説明

紐留め具

【課題】作業効率を向上することができる紐留め具を提供する。
【解決手段】挿通孔を内側に有するソケット11と、紐の端部を把持した状態でソケット11の挿通孔に挿入される紐固定部12とを有する紐留め具であって、ソケット11及び紐固定部12は、紐固定部12がソケット11に挿入される方向に加えられる押圧力によって連結解除可能な連結部を介して一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紐の末端部を処理する留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衣類やバックパック等に用いられる紐の末端部に、紐のほつれ防止や美観の向上等のために紐留め具が固定されている。この種の紐留め具には、紐の末端部を把持固定するプラグと、プラグを固定するソケットとを有する構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。この紐留め具を紐に固定する際には、ソケットの一方の開口から紐を挿通し、他方の開口から紐の端部を引き出す。そしてプラグのアーム部を押し開いてソケットに挿通された紐の端部を挟持させる。そして、紐の端部を挟持させたプラグ部をソケットに挿入していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4496099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記紐留め具を紐の端部に固定する場合、例えば、プラグを一方の手で固定しつつ、プラグのアーム部が押し開かれた状態を維持し、他方の手で紐の端部をプラグに差し込むため、作業の容易性が低下する。このため、紐留め具を紐に固定する際の作業効率が低下してしまう。
【0005】
その他の従来構成の紐留め具に関しても、プラグを一方の手で固定しつつ、ソケットに挿通された紐の端部をプラグに差し込み固定させる作業等が必要となる場合が多く、作業効率の改善が求められていた。特に最近、紐留め具に対し小型化が要請されているため、プラグやソケットが小型化された場合には、作業効率がより低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業効率を向上することができる紐留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、挿通孔を内側に有する筒状部と、紐の端部を固定した状態で前記筒状部の前記挿通孔に収容される紐固定部とを有する紐留め具であって、前記筒状部及び前記紐固定部は、前記紐固定部が前記筒状部に挿入される方向に加えられる押圧力により連結解除可能な連結部を介して一体に設けられていることを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、筒状部及び紐固定部は、連結解除可能な連結部によって一体に連結されているため、筒状部及び紐固定部に紐を挿通した後、紐固定部を押圧することで、紐固定部を筒状部に挿入し、紐の端部を固定することができる。従って、従来構成の紐留め具のように、紐固定部を一方の手で固定しつつ、他方の手で紐の端部を紐固定部に差し込み固定するといった作業が省略される。このため、紐を紐留め具に固定する際の作業効率を向上することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の紐留め具において、前記紐固定部は、紐の端部を把持する把持部を有し、前記把持部は、基端を中心に回動可能に設けられ、前記筒
状部内への前記紐固定部の挿入に伴い内側に向かって回動し、前記紐の端部を把持した状態で前記筒状部に収容されることを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、把持部は、基端を中心に回動可能に設けられているため、紐固定部を押圧して筒状部へ挿入させることで、把持部を内側に回動させて紐を把持させることができる。従って、連結の解除、紐の把持、紐固定部の筒状部への挿入を一動作でなし得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の紐留め具において、前記紐固定部は、その基端側の一部が前記筒状部の前記挿通孔に挿入された状態で前記筒状部に一体に設けられていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、紐固定部は、その基端側の一部が筒状部の挿通孔に挿入されているので、連結部における連結状態が解除された際、その紐固定部を、筒状部内に円滑に導くことができる。