説明

紙幣処理機

【課題】空状態での取扱性および保管効率を一層向上できる紙幣収納カセットを備えた紙幣処理機の提供。
【解決手段】布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と枠体43とシャッタ53とを有する紙幣収納カセット3と、紙幣収納カセット3の装填時に枠体43を支持して枠体43の所定の装填位置に向けた摺動を案内する支持手段を有する処理機本体2とを備え、枠体43には、シャッタ53をロックするシャッタロック機構71が設けられており、処理機本体2には、枠体43を取り外し不可に係止する枠体ロック機構87と、枠体ロック機構87による枠体43の係止以降にシャッタロック機構71のロックを解除するシャッタロック解除手段84と、シャッタロック解除手段84によるロック解除以降にシャッタ53を開方向に押圧するシャッタ押圧手段95とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣処理機において、紙幣を収納する紙幣収納カセットを処理機本体に対し着脱可能に構成し、この紙幣収納カセットを金庫として用いて紙幣の運搬を行うことが行われているが、紙幣収納カセットを蛇腹構造にして伸縮可能に構成し、紙幣の収納量に応じて収納容量を変化させることで、空状態での取扱性および保管効率を向上する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−149088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の紙幣収納カセットは、蛇腹構造を採用していることから、伸縮方向の変形は容易であるものの、他の方向への変形は容易ではなく、また、最も縮長させた状態でも十分に小型化できるとは言えなかった。
【0004】
したがって、本発明は、空状態での取扱性および保管効率を一層向上できる紙幣収納カセットを備えた紙幣処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、該袋体の開口部に取り付けられる枠体と、該枠体の内側の導入口を開閉するシャッタとを有し、該シャッタが開放された状態で前記枠体の導入口を介して前記袋体内に紙幣を収納可能な紙幣収納カセットと、該紙幣収納カセットが着脱可能に装填されるとともに、装填時に前記枠体を支持して該枠体の所定の装填位置に向けた摺動を案内する支持手段を有する処理機本体とを備えた紙幣処理機であって、前記枠体には、前記シャッタを閉状態でロックするシャッタロック機構が設けられており、前記処理機本体には、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって前記枠体を取り外し不可に係止する枠体ロック機構と、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記枠体ロック機構による前記枠体の係止以降に前記シャッタロック機構のロックを解除するシャッタロック解除手段と、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記シャッタロック解除手段による前記シャッタロック機構のロック解除以降に前記シャッタを開方向に押圧して前記シャッタロック機構からロック不可な位置まで離間させるシャッタ押圧手段とが設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記枠体ロック機構は、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記シャッタ押圧手段による前記シャッタの前記シャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に前記枠体を前記装填位置でロックすることを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記枠体には、前記シャッタの閉時に、該シャッタで押圧されて回動し前記枠体ロック機構による前記枠体の前記装填位置でのロックを解除する枠体ロック解除レバーが設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記シャッタロック解除手段はラックギアであり、前記シャッタロック機構は、前記シャッタに係合する回動可能なフックと、前記ラックギアに噛み合って回転するピニオンギアと、該ピニオンギアの回転によって前記フックを押圧し回動させる作動レバーとを有することを特徴としている。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記作動レバーは、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記シャッタの前記シャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に前記フックへの押圧を解除することを特徴としている。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、前記シャッタ押圧手段は、前記シャッタを押圧する回動可能な押圧レバーを有しており、該押圧レバーは、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に、前記シャッタに当接して該シャッタを開方向に押圧するとともに、該シャッタの前記シャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に前記枠体に当接し回動して前記シャッタへの当接を解除することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、紙幣収納カセットが、袋体が布製でいずれの方向にも変形容易であるため、空の状態においては変形自由度が高くて取扱性に優れることになり、また、一層小さく折り畳むことができることになって保管効率も優れることになる。そして、この紙幣収納カセットを処理機本体に装填するにあたっては、紙幣収納カセットの枠体を支持手段に支持させた状態で所定の装填位置に向けて摺動させると、この摺動によって、まず処理機本体に設けられた枠体ロック機構が枠体を取り外し不可に係止し、この係止以降にシャッタロック解除手段がシャッタロック機構のロックを解除し、このロック解除以降にシャッタ押圧手段がシャッタを開方向に押圧してシャッタロック機構からロック不可な位置まで離間させることになる。