説明

紙容器における封筒貼り部の形成方法

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法に関するもので、ガスバリヤー性を有する紙容器用の積層シートによって、内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器を得る際の封筒貼り部を、前記積層シートにおける端面を紙容器内周面に露出させることなく形成するものであり、確実に、かつ、極めて効率良く前記封筒貼り部を形成する方法を提供するものである。
〔従来の技術〕
従来の紙容器は、紙容器を得る際に使用される成形用素材である積層シートの有する熱溶着能によって接合部が形成されているのが普通であり、一般的には、容器内の内填物と接する容器内周面層となる層がポリオレフィン系樹脂層で形成されている成形用素材における前記ポリオレフィン系樹脂層の有する熱溶着能によって、前記接合部が形成されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、前記容器内周面層がポリオレフィン系樹脂層で構成されている紙容器は、該容器の成形用素材たる積層シートを得る際のポリオレフィン系樹脂層の形成時や該積層シートによる紙容器の成形時に、ポリオレフィン系樹脂が熱分解を受けて脂肪族炭化水素等の揮発性成分を生成することとなり、この揮発性成分が容器内に収容されているオレンジジュース等の内填物内に移行する結果、内填物に変味や悪臭が発生するという弊害を有するばかりでなく、前記紙容器の内周面層をなすポリオレフィン系樹脂層は、内填物中の着香成分を吸着し易かったりあるいは透過し易かったりするため、容器内の内填物の風味が変化して損なわれ易いという欠点をも有する。
これに対して、本発明方法は、ガスバリヤー性を有する紙容器用積層シートによって、内填物に対する保香特性とガスバリヤー特性とにおいて優れた性質を有する紙容器を得る際の封筒貼り部を、該封筒貼り部に、シール用テープを介装させながら形成するものであり、極めて効率良く、かつ、確実に、前記封筒貼り部を形成する方法を提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の紙容器における封筒貼り部の形成方法は、ガスバリヤー性層を積層構成中に含む包装材用基材からなる中間層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、紙容器内周面層が前記積層シートにおける裏面層である40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層で構成される紙容器を得る際の封筒貼り部の形成方法であり、前記封筒貼り部の形成に際して、ガスバリヤー特性を有する中芯層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂による裏面層との積層構成からなるシール用テープを使用するものである。
すなわち、本発明の紙容器における封筒貼り部の形成方法は、前記紙容器用積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳し、該重畳部を接着することによって紙容器における封筒貼り部を形成する際に、前記積層構成のシール用テープを使用するものであって、紙容器用積層シートにおける他方の側辺部の裏面層と、シール用テープの裏面層との間の接着を、火炎シール法によって行なうものである。
しかして、本発明の紙容器における封筒貼り部の形成方法の第1工程は、紙容器用積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳し、該重畳部を接着することによって紙容器における封筒貼り部を形成する際に、前記紙容器用積層シートの側辺部同志の重畳部において容器内面側に位置することとなる前記積層シートの一方の側辺部の裏面層に対して、シール用テープを、該シール用テープの一方の側辺部を表面層側に折り曲げて反転させた反転部の端面と前記積層シートの一方の側辺部の端面とが揃うようにした状態で接当させ、かつ、前記シール用テープを、該シール用テープが前記紙容器用積層シートの一方の側辺部における裏面層と端面と表面層とを被覆するようにして、前記紙容器用積層シートの一方の側辺部に巻き付けると共に、前記紙容器用積層シートの一方の側辺部における裏面層とシール用テープの裏面層とを、また、紙容器用積層シートの一方の側辺部における表面層とシール用テープの表面層とを、それぞれ、熱バー等の通常の熱圧法によって熱溶融接着するものであり、また、同時に、前記シール用テープの反転部における表面層同志の接着をも行なうものである。
前記第1工程に続く第2工程は、前記積層シートの一方の側辺部に巻き付けられ、接着されているシール用テープの裏面層上に、前記紙容器用積層シートの他方の側辺部を重畳させ、前記巻き付けられているシール用テープおける裏面層と前記紙容器用積層シートの他方の側辺部における裏面層とを熱圧接着することによって、内周面層が積層シートにおける裏面層で構成されている筒状体を得るものであり、前記シール用テープおける裏面層と前記紙容器用積層シートの他方の側辺部における裏面層との間の熱圧接着工程を、火炎シール法によって行なうものである。
