説明

紙幣処理装置

【課題】復旧作業の作業性を向上できる紙幣処理装置の提供。
【解決手段】本体および本体から引き出し可能な引出体を有し、引出体は、複数の収納体を一列状に収納する収納部と、収納部の上方に設けられて複数の収納体に対して紙幣を搬送する搬送部48と、を備え、搬送部48は、複数の収納体の配列方向に沿う支持軸に軸支されて、複数の収納体の上方を覆ってこれら収納体に対して紙幣を搬送する搬送位置と、複数の収納体の上方を開放する開放位置との間で揺動可能であるとともに、搬送位置にあっては紙幣を搬送可能とし開放位置にあっては紙幣を搬送不可とする搬送規制手段111を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を取り扱う紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣の入出金を行なう紙幣処理装置において、装着された紙幣カセット上部の搬送路でジャム等の異常が発生したときに、少なくとも紙幣カセットおよび紙幣カセット上部の搬送路を含むユニットを装置本体から引き出し、引き出された紙幣カセット上部の搬送路を揺動させることで保守性を向上させる紙幣処理装置がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288909号公報(段落0039〜0041、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した紙幣処理装置では、紙幣カセット上部の搬送路を揺動開放して復旧作業する際に、搬送路が動いて搬送路に残留している紙幣を装置外に落下させる可能性があり、紙幣が取り出し困難な場所に入り込んだりする等して復旧作業を繁雑にしてしまう可能性がある。
【0005】
したがって、本発明は、復旧作業の作業性を向上できる紙幣処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、本体および該本体から引き出し可能な引出体を有し、該引出体は、複数の収納体を一列状に収納する収納部と、該収納部の上方に設けられて前記複数の収納体に対して紙幣を搬送する搬送部と、を備え、該搬送部は、前記複数の収納体の配列方向に沿う支持軸に軸支されて、前記複数の収納体の上方を覆ってこれら収納体に対して紙幣を搬送する搬送位置と、前記複数の収納体の上方を開放する開放位置との間で揺動可能であるとともに、前記搬送位置にあっては紙幣を搬送可能とし前記開放位置にあっては紙幣を搬送不可とする搬送規制手段を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記搬送規制手段は、前記搬送部が前記開放位置にあるとき一端部が前記搬送部の搬送時回転部に係合することで紙幣を搬送不可にするとともに、前記搬送部が前記搬送位置にあるとき他端部が前記引出体に当接することで前記一端部の前記搬送時回転部への係合を解除するベース部と、該ベース部を前記一端部が前記搬送時回転部に係合する方向へ付勢する付勢手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記搬送部は、前記搬送位置と前記開放位置との間の揺動角度が90度より大きいことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか一項に係る発明において、前記収納部は、前記支持軸が上側に設けられた一側のベース壁部の高さよりも、前記支持軸とは反対側の着脱壁部の高さの方が低くなっていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記収納部は、前記複数の収納体が装填される装填空間を仕切る仕切壁部を有しており、該仕切壁部は、前記着脱壁部側の上部が切り欠かれた形状をなしていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか一項に係る発明において、前記搬送部は、複数列の搬送ベルトと、前記複数列の搬送ベルトの下辺部によって上方より押圧される紙幣を受ける複数列の紙幣ガイドと、前記複数の収納体との間で紙幣を出し入れする複数の出入ガイドと、を備え、前記紙幣ガイドには、前記搬送ベルトの前記下辺部を入り込ませる凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記紙幣ガイドは、前記凹部を形成する両側の壁部が、前記下辺部の延在方向の一側にあって他側ほど高さが高くなる一側傾斜壁部と、前記下辺部の延在方向の前記他側にあって前記一側ほど高さが高くなる他側傾斜壁部と、これら一側傾斜壁部および他側傾斜壁部の間にあって一定高さの中間壁部とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7のいずれか一項に係る発明において、前記引出体は、前記搬送部が前記搬送位置にないとき、前記引出体の前記本体への装填移動を規制する装填移動規制手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記装填移動規制手段は、前記搬送部の前記搬送位置への揺動に連動して前記引出体の前記本体への装填移動の規制を解除可能となることを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明において、前記装填移動規制手段は、前記引出体の前記本体への装填移動を規制するストッパ部が、前記引出体のスライドを案内するスライドレールに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、引出体が本体から引き出され、収納部の上方に設けられた搬送部が、複数の収納体の上方を開放する開放位置に揺動させられると、搬送規制手段が搬送部の紙幣を搬送不可とする。よって、引出体で発生した異常からの復旧作業時に搬送部を開放しても、搬送部に残留している紙幣が搬送部から落下してしまうことを防止できる。したがって、復旧作業の作業性を向上できる。一方、搬送規制手段は、搬送部が、複数の収納体の上方を覆ってこれら収納体に対して紙幣を搬送する搬送位置にあっては搬送部の紙幣を搬送可能とするため、搬送部による複数の収納体に対する紙幣の搬送を阻害することはない。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、搬送部が開放位置に位置されると、ベース部が付勢手段の付勢力によって一端部を搬送部の搬送時回転部に係合させることで紙幣を搬送不可にする一方、搬送部が搬送位置に位置されると、ベース部の他端部が引出体に当接することで一端部の搬送時回転部への係合を解除する。このように搬送規制手段は、搬送部の揺動を利用して作動するため、簡素な構造となり、小型化、低コスト化および軽量化が図れる。搬送規制手段が軽量となることで搬送部の全体も軽量となるため、搬送部の揺動負荷が軽減されて搬送部の揺動が容易となり、復旧作業の作業性をさらに向上できる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、搬送部が、搬送位置と開放位置との間の揺動角度が90度より大きいため、搬送部を開いて収納部に対し収納体を着脱する際に搬送部が邪魔になりにくく、着脱作業が容易となる。また、このように搬送部が大きく揺動すると搬送部から紙幣が落下した場合に遠くまで移動してしまう可能性が高くなることから、上記のように紙幣が搬送部から落下することを防止することの効果が高くなる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、収納部は、搬送部を支持する支持軸が上側に設けられた一側のベース壁部の高さよりも、支持軸とは反対側の着脱壁部の高さの方が低くなっているため、搬送部を開いて収納部に対し収納体を着脱する際に着脱壁部が邪魔になりにくく、着脱作業が容易となる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、複数の収納体が装填される装填空間を仕切る仕切壁部が、その着脱壁部側の上部が切り欠かれた形状をなしているため、搬送部を開いて収納部に対し収納体を着脱する際に仕切壁部が邪魔になりにくく、着脱作業が容易となる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、複数列の搬送ベルトの下辺部が、複数列の紙幣ガイドの凹部に入り込むため、複数列の下辺部と凹部との間の紙幣に、複数列の下辺部の摩擦力を発生させて、紙幣を搬送することができる。このような構造を採用することで比較的重量の重い搬送ローラおよびその支持軸の数を減らすことができる。したがって、搬送部の全体を軽量化できるため、搬送部の揺動負荷が軽減されて搬送部の揺動が容易となり、復旧作業の作業性をさらに向上できる。また、搬送ローラを用いる場合よりも搬送負荷を軽減できるため、紙幣の排除が容易となり、この点からも、復旧作業の作業性をさらに向上できる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、紙幣は、下辺部と凹部との間に入り込む際に、凹部を形成する両側の壁部において、他側ほど高さが高くなる一側傾斜壁部に案内されて、一定高さの中間壁部に乗り上げた後、他側ほど高さが低くなる他側傾斜壁部に案内される。したがって、紙幣を円滑に、下辺部と凹部との間に入り込ませ、これらの間から繰り出させることができる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、搬送部が搬送位置にないとき、装填移動規制手段が引出体の本体への装填移動を規制するため、搬送部が搬送位置にない状態で引出体が本体へ装填されることにより生じる搬送部の本体への衝突を防止できる。したがって、搬送部を搬送位置に戻さずに引出体を本体に装填してしまうという作業ミスで生じる損傷を防止することができる。
