説明

紙塗工用組成物

【目的】 極めて優れた耐ブリスター性と印刷光沢を有する紙塗工用組成物。
【構成】 紙塗工用組成物において、顔料100重量部に対し、セルロースを固形分換算で1〜15重量部の割合で添加してなることを特徴とする紙塗工用組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特殊なセルロースが添加されていることを特徴とする、極めて優れた印刷光沢と耐ブリスター性を有する紙塗工用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】文化水準の向上とともに、消費材としての紙需要は急速に伸びており、特に近年、高級紙の嗜好増加に伴い、紙分野の一部である塗工紙の需要の伸びはめざましいものがある。塗工紙としては、オフセット印刷(枚葉、巻き取り)用、グラビア印刷用、塗工板紙などがあり、本発明はこれら塗工紙に関する。この塗工紙には種々の物性が要求される。オフセット印刷に要求される物性の内、最も重要な物性は耐ブリスター性である。また、塗工板紙を含め、全塗工紙に共通する最も重要な物性の一つに印刷光沢がある。
【0003】従来、これらの印刷光沢の向上やオフセット印刷における耐ブリスター性を向上させる試みは、いろいろ行われてきた。例えば、耐ブリスター性については、原紙の層間強度を上げる。また顔料系において、カオリンクレーよりも、炭酸カルシウムの使用比率を上げる。さらに接着剤系では、使用しているカルボキシル基を含有する合成共重合体ラテックスのゲル含有量を低下させるなどがある。また、印刷光沢を上げる方法としては、接着剤の使用量を増やすことや顔料系でのカオリンクレーの使用量を増やす方法などがとられてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような方法は、いずれも問題点があった。すなわち、原紙の層間強度を上げることは、確かに耐ブリスター性には有効な手段であるが、塗工紙のコストアップをもたらす。また、顔料系での炭酸カルシウムの使用量増は、白紙および印刷光沢の低下をもたらし、あまり好ましい方法とは言い難い。さらに、接着剤系で使用されているカルボキシル基を含有する合成共重合体ラテックスのゲル含有量を低下させる方法は、耐ブリスター性は向上するが、逆に接着強度の低下をもたらす。
【0005】次に、印刷光沢を上げる方法である接着剤の使用量増は、ウェット着肉性の低下をもたらし、印刷物の仕上がりが良くない。また顔料系におけるカオリンクレーの使用量増は、塗工液の流動性の低下をもたらし、高速塗工には適さない。本発明は従来法のそれらの問題点を解決し、印刷光沢と耐ブリスター性の優れた紙塗工用組成物を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上のような問題点に対し、本発明者らは鋭意検討した結果、当該課題を一挙に解決できる「紙塗工用組成物において、顔料100重量部に対し、セルロースを固形分換算で1〜15重量部の割合で添加してなることを特徴とする紙塗工用組成物」を発明した。以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】本発明の紙塗工用組成物に使用されるセルロースは、木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解等により解重合処理して得られる微結晶セルロース、またはアラビアゴム、アルギン酸およびその塩、ローカストビーンゴム等の天然に産する、或いは醗酵法等によって得られる水膨張性および/または水溶性のガム類、または各種ワックスを合体させた微結晶セルロース、もしくは、セルロース素材を同様にして解重合処理して得られたセルロースを湿式の媒体ミル、例えば湿式振動ミル、湿式ボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等により水スラリー状態で湿式摩砕したものなどであり、好ましくは解重合処理によるセルロースの重合度が375以下のものである。
【0008】これらのセルロースの添加量は、紙塗工用組成物に使用されている顔料100重量部に対し、1〜15重量部が好ましい。1重量部未満では、本発明の効果が出ない。一方15重量部を越えると、白紙光沢および印刷光沢が低下するばかりか、高シェアー時の粘度が急激に上昇し、塗料流動性が大幅に低下する。
【0009】本発明の紙塗工用組成物に使用される顔料は、例えば、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、サチン白など、紙塗工用に通常使用されている鉱物性顔料やプラスチックピグメント、中空ピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料が挙げられる。これらの顔料は、単独使用は勿論、複数使用も当然可能である。
