説明

紙巻たばこ及び紙巻たばこ用巻紙

【課題】虫を忌避するための薬品を皮膚に塗布することなく虫を忌避する効果があり、喫煙中に虫刺されの被害を受けることを防止できる紙巻タバコ及びそのための紙巻たばこ用巻紙を提供する。
【解決手段】紙巻タバコに虫を忌避する化学成分を含有させる。虫を忌避する化学成分としてはシトラール又はシトロネラールを用いることができる。レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラをたばこ葉に混合させる又はこれらのエッセンシャルオイルをたばこ葉、巻紙又はフィルタに配合させることで、シトラール又はシトロネラールをたばこに含有させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫を忌避する効果を持つような紙巻たばこ及び紙巻たばこ用巻紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙巻たばこに化学成分を加えることは広く知られている。例えば特許文献1には紙巻たばこを含む喫煙物品のフィルタに親油性香料を包接させた加香料を添加することが開示されている。
【0003】
しかしながら、虫を忌避する効果を持つ化学成分を加えること及び加えられる化学成分については知られていなかった。
一方、近年の受動喫煙を好まない傾向によって、喫煙中に虫を忌避することの必要性は増している。オフィスが禁煙である、家族の受動喫煙を防止する等の理由により、喫煙を屋外で行うことが多くなり、蚊等の虫の被害を受ける可能性が高まったためである。
【0004】
むろん、喫煙の際に虫を忌避するための薬品を皮膚に塗布することは可能である。しかし、かかる薬剤塗布は手間がかかり、忘れてしまうことも多い。たばこが虫を忌避する効果を持つならば、手軽であり忘れることもない。
しかし、虫を忌避する効果を持つ化学成分を含有するようなたばこは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−279986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、虫を忌避する効果を持つ化学成分を含有するようなたばこが提供されていなかったことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙巻たばこは、
虫を忌避する化学成分を含有させたことを特徴とする。
ここで、含有「させた」とは、紙巻たばこを生産する過程において虫を忌避する化学成分を含有させることを言う。たばこ葉に自然に含まれる化学成分は考慮しない。
【0008】
本発明の紙巻たばこは、
前記虫が蚊であることを特徴とする。
忌避したい虫としては、蚊、蝿、蜂等が考えられる。虫に依存してそれを忌避する化学成分又はその濃度が異なり得る。これらの虫のうち、屋外で喫煙する際に忌避する必要性が最も高いものは蚊である。蚊を忌避するような化学成分を蚊を忌避するような濃度で含有させる。
【0009】
本発明の紙巻たばこは、
前記虫を忌避する化学成分がシトラール又はシトロネラールであることを特徴とする。
シトラール(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール)及びシトロネラール(3,7−ジメチル−7−ヒドロキシオクタナール)は、吸引しても人体に無害であり、虫を忌避する効果を持つ。また、抗菌、抗がんなどの効果もあるとされている。
シトラール及びシトロネラールは、柑橘の香りを発生する。紙巻たばこにメントールを含有させたものが市販されているように、柑橘系の香りは不快臭ではなく、その香りを好む者もいる。虫を忌避するための通常の薬品のように喫煙時に不快な香りを発生するものではない。
【0010】
本発明の紙巻たばこは、
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラの葉をたばこ葉に混合させたことを特徴とする。
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン及びシトロネラは、シトラール又はシトロネラールを含有する植物である。これら植物の葉をたばこ葉に混合させると、たばこ葉の燃焼に合わせてこれら植物の葉も燃焼し、副流煙中にシトラール又はシトロネラールが含まれ、虫を忌避する効果を持つ。副流煙が空気中に拡散し、効率的に無視を忌避することができる。
【0011】
本発明の紙巻たばこは、
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラの葉をたばこ葉100重量%に対して20〜60重量%混合させたことを特徴とする。
後述の実施例に示すとおり、たばこの味を損なわずかつ十分な虫を忌避する効果を得るためには、この混合比率が好ましい。
【0012】
本発明の紙巻たばこは、
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルをたばこ葉に配合させたことを特長とする。
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラの葉に替えてこれらの植物から抽出したエッセンシャルオイルを配合させることでも、副流煙中にシトラール又はシトロネラールが含まれて虫を忌避するという同様の効果を有する。
【0013】
本発明の紙巻たばこは、
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルを巻紙に配合させたことを特長とする。
エッセンシャルオイルをたばこ葉でなく巻紙に配合させても、副流煙中にシトラール又はシトロネラールが含まれて虫を忌避するという同様の効果を有する。
巻紙に配合させることにより、葉を混合する過程を経ずに紙巻たばこを生産でき、生産が容易になる。また、たばこ葉の種類が異なる複数品種の紙巻たばこを生産する場合においては、1種の巻紙のみを全品種の紙巻たばこに使用することができる。
【0014】
本発明の紙巻たばこ用巻紙は、
