2では、ラクチトールを使用することによる適度な硬さの食感の欠如(パリパリ感の欠如)を、結晶セルロースを加えることにより解決し、所望の硬い食感を付与することを目的としている。すなわち、特許文献1〜3のいずれにおいても、結晶セルロースを用いることにより、糖衣層の硬さを大きくして糖衣の剥離を抑制するものであった。しかし、糖衣の食感を硬くすることが目的であるため、通常のガム糖衣に使用した場合は、食感が所望のレベル以上に硬くなってしまう(パリパリ感を付与するにとどまらず、ガリガリとした食感になってしまう)ことが、欠点でもあった。そのため、食感の変化が少なく、且つ糖衣の剥離を抑制したいという目的には、結晶セルロースは不向きと考えられていた。
【0008】
一方、近年のガムは種類が多様化し、糖衣層に色素を入れて着色するケースが多い。しかし、色素によっては色がくすんだり、鮮やかさに欠けるという欠点があった。
そこで本発明は、セルロースを含んでいない糖衣と比較して食感が大きく変わることなく且つ欠けにくく、さらに色素を含む場合は色の発色をより鮮やかに出来る糖衣液及びその糖衣液をコーティングした糖衣ガムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ある特定の範囲の粒径をもったセルロースを、比較的低添加量の特定の範囲で用いると、驚くべきことに糖衣の硬さを大きくは上げることなく糖衣層の剥離を大幅に抑制できること、更には糖衣液に色素を加えた場合の発色をより鮮やかにできることを見出し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)平均粒径が10μm〜30μmのセルロースを0.1〜5質量%、糖アルコールを60〜75質量%、及び増粘剤を1〜5質量%含む糖衣液。
(2)セルロースが結晶セルロースである、上記(1)項に記載の糖衣液。
(3)糖アルコールがマルチトールである、上記(1)又は(2)項に記載の糖衣液。
(4)増粘剤がアラビアガムである、上記(1)〜(3)項のいずれか一項に記載の糖衣液。
(5)さらに色素を含む、上記(1)〜(4)項のいずれか一項に記載の糖衣液。
(6)上記(1)〜(5)項のいずれか一項に記載の糖衣液をコーティングした糖衣ガム。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、セルロースを含んでいない糖衣と比較して食感が大きく変わることなく且つ欠けにくく、さらに色素を含む場合は色の発色をより鮮やかに出来る糖衣液、及びその糖衣液をコーティングした糖衣ガムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の糖衣液は、特定の粒径のセルロース、糖アルコール、増粘剤をそれぞれ特定量含む。
ここでいうセルロースには、草木類や微生物などから得られるセルロースが含まれる。セルロースの最も一般的な例としては、木材パルプを機械的若しくは化学的に処理して得られる粉末セルロースや結晶セルロースなどが挙げられる。また、本発明では、セルロースのなかでも極めて純度が高く、好食感である結晶セルロースを用いることが好ましい。結晶セルロースとは、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して得られる平均重合度が30〜400であり、結晶性部分が10%を超えるものをいう。
【0012】
本発明で用いるセルロースは、平均粒径が10〜30μmである。ここでいう平均粒径とは、セルロース濃度が1質量%になるように、セルロースと脱イオン水を蓋のできる容器に計りとり、手振りで見かけ上均一になるまで分散させて分散液を形成し、沈降が生じる前に(通常は10秒以内に)、該分散液をレーザー回折粒度分布計(島津製作所 LA−910、相対屈折率1.20、超音波分散なし)に仕込んで粒度分布を測定した際の体積基準でのメジアン径のことを言う。セルロースの平均粒径が10μm以上であることにより、糖衣の剥離・欠けが生じにくく強度を向上させることができる。一方、セルロースの平均粒径が30μm以下であることにより、発色改善効果が現出し易くなり、ガリガリとした食感が生じる程度にまで糖衣の強度が大きくなることを防止することができる。セルロースの平均粒径は、より好ましくは12〜27μmであってよく、更に好ましくは15〜25μmであってよい。
【0013】