【0024】
請求項9に係る発明によれば、装填移動規制手段が、搬送部の搬送位置への揺動に連動して、引出体の本体への装填移動の規制を解除可能となる。このように装填移動規制手段は、搬送部の揺動を利用して作動するため、簡素な構造となり、小型化、低コスト化および軽量化が図れる。
【0025】
請求項10に係る発明によれば、ストッパ部が、引出体のスライドを案内するスライドレールに設けられているため、さらなる低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を含む出納機を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を概略的に示す側断面図である。
【図3】同紙幣処理装置の側断面図であって、入金処理ルートを太線で示すものである。
【図4】同紙幣処理装置の側断面図であって、収納処理ルートを太線で示すものである。
【図5】同紙幣処理装置の側断面図であって、返却処理ルートを太線で示すものである。
【図6】同紙幣処理装置の側断面図であって、バラ出金処理ルートを太線で示すものである。
【図7】同紙幣処理装置の側断面図であって、束出金処理ルートを太線で示すものである。
【図8】同紙幣処理装置の側断面図であって、自己精査処理の往路ルートを太線で示すものである。
【図9】同紙幣処理装置の側断面図であって、自己精査処理の復路ルートを太線で示すものである。
【図10】同紙幣処理装置の側断面図であって、ローカル整理処理の往路ルートを太線で示すものである。
【図11】同紙幣処理装置の側断面図であって、ローカル整理処理の復路ルートを太線で示すものである。
【図12】同紙幣処理装置の引出体を示す斜視図であって、(a)は搬送部が搬送位置にある状態を、(b)は搬送部が開放位置にある状態を示すものである。
【図13】同紙幣処理装置の引出体および各種カセットを示す斜視図であって、(a)は搬送部が搬送位置にある状態を、(b)は搬送部が開放位置にある状態を示すものである。
【図14】同紙幣処理装置の引出体を示す搬送部が開放位置にある状態の正面図である。
【図15】同紙幣処理装置の搬送部を示す側断面図である。
【図16】同紙幣処理装置の搬送部を示す斜視図である。
【図17】同紙幣処理装置の搬送部を示す図16のA部拡大図である。
【図18】同紙幣処理装置の搬送部を示す図16のB部拡大図である。
【図19】同紙幣処理装置の搬送部の搬送規制機構を示す斜視図であって、(a)は規制解除状態を、(b)は規制状態を示すものである。
【図20】同紙幣処理装置の搬送部の搬送規制機構を示す側面図であって、(a)は規制解除状態を、(b)は規制状態を示すものである。
【図21】同紙幣処理装置の搬送部を示す部分拡大斜視図である。
【図22】同紙幣処理装置の搬送部を示す部分拡大平面図である。
【図23】同紙幣処理装置の搬送部を示す図22のX−X断面図である。
【図24】同紙幣処理装置の搬送部を示す図22のY−Y断面図である。
【図25】同紙幣処理装置の引出体を示す背面図であって、(a)は搬送部が開放位置にある状態を、(b)は搬送部が搬送位置にある状態を示すものである。
【図26】同紙幣処理装置の装填移動規制機構の下部構成を示す斜視図であって、(a)はロック状態を、(b)はロック解除状態を示すものである。
【図27】同紙幣処理装置の装填移動規制機構の下部構成を示す背面図であって、(a)は規制状態を、(b)は規制解除状態を示すものである。
【図28】同紙幣処理装置の装填移動規制機構の上部構成を示す背面図であって、(a)は規制状態を、(b)は規制解除状態を示すものである。
【図29】同紙幣処理装置の引出体のレバーの待機状態を示すものであって、(a)は斜視図、(b)はそのときの作動機構の状態を示す斜視図である。
【図30】同紙幣処理装置の引出体のレバーが待機状態にあるときの作動機構の一部を示す斜視図である。
【図31】同紙幣処理装置の引出体の片側レバーの操作状態を示すものであって、(a)は斜視図、(b)はそのときの作動機構の一部の状態を示す背面図である。
【図32】同紙幣処理装置の引出体の両側レバーの操作状態を示すものであって、(a)は斜視図、(b)はそのときの作動機構の一部の状態を示す背面図である。
【図33】同紙幣処理装置の引出体の両側レバーが操作状態にあるときの作動機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。図1は、紙幣および硬貨等を取り扱う出納機を示している。この出納機は、銀行等の金融機関の店舗に設置されて店舗全体の貨幣処理を管理するものである。出納機は、例えば、大口顧客に対する係員による入金、出金等の取引処理、係員による渉外先への持ち出し金の出金処理や、渉外先からの持ち帰り金の入金処理、さらには、営業終了後の金融機関店舗全体での入出金状況の締め上げ管理等を行うものである。
【0028】
出納機は、紙幣についての入出金処理等を行う本実施形態に係る紙幣処理装置11と、紙幣の特に新券についての出金処理等を行う新券処理装置12と、硬貨についての入出金処理等を行う硬貨処理装置13とが左右に並設されて構成されており、硬貨処理装置13の上部に、操作者によって操作入力がなされる操作部14と、操作者に対して表示を行う表示部15とが設けられている。
【0029】
次に、本実施形態に係る紙幣処理装置11の全体構成を図2を参照して説明する。紙幣処理装置11は、その前面側の上部に、機外からバラ紙幣が投入されるとともに機内から出金用のバラ紙幣が繰り出される入出金部21が設けられている。入出金部21は、その底部を構成する載置板22が後下がりに傾斜した姿勢で昇降可能に設けられており、その奥側の支承面23が載置板22と直交するように後上がりに傾斜して設けられている。入出金部21には、紙幣が長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で載置板22上に集積されることになり、紙幣は載置板22の傾斜により後端縁が支承面23に当接する。入出金部21の上部の後側には、載置板22上に集積されたバラ紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて機内へ繰り出すとともに機内からの紙幣を入出金部21に繰り出す繰出部21aが設けられている。
【0030】
入出金部21の下側には、紙幣処理装置11の前面位置に、受け付け不可と判定された入金リジェクト紙幣が機内から繰り出される入金リジェクト部26が設けられている。入出金部21および入金リジェクト部26の後側には、出金不可と判定された出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト部27が設けられており、出金リジェクト部27の後方の下部には紙幣を識別する識別部28が設けられている。
【0031】
また、出金リジェクト部27の後方の上部には紙幣を整列させて所定の結束枚数集積させる整列部30が設けられており、この整列部30の上部には、整列部30で集積された結束枚数の紙幣に結束テープを巻き回して小束紙幣とする結束部31が設けられている。この結束部31の前側には結束部31で作成された小束紙幣を機外に繰り出す束出金部32が設けられている。
【0032】
また、紙幣処理装置11の下部には、奥側から順に、入金確定後の所定の単一金種のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する金種カセット(収納体)35、同様の金種カセット(収納体)36、同様の金種カセット(収納体)37、入金確定後のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する混合カセット(収納体)38、および入金された入金確定前のバラ紙幣を上下に集積させた状態で一時貯留するプールカセット(収納体)39が上下左右の位置を合わせて一列状に配置されている。
【0033】
金種カセット35の上部には、その内部に紙幣を繰り出すとともに内部の紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して繰り出す繰出部35aが設けられており、金種カセット36の上部にも同様の繰出部36aが、金種カセット37の上部にも同様の繰出部37aが、混合カセット38の上部にも同様の繰出部38aが、プールカセット39の上部にも同様の繰出部39aが、それぞれ設けられている。
【0034】
紙幣処理装置11の内部には、紙幣を搬送する紙幣搬送路41が各部を適宜繋ぐように設けられている。紙幣搬送路41は、繰出部21aから後上がりに延出した後、後下がりに延出し、さらに鉛直下方に延出し、その後、前側に一端延出した後、下側にて後側に折り返し、後方に延出し、途中上側に凸状に屈曲して識別部28を通って下方に若干延出する搬送路41Aと、搬送路41Aに連続して下側に若干延出した後に前方に延出し前端から下方に若干延出する搬送路41Bと、搬送路41Bに連続するようにプールカセット39に設けられた搬送路41Cとを有している。