すなわち、前記熱圧接着予定部分における積層シートの他方の裏面層とシール用テープの裏面層とのそれぞれの面を火炎処理に付して熱溶融させた後、前記両面が熱溶融状態にある間に、前記火炎処理に付されている面同志の所定の部分、すなわち、前記巻き付けられているシール用テープの裏面層と前記紙容器用積層シートの他方の側辺部における裏面層とをそれぞれ接当させ、該接当部分を加圧することによって、内周面層が前記積層シートの裏面層で構成されている所定の筒状体を得るものである。
前記構成からなる本発明方法で利用する紙容器用積層シートは、積層構成中にガスバリヤー層、例えば、金属層,エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂層,延伸ポリエチレン−テレフテレート樹脂層,ポリ塩化ビニリデン樹脂層等からなるガスバリヤー層を含む包装材用基材と、前記紙記器用積層シートにおける表面層をなすポリオレフィン裏樹脂層と、同じく、前記紙容器用積層シートにおける裏面層をなす低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層との積層シートであって、該積層シートにおいて裏面層をなす前記40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層が、該樹脂層を構成している線状飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度未満の温度雰囲裏中で優れた保香性能を発揮するものであり、一般的に、紙容器内の内填物が40℃未満に維持されるものであることとの関係で、前記線状飽和ポリエステル樹脂層による優れた保香性能が利用し得るものである。
尚、前記紙容器用積層シートにおける線状飽和ポリエステル樹脂層は、これが低結晶性の樹脂で形成されているものであることから、例えば、内填物の充填を熱充填で行なう場合等の加熱を受けても、前記ポリエステル樹脂層の熱接着特性が損なわれるようなことがなく、内填物の充填操作に続いて実施される紙容器の封減部の形成において、優れた熱接着強度が得られたものである。
また、前記紙容器用積層シートによる封筒貼り部の形成に際して使用されるシール用テープは、ガスバリヤー特性を有する中芯層、すなわち、金属層,エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂層,延伸ポリエチレン−テレフテレート樹脂層,ポリ塩化ビニリデン樹脂層等によるガスバリヤー層を有する中芯層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂による裏面層との積層構成からなるものであり、該シール用テープにおいて裏面層をなす樹脂層と、前記紙容器用積層シートにおける裏面層をなす40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層との間の接着を、火炎シール法による熱溶融接着で達成し得るものである。
前記紙容器用積層シートにおける裏面層をなす40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層は、例えば、エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノール等のアルコール成分と、アジピン酸,セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸,イソフタル酸,ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等によるジカルボン酸成分とによる共縮合重合体、具体的には、エチレングリコールとテレフタル酸,エチレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸,1,4−シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとテレフタル酸,プロピレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸等による組み合わせの共縮合重合体を利用して形成し得る。
なお、酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分が10重量%以上になる共縮合重合体の場合には、該共縮合重合体による飽和ポリエステル樹脂層は、その保香性能が低下する傾向を有しているので好ましくない。
また、前記40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層は、これが厚さ5μm未満になると樹脂層の安定性が悪く、ヒートシールによる密封性が悪くなり、また、200μmを越えるようになると、得られる紙容器用積層シートあるいはシール用テープが固くなって、折り曲げ加工特性が悪くなることから、通常は、厚さ5〜200μmの範囲内で形成されていることが好ましい。
