説明

純水製造方法及び装置

【課題】循環型の純水製造装置を用いて純水を製造する場合に、TOC(全有機炭素)濃度が極めて低い純水を得る場合においても有機物分解効率を向上させ、装置の小型化と高速処理を可能にし、ランニングコストを抑える。
【解決手段】TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射する照射工程と、照射工程ののち被処理水中に含まれる過酸化水素を除去する工程と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の純水が被処理水の少なくとも一部として照射工程に循環される純水製造方法において、照射工程の前段に、被処理水に対して過酸化水素を添加する工程を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線酸化処理により純水を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程や液晶表示装置の製造工程における洗浄水等の用途として、有機物、イオン成分、微粒子、細菌等が高度に除去された超純水等の純水が使用されている。特に、半導体装置を含む電子部品を製造する際には、その洗浄工程において多量の純水が使用されており、その水質に対する要求も年々高まっている。電子部品製造の洗浄工程等において使用される純水では、純水中に含まれる有機物がその後の熱処理工程において炭化して絶縁不良等を引き起こすことを防止するため、水質管理項目の一つである全有機炭素(TOC;Total Organic Carbon)濃度を極めて低いレベルとすることが求められるようになってきている。
【0003】
このような純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物を分解し除去する様々な方法の検討がなされている。そのような方法の代表的なものとして、紫外線酸化処理による有機物の分解除去工程が導入されつつある。
【0004】
一般的には、紫外線酸化処理によって有機物の分解除去を行う場合には、例えばステンレス製の反応槽とその反応槽内に設置された管状の紫外線ランプとを備える紫外線酸化装置を用い、反応槽内に被処理水を導入して被処理水に紫外線を照射する。紫外線ランプとしては、例えば、254nmと185nmの各波長を有する紫外線を発生する低圧紫外線ランプ、あるいは、254nmと194nmと185nmの各波長を有する紫外線を発生する低圧紫外線ランプが使用される。被処理水に185nmの波長を含む紫外線が照射されると、被処理水内にヒドロキシルラジカル(・OH)等の酸化種が生成し、この酸化種の酸化力により被処理水中の微量有機物が二酸化炭素や有機酸に分解する。被処理水に対してこのように紫外線酸化分解処理を施して得られた処理水は、次に、後段に配置されているイオン交換装置に送られ、二酸化炭素や有機酸が除去される。このとき、被処理水中に生成したが有機物の酸化反応では消費されなかったヒドロキシルラジカルから、例えば式(1)に示す反応によって、過酸化水素(H22)が生成する。
【0005】
【化1】

【0006】
純水中にH22が含まれる場合、その純水を例えば半導体装置の製造工程に用いたとすると純水中のH22が半導体装置製造工程に影響を与える可能性があり、TOCだけでなくH22の濃度を極めて低いレベルとすることが求められる。
【0007】
被処理水中のH22を除去する一般的な技術としては、例えば特許文献1に示すように、被処理水をパラジウム触媒と接触させることが知られており、そのパラジウム触媒は例えばアニオン交換樹脂上に担持されている。
【0008】
特許文献2には、紫外線酸化装置の後段に、紫外線酸化装置から流出する水に含まれるH22などの酸化性物質を分解する触媒式酸化性物質分解装置を設けた超純水製造装置が示されている。この超純水製造装置では、触媒式酸化性物質分解装置の後段にさらに脱気装置、混床式イオン交換装置、微粒子分離膜装置がこの順で通水可能に設けられており、微粒子分離膜装置から流出する水が、不純物を高度に除去した純水としてユースポイントに供給されている。また特許文献2の超純水製造装置は、循環型のサブシステムとして構成されており、微粒子分離膜装置からの純水のうち、ユースポイントに供給されなかった余剰分は、サブタンクと呼ばれるタンクを経て紫外線酸化装置に戻されるようになっている。ユースポイントで使用された純水を補い、循環系内の水量を一定に保つために、サブタンクには、被処理水として、既にある程度まで有機物が除去されている水(一次純水とも呼ばれる)も供給されている。触媒式酸化性物質分解装置は、金属パラジウム(Pd)、パラジウム化合物あるいは白金(Pt)などの貴金属触媒を有するものである。
【0009】
同様に特許文献3には、循環型のサブシステムとして構成されている超純水製造装置であって、紫外線酸化装置の後段に非再生型イオン交換装置に設けられおり、非再生型イオン交換装置の内部にイオン交換樹脂とパラジウム触媒とが充填されているものが開示されている。この超純水製造装置では、パラジウム触媒は樹脂に担持されている。
【0010】
特許文献4には、超純水製造装置において、被処理水からH22を除去するために、紫外線酸化装置の後段に、過酸化水素分解触媒を有する過酸化水素分解装置を設け、さらにH22の分解などによって生成した溶存酸素を除去するために、膜脱気装置を設けることが開示されている。ここで過酸化水素分解触媒としては、白金族の金属ナノコロイド粒子を担体に担持させたものが用いられている。
【0011】
例えば白金族金属を有する触媒によってH22を分解させた場合、反応生成物として酸素(O2)が生成し、処理後の純水における溶存酸素成分となる。純水においては溶存酸素も極めて低濃度であることが望まれるが、特許文献5には、紫外線照射装置によって被処理水に対して紫外線を照射したのち、パラジウム担持触媒樹脂塔に通水することによって、紫外線照射装置で発生した水素等の還元剤により溶存酸素を化学的に除去できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭60−71085号公報
【特許文献2】特開2002−210494号公報
【特許文献3】特開2006−192352号公報