このため紐固定部を押圧することで、紐固定部を筒状部に簡単に固定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紐留め具において、前記紐固定部は、前記筒状部に挿通された紐をガイドするためのガイド部を備えていることを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、ガイド部により、筒状部に挿通した紐が支持されながら紐固定部に挿入される。このため、作業効率を向上することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紐留め具において、前記紐固定部は、基端側から延出したガイド部と、該ガイド部の先端に設けられ、前記紐固定部に押圧力を印加するための押圧部とを備えていることを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、紐固定部は、ガイド部の先端に押圧部を備えているため、紐固定部に押圧力を印加しやすくなる。また、押圧部に印加された押圧力は、ガイド部を介して連結部に伝達されるため、連結部に直接力を加えなくても、連結状態を解除することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の紐留め具において、前記連結部は、前記筒状部と前記紐固定部とが連結された領域を薄肉化することで形成されていることを要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、連結部は、上記領域を薄肉化することにより、連結を解除しやすくすることができる。また、連結部を別部品から構成しないため、筒状部及び紐固定部を、射出成型等により樹脂で一体に成形することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の紐留め具において、前記紐固定部は、前記筒状部に挿通された紐を挿入する入口及び該入口に連続する孔部を備え、前記孔部の側面は、前記入口に向かって拡開していることを要旨とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、紐固定部の孔部の側面は、入口に向かって拡開しているため、筒状部に挿通した紐を、紐固定部に挿入しやすくすることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか1項に記載の紐留め具において、前記紐固定部は、前記ガイド部の間を2つの紐挿通部に区画する隔壁部を備え、前記隔壁部のうち、前記把持部と対向する側面には、紐の端部を咬止する爪が形成されていることを要旨とする。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、隔壁部に紐の端部を咬止する爪を設けたので、2本の紐の端部を固定する場合であっても、強力に紐を固定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明によれば、作業効率を向上することができる紐留め具を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の紐留め具であって、紐を固定する前の状態を示す斜視図。
【図2】(a)は同紐留め具の全体側面図、(b)は同紐留め具の先端を(a)とは異なる方向からみた側面図。
【図3】同紐留め具の縦断面図。
【図4】同紐留め具の要部断面図。
【図5】同紐留め具の作用を示す断面図であって、(a)は紐を挿通した状態、(b)は連結を解除した状態、(c)は紐把持部が回動始端位置から回動した状態、(d)は紐固定部がスライド開始位置とスライド終端位置との間に位置する状態をそれぞれ示す。
【図6】紐固定部がスライド終端位置に位置する状態を示す縦断面図。
【図7】本発明を具体化した第2実施形態の紐留め具の斜視図。
【図8】同紐留め具の図7中A−A線における縦断面図。
【図9】同紐留め具の作用を示す断面図であって、(a)は紐を挿通した状態、(b)は連結を解除した状態、(c)は紐把持部が回動始端位置から回動した状態、(d)は紐固定部がスライド終端位置に位置する状態を示す。
【図10】本発明を具体化した別例の紐留め具であって、(a)〜(c)はそれぞれ各例の紐留め具の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の紐留め具を具体化した一実施形態について、図1〜図6に従って説明する。本実施形態の紐留め具は、繊維を束ねた紐、ゴム紐、樹脂からなる紐等の長尺状の紐の端部を処理する留め具であって、1本の紐の端部を処理するタイプの留め具である。
