説明

糸巻取装置

【課題】良質な巻き状態のパッケージを形成するために、巻き取り中のパッケージをクレードルに確実に保持する。
【解決手段】糸巻取ユニット1は、パッケージ205を形成する装置である。クレードル29は、パッケージ205を挟みこんで保持する巻取ボビン把持部32a、32b、及び供給されたエア圧に応じて巻取ボビン把持部32a、32bの保持力及び制動をコントロールするパッケージブレーキ51、を有する。作動エア回路40は、パッケージブレーキ51が巻取ボビン把持部32a、32bを介してパッケージ205を回転可能に支持するための保持力を供給するための第1エアをパッケージブレーキ51に供給する第1エア供給回路41、及びパッケージブレーキ51が巻取ボビン把持部32a、32bを介してパッケージ205を制動して停止させるための第2エアをパッケージブレーキ51に供給する第2エア供給回路42、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置に関し、特に、糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダが備えるワインディングユニットは、クレードルに支持された紙管を綾振ドラムに接触させて回転させることにより、糸を巻き取ってパッケージを形成する。クレードルにはエアシリンダが連結されており、エアシリンダを駆動させることにより、パッケージを綾振ドラムに対して接触させる状態と、綾振ドラムから離れる状態とに切り替える。
【0003】
紙管をクレードルに保持する機構は、紙管の両端に挿入嵌合される一対のベアリングセンタを有する。一方のベアリングセンタには、紙管の回転を制動するためのパッケージブレーキが設けられている。パッケージブレーキは、ベアリングセンタを紙管に押し込む押圧手段を兼ねている。電磁弁が開かれて、パッケージブレーキのシリンダに圧気が供給されると、ベアリングセンタが紙管に押し込まれるとともに、ベアリングセンタの回転を摩擦力によって制動する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
この構成で、巻取中のワインディングユニットが満管になったときの玉揚動作においては、エアシリンダがピストンロッドを伸長させることでクレードルを上昇させて、満巻きのパッケージを綾振ドラムから離す。このときパッケージブレーキによるブレーキが掛けられてパッケージの回転を止める。これにより、糸が弛むのが防がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2000−203763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のクレードルでは、巻き取り動作時には、パッケージブレーキに設けられたバネによってパッケージは保持する力が得られている。具体的には、パッケージブレーキのベアリングスリーブがバネに押されてさらにベアリングセンタを押しているので、紙管は両側のベアリングセンタによって挟まされた状態を保っている。
ここで、良質な巻き状態のパッケージを形成するために、巻き取り中のパッケージをクレードルに確実に保持することが好ましい。そこでバネの弾性力を大きくすることが考えられるが、それは実現が困難であり、たとえ実現できたとしてもその場合はパッケージの脱着動作の操作性が低下することが予想される。
【0007】
本発明の課題は、良質な巻き状態のパッケージを形成するために、巻き取り中のパッケージをクレードルに確実に保持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0009】
本発明の一見地に係る糸巻取装置は、供給部から糸を巻き取ってパッケージを形成する装置であって、パッケージ支持部と、作動エア回路とを備えている。パッケージ支持部は、パッケージを挟みこんで保持する保持部、及び供給されたエア圧に応じて保持部の保持力及び制動をコントロールするブレーキ部、を有する。作動エア回路は、ブレーキ部が保持部を介してパッケージを回転可能に支持するための保持力を供給するための第1エアをブレーキ部に供給する第1エア供給回路、及びブレーキ部が保持部を介してパッケージを制動して停止させるための第2エアをブレーキ部に供給する第2エア供給回路、を有する。
この装置では、糸巻取り動作中は、第1エア供給回路からの第1エアによってブレーキ部が作動して、パッケージを回転可能に支持する。この結果、良質な巻き状態のパッケージを形成できる。
さらに、例えば糸継ぎ動作時には、第2エア供給回路がブレーキ部に第2エアを供給する。これにより、ブレーキ部がパッケージを制動して停止させる
【0010】
糸巻取装置は、弾性部材をさらに備えていてもよい。弾性部材は、パッケージ支持部に設けられ、ブレーキ部がパッケージを回転可能に支持するのを補助するための弾性力を発生する。