本発明で用いるセルロースの糖衣液中の含有量は、0.1〜5質量%である。セルロースの糖衣液中の含有量が0.1質量%以上であることによって、上記の効果が認められる。一方、当該含有量が5質量%以下であることによって、適切な粒径のセルロースを用いた場合に、良好な食感が得られる。セルロースの糖衣液中の含有量は、好ましくは1〜3質量%であってよい。
【0014】
本発明の糖衣液は、糖アルコールを主成分とし、チューインガム、キャンディー、チョコレートなどの菓子類の芯材に対して、糖衣パンなどでコーティングするのに用いられるものである。芯材の原料、形状、大きさ等は、特に問わない。一般的にセンター物の形状は、球状や、円形のおはじき状(一般的な粒状チョコレートの形状)、長方形のおはじき状(一般的な粒ガムの形状)であってよい。また、センター物は、およそ1g程度の重量となる大きさであってよい。
【0015】
本発明の糖アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、還元水あめなどを挙げることができる。これらの糖アルコールの少なくとも一種類を用いることが好ましい。中でも、切れの良い自然な甘味で、糖衣形成に適した溶解度を持ち、また糖衣形成後の食感が良好なマルチトールが、最も好ましい。
【0016】
糖アルコールの糖衣液中の含有量は、60〜75質量%である。当該糖アルコールの濃度は、コーティングの際のスプレー量や温度により適宜調整する。糖アルコールの糖衣液中の含有量は、好ましくは62〜70質量%であってよい。
【0017】
本発明の増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、アラビアガム、トラガントガム、カラギーナン、ファーセレラン、カラヤガム、キサンタンガムなどが挙げられる。中でも、アラビアガムが糖衣の伸びや乾燥が良く最も好ましい。増粘剤の糖衣液中の含有量は1〜5質量%であり、好ましくは2〜4質量%である。
【0018】
また、本発明の糖衣液は、色素を一種類以上含むことが好ましい。色素の種類は、食べられるものであれば特に制限はない。例えば、天然系着色料であるアナトー色素、クチナシ色素、コチニール色素、ラック色素、シソ色素、赤キャベツ色素、トマト色素、赤ダイコン色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、ベニバナ黄色素、ウコン色素、マリーゴールド色素、ビートレッド、紅麹色素、クチナシ赤色素、クチナシ青色素や、タール系色素である食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40g、食用赤色102号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2g、アルミニウムレーキ、酸化チタンなどが挙げられる。特に、通常は鮮やかに発色させることが困難である赤色系色素において本発明の効果が顕著にあらわれるので、赤色系色素を含むことが好ましい。色素の添加量は、それぞれの色素の一般的な添加量で構わない。通常は糖衣液中に0.01〜0.1質量%含むことが好ましい。
【0019】
本発明の糖衣液は、一般的なコーティング機器でセンター物にコーティングすることができる。そのようなコーティング機器としては、例えば、株式会社パウレック製のドリアコーター、パウレックコーターや、フロイント産業株式会社製のハイコーター、アクアコーターなどを挙げることができる。仕込み量や乾燥時間などのコーティング条件も、一般的な条件を採用することができる。
【0020】
本発明の糖衣液は、糖衣ガムを製造するのに最も好適に用いることができる。本発明の糖衣液を用いることにより、セルロースを含んでいない糖衣と比較して食感が大きく変わることなく、より欠けにくく、色の発色がより鮮やかな糖衣ガムを得ることが出来る。また、本発明の糖衣液を用いると、欠け・剥離が起こりにくい糖衣層を形成することが出来るので、例えば、コーティング回数を減らしても、これまでの糖衣液を用いた糖衣ガムと同等のコーティング層の強度をもつ糖衣ガムを製造することが出来るため、製造時間を短縮することも可能である。
【0021】
本発明の糖衣液を用いて形成された糖衣ガムによれば、セルロースを包含しない糖衣液で形成された糖衣ガムと比べて、食感及び糖衣強度が大きく相違せず、かつ、色素を含む場合により鮮やかな発色を生じ、より優れた摩損度を有することが可能である。また、本発明の糖衣液を用いて形成された糖衣ガムによれば、所定の要件を満足しない糖衣液で形成された糖衣ガムと比べて、上記の所望の特性の全てを高度にバランスさせることが可能となる。
【実施例】
