説明

紙幣収受装置およびセルフチェックアウト装置

【課題】 紙幣通路へと誤投入された硬貨が装置内部へと入り込むことを防止する。
【解決手段】 紙幣収受装置は、筐体11と、縦長のスリット状であり、かつ底面の少なくとも一部が筐体11の外側に向かって低くなる傾斜面18bをなす紙幣通路18aを筐体11の内側と外側との間に形成する通路形成部材18と、筐体11の内側に設けられ、紙幣通路18aを介して紙幣を搬送する搬送ユニットとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、紙幣収受装置およびセルフチェックアウト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣を収受する装置においては、筐体にスリット状の紙幣通路が設けられる。そして、種々のユニットのレイアウトの関係から、紙幣通路が縦長状態で配置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−20667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙幣通路が縦長状態であると、不慣れな使用者はこの紙幣通路を硬貨の投入口であると誤認する恐れがあった。
【0005】
紙幣を収受する装置においては、筐体にスリット状の紙幣通路が設けられる。厚み方向に湾曲し易い紙幣を紙幣通路の内部へとガイドするために、紙幣の厚み方向に相当する開口幅が入口付近でより大きくなるように紙幣通路が形成されることが一般的である。すなわち、紙幣通路を縦長とした場合には、紙幣通路の入口付近の開口幅は水平方向に拡大される。このように構成された紙幣通路は、むしろ硬貨の誤投入を容易にしてしまう。
【0006】
このような事情から、紙幣通路へと硬貨が誤投入されたとしても、この硬貨が装置内部へと入り込んでしまうことを防止できることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の紙幣収受装置は、筐体と、縦長のスリット状であり、かつ底面の少なくとも一部が前記筐体の外側に向かって低くなる傾斜面をなす紙幣通路を前記筐体の内側と外側との間に形成する通路形成部材と、前記筐体の内側に設けられ、前記紙幣通路を介して紙幣を搬送する搬送ユニットとを備える。
【0008】
別の実施形態のセルフチェックアウト装置は、購入者による操作に応じて購入商品を登録する登録ユニットと、筐体と、縦長のスリット状であり、かつ底面の少なくとも一部が前記筐体の外側に向かって低くなる傾斜面をなす紙幣通路を前記筐体の内側と外側との間に形成する通路形成部材と、前記筐体の内側に設けられ、前記登録ユニットにより登録された前記購入商品の代金として前記購入者により前記紙幣通路に投入された紙幣または前記購入者への釣り銭としての紙幣を前記紙幣通路を介して紙幣を搬送する搬送ユニットとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係るセルフチェックアウト装置の外観の斜視図。
【図2】一実施形態に係るセルフチェックアウト装置の構成を示すブロック図。
【図3】図1に示す本体の一部の外観を拡大して示した斜視図。
【図4】図2に示す本体の一部の断面図。
【図5】図2に示す本体の一部の変形構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。
【0011】
図1は本実施形態に係るセルフチェックアウト装置100の外観の斜視図である。なお本実施形態のセルフチェックアウト装置100は、セルフチェックアウト式の商品販売データ処理装置(POS端末装置)、あるいはセルフレジ装置とも呼ばれる。
【0012】
セルフチェックアウト装置100は、本体1および商品台2,3を含む。
【0013】
本体1は、筐体11、ディスプレイ12、スキャナ窓13および形成部材14,15,16,17,18,19を含む。
【0014】
筐体11は、それぞれ金属材料や樹脂材料からなる部材を組み合わせて、箱状に形成されてなる。
【0015】
ディスプレイ12は、筐体11の上部に固定されている。ディスプレイ12は、任意の画像を表示する。ディスプレイ12としては、例えば液晶表示デバイスが利用できる。ディスプレイ12の表示画面に重ねて、タッチパネルが設けられる場合もある。ディスプレイ12は例えば、買物客に操作方法を知らせるための案内画面、バーコードが付されていない商品の情報を入力するための情報入力画面、バーコード読取りに基づく情報を表示する読取情報表示画面、あるいは購入代金を支払う支払作業に際しての合計購入金額・預かり金額・釣り銭額などの精算画面などを表した画像を表示するために使用される。
【0016】
スキャナ窓13は、筐体11に形成した開口を透明な樹脂やガラスなどで覆って形成される。スキャナ窓13は、筐体11の内部に配置されるスキャナから発せられる光を筐体11の外部に出射するとともに、商品での反射光をスキャナに導く。
【0017】
形成部材14〜19は、それぞれ金属材料や樹脂材料からなり、筐体11に取り付けられる。形成部材14は、クレジットカードなどのカードを筐体11の内部に挿入するためのカード挿入口を形成する。形成部材15は、レシートを筐体11の外部へ排出するためのレシート発行口を形成する。形成部材16は、硬貨を筐体11の内部に投入するための硬貨投入口を形成する。形成部材17は、硬貨を筐体11の外部に排出するための硬貨排出口を形成する。形成部材18は、紙幣を筐体11の内部に投入するための紙幣投入口を形成する。形成部材19、紙幣を筐体11の外部に排出するための紙幣排出口を形成する。なおこれらの形成部材14〜19は、単一の部材によりなっても良いし、複数の部材を組み合わせてなっても良い。