パッケージの脱着時には、ブレーキ部への第1エアの供給が停止される。第1エアを併用することによって弾性部材の弾性力は比較的小さく設定できるので、パッケージ脱着時の操作性は低下しない。
【0011】
糸巻取装置は、パッケージ支持部を持ち上げるためのリフタをさらに備えていてもよい。その場合、第2エア供給回路は、第2エアをブレーキ部に供給するとともにリフタにも第2エアを供給する
【0012】
第1エア供給回路は、第1エア供給源と、第1エア供給源とブレーキ部との間に配置された第1エア制御弁とを有していてもよい。第2エア供給回路は、第2エア供給源と、第2エア供給源とリフタとの間に配置された第2エア制御弁とを有していてもよい。第1エア供給回路は、エア切替弁をさらに有していてもよい。エア切替弁は、第1エア制御弁とブレーキ部との間に配置され、第1エア制御弁に接続される入力ポート、第2制御弁に接続される入力ポート、及び第1エア供給源又は第2エア供給源からのエアを出力してブレーキ部に供給する出力ポートを含む
この装置では、パッケージ巻き取り動作時には、第1エア供給回路の第1エア供給源からの第1エアが、第1エア制御弁を介して、ブレーキ部に供給される。
ブレーキ動作時には、第2エア供給源からの第2エアが、第2エア制御弁を介してリフタに供給され、さらに、第2エア制御弁及びエア切替弁を介してブレーキ部に供給される。
【0013】
エア切替弁は、供給されたエアの圧力が高い側のエアのみをブレーキ部に供給してもよい。したがって、第1エア供給源からエア切替弁に第1エアが供給されれば第1エアがブレーキ部に供給され、第2エア供給源からエア切替弁に第2エアが供給されれば第2エアがブレーキ部に供給される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る糸巻取装置では、巻き取り中の巻取ボビンをクレードルに確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダに備えられた糸巻取ユニットの概略図。
【図2】糸巻取ユニットの制御構成を示すブロック図。
【図3】作動エア回路の構成図。
【図4】パッケージブレーキの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)糸巻取ユニット全体
図1を用いて、自動ワインダを構成する糸巻取ユニットを説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダに備えられた糸巻取ユニットの概略図である。自動ワインダは、例えば、複数の糸巻取ユニット1と、多数の糸巻取ユニット1の巻取条件などを設定するための機台制御装置(図示せず)と、自動玉揚装置(図示せず)とから構成されている。自動玉揚装置は、玉揚要求信号を発信した糸巻取ユニット1へと移動して、パッケージ205を回収して、その糸巻取ユニット1に新たな巻取ボビン203を装着して所定の糸掛け作業を行う。巻取ボビン203は、パッケージ205の芯となる部材であり、紙製又はプラスチック製である。
【0017】
糸巻取ユニット1は、糸巻取本体5と、ユニットフレーム7とを有している。
糸巻取本体5は、給糸ボビン201の糸207をトラバースさせながら所定形状のパッケージ205として巻き返す作業である巻取作業を行う。
【0018】
ユニットフレーム7は、糸巻取本体5を支持する。ユニットフレーム7の内部には、糸巻取本体5の運転を制御するためのユニット制御部101(後述)が設けられている。
【0019】
(2)糸巻取本体
糸巻取本体5は、給糸部11と、糸処理実行部13と、巻取部15とを有している。
【0020】
給糸部11は、給糸ボビン201から糸207を解舒し供給するための装置である。給糸部11は、ボビントレータイプであり、給紙ボビン201はトレーに固定された状態で各糸巻取ユニット1の給糸部11に順次供給される。給糸部11は、解舒補助装置19を有している。解舒補助装置19は規制部材20を有している。
【0021】
糸処理実行部13は、給糸部11から供給された糸207に対して処理を行うための装置である。糸処理実行部13は、ゲート式張力付与装置21と、スプライサ23と、ヤーンクリアラ25とを有している。
【0022】
巻取部15は、糸処理実行部13によって処理された糸207をパッケージ205として巻き取るための装置である。巻取部15は、巻取ボビン203を把持するクレードル29と、糸207をトラバースさせる綾振ドラム31とを有している(後述)。
【0023】