【0022】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。また、糖衣ガムの分析は下記の方法で行った。
【0023】
[糖衣強度の分析]
テクスチャーアナライザーTA.XT plus(英弘精機(株)製)にて、下記条件にて分析した。
Mode:Mesure Force in Compression
Option:Return To Start O
Pre−Tset Speed:0.5mm/s
Test Speed:1.0mm/s
Post−Test Speed:10.0mm/s
Distance:3mm
2mm Cylinder Probe(P/2)
各サンプル10個を分析して、それぞれ平均値を算出し、t検定で有意差を測定した。
【0024】
[食感]
50代の男性1名、40代の男性1名、30代の男性2名、20代の男性1名、20代の女性1名の合計6名で、セルロースを含まない糖衣液にて同層数だけコーティングした糖衣ガムを基準として、それに比べて糖衣層の食感が硬いか、柔らかいか、同等かを評価し、最も多い意見を採用した。
【0025】
[色調・赤色の発色性]
食感評価を行ったのと同人物で、セルロースを含まない糖衣液にて同層数だけコーティングした糖衣ガムを基準として、目視により色がどちらが鮮やかかを評価してもらい、最も多い意見を採用した。
また、赤色の発色性は、色差計SE2000(日本電色(株)製)にてL***色度の、赤方向(a*)を、各サンプル2個×2箇所で測定し、その平均値を比較した。
【0026】
[摩損度]
摩損度試験機PTF−3RA(ファーマテスト社製)を用いて、各15錠ずつを、25rpm×10minで測定した。摩損度の値により、下記のように評価した。
0.15%以下 ○(良)
0.15%を超え0.2%以下 △(可)
0.2%を超える ×(不可)
【0027】
[実施例1、比較例1]
糖衣液の調製
マルチトール(商品名 レシス微粉、三菱商事フードテック(株)製)65質量%、アラビアガム(商品名 アラビアガム末、三栄薬品貿易(株)製)3質量%、赤色色素(赤色102号、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.05質量%になるように、各成分を水に溶解して糖衣液Aを作製した。
実施例1について、糖衣液A100質量部に対して、2質量部(糖衣液中では1.96質量%相当)の結晶セルロース(平均粒径20.8μm、商品名 セオラスFD−F20、旭化成ケミカルズ(株)製)を添加したものを糖衣液として用意した。
比較例1について、糖衣液Aそのもの(結晶セルロースを添加しないもの)を、糖衣液として用意した。
【0028】
コーティング
ガムセンター3.3kg(シュガーレスタイプ、1.0〜1.1g/個、長辺1.9cm、短辺1.2cm、四角いおはじき状)を、パウレックコーターPRC−7(株式会社パウレック製)に仕込み、常法に従い、上記の糖衣液(実施例1)及び糖衣液A(比較例1)で、それぞれコーティングを行った。49回コーティングを繰り返した。その後、常法に従い、シェラック(商品名 ラックグレーズ25E、日本シェラック工業(株)製)、カルナウバロウ(商品名 ポリシングワックス―104、フロイント産業(株)製)を用いて艶出しを行った。
【0029】
得られた糖衣ガムの食感を評価したところ、比較例1と実施例1との間で、大きな違いは認められなかった。
次に糖衣強度分析を行い、その平均値をt検定した。実施例1の糖衣強度の平均値は8235g、比較例1の糖衣強度の平均値は8132gであった。糖衣強度に関して危険率5%でt検定したところ、糖衣層の硬さに有意差はないという検定結果となった。すなわち、糖衣強度に関しては、実施例1と比較例1とはほぼ同等であった。
【0030】
一方、赤色の発色性を色差計で測定したところ、実施例1ではa*が46.7であったのに対し、比較例1ではa*は41.7と明らかに違いがあった。目視でも比較例1に比べると、明らかに実施例1の方が、赤色が鮮やかであった。
【0031】
また、摩損度については、比較例1では0.77に対し、実施例1では0.13と明らかに低下していた。これにより、実施例1は、比較例1と比べて糖衣層の剥離や割れを生じにくいことが確認された。また、摩損度試験後のサンプルを比べると、比較例1では艶が明らかに消失していた。以上の結果を表1にまとめる。
【0032】
【表1】

【0033】
[実施例2及び比較例2−5]
糖衣液の調製
実施例2について、実施例1と同様に糖衣液を調製した。
比較例2について、比較例1で使用したものと同じ糖衣液Aを用意した。