本発明方法で利用する前記紙容器用積層シートにおける表面層は、この積層シートによって成形される紙容器に外部からの耐水性を付与するものであると同時に、前述の積層シートの表面層とシール用テープの表面層をなすポリオレフィン系樹脂層との間に、熱バー等による熱溶着能をもたらすものであって、紙容器用積層シートにおける表面層とシール用テープにおける表面層とは、例えば、低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−アクリル酸メチル共重合体,エチレン−α・オレフィン共重合体,さらにはポリプロピレン等によって、厚さ3〜150μm程度に形成されているものである。
前記紙容器用積層シートは、前記40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層からなる裏面層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層とが、積層構成中にガスバリヤー性層を含む包装材用基材に積層されてるものであって、紙容器に成形されるに適した積層シートとなり得る包装材用基材、例えば、アルミニュウム箔,紙層,オレフィン系樹脂層,ポリエステル延伸フィルム層等を利用した厚さ40〜1000μm程度の包装材用基材が使用されるものである。
なお、前述の紙容器用積層シートにおける前述の40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層からなる裏面層は、前記包装材用基材に対して、例えば、接着性ポリオレフィン系樹脂やイソシアネート系接着剤等の接着剤層を利用して積層されるのが一般的である。
また、前記紙容器用積層シートは、例えば、ブリックタイプ,ゲーベルトップタイプ,さらには円筒体等の紙容器に成形されるものであり、主として、紙容器における胴貼り部分をなす封筒貼り部の形成に際して、本発明方法が適用されるものである。
更に、前記シール用テープは、ガスバリヤー特性を有する中芯層に対して、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂による裏面層とが積層されている積層構成からなるものであって、例えば、金属層,合成樹脂層,合成樹脂フィルム層等の単独層あるいは複合層からなる中芯層に、前記表面層と裏面層とが積層されているところの、厚さ20〜200μ程度の積層テープが使用される。
前記シール用テープにおける裏面層は、前述の通り、前記紙容器用積層シートにおける裏面層をなす40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層との間に、火炎シール法による熱溶融接着が達成し得るものであって、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂によって、厚さ5〜100μ程度の樹脂層で構成されているものである。
なお、前記シール用テープにおける裏面層を構成する接着性ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン,エチレン−α・オレフィン共重合体,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリイソブチレンのごときポリα−ポレフィン、およびポリブタジエン,ポリイソプレンのごときポリジオレフィンあるいはこれらの共重合体等と、例えば、カルボン酸,カルボン酸塩,カルボン酸無水物,カルボン酸エステル,カルボン酸アミドないしイミド,アルデヒド,ケトン等に基づくカルボニル

を単独で、あるいはシアノ(−C≡N)基;ヒドロキシ基;エーテル基;オキシラン

環等との組合せで有するエチレン系不飽和単量体の1種または2種以上との共重合体等、 具体的には、A. エチレン系不飽和カルボン酸: アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等B. エチレン系不飽和無水カルボン酸: 無水マレイン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等C. エチレン系不飽和エステル: アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、マレイン酸モノまたはジエチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、γ−ヒドロキシメタクリル酸プロピル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−N−エチルアミノエチルアクリレート等D. エチレン系不飽和アミドないしイミド: アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等E. エチン系不飽和アルデヒドないしケトン: アクロレイン、メタクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルブチルケトン等のエチレン系不飽和単量体との共重合体等が使用されるものである。