【特許文献4】特開2007−185587号公報
【特許文献5】特開平8−168756号公報
【特許文献6】特開平5−305297号公報
【特許文献7】特開平10−277572号公報
【特許文献8】特開平11−99394号公報
【特許文献9】特許第2500968号明細書
【特許文献10】特開平7−284799号公報
【特許文献11】特公平6−47105号公報
【特許文献12】特開2002−306976号公報
【特許文献13】特開2009−62512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば半導体装置の製造工程に用いられ、TOCやH22が高度に除去された純水は、サブシステムとも呼ばれる循環型の純水製造装置によって製造される。循環型の純水製造装置は、被処理水中のTOC成分を酸化分解する紫外線酸化装置と、紫外線酸化装置からの流出水中に含まれるH22を除去する過酸化水素除去装置とを少なくとも備え、TOC及びH22が除去された純水の一部がユースポイントに供給されて消費され、残りがサブタンクに戻る構成となっている。
【0014】
ところで、紫外線酸化装置における有機物の分解効率は、被処理水中の有機物濃度が低いほど低下する。したがって、循環型の純水製造装置では、得ようとする純水におけるTOC濃度のレベルを低くするにつれ、紫外線酸化装置に供給される被処理水におけるTOC濃度も低下することとなり、紫外線酸化処理によるTOCの分解除去の効率が低下し、紫外線酸化処理に要する必要電力量が大きくなって装置のランニングコストが大きくなる。また、TOCの分解除去における効率の低下は、必要とされる紫外線照射量の増大にもつながり、紫外線ランプが高価であって、かつ例えば1年ごとに紫外線ランプを交換することが必要であることを考慮すると、さらなるランニングコストの上昇につながる。
【0015】
そこで本発明の目的は、得られた純水を循環させながら純水を製造する純水製造方法及び装置であって、TOC濃度が極めて低い純水を得る場合であっても有機物分解効率を向上でき、装置の小型化と高速処理が可能であり、ランニングコストを抑えることができる純水製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
循環系内に過酸化水素除去装置を有する循環型の純水製造装置では、過酸化水素(H22)濃度が極めて低い純水が循環するように運転されるため、紫外線酸化装置にも、H22濃度が低い被処理水が通水されることとなる。本発明者らの実験によれば、被処理水におけるTOCの濃度レベルが同じであっても、循環系内に過酸化水素除去装置を設けない場合に比べ、循環系内に過酸化水素除去装置を設けた場合に、紫外線酸化装置におけるTOCの分解効率が低下した。
【0017】
そこで本発明では、得られる純水における残留H22濃度の上昇をもたらさない程度の、また、過酸化水素除去装置の動作に悪影響を与えない程度の、適量のH22を紫外線酸化処理の前段で被処理水に添加し、これによりTOC分解効率を向上させる。
【0018】
したがって本発明の純水製造方法は、TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射する照射工程と、照射工程ののち被処理水中に含まれる過酸化水素を除去する除去工程と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の純水が被処理水の少なくとも一部として照射工程に循環される純水製造方法において、照射工程の前段に、被処理水に対して過酸化水素を添加する添加工程を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の純水製造装置は、TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射して紫外線酸化処理を実行する紫外線酸化装置と、紫外線酸化装置から流出した被処理水に含まれる過酸化水素を除去する過酸化水素除去装置と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の純水を被処理水の少なくとも一部として紫外線酸化装置に循環する循環管路をさらに備える純水製造装置において、紫外線酸化装置の前段に、被処理水に対して過酸化水素を添加する添加手段を有することを特徴とする。
【0020】
本発明では、紫外線酸化装置の前段で被処理水にH22を添加しているが、この添加されたH22及び紫外線酸化装置内で生成したH22は、紫外線酸化装置の後段に設けられた過酸化水素除去装置によって除去されるので、最終的に得られる純水中のH22濃度は極めて低いものとなる。
【0021】
なお、紫外線酸化処理の前段においてH22を添加することは、有機物濃度が比較的高い被処理水(例えば、ユースポイントで使用した後のTOC成分を含む排水)におけるTOCを処理する技術においては既に知られている。これらの場合、被処理水におけるTOC濃度は、ppmオーダーであることが想定されており、また、もともと各種の不純物を多く含んでいる被処理水を対象としていることから、一般的に開放系の反応容器を使用して紫外線照射を行っている。そして、紫外線源としては、254nmの波長を発生する高圧紫外線ランプが一般に使用されている。
【0022】
有機物濃度が比較的高い被処理水においてTOCを分解除去する技術の例として、特許文献6には、有機物を含有する酸性排水を処理する技術として、TOC濃度が2ppmである原水を逆浸透膜分離装置(RO)に通して得られた透過水に対し、H22を30ppm添加してから高圧紫外線ランプ(高圧水銀ランプ)により紫外線照射処理を行い、TOC成分を分解除去する例が記載されている。特許文献7には、排水回収などにおいて被処理水中の有機物を分解除去するものとして、TOC濃度が1ppmである原水に対してH22を30ppm添加し、高圧紫外線ランプにより紫外線照射処理を行う例が記載されている。特許文献8には、ペルオキシド基を含むイオウ化合物(例えばペルオキシ二硫酸ナトリウム)を用いて被処理水中の有機物を分解除去する際に、あらかじめ有機物量を低減させる前処理工程として、TOC濃度が6ppmである被処理水に対し、H22を60ppm添加し、紫外線を照射する例が記載されている。