比較例3について、前記の糖衣液A100質量部に対して、2質量部(糖衣液中では1.96質量%相当)の平均粒径4.3μmの結晶セルロースを添加したものを糖衣液として用意した。
比較例4について、糖衣液A100質量部に対して、2質量部の平均粒径37.6μmのセルロースを添加したものを糖衣液として用意した。
比較例5について、糖衣液A100質量部に対して、5.5質量部(糖衣液に対して5.21質量%相当)の平均粒径20.8μmのセルロースを添加したものを糖衣液として用意した。
【0034】
コーティング
ガムセンター3.3kg(シュガーレスタイプ、1.0〜1.1g/個、長辺1.9cm、短辺1.2cm、四角いおはじき状)を、パウレックコーターPRC−7に仕込み、常法に従い、10回コーティングを行った。
【0035】
得られた糖衣ガムの食感を評価したところ、比較例4及び5は、他に比べて明らかに硬かった。
さらに、得られたサンプルの糖衣層の強度を測定した。実施例2の糖衣強度の平均値は2780g、比較例2の糖衣強度の平均値は2704g、比較例3の糖衣強度の平均値は2672g、比較例4の糖衣強度の平均値は3050g、比較例5の糖衣強度の平均値は3111gであった。比較例2と比べて糖衣強度に有意差があるかどうかを危険率5%でt検定したところ、比較例4と比較例5は有意差があり、その他は有意差なしという結果であった。すなわち、比較例4、5では、糖衣が硬くなってしまっており、セルロースを含んでいない糖衣と比較して食感が変わるという点で好ましくない。
【0036】
一方、赤色の発色性を色差計で測定したところ、糖衣の層数が実施例1、比較例1に比べて少ないため、絶対値自体は小さなものではあったが、同層数での比較では、明確な違いが見られた。すなわち、比較例2ではa*が27.8であったのに対し、実施例2では、a*は29.8と鮮やかになっていた。比較例3でもa*は31.7、比較例4でも28.1と鮮やかになっていた。添加したセルロースの粒径が小さい比較例3は最も鮮やかであった。一方、添加したセルロースの粒径が大きい比較例4では、効果は小さかった。すなわち、添加するセルロースの粒径が小さいほど赤色の発色は良好になる傾向が確認された。また、セルロースの添加量が多い比較例5では、a*は30.1と実施例2と発色に大きな違いはなかったが、前述のように食感は悪かった。
【0037】
一方、摩損度を測定したところ、実施例2は0.15なのに対し、比較例2は0.20、比較例3は0.23、比較例4は0.18、比較例5は0.16であった。すなわち添加したセルロースの粒径が小さい比較例3では、セルロースを添加していない比較例2よりも、摩損度が大きくなっており糖衣が剥離・欠けやすくなっていることが確認できた。以上の結果を表2にまとめる。
【0038】
【表2】

【0039】
以上のことから、添加するセルロースの粒径が小さすぎると、発色は鮮やかになるものの糖衣の剥離・欠けが生じやすくなる欠点があり、逆にセルロースの粒径が大きすぎると、発色改善効果が弱くなり、また糖衣層が硬くなり食感への影響が大きいことが示された。さらに、適正な粒径のセルロースを用いても添加量が多すぎると、食感が硬くなることが示された。すなわちすべての所望の機能をバランスよく発揮するには、平均粒径が特定の範囲のセルロースを適正な添加量で用いる必要性がある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、欠けにくく、色の発色をより鮮やかに出来る糖衣液及びその糖衣液をコーティングした糖衣ガムが得られるため、食品製造業に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が10μm〜30μmのセルロースを0.1〜5質量%、糖アルコールを60〜75質量%、及び増粘剤を1〜5質量%含む糖衣液。
【請求項2】
セルロースが結晶セルロースである、請求項1に記載の糖衣液。
【請求項3】
糖アルコールがマルチトールである、請求項1又は請求項2に記載の糖衣液。
【請求項4】
増粘剤がアラビアガムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の糖衣液。
【請求項5】
さらに色素を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の糖衣液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の糖衣液をコーティングした糖衣ガム。