【0035】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの途中から分岐する搬送路41Dと、搬送路41Dに連続するように金種カセット35に設けられた搬送路41Eと、搬送路41Bの搬送路41Dよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Fと、搬送路41Fに連続するように金種カセット36に設けられた搬送路41Gと、搬送路41Bの搬送路41Fよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Hと、搬送路41Hに連続するように金種カセット37に設けられた搬送路41Iと、搬送路41Bの搬送路41Hよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Jと、搬送路41Jに連続するように混合カセット38に設けられた搬送路41Kと、搬送路41Bの搬送路41Jよりもプールカセット39側から分岐して上方に延出する搬送路41Lと、搬送路41Lに繋がって屈曲し後方に延出して搬送路41Aの入出金部21と識別部28との間に繋がる搬送路41Mとを有している。
【0036】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの搬送路41Jの分岐位置と搬送路41Lの分岐位置との間位置から分岐して上方に延出する搬送路41Nと、搬送路41Nに繋がって上方に延出し搬送路41Mの途中位置に繋がる搬送路41Oと、搬送路41Mにおける搬送路41Oの接続位置と搬送路41Aへの接続位置との間位置から分岐して入金リジェクト部26に繋がる搬送路41Pと、搬送路41Aにおける搬送路41Mの接続位置と入出金部21との間位置から分岐し前方に延出して搬送路41Pの途中位置に繋がる搬送路41Qと、搬送路41Pにおける搬送路41Qの接続位置と入金リジェクト部26との間位置から上方に分岐し後上がりに延出して出金リジェクト部27に繋がる搬送路41Rとを有している。
【0037】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Aにおける入出金部21と搬送路41Qの分岐位置との間位置と、搬送路41Mの接続位置と識別部28との間位置とを繋ぐ搬送路41Sと、搬送路41Aにおける搬送路41Sの接続位置と入出金部21との間位置から後方に分岐して整列部30に繋がる搬送路41Tとを有している。搬送路41Sには、紙幣の表裏を反転させる表裏反転部43が設けられている。
【0038】
ここで、上記した搬送路41A〜41Mは正逆両方向に紙幣を搬送可能となっており、搬送路41N〜41Tは一方向にのみ紙幣を搬送可能となっている。
【0039】
図3の太線は、機外から入出金部21に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数する入金処理のルートを示している。つまり、入出金部21の載置板22上にバラ紙幣が載置されて、操作部14に入金処理を行う旨の入力操作がなされると、繰出部21aが入出金部21の載置板22上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41Aで搬送することになる。搬送路41Aでの搬送中に識別部28が紙幣を識別計数することになり、識別部28で受け入れ可能と判定した紙幣(取り扱い可能な金種の紙幣)を、図3に太実線で示すように、搬送路41B,41Cでプールカセット39に搬送する一方、識別部28で受け入れ不可と判定した紙幣を、図3に太破線で示すように、搬送路41Bから搬送路41N,41O,41M,41Pで入金リジェクト部26に搬送する。これにより、受け入れ可能な紙幣をプールカセット39に一時貯留し、受け入れ不可な紙幣を入金リジェクト部26に放出する。
【0040】
図4の太線は、入金処理にてプールカセット39に一時貯留した紙幣を、操作部14への承認操作が入力されたことを条件に、確定して、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに収納する収納処理のルートを示している。つまり、プールカセット39の紙幣を上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図4に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D〜41Kの対応するものによって金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに搬送する。これにより、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに紙幣を収納する。なお、収納処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図4に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0041】
図5の太線は、入金処理にてプールカセット39に一時貯留した紙幣を、操作部14へのキャンセル操作が入力されたことを条件に、入出金部21に繰り出す返却処理のルートを示している。つまり、プールカセット39の紙幣を上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41C,41B,41Aによって入出金部21に搬送する。これにより、入出金部21に紙幣を返却する。
【0042】
図6の太線は、操作部14へ入力されたバラ出金操作に基づいて、金種カセット35、金種カセット36および金種カセット37の指定された金種のものから紙幣を出金するバラ紙幣出金処理のルートを示している。つまり、バラ出金処理では、図6に太実線で示すように、金種カセット35〜37の指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜37aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Iの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41Aで入出金部21に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41Aで入出金部21に、それぞれ搬送する。これにより、出金操作に基づくバラ紙幣を入出金部21に繰り出す。なお、出金処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図6に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0043】
図7の太線は、操作部14へ入力された束出金操作に基づいて、金種カセット35、金種カセット36および金種カセット37の指定された金種のものからの紙幣を結束して出金する束出金処理のルートを示している。つまり、束出金処理では、図7に太実線で示すように、金種カセット35〜37のうち指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜37aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Iの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41A,41Tで整列部30に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41A,41Tで整列部30に、それぞれ搬送する。これにより、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部30に繰り出す。そして、結束部31で結束を行い、束出金部32に繰り出す。このような処理を指定された金種毎に指定された束数分行うことになる。なお、束出金処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図7に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0044】
図8の太線は、操作部14へ入力された自己精査処理操作に基づいて、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものの紙幣を自己精査する自己精査処理の往路ルートを示している。つまり、自己精査処理では、図8に太実線で示すように、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜38aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Kの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28で識別計数しつつ、搬送路41M,41L,41B,41Cを介してプールカセット39に搬送する。そして、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されていた紙幣をすべて繰り出す。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図8に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0045】
図9の太線は、上記した自己精査処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦移した紙幣を、図9に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aによって、識別部28に搬送し、識別部28で識別計数するとともに、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D〜41Kの対応するものを介して、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応する金種のものに収納する。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図9に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0046】