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルを配合させたことを特長とする。
上記のとおり、巻紙のみによって虫を忌避する効果を得ることができる。紙巻たばこを全体でなく、エッセンシャルオイルを配合させた紙巻たばこ用巻紙のみでも商品価値がある。
【0015】
本発明の紙巻たばこは、
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルをフィルタに配合させたことを特長とする。
エッセンシャルオイルをフィルタに配合させることによっても、エッセンシャルオイルの揮発によって虫を忌避する効果を得ることができる。ただし、副流煙中にシトラール又はシトロネラールが含まれて虫を忌避する場合と比べて空気中への拡散が遅いので、より高濃度で配合する必要がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紙巻たばこ及び紙巻たばこ用巻紙を使用することにより、虫を忌避するための薬品を皮膚に塗布することなく虫を忌避する効果があり、喫煙中に虫刺されの被害を受けることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の紙巻たばこについて、各種の実施例を示す。
【実施例1】
【0018】
略1mmの辺長の方形に刻んだレモングラスの葉を、たばこ葉100重量%に対して20重量%の割合で混合させて紙巻たばこ(本発明の紙巻たばこ1)を作成した。
夏の日の夕方に、屋外にて、本発明の紙巻たばこ1及び通常の紙巻たばこを喫煙した。喫煙には2分間をかけた。通常の紙巻たばこの場合には7箇所を蚊に刺された。本発明の紙巻たばこ1の場合には蚊に刺されなかった。これにより、レモングラスの葉を20重量%以上の割合で混合させた紙巻たばこは蚊を忌避する効果があると考えられる。
また、被験者10名に対し本発明の紙巻たばこと同様でありレモングラスの葉の混合比率を20%、30%、40%、50%、60%及び70%とした紙巻たばこを喫煙した際に不快臭を感じたか否かを尋ねたところ、全員が「不快臭を感じなかった」と回答した。ただし、混合比率が70%のものについては「柑橘香が強くたばこの味を感じない」との不満を持つ被験者が2名いた。
【実施例2】
【0019】
たばこ1本分につき略1mgのシトラールを含むようにレモングラスのエッセンシャルオイルを配合させた巻紙を用いて、紙巻たばこ(本発明の紙巻たばこ2)を作成した。
夏の日の夕方に、屋外にて、本発明の紙巻たばこ2及び通常の紙巻たばこを喫煙した。喫煙には2分間をかけた。通常の紙巻たばこの場合には8箇所を蚊に刺された。本発明の紙巻たばこ2の場合には蚊に刺されなかった。
また、被験者10名に対し本発明の紙巻たばこ2を喫煙した際に不快臭を感じたか否かを尋ねたところ、全員が「不快臭を感じなかった」と回答した。
【実施例3】
【0020】
たばこ1本分につき略10mgのシトラールを含むようにレモングラスのエッセンシャルオイルを配合させたフィルタを用いて、紙巻たばこ(本発明の紙巻たばこ3)を作成した。
夏の日の夕方に、屋外にて、本発明の紙巻たばこ3及び通常の紙巻たばこを喫煙した。喫煙には2分間をかけた。通常の紙巻たばこの場合には8箇所を蚊に刺された。本発明の紙巻たばこ3の場合には3箇所を蚊に刺された。
また、被験者10名に対し本発明の紙巻たばこ1を喫煙した際に不快臭を感じたか否かを尋ねたところ、全員が「不快臭を感じなかった」と回答した。
【産業上の利用可能性】
【0021】
虫を忌避するための薬品を皮膚に塗布することなく虫を忌避する効果があり、喫煙中に虫刺されの被害を受けることを防止できる紙巻タバコ及びそのための紙巻たばこ用巻紙であり、喫煙者及びたばこ生産者による活用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を忌避する化学成分を含有させたことを特徴とする、紙巻たばこ。
【請求項2】
前記虫が蚊であることを特徴とする、請求項1に記載の紙巻たばこ。
【請求項3】
前記虫を忌避する化学成分がシトラール又はシトロネラールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の紙巻たばこ。
【請求項4】
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラの葉をたばこ葉に混合させたことを特徴とする、請求項3に記載の紙巻たばこ。
【請求項5】
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラの葉をたばこ葉100重量%に対して20〜60重量%混合させたことを特徴とする、請求項4に記載の紙巻たばこ。
【請求項6】
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルをたばこ葉に配合させたことを特長とする、請求項3に記載の紙巻たばこ。
【請求項7】
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルを巻紙に配合させたことを特長とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の紙巻たばこ。
【請求項8】
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルを配合させたことを特長とする、紙巻たばこ用巻紙。
【請求項9】
レモングラス、メリッサ、ユーカリレモン又はシトロネラのエッセンシャルオイルをフィルタに配合させたことを特長とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の紙巻たばこ。

【公開番号】特開2012−70682(P2012−70682A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218763(P2010−218763)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510259840)
【Fターム(参考)】