説明

純水製造システムの施工方法

【課題】 工期を大幅に短縮することの可能な純水製造システムの施工方法を提供する。
【解決手段】 純水製造システム1は、原水タンクTと、前処理システム2と、一次純水システム3と、サブシステム4とからなり、各システム2〜4はそれぞれ個別に機能しうるようにスキッド化されている。この純水製造システム1を工場で組み立ててバリデーションを完了して規格を満足したものを出荷し、システム設置場所に設置し、要求される水質が得られるように調整する。これにより、施工期間を大幅に短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造システムの施工方法に関し、特に出荷先での施工期間を大幅に短縮可能な純水製造システムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、純水製造システムは、客先から引き合いを受け、これら客先から提供される処理仕様を検討した上でその処理仕様を満足する純水製造システムの構成装置を選定し組み合わせる計画設計を行い、この設計に基づいて機材の調達等を行い、工場などで個々の装置を組み立て、これら個々の装置を出荷先の工場などの施行地で連結することにより製造していた。
【0003】
しかしながら、これではシステム製造のための大半の作業を出荷先で行うことになるだけでなく、その後の据付時適格性試験、運転時適格性試験などを含むバリデーションも出荷先で行う必要があるため工期が長期化し、これにより製造設備工場そのものの立ち上げ自体も長期間を要することになるという問題点があった。例えば医薬品の分野では、薬価の改定や新製品の早期市場投入による早期開発費の回収などの要請から、工期の短縮は急務である。
【0004】
そこで、このような問題点を解決することを目的として、システムを構成する個々の装置はあらかじめ製造しておき、出荷先の工場などで個々の装置を連結してシステムとすることを本出願人は提案した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−60403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法は、施工する純水製造システム(第一の純水製造システム)とは別にあらかじめ組み立てておいた純水製造システム(第二の純水製造システム)を用意しておき、ユースポイントにはこの第二の純水製造システムにより純水の需要を満たしつつ第一の純水製造システムの施工が完了したら、第一の純水製造システムに切り替えることにより、実質的に工期の短縮化を図るものであるが、それでも第一の純水製造システムは施行地で据付時適格性試験、運転時適格性試験などを含むバリデーションも行う必要がある。また、第二の純水製造システムは、一時的に利用するだけのものであるため、あまり高性能化するのはコスト的に無理があり、要求される水質が十分でないこともある。これらの問題を解決して出荷先の工場における施工期間自体を大幅に短縮することができれば、純水製造システムの立ち上げまでの期間を大幅に短縮できて望ましい。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、工期を大幅に短縮することの可能な純水製造システムの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、純水製造システムを構成する個々の装置をスキッド化して、これらスキッド化された各装置をあらかじめ組み立ててシステムを構成し、バリデーションを行った後出荷して純水供給場所に設置することを特徴とする純水製造システムの施工方法を提供する(請求項1)。
【0008】
上記発明(請求項1)によれば、すでにバリデーションを完了して規格を満足した純水製造システムを出荷し、システム設置場所に設置し、要求される水質が得られるように調整するだけでよいので、出荷先の工場における施工期間自体を大幅に短縮することができ、これによりしたがって、純水製造システムの立ち上げまでの期間を大幅に短縮することができる。
【0009】
上記発明(請求項1)においては、前記システムを、バリデーションを行った後分割して出荷してもよい(請求項2)。
【0010】
また、上記発明(請求項1,2)においては、各スキッドの配線がコネクタにより接続されているのが好ましい(請求項3)。
【0011】
さらに、上記発明(請求項1〜3)においては、前記各スキッドの配線及び配管が該スキッドの床下部に配置されているのが好ましい(請求項4)。このような上記発明(請求項1〜4)の施工方法は、純水製造システムが医薬用純水製造システムである場合に特に好適である(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態である純水製造システムの施工方法による純水製造システムの一例を示しており、同図において純水製造システム1は、原水タンクTと、前処理システム2と、一次純水システム3と、サブシステム4とからなり、各システム2〜4はそれぞれ個別に機能可能でスキッド化されている。
【0013】
ここで、前処理システム2は、例えば図2に示すような膜式前処理ユニット11と、原水供給ポンプ12とからなり、この膜式前処理ユニット11は、エアとともに原水供給ポンプ12により原水が供給されることにより、原水中の濁質やSSを除去する。