その結果、シャッタを開放可能となって、紙幣収納カセットへの紙幣の収納が可能な状態となる。このように、枠体の所定の装填位置に向けての摺動によって、枠体のロック、シャッタのロック解除、シャッタの開放を行うことができるため、操作者の作業的な負担が少なくなる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、枠体の装填位置に向けた摺動時に、シャッタ押圧手段によるシャッタのシャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に、枠体ロック機構が枠体を装填位置でロックする。このように、シャッタのロック解除前に枠体を取り外し不可に係止する枠体ロック機構によって、枠体を最終的な装填位置でロックできるため、低コスト化が図れる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、シャッタの閉時に、枠体に設けられた枠体ロック解除レバーがシャッタで押圧されて回動し枠体ロック機構による枠体の装填位置でのロックを解除して、処理機本体からの紙幣収納カセットの取り外しを可能とする。このようにシャッタの閉作動に連動して処理機本体からの紙幣収納カセットの取り外しが可能になるため、操作者の作業的な負担が少なくなる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、紙幣収納カセットの枠体を支持手段に支持させた状態で所定の装填位置に向けて摺動させると、シャッタロック解除手段であるラックギアが、シャッタロック機構のピニオンギアを回転させることになり、このピニオンギアの回転によって作動レバーがフックを押圧し回動させてフックのシャッタへの係合を解除する。このようにラックギアとピニオンギアとの噛み合いによってフックを回動させるため、確実かつ正確なタイミングでシャッタのロックを解除することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、作動レバーが、枠体の装填位置に向けた摺動時にシャッタのシャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降にフックへの押圧を解除するため、フックは再びシャッタをロック可能な位置に戻ることになり、自動的にシャッタの閉時のロックに備える状態になる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、紙幣収納カセットの枠体を支持手段に支持させた状態で所定の装填位置に向けて摺動させると、シャッタ押圧手段の押圧レバーは、シャッタに当接してシャッタを開方向に押圧し、シャッタのシャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に枠体に当接し回動してシャッタへの当接を解除する。よって、自動的にその後のシャッタの閉作動を許容する状態になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態の紙幣収納カセットおよびそれを用いた紙幣処理機を図面を参照して以下に説明する。
図1は紙幣処理機1を示すもので、この紙幣処理機1は、バラの紙幣Sを計数して入金および収納する入金収納処理と、バラの紙幣Sを計数して返却する計数処理とを行うことが可能とされるものである。
【0018】
紙幣処理機1は、図1に概略的に示すように、処理機本体2と、処理機本体2に対し着脱可能に装填される紙幣収納カセット3とを有している。
【0019】
処理機本体2は、機体の前面2A側の上部にバラ紙幣Sが投入される装填部12が設けられ、この装填部12の下側に機体内からリジェクト紙幣が繰り出されるリジェクト部13が設けられている。
【0020】
装填部12は、水平に対し若干後ろ下がりに傾斜してその底をなす台部15を有しており、この台部15上に紙幣Sが上下方向に集積された状態で装填される。なお、台部15を水平に配置しても良い。
【0021】
また、装填部12には、台部15の機体奥側上方に機体左右方向に沿って配設された回動軸16と、この回動軸16に回動可能に支持されて台部15の上側で上下に揺動可能とされ、台部15上に装填された紙幣Sを台部15との間で挟持するビルプレス17とが設けられている。
【0022】
処理機本体2は、装填部12の機体奥側に、このように台部15上に装填されたバラ紙幣Sを、下側のものから一枚ずつ分離して機体内に繰り出す分離繰出部20を有している。この分離繰出部20は、装填部12の台部15に、台部15から上部を一部突出させた状態で機体左右方向に沿う軸回りに回転可能に設けられた蹴出ローラ21と、台部15よりも機体奥側に蹴出ローラ21と平行な軸回りに回転可能に設けられた繰出ローラ22と、この繰出ローラ22の上側に繰出ローラ22と平行な軸回りに回転可能に設けられた分離ローラ23とを有している。分離ローラ23は、図示せぬワンウエイクラッチによって繰出ローラ22側が紙幣Sを機体奥方に移動させる方向の回転、すなわち図1における反時計回り方向の回転が規制され、逆方向の回転のみ許容される。
【0023】
このような分離繰出部20は、台部15上に装填されたバラ紙幣Sの最下のものを蹴出ローラ21で繰出ローラ22と分離ローラ23との間に蹴り出し、この蹴り出し時に最下の紙幣Sに引きずられて繰出ローラ22と分離ローラ23との間に移動した紙幣Sを分離ローラ23で止めて蹴り出された最下の紙幣Sのみを繰出ローラ22で機体内方に繰り出す。
【0024】
処理機本体2は、分離繰出部20の機体奥側に接続され、分離繰出部20から繰り出された紙幣Sを搬送する搬送部25を有している。この搬送部25は、紙幣Sを案内する複数のガイド板と搬送ローラと振分部材等で構成されるもので、分離繰出部20から略水平に沿って機体奥側に延出した後に下側に折り返し略水平に沿って機体手前側に延出してリジェクト部13に接続される搬送路26と、この搬送路26の途中から分岐して前下がりに延出する搬送路27とを有しており、搬送路26には、搬送中の紙幣Sの金種、真偽、正損および搬送異常の識別と計数とを行う識別部28が設けられている。
【0025】