【0024】
図1に示すように、紐留め具は、筒状部としてのソケット11と、ソケット11と一体に形成された紐固定部12(プラグ)とを備える。ソケット11及び紐固定部12は、樹脂からなり、射出成形等により一体に成形されている。
【0025】
ソケット11は略円筒状に形成され、その側壁のうち、紐固定部12側には、回転防止溝13が形成されている。回転防止溝13は、ソケット11の端面11cから、ソケット11の側壁をU字状に切り欠くように形成されている。
【0026】
図2に示すように、ソケット11の側壁のうち、回転防止溝13が形成された位置に対して周方向に180°離れた位置には、抜出防止孔14が貫通形成されている。抜出防止孔14は、回転防止溝13に対して区別可能となるように、矩形状に形成されている。
【0027】
また図3に示すように、ソケット11は、紐を挿入する挿入口11aと、紐をソケット11内に挿通する挿通孔11bとを備えている。ソケット11のうち、挿入口11a側に対して反対側となる端部には、紐固定部12が連結されている。
【0028】
図4に示すように、紐固定部12は、ソケット11に連結された基端部15を有してい
る。基端部15は、略円環状をなし、外径がソケット11の内径以下の大きさに形成されている。また基端部15は、その一部が、ソケット11の挿通孔11bに挿入された状態でソケット11に連結されている。また、基端部15とソケット11との連結領域である連結部20は、その厚さT1が、基端部15の側壁の厚さT2や、他の部位の厚さよりも小さくなるように薄肉化されている。
【0029】
基端部15の先端には、ソケット11内に挿通された紐Sを受け入れるための内側挿入口16が設けられ、基端部15内には、内側挿入口16から挿入された紐Sを挿通させるための内側挿通孔17が設けられている。
【0030】
また、内側挿入口16から内側挿通孔17の側面の途中までには、内側挿入口16へ向かって拡開する内側傾斜面18が形成され、ソケット11内に挿通された紐Sを受け入れやすくしている。
【0031】
さらに、図1に示すように、基端部15からは、1対のガイド部25が延出されている。各ガイド部25は板状且つ長尺状にそれぞれ形成され、互いに平行に配設されている。また、各ガイド部25の間には、紐Sを挿通させるための空間である紐挿通部26が設けられている。紐挿通部26は、各ガイド部25の間で開口している。また、各ガイド部25の先端には、略円盤状の押圧部27が連結されている。押圧部27は、ガイド部25の長手方向に対してその押圧面27aが垂直になるように設けられている。
【0032】
さらに一方のガイド部25の先端には、回転防止突部28が形成されている。回転防止突部28の紐留め具の周方向における位置は、回転防止溝13の周方向における位置と一致している。回転防止突部28は、U字状の回転防止溝13に嵌合可能な形状及び大きさとなるように、その外周面のうちソケット11側の側面が円弧状に形成されている。
【0033】
また、図2(a)に示すように、他方のガイド部25の先端には、抜出防止突部29が形成されている。抜出防止突部29は、抜出防止孔14に内嵌可能な形状に形成されている。抜出防止突部29の周方向における位置は、抜出防止孔14の周方向における位置と一致している。この抜出防止突部29は、図2(b)に示すように、押圧部27側からソケット11側に向かう方向に傾斜する傾斜面29aを有している。
【0034】
さらに図1に示すように、基端部15には、1対の紐把持部30が延出されている。紐把持部30は、板状且つ長尺状をなし、基端部15においてガイド部25の間に固定され、紐挿通部26の開口に対向するように形成されている。また紐把持部30は、基端部15から先端にかけて拡開するように、その先端がガイド部25から離間する方向に傾斜した状態で基端部15に形成されている。
【0035】
また、図4に示すように、紐把持部30の基端には、厚みを局所的に小さくした薄肉部31が形成されている。薄肉部31の厚さT4は、薄肉部31を除く紐把持部30の厚さT3及び基端部15の厚さT2よりも小さく形成されている。この薄肉部31が形成されることにより、紐把持部30のうち薄肉部31のみを撓ませて、紐把持部30をガイド部25に近接させる方向に回動させることができる。
【0036】