また、一次純水システム3は、活性炭塔21と保安フィルタ22と加圧ポンプ23とRO膜24と電気脱イオン装置25又はデミナユニット26とを備える基本構成であり、具体的には、要求される水質が高い場合には、図3に示すように活性炭塔21と保安フィルタ22と加圧ポンプ23とRO膜24と電気脱イオン装置25とからなる構成とすればよい。この一次純水システム3では、前処理システム2で処理した原水に対して、まず活性炭塔21において残留塩素を除去し、保安フィルタ22、加圧ポンプ23を経由した後、RO膜24において塩類(イオン類)や微粒子、生菌を除去し、続いて電気脱イオン装置25において、微量の塩類(イオン類)等を電荷を利用して高レベルにて除去することで純水を製造する。一方、要求される水質が低い場合には、図4に示すように電気脱イオン装置25の代わりに残留イオンを除去するデミナユニット26を用いた構成としてもよい。
【0014】
なお、この一次純水システム3は、原水の水質及び要求される純水のレベルにより適宜組み変えることができる。例えば、電気脱イオン装置25にかかる負担を軽減したり、あるいは処理水質の向上を図ることを目的とする場合には、図5に示すように活性炭塔21と保安フィルタ22と加圧ポンプ23とRO膜24と脱気膜ユニット27と電気脱イオン装置25とからなる構成としてもよい。この一次純水システム3では、前処理システム2で処理した原水に対して、まず活性炭塔21において残留塩素を除去し、保安フィルタ22、加圧ポンプ23を経由した後、RO膜24において、塩類(イオン類)や微粒子、生菌を除去し、続いて脱気膜ユニット27において処理水中の遊離炭酸ガスを除去した後、電気脱イオン装置25において、微量の塩類(イオン類)等を除去することにより、より高純度の純水を製造することができる。
【0015】
さらに、サブシステム4は、代表的には図6に示すようにサブタンク31とサブポンプ32とUV殺菌機33とデミナ34とUF膜ユニット35とを備えたモジュールである。このサブシステム4ではUV殺菌機33で一次純水システム3からの処理水中の生菌等を殺菌し、UF膜ユニット35で極微小な微粒子を除去する。なお、このサブシステム4も原水の水質、あるいは要求される純水の水質及び量により、その構成を適宜変更することができる。
【0016】
なお、図2〜図6において、13はスキッド枠であり、このスキッド枠13は、直方体形状のフレーム内に各システム2〜4の構成要素を設置することによりこれをスキッド化している。PLはこのスキッド枠13の床面であり、ここにメンテ通路(図示せず)などが形成される。そして、このスキッド枠13の床面PLの下側は空間としての床下領域13Aとなっていて、この床下領域13Aには各システム2〜4のそれぞれの構成要素間及び各システム間の配管・配線14が設けられている。
【0017】
従来は、これら処理システム2と、一次純水システム3と、サブシステム4とをそれぞれ工場でスキッド化して組み立て、据付時適格性検査(例えば、機器据付検査、機器類外観検査、サニタリー配管の検査、ラインの検査、配線・単体動作チェック、総合シーケンスチェック、計器類のチェック等)を行った後、各システムを個別に出荷して施工先でこれらシステム2〜4の設置、組み立てを行って純水製造システム1を構築し、さらに必要に応じてユースポイントの途中に蒸留水タンクや送水システム等の付帯設備を構築して運転時適格性検査(熱水処理確認検査、機器能力確認検査、水質検査等)などのバリデーションを行っていたが、この純水製造システム1及び付帯設備を構築して、さらにバリデーションを完了するまでには短くても4ヶ月程度を要していた。
【0018】
そこで、本実施形態においては、あらかじめ精製水製造システムなどの純水製造システム1を構成する個々の装置である前処理システム2、一次純水システム3及びサブシステム4をスキッド化して、これらスキッド化された各システム2〜4をあらかじめ組み立てて純水製造システム1のユニットを構成し、据付時適格性検査、運転時適格性検査などのバリデーションを行った後出荷して純水供給場所となる施工地に設置する。そして設置後は付帯設備を連結して、ユースポイントに要求される水質で安定供給ができるように調整を行えばよい。
【0019】
このような本実施形態に係る施工方法によれば、すでにバリデーションを完了して規格を満足した純水製造システム1を出荷してシステムの設置場所である施工先で設置し、要求される水質が得られるように調整するだけでよいので、施工先での所要期間を大幅に短縮することができ、具体的には、従来の半分程度の期間(従来4ヶ月程度の場合には2ヶ月程度)で施工を完了することができる。これにより、純水製造システム1の立ち上げまでの期間を大幅に短縮することができる。
【0020】
この場合、輸送上の便宜から純水製造システム1のユニットはできるだけコンパクトな構成とするのが好ましく、一般的な搬送用車両の大きさから幅2300mm、長さ5000mm、高さ2800mmの大きさに収まるように図1に示すようなシステムを設計するのが好ましい。このため、本実施形態においては、このスキッド枠13の下側の床下領域13Aに配管や電気配線等を設けることにより、各システム2〜4がコンパクト化されている。
【0021】
〔第2の実施形態〕
次に本発明の第2の実施形態である純水製造システムの施工方法について説明する。第2の実施態様は、基本的には前述した第1の実施形態と同じシステム構成を有するので同一の構成については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0022】