処理機本体2は、搬送部25の搬送路27の端末位置に、識別部28により真紙幣かつ正紙幣で正常搬送と識別された紙幣Sを金種混合で一時貯留させる一時貯留部30が接続されている。この一時貯留部30は、機体前面側から開閉可能な返却扉31と、返却扉31とで平面視枠状をなす壁部32と、機体前後方向に水平にスライドすることで返却扉31および壁部32で囲まれた一時貯留空間33の下部を開閉する一時貯留部シャッタ34と、紙幣Sを下方に押し込む昇降可能な押込部35とを有している。そして、処理機本体2には、各部を制御する制御部36と、操作者による操作入力が行われる操作部37と、操作者への表示を行う表示部38とが設けられている。また、返却扉31には、制御部36でロックおよびロック解除が制御される返却扉ロック部39が設けられている。
【0026】
なお、装填部12には、紙幣Sが分離繰出部20の分離繰出方向に短手方向を沿わせる姿勢で装填されることになり、搬送部25は紙幣Sをその短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送し、その短手方向を放出方向に沿わせた姿勢で一時貯留部30およびリジェクト部13のいずれかに放出させる。勿論、紙幣Sを長手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送するようにしても良い。
【0027】
そして、紙幣収納カセット3は、処理機本体2の前面2Aに設けられた開閉可能な扉体40を開いた状態で処理機本体2に対し機体前後方向に出し入れされることになり、処理機本体2に装填された状態で一時貯留部30の鉛直下方に配置される。以下、紙幣収納カセット3を処理機本体2に装填された状態をもって説明する。
【0028】
図2に示すように、紙幣収納カセット3は、滑りの良い布製であって長さ方向一側に開口部41を有する略有底角筒状に縫製された袋体42を有している。この袋体42は全体的に布製とされることで、三次元のいずれの方向にも変形容易となっているものの、外力を受けない状態では縫製によって有底角筒状をほぼ維持可能になっている。
【0029】
紙幣収納カセット3は、袋体42の開口部41側の周縁部に取り付けられる金属製または合成樹脂製の枠体43を有している。この枠体43は、平面視が長方形枠状をなすとともに袋体42の開口部41側の周縁部の全周に取り付けられる下部構成体44と、この下部構成体44に開閉可能にヒンジ結合された平面視が長方形枠状の上部構成体46とを有している。上部構成体46は下部構成体44に対して閉状態(当接状態)でロック可能とされている。下部構成体44には、周方向に等間隔で係止突起部47が形成されており、袋体42の開口部41側の周縁部が係止突起部47に係止される。そして、下部構成体44の内側に嵌合固定される角リング状の保持部材48によって、係止突起部47に係止された袋体42の上方移動を規制し、係止突起部47からの外れを規制する。
【0030】
紙幣収納カセット3は、その枠体43が、処理機本体2に機体前後方向に沿う水平状態で固定されたガイドレール(支持手段)50に案内されて処理機本体2内奥方の所定の装填位置に配置されることになり、ガイドレール50の上面に載置されて水平状態に支持されることになる。
【0031】
上部構成体46には、枠体43の上部に形成された導入口52を開閉するスライド式のカセットシャッタ(シャッタ)53が設けられている。このカセットシャッタ53は、上部構成体46に形成されたガイド溝54に沿って導入口52を機体前後方向の一方から他方まで水平状態でスライドする平板状のスライド体55と、このスライド体55に回動軸56を介して回動自在にヒンジ結合される揺動体57とを有している。
【0032】
上部構成体46には、閉状態のカセットシャッタ53の下側に、一対のフラッパ60がそれぞれ回動軸61を中心に回動可能に設けられている。これらフラッパ60は、それぞれが支持される回動軸61から互いに近接する方向に延出し、平面視で導入口52内に両側から突出する閉状態と、回動軸61を中心に下方に回動して平面視で導入口52内から退避する開状態との間で回動可能とされ、閉状態となるように図示せぬネジリバネで付勢されている。
【0033】
一時貯留部30の鉛直下方位置つまり紙幣収納カセット3が装填される装填空間には、上下方向に沿うガイド62に沿って昇降可能な可動ステージ63が設けられている。この可動ステージ63は、機体左右方向に沿って延在するように配置された回転自在の支持ローラ64を有している。可動ステージ63は、図示略のスプリングで常時上方向に付勢されており、上限位置においては図示略のストッパに当接する。
【0034】
以上の紙幣処理機1においては、処理機本体2の前面の扉体40を開いた状態で、カセットシャッタ53が閉状態とされた空の紙幣収納カセット3を処理機本体2内の所定の装填位置に装填する。つまり、紙幣収納カセット3の枠体43をガイドレール50上に搭載し、ガイドレール50上を摺動させて扉体40から見て奥側の所定位置まで移動させる。すると、カセットシャッタ53のロックが解除されるとともに枠体43が処理機本体2にロックされる(後述する)。
【0035】
ロックが解除されたカセットシャッタ53を処理機本体2の前面2A側に引き出すと、引き出されたカセットシャッタ53は、スライド体55が導入口52から退避する位置に位置すると揺動体57が全体として枠体43よりも外側に位置し、回動軸56を介して回動可能となって下方に延出する姿勢に折り畳まれる。
【0036】
上記した装填時に、変形容易な袋体42は、上部の待機位置に位置する可動ステージ63の支持ローラ64の上側に一部載置されることになり、これにより、袋体42は中間部が窄められた状態となる。このとき、袋体42の窄められた窄部67よりも上側が紙幣Sを収納する収納空間68となり、袋体42の窄められた窄部67が収納空間68の底部となる。
【0037】
そして、例えば、紙幣Sの入金収納処理を行う場合には、操作者が装填部12のビルプレス17を持ち上げてこれと台部15との間に紙幣Sを、その短手方向を機体前後方向に沿わせた状態で装填する。このとき、金種混合の装填および単一金種の装填のいずれも可能である。そして、操作者が操作部37に入金開始の操作を入力すると、制御部36が分離繰出部20と搬送部25とを駆動する。すると、装填部12に装填された紙幣Sが最下のものから一枚ずつ機内に繰り出され、搬送部25で搬送される。その途中で識別部28により受け入れ可能と識別された紙幣Sが搬送路27から一時貯留部30内に放出され、それ以外の紙幣Sがリジェクト部13に放出される。なお、リジェクト部13に放出された紙幣Sはそのまま機外へ取り出し可能となる。
【0038】
