説明

紙幣収納装置

【課題】 紙幣収納装置として省スペース化を図り、かつ利用客側のお金である一次保留紙幣と、駅(局)側のお金となった二次保留紙幣との区別を明確にする。
【解決手段】 一次保留部(24)と二次保留部(28)とを縦方向に配列する。一次保留部(24)に保留されている一次保留紙幣(C1)は、プッシャ(50)の下降により金庫(32)内の二次保留部(28)に押込められ保留される。二次保留部(28)に保留されている二次保留紙幣(C2)は、次の利用客の紙幣挿入により、プッシャ(50)が下降動作し紙幣収納部(30)内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動券売機、自動販売機等における紙幣処理装置に関し、特に省スペース化を図れるようにした紙幣の収納装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動券売機等において、紙幣が挿入された場合の紙幣収納装置としては、図8に概略的に示されている。この紙幣収納装置(1)は、挿入された紙幣(C1)を一時的に保留する一次保留部(2)と、該一次保留部(2)から移送されてきた紙幣を一時的に保留する二次保留部(3)と、該二次保留部(3)から完全に紙幣を収納する紙幣収納部である金庫(4)と、を備えている。
【0003】前記一次保留部(2)に保留される一次保留紙幣(C1)は、利用客が自動券売機に紙幣を挿入しただけであって、利用客が接客処理をせずに取消しキーを押下したときは、該一次保留紙幣(C1)を利用客に返却するために一時的に保留されるものである。いわゆる一次保留紙幣(C1)は、未だ利用客と駅(局)側との乗車券購入のための取り引きが成立していない状態であり利用客の紙幣である。
【0004】二次保留部(3)に保留される二次保留紙幣(C2)は、利用客が自動券売機に紙幣を挿入した後に、接客処理を行ったとき、前記一次保留紙幣(C1)が二次保留部(3)に移送されて保留されるものである。すなわち、二次保留部(3)に保留される二次保留紙幣(C2)は、利用客が接客処理を行い、乗車券の発行および釣銭の放出がなされた場合、利用客と駅側との乗車券購入のための取り引きが成立した状態であって、この紙幣は駅側のお金であることを意味するものである。しかし、乗車券の発行および釣銭の放出後に、利用客から釣銭が少ないなどという苦情が出た場合、利用客が入れた紙幣はこの紙幣であると確認するために取り引き終了後であっても一時的に二次保留部(3)に紙幣を保管しておく必要がある。従って、この二次保留紙幣(C2)は、一次保留紙幣(C1)と異なり返却はされない。
【0005】二次保留部(3)に保留されている紙幣(C2)は、次の利用客が紙幣を投入したとき、該投入紙幣をセンサにより検知して、この検知信号に基づき紙幣収納部である金庫(4)内に移送される。
【0006】投入された紙幣は、利用客側のお金であるか、駅側のお金であるかを明確に区別しておく必要があり、上述のように投入紙幣を一次側保留部(2)と二次側保留部(3)とに保留するようにしている。
【0007】しかし、図8に示されているように従来の一次保留部(2)と、二次保留部(3)とは直線状にあり、あまり明確な区分けがされていなかった。また、金庫(4)は、二次保留部(3)の下部にあり、一次保留部(2)と、二次保留部(3)と、金庫(4)との全体の紙幣収納装置としてスペースを大きくとってしまい、自動券売機の小型化が図れないという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記点に着目してなされたものであって、省スペース化を図るとともに、投入された紙幣の一次側保留および二次側保留を明確に区別するようにした紙幣収納装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、利用客が挿入した紙幣を返却可能に一時的に保留するための一次保留部(24)と;前記一次保留部(24)の下方に位置し、上下動可能な上部の仕切り板(64)および下部の支持板(66)を有し、該仕切り板(64)と支持板(66)間に紙幣を収納する紙幣収納部(30)を有し、前記仕切り板(64)の上部に紙幣を一時的に保留する二次保留部(28)を有し、上部に開口部(33)を有する箱状の金庫(32)と;前記一次保留部(24)の上方に位置し、前記一次保留部(24)に保留された一次保留紙幣(C1)、または前記二次保留部(28)に保留された二次保留紙幣(C2)を下方に押込むためのプッシャ(50)を有するプッシャ機構(26)と;前記二次保留部(28)に保管されている二次保留紙幣(C2)を前記紙幣収納部(30)に押込む際に、前記仕切り板(64)を固定するためのストッパ(82)と;を備え、前記一次保留部(24)と二次保留部(28)とを縦方向に配列した紙幣収納装置とした。