本実施形態は、純水製造システム1の大きさが前述したような輸送できる大きさを超えた場合における施工方法であり、この場合においては図1に示すように前処理システム2、一次純水システム3及びサブシステム4とからなる純水製造シシテム1において、バリデーションを終了した後、各システム2〜4のスキッドを可能な限り1箇所で分割してそれぞれの分割部分が輸送できる大きさとなるようにして輸送する。すなわち、前処理システム2と一次純水システム3の間、もしくは一次純水システム3とサブシステム4の間で純水製造システム1を分割する。例えば、図7に示すように一旦組み立てた純水製造システム1に対し、各種検査などのバリデーションを行った後、前処理システム2と一次純水システム3の間で分割して出荷する。本実施形態においては、第一のユニット41は前処理システム2であり、第二のユニット42は一次純水システム3+サブシステム4により構成される。このとき前処理システム2と一次純水システム3の間で配管・配線14も分断せざるを得ない。通常この種の配線を繋ぐ際には端子台などを用いるが、純水製造システム1の配線はかなり数が多く複雑であり、施工先で再度それぞれの配線を繋ぐのは装置を熟知した技術者であっても面倒であり、仮に配線を間違えたりすると、装置が誤作動したり水の供給が行われなかったりして、最終的な調整に時間がかかり、本発明の目的である施工期間の短縮を損なうことにもなりかねない。そこで、本実施形態においては個々の配線の接続部を可能な限り1対1対応とする。すなわち、配線の分割部において複数種類のコネクタを用いる。
【0023】
このような構成を採用することにより、施工地で再度組み立てる際には、対応するコネクタ同士を接続するだけで施工地での再組み立てを確実、迅速に、かつ誰でも容易に行うことができる。特に配線の数が多い場合には、配線の色とコネクタ形状とをそれぞれ複数種組み合わせることで多くの配線を前処理システム2側と一次純水システム3側とで1対1の対応とすることができる。
【0024】
以上本発明について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものでなく、種々の用途の純水製造システムに適用可能である。本発明は、工場で製造した各スキッドを組み立てて一旦純水製造システムを完成させ、工場でバリデーションを完了した後、このシステムをできればそのまま、あるいは可能な限り少ない分割で出荷し、施工先に設置することで工期の短縮化を図ることを基本思想とするものであり、どのようなシステム構成に対しても適用可能であることはいうまでもない。例えば、純水を保管しておく蒸留水タンクや熱交換器などは適宜有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の純水製造システムの施工方法によれば、従来より短期間で施工を完了することができるので、工場の稼動を急ぐような場合、例えば医薬品工場などで用いる純水製造システムを施工するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態の施工方法により製造する純水製造システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記純水製造システムの前処理システムを示すブロック図である。
【図3】前記純水製造システムの一次純水システムの一例を示すブロック図である。
【図4】前記純水製造システムの一次純水システムの別の例を示すブロック図である。
【図5】前記純水製造システムの一次純水システムのさらに別の例を示すブロック図である。
【図6】前記純水製造システムの一次純水システムのサブシステムの一例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による純水製造システムの施工方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 純水製造システム
2 前処理システム(純水製造システムを構成する装置)
3 一次純水システム(純水製造システムを構成する装置)
4 サブシステム(純水製造システムを構成する装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水製造システムを構成する個々の装置をスキッド化して、これらスキッド化された各装置をあらかじめ組み立ててシステムを構成し、バリデーションを行った後出荷して純水供給場所に設置することを特徴とする純水製造システムの施工方法。
【請求項2】
前記システムを、バリデーションを行った後分割して出荷することを特徴とする請求項1記載の純水製造システムの施工方法。
【請求項3】
前記各スキッドの配線がコネクタにより接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の純水製造システムの施工方法。
【請求項4】
前記各スキッドの配線及び配管が該スキッドの床下部に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の純水製造システムの施工方法。
【請求項5】
前記純水製造システムが医薬用純水製造システムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の純水製造システムの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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