特許文献9には、TOC濃度が20ppmである被処理水に対し、H22を71ppm添加し、紫外線を照射することが記載されている。特許文献10には、水道水(市水)から純水を製造するために純水製造装置の前段に配置される前処理装置として生物反応槽と紫外線酸化処理槽とを組み合わせ、両方の槽の被処理水を循環させながら、紫外線酸化処理槽では被処理水に5ppmのH22を添加し、中圧紫外線ランプから紫外線を照射し、これによってTOC濃度が55〜60ppb程度の処理水を得たことが記載されている。さらに特許文献11には、純水の製造のために、TOC濃度が18ppbである被処理水に対してO3を添加し、紫外線酸化処理を行う例が示されており、O3の代わりにH22も使用できると記載されている。特許文献11に記載のものでは、余剰のO3を除去するために、紫外線酸化処理後に水素(H2)を添加して紫外線を照射することにより、O3を還元して水としている。
【0023】
このように、H22の添加と紫外線照射とを併用するこれまでの技術は、被処理水におけるTOC濃度が比較的高い場合を対象とするものであり、TOC濃度が10ppb以下であるような被処理水を対象とするものではないし、H22の添加条件や紫外線酸化の処理条件に対する指針を与えるものでもない。
【0024】
半導体装置の製造工程などに用いられる純水では、H22の濃度も極めて低いものとする必要があるため、H22を添加することによって被処理水中の有機物の紫外線酸化処理が促進されるという知見が得られていても、これらの用途に用いられる純水を製造する際にH22を添加するいうことは、これまでは考えられてはこなかった。
【0025】
本発明は、紫外線酸化装置の後段に過酸化水素除去装置が設けられている循環型の純水製造装置において、過酸化水素除去装置で除去されることを前提として紫外線酸化装置の前段において被処理水に対して適量の過酸化水素を添加しようとするものであり、適量の過酸化水素を添加することによって紫外線酸化処理におけるTOC除去効率を向上させ、かつ、最終的には、TOC濃度だけではなくH22濃度も極めて低いレベルに抑えられた純水を得ようとするものである。
【0026】
以下、被処理水にH22を添加した場合の紫外線酸化処理について説明する。
【0027】
低圧紫外線ランプを用いた紫外線酸化処理による有機物の分解除去の反応機構は、一般に、波長185nmの光が水を分解して生成したヒドロキシラジカル(OHラジカル)が、被処理水中のTOC成分と反応してこのTOC成分を酸化分解するものであると考えられている。波長185nmの光は、水に非常によく吸収されるので、ほとんど透過しない。低圧紫外線ランプからは、波長185nmの光の他に、波長254nmの光が放出されるが、波長254nmの光は、水に吸収されずに透過することができる。
【0028】
この波長254nmの光は、被処理水にH22が添加されている場合には、式(2)に示すように、H22と反応してOHラジカルを生成する。波長185nmの光も、波長254nmの光よりも高エネルギーであるので、H22と反応してOHラジカルを生成することができる。
【0029】
【化2】

【0030】
生成したOHラジカルは、TOC成分を酸化分解することができるが、寿命が短い。TOC成分分子すなわち有機物分子と遭遇することができず、TOC成分と反応できなかったOHラジカルは、式(2)の逆反応である上述した式(1)に示すように、H22に戻る。
【0031】
有機物の分解効率を向上するためには、OHラジカルの生成量を増加させればよい。H22の添加と紫外線照射とを併用する場合、OHラジカルの生成量を増加させるには、式(2)の反応を右辺側に進めればよく、そのためには、H22濃度を高くするか、紫外線照射量を大きくするか、あるいは、その両方を実行する必要がある。しかしながら、OHラジカルの生成量を増加させても、TOC成分と遭遇せずにこれと反応できなかったOHラジカルが式(1)に示した反応でH22に戻るだけであるので、エネルギーが無駄に使用されることなり、紫外線酸化装置から流出する水から除去すべきH22の量が増えることにもなるので、結果として、純水製造のための処理コストが高くなる可能性もある。これらのことから、紫外線酸化処理の前段において過度に多量のH22を被処理水に添加することは好ましくない。本発明者らの検討によれば、H22の添加量は、添加後の被処理水におけるH22濃度が10ppb以上400ppb以下であるようなものが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、紫外線酸化装置と過酸化水素除去装置とを少なくとも備える循環型の純水製造装置を用いて純水を生成する際に、紫外線酸化装置の前段で被処理水に対して過酸化水素を添加することにより、被処理水のTOC濃度が低い場合であっても、TOCの分解効率を大幅に向上させることができ、TOC濃度とH22濃度とが極めて低いレベルに維持された純水を得ることができるようになる。これにより、紫外線酸化装置の装置規模を小さくし、消費電力コストやランプのコストを含むランニングコストを大幅に削減できるようになる。
【0033】
また、添加したH22及び紫外線酸化装置で発生したH22は、紫外線酸化装置の後段に配置された過酸化水素除去装置内で、例えば白金族金属触媒と接触させることにより、極低濃度にまで除去される。これにより、純水製造装置内において後段のイオン交換装置などが設けられる場合に、酸化性物質によるイオン交換樹脂の酸化劣化などの悪影響を無視することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態の純水製造装置の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態の純水製造装置の構成を示す図である。
【図3】本発明のさらに他の実施形態の純水製造装置の構成を示す図である。
【図4】実施例における水処理装置の構成を示す図である。
【図5】紫外線酸化装置入口でのH22濃度とTOC除去率との関係を示すグラフである。
【図6】実施例における水処理装置の別の構成を示す図である。
【図7】紫外線酸化装置入口でのH22濃度とTOC除去率との関係を示すグラフである。