以上により、識別部28の計数結果と、金種カセット35〜37および混合カセット38の自己精査処理を行ったものに収納された紙幣の枚数とが一致することになり、このような自己精査処理を、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定されたものについて、それぞれ個別に行うことになる。なお、金種カセット35〜37および混合カセット38にそれぞれ収納された紙幣の合計枚数がプールカセット39の最大収納枚数以下であった場合には、上記の自己精査処理をそれぞれ個別に行う必要はなく、すべて一括して行うこともできる。
【0047】
図10の太線は、機外から入出金部21に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数するローカル整理処理の往路ルートを示している。つまり、入出金部21の載置板22上にバラ紙幣が載置されて、操作部14にローカル整理処理を行う旨の入力操作が金種指定とともになされると、繰出部21aが入出金部21の載置板22上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図10に太実線で示すように、搬送路41Aで搬送することになる。搬送路41Aでの搬送中に識別部28が紙幣を識別計数することになり、識別部28で指定金種と判定した紙幣を、搬送路41B,41Cでプールカセット39に搬送する一方、識別部28で指定金種以外と判定した紙幣を、図10に太破線で示すように、搬送路41Bから搬送路41N,41O,41M,41Pで入金リジェクト部26に搬送する。これにより、指定金種の紙幣をプールカセット39に一時貯留し、指定金種以外の紙幣を入金リジェクト部26に放出する。
【0048】
図11の太線は、ローカル整理処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦収納した紙幣を、上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図11の太線で示すように、搬送路41C,41B,41Aで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41A,41Tで整列部30に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41A,41Tで整列部30に、それぞれ搬送する。このようにして、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部30に繰り出す。そして、結束部31で結束を行い、束出金部32に繰り出す。このような処理を結束単位枚数が整列部30に集積される限り繰り返す。なお、結束単位枚数に満たない、端数紙幣が整列部30に集積された場合にも、これを結束し端数紙幣であることを示す識別をつけて束出金部32に繰り出す。なお、ローカル整理処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図11に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41Pによって入金リジェクト部26に搬送し、入金リジェクト部26に放出する。
【0049】
本実施形態に係る紙幣処理装置11は、その上部にある、入出金部21、入金リジェクト部26、出金リジェクト部27、識別部28、整列部30、結束部31、束出金部32、表裏反転部43および搬送路41A,41M,41O〜41Tが本体45内に配置されており、その下部にある、搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが、本体45から前面側に引き出し可能な図12に示す引出体46内に配置されている。さらに、搬送路41Eは、引出体46に対し着脱可能な金種カセット35内に、搬送路41Gは同様の金種カセット36内に、搬送路41Iは同様の金種カセット37内に、搬送路41Kは同様の混合カセット38内に、搬送路41Cは同様のプールカセット39内に、それぞれ配置されている。
【0050】
引出体46は、図12に示すように、収納部47と、この収納部47の上方に揺動可能に設けられた搬送部48とを有している。図13に示すように、収納部47には、複数の収納体である金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39が一列状に収納されることになり、この収納部47の上方の搬送部48は、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39に対して紙幣を搬送する。搬送部48には、図2に示す上記した搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが設けられている。
【0051】
収納部47は、図12に示すように、前壁部51と、前壁部51の左端側の略全高さ範囲から後方に延出するベース壁部52と、前壁部51の右端側の下部から後方に延出する着脱壁部53と、前壁部51と平行をなしてベース壁部52および着脱壁部53に連結される後壁部54と、これら前壁部51、ベース壁部52、着脱壁部53および後壁部54で囲まれる空間の下部を閉塞する図示略の底板部とを有している。ここで、前壁部51は、紙幣処理装置11の前面を構成する。
【0052】
後壁部54には、上下方向中間位置に受板55が支持軸55aで、鉛直方向に沿う状態と後上がりに傾斜して延出する状態との間で揺動するように取り付けられている。ベース壁部52の上部には、図12(b)に示すように、前後方向に沿う支持軸57aを有する2カ所のヒンジ57を介して搬送部48が揺動可能に連結されている。
【0053】
また、収納部47には、図13に示す金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39が個別に装填される、図12に示す複数の装填空間58を仕切る複数の仕切壁部59が、前壁部51と後壁部54との間に、これらに平行に設けられている。ここで、図12(b)に示すように、ヒンジ57の支持軸57aが上側に設けられることになるベース壁部52の高さよりも、支持軸57aとは反対側の着脱壁部53の高さの方が上記したように低くなっており、これにより、複数の装填空間58は、着脱壁部53の上側において側方に大きく開口している。
【0054】
仕切壁部59は、着脱壁部53への接合側が着脱壁部53と同高さとなっており、ベース壁部52への接合側が着脱壁部53よりも高くベース壁部52よりも若干低い高さとなっている。これにより、仕切壁部59は、着脱壁部53側の上部がベース壁部52の上部と着脱壁部53の上部とを結ぶように斜めに切り欠かれた形状をなしている。言い換えれば、搬送部48を軸支する側のベース壁部52の上端部と、上側が開放された着脱壁部53の上端部とを結ぶ線の近傍付近に仕切壁部59の上端縁が形成されている。このような収納部47には、前壁部51側の下部に、本体45からの引き出し時に床面上で転動するキャスタ60が設けられている。
【0055】
収納部47の一縁であるベース壁部52の上部には前後二カ所に上記したヒンジ57が取り付けられており、これらヒンジ57に上記した搬送部48が取り付けられている。言い換えれば、搬送部48が、収納部47の一縁にあって、複数の金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の配列方向に沿うヒンジ57の支持軸57aに軸支されて、収納部47に対し揺動可能となっている。
【0056】
搬送部48は、ベース壁部52と着脱壁部53との間の上方位置で水平に配置される図12(a)に示す搬送位置と、ベース壁部52の上方に延出する姿勢となってすべての装填空間58の上方を開放する図12(b)に示す開放位置との間で揺動可能となっている。搬送位置にあるとき、搬送部48は、図13(a)に示す金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を覆ってこれらに対して紙幣を搬送可能となる。開放位置にあるとき、図13(b)に示すように金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を開放する。なお、搬送部48は、図12(a),図13(a)に示すように水平に配置される搬送位置と、図12(b),図13(b),図14に示す開放位置との間の揺動角度が、90度より大きくなっている。引出体46と本体45とは、搬送部48が搬送位置にあるときに、本体45に対し衝突することなく装填可能となり、搬送部48が開放位置にあるときには、本体45に対し装填しようとすると搬送部48が本体45に衝突する形状関係になっている。
【0057】
搬送部48の各部構成について、搬送位置にある状態をもってさらに説明する。図15に示すように、搬送部48の上側には、長さ方向の一側から順に、支持軸61a、支持軸62a、支持軸63a、支持軸64a、支持軸65a、支持軸66a、支持軸67a、支持軸68a、支持軸69a、支持軸70a、支持軸71a、支持軸72aが回転可能に設けられている。また、搬送部48の下側には、長さ方向の一側から順に、支持軸73a、支持軸74a、支持軸75a、支持軸76a、支持軸77a、支持軸78a、支持軸79a、支持軸80a、支持軸81a、支持軸82a、支持軸83a、支持軸84a、支持軸85a、支持軸86aが回転可能に設けられている。これらの支持軸61a〜86aは、すべて搬送部48の幅方向に沿っており、平行に配置されている。