図3に示すように、各紐把持部30のうち、紐挿通部26の開口に対向する側面には、複数の爪30bが形成されている。本実施形態では4つの爪30bが等間隔に形成されている。各爪30bは、断面三角形状をなし、その先端を紐Sに差し込むことで、紐Sを咬止するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の紐留め具の作用について図3及び図5に従って説明する。紐の先端
部を紐留め具に固定する際には、まず図3に示すように、ソケット11の挿入口11aから紐の端部を挿入する。紐は、ソケット11の内側面に案内されながら、挿通孔11bに挿通される。さらに紐固定部12の基端部15に設けられた内側傾斜面18にガイドされながら、内側挿入口16を介して紐固定部12の内側挿通孔17に挿入される。
【0038】
そして、図5(a)に示すように、挿通孔11b及び内側挿通孔17に挿通された紐Sの末端は、ガイド部25の先端に到達する。尚、各紐把持部30のなす角度をθ1とし、角度θ1が最大となる図5(a)に示す紐把持部30の位置を、以下、回動始端位置という。また、押圧部27に対し押圧力を印加しない状態の図5(a)に示す紐固定部12の位置を、以下、スライド始端位置という。
【0039】
紐Sをソケット11及び紐固定部12に挿通すると、押圧部27に押圧力を印加する。この際、例えば一方の手でソケット11を持ちながら、他方の手により押圧面27aを押圧する。その結果、ソケット11内に押し込まれる紐固定部12とソケット11との間にせん断力が作用し、図5(b)に示すように、連結部20において紐固定部12とソケット11とがせん断されて、紐固定部12とソケット11との連結が解除される。この際、上記したように一方の手でソケット11を固定しつつ、他方の手で紐固定部12を押圧すればよいので、作業が容易である。
【0040】
また、連結が解除された際、紐固定部12は、その基端部15の一部がソケット11の内側に収容された状態であるため、そのままソケット11内に導かれ、ソケット11の内側面を摺動しながら挿入されていく。そして基端部15全体がソケット11に挿入されると、紐把持部30がソケット11内に挿入され始める。この際、図5(c)に示すように、各紐把持部30の外側面30aが、ソケット11の内側面に当接することにより、各紐把持部30は互いに近接する方向(ガイド部25側)の力を受ける。この力を受けて、紐把持部30のうち、最も撓みやすい薄肉部31が内側へ撓む。その結果、紐把持部30は、回動始端位置から、互いに近接する方向であって、角度θ1が小さくなる方向に回動していく。
【0041】
さらに押圧部27を押圧すると、図5(d)に示すように、各紐把持部30は、互いに平行(角度θ=0°)となる位置(回動終端位置)まで回動する。紐把持部30が回動終端位置に配置されると、紐把持部30に形成された爪30bが、紐Sに最大限に差し込まれ、紐Sが紐固定部12に対して咬止される。そして、紐把持部30は、回動終端位置を保った状態でソケット11に押し込まれていく。
【0042】
図6に示すように、押圧部27の押圧面27aがソケット11の端面11cとほぼ同一面となる位置まで押圧部27を押圧すると、回転防止突部28が回転防止溝13に嵌入される(図示略)。また、抜出防止突部29は、傾斜面29aの先端からソケット11内に挿入され、やがて抜出防止突部29全体が抜出防止孔14に重なることで嵌合する。この回転防止突部28と回転防止溝13との嵌合と、抜出防止突部29と抜出防止孔14との嵌合とにより、紐固定部12のソケット11に対するスライド移動が停止され、紐固定部12がソケット11に対して固定される(スライド終端位置)。このスライド終端位置では、紐固定部12は紐Sを固定した状態でソケット11に収容される。
【0043】
このように、紐留め具に紐の端部を固定する際には、紐固定部12とソケット11との連結の解除、紐把持部30の回動による紐Sの挟持及び紐固定部12のソケット11に対する固定を、一方の手でソケット11を固定しつつ、他方の手で紐固定部12をソケット11側に押圧するといった一つの容易な動作で行うことができる。
【0044】
紐Sの端部に固定された紐留め具は、紐Sの端部のほつれ等を防止し、通常の場合は紐
Sから取り外されることなく使用される。紐固定部12はソケット11に対して回転不能とされているので、紐固定部12の回転により紐Sが捻じれたりすることがない。また、紐固定部12をソケット11から抜出させるような方向に、意図しない力が加わったとしても、抜出防止突部29と抜出防止孔14との係合により、容易には抜出されない。このため、堅牢性の高い紐留め具を提供することができる。