上記のようにして、装填部12に装填された紙幣Sが、リジェクト部13および一時貯留部30のいずれかに放出されることですべてなくなると、制御部36は、分離繰出部20および搬送部25を停止させて、識別部28の識別結果に基づいて一時貯留部30に一時貯留された紙幣Sの識別結果を表示部38に表示させる。この表示を見て操作者がキャンセル操作を操作部37に入力すると、制御部36は返却扉ロック部39で返却扉31のロックを解除して開放可能とし、操作者が返却扉31を開いて直接一時貯留部30の紙幣Sを取り出すことになる。
【0039】
他方、表示を見て操作者が承認操作を操作部37に入力すると、制御部36は一時貯留部シャッタ34を開作動させることになり、一時貯留空間33から、紙幣Sが下方に落下して、カセットシャッタ53が開放された紙幣収納カセット3の導入口52を通って閉状態の一対のフラッパ60上に載置される。続いて、制御部36は、押込部35を下降させて、一対のフラッパ60上の紙幣Sを、これらフラッパ60を下方に回動させながら押し込む。すると、紙幣Sは、一対のフラッパ60を通過して、可動ステージ63で窄められた窄部67で底部が形成される袋体42の収納空間68の底部または既に収納された紙幣S上に収納される。一対のフラッパ60は紙幣Sが離れることで図示略のネジリバネの付勢力で水平状態に戻る。このとき、袋体42の可動ステージ63で窄められた窄部67より下側に紙幣Sが進入することはない。
【0040】
また、このとき、押込部35の下降による紙幣Sを介しての押圧で、可動ステージ63とその支持ローラ64で窄められて形成される収納空間68の底部とが、押し込む紙幣量に応じて下降することになる。
【0041】
その後、押込部35が閉状態の一対のフラッパ60間を通過しながら上昇し、この押込部35の上昇によって図示略のスプリングの付勢力で、可動ステージ63とその支持ローラ64で窄められて形成される収納空間68の底部とが上昇することになり、収納空間68内の紙幣Sは支持ローラ64上にある袋体42の一部と一対のフラッパ60とで挟持されることになる。
【0042】
なお、以上の紙幣処理機1で紙幣Sの計数処理を行う場合は、上記と同様にして、装填部12に装填された紙幣Sがすべてリジェクト部13および一時貯留部30に搬送されたら、一時貯留部30から紙幣収納カセット3に紙幣Sを収納せずに、返却扉31を開いて一時貯留部30の紙幣Sを操作者に返却することになる。
【0043】
上記のようにして紙幣Sを収納した紙幣収納カセット3を処理機本体2から取り出す場合には、まず、操作者は、扉体40を開き、揺動体57を水平に持ち上げて枠体43に押し込むことでカセットシャッタ53を閉じる。すると、カセットシャッタ53が閉状態でロックされるとともに、枠体43の処理機本体2に対するロックが解除されることになり、紙幣収納カセット3が処理機本体2から取り外し可能となる(後述する)。このようにして処理機本体2から取り出された紙幣収納カセット3から紙幣を取り出す際には、操作者が上部構成体46の下部構成体44に対するロックを解除して上部構成体46をカセットシャッタ53と一体に揺動させて開き、袋体42内から紙幣を取り出すことになる。
【0044】
図3に示すように、紙幣収納カセット3の枠体43内には、カセットシャッタ53を閉状態でロックするシャッタロック機構71が設けられている。
【0045】
つまり、カセットシャッタ53のスライド体55には、下方に突出するロック部72が形成されており、シャッタロック機構71は、このロック部72を開方向から係止可能なフック73を有している。このフック73は、図3に示すように閉位置にあるカセットシャッタ53のロック部72よりも閉方向奥側の回動軸74を中心に回動可能となっており、図4にも示すように、ロック部72に係合する状態において回動軸74から側方に一旦延出する基板部73aと、この基板部73aの回動軸74とは反対側からロック部72の方向に延在する中間板部73bと、この中間板部73bの先端からロック部72側に突出してロック部72に係合する爪部73cとを有している。爪部73cにはそのカセットシャッタ53側且つ突出側に、突出先端側ほど基板部73aに近接するように傾斜する傾斜面73dが形成されている。
【0046】
このフック73は、回動軸74を中心に回動することによってロック部72に係合したりロック部72への係合を解除したりするようになっており、シャッタロック機構71は、フック73をカセットシャッタ53への係合方向に付勢する図示略のフック用バネ(フック付勢手段)を有している。なお、フック73は、ロック部72への係合方向への回動時は、ロック部72に係合しない状態でも、図示略のフック用ストッパに当接することで、ロック部72に係合したときと同様の係合位置(図3および図4に示す位置)でそれ以上の回転が規制されて停止するようになっている。
【0047】
シャッタロック機構71は、フック73に回動軸74を中心として回動可能となるように設けられた入力板77を有している。この入力板77は図示略の入力板用バネによって一方向に付勢されており、入力板用ストッパ76に当接してフック73の基板部73aに沿う姿勢(図3および図4に示す姿勢)に保持されている。
【0048】
シャッタロック機構71は、フック73の側方に回動軸79を中心として回動可能な作動レバー80を有している。この作動レバー80は、回動軸79からカセットシャッタ53側且つフック73側に斜めに延出する位置(図3および図4に示す位置)を基本位置としており、その先端にはピン80aを有している。また、シャッタロック機構71は、回動軸79に固定されるピニオンギア81を有しており、このピニオンギア81は作動レバー80と一体に回転する。
【0049】
処理機本体2には、機体奥側から扉体40側に延出するとともに、枠体43のガイドレール50の案内による装填位置に向けての摺動によって、ピニオンギア81を駆動してシャッタロック機構71によるカセットシャッタ53のロックを解除するラックギア(シャッタロック解除手段)84が設けられている。
【0050】
つまり、操作者が枠体43をガイドレール50に搭載して機体奥方に摺動させると、図5(a)に示すように、ラックギア84がピニオンギア81に噛み合い、ピニオンギア81および基本位置にあった作動レバー80を摺動の力を利用して一体に回転させる。これにより、フック73がロック部72に係合したロック状態にあるシャッタロック機構71は、その作動レバー80が、基本位置からピン80aをカセットシャッタ53とは反対方向に移動させるように回動することになり、図5(b)に示すように、ピン80aが入力板77に当接して入力板77と一体に入力板用ストッパ76を介してフック73を押圧し、フック73を回動軸74を中心にフック用バネの付勢力に抗して回動させてロック部72への係合を解除させる。その後、作動レバー80が、そのピン80aが入力板77を通り越す位置まで回動すると、ピン80aはフック73の入力板77から離れ、フック73はフック用バネの付勢力で係合位置(フック用ストッパへの当接位置)に戻る。