図1に示すように、給糸部11、糸処理実行部13、巻取部15は、糸走行方向の上流側から下流側へ向かってこの順に配置される。そのため、給糸ボビン201と綾振ドラム31との間の糸走行経路中には、糸走行方向の上流側(給糸ボビン201側)から順に、以下の装置が配置されている。解舒補助装置19、ゲート式張力付与装置21、スプライサ23、ヤーンクリアラ25、である。
【0024】
巻取ボビン203を把持する機構を説明する。
クレードル29は、パッケージ205を把持するための部材であり、一対のクレードルアーム29a,29bを備えている。クレードルアーム29a,29bはヒンジ軸を中心として回転可能に支持されており、綾振ドラム31に対し近接又は離間する方向に回動できる。一対のクレードルアーム29a,29bの先端には、それぞれ巻取ボビン把持部32a,32bが回転可能に取り付けられている。巻取ボビン把持部32a,32bは互いに対向するように配置されており、巻取ボビン203を挟みこんで保持できる。クレードル29に巻取ボビン203を取り付けると、巻取ボビン203の軸方向の端部に巻取ボビン把持部32a,32bが嵌まり、摩擦力によって一体的に回転することができる。本実施形態においてクレードル29はコーン型の巻取ボビン203を装着可能に構成されており、その大径側が巻取ボビン把持部32aに取り付けられており、小径側が巻取ボビン把持部32bに取り付けられている。
【0025】
図2〜図4を用いて、パッケージブレーキ51とリフトアップシリンダ57を説明する。図3は、作動エア回路の構成図である。図4は、パッケージブレーキの概略断面図である。
【0026】
クレードルアーム29aの先端部には、パッケージ205の回転を制動するためのパッケージブレーキ51が設けられている。パッケージブレーキ51は、図4に示すように、ハウジング52と、ベアリングスリーブ53と、回転支持部54と、第1バネ55、第2バネ56とを有している。ベアリングスリーブ53は、ハウジング52に対して移動可能かつ回転不能に設けられている。回転支持部44は、ベアリングスリーブ53の内側に設けられ、巻取ボビン把持部32aから延びるシャフトを回転可能に支持している。第1バネ55はハウジング52の底面とベアリングスリーブ53との間に配置されている。第1バネ55は、ベアリングスリーブ53に対して巻取ボビン把持部32a側への付勢力を与えている。第2バネ56は、ベアリングスリーブ53と回転支持部44との間に配置されている。
この構成で、ハウジング52に圧縮空気が供給されない状態では、巻取ボビン把持部32aはベアリングスリーブ53に対し自由に回転することができる。一方、ハウジング52の内部に圧縮空気が供給されると、進出するベアリングスリーブ53に設けられた接触部53aが巻取ボビン把持部32aに接触する。このとき巻取ボビン把持部32aは巻取ボビン203とベアリングスリーブ53とに挟みこまれる状態となるので、巻取ボビン把持部32aと接触部53aとの間に摩擦抵抗が発生する。これにより、巻取ボビン把持部32aの回転が制動され、それにより巻取ボビン203(及びパッケージ205)の回転を制動することができる。また、ベアリングスリーブ53の進出によって巻取ボビン把持部32aが巻取ボビン203の軸方向端部に強く押し込まれるので、巻取ボビン把持部32aと巻取ボビン203との摩擦結合が強められ、巻取ボビン203が巻取ボビン把持部32aに対して空回りしにくくなる。このように、パッケージブレーキ51は、巻取ボビン把持部32aの回転制動と、巻取ボビン把持部32aの巻取ボビン203側への押圧とを同時に行うように構成されている。
【0027】
パッケージブレーキ51は、ベアリングスリーブ53に対して作用する力が所定の大きさの力以下の場合は、巻取ボビン203を巻取ボビン把持部32a、32b間で挟む力を高めるが、巻取ボビン203の回転を制動することはない。それに対して、パッケージブレーキ51は、ベアリングスリーブ53に対して作用する力が所定の大きさ以上であれば、巻取ボビンの回転を制動する。具体的には、ベアリングスリーブ53が巻取ボビン把持部32aに対して摩擦係合することで、両者の相対回転が停止する。
この実施形態では、所定の大きさとは、例えば10kgfである。
【0028】
リフトアップシリンダ57は、クレードル29を移動させてパッケージ205を綾振ドラム31から離間させるための装置である。リフトアップシリンダ57は、空気圧で駆動される。リフトアップシリンダ57のシリンダロッドはクレードルアーム29aに連結されており、当該リフトアップシリンダ57が伸長駆動することで、パッケージ205を綾振ドラム31から離間させる向きにクレードル29を回転させることができる。
【0029】
図4を用いて、パッケージブレーキ51及びリフトアップシリンダ57を駆動する作動エア回路40を説明する。作動エア回路40は、第1エア供給回路41と第2エア供給回路42とを有している。
【0030】