【0058】
図16に示すように、支持軸61aには複数具体的には二つの搬送ローラ61が固定されており、支持軸62aには外歯付き(図示略)の複数具体的には二つのプーリ62が、支持軸63aにも同様の複数具体的には二つのプーリ63が、支持軸64aにも同様の複数具体的には二つのプーリ64が、支持軸65aにも同様の複数具体的には二つのプーリ65が、支持軸66aにも同様の複数具体的には二つのプーリ66が、支持軸67aにも同様の複数具体的には二つのプーリ67がそれぞれ固定されている。また、支持軸68aには複数具体的には二つの搬送ローラ68が固定されている。
【0059】
支持軸62a〜67aのそれぞれの軸方向一側のプーリ62〜67には、一本の内歯付き(図示略)のタイミングベルトからなる搬送ベルト90が、歯同士を噛み合わせるようにして掛けられており、支持軸62a〜67aのそれぞれの軸方向他側のプーリ62〜67にも、一本の内歯付き(図示略)のタイミングベルトからなる搬送ベルト90が、互いの歯を噛み合わせるようにして掛けられている。つまり、搬送部48には、複数列具体的には2列の無端状の搬送ベルト90が上面側に設けられている。
【0060】
図15に片側のみを示すように、支持軸69aにも複数具体的には二つの搬送ローラ69が、支持軸70aにも複数具体的には二つの搬送ローラ70が、支持軸71aにも複数具体的には二つの搬送ローラ71が、支持軸72aにも複数具体的には二つの搬送ローラ72が、それぞれ固定されている。
【0061】
支持軸61aと支持軸73aとは、搬送部48の長さ方向における位置を合わせており、同様に、支持軸62aと支持軸74aとが位置を、支持軸63aと支持軸75aとが位置を、支持軸64aと支持軸77aとが位置を、支持軸65aと支持軸79aとが位置を、支持軸66aと支持軸81aとが位置を、支持軸67aと支持軸83aとが位置を、支持軸68aと支持軸84aとが位置を、支持軸70aと支持軸85aとが位置を、支持軸72aと支持軸86aとが位置を、それぞれ合わせている。
【0062】
支持軸73aには搬送ローラ73が、支持軸74aには搬送ローラ74が、支持軸75aには搬送ローラ75が、支持軸76aには搬送ローラ76が、支持軸77aには搬送ローラ77が、支持軸78aには搬送ローラ78が、支持軸79aには搬送ローラ79が、支持軸80aには搬送ローラ80が、支持軸81aには搬送ローラ81が、支持軸82aには搬送ローラ82が、支持軸83aには搬送ローラ83が、支持軸84aには搬送ローラ84が、支持軸85aには搬送ローラ85が、支持軸86aには搬送ローラ86が、それぞれ複数具体的には二つずつ設けられている。
【0063】
搬送ローラ61および搬送ローラ73は、紙幣を挟持しつつ回転して搬送路48の長さ方向に沿って水平に搬送することになり、搬送路41Bを構成している。また、搬送ベルト90の水平な下辺部90Aと、搬送ローラ74、搬送ローラ75、搬送ローラ77、搬送ローラ79、搬送ローラ81および搬送ローラ83とが、紙幣を挟持しつつ回転して水平に搬送することになり、これらも搬送路41Bを構成している。さらに、搬送ローラ68および搬送ローラ84は、紙幣を挟持しつつ回転して水平に搬送することになり、搬送ローラ70および搬送ローラ85も、紙幣を挟持しつつ回転して水平に搬送することになって、これらも搬送路41Bを構成している。加えて、搬送ローラ85は、横方向に隣り合う搬送ローラ86とによっても、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらも搬送路41Bを構成している。
【0064】
搬送ローラ75は、横方向に隣り合う搬送ローラ76とによって、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらは搬送路41Dを構成している。搬送ローラ77は、横方向に隣り合う搬送ローラ78とによって、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらは搬送路41Fを構成している。搬送ローラ79は、横方向に隣り合う搬送ローラ80とによって、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらは搬送路41Hを構成している。搬送ローラ81は、横方向に隣り合う搬送ローラ82とによって、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらは搬送路41Jを構成している。搬送ローラ68は、横方向に隣り合う搬送ローラ69とによって、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらは搬送路41Nを構成している。搬送ローラ72は、横方向に隣り合う搬送ローラ71とによって、紙幣を挟持しつつ回転して上下方向に搬送することになり、これらは搬送路41Lを構成している。
【0065】
支持軸76aの上側には、これと平行に支持軸92aが設けられており、支持軸92aには、搬送路41Bの紙幣をそのまま通過させる位置と、搬送路41Dに取り込む位置との間で揺動する櫛歯状の出入ガイド92が取り付けられている。支持軸78aの上側には、これと平行に支持軸93aが設けられており、支持軸93aには、搬送路41Bの紙幣をそのまま通過させる位置と、搬送路41Fに取り込む位置との間で揺動する櫛歯状の出入ガイド93が取り付けられている。支持軸80aの上側には、これと平行に支持軸94aが設けられており、支持軸94aには、搬送路41Bの紙幣をそのまま通過させる位置と、搬送路41Hに取り込む位置との間で揺動する櫛歯状の出入ガイド94が取り付けられている。支持軸82aの上側には、これと平行に支持軸95aが設けられており、支持軸95aには、搬送路41Bの紙幣をそのまま通過させる位置と、搬送路41Jに取り込む位置との間で揺動する櫛歯状の出入ガイド95が取り付けられている。
【0066】
つまり、出入ガイド92は、搬送部48と金種カセット35との間で紙幣を出し入れするものであり、同様に、出入ガイド93は、搬送部48と金種カセット36との間で、出入ガイド94は、搬送部48と金種カセット37との間で、出入ガイド95は、搬送部48と混合カセット38との間で、それぞれ紙幣を出し入れするものとなっている。その結果、出入ガイド92〜95は、搬送部48とプールカセット39との間でも、紙幣を出し入れするものとなっている。
【0067】
支持軸69aの下側には、これと平行に支持軸97aが設けられており、支持軸97aには、搬送路41Bの紙幣をそのまま通過させる位置と、搬送路41Nに取り込む位置との間で揺動する櫛歯状の出入ガイド97が取り付けられている。支持軸70aには、横方向に隣り合って支持軸98aがこれと平行に設けられており、支持軸98aには、搬送路41Bの紙幣をそのまま通過させる位置と、搬送路41Lに取り込む位置とに切り替えられる櫛歯状の出入ガイド98が取り付けられている。
【0068】
図16に示すように、支持軸61aの一端には、本体45側の図示略の駆動モータの駆動力が伝達される駆動伝達ギア101が固定されており、支持軸61aの他端にはギア102が固定されている。図17に示すように、このギア102には支持軸103aに支持されたアイドルギア103が噛み合っており、このアイドルギア103が支持軸62aに固定されたギア104に噛み合っている。よって、本体45側の図示略の駆動モータの駆動力で支持軸61aおよび支持軸62aが同方向に回転することになり、支持軸61aの搬送ローラ61と、支持軸62aのプーリ62に一端が巻回された搬送ベルト90とが同方向に回転することになる。その結果、図15に示すように搬送ベルト90が巻回されるプーリ63〜67およびプーリ67を支持する支持軸67aも同期して同方向に回転することになる。
【0069】
図18に示すように、支持軸67aにはギア106が固定されており、このギア106には支持軸107aに支持されたアイドルギア107が噛み合っている。そして、このアイドルギア107が支持軸68aに固定されたギア108に噛み合っており、その結果、搬送ローラ68も、支持軸61aの搬送ローラ61および搬送ベルト90と同期して同方向に回転することになる。
【0070】
図15に示すように、搬送ローラ61とで搬送路41Bを構成する、搬送ローラ73は、搬送ローラ61の回転に対して連れ回りし、搬送ベルト90とで搬送路41Bを構成する、搬送ローラ73、搬送ローラ74、搬送ローラ75、搬送ローラ77、搬送ローラ79、搬送ローラ81および搬送ローラ83も、搬送ベルト90の回転に対して連れ回りし、搬送ローラ68とで搬送路41Bを構成する搬送ローラ84も、搬送ローラ68の回転に対して連れ回りすることになる。
【0071】
図19に示すように、支持軸61aの他端側には、搬送部48が搬送位置にあると紙幣を搬送可能とし、搬送部48が開放位置にあると紙幣を搬送不可とする搬送規制機構(搬送規制手段)111が設けられている。この搬送規制機構111は、支持軸61aの他端側に固定された係合部材(搬送時回転部)112と、アイドルギア103の支持軸103aに回転可能に支持されたL字状のベース部113と、ベース部113を付勢するスプリング(付勢手段)114とを有している。
【0072】
係合部材112には、図20に示すように、支持軸61aの径方向および軸方向に沿う係合板部115が回転方向に間隔をあけて複数具体的には4カ所形成されている。
【0073】