【0045】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1実施形態では、紐留め具のソケット11及び紐固定部12は、紐固定部12に対する押圧力により連結解除可能な連結部20を介して一体に設けられている。従って、紐Sを紐固定部12に差し込む際に、紐固定部12を手で固定する必要がないため、従来構成の紐留め具のように、紐固定部(プラグ)を一方の手で固定しながら紐が差し込まれるための状態を維持し、他方の手でその紐固定部に紐を差し込み固定させるといった作業を省くことができる。このため、紐Sを紐留め具に固定する際の作業効率を向上することができる。
【0046】
(2)第1実施形態では、紐固定部12の紐把持部30は、ソケット11側の基端から先端にかけて拡開するように傾斜した状態で基端部45に設けられているため、ソケット11に挿通した紐Sを、紐固定部12の先端まで連続して挿通しやすくなる。さらに、紐固定部12を押圧してソケット11へ挿入することで、紐把持部30が自ずと内側に回動して紐Sを挟持するので、紐固定部12とソケット11との連結の解除、紐Sの把持、紐固定部12のソケット11への挿入を、一方向への押圧といった一動作でなし得ることができる。
【0047】
(3)第1実施形態では、紐固定部12は、その基端部15の一部がソケット11の挿通孔11bに挿入されているので、連結部20における連結が解除された際、解除された紐固定部12をソケット11内に円滑に導くことができる。このため、押圧部27を押圧するだけで、紐固定部12をソケット11内に簡単に固定することができる。
【0048】
(4)第1実施形態では、紐固定部12は、紐把持部30の間にガイド部25を備えているので、ソケット11に挿通した紐Sを、ガイド部25によって支持しながら紐固定部12に挿入することができる。このため、紐Sを紐留め具に挿通する際の作業効率を向上することができる。
【0049】
(5)第1実施形態では、ガイド部25の先端に押圧部27を備えているので、紐固定部12に押圧力を印加しやすくなる。また、押圧部27に印加された押圧力は、ガイド部25を介して連結部20に伝達されるため、連結部20に直接力を加えなくても、連結状態を解除することができる。
【0050】
(6)第1実施形態では、連結部20は、ソケット11と紐固定部12とが連結された領域を薄肉化することで形成されている。このため、ソケット11及び紐固定部12を、射出成型等により樹脂で一体に成形することができるので、コストを低減することができる。
【0051】
(7)第1実施形態では、紐固定部12の挿通孔11bの側面は、挿入口11aに向かって拡開している。このため、ソケット11に挿通した紐Sを、紐固定部12に挿入しやすくすることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図7〜図9にしたがって説明する。尚、第2実施形態は、第1実施形態の紐留め部を、2本の紐を固定可能な構成に変更しただけであ
るため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0053】
図7に示すように、本実施形態の紐留め部は、2本の紐Sの端部を固定可能な構成であって、筒状部としてのソケット41と、ソケット41と一体に形成された紐固定部42とを備える。
【0054】
ソケット41は、2本の紐Sを並べて挿入可能な楕円形状の挿入口41aと、断面楕円形状の挿通孔41bとを備えている。また、ソケット41の側壁のうち、挿入口41aと反対側の端部には、1対の抜出防止孔41cと、1対の回転防止溝41dとがそれぞれ設けられている。
【0055】
紐固定部42は、ソケット41に連結された基端部45を有している。図8に示すように、基端部45は、その一部が、ソケット41の挿通孔41bに挿入されている。また基端部45は、入口としての内側挿入口46と、孔部としての内側挿通孔47とを有している。内側挿入口46は、楕円長軸方向に2本の紐Sを挿入可能な楕円形状に形成され、内側挿通孔47は、2本の紐Sを挿通可能な断面楕円形状に形成されている。また、内側挿入口46から内側挿通孔47の側面の途中までには、内側傾斜面48が形成されている。
【0056】
この基端部45は、ソケット41と連結部50を介して連結されている。連結部50は、基端部45の厚さよりも小さい厚さを有し、薄肉化されている。
