紙幣識別装置
【課題】高精度の識別能力を有する紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】コイル27とコンデンサ28が並列接続された並列接続体29と、この並列接続体29に接続された発振器38と、この発振器38の出力が一方の入力に接続された位相比較器39と、この位相比較器39の出力が接続されたループフィルタ42と、このループフィルタ42の出力が識別部61の入力との間に接続されたループアンプ60と、このループアンプ60の出力と位相比較器39の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器43とを有し、並列接続体29を形成するコイル27を紙幣2に近接するように設けたものである。このような構成により、初期の目的を達成することができる。
【解決手段】コイル27とコンデンサ28が並列接続された並列接続体29と、この並列接続体29に接続された発振器38と、この発振器38の出力が一方の入力に接続された位相比較器39と、この位相比較器39の出力が接続されたループフィルタ42と、このループフィルタ42の出力が識別部61の入力との間に接続されたループアンプ60と、このループアンプ60の出力と位相比較器39の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器43とを有し、並列接続体29を形成するコイル27を紙幣2に近接するように設けたものである。このような構成により、初期の目的を達成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の真偽等を識別する紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動販売機や券売機などで販売される商品の多様化と高額化に伴い、千円紙幣以上の高額紙幣を使用できる紙幣識別装置が広く使用されるようになってきた。特に高額紙幣を使用する機器が一般的になりつつある。一方、複写機やカラープリンターなどOA機器の進歩に伴い、これら高精度の複写装置を用いた偽造紙幣が行使される犯罪も増加傾向にあり、紙幣識別装置に対しては識別能力を一層向上させて犯罪を未然に防止することが求められている。
【0003】
以下、従来の紙幣識別装置について説明する。図7は従来の紙幣識別装置のブロック図である。図7において、1は紙幣2の挿入口であり、この挿入口1には、紙幣2の通路3が連結して設けられている。4はプーリ5とタイミングベルト6とで構成された搬送手段であり、通路3上に設けられるとともに、紙幣2を搬送するものである。
【0004】
7は、MR(マグネチックレジスタンス)素子で形成されたセンサであり、通路3の壁面に設けられている。このMR素子7の出力は増幅器8に接続されており、その出力はピークホールド回路9を介して識別部10に接続されている。また、この識別部10の出力は、出力端子11に接続されている。12は、搬送手段4を駆動する駆動部であり、識別部10からの出力で制御されるものである。
【0005】
以上のように構成された紙幣識別装置について、以下にその動作を説明する。挿入口1から挿入された紙幣2は通路3に導かれる。そして、この紙幣2は、搬送手段4により搬送される。このとき、通路3の壁面に設けられたMR素子7により、紙幣2に付着された磁気情報のレベルが検出される。
【0006】
このMR素子7により検出された磁気情報は、増幅器8で増幅される。こうして増幅された磁気情報はピークホールド回路9でピーク情報が抽出されて、識別し易い形態に変換される。そして、識別部10内のメモリに格納された基準情報と比較され、挿入された紙幣2の真偽と金種が判別される。判別された情報は、出力端子11から出力される。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−85612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来の紙幣識別装置は、MR素子7で紙幣2に付着された磁気のレベルを検出しているので、その磁気レベルの微小な変化を読み取ることはできなかった。即ち、近年の複写機やカラープリンターなどOA機器の進歩に伴い、高精度に偽造された紙幣を磁気レベルの変化では識別することは困難であった。
【0009】
そこで本発明は、高精度の識別能力を有する紙幣識別装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そしてこの目的を達成するために本発明の紙幣識別装置の特徴抽出部は、インダクタンス素子とキャパシタンス素子が並列接続された並列接続体と、この並列接続体に接続された発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続された位相比較器と、この位相比較器の出力が接続されたループフィルタと、このループフィルタの出力と前記識別部との間に接続されたループアンプと、このループアンプの出力と前記位相比較器の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器とを有し、前記並列接続体を形成する前記インダクタンス素子或いは前記キャパシタンス素子の内、少なくとも何れか一方の素子が紙幣に近接するように設けられたものである。この構成により、初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明の特徴抽出部は、インダクタンス素子とキャパシタンス素子が並列接続された並列接続体と、この並列接続体に接続された発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続された位相比較器と、この位相比較器の出力が接続されたループフィルタと、このループフィルタの出力と前記識別部との間に接続されたループアンプと、このループアンプの出力と前記位相比較器の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器とを有し、前記並列接続体を形成する前記インダクタンス素子或いは前記キャパシタンス素子の内、少なくとも何れか一方の素子が紙幣に近接するように設けられたものである。