【0051】
他方、この状態から、操作者が枠体43をガイドレール50の案内で扉体40側(機体手前)に摺動させると、摺動の力を利用してラックギア84がピニオンギア81および作動レバー80を上記とは逆方向に回転させる。すると、作動レバー80のピン80aは入力板77に当接することになるが、フック73がロック部72およびフック用ストッパに当接しているため、作動レバー80はフック73を回動させることなく入力板77のみをフック73に対して回動させて入力板77を通り越して基本位置に戻り、この時点でラックギア84がピニオンギア81から離間することになる。
【0052】
なお、開状態にあるカセットシャッタ53を閉状態にすると、カセットシャッタ53のロック部72が、係合位置にあるフック73の傾斜面73dに当接し、フック73をフック用バネの付勢力に抗して回動させる。そして、ロック部72がフック73を乗り越えると、フック73はフック用バネの付勢力で回動しロック部72に係合する。これによりカセットシャッタ53が閉状態でロックされる。
【0053】
また、処理機本体2には、枠体43のガイドレール50の案内による装填位置に向けての摺動によって、図6に示すように、枠体43を取り外し不可に係止する枠体ロック機構87が設けられている。この枠体ロック機構87は、フック型のロックレバー88を一対有している。これらのロックレバー88は、水平配置された回動軸89を中心に回動可能とされており、回動軸89から下方に延出する基板部88aと、基板部88aの下部から扉体40側に延出する中間板部88bと、中間板部88bの基板部88aとは反対側から上方に突出する爪部88cとを有している。爪部88cの扉体40側且つ上側には、扉体40側ほど下側に位置するように傾斜する傾斜面88dが形成されている。
【0054】
ロックレバー88は、回動軸89を中心に回動することによって爪部88c側を上下に移動させるように回動することになり、枠体ロック機構87は、ロックレバー88を爪部88cを上に移動させる方向に付勢する図示略のロックレバー用バネを有している。なお、ロックレバー88は、爪部88cを上に移動させる方向への回動時は、図示略のロックレバー用ストッパに当接することで、中間板部88bが略水平に沿う状態(図6(b)に示す状態)となり、それ以上の回転が規制される。ロックレバー88は、この位置が基本位置となる。
【0055】
紙幣収納カセット3の枠体43内には、ロックレバー88の爪部88cで係止される第1係止部91と、この第1係止部91よりも内側にあってロックレバー88の爪部88c係止される第2係止部92とが設けられている。そして、枠体ロック機構87のロックレバー88は、枠体43の装填位置に向けた摺動時にこの摺動によって枠体43の第1係止部91を係止することで枠体43を処理機本体2から取り外し不可に係止することになり、さらになる枠体43の装填位置に向けた摺動時にこの摺動によって、枠体43の第2係止部92を係止することになり、その結果、枠体43を装填位置でロックする。
【0056】
つまり、操作者が枠体43をガイドレール50に搭載して機体奥方に摺動させると、基本位置にあるロックレバー88が枠体43内に進入し、第1係止部91に傾斜面88dにおいて当接する。そして、ロックレバー88は、摺動の力を利用し傾斜面88dの傾斜によって爪部88cを下方に移動させるようにロックレバー用バネの付勢力に抗して回動し、爪部88cが第1係止部91を乗り越えるとロックレバー用バネの付勢力で基本位置に戻り、図6(b)に示すように第1係止部91を爪部88cで係止する状態となる。これにより、枠体43が処理機本体2に対して係止されて取り外し不可となる。なお、枠体43の装填位置に向けた摺動時に、この枠体ロック機構87による枠体43の第1係止部91の係止以降に、上記したラックギア84がシャッタロック機構71によるカセットシャッタ53のロックを解除するように各部寸法関係が設定されている。
【0057】
操作者が、さらに枠体43をガイドレール50に沿って機体奥方に摺動させると、ロックレバー88が、さらに内側の第2係止部92に傾斜面88dにおいて当接する。そして、ロックレバー88は、摺動の力を利用し傾斜面88dの傾斜によって爪部88cを下方に移動させるようにロックレバー用バネの付勢力に抗して回動し、爪部88cが第2係止部92を乗り越えるとロックレバー用バネの付勢力で基本位置に戻り、第2係止部92を爪部88cで係止する状態となる。このとき、枠体43が処理機本体2の機体奥方の図示略の装填ストッパに当接することになり、この装填ストッパとロックレバー88の爪部88cとで挟持されて枠体43が装填位置でロックされる。
【0058】
また、処理機本体2には、枠体43の装填位置に向けた摺動時に、この摺動によって、カセットシャッタ53を開方向に押圧してシャッタロック機構71のフック73から、そのロックが不可となる位置まで離間させるシャッタ押圧機構(シャッタ押圧手段)95が設けられている。このシャッタ押圧機構95は、図7に示すように、カセットシャッタ53を押圧する回動可能な押圧レバー96を有している。この押圧レバー96は、上記したロックレバー88を支持する回動軸89に回動可能に支持されており、回動軸89から扉体40側に延出する押圧板部96aと、押圧板部96aの回動軸89側から下方に延出する中間板部96bと、中間板部96bの押圧板部96aとは反対側から押圧板部96aと同側に突出する被押圧板部96cとを有している。
【0059】
この押圧レバー96は、回動軸89を中心に回動することによって押圧板部96aを上下に回動させることになり、シャッタ押圧機構95は、押圧レバー96を押圧板部96aを上に移動させる方向に付勢する図示略の押圧レバー用バネ(レバー付勢手段)を有している。なお、押圧レバー96は、押圧板部96aを上に移動させる方向への回動時は、図示略の押圧レバー用ストッパに当接することで、押圧板部96aが略水平に沿う基本位置(図7に示す位置)となりそれ以上の回転が規制される。また、この基本位置にある状態で押圧レバー96はその先端部がカセットシャッタ53に当接可能な高さに位置する。
【0060】