【0018】
商品台2は、未登録の商品を載置するための台であり、筐体11の側面に固定されている。
【0019】
商品台3は、登録済みの商品を載置するための台であり、筐体11と並べて設置される。
【0020】
図2はセルフチェックアウト装置100の構成を示すブロック図である。なお、図2において図1と同一の部位には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0021】
図2に示すようにセルフチェックアウト装置100は、主制御部20、スキャナ21、カードリーダライタ22、プリンタ23、硬貨収受ユニット24、硬貨排出ユニット25、紙幣収受ユニット26、紙幣排出ユニット27、計量ユニット28および計量ユニット29を含む。これらのうちの主制御部20、スキャナ21、カードリーダライタ22、プリンタ23、硬貨収受ユニット24、硬貨排出ユニット25、紙幣収受ユニット26および紙幣排出ユニット27は、筐体11の内部に配置される。計量ユニット28は、商品台2の内部に配置される。計量ユニット29は、商品台3の内部に配置される。
【0022】
主制御部20は、スキャナ21、カードリーダライタ22、プリンタ23、硬貨収受ユニット24、硬貨排出ユニット25、紙幣収受ユニット26、紙幣排出ユニット27、計量ユニット28および計量ユニット29などがシステムバスなどを介して接続されている。また主制御部20は、CPU(central processing unit)、ROM(random-access memory)およびRAM(random-access memory)を含む。そして、主制御部20は、CPUがROMやRAMに記憶されたオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムに基づく処理を実行することにより、セルフチェックアウト装置100としての動作を実現するべく各部を制御する。
【0023】
スキャナ21は、買物客が手持ちでスキャナ窓13の前にかざした商品のバーコードをスキャナ窓13を介して光学的に読み取る。
【0024】
カードリーダライタ22は、カード挿入口へと買物客によって挿入されるカードに記録されたデータを読み取るとともに、上記のカードへデータを書き込む。カードは、ポイントカードや精算用のICカードなどである。
【0025】
プリンタ23は、レシートをプリントする。プリンタ23によりプリントされたレシートは、形成部材15により形成されたレシート発行口から筐体11の外部へと排出される。
【0026】
硬貨収受ユニット24は、形成部材16により形成された硬貨投入口へと買物客によって投入される硬貨に関し、真偽のチェック、種類の判別、あるいは計数などの処理を行う。
【0027】
硬貨排出ユニット25は、買物客へ釣り銭などとして返却する硬貨を、形成部材17により形成された硬貨排出口から排出する。
【0028】
紙幣収受ユニット26は、形成部材18により形成された紙幣投入口に投入された紙幣を搬送して取り込み、この紙幣に関し、真偽のチェック、種類の判別、あるいは計数などの処理を行う。このため紙幣収受ユニット26は、紙幣投入口に投入された紙幣を筐体11の内部へと搬送するために、ローラやモータなどを含んだ搬送ユニットを有している。
【0029】
紙幣排出ユニット27は、買物客へ釣り銭などとして返却する紙幣を、形成部材19により形成された紙幣排出口から排出する。このため紙幣排出ユニット27は、紙幣を筐体11の外部へと搬送するために、ローラやモータなどを含んだ搬送ユニットを有している。
【0030】
計量ユニット28は、商品台2に載置される商品の重量を計る。すなわち計量ユニット28は、未精算の商品の重量を計る。
【0031】
計量ユニット29は、商品台3に載置される商品の重量を計る。すなわち計量ユニット29は、精算済みの商品の重量を計る。
【0032】
図3は本体1の一部の外観を拡大して示した斜視図である。図4は本体1の一部の断面図である。なお、図3および図4において図1と同一部分には同一の符号を付している。
【0033】
図3および図4に示すように形成部材18は、縦長のスリット状の紙幣通路18aを形成しており、この紙幣通路18aの筐体11の外側に位置する開口が紙幣投入口となっている。紙幣収受ユニット26は、紙幣通路18aの奥側(図4においては右側)に配置されていて、紙幣通路18aへと買物客により投入された紙幣を紙幣通路18aを介して搬送する。
【0034】
一方、形成部材18は、紙幣投入口の開口面積を増大するように、3つの傾斜面18b,18c,18dを有している。
【0035】
傾斜面18bは、形成部材18において紙幣通路18aの底面となる部分に形成されている。傾斜面18bは、筐体11の外側に向かって低くなっている。
【0036】
傾斜面18c,18dは、形成部材18において紙幣通路18aの側壁となる部分に形成されている。かくして傾斜面18c,18dは、紙幣通路18aの水平方向についての開口幅を増大させている。
【0037】
かくして以上のように構成されたセルフチェックアウト装置100においては、買物客が購入商品を手持ちでスキャナ窓13の前にかざすことによって当該購入商品のバーコードをスキャナ21に読み取らせることによって、購入商品の登録が行われる。そして、全ての購入商品を登録し終えたのちに買物客は、代金の支払いのために紙幣を紙幣投入口へ投入し、あるいは硬貨を硬貨投入口へ投入する。
【0038】