【図8】実施例における水処理装置のさらに別の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
本発明に基づく純水製造方法は、循環系として構成されてユースポイントに供給される純水を生成するものであって、ユースポイントでの使用量を超過した分の純水が循環系内を循環するものであり、例えば、一次純水から二次純水を生成するシステム、いわゆるサブシステムでの純水製造に好ましく適用できるものである。循環系内の水量を一定に保つために、ユースポイントでの使用量に応じて外部から水が供給される。外部から供給される水としては、少なくとも脱塩処理がなされた、一次純水レベルの水を想定している。外部から供給される水と循環系内を循環してくる純水とを合わせて、紫外線酸化処理における被処理水とするが、この被処理水におけるTOC濃度は10ppb以下であるとしている。被処理水におけるTOC濃度の下限は、例えば1ppbである。したがって本発明に基づく純水製造方法は、TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射する照射工程と、照射工程ののち被処理水中に含まれる過酸化水素を除去する除去工程と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の純水が被処理水の少なくとも一部として照射工程に循環される純水製造方法において、照射工程の前段に被処理水に対して過酸化水素を添加する添加工程を有することを特徴とする。
【0037】
また本発明に基づく純水製造装置は、本発明に基づく純水製造方法によって純水を製造するのに適した構造を有するものであり、例えば、二次純水製造用のシステム、いわゆるサブシステムに用いるのに適したものである。したがって本発明に基づく純水製造装置は、TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射して紫外線酸化処理を実行する紫外線酸化装置と、紫外線酸化装置から流出した被処理水に含まれる過酸化水素を除去する過酸化水素除去装置と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の純水を被処理水の少なくとも一部として紫外線酸化装置に循環する循環管路をさらに備える純水製造装置において、紫外線酸化装置の前段に、被処理水に対して過酸化水素を添加する添加手段を有することを特徴とする。
【0038】
本発明に基づく純水製造方法及び装置において、被処理水の抵抗率は、1MΩcm以上であることが好ましい。
【0039】
以下、本発明をサブシステムに適用した場合を例に挙げて、本発明の実施形態を説明することとする。
【0040】
ここで被処理水へのH22の添加量について説明する。被処理水のTOC濃度が10ppb以下の場合、無駄にOHラジカルを発生させないでTOCの除去効率を向上させるという観点で、H22を10ppb以上400ppb以下となるように添加している。後述の参考例及び比較例から明らかなように、被処理水のTOC濃度が10ppb以下の場合には、少量の、すなわち400ppbまでの範囲内となるようH22を添加した場合には、H22を添加しない場合に比べ、TOCの除去効率が向上するが、H22の濃度が400ppbを超えた場合には、H22を添加しない場合よりもかえってTOC除去効率が低下する。したがって本発明では、10ppb以上400ppb以下の範囲内となるようにH22を添加することが好ましい。
【0041】
図1は、本発明の実施の一形態における純水製造装置を示している。
【0042】
この装置は、純水を貯留するタンク11と、タンク11から純水を送出するポンプ(P)12を備えており、ポンプ12に対し、熱交換器15、紫外線酸化装置(UV)16、H22除去装置17、膜脱気装置(MD)18、非再生型混床式イオン交換装置(CP)19及び限外濾過装置(UF)20がこの順で接続し、限外濾過装置20からの水はユースポイントに送られ、ユースポイントで使用されなかった分の水は循環配管によりタンク11に戻されるようになっている。この装置では、タンク11からポンプ12、熱交換器15、紫外線酸化装置16、H22除去装置17、膜脱気装置18、非再生型混床式イオン交換装置19及び限外濾過装置20を経てタンク11に戻る循環系が形成されている。ユースポイントでの純水の使用に応じて循環系内の水量が減るので、循環系内の水量を一定に保つために、タンク11には、外部からの水(供給水)も供給されている。
供給水は、例えば一次純水である。
【0043】
この構成において、紫外線酸化装置16に供給される水のTOC濃度は、10ppb以下であるものとする。さらにこのシステムは、H22を貯えるH22貯槽(H22)13を、熱交換器15と紫外線酸化装置16とを接続する配管に接続し、この配管中の被処理水に対してH22を添加するようにH22貯槽13からH22を供給するポンプ(P)14と、を備えている。ポンプ14は、添加後の被処理水におけるH22濃度が例えば10ppb以上400ppb以下となるように、被処理水にH22を添加する。
【0044】
このようなシステムでは、タンク11に貯えられた純水が、被処理水として、ポンプ12により、まず熱交換器15に送られて温度が調整される。その後、H22を添加され、紫外線酸化装置16において紫外線を照射される。その結果、被処理水中のTOC成分が分解される。
【0045】
紫外線酸化装置16は、例えば、被処理水と気相との界面が形成されない密閉流通式の反応容器と、反応容器内の被処理水に対して紫外線を照射する紫外線ランプと、を備えるものであることが好ましい。紫外線ランプとしては、例えば、波長185nmの光を少なくとも発生する低圧紫外線ランプを用いることができる。
【0046】
低圧紫外線ランプからの光には、波長185nmの成分のほかに、波長254nmや波長194nmの成分も含まれる。H22を添加しない場合には、主として波長185nmの光がTOC成分の分解に寄与するが、本実施形態では、H22を添加することにより、波長254nmの光もTOC成分の分解に寄与することができるようになる。
【0047】