【0010】本発明の紙塗工用組成物に使用される接着剤は、カゼイン、デンプン、ポリビニルアルコール、大豆蛋白等の水溶性高分子およびブタジエン−スチレン系共重合体で代表される合成ゴム系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−アクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系ラテックス、酢酸ビニル−アクリル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックスなどの各種ラテックスが挙げられる。これらの接着剤は、単独使用は勿論、複数使用も当然可能である。
【0011】本発明の紙塗工用組成物に使用される他の添加剤は、通常紙塗工用組成物に使用されている。例えば、分散剤、増粘剤、保水剤、潤滑剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。これらの添加剤は必要に応じて使用できる。
【0012】本発明の紙塗工用組成物の作製方法は、特に限定されない。例えば、顔料スラリーに所定量のセルロース水分散液を添加するか、顔料、接着剤および各添加剤が入っている塗工液に所定量のセルロース水分散液を添加するか、または各種ラテックスに予め所定量のセルロース分散液を添加し、作製したものを顔料スラリーに添加するなどの方法がある。本発明の紙塗工用組成物を塗工する方法は、通常の紙塗工用組成物の場合と同じ方法であり、例えば、エアーナイフ塗工、プレード塗工、ゲートロール塗工等が挙げられる。
【0013】
【発明の効果】本発明によると、耐ブリスター性と印刷光沢に優れたオフセット印刷用塗工紙を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各物性は次の測定方法に従って求めた。
【0015】(1)塗工液粘度:BL型粘度計(60rpm ,No.4スピンドル)によって25℃で測定した。
(2)表面強度:明製作所(株)製RI印刷試験機を使用し、タッツ12のインキで数回重ね刷りを行い、印刷面のピッキング状態を肉眼判定した。
【0016】(3)耐ブリスター性:両面塗工した塗工紙を明製作所(株)製RI印刷試験機を使用し、黄インキ(0.3cc)でベタ刷りし試験片とした。この試験片を加熱したシリコンオイルバスに浸漬し、ブリスターの発生した温度を読み取った。
(4)白紙光沢:塗工紙を村上式光沢度計(75°)にて測定した。
(5)印刷光沢:塗工紙を明製作所(株)製RI印刷試験機を使用し、墨インキ(0.3cc)でベタ刷りし、乾燥後、村上式光沢度計(75°)にて測定した。
【0017】実施例1まず、カオリンクレー(ウルトラコート;EMC(株)製)65重量部、炭酸カルシウム(カービタル90;富士カオリン(株)製)35重量部、分散剤(アロンT−40;東亜合成(株)製)0.2重量部およびカ性ソーダ0.2重量部の比率からなる所定量の顔料スラリーを作製し、これに微結晶セルロース(アビセルPH−M06;旭化成工業(株)製)5重量部、さらにスターチ(MS4600;日本食品(株)製)3重量部とラテックス(L−1036;旭化成工業(株)製)12重量部を添加し、最終固形分62重量%の塗工液を作製した。
【0018】次に、市販の上質紙にこの塗工液をマイヤーバーにて、片面塗工量12〜13g/m2 になるように塗工し、130℃,30秒にて熱風乾燥機で乾燥した。さらに、スーパーカレンダー掛け(ロール温度60℃、線圧150kg/cm、2回通紙)を行い、23℃,65%の雰囲気中で調湿したものを試験片とし、各種測定を行った。表1にその成分内容および評価結果を示す。
【0019】実施例2〜3微結晶セルロースの使用量を変化させ、他はすべて実施例1と同じ条件で作製した試験片について、各種測定を行った。表1にその成分内容および評価結果を示す。
【0020】実施例4微結晶セルロースの種類を変化させ、他はすべて実施例1と同じ条件で作製した試験片について、各種測定を行った。表1にその成分内容および評価結果を示す。
【0021】実施例5ラテックスの種類を変えた以外は、すべて実施例1と同じ条件で作製した試験片について、各種測定を行った。表1にその成分内容および評価結果を示す。
【0022】比較例1〜2微結晶セルロースの使用量を変化させ、他はすべて実施例1と同じ条件で作製した試験片について、各種測定を行った。表2にその成分内容および評価結果を示す。
【0023】比較例3〜4実施例5のラテックスを使用し、比較例1〜2と同じ条件で作製した試験片について、各種測定を行った。表2にその成分内容および評価結果を示す。
【0024】比較例5〜6実施例1および実施例5の紙塗工用組成物から微結晶セルロースを取り除いた以外は実施例1と同じ条件で試験片を作製した。表2にその成分内容および評価結果を示す。
【0025】
【表1】


【0026】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 紙塗工用組成物において、顔料100重量部に対し、セルロースを固形分換算で1〜15重量部の割合で添加してなることを特徴とする紙塗工用組成物。

【公開番号】特開平5−321195
【公開日】平成5年(1993)12月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−143657
【出願日】平成4年(1992)5月11日
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)