そして、操作者が枠体43をガイドレール50に搭載して機体奥方に摺動させると、押圧レバー96が枠体43内に進入し、カセットシャッタ53に押圧板部96aの先端部において当接する。なお、枠体43の装填位置に向けた摺動時に、上記したラックギア84によるシャッタロック機構71のロック解除以降に、押圧レバー96の押圧板部96aが閉状態のカセットシャッタ53の閉側の端縁部に当接するように各部寸法関係が設定されている。
【0061】
よって、操作者が枠体43をガイドレール50に沿ってさらに機体奥方に摺動させると、シャッタロック機構71によるロックが解除されたカセットシャッタ53が摺動の力を利用して押圧レバー96により押圧されて開方向に移動する。すると、図8に示すようにカセットシャッタ53のロック部72がシャッタロック機構71のフック73が戻っても係合できない位置まで移動することになる。なお、枠体43の装填位置に向けた摺動時に、このようにシャッタ押圧機構95の押圧レバー96によるカセットシャッタ53のシャッタロック機構71からロック不可な位置への離間以降に、枠体ロック機構87が枠体43を所定の装填位置でロックするように、各部寸法関係が設定されている。また、シャッタロック機構71の作動レバー80は、枠体43の装填位置に向けた摺動時に、シャッタ押圧機構95の押圧レバー96によるカセットシャッタ53のシャッタロック機構71からロック不可な位置への離間以降に、図8に示すように、フック73の入力板77を行き過ぎフック73への押圧を解除するように各部寸法関係が設定されている(図8ではラックギア84を省略)。
【0062】
操作者が枠体43をガイドレール50に沿ってさらに機体奥方に摺動させると、押圧レバー96が、図9(a)に示すように、被押圧板部96cにおいて枠体43に当接し、摺動の力を利用して回動軸89を中心に回動して押圧板部96aの先端部を押圧レバー用バネの付勢力に抗して下降させてカセットシャッタ53への当接を解除するとともに、図9(b)に示すように、枠体ロック機構87が枠体43の第2係止部92を係止し、且つ枠体43が図示略の装填ストッパに当接して装填位置でロックされる。なお、カセットシャッタ53のシャッタロック機構71からロック不可な位置への離間以降かつ枠体43の装填位置への装填以前に押圧レバー96がカセットシャッタ53への当接を解除するように各部寸法関係が設定されている。また、枠体43が装填位置にあるとき、カセットシャッタ53への当接を解除した押圧レバー96は、カセットシャッタ53が閉状態とされてもカセットシャッタ53に干渉することがないように各部寸法関係が設定されている。
【0063】
枠体43には、図10〜図12に示すように、回動軸98を中心に回動可能に支持され、開状態にあるカセットシャッタ53が閉状態に移動する際に、このカセットシャッタ53の閉方向の端縁部で押圧されて回動し、枠体ロック機構87のロックレバー88の傾斜面88dに載り上げてロックレバー88を爪部88cが下方に移動し枠体43の第1係止部91および第2係止部92へのロックを解除するように回動させる枠体ロック解除レバー99が設けられている。枠体ロック解除レバー99は、カセットシャッタ53に当接する入力板部99aを上部に、ロックレバー88に当接する出力板部99bを下部に有している。なお、この枠体ロック解除レバー99は、カセットシャッタ53が閉じられると、図12に示すようにロックレバー88の爪部88cを上側から出力板部99bで押さえることになり、枠体43からロックレバー88が外に出るまでの間、ロックレバー88を第1係止部91および第2係止部92に引っ掛かることのない回動位置に保持する。
【0064】
次に、紙幣収納カセット3の処理機本体2への装填時の流れと処理機本体2からの取り外し時の流れとを説明する。
【0065】
まず、紙幣収納カセット3は、図3に示すように、そのカセットシャッタ53が、閉じられた状態にあってロック部72がシャッタロック機構71の係合位置にあるフック73に係合しロックされている。
【0066】
操作者が、扉体40を開けて紙幣収納カセット3の枠体43をガイドレール50の扉体40側に搭載し、このガイドレール50に沿って機体奥方に摺動させると、枠体ロック機構87の基本位置にあるロックレバー88およびシャッタ押圧機構95の基本位置にある押圧レバー96が枠体43内に進入するとともに、ラックギア84が、枠体43内に進入する。そして、まず、基本位置にあるロックレバー88が枠体43の第1係止部91に傾斜面88dにおいて当接して爪部88cを下方に移動させるように回動し、ロックレバー用バネの付勢力で基本位置に戻って、図6に示すように、第1係止部91を爪部88cで係止する状態となる。これにより、枠体43が処理機本体2に対して係止されて取り外し不可となる。
【0067】
上記と並行して、ラックギア84がシャッタロック機構71のピニオンギア81に噛み合い、ピニオンギア81および基本位置にあった作動レバー80を摺動の力を利用して一体に回転させる。これにより、作動レバー80が基本位置から回動することになり、ピン80aが入力板77に当接して入力板77と一体に入力板用ストッパ76を介してフック73を押圧し、フック73を回動軸74を中心に回動させて、上記した枠体ロック機構87による第1係止部91の係止以降に、図5(b)に示すようにロック部72への係合を解除させる。
【0068】
操作者が、引き続き、枠体43をガイドレール50に沿って機体奥方に摺動させると、基本位置にある押圧レバー96が、図7に示すように、カセットシャッタ53の閉側の端縁部に押圧板部96aの先端部において当接し、すでに枠体ロック機構87によるロックが解除されているカセットシャッタ53を押圧して開方向に移動させる。そして、カセットシャッタ53のロック部72がシャッタロック機構71のフック73が戻っても係合できない位置まで移動すると、上記のようにラックギア84で駆動されていた作動レバー80が、ピン80aが入力板77を通り越す位置まで回動することになり、ピン80aはフック73の入力板77から離れ、図8に示すように、フック73はフック用バネの付勢力で係合位置に戻る。
【0069】
操作者が、引き続き、枠体43をガイドレール50に沿って機体奥方に摺動させると、押圧レバー96は、図9(a)に示すように、枠体43に被押圧板部96cが当接し、摺動の力を利用して回動軸89を中心に回動して押圧板部96aの先端部を押圧レバー用バネの付勢力に抗して下降させてカセットシャッタ53への当接を解除することになり、これと並行して、ロックレバー88が、さらに内側の第2係止部92に傾斜面88dにおいて当接し爪部88cを下方に移動させるように回動して、図9(b)に示すように、第2係止部92を爪部88cで係止すると同時に枠体43が処理機本体2の機体奥方の図示略の装填ストッパに当接することになり、この装填ストッパとロックレバー88の爪部88cとで枠体43が装填位置にロックされる。