また、接着性ポリエステル樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸とを主成分とし、必要に応じて、更に、多価アルコール,長鎖グリコール,イソフタル酸,脂肪族ジカルボン酸,芳香族ジカルボン酸等を使用した共重合体による引張り弾性率10,000kg/cm2以下の飽和ポリエステル樹脂である。
更に、前記本発明の容器における封筒貼り部の形成方法の第2工程において、紙容器用積層シートの一方の側辺部に巻き付けられ、かつ、接着されているシール用テープの裏面層と、紙容器用積層シートの他方の側辺部の裏面層との間の接着予定部分に対して施される火炎処理は、火炎処理面の温度が180〜250℃程度、ガス圧5mmAq、空気圧35〜60mmAq程度の火炎処理装置によって、処理速度200m/min.程度で実施されるものであり、火炎処理によって、処理された樹脂層表面が荒らされ、微細な多数の凹凸群が該樹脂層面に生成される程度に火炎処理されるのが好ましい。
尚、前記火炎処理と、該火炎処理が施された面同志を重畳,加圧する際の加圧処理との間のタイムラグが大きくなりすぎると、加圧時の接合面の温度が低下し、得られるシール強度が小さくなるので、前記タイムラグは0.5秒以内に設定するのが好ましい。
〔実 施 例〕
以下、本発明の紙容器における封筒貼り部の形成方法の具体的な構成を実施例をもって説明する。
実施例1 第2図において、符号1で表示される包装材用基材、すなわち、坪量400g/m2の耐酸紙/圧さ15μmのアイオノマー樹脂「ハイミラン1652:三井デュポンポリケミカル(株)製」層/厚さ9μmのアルミニュウム箔/厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層からなる積層構成の包装材用基材1に対して、該包装材用基材1の耐酸紙面に、厚さ30μmのポリオレフィン系樹脂「ミラソン16P:三井石油化学工業(株)製」層からなる表面層2を形成し、また、前記包装材用基材1の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層面に、厚さ30μmのエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂「ウルトゼックス2020L:三井石油化学工業(株)製」層/厚さ10μmの接着性ポリオレフィン樹脂「アドマーAT469C:三井石油化学工業(株)製」層/厚さ20μmの線状飽和ポリエステル樹脂「PET G 6763:ガラス転移温度81℃,イーストマンコダック社製」層からなる三層共押し出しフィルム3を、該フィルム3におけるポリエステル樹脂層4が裏面層となるようにして積層することによって、本発明方法で使用する紙容器用積層シートの1実施例品5を得た。
なお、前記紙容器用積層シート5において符号6で表示される部分は、前記三層共押し出しフィルム3におけるエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層と接着性ポリオレフィン樹脂層との積層部分である。
他方、第3図において、ポリオレフィン系樹脂「ミラソン16P:三井石油化学工業(株)製」による厚さ20μの表面層bと、接着性ポリエステル系樹脂〔バイロンGM990:東洋紡績(株)製〕による厚さ20μの裏面層cとを、シールテープ用基材d、すなわち、厚さ20μのアルミニュウム箔と厚さ12μの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとの積層シートからなるシールテープ用基材dに積層することによって得られた、ポリオレフィン系樹脂層/アルミニュウム箔/二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム/接着性ポリエステル系樹脂の積層構成からなる、幅24mm、厚さ72μのシール用テープaを得た。
次いで、前述の紙容器用積層シート5を、380mm×360mmの、ゲーベルトップ型紙容器用のブランク板に打ち抜き、該打ち抜かれた積層シートの一方の側辺部7に対して、前記シール用テープaを、前記シール用テープaの一方の側辺部を該テープaにおける表面層b側に反転させた幅約5mmに亘る反転部の裏面層cと、前記紙容器用積層シート5の一方の側辺部7における裏面層4とが接当するように、しかも、前記紙容器用積層シートの一方の側辺部7における表面層2と裏面層4と端面8とが前記シール用テープaによって被覆されるようにして巻き付けた後、前記巻き付けられているシール用テープaと前記紙容器用積層シートの一方の側辺部7との接当部分を、該接当部分の上,下に、320℃のヒートシールバーを接当し、2kg/cm2の圧力をかけながら、加熱面が300℃になるまで加熱,加圧することによって、第4図にて符号Bで表示される熱接着部を形成し、一方の側辺部7がシール用テープaによって端面処理されている積層シート9を得た。