ベース部113は、支持軸103aからその径方向に沿って延出するアーム部117,118を有するL字状の回動部材119と、この回動部材119の一方のアーム部117の先端部に支持軸103aと平行に取り付けられた支持軸120aと、この支持軸120aに支持された回転可能な当接ローラ120とを有している。
【0074】
回動部材119は、一方のアーム部117が支持軸103aから支持軸61a側の斜め下方に延出し、他方のアーム部118が支持軸103aから支持軸61a側の斜め上方へ延出している。この他方のアーム部118の先端には支持軸61a側に係合凹部121が形成されている。図19に示すスプリング114は、係合凹部121が係合部材112に近接する方向にベース部113を付勢することになり、その結果、当接ローラ120が下側に位置するようにベース部113を付勢する。このスプリング114の付勢力でベース部113は、回動部材119のアーム部118を係合部材112に当接させることになる。この状態で係合部材112が適宜回転してアーム部の係合凹部121といずれか一つの係合板部115との位置が合うと、図19(b)および図20(b)に示すように、これらは係合することになる。この状態が、ベース部113が支持軸61aの回転を規制する規制状態となる。このように支持軸61aの回転が規制されると、図16に示す搬送ローラ61は勿論、搬送ベルト90および搬送ローラ68も回転が規制されることになる。
【0075】
図19および図20に示すベース部113は、搬送部48が搬送位置にあるとき、図12(b)に示す当接ローラ120を収納部47の後壁部54上のストッパ部122に当接させることになり、これにより、図19(a)に示すようにスプリング114の付勢力に抗して回動して係合凹部121を係合部材112から離間させることになり、よって、係合凹部121と係合板部115との係合を解除する規制解除状態となる。これにより、図19(a)および図20(a)に示すように、支持軸61aの回転規制が解除されることになり、搬送ローラ61、搬送ベルト90および搬送ローラ68等、搬送部48の紙幣搬送時に回転する搬送時回転部が回転可能となる。他方、搬送部48が開放位置にあるとき、ベース部113は、当接ローラ120をストッパ部122から離間させることになり、これにより、上記したように、アーム部118を係合部材112に当接させる。この状態では、搬送ローラ61、搬送ベルト90、搬送ローラ68を含む搬送時回転部を回転させようとしても、係合部材112の係合板部115がベース部113の係合凹部121に係合することになって、回転が規制される。
【0076】
つまり、ベース部113は、搬送部48が開放位置にあるとき一端部の係合凹部121が係合部材112に係合することで紙幣を搬送不可にするとともに、搬送部48が搬送位置にあるとき他端部の当接ローラ120が引出体46のストッパ部122に当接することで係合凹部121の係合部材112への係合を解除することになり、図19に示すスプリング114は、ベース部113を係合凹部121が係合部材112に係合する方向へ付勢する。
【0077】
図15に示すように、出入ガイド92と搬送ローラ77との間と、出入ガイド93と搬送ローラ79との間と、出入ガイド94と搬送ローラ81との間とには、それぞれ、図16に示すように、搬送ベルト90と同じ複数列具体的には2列の紙幣ガイド125が設けられている。これらの紙幣ガイド125は、搬送部48の下面側に設けられて、搬送ベルト90の下辺部90Aによって上方より押圧される紙幣を受けるもので、図21に示すように、搬送ベルト90の下辺部90Aを一対一で入り込ませる凹部126が図22にも示すように下辺部90Aの延在方向に沿うように形成されている。
【0078】
具体的に、紙幣ガイド125は、摩擦係数が低い合成樹脂製のもので、凹部126を形成するように一対の同形状の壁部128が下辺部90Aの延在方向に沿うように立設されている。一対の壁部128は、それぞれが、リブ状をなしており、図23に示すように搬送ベルト90の下辺部90Aの延在方向の一側にあって他側ほど高さが高くなる一側傾斜壁部130と、下辺部90Aの延在方向の前記他側にあって前記一側ほど高さが高くなる他側傾斜壁部131と、これら一側傾斜壁部130および他側傾斜壁部131の間にあって一定高さの中間壁部132とを有している。図24に示すように、一対の壁部128間の凹部126内に搬送ベルト90の下辺部90Aが入り込んでおり、よって中間壁部132の上面の高さの方が下辺部90Aの下面の高さより高くなっている。
【0079】
以上により、紙幣の搬送方向に対し直交する方向に並設された複数列の紙幣ガイド125は、両方が一枚の紙幣を同時に、一対の壁部128と、凹部126内に入り込む搬送ベルト90の下辺部90Aとで挟持しつつ搬送することになり、その際に、紙幣は一側傾斜壁部130の上面から中間壁部132の上面に円滑に移動し、中間壁部132の上面から他側傾斜壁部131の上面に円滑に移動する。あるいは、紙幣は他側傾斜壁部131の上面から中間壁部132の上面に移動し、中間壁部132の上面から一側傾斜壁部130の上面に移動する。
【0080】
引出体46には、図25(a)に示すように搬送部48が搬送位置にないとき、引出体46の本体45への装填移動を規制する装填移動規制機構(装填移動規制手段)135が設けられている。
【0081】
装填移動規制機構135は、図26に示すように、収納部47の後壁部54の着脱壁部53側に左右方向に延在するように設けられた支持軸136aと、この支持軸136aに回動可能に支持されるL字状の回動部材136と、回動部材136の後端部に支持軸136aと平行に設けられた支持軸137aと、この支持軸137aに回動可能に支持される転動ローラ137とを有している。回動部材136は支持軸136aから後方に延出するアーム部140と、支持軸136aから上方に延出するアーム部141とを有しており、アーム部140の後端部に上記した支持軸137aおよび転動ローラ137が設けられている。この転動ローラ137は、図1に示す引出体46の本体45に対する移動時に、引出体46の本体45に対するスライドを案内する図26に示すスライドレール142上を転動可能となっている。スライドレール142の上部には段差状のストッパ部143が形成されており、その結果、スライドレール142は、ストッパ143よりも後側の上面142Aと、ストッパ143よりも前側で上面142Aよりも低い上面142Bとを有している。
【0082】
転動ローラ137は、引出体46の本体45からの引き出し時の初期には、スライドレール142のストッパ部143より後側の上面142A上を転動し、引き出し時の終期にストッパ部143よりも前に位置すると、回動部材136のアーム部140も加えた自重によって、回動部材136を揺動させながら、図26(a)に示すように、ストッパ部143よりも前側の上面142Bに当接する。この状態では、そのまま、引出体46を本体45に押し込もうとしても、回動部材136のアーム部140の後端部がストッパ部143に当接して引出体46の移動を規制するロック状態となる。回動部材136のアーム部141の上部の後側には、上側ほど後方に位置するように傾斜するカム部144が形成されている。
【0083】
装填移動規制機構135は、収納部47の着脱壁部53の外側で前後方向に沿う作動軸146aと、この作動軸146aの後端に固定されて後壁部54の後面に対向する回動アーム146と、後壁部54の回動アーム146よりも上側に設けられた支持軸147aと、この支持軸147aに一端が連結される作動アーム147と、作動アーム147の中間位置の連結軸148aと、回動アーム146の中間位置の連結軸148bと、これら連結軸148a,148bに回転可能に連結される連結アーム148とを有している。回動アーム146は、図26(a)に示すように略水平に沿う状態を基本状態としており、作動軸146aが回転すると、図26(b)に示すように作動軸146aとは反対の先端部を上昇させるように回動する回動状態になる。すると、回動アーム146は、連結アーム148を上昇させ、作動アーム147を支持軸147aを中心に先端部が上昇する方向に揺動させる。
【0084】
この作動アーム147の先端部は、回動部材136のカム部144に接触可能となっており、図26(b)に示すように、上昇するとカム部144に乗り上げて回動部材136のアーム部141を前方に押し、アーム部140の後端部を上昇させてストッパ部143への当接を解除するロック解除状態となる。また、作動アーム147の先端部は、図26(a)に示すように、下降するとカム部144への乗り上げを解除して回動部材136のアーム部141への押圧を解除し、回動部材136のアーム部140の後端部を下降可能とする。
【0085】
装填移動規制機構135は、図25(b)に示すように、搬送部48のヒンジ57とは反対側の後端部から下方に突出する突起部150と、後壁部54の作動アーム147よりも上側に設けられた支持軸151aと、上下方向に延在する姿勢でこの支持軸151aに回転可能に支持される連動部材151と、連動部材151を下部が着脱壁部53側に移動する方向に付勢するスプリング152とを有している。連動部材151の上端には、上側ほど水平方向の着脱壁部53側に位置するように傾斜する傾斜部153が形成されている。
【0086】
引出体46が本体45から引き出されると、上記したように図26に示す転動ローラ137がスライドレール142のストッパ部143より前側の上面142B上に移動することになり、自動的に回動部材136のアーム部140の後端部がストッパ部143に係止されて引出体46の本体45への装填を規制する状態になる。
【0087】