【0010】
【作用】一次保留部(24)に保留されている一次保留紙幣(C1)は、プッシャ(50)の下降により金庫(32)内の二次保留部(28)に保留される。二次保留部(28)に保留されている二次保留紙幣(C2)は、次の利用客の紙幣挿入により、プッシャ(50)が下降動作し紙幣収納部(30)内に押込められるようにして収納される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の態様について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は自動券売機または自動販売機(10)等における紙幣の流れを示した概略図であって、挿入口(12)に挿入された紙幣(C)は、紙幣鑑別機(14)により紙幣の真偽を識別された後、1万円収納装置(16)、5千円収納装置(18)または千円収納装置(20)にそれぞれ振分けられ収納される。釣り札受取口(22)には、取消しボタンの操作により挿入された紙幣が返却される他、高額紙幣を挿入した場合の釣り札が排出される。
【0012】図2は図1に示した各紙幣収納装置のうち、一例として千円収納装置(20)を具体的に示した図であって、該千円収納装置(20)は、挿入された千円札からなる紙幣(C)を一時的に保留する一次保留部(24)と、該一次保留部(24)の上部に配置されたプッシャ機構(26)と、駅(局)側のお金となる二次保留部(28)および紙幣収納部(30)を有する箱状の金庫(32)とを有している。
【0013】前記一次保留部(24)は、利用客が挿入した紙幣を一時的に保留するものであって、利用客が未だ接客処理を行っていない場合に紙幣を保留するところである。従って、この一次保留部(24)に保留される一次保留紙幣(C1)は、利用客のお金であって、未だ駅側のお金ではなく、利用客が取消しボタンあるいは返却ボタンを操作することにより返却される。前記一次保留部(24)には、上下のベルト(B1,B2)を有する搬送・返却機構(34)が配置されている。(36)は駆動ローラであって、該駆動ローラ(36)とピンチローラ(38)との間に前記下ベルト(B2)を巻回している。(40,42)は該下ベルト(B2)が弛まないようにするためのテンションローラである。(44)は押えローラであって、小径のピンチローラ(46)との間に前記上ベルト(B1)が掛け渡されている。前記上ベルト(B1)と下ベルト(B2)との間に紙幣が挟まれて、前記駆動ローラ(36)が正転の場合は、紙幣は一次保留部(24)に搬送されて保留される。前記駆動ローラ(36)が逆転した場合は、一次保留紙幣(C1)は利用客に返却される。
【0014】前記プッシャ機構(26)は、図3に示されているように、上側に位置する固定部材(48)と、下側に位置し上下に可動するプッシャ(50)と、固定部材(48)およびプッシャ(50)間に設けられて前記プッシャ(50)を上下動させるための上リンク(52)および下リンク(54)とから成っている。上リンク(52)と下リンク(54)とは、各一端側においてピン(56)により回転可能に連結されており、伸縮可能に前記ピン(56)を中心にして折れ曲がるようになっている。一方の上リンク(52)の他端は、前記固定部材(48)に設けられた駆動軸(58)に連結され回転可能となっている。該駆動軸(58)は、図2に示されているようにモータ等の駆動手段(M)に連結されている。一方の下リンク(54)の他端は、前記プッシャ(50)にピン(60)を介して回転可能に連結されている。他方の上リンク(52)の他端は、前記固定部材(48)に可動ピン(61a)を介して連結されている。また、他方の下リンク(54)は、前記プッシャ(50)に可動ピン(61b)を介して連結されている。両可動ピン(61a,61b)は、前記固定部材(48)およびプッシャ(50)に形成された長孔からなるガイド溝(62a,62b)に沿って移動可能となっている。前記上プッシャ(52)および下プッシャ(54)から成るリンク機構は、図3において右から見ると、左右一対設けられている。左右の上リンク(52,52)は上連結ピン(53)により連結され、左右の下リンク(54,54)は下連結ピン(55)により連結され、全体としてリンク機構は蛇腹状に伸縮可能となっている。