また、図7に示すように、基端部45からは4本のガイド部55が延出されている。ガイド部55の間には、各ガイド部55で囲まれた空間を2つに区画する隔壁部56が形成されている。この隔壁部56と、2対のガイド部55とによって、各紐Sを挿通させるための2つの紐挿通部57a,57bが形成されている。紐挿通部57a,57bは、隔壁部56と反対側に開口をそれぞれ有している。また、隔壁部56は、その紐挿通部57a,57bに対向する各側面に爪56aをそれぞれ有している。
【0057】
また、4本のガイド部55は、偏平且つ楕円形状の押圧部58によって連結されている。この押圧部58の側面には、回転防止突部59が形成されている。回転防止突部59の紐留め具の周方向における位置は、回転防止溝41dの周方向における位置と一致している。さらに、隔壁部56の両端面における先端には、各抜出防止突部60がそれぞれ形成されている。抜出防止突部60の周方向における位置は、抜出防止孔41cの周方向における位置と一致している。
【0058】
また、基端部45には、爪62を有する1対の紐把持部61が形成されている。紐把持部61は、第1実施形態の紐把持部30と同じ形状である。紐把持部61は、ガイド部55の間に固定され、紐挿通部57a,57bの開口に対向するように形成されている。また、紐把持部61は、その先端がガイド部55から離間する方向に傾斜した状態で基端部15に形成されている。また、紐把持部61の基端には、薄肉部(図示略)が形成されている。
【0059】
次に、本実施形態の紐留め具の作用について図9に従って説明する。まず図9(a)に示すように、ソケット41の挿入口41aから2本の紐Sの端部を挿入し、紐Sの端部が紐固定部42の先端部に到達するまで挿通する。このとき、各紐把持部61は、互いになす角度θ2が最大となる回動始端位置に配置されている。また、紐固定部42は、スライド始端位置に配置されている。
【0060】
そして、押圧部58を押圧すると、図9(b)に示すように、ソケット41内に押し込まれる紐固定部42とソケット41との間にせん断力が作用し、連結部50(図8参照)において紐固定部42とソケット41とがせん断されて、連結が解除される。
【0061】
連結が解除された際、紐固定部42は、その基端部45の一部がソケット41の内側に収容されているので、そのままソケット41内に導かれ、ソケット41内を摺動する。図9(c)に示すように、紐把持部61がソケット41内に挿入される際には、紐把持部61は、ソケット41の内側面との当接により互いに近接する方向の力を受け、薄肉部63が撓むことで、回動始端位置から角度θ2が小さくなる方向に回動する。
【0062】
回転防止突部59が回転防止溝41dに内嵌され、抜出防止突部60が抜出防止孔41cに内嵌されることで、紐固定部42がスライド終端位置に配置されると、図9(d)に示すように、各紐把持部61は回動終端位置に配置された状態でソケット41内に収容される。また、紐把持部61の爪62は、紐挿通部57a,57bに挿通された紐Sに差し込まれ、紐Sがプラグに対して咬止される。このため、各紐挿通部57a,57bに挿通された紐Sの端部をそれぞれ固定することができる。
【0063】
従って、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(7)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(8)第2実施形態によれば、ガイド部55の間を2つの紐挿通部57a,57bに区画する隔壁部56を備え、隔壁部56のうち、各紐把持部61と対向する側面には、紐Sを咬止する爪62が形成されているため、2本の紐Sの端部を固定する場合であっても、強力に紐を固定することができる。
【0064】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・爪30b,62の形状は、断面三角形状でなくてもよく、単なる板状に形成されていてもよい。また、紐把持部30,61の側面の間で紐Sを挟持可能であれば、紐把持部30,61に形成された爪30b,62は省略してもよい。例えば挟持する紐Sの材質が樹脂である場合、その樹脂との摩擦係数が大きいエラストマー又は樹脂シートを紐把持部30,61に貼着し、摩擦により紐Sの抜出を防止してもよい。
【0065】
・紐把持部30,61は2対以上設けてもよい。
・紐固定部12,42及びソケット11,41は、その連結を解除する工具を用いて、連結解除されるようにしてもよい。即ち、連結部20,50に、上記工具によって、手で押圧するよりも大きな押圧力を印加するようにしてもよい。
【0066】
・紐留め具は、紐固定部12,42をソケット11,41に対して捩じり且つ押し込むような力によって、紐固定部12,42とソケット11,41との連結状態を解除するような構成にしてもよい。