この状態で、搬送部48が図25(b)に示す搬送位置から図25(a)に示すように開放位置に揺動させられると、突起部150が連動部材151から離間することになり、連動部材151がスプリング152の付勢力で、図25(a)に示すように、その下部が着脱壁部53側に位置するように揺動することになる。この状態では、図27(a)に示すように連動部材151の下端部が基本状態にある回動アーム146の作動軸146aとは反対側の先端部の上昇を規制することになり、その結果、装填移動規制機構135は、図26(a)に示す連結アーム148および作動アーム147を介しての回動部材136の後端部側を上昇させる揺動を規制する規制状態となる。つまり、この規制状態では、作動軸146aは回転不可となり、回動部材136のアーム部140の後端部がストッパ部143に係止された状態を維持し、引出体46の本体45への装填移動を規制する。
【0088】
他方、搬送部48が開放位置から搬送位置に揺動させられると、図28(a)から図28(b)に示すように、突起部150が傾斜部153を押圧して連動部材151を、図25(b)に示すように、上部が着脱壁部53側に、下部が着脱壁部53とは反対側に位置するようにスプリング152の付勢力に抗して揺動させることになる。この状態では、装填移動規制機構135は、連動部材151の下端部が基本状態にある回動アーム146の先端部の上昇を許容する規制解除状態となる。すると、図27(b)に示すように、上記した作動軸146aの回転による回動アーム146の回動状態への揺動を許容することになり、その結果、図26(b)に示すように回動部材136の転動ローラ137側を上昇させる揺動を許容する。つまり、この規制解除状態で、作動軸146aが回転させられると、回動アーム146が揺動して連結アーム148および作動アーム147を介して回動部材136を回動させることになり、回動部材136の転動ローラ137側をストッパ部143よりも上昇させることになる。その結果、引出体46の本体45への装填移動が可能となる。以上により、装填移動規制機構135は、搬送部48の搬送位置への揺動に連動して引出体46の本体45への装填移動の規制を解除可能となる。
【0089】
図29(a)に示すように、引出体46の前壁部51は、その前面側を形成する前面板51Aを有しており、図29(b)に示すように、前面板51Aの裏側にはロック解除作動機構154が設けられている。このロック解除作動機構154は、一方で前壁部51の前面板51Aの前面側に左右に並設された一対のレバー155に連結されており、他方で上記した作動軸146aの回動アーム146とは反対側に固定された入力アーム156に当接可能となっている。ロック解除作動機構154は、一対のレバー155が両手で同時に揺動操作された場合に限り、作動軸146aに上記したように回動する方向の力を入力するものである。これにより、引出体46は、搬送部48が搬送位置に位置する状態で2つのレバー155が同時に揺動操作された場合に限り、本体45への装填移動が可能となる。
【0090】
一対のレバー155は、前面板51Aの裏面側の上部に左右方向に軸線を配置して設けられた支持軸155aに回動可能に支持されている。ロック解除作動機構154は、一対のレバー155の相互離間側に後方に突出するようにそれぞれ固定された一対の突出板157と、これら突出板157の突出先端側にそれぞれ支持軸155aと平行に設けられた一対の支持軸157aと、これら支持軸157aにそれぞれ回動可能に支持されて下方に延出する一対のアーム部材158とを有している。
【0091】
また、ロック解除作動機構154は、これらアーム部材158の下端側にそれぞれ前後方向に軸線を配置して設けられた一対の支持軸158aと、これら支持軸158aにそれぞれ回動可能に支持された一対のアーム部材159と、これらアーム部材159の一端を、支持軸158aよりも外側で前面板51Aに支持する、支持軸158aと平行な支持軸159aと、これらアーム部材159の他端側にそれぞれ設けられた、支持軸159aと平行な一対の支持軸159bと、これら支持軸159bを介して両端がアーム部材159に回動可能に連結される連結部材160とを有している。
【0092】
加えて、ロック解除作動機構154は、前面板51Aと一対のアーム部材159の連結部材160側との間に介装されて一対のアーム部材159をそれぞれ上方に付勢する一対のスプリング161と、連結部材160の中央に支持軸159bと平行に設けられた支持軸160aと、支持軸160aに回動可能に支持されて下方に延出する昇降部材162とを有している。昇降部材162には、上下方向に長い長穴163が上下2カ所に形成されており、これら長穴163には、前面板51Aに取り付けられた上下2つのピン164が挿通されている。これにより、昇降部材162は前面板51Aに対し上下に所定範囲内で摺動可能となっている。昇降部材162の下端には、上側ほど左右方向において作動軸146a側に位置するように傾斜する傾斜面165が形成されている。
【0093】
さらに、ロック解除作動機構154は、作動部材154の傾斜面165と作動軸146aとの間にスライド部材168が設けられている。このスライド部材168は、左右方向に沿っており、左右方向に長い長穴169が左右2カ所に形成されている。これら長穴169には、前壁部51の後面側を形成する図30に示す後面板51Bに取り付けられた左右2つのピン170が挿通されている。これにより、スライド部材168は後面板51Bに対し左右に所定範囲内で摺動可能となっている。そして、このスライド部材168の作動軸146aとは反対側には、前後方向に軸線を配置した支持軸171aを介して当接ローラ171が回転可能に設けられており、この当接ローラ171が、図29(b)に示す昇降部材162の傾斜面165に当接可能となっている。スライド部材168の当接ローラ171とは反対側は、作動軸146aから上方に延出する入力アーム156の上部に対向している。入力アーム156は、回動アーム146が略水平に沿う基本状態にあるとき、作動軸146aから上側ほどスライド部材168側に位置するように斜め上方に延出する傾斜状態となる。2つのレバー155が操作されない場合、図30に示すように、入力アーム156は後面板51Bとの間に介装されたスプリング172の付勢力で、図29(b)に示す傾斜状態に維持される。
【0094】
ロック解除作動機構154は、図31(a)に示すように、一方のレバー155のみが揺動操作された場合、図31(b)に示すように、このレバー155に突出板157および支持軸157aを介して繋がる一方のアーム部材158が、下降して支持軸158aを介して連結された一方のアーム部材159を支持軸159aを中心に連結部材160側が下降するように回動させるものの、他方のアーム部材158は下降しないため、他方のアーム部材159も回動しない。この状態では、連結部材160が一方側が下降するように揺動し中央の支持軸160aが若干下降するものの傾斜面165はスライド部材168の当接ローラ171に当接することはなく、スライド部材168が入力アーム156を押圧することもない。よって、回動アーム146は基本状態に維持される。
【0095】
他方、図32に示すように、両方のレバー155が同時に揺動操作された場合、これらレバー155に繋がる一対のアーム部材158が同時に下降して一対のアーム部材159を支持軸159aを中心に連結部材160側が下降するように回動させる。この状態では、図33に示すように、連結部材160の全体が下降することになり、中央の支持軸160aが、一方のレバー155のみが揺動操作された場合よりも大きく下降して傾斜面165で当接ローラ171に当接してスライド部材168を入力アーム156側に押圧することになり、スライド部材168がスライドして入力アーム156を押圧することになる。よって、入力アーム156と作動軸146aを介して一体に連結された回動アーム146が、上記した装填移動規制機構135が規制解除状態にある場合に限り、基本状態から回動状態に回動する。なお、装填移動規制機構135が規制状態にあれば、回動アーム146の回動状態への回動が規制されるため、2つのレバー155を操作しようとしても、入力アーム156は揺動できず、2つのレバー155を操作できない状態となる。このようにして、装填移動規制機構135およびロック解除作動機構154によって、搬送部48が搬送位置に位置する状態で二つのレバー155が同時に揺動操作された場合に限り、引出体46の本体45への装填移動が可能となる。二つのレバー155が同時に揺動操作されることをロック解除の条件とすることで、引出体46の本体45への装填時に手が挟まれることを防止する。
【0096】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理装置11によれば、引出体46が本体45から引き出され、収納部47の上方に設けられた搬送部48が、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を開放する開放位置に揺動させられると、搬送規制機構111が搬送部48の紙幣を搬送不可とする。よって、引出体46で発生した異常からの復旧作業時に搬送部48を開放しても、搬送部48に残留している紙幣が搬送部48から落下してしまうことを防止できる。したがって、復旧作業の作業性を向上できる。一方、搬送規制機構111は、搬送部48が、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を覆ってこれらに対して紙幣を搬送する搬送位置にあっては搬送部48の紙幣を搬送可能とするため、搬送部48による金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39に対する紙幣の搬送を阻害することはない。また、引出体46が本体45から引き出されると後壁部54の受板55が後上がりに傾斜して延出する状態となり、万が一紙幣が搬送部48から落下しても引出体46の後方への落下を受板55が受けることで防止することができる。