更に、前記端面処理されている積層シート9の他方の側辺部10における裏面層4の幅約5mmに亘る部分と、前記一方の側辺部7に熱圧接着されている前述のシール用テープaにおける裏面層cのうちの前記積層シート9の他方の側辺部10と接着される接着予定部分とをそれぞれ火炎処理に付し、該処理面をそれぞれ熱溶融させ、更に、これら両処理面が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部7上に他方の側辺部10を重量させ、前述の火炎処理面同志を接当させた後、前記火炎処理が付されている面同志の接当部分を、第1図にて矢印で表示される側からゴムロールで加圧することによって、第1図で符号Aで表示される部分の接着部を形成すると同時に、前述の積層シート9における裏面層4が内周面層とされている筒状体を得た。
なお、前記火炎処理は、シール用テープにおける裏面層に対しては、ガス圧5mmAq,空気圧39mmAqの予備処理用第1バーナーと、ガス圧5mmAq,空気圧47mmAqの第2バーナーとによって、また、積層シートの裏面層に対しては、ガス圧5mmAq,空気圧44mmAqの予備処理用第1バーナーと、ガス圧5mmAq,空気圧60mmAqの第2バーナーとによって、コンベアスピード200m/min.で実施したもので、火炎処理面の加熱温度は250℃である。
前記得られた筒状体における封筒貼り部の接合面の剥離を指先で試みたところ、積層シートにおける紙層内での断層破壊が生じてしまい、積層シートの表面層2と裏面層4との間の界面、シール用テープaと積層シート9との間の界面の剥離はなかった。
比較例1 前記実施例1で使用したシール用テープaが接着されている紙容器用積層シート9を利用して、前記実施例1における封筒貼り部と同一の構成からなる封筒貼り部を、前記シール用テープaを紙容器用積層シート5の一方の側辺部7に接着する際の条件と同一の熱圧接着条件で得ることによって、内周面層が積層シート9の裏面層で構成されている筒状体を得た。
なお、前記比較例1で得られた筒状体における封筒貼り部の接合面の剥離を指先で試みたところ、前記実施例1の封筒貼り部の接着部Aに相当する部分に、熱量不足による剥離が発生した。
〔発明の作用,効果〕
本発明の紙容器における封筒貼り部の形成方法は、ガスバリヤー性層を積層構成中に含む包装材用基材からなる中間層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳し、該重畳部を接着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記紙容器用積層シートの側辺部同志の重畳部において容器内面側に位置することとなる前記積層シートの一方の側辺部に対して、ガスバリヤー特性を有する中芯層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂による裏面層との積層構成からなるシール用テープを、該シール用テープの一方の側辺部を該テープの表面層側に折り曲げて反転させた反転部における裏面層と、前記積層シートにおける裏面層とが接するように、しかも、前記シール用テープが前記紙容器用積層シートの一方の側辺部における裏面層と端面と表面層とを被覆するようにして、前記シール用テープ接当させて巻き付けると共に、前記紙容器用積層シートの一方の側辺部における裏面層とシール用テープの裏面層とを、また、紙容器用積層シートの一方の側辺部における表面層とシール用テープの表面層とを、それぞれ、熱圧接着し、次いで、前記積層シートの一方の側辺部に熱圧接着されているシール用テープの裏面層と紙容器用積層シートの他方の側辺部における裏面層とを、火炎処理による熱溶融接着によって接着するものである。
すなわち、前記本発明方法は、ガスバリヤー特性を有する中芯層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂による裏面層との積層構成からなるシール用テープを使用するものであり、前述の積層シートの他方の側辺部、すなわち、得られる紙容器の封筒貼り部における外周面に位置することとなる積層シートの側辺部おける裏面層と前記シール用テープにおける裏面層との間の熱圧接着を、火炎処理による熱溶融接着によって行なうものである。
而して、前記本発明方法においては、ガスバリヤー層を積層構成中に含む包装材用基材と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が40℃以上のガラス転移温度を有する結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層で構成される紙容器を得るものであり、しかも、前記紙容器における封筒貼り部を、前記積層シート中のガスバリヤー層やシール用テープ中のガスバリヤー層を容器内周面に露出させることなく形成し得るものである、すなわち、例えば、金属層や塩化ビニリデン樹脂層等のガスバリヤー層を容器内周面に露出させることなく形成するものであるから、内填物に対する保香特性と衛生性とに優れた性質を有する紙容器が得られるものである。