第1エア供給回路41は、パッケージ205に糸を巻き取るときに、パッケージ205をクレードル29に保持するためのエアをパッケージブレーキ51に供給するための回路である。第1エア供給回路41は、第1エア供給源63と、第1エア供給源63とパッケージブレーキ51との間に配置された第1電磁弁(第1エア制御弁)59とを有している。第1電磁弁59は、パッケージブレーキ51に対する圧縮空気の供給/停止を切り替えるための機構である。第1エア供給源63からパッケージブレーキ51までは、第1エアパイプ88が延びている。
【0031】
第1電磁弁59はユニット制御部101に電気的に接続されており、ユニット制御部101(後述のブレーキ・リフトアップ制御部103)は、第1電磁弁59に対して信号を送ることで、パッケージブレーキ51の駆動を制御できる。
【0032】
第1電磁弁59には、第1エア供給源63が接続されている。第1エア供給源63の圧は、ブレーキ作動時に供給されるエアの圧より弱く、1/3以下である。
【0033】
第2エア供給回路42は、パッケージブレーキ51及びリフトアップシリンダ57を駆動するための回路である。第2エア供給回路42は、第1エア供給回路41からのエアより圧が高いエアをパッケージブレーキ51及びリフトアップシリンダ57に供給する。第2エア供給回路42は、第2エア供給源65と、第2エア供給源65とリフトアップシリンダ57との間に配置された第2電磁弁(第2エア制御弁)61とを有している。第2電磁弁61は、リフトアップシリンダ57に対する圧縮空気の供給/停止を切り替えるための機構である。第2エア供給源65からリフトアップシリンダ57までは、第2エアパイプ89が延びている。
第2電磁弁61はユニット制御部101に電気的に接続されており、ユニット制御部101(後述のブレーキ・リフトアップ制御部103)は第2電磁弁61に対して信号を送ることで、リフトアップシリンダ57の駆動を制御できる。
【0034】
第2電磁弁61には、第2エア供給源65が接続されている。第2エア供給源65の空気圧は第1エア供給源63の約3倍の圧であり、従来のブレーキ作動時に供給される空気圧と同程度である。
【0035】
第1エア供給回路41は、第1電磁弁59とパッケージブレーキ51との間に配置され、第1電磁弁59及び第2電磁弁61に接続されたエア切替弁67をさらに有している。また、リフトアップシリンダ57と第2電磁弁61との間にはジョイント69が設けられている。
エア切替弁67とジョイント69は、第3エアパイプ90によって互いに接続されている。エア切替弁67は、第1電磁弁59及び第2電磁弁61からの入口ポート67a、67bをそれぞれ有しており、さらに、パッケージブレーキ51への出力ポート67cとを有している。ジョイント69は、第2電磁弁61からの入口ポート69aと、リフトアップシリンダ57への出力ポート69bと、エア切替弁67への出力ポート69cとを有している。
【0036】
エア切替弁67は、例えば、シャトル弁であり、入口ポート67a、67bに供給されるエアの圧が高いいずれか一方を出力ポート67cに通過させる構造を有している。この構造では逆流は生じない。
【0037】
綾振ドラム31の周面には螺旋状の綾振溝31aが形成されており、綾振溝31aによって糸207はトラバースされる。綾振ドラム31には、綾振ドラム31を回転させるためのドラム駆動モータ97及びモータ制御部99(後述)が接続されている。
【0038】
解舒補助装置19は、芯管に被さる規制部材20を給糸ボビン201からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン201からの糸の解舒を補助する装置である。規制部材20は、給糸ボビン201から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン201上部に形成されたバルーンに対して接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。
【0039】
解舒補助装置19を駆動するために、第1駆動部75が設けられている。第1駆動部75は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて解舒補助装置19を昇降する。
【0040】
ゲート式張力付与装置21は、走行する糸207に所定のテンションを付与する装置である。ゲート式張力付与装置21は、固定の櫛歯と、可動の櫛歯とから構成されている。ゲート式張力付与装置21の可動の櫛歯を駆動するために、第2駆動部77が設けられている。第2駆動部77は、例えばロータリ式のソレノイドであり、櫛歯同士が噛み合わせられた状態と解放された状態とを切り替えることができる。
【0041】