22の添加と主に波長254nmの光を放射する高圧紫外線ランプとの併用によるTOC成分の分解処理も可能であるが、分解効率を高めて反応装置内での被処理水の滞留時間を短くし、装置を小型化するためには、紫外線照射に、(波長185nmの成分を放射する)低圧紫外線ランプを用いることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、紫外線照射における照射量を0.3kWh/m3以下とすることが好ましい。被処理水中のTOC濃度が低いために、高い照射量で大量にOHラジカルを生成したとしても、式(1)に示す反応でOHラジカルが消費されることとなるから、効率的な処理を行うことができない。照射量を0.3kWh/m3以下とすることにより、無駄にOHラジカルを生成させることなく、効率的な処理を行うことができるようになる。
【0049】
紫外線酸化装置16の反応容器として、被処理水と気相との界面が形成されない密閉流通式の反応容器を用いることで、水中を透過した波長254nmの光が気相へ抜けることがなくなって水中に留まり、式(2)に示すOHラジカルの生成反応に有効に用いられるようになる。波長254nmの光の有効利用の観点からは、反応容器の内面は、ステンレス鋼(SUS)などの金属製で鏡面仕上げされていることが好ましい。
【0050】
紫外線酸化装置16によって紫外線酸化処理を受けた被処理水は、次に、H22除去装置17に送られ、H22が除去される。ここで除去されるH22は、紫外線酸化装置16の前段においてポンプ14によって添加され紫外線酸化装置16では使用されなかったH22と、紫外線酸化装置16内での紫外線照射により被処理水中に生じたH22の両方である。
【0051】
22除去装置17内には、白金族金属触媒が設けられており、処理水が白金族金属触媒と接触することにより、H22の残留分が触媒分解によって除去される。H22の分解触媒としては活性炭も知られているが、純水系での適用を考えると、溶出物の少ない白金族金属触媒を用いることが好ましい。ここでいう白金族金属とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)のことであり、これらの一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら白金族金属のうち、PtやPdなどを好ましく使用することができ、コスト等の観点からはPdが好ましい。
【0052】
このような白金族金属触媒は、H22除去装置17内において、例えば、アニオン交換体に担持させられている。アニオン交換体は、粒状のアニオン交換樹脂であってもよいし、アニオン交換樹脂が一体のものとして成形されたモノリス状有機多孔質アニオン交換体であってもよい。ここで用いることができるモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、例えば、特許文献12及び特許文献13に記載されている。アニオン交換体に白金族金属触媒を担持することにより、高い触媒能力の発揮と、触媒からの溶出物の低減に効果がある。
【0053】
白金族金属触媒を有するH22除去装置17を設け、被処理水に添加したH22及び紫外線酸化装置16で発生したH22を白金族金属触媒に接触させることにより、H22を極低濃度にまで除去することができる。これにより、酸化性物質であるH22によって後段の非再生型混床式イオン交換装置19内のイオン交換樹脂が酸化劣化するなどの悪影響を防ぐことができる。
【0054】
22除去装置17から流出した被処理水は、次に膜脱気装置18に送られて溶存酸素(DO)などが除去され、続いて非再生型混床式イオン交換装置19に送られる。紫外線酸化処理によって生成して被処理水中に含まれることとなった有機酸及び二酸化炭素(CO2)は、非再生型混床式イオン交換装置19において除去される。さらに、被処理水は、限外濾過装置20に送られ、高度に不純物が除去された水となって、ユースポイントに送られることになる。使用されなかった水は、循環されて、タンク11に戻される。場合によっては膜脱気装置18を省略することができる。この構成では、ユースポイントから、TOC濃度とH22濃度とが極めて低いレベルに抑えられた純水が得られ、このような純水は循環管路を介してタンク11にも戻される。
【0055】
図2は、別の実施形態における純水製造装置を示している。図2に示す純水製造装置は、図1に示す装置において、膜脱気装置(MD)18と非再生型混床式イオン交換装置(CP)19の接続順を逆にしたものである。このように接続順を変更しても、ユースポイントから、TOC濃度とH22濃度とが極めて低いレベルに抑えられた純水が得られる。
【0056】
図3は、さらに別の実施形態における純水製造装置を示している。
【0057】
図3に示す装置は、図1に示す装置において、溶存酸素(DO)を除去し、H22の分解除去を促進するために水素(H2)を添加するようにしたものである。H2添加のために、紫外線酸化装置16とH22除去装置17との間にガス溶解膜装置22が設けられ、ガス溶解膜装置22には、H2貯槽(H2)21からH2が供給されている。この場合、H22除去装置17において溶存酸素を除去できるので、膜脱気装置18は設けられていない。
【0058】
この構成では、紫外線酸化装置16からの水は、H2を溶解させられた後に、白金族金属触媒と接触させられる。PdあるいはPt等の白金族金属触媒は、溶存水素の存在下で溶存酸素を除去できる。H2溶解後に白金族金属触媒で処理することによって、残留H22の除去とDOの除去とを同時に行うことができる。
【0059】
上述した各実施形態においては、被処理水中のTOC濃度が低い場合であっても、紫外線酸化装置16の前段で被処理水に対して適量のH22を添加することにより、紫外線酸化装置16におけるTOCの分解効率を向上させることができる。そのような分解効率の向上は、後述の実施例などから明らかになるように、被処理水中のTOC濃度が10ppb以下である場合に著しかった。
【実施例】
【0060】