【0070】
このようにして、紙幣収納カセット3が装填位置に装填されてロックされると、操作者はカセットシャッタ53をさらに扉体40側に引き出して導入口52を全開にする。これにより、上記した紙幣の紙幣収納カセット3への収納が行われることになる。
【0071】
一方、紙幣が収納された紙幣収納カセット3を処理機本体2から取り出す場合には、扉体40を開けて、カセットシャッタ53を枠体43内に押し込む。すると、図10に示すように、カセットシャッタ53が枠体ロック解除レバー99を押圧して回動させることになり、回動する枠体ロック解除レバー99が、図11に示すように、枠体ロック機構87のロックレバー88の傾斜面88dに載り上げてロックレバー88を回動させて、枠体43の第2係止部92へのロックを解除させる位置まで爪部88cを下降させ、さらに、図12に示すように、第2係止部92および第1係止部91へのロックを解除させる位置まで爪部88cを下降させて、爪部88の上側に乗り上げる。これと並行して、カセットシャッタ53のロック部72が、シャッタロック機構71の係合位置に戻っているフック73の傾斜面73dに当接し、フック73を回動させて、図12に示すように、このフック73に係合する。これによりカセットシャッタ53が閉状態でロックされる。
【0072】
そして、操作者は、枠体43をガイドレール50に沿って摺動させて引き出すことになり、この摺動によってラックギア84がピニオンギア81および作動レバー80を基本位置に戻すことになり、その際に、作動レバー80のピン80aが入力板77に当接することになるが、入力板77が回動することで、ピン80aの通過を許容する。ラックギア84は、作動レバー80を基本位置に戻すと、ピニオンギア81から離れ、ラックギア84、ロックレバー88および押圧レバー96が枠体43から抜け出ることになる。ロックレバー88は、爪部88cが第1係止部91を係止不可な位置まで移動すると、枠体ロック解除レバー99による乗り上げ状態が解除されて基本位置に戻ることになり、押圧レバー96も被押圧板部96cが枠体43から離れることで基本位置に戻る。
【0073】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理機1によれば、紙幣収納カセット3が、袋体42が布製でいずれの方向にも変形容易であるため、空の状態においては変形自由度が高くて取扱性に優れることになり、また、一層小さく折り畳むことができることになって保管効率も優れることになる。
【0074】
また、この紙幣収納カセット3を処理機本体2に装填するにあたっては、紙幣収納カセット2の枠体43をガイドレール50に支持させた状態で所定の装填位置に向けて摺動させると、この摺動によって、まず処理機本体2に設けられた枠体ロック機構87のロックレバー88が枠体43の第1係止部91を取り外し不可に係止し、この係止以降にラックギア84がシャッタロック機構71のロックを解除し、このロック解除以降にシャッタ押圧機構95の押圧レバー96がカセットシャッタ53を開方向に押圧してシャッタロック機構71からロック不可な位置まで離間させることになる。その結果、カセットシャッタ53を開放可能となって、紙幣収納カセット3への紙幣の収納が可能な状態となる。このように、枠体43の所定の装填位置に向けての摺動によって、枠体43のロック、カセットシャッタ53のロック解除、カセットシャッタ53の開放を行うことができるため、操作者の作業的な負担が少なくなる。
【0075】
また、枠体43の装填位置に向けた摺動時に、シャッタ押圧機構95によるカセットシャッタ53のシャッタロック機構71からロック不可な位置への離間以降に、枠体ロック機構87のロックレバー88が枠体43の第2係止部92を装填位置でロックする。このように、カセットシャッタ53のロック解除前に枠体43の第1係止部91を取り外し不可に係止する枠体ロック機構87によって、枠体43の第2係止部92を最終的な装填位置でロックできるため、低コスト化が図れる。
【0076】
また、カセットシャッタ53の閉時に、枠体43に設けられた枠体ロック解除レバー99がカセットシャッタ53で押圧されて回動し枠体ロック機構87による枠体43の装填位置でのロックを解除して、処理機本体2からの紙幣収納カセット3の取り外しを可能とする。このようにカセットシャッタ53の閉作動によって処理機本体2からの紙幣収納カセット3の取り外しが可能になるため、操作者の作業的な負担が少なくなる。
【0077】
また、紙幣収納カセット3の枠体43をガイドレール50に支持させた状態で所定の装填位置に向けて摺動させると、ラックギア84が、シャッタロック機構1のピニオンギア81を回転させることになり、このピニオンギア81の回転によって作動レバー80がフック73をフック用バネの付勢力に抗して押圧し回動させてフック73のカセットシャッタ53への係合を解除する。このようにラックギア84とピニオンギア81との噛み合いによってフック73を回動させるため、確実かつ正確なタイミングでカセットシャッタ53のロックを解除することができる。
【0078】
また、作動レバー80が、枠体43の装填位置に向けた摺動時にカセットシャッタ53のシャッタロック機構71からロック不可な位置への離間以降にフック73への押圧を解除するため、フック73はフック用バネの付勢力で再びカセットシャッタ53をロック可能な位置に戻ることになり、自動的にカセットシャッタ53の閉時のロックに備える状態になる。
【0079】
また、紙幣収納カセット3の枠体43をガイドレール50に支持させた状態で所定の装填位置に向けて摺動させると、シャッタ押圧機構95の押圧レバー96は、カセットシャッタ53に当接してこれを開方向に押圧し、カセットシャッタ53のシャッタロック機構71からロック不可な位置への離間以降に枠体43に当接し回動してカセットシャッタ53への当接を解除する。よって、自動的にその後のカセットシャッタ53の閉作動を許容する状態になる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態の紙幣処理機を概略的に示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示す側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示す平断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので(a)は平断面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の一実施形態の紙幣処理機のシャッタロック機構等を示す平面図であって、(a)はロック解除手前の状態、(b)はロック解除後の状態を示すものである。