スプライサ23は、糸切断時又は糸切れ時などに、給糸ボビン201側の糸207と、パッケージ205側の糸207と、を糸継ぎする装置である。スプライサ23は、図示しない糸寄せレバーなどの複数のレバーを備え、複数のレバーの一連の動作はカム式で駆動する。スプライサ23の複数のレバーを動作させるため、第3駆動部79が設けられている。第3駆動部79は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて、スプライサ23の複数のレバーを駆動する。
【0042】
ヤーンクリアラ25は、糸207の欠陥を検出するための装置である。ヤーンクリアラ25からの糸207の太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠陥が検出される。また、ヤーンクリアラ25には、糸欠陥を検出したときの糸切断用のカッター(図示せず)が付設される。また、ヤーンクリアラ25は糸207の走行を検出する。ヤーンクリアラ25は、糸207の走行を検出できないとき、ユニット制御部101へ糸切れ信号を送信する。
【0043】
スプライサ23の下側には給糸ボビン201側の糸207を吸引捕捉してスプライサ23へ案内する下糸案内パイプ35が設けられ、上側にはパッケージ205側の糸207を吸引捕捉してスプライサ23へ案内する上糸案内パイプ37が設けられている。
【0044】
下糸案内パイプ35は、ユニットフレーム7に対して軸35aを中心に回動可能に装着されており、先端には吸引口36が設けられている。上糸案内パイプ37は、ユニットフレーム7に対して軸37aを中心に回動可能に装着されており、先端にはサクションマウス38が設けられている。下糸案内パイプ35及び上糸案内パイプ37には負圧源が接続されており、それにより吸引口36及びサクションマウス38に吸引流を発生させることができる。
【0045】
下糸案内パイプ35を駆動するため、ステッピングモータからなる第4駆動部85が設けられている。第4駆動部85は、下糸案内パイプ35を軸35aを中心として旋回するように駆動することができる。第4駆動部85は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて、下糸案内パイプ35を旋回する。また、下糸案内パイプ35には、ユニット制御部101に接続される下糸案内パイプセンサ87が設けられている。下糸案内パイプセンサ87は、例えば光学式に構成され、パイプ内に吸い込まれた糸207を検出すれば、ユニット制御部101へ糸検出信号を送信する。
【0046】
同様に、上糸案内パイプ37を駆動するため、ステッピングモータからなる第5駆動部91が設けられている。第5駆動部91は上糸案内パイプ37を軸37aを中心として旋回するように駆動することができる。第5駆動部91は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて、上糸案内パイプ37を旋回できる。また、上糸案内パイプ37には、上糸案内パイプセンサ93が設けられている。上糸案内パイプセンサ93は、例えば光学式に構成され、パイプ内に吸い込まれた糸207を検出すれば、ユニット制御部101へ糸検出信号を送信する。
【0047】
この構成で、糸切断時又は糸切れ時においては、上糸案内パイプ37が図1に示す位置から軸37aを中心として下から上へと旋回し、逆転するパッケージ205から糸207を吸引捕捉し、さらに軸37aを中心として上から下へと旋回し、スプライサ23に糸207を案内する。次に、下糸案内パイプ35が図1に示す位置で給糸ボビン201側の糸207を吸引捕捉し、軸35aを中心として下から上へと旋回してスプライサ23に糸207を案内する。同時に、そして、スプライサ23は、このように案内された2本の糸207を所定の糸継動作によって糸継ぎするようになっている。
【0048】
(3)ユニット制御部
図2を用いて、ユニット制御部101について説明する。図2は、糸巻取ユニットの制御構成を示すブロック図である。
ユニット制御部101は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及び制御プログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAMと、I/Oポートとを備えている。そして、ROMに記憶されたための制御プログラムがCPUに読み込まれCPU上で実行されることで、制御プログラムは、CPUなどのハードウェアを用いて、糸巻取本体5の各構成を制御する。
【0049】
次に、ユニット制御部101の詳細な構成について説明する。ユニット制御部101は、ブレーキ・リフトアップ制御部103と、巻取制御部107と、を備えている。ユニット制御部101のROMには各種の制御プログラムが記憶されており、制御プログラムが実行されることにより、当該ユニット制御部101の備えるCPU等のハードウェアを、ブレーキ・リフトアップ制御部103、巻取制御部107として動作させることができる。