【0067】
・本発明の紐留め具は、図10(a)に示すように、一方の紐把持部80を、ガイド部25の長手方向に垂直となるように形成し、他方の紐把持部30を、傾斜した状態で形成してもよい。そして、紐固定部12がソケット11内に挿入される際、他方の紐把持部30のみが回動するようにしてもよい。
【0068】
・本発明の紐留め具に設けられる紐把持部は、その構成を変更してもよい。例えば、図10(b)に示すように、板状且つ先端が折り曲げられたコの字状の紐把持部81から構成してもよい。紐把持部81は、基端部15に傾斜した状態で設けられ、ソケット11に挿入されるに伴い、内側に回動し、その先端に形成された爪81aによって紐Sを把持する。尚、爪81aは省略してもよい。
【0069】
・本発明の紐留め具は、図10(c)に示すように、ガイド部25を省略した構成でもよい。この場合、紐把持部30の先端を押圧して、ソケット11に押し込んでいく。この
構成でも、作業性の効率を向上することができる。
【0070】
・本発明の紐留め具の基端部15は、図10(d)に示すように、その一部が、ソケット11内に挿入されていない状態でもよい。基端部15とソケット11とが重複していなくても、基端部15の外径はソケット11の内径以下であるので、紐固定部12とソケット11との連結が解除された際、紐固定部12に加えられる押圧力により、紐固定部12をソケット11内へ導くことができる。
【符号の説明】
【0071】
S…紐、11a,41a…挿入口、11b,41b…挿通孔、11,41…筒状部としてのソケット、12,42…紐固定部、20,50…連結部、26,57a,57b…紐挿通部、30,61…把持部、25,55…ガイド部、27,58…押圧部、16,46…入口としての挿入口、17,47…孔部としての挿通孔、30b,56a,62,81a…爪、56…隔壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を内側に有する筒状部と、
紐の端部を固定した状態で前記筒状部の前記挿通孔に収容される紐固定部とを有する紐留め具であって、
前記筒状部及び前記紐固定部は、前記紐固定部が前記筒状部に挿入される方向に加えられる押圧力により連結解除可能な連結部を介して一体に設けられていることを特徴とする紐留め具。
【請求項2】
前記紐固定部は、紐の端部を把持する把持部を有し、
前記把持部は、基端を中心に回動可能に設けられ、前記筒状部内への前記紐固定部の挿入に伴い内側に向かって回動し、前記紐の端部を把持した状態で前記筒状部に収容される請求項1に記載の紐留め具。
【請求項3】
前記紐固定部は、その基端側の一部が前記筒状部の前記挿通孔に挿入された状態で前記筒状部に一体に設けられている請求項1又は2に記載の紐留め具。
【請求項4】
前記紐固定部は、前記筒状部に挿通された紐をガイドするためのガイド部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紐留め具。
【請求項5】
前記紐固定部は、基端側から延出したガイド部と、該ガイド部の先端に設けられ、前記紐固定部に押圧力を印加するための押圧部とを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紐留め具。
【請求項6】
前記連結部は、前記筒状部と前記紐固定部とが連結された領域を薄肉化することで形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の紐留め具。
【請求項7】
前記紐固定部は、前記筒状部に挿通された紐を挿入する入口及び該入口に連続する孔部を備え、前記孔部の側面は、前記入口に向かって拡開していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の紐留め具。
【請求項8】
前記紐固定部は、前記ガイド部の間を2つの紐挿通部に区画する隔壁部を備え、前記隔壁部のうち、前記把持部と対向する側面には、紐の端部を咬止する爪が形成されている請求項4〜7のいずれか1項に記載の紐留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−196265(P2012−196265A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61087(P2011−61087)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)