本発明の効果を確認するために本発明者らが行った実施例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、循環型の純水製造装置では、生成された純水の少なくとも一部が被処理水として装置内を循環するために、生成された純水におけるTOC濃度やH22濃度は装置の運転開始から極めて長い時間が経過しないと一定値に収束せず、また、ユースポイントでの純水の使用量等に応じてもTOC濃度やH22濃度が変化する。したがって、本発明の効果を確認しH22の添加量の最適値を求めるなどの目的では、循環型の純水製造装置において実際に取得されたデータを用いるよりも非循環型の構成で取得したデータを用いる方が理解がしやすいので、以下では、非循環型の装置構成によって取得したデータに基づいて本発明を説明する。当業者であれば、以下に示した実施例、比較例及び参考例から、循環型の純水製造装置として構成した場合の本発明の効果やH22の添加量の最適値などを容易に認識することができる。
【0061】
[実施例1]
図4に示す構成の水処理装置を組み立てた。この装置は、超純水に対して有機物としてメタノール(CH3OH)を添加することにより、TOC濃度が制御された被処理水を生成し、紫外線酸化処理を行うようにしたものである。この装置に供給される超純水にはその超純水の製造過程で生成するH22が含まれている。そこでこの装置には、過酸化水素除去触媒を有するH22除去装置32が設けられており、このH22除去装置32に供給水である超純水を通水させる場合とバイパスさせる場合とを切り替えることにより、紫外線酸化装置に供給される被処理水におけるH22の濃度を変化させることができるようになっている。ここで用いる超純水の水質は、抵抗率が18MΩ・cm以上、TOCが0.5ppb以下、H22濃度が14ppbであった。
【0062】
超純水が供給される配管に対して三方弁31が設けられており、三方弁31の一方の出口には、H22除去装置32の入口が接続し、三方弁31の他方の出口はH22除去装置32をバイパスするようにH22除去装置32の出口に接続している。H22除去装置32としては、内径57mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製カラムの内部に層高10mm(体積で約25mL)のPdモノリスを充填したものを用いた。
【0063】
22除去装置32の出口からの配管には、メタノール貯槽(メタノール)33からポンプ(P)を介してメタノールが供給され、メタノールが加えられた超純水は膜脱気装置34に送られる。膜脱気装置34から流出する水を被処理水とし、その被処理水におけるTOC濃度をTOC計35(ANATEL社製のA−1000XP型TOC計)によってオンライン測定した。被処理水のH22濃度は、図示(S)で示すようにサンプリングした後、フェノールフタリン法を用いて吸光光度計で測定した。
【0064】
膜脱気装置34から流出する被処理水の一部を分岐して、流量計36を介して紫外線酸化装置37に供給した。紫外線酸化装置37としては、千代田工販社製のTFL−1を使用した。紫外線酸化装置37内には、紫外線ランプとして、波長254nmの光と波長185nmの光の両方を発光する低圧紫外線ランプ(千代田工販社製の200Wの紫外線ランプSV−1500)を1本設置した。
【0065】
紫外線酸化装置37から流出する処理水の一部を分岐し、非再生型混床式イオン交換装置(CP)38及び流量計39の順で通水し、流量計39から流出する処理水のTOC濃度をTOC計40(ANATEL社製のA−1000XP型TOC計)によって測定した。非再生型混床式イオン交換装置38としては、アクリル樹脂製の円筒容器(内径25mm、高さ1000mm)を有し、この容器内に混床のイオン交換樹脂を300ml(層高約600mm)充填したものを用いた。
【0066】
TOC除去率は、以下の計算式により求めた:
TOC除去率(%)=((TOC0−TOC1)/TOC0)×100
ここでTOC0は、被処理水のTOC濃度、すなわちTOC計35で測定されたTOC濃度であり、TOC1は、非再生型混床式イオン交換装置38からの処理水のTOC濃度、すなわちTOC計40で測定されたTOC濃度である。
【0067】
被処理水として、通水流量330L/hに対して、TOC濃度が2.3ppbとなるようにメタノールを超純水に対して添加し、膜脱気装置34によって溶存酸素(DO)を10ppb未満としたものを用いた。このとき、三方弁31をバイパス側として、被処理水のH22濃度が14ppbとなるようにした。そして紫外線酸化装置37において、紫外線照射量が0.2kWh/m3であるように、紫外線酸化処理を行った。非再生型混床式イオン交換装置38からの処理水のTOC濃度を測定しTOC除去率を算出した。結果を図5に示す。
【0068】
図5に示されるように、非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.66ppbであり、TOC除去率は71%であった。後述の比較例1と比較することにより、少量のH22が存在することで、TOC濃度が非常に低い純水系のものが被処理水である場合であっても、TOC除去効率が向上することが分かった。
【0069】
[比較例1]
実施例1で説明した装置を用い、三方弁31をH22除去装置32側としてH22濃度を低減させた超純水を被処理水とし、また被処理水のTOC濃度を1.9ppbとしたことを除いて、実施例1と同様の条件で試験を行った。このときの被処理水におけるH22濃度は3.1ppbであった。結果を図5に示す。比較例1での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.70ppbであり、TOC除去率は63%であった。
【0070】
[実施例2]
被処理水のTOC濃度を6.1ppbとしたことを除いて、実施例1と同様の条件で試験を行った。結果を図5に示す。実施例2での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.70ppbであり、TOC除去率は89%であった。
【0071】
[比較例2]
三方弁31をH22除去装置32側としてH22濃度を低減させた超純水を被処理水とし、また被処理水のTOC濃度を6.8ppbとしたことを除いて、実施例2と同様の条件で試験を行った。このときの被処理水におけるH22濃度は4.8ppbであった。結果を図5に示す。比較例2での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は1.50ppbであり、TOC除去率は78%であった。
【0072】
[実施例3]