【0050】
ブレーキ・リフトアップ制御部103は、糸切れを検知したとき又はヤーンクリアラ25が糸欠陥を検出して糸を切断したときは、直ちに第2電磁弁61を介してリフトアップシリンダ57を駆動し、パッケージ205を持ち上げて綾振ドラム31から離間させるように制御し、同時に、パッケージブレーキ51により、パッケージ205の回転を停止させる。
【0051】
巻取制御部107は、パッケージ205を駆動する綾振ドラム31の回転を制御する。綾振ドラム31にはドラム駆動モータ97の出力軸が連結されており、ドラム駆動モータ97はモータ制御部99によって制御されている。モータ制御部99は、ユニット制御部101からの信号に基づいて、ドラム駆動モータ97の回転/停止を制御する。綾振ドラム31にはドラム回転センサ68が取り付けられており、ドラム回転センサ68はユニット制御部101に電気的に接続されている。ドラム回転センサ68は例えばマグネットセンサとして構成され、綾振ドラム31が所定角度回転するごとに回転パルス信号をユニット制御部101に送信するように構成されている。ユニット制御部101は、時間あたりのパルス数を計測することで、綾振ドラム31(ドラム駆動モータ97)の回転速度を取得できる。
【0052】
(4)巻き取り動作時の制御動作
通常の巻き取り動作において、作動エア回路40及びパッケージブレーキ51の動作を説明する。
通常の巻き取り動作時には、ユニット制御部101のブレーキ・リフトアップ制御部103が、第1電磁弁59を開き、第2電磁弁61を閉じる。したがって、図3の実線矢印で示すように、第1エア供給源63からのエアが、パッケージブレーキ51に供給される。
【0053】
この状態で、第1バネ55から第2バネ56を介しての付勢力と、第1エア供給源63からの低圧のエアによって、ベアリングスリーブ53が巻取ボビン把持部32aを付勢する。したがって、巻取ボビン把持部32a及び巻取ボビン把持部32bの間で、巻取ボビン203が挟まれる。このときにベアリングスリーブ53の接触部53aは、巻取ボビン把持部32aに接触しないので、ブレーキによる制動は作用しない。以上の結果、巻取り作業中は、パッケージ205がクレードル29に確実に保持される。紙管保持力は従来に比べて例えば約1.6倍になっている。なお、このときに巻取ボビン把持部32aは回転可能であり、したがって巻取ボビン203も回転可能になっている。
【0054】
パッケージ205の脱着時には、エアの供給を停止することで、ベアリングスリーブ53に作用する力は、第1バネ55の弾性力のみになる。なお、第1バネ55の弾性力は、エア圧を補助することが目的であり弱く設定している。したがって、パッケージ205の脱着時の操作性は低下しない。なお、バネの荷重は1.5〜2.0kgfであることが好ましく、人間によるパッケージ205の脱着を考慮すると、3.0kgf以下であることが好ましい。
【0055】
(5)糸切れ・糸継ぎ時の制御動作
糸切れ・糸継ぎ動作において、作動エア回路40及びパッケージブレーキ51の動作を説明する。
【0056】
糸切れ時には、パッケージ205の巻き取り回転を停止させると同時に、クレードル29のリフトアップを行う。リフトアップを行うのは、パッケージ205と綾振ドラム31との回転差に起因する摩擦で糸が傷むのを避けるためである。
具体的には、ユニット制御部101のブレーキ・リフトアップ制御部103が第2電磁弁61を開く。それにより、図3の破線矢印で示すように、第2エア供給源65からのエアがパッケージブレーキ51とリフトアップシリンダ57に供給される。この結果、リフトアップシリンダ57がクレードル29を持ち上げて綾振ドラム31から離間する。また、パッケージブレーキ51が作動するので、パッケージ205の回転が停止される。
【0057】
パッケージブレーキ51での動作をより詳細に説明する。第2電磁弁61が開かれれば、高圧のエアがエア切替弁67に入力される。シャトル弁であるエア切替弁67は、高圧のエアが供給されたことによって、エアの導通を第1電磁弁59からの低圧エアから第2電磁弁61からの高圧エアに切り替える。これにより高圧のエアがパッケージブレーキ51に供給される。その結果、ベアリングスリーブ53がより強い力で巻取ボビン203側に進出する。このとき、巻取ボビン把持部32aは、巻取ボビン203により移動を規制されているので、巻取ボビン把持部32aは、巻取ボビン203とベアリングスリーブ53とにより挟みこまれる。このときクレードル29に回転不能に支持されたベアリングスリーブ53の接触部53aが巻取ボビン把持部32aに接触して摩擦係合するので、当該巻取ボビン把持部32aの回転を制動する制動力が発生する。また、上記制動動作において、ベアリングスリーブ53は巻取ボビン把持部32aを巻取ボビン把持部32bに近づく向きに押圧する押圧力を発生させるので、巻取ボビン203は巻取ボビン把持部32a,32bによって強く挟みこまれる形となり、巻取ボビン203と巻取ボビン把持部32a,32bとの結合が強められる。この結果、巻取ボビン203の回転は停止する。なお、制動力は、第1バネ55の弾性力と供給される高圧エアとによってもたらされており、紙管保持力は例えば従来と同程度である。