【0015】図2に戻って前記金庫(32)を説明すると、前記金庫(32)は、前記一次保留紙幣(C1)を駅側に一時的に保留して前記二次保留部(28)と紙幣収納部(30)とを仕切るための仕切り板(64)と、収納部(30)に収納された紙幣を支持する支持板(66)とを有している。前記仕切り板(64)は、上面から見るとフォーク形状となっており、基部(68)において垂直に立てられたガイドバー(70)に対して上下動できるように連結されている。前記支持板(66)は、上面から見ると先端部側において二股形状をしており、基部(72)において前記ガイドバー(70)に対して上下動できるように連結されている。前記仕切り板(64)の上部が前記二次保留部(28)であって、該二次保留部(28)に保留された二次保留紙幣(C2)は、駅側のお金となる。
【0016】(74)は紙幣繰出し機構であって、該紙幣繰出し機構(74)は、駆動ローラ(76)と、紙幣を一枚づつ繰出すための繰出しローラ(78)と、前記駆動ローラ(76)とで繰出された紙幣を排出するため押えローラ(80)からなっている。前記繰出しローラ(78)は、前記支持板(66)の二股部に位置できるようになっており、紙幣収納部(30)に収納された収納紙幣(C3)を釣銭として出す出す際に、収納紙幣(C3)を下から一枚づつ送り出すようになっており、形状としては、例えばカム形状となっている(図では円形)。
【0017】次に、図4〜図7に基づき挿入された紙幣を収納するための動作について説明する。
【0018】図4は、利用客が自動券売機(10)等に紙幣を挿入し、接客処理を未だ行っていない状態の紙幣の位置関係を示している。このように接客が終了してない場合の挿入された紙幣は、一次保留部(24)に一次保留紙幣(C1)として一時的に保留される。この一次保留部(24)にある一次保留紙幣(C1)は、未だ客側のお金であり、返却可能なお金である。このように一次保留部(24)に紙幣が保留されている状態では、金庫(32)内の二次保留部(28)には紙幣がない状態であり、また、プッシャ(50)は上方に位置している状態である。
【0019】利用客の接客処理、すなわち、利用客が乗車券の購入ボタンを操作し、乗車券および釣銭が放出されると、乗車券の購入取り引きが終了したとして、プッシャ(50)は、図5に示されるようにリンク機構の伸びにより下降し、金庫(32)の開口部(33)内に進入し、一次保留紙幣(C1)とともに、紙幣収納部(30)を押下げる。この押下げによって、仕切り板(64)および支持板(66)は、図2R>2に示すガイドバー(70)に沿って下方に移動する。このようにして一次保留紙幣(C1)は、金庫(32)内の仕切り板(64)の上部に位置し二次保留部(28)に移行される。
【0020】図6は、リンク機構が縮んでプッシャ(50)が上方に移動し、これに伴い仕切り板(64)および支持板(66)も上方に移動し、挿入された紙幣が二次保留部(28)に二次保留紙幣(C2)として保留された状態を示している。この状態では二次保留紙幣(C2)は、金庫(32)内に入った状態であり、利用客に返却されることはなく、駅側のお金となる。従って、図4において示した一次側保留紙幣(C1)と、二次保留紙幣(C2)とは、明確に区別される。利用客が接客処理の終了後に、例えば釣銭が足りないなどと苦情を駅員に言ってきた場合、利用客が挿入した紙幣が二次保留部(28)に保留されているので、挿入金額を確認することができる。