被処理水のTOC濃度を10.3ppbとしたことを除いて、実施例1と同様の条件で試験を行った。結果を図5に示す。実施例3での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は1.50ppbであり、TOC除去率は85%であった。
【0073】
[比較例3]
三方弁31をH22除去装置32側としてH22濃度を低減させた超純水を被処理水とし、また被処理水のTOC濃度を9.2ppbとしたことを除いて、実施例3と同様の条件で試験を行った。このときの被処理水におけるH22濃度は3.1ppbであった。結果を図5に示す。比較例3での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は1.40ppbであり、TOC除去率は84%であった。
【0074】
[実施例4]
被処理水のTOC濃度を28ppbとしたことを除いて、実施例1と同様の条件で試験を行った。結果を図5に示す。実施例4での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は10.3ppbであり、TOC除去率は63%であった。
【0075】
[比較例4]
三方弁31をH22除去装置32側としてH22濃度を低減させた超純水を被処理水とし、また被処理水のTOC濃度を29ppbとしたことを除いて、実施例4と同様の条件で試験を行った。このときの被処理水におけるH22濃度は3.5ppbであった。結果を図5に示す。比較例4での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は12ppbであり、TOC除去率は59%であった。
【0076】
[実施例5]
図6に示す構成の水処理装置を組み立てた。この装置は図4に示すものと同様のものであるが、三方弁31を取り除くことにより、供給水である超純水が必ずH22除去装置32を通過するようにし、さらに、被処理水におけるH22濃度を任意に設定できるように、H22除去装置32と膜脱気装置34との間の配管に対し、メタノール貯槽33からポンプ(P)を介してメタノールが供給されるようにするとともに、H22貯槽(H22)41からポンプ(P)を介してH22が供給されるようにしている。メタノールとH22が加えられた超純水は、膜脱気装置34においてこれらがよく混合される。ここで用いる超純水の水質は、抵抗率が18MΩ・cm以上、TOCが0.5ppb以下であった。その他の点では、図6に示す装置は図4に示す装置と同一の構成である。
【0077】
被処理水として、通水流量400L/hに対して、TOC濃度が6.1ppbとなりH22濃度が17ppbとなるようにメタノール及びH22を超純水に対して添加し、膜脱気装置34によって溶存酸素(DO)を10ppb未満としたものを用いた。通水流量を400L/hとしたときの紫外線酸化装置37における紫外線照射量は、0.17kWh/m3であった。非再生型混床式イオン交換装置38からの処理水のTOC濃度を測定しTOC除去率を算出した。結果を図7に示す。
【0078】
図7に示されるように、非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.68ppbであり、TOC除去率は89%であった。後述の比較例5と比較することにより、少量のH22を存在することで、TOC濃度が非常に低い純水系のものが被処理水である場合であっても、TOC除去効率が向上することが分かった。
【0079】
[実施例6]
被処理水のH22濃度を33ppbとしたことを除いて、実施例5と同様の条件で試験を行った。結果を図7に示す。実施例6での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.57ppbであり、TOC除去率は91%であった。
【0080】
[比較例5]
22貯槽41から超純水へのH22の添加を行わなかったことと被処理水のTOC濃度を7.25ppbとしたことを除いて、実施例5と同様の条件で試験を行った。このときの被処理水のH22濃度は3.4ppbであった。結果を図7に示す。比較例5での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.97ppbであり、TOC除去率は87%であった。
【0081】
[実施例7]
被処理水のTOC濃度を6.3ppbとし、H22濃度を79ppbとしたことを除いて、実施例5と同様の条件で試験を行った。結果を図7に示す。実施例7での非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は0.60ppbであり、TOC除去率は90%であった。
【0082】
[実施例8−1〜8−5]
図8に示す構成の水処理装置を組み立てた。この装置は、図6に示すものと同様のものであるが、供給水である超純水からH22を取り除くためのH22除去装置32が設けられていない点、膜脱気装置34の代わりにラインミキサー42が設けられている点、紫外線酸化装置37の出口に対する非再生型混床式イオン交換装置38と流量計39との接続順が逆になっていて流量計39と非再生型混床式イオン交換装置38との間にH22除去装置43が設けられている点で、図6に示すものと異なっている。また非再生型混床式イオン交換装置38の出口において、図示(S)に示すようにサンプリングを行い、非再生型混床式イオン交換装置38から流出する水における残留H22濃度をフェノールフタリン法を用いて吸光光度計により測定した。
【0083】
22除去装置43としては、アクリル樹脂製の円筒容器(内径25mm、高さ300mm)を有し、この容器内に触媒樹脂を100ml(層高約200mm)充填したものを用いた。触媒樹脂としては、アニオン交換樹脂にPdを担持したものであって、Pdの担持量が100mg−Pd/L−R(ゲル形、OH形:95%以上)のものを用いた。
【0084】
なお、図8に示す装置において、非再生型混床式イオン交換装置38から流出する水を供給水である超純水として循環するようにすれば、本発明に基づく純水製造装置の基本的な構成となる。
【0085】