【0097】
また、搬送部48が開放位置に位置されると、搬送規制機構111は、ベース部113がスプリング114の付勢力によって一端係合凹部121を搬送部48の搬送時回転部である係合部材112の係合板部115に係合させることで紙幣を搬送不可にする一方、搬送部48が搬送位置に位置されると、ベース部113の他端部の当接ローラ120が引出体46のストッパ部122に当接することで一端係合凹部121の係合部材112への係合を解除する。このように搬送規制機構111は、搬送部48の揺動を利用して作動するため、簡素な構造となり、小型化、低コスト化および軽量化が図れる。搬送規制機構111が軽量となることで搬送部48の全体も軽量となるため、搬送部48の揺動負荷が軽減されて搬送部48の揺動が容易となり、復旧作業の作業性をさらに向上できる。なお、搬送規制機構111は、紙幣搬送時に回転する搬送時回転部であれば、係合部材112以外の回転を規制しても良い。
【0098】
また、搬送部48が、搬送位置と開放位置との間の揺動角度が90度より大きいため、搬送部48を開いて収納部47に対し金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39を着脱する際に搬送部48が邪魔になりにくく、着脱作業が容易となる。このように搬送部48が大きく揺動すると搬送部48から紙幣が落下した場合に遠くまで移動してしまう可能性が高くなることから、上記のように紙幣が搬送部48から落下することを防止することの効果が高くなる。
【0099】
また、収納部47は、搬送部48を支持するヒンジ57の支持軸57aが上側に設けられた一側のベース壁部52の高さよりも、支持軸57aとは反対側の着脱壁部53の高さの方が低くなっているため、搬送部48を開いて収納部47に対し金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39を着脱する際に着脱壁部53が邪魔になりにくく、着脱作業が容易となる。
【0100】
また、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39が装填される装填空間58を仕切る仕切壁部59が、その着脱壁部53側の上部が切り欠かれた形状をなしているため、搬送部48を開いて収納部47に対し金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39を着脱する際に仕切壁部59が邪魔になりにくく、着脱作業が容易となる。
【0101】
また、複数列の搬送ベルト90の下辺部90Aが、複数列の紙幣ガイド125の凹部126に入り込むため、複数列の下辺部90Aと凹部126との間の紙幣に、複数列の下辺部90Aの摩擦力を発生させて、紙幣を搬送することができる。このような構造を採用することで比較的重量の重い搬送ローラおよびその支持軸の数を減らすことができる。したがって、搬送部48の全体を軽量化できるため、搬送部48の揺動負荷が軽減されて搬送部48の揺動が容易となり、復旧作業の作業性をさらに向上できる。また、搬送ローラを用いる場合よりも搬送負荷を軽減できるため、紙幣の排除が容易となり、この点からも、復旧作業の作業性をさらに向上できる。
【0102】
また、紙幣は、搬送ベルト90の下辺部90Aと紙幣ガイド125の凹部126との間に入り込む際に、凹部125を形成する両側の壁部128において、他側ほど高さが高くなる一側傾斜壁部130に案内されて、一定高さの中間壁部132に乗り上げた後、他側ほど高さが低くなる他側傾斜壁部131に案内され、あるいはこれとは逆に案内される。したがって、紙幣を円滑に、下辺部90Aと凹部126との間に入り込ませ、これらの間から繰り出させることができる。
【0103】
また、搬送部48が搬送位置にないとき、装填移動規制機構135が引出体46の本体45への装填移動を規制するため、搬送部48が搬送位置にない(開放状態にある)状態で引出体46が本体45へ装填されることにより生じる搬送部48の本体45への衝突を防止できる。したがって、搬送部48を搬送位置に戻さずに引出体46を本体45に装填してしまうという作業ミスで生じる損傷を防止することができる。
【0104】
また、装填移動規制機構135が、搬送部48の搬送位置への揺動に連動して、引出体46の本体45への装填移動の規制を解除可能となる。このように装填移動規制機構135は、搬送部48の揺動を利用して作動するため、簡素な構造となり、小型化、低コスト化および軽量化が図れる。
【0105】
また、ストッパ部143が、引出体46のスライドを案内するスライドレール142に設けられているため、さらなる低コスト化が図れる。
【符号の説明】
【0106】
11 紙幣処理装置
35〜37 金種カセット(収納体)
38 混合カセット(収納体)
39 プールカセット(収納体)
45 本体
46 引出体
47 収納部
48 搬送部
52 ベース壁部
53 着脱壁部
57a 支持軸
58 装填空間
59 仕切壁部
90 搬送ベルト
90A 下辺部
92〜95 出入ガイド
111 搬送規制機構(搬送規制手段)
112 係合部材(搬送時回転部)
113 ベース部
114 スプリング(付勢手段)
125 紙幣ガイド
126 凹部
128 壁部
130 一側傾斜壁部
131 他側傾斜壁部
132 中間壁部
135 装填移動規制機構(装填移動規制手段)
142 スライドレール
143 ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体および該本体から引き出し可能な引出体を有し、
該引出体は、
複数の収納体を一列状に収納する収納部と、
該収納部の上方に設けられて前記複数の収納体に対して紙幣を搬送する搬送部と、を備え、
該搬送部は、
前記複数の収納体の配列方向に沿う支持軸に軸支されて、前記複数の収納体の上方を覆ってこれら収納体に対して紙幣を搬送する搬送位置と、前記複数の収納体の上方を開放する開放位置との間で揺動可能であるとともに、
前記搬送位置にあっては紙幣を搬送可能とし前記開放位置にあっては紙幣を搬送不可とする搬送規制手段を有することを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記搬送規制手段は、
前記搬送部が前記開放位置にあるとき一端部が前記搬送部の搬送時回転部に係合することで紙幣を搬送不可にするとともに、前記搬送部が前記搬送位置にあるとき他端部が前記引出体に当接することで前記一端部の前記搬送時回転部への係合を解除するベース部と、
該ベース部を前記一端部が前記搬送時回転部に係合する方向へ付勢する付勢手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記搬送部は、
前記搬送位置と前記開放位置との間の揺動角度が90度より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記収納部は、
前記支持軸が上側に設けられた一側のベース壁部の高さよりも、前記支持軸とは反対側の着脱壁部の高さの方が低くなっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記収納部は、
前記複数の収納体が装填される装填空間を仕切る仕切壁部を有しており、
該仕切壁部は、前記着脱壁部側の上部が切り欠かれた形状をなしていることを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記搬送部は、
複数列の搬送ベルトと、
前記複数列の搬送ベルトの下辺部によって上方より押圧される紙幣を受ける複数列の紙幣ガイドと、
前記複数の収納体との間で紙幣を出し入れする複数の出入ガイドと、を備え、
前記紙幣ガイドには、前記搬送ベルトの前記下辺部を入り込ませる凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記紙幣ガイドは、
前記凹部を形成する両側の壁部が、前記下辺部の延在方向の一側にあって他側ほど高さが高くなる一側傾斜壁部と、前記下辺部の延在方向の前記他側にあって前記一側ほど高さが高くなる他側傾斜壁部と、これら一側傾斜壁部および他側傾斜壁部の間にあって一定高さの中間壁部とを有することを特徴とする請求項6に記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
前記引出体は、
前記搬送部が前記搬送位置にないとき、前記引出体の前記本体への装填移動を規制する装填移動規制手段を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。
【請求項9】
前記装填移動規制手段は、
前記搬送部の前記搬送位置への揺動に連動して前記引出体の前記本体への装填移動の規制を解除可能となることを特徴とする請求項8に記載の紙幣処理装置。
【請求項10】
前記装填移動規制手段は、前記引出体の前記本体への装填移動を規制するストッパ部が、前記引出体のスライドを案内するスライドレールに設けられていることを特徴とする請求項9に記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−234490(P2012−234490A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104496(P2011−104496)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】