【0058】
(6)実施形態の作用効果
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0059】
(A)糸巻取ユニット1(糸巻取装置の一例)は、供給部から糸を巻き取ってパッケージを形成する装置であって、クレードル29(パッケージ支持部の一例)と、作動エア回路40(作動エア回路の一例)とを備えている。クレードル29は、パッケージ205を挟みこんで保持する巻取ボビン把持部32a(保持部の一例)、及び供給されたエア圧に応じて巻取ボビン把持部32aの保持力及び制動をコントロールするパッケージブレーキ51(ブレーキ部の一例)、を有する。作動エア回路40は、パッケージブレーキ51が巻取ボビン把持部32aを介してパッケージ205を回転可能に支持するための保持力を供給するための第1エアをパッケージブレーキ51に供給する第1エア供給回路41、及びパッケージブレーキ51が巻取ボビン把持部32aを介してパッケージ205を制動して停止させるための第2エアをパッケージブレーキ51に供給する第2エア供給回路42、を有する。
この装置では、糸巻取り動作中は、作動エア回路40の第1エア供給回路41からの第1エアによってパッケージブレーキ51が作動して、パッケージ205を回転可能に支持する。この結果、良質な巻き状態のパッケージを形成できる。
さらに、例えば糸継ぎ動作時には、第2エア供給回路42がパッケージブレーキ51に第2エアを供給する。これにより、パッケージブレーキ51がパッケージ205を制動して停止させる。
【0060】
(B)糸巻取ユニット1は、第1バネ55(弾性部材の一例)をさらに備えていてもよい。第1バネ55は、クレードル29に設けられ、パッケージブレーキ51がパッケージ205を回転可能に支持するのを補助するための弾性力を発生する。
パッケージ205の脱着時には、パッケージブレーキ51への第1エアの供給が停止される。第1エアを併用することによって第1バネ55の弾性力は比較的小さく設定できるので、パッケージ脱着時の操作性は低下しない。
【0061】
(C)糸巻取ユニット1は、クレードル29を持ち上げるためのリフトアップシリンダ57(リフタの一例)をさらに備えていてもよい。その場合、第2エア供給回路42は、第2エアをパッケージブレーキ51に供給するとともにリフトアップシリンダ57にも第2エアを供給する
【0062】
(D)第1エア供給回路41は、第1エア供給源63(第1エア供給源の一例)と、第1エア供給源63とパッケージブレーキ51との間に配置された第1電磁弁59(第1エア制御弁の一例)とを有していてもよい。第2エア供給回路42は、第2エア供給源65(第2エア供給源の一例)と、第2エア供給源65とリフトアップシリンダ57との間に配置された第2電磁弁61(第2エア制御弁の一例)とを有していてもよい。第1エア供給回路41は、第1電磁弁59とパッケージブレーキ51との間に配置され、第1電磁弁59に接続される入力ポート67a、第2電磁弁61に接続される入力ポート67b、及び第1エア供給源63又は第2エア供給源65からのエアを出力してパッケージブレーキ51に供給する出力ポート67cを含むエア切替弁67(エア切替弁の一例)をさらに有していてもよい。
この装置では、パッケージ巻き取り動作時には、第1エア供給回路41の第1エア供給源63からの第1エアが、第1電磁弁59を介して、パッケージブレーキ51に供給される。
ブレーキ動作時には、第2エア供給源65からの第2エアが、第2電磁弁61を介してリフトアップシリンダ57に供給され、さらに、第2電磁弁61及びエア切替弁67を介してパッケージブレーキ51に供給される。
【0063】
(E)エア切替弁67は、供給されたエアの圧力が高い側のエアのみをパッケージブレーキ51に供給してもよい。したがって、第1エア供給源63からエア切替弁67に第1エアが供給されれば第1エアがパッケージブレーキ51に供給され、第2エア供給源65からエア切替弁67に第2エアが供給されれば第2エアがパッケージブレーキ51に供給される。
【0064】
(7)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