また、前記本発明方法では、前述の通り、得られる紙容器における封筒貼り部において、紙容器外周面側に位置する積層シートにおける他方の側辺部の裏面層とシール用テープの裏面層との間の接着を、火炎処理による熱圧接着で行なうものであるから、シール用テープにおける火炎処理された樹脂層は、該樹脂層の1部分が溶融,酸化され、また、同じく火炎処理された積層シートにおける裏面層即ち40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層は、該樹脂層表面が荒らされ、微細な多数の凹凸群が前記樹脂層面に生成されるので、火炎処理に続く加圧工程で、前記表面が溶融状態にあるシール用テープにおける裏面層をなす樹脂層が、前記低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層の表面の凹凸の凹部内に深く食い込むようにして侵入し、両者の間の接合が得られるものであり、強固な接着部が得られるものである。
従って、本発明方法では、内填物に対する保香特性と衛生性とガスバリヤー特性とに優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部を、極めて効率の良い熱シール方法で、確実に形成し得るものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法によって得られた紙容器用積層シートの封筒貼り部の模型断面図、第2図は、本発明方法で使用する紙容器用積層シートの1実施例品の模型断面図、第3図は、本発明方法で使用するシール用テープの1実施例品の模型断面図、第4図は、前記第2図に示された紙容器用積層シートと、前記第3図に示されたシール用テープとを使用し、本発明方法の封筒貼り部を得る途中工程を示す模型断面図である。
1:ガスバリヤー層を積層構成中に含む包装材用基材、2:ポリオレフィン系樹脂による表面層、4:40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層からなる裏面層、5:紙容器用積層シート、7:紙容器用積層シートにおける一方の側辺部、8:紙容器用積層シートの一方の側辺部7における端面、9:シール用テープによって端面が処理されている積層シート、10:紙容器用積層シートにおける他方の側辺部、a:シール用テープ、b:シール用テープaの表面層、c:シール用テープaの裏面層、d:シール用テープaにおける中芯層、A:封筒貼り部における積層シート5の他方の側辺部における裏面層4とシール用テープにおける裏面層cとの間の接着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ガスバリヤー性層を積層構成中に含む包装材用基材からなる中間層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳し、該重畳部を接着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記紙容器用積層シートの側辺部同志の重畳部において容器内面側に位置することとなる前記積層シートの一方の側辺部に対して、ガスバリヤー特性を有する中芯層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、接着性ポリオレフィン系樹脂,接着性ポリエステル樹脂あるいはこれらの混合樹脂による裏面層との積層構成からなるシール用テープを、該シール用テープの一方の側辺部を該テープの表面層側に折り曲げて反転させた反転部における裏面層と、前記積層シートにおける裏面層とが接するように、しかも、前記シール用テープが前記紙容器用積層シートの一方の側辺部における裏面層と端面と表面層とを被覆するようにして、前記シール用テープを接当させて巻き付けると共に、前記紙容器用積層シートの一方の側辺部における裏面層とシール用テープの裏面層とを、また、紙容器用積層シートの一方の側辺部における表面層とシール用テープの表面層とを、それぞれ、熱圧接着し、次いで、前記積層シートの一方の側辺部に熱圧接着されているシール用テープの裏面層と紙容器用積層シートの他方の側辺部における裏面層とを、火炎処理による熱溶融接着によって接着することを特徴とする紙容器における封筒貼り部の形成方法。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】第2602056号
【登録日】平成9年(1997)1月29日
【発行日】平成9年(1997)4月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−95864
【出願日】昭和63年(1988)4月19日
【公開番号】特開平1−267028
【公開日】平成1年(1989)10月24日
【出願人】(999999999)大日本印刷株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭59−199435(JP,A)
【文献】特開 昭59−136236(JP,A)
【文献】特開 昭57−63240(JP,A)
【文献】特公 昭57−46428(JP,B2)