紙幣投入口へと紙幣を投入しようとするときに買物客は、紙幣の短辺を縦に向けた状態で、紙幣の短辺の一方を紙幣投入口から紙幣通路18aへと差し込む。このとき、紙幣がその厚み方向に湾曲することにより紙幣の先端が紙幣通路18aの方向からずれた場合に、その紙幣の先端を紙幣通路18aへと導くように傾斜面18c,18dが作用する。これにより、紙幣投入口からの紙幣の投入が容易となる。
【0039】
ところで、紙幣投入口が縦長の開口であるために、セルフチェックアウト装置100の利用に不慣れな買物客の場合には、紙幣投入口が硬貨投入口であると勘違いし、紙幣投入口へと硬貨を投入してしまうことがあり得る。そしてこの場合、紙幣投入口が縦長の開口であるために、硬貨も立てた状態で紙幣投入口へと投入されることになる。
【0040】
このように紙幣投入口へと誤投入された硬貨は、傾斜面18bに沿って自重によって筐体11の外部へと排出される。これにより、紙幣投入口へと誤投入された硬貨が筐体11の内部へと入り込んでしまうことを防止できる。
【0041】
ところで、紙幣投入口へと誤投入される硬貨は上述のように立てられた状態とされるから、傾斜面18bには硬貨の周面が接することになり、硬貨は傾斜面18bを転がり落ちることになる。このため、硬貨が筐体11の外部へと確実に排出されるとともに、傾斜面18bの傾斜角度はそれほど大きくする必要がない。そして傾斜面18bの傾斜角度が小さければ、紙幣通路18aから排出される際の硬貨の速度は小さくなり、図4に示すような水平面11aが傾斜面18bに近接して形成されていれば、排出された硬貨をこの水平面11aに留めることができる。
【0042】
ただし、硬貨の転がり方によっては、惰性によって水平面11aから転がり落ちてしまうおそれがないとは言えない。そこで、排出された硬貨が床面などに落下してしまうことを確実に防ぐために、図5に示すように受け皿11bを傾斜面18bに近接して形成しても良い。このようにすれば、排出された硬貨を受け皿11bで確実に受け止めることが可能である。なお、図5では筐体11の一部を屈曲させて受け皿11bを形成しているが、受け皿を形成した筐体11とは別体の部材を図5の受け皿11bの設置位置に設けても良い。また受け皿は、形成部材18と一体的に形成されても良い。
【0043】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0044】
セルフチェックアウト装置に限らず、自動釣り銭機や自動販売機などの金銭収受を行うたの如何なる装置においても上記の実施形態と同様な実施が可能である。
【0045】
紙幣排出ユニット27により紙幣を排出するための紙幣通路において上記の実施形態と同様な実施が可能である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…本体、2,3…商品台、11…筐体、11a…水平面、11b…受け皿、12…ディスプレイ、13…スキャナ窓、14,15,16,17,18,19…形成部材、18a…紙幣通路、18b,18c,18d…傾斜面、20…主制御部、21…スキャナ、22…カードリーダライタ、23…プリンタ、24…硬貨収受ユニット、25…硬貨排出ユニット、26…紙幣収受ユニット、27…紙幣排出ユニット、28,29…計量ユニット、100…セルフチェックアウト装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
縦長のスリット状であり、かつ底面の少なくとも一部が前記筐体の外側に向かって低くなる傾斜面をなす紙幣通路を前記筐体の内側と外側との間に形成する通路形成部材と、
前記筐体の内側に設けられ、前記紙幣通路を介して紙幣を搬送する搬送ユニットとを具備したことを特徴とする紙幣収受装置。
【請求項2】
前記通路形成部材は、前記紙幣通路における前記筐体の外側に位置する開口まで達するように前記傾斜面を形成することを特徴とする請求項1に記載の紙幣収受装置。
【請求項3】
前記紙幣通路における前記筐体の外側に位置する開口の近辺に設けられ、前記傾斜面により前記筐体の外側に転がる硬貨を受ける受け皿をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の紙幣収受装置。
【請求項4】
購入者による操作に応じて購入商品を登録する登録ユニットと、
筐体と、
縦長のスリット状であり、かつ底面の少なくとも一部が前記筐体の外側に向かって低くなる傾斜面をなす紙幣通路を前記筐体の内側と外側との間に形成する通路形成部材と、
前記筐体の内側に設けられ、前記登録ユニットにより登録された前記購入商品の代金として前記購入者により前記紙幣通路に投入された紙幣または前記購入者への釣り銭としての紙幣を前記紙幣通路を介して紙幣を搬送する搬送ユニットとを具備したことを特徴とするセルフチェックアウト装置。
【請求項5】
前記通路形成部材は、前記紙幣通路における前記筐体の外側に位置する開口まで達するように前記傾斜面を形成することを特徴とする請求項4に記載のセルフチェックアウト装置。
【請求項6】
前記紙幣通路における前記筐体の外側に位置する開口の近辺に設けられ、前記傾斜面により前記筐体の外側に転がる硬貨を受ける受け皿をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のセルフチェックアウト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33005(P2012−33005A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172129(P2010−172129)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】