例えば、前記実施形態ではパッケージ巻き取り動作時に、パッケージブレーキに対して低圧エアに加えてバネによる補助も行っていたが、低圧エアのみによってパッケージが巻取ボビン把持部によって回転自在に支持されるようにしてもよい。
【0065】
例えば、ブレーキとリフタに別々の独立したエア供給回路が接続されている作動エア回路に対して、さらに別の独立した低圧のエア供給部を設けてもよい。巻き取り動作中には低圧のエア供給部からエアがブレーキに供給される。この場合は、低圧のエア供給源からのエアによって、巻取バルブがクレードルに確実に保持される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 糸巻取ユニット(糸巻取装置)
5 糸巻取本体
7 ユニットフレーム
11 給糸部
13 糸処理実行部
15 巻取部
19 解舒補助装置
20 規制部材
21 ゲート式張力付与装置
23 スプライサ
25 ヤーンクリアラ
29 クレードル
29a クレードルアーム
29b クレードルアーム
31 綾振ドラム
32a 巻取ボビン把持部
32b 巻取ボビン把持部
35 下糸案内パイプ
37 上糸案内パイプ
40 作動エア回路
41 第1エア供給回路
42 第2エア供給回路
51 パッケージブレーキ
52 ハウジング
53 ベアリングスリーブ
53a 接触部
54 回転支持部
55 第1バネ
56 第2バネ
57 リフトアップシリンダ
59 第1電磁弁
61 第2電磁弁
63 第1エア供給源
65 第2エア供給源
67 エア切替弁
68 ドラム回転センサ
69 ジョイント
75 第1駆動部
77 第2駆動部
79 第3駆動部
85 第4駆動部
87 下糸案内パイプセンサ
88 第1エアパイプ
89 第2エアパイプ
90 第3エアパイプ
91 第5駆動部
93 上糸案内パイプセンサ
97 ドラム駆動モータ
99 モータ制御部
101 ユニット制御部
103 ブレーキ・リフトアップ制御部
201 給糸ボビン
203 巻取ボビン
205 パッケージ
207 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給部から糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
パッケージを挟みこんで保持する保持部、及び供給されたエア圧に応じて前記保持部の保持力及び制動をコントロールするブレーキ部、を有するパッケージ支持部と、
前記ブレーキ部が前記保持部を介して前記パッケージを回転可能に支持するための保持力を供給するための第1エアを前記ブレーキ部に供給する第1エア供給回路、及び前記ブレーキ部が前記保持部を介して前記パッケージを制動して停止させるための第2エアを前記ブレーキ部に供給する第2エア供給回路、を有する作動エア回路と、
を備えたことを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記パッケージ支持部に設けられ、前記ブレーキ部が前記パッケージを回転可能に支持するのを補助するための弾性力を発生する弾性部材をさらに備えている、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記パッケージ支持部を持ち上げるためのリフタをさらに備え、
前記第2エア供給回路は、前記第2エアを前記ブレーキ部に供給するとともに前記リフタにも前記第2エアを供給する、請求項1又は2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記第1エア供給回路は、第1エア供給源と、前記第1エア供給源と前記ブレーキ部との間に配置された第1エア制御弁とを有しており、
前記第2エア供給回路は、第2エア供給源と、前記第2エア供給源と前記リフタとの間に配置された第2エア制御弁とを有しており、
前記第1エア供給回路は、前記第1エア制御弁と前記ブレーキ部との間に配置され、前記第1エア制御弁に接続される入力ポート及び前記第2制御弁に接続される入力ポート、及び前記第1エア供給源又は前記第2エア供給源からのエアを出力して前記ブレーキ部に供給する出力ポートを含む、エア切替弁をさらに有する、請求項3に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記エア切替弁は、供給されたエアの圧力が高い側のエアのみを前記ブレーキ部に供給する、請求項4に記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67469(P2013−67469A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206414(P2011−206414)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)