被処理水として、通水流量1.1m3/hに対して、TOC濃度が10ppbであり、実施例8−1〜8−5に対してH22濃度がそれぞれ50、100、200、300、400ppbであるように、メタノール及びH22を超純水に対して添加し、ラインミキサー42で混合したものを用いた。そして紫外線酸化装置37において、紫外線照射量が0.06kWh/m3となるように、紫外線酸化処理を行った。非再生型混床式イオン交換装置38からの処理水のTOC濃度を測定しTOC除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0086】
表1に示されるように、実施例8−1における非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は2.40ppbであり、TOC除去率は76%であった。同様に、実施例8−2では、TOC濃度は2.08ppb、TOC除去率は79%、実施例8−3では、TOC濃度は2.12ppb、TOC除去率は79%、実施例8−4では、TOC濃度は2.35ppb、TOC除去率は77%、実施例8−5では、TOC濃度は2.53ppb、TOC除去率は75%であった。いずれの場合においても、非再生型混床式イオン交換装置38の出口における処理水での残留H22濃度は1ppb未満であった。
【0087】
後述の比較例6−1〜6−2と比較し、少量の、すなわち400ppbまでの範囲内となるようH22を添加した場合に、TOC除去効率が向上することが分かった。
【0088】
[参考例]
被処理水にH22を意図的には添加しなかったことを除いては実施例8−1と同様の条件で試験を行った。このとき、供給される超純水にH22が含まれていることにより、紫外線酸化装置37に供給される被処理水中のH22濃度は12ppbであった。結果を表1に示す。非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度は2.72ppbであり、TOC除去率は73%であった。
【0089】
[比較例6−1,6−2]
被処理水のH22濃度がそれぞれ600ppb及び1000ppbであったことを除いて、実施例8−1と同様の条件で試験を行った。結果を表1に示す。非再生型混床式イオン交換装置38の出口におけるTOC濃度はそれぞれ2.89ppb及び3.72ppbであり、TOC除去率はそれぞれ71%及び63%であった。H22を過剰に添加することで、H22を添加しない場合に比べ、TOC除去率が逆に低下してしまう結果となった。
【0090】
【表1】

【符号の説明】
【0091】
11 タンク
12,14 ポンプ(P)
13,41 H22貯槽
15 熱交換器
16,37 紫外線酸化装置(UV)
17,32,43 H22除去装置
18,34 膜脱気装置(MD)
19,38 非再生型混床式イオン交換装置(CP)
20 限外濾過装置(UF)
21 H2貯槽
22 ガス溶解膜装置
31 三方弁
33 メタノール貯槽
36,39 流量計
35,40 TOC計
42 ラインミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射する照射工程と、前記照射工程ののち前記被処理水中に含まれる過酸化水素を除去する除去工程と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の前記純水が前記被処理水の少なくとも一部として前記照射工程に循環される純水製造方法において、
前記照射工程の前段に、前記被処理水に対して過酸化水素を添加する添加工程を有することを特徴とする純水製造方法。
【請求項2】
前記添加工程において、前記被処理水中の過酸化水素濃度が10ppb以上400ppb以下となるように前記過酸化水素を添加する、請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
前記除去工程は、前記被処理水と白金族金属触媒とを接触させることによって前記被処理水中の過酸化水素を分解する工程である、請求項1または2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
前記照射工程と前記除去工程との間に、前記被処理水に水素を溶解させる工程を有する、請求項3に記載の純水製造方法。
【請求項5】
前記照射工程ののち前記被処理水に対してイオン交換処理を実行する工程をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項6】
TOCが10ppb以下である被処理水に対して紫外線を照射して紫外線酸化処理を実行する紫外線酸化装置と、前記紫外線酸化装置から流出した前記被処理水に含まれる過酸化水素を除去する過酸化水素除去装置と、を少なくとも備えて純水を生成し、ユースポイントにおける使用量を超過した分の前記純水を前記被処理水の少なくとも一部として前記紫外線酸化装置に循環する循環管路をさらに備える純水製造装置において、
前記紫外線酸化装置の前段に、前記被処理水に対して過酸化水素を添加する添加手段を有することを特徴とする純水製造装置。
【請求項7】
前記添加手段は、前記被処理水中の過酸化水素濃度が10ppb以上400ppb以下となるように前記過酸化水素を添加する、請求項6に記載の純水製造装置。
【請求項8】
前記過酸化水素除去装置は、白金族金属触媒を有し、前記被処理水を前記白金族金属触媒とを接触させる、請求項6または7に記載の純水製造装置。
【請求項9】
前記白金族金属触媒はアニオン交換体に担持されている、請求項8に記載の純水製造装置。
【請求項10】
前記紫外線酸化装置の出口と前記過酸化水素除去装置の入口との間に、前記被処理水に水素を溶解させるガス溶解膜装置を有する、請求項8または9に記載の純水製造装置。
【請求項11】
前記紫外線酸化装置の出口と前記ユースポイントとの間に設けられ、前記被処理水に対してイオン交換処理を実行するイオン交換装置をさらに含む、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245380(P2011−245380A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119174(P2010−119174)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】