【0021】図6に示した状態において、次の利用客が、紙幣を自動券売機(10)等に挿入した場合、該紙幣の投入をセンサ等で検知して図7に示すようにリンク機構を作動させると同時に、仕切り板(64)が下方に移動しないようにストッパ(82)が作動する。該ストッパ(82)としては、電磁ソレノイドを用いてプランジャを出没可能にすることによりプランジャの先端が仕切り板(64)に当接することにより、該仕切り板(64)が動かないように固定するようにしてもよく、ストッパ(82)自体が旋回することにより仕切り板(64)を固定するようにしてもよい。従って、二次保留紙幣(C2)は、仕切り板(64)のフォーク状のスリット(65)を介して紙幣収納部(30)内に押込まれ、このとき、支持板(66)のみが図2に示すガイドバー(70)に沿って下方に移動する。二次保留紙幣(C2)を紙幣収納部(30)内に収納し終わると、二次保留紙幣(C2)は収納紙幣(C3)となり、その後リンク機構は縮んでプッシャ(50)および支持板(66)は上方に移動する。プッシャ(50)が完全に上方に移動し終わった後に、前述したように次の利用客が挿入した紙幣は、図4に示すように一次保留部(24)に保留される。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、紙幣の保留部を縦列状態に配置し、紙幣の二次保留部を金庫内に設けるようにしたので、紙幣収納装置全体として、コンパクトなものとなり、省スペースを図ることができる。
【0023】また、紙幣の一次保留と、二次保留とを完全に分離することができ、二次保留にある紙幣を誤って排出してしまうということが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動券売機または自動販売機等における紙幣の流れを示した概略図である。
【図2】本発明に係る紙幣収納装置の概略的断面図である。
【図3】プッシャ機構を詳細に示した図である。
【図4】挿入された紙幣が一次保留部に保留された状態の側面から見た紙幣収納装置の概略断面図である。
【図5】一次保留紙幣がプッシャにより二次保留部に押込まれる状態を示した紙幣収納装置の概略的断面作用図である。
【図6】一次保留紙幣が二次保留部に二次保留紙幣として保留された状態を示した紙幣収納装置の概略的断面作用図である。
【図7】二次保留紙幣がプッシャにより紙幣収納部に押込まれる状態を示した紙幣収納装置の概略的断面作用図である。
【図8】従来における紙幣収納装置を示した概略図である。
【符号の説明】
24 一次保留部
26 プッシャ機構
28 二次保留部
30 紙幣収納部
32 金庫
33 開口部
50 プッシャ
52 上リンク
54 下リンク
64 仕切り板
66 支持板
65 スリット
70 ガイドバー
82 ストッパ
C1 一次保留紙幣
C2 二次保留紙幣
C3 収納紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】 利用客が挿入した紙幣を返却可能に一時的に保留するための一次保留部(24)と、前記一次保留部(24)の下方に位置し、上下動可能な上部の仕切り板(64)および下部の支持板(66)を有し、該仕切り板(64)と支持板(66)間に紙幣を収納する紙幣収納部(30)を有し、前記仕切り板(64)の上部に紙幣を一時的に保留する二次保留部(28)を有し、上部に開口部(33)を有する箱状の金庫(32)と、前記一次保留部(24)の上方に位置し、前記一次保留部(24)に保留された一次保留紙幣(C1)、または前記二次保留部(28)に保留された二次保留紙幣(C2)を下方に押込むためのプッシャ(50)を有するプッシャ機構(26)と、前記二次保留部(28)に保管されている二次保留紙幣(C2)を前記紙幣収納部(30)に押込む際に、前記仕切り板(64)を固定するためのストッパ(82)と、を備え、前記一次保留部(24)と二次保留部(28)とを縦方向に配列したことを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項2】 前記プッシャ機構(26)のプッシャ(50)は、伸縮可能なリンク機構により上下動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の紙幣収納装置。
【請求項3】 前記仕切り板(64)および前記支持板(66)は、垂直に支持されたガイドバー(70)に沿って上下動するように連結されていることを特徴とする請求項1に記載の紙幣収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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