【図6】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので(a)は平断面図、(b)は側面図である。
【図7】本発明の一実施形態の紙幣処理機のシャッタ押圧機構等を示す部分拡大側面図である。
【図8】本発明の一実施形態の紙幣処理機のシャッタロック機構等を示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態の紙幣処理機の部分拡大側面図であって、(a)はシャッタ押圧機構等を、(b)は枠体ロック機構等を示すものである。
【図10】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので(a)は平断面図、(b)は側面図である。
【図11】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので(a)は平断面図、(b)は側面図である。
【図12】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので(a)は平断面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 紙幣処理機
2 処理機本体
3 紙幣収納カセット
41 開口部
42 袋体
43 枠体
44 上部構成体
46 下部構成体
50 ガイドレール(支持手段)
52 導入口
53 カセットシャッタ(シャッタ)
71 シャッタロック機構
73 フック
80 作動レバー
81 ピニオンギア
84 ラックギア(シャッタロック解除手段)
87 枠体ロック機構
95 シャッタ押圧機構(シャッタ押圧手段)
96 押圧レバー
99 枠体ロック解除レバー
S 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、該袋体の開口部に取り付けられる枠体と、該枠体の内側の導入口を開閉するシャッタとを有し、該シャッタが開放された状態で前記枠体の導入口を介して前記袋体内に紙幣を収納可能な紙幣収納カセットと、
該紙幣収納カセットが着脱可能に装填されるとともに、装填時に前記枠体を支持して該枠体の所定の装填位置に向けた摺動を案内する支持手段を有する処理機本体とを備えた紙幣処理機であって、
前記枠体には、前記シャッタを閉状態でロックするシャッタロック機構が設けられており、
前記処理機本体には、
前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって前記枠体を取り外し不可に係止する枠体ロック機構と、
前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記枠体ロック機構による前記枠体の係止以降に前記シャッタロック機構のロックを解除するシャッタロック解除手段と、
前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記シャッタロック解除手段による前記シャッタロック機構のロック解除以降に前記シャッタを開方向に押圧して前記シャッタロック機構からロック不可な位置まで離間させるシャッタ押圧手段とが設けられていることを特徴とする紙幣処理機。
【請求項2】
前記枠体ロック機構は、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記シャッタ押圧手段による前記シャッタの前記シャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に前記枠体を前記装填位置でロックすることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項3】
前記枠体には、前記シャッタの閉時に、該シャッタで押圧されて回動し前記枠体ロック機構による前記枠体の前記装填位置でのロックを解除する枠体ロック解除レバーが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理機。
【請求項4】
前記シャッタロック解除手段はラックギアであり、前記シャッタロック機構は、前記シャッタに係合する回動可能なフックと、前記ラックギアに噛み合って回転するピニオンギアと、該ピニオンギアの回転によって前記フックを押圧し回動させる作動レバーとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紙幣処理機。
【請求項5】
前記作動レバーは、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に該摺動によって、前記シャッタの前記シャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に前記フックへの押圧を解除することを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理機。
【請求項6】
前記シャッタ押圧手段は、前記シャッタを押圧する回動可能な押圧レバーを有しており、該押圧レバーは、前記枠体の前記装填位置に向けた摺動時に、前記シャッタに当接して該シャッタを開方向に押圧するとともに、該シャッタの前記シャッタロック機構からロック不可な位置への離間以降に前記枠体に当接し回動して前記シャッタへの当接を解除することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の紙幣処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−64154(P2009−64154A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230264(P2007−230264)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】