【0012】
従って、紙幣に付着された磁気情報を並列接続体で形成された発振器のリアクタンスの変化として捕らえ、このリアクタンスの変化に応じた周波数を発振器で発振させることにより、発振周波数を変化させ、この変化した発振周波数の位相の変化と、前記電圧制御発振器の発振周波数と位相比較することにより、紙幣の磁気情報の微小な位相のレベルでの変化を電圧変化分として検出することができる。即ち、高精度の紙幣識別が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態における紙幣識別装置のブロック図である。図1において、21は紙幣2の挿入口であり、この挿入口21には、紙幣2の通路23が連結して設けられている。24は、プーリ25にタイミングベルト26が架けられて構成された搬送手段であり、通路23上に設けられるとともに、紙幣2を搬送するものである。
【0014】
29は、インダクタンス素子としてのコイル27と、キャパシタンス素子としてのコンデンサ28が並列接続された並列接続体である。この並列接続体29を形成するコイル27が通路23の壁面に設けられて、紙幣2の磁気情報の特徴を抽出するセンサ27aを形成している。コイル27はフェライトに巻かれ、図2に示すように並列接続されたコンデンサ28とで、略8MHzの共振器(並列接続体29)29aを形成している。
【0015】
並列接続体29の一方は、結合コンデンサ30を介してトランジスタ31のベースに接続されるとともに、他方はグランドに接続されている。32は電源であり、トランジスタ31のコレクタに接続されるとともに、コンデンサ33を介してグランドに接続されている。また、トランジスタ31のベースとエミッタとの間にはコンデンサ34が接続されている。また、トランジスタ31のエミッタとグランドとの間には抵抗35とコンデンサ36が接続されている。37は、抵抗35とトランジスタ31のエミッタの接続点から導出された出力端子であり、いわゆるコルピッツ型の発振器38を形成している。
【0016】
この発振器38の出力端子37は、図1に示すように、位相比較器39の一方の入力に接続されている。この位相比較器39の出力は、カットオフ周波数3kHzのループフィルタ42とループアンプ60を介して、電圧制御発振器43の制御電圧入力端子45(後述)に接続されている。また、この電圧制御発振器43の出力は、位相比較器39の他方の入力に接続されている。
【0017】
次に、電圧制御発振器43について、図3に基づいて説明する。図3において、45は制御電圧入力端子であり、この制御電圧入力端子45と接続点46との間には、抵抗47が接続されている。また、この接続点46とグランドとの間には、バリキャップダイオード48とインダクタ49の並列接続回路50が接続されている。
【0018】
接続点46からは、結合コンデンサ51を介してトランジスタ52のベースに接続されている。32は電源であり、トランジスタ52のコレクタに接続されるとともに、コンデンサ53を介してグランドに接続されている。また、このトランジスタ52のベースとエミッタとの間にはコンデンサ54が接続されている。また、トランジスタ52のエミッタとグランドとの間には抵抗55とコンデンサ56が接続されている。57は、トランジスタ52のエミッタと抵抗55の接続点から導出された出力端子であり、位相比較器39の他方の入力に接続されて、いわゆるコルピッツ型の電圧制御発振器43を構成している。以上のように構成された制御電圧入力端子45から入力電圧により、並列接続回路50の共振周波数が8MHzを中心に略100Hz変化するものである。従って、電圧制御発振器43から出力される周波数は、8MHzを中心に100Hz変化するものである。
【0019】
図1に示すループアンプ60の出力は、識別部61に接続されている。この識別部61の出力は、出力端子62に接続されている。63は、搬送手段24を駆動する駆動部であり、識別部61からの出力で制御されるものである。この搬送手段24の搬送速度は、1秒間に紙幣1枚を搬送する一定の速度に設定している。なお、並列接続体29と発振器38と位相比較器39とループフィルタ42と電圧制御発振器43とループアンプ60とで紙幣2の特徴を抽出する特徴抽出部を構成している。
【0020】
以上のように構成された紙幣識別装置について、以下にその動作を説明する。挿入口21から挿入された紙幣2は、通路23に導かれる。そして、この紙幣2は、搬送手段24により搬送される。このとき、通路23の壁面に設けられたセンサ27aは、紙幣2に付着された磁気情報により、コイル27のインダクタンス値が変化する。インダクタンス値が変化すると、このコイル27と並列に接続されたコンデンサ28とで構成される並列接続体29(共振器29a)の共振周波数が変化する。即ち、発振器38の発振周波数が紙幣2に付着された磁気情報に応じて変化することになる。
【0021】
このように、紙幣2が搬送されると、この紙幣2に付着された磁気情報が変化して位相比較器39の一方の入力に供給される。また、位相比較器39の他方の入力には電圧制御発振器43の出力が供給されているので、この変化した発振周波数の位相の変化と、電圧制御発振器43の発振周波数と位相比較することにより、紙幣2の磁気情報の微小な位相のレベルでの変化を電圧の変化分として検出することができる。従って、高精度の紙幣2の磁気情報を検出することができる。このことにより、高精度の紙幣2の真偽情報と金種情報を高精度に検出することができる。
【0022】
この位相比較器39から出力される紙幣2の特徴情報は、識別部61に送られる。そして、この識別部61で紙幣の真偽と金種が識別される。位相の変化による電圧の変化分は、0.15mm以下の磁気情報を区別することができる。また、このセンサ27aではアルミ(アルミニウム)の検出をすることもできる。従って、紙幣2の真偽や金種識別の特徴情報を識別部61に提供することができるものである。
【0023】
この識別部61では、メモリに格納された紙幣の基準情報と比較されて、挿入された紙幣2の真偽と金種が判別される。判別された情報は、出力端子62から出力される。
【0024】
図4は、紙幣2の平面図である。この紙幣2を搬送手段24で搬送することにより、センサ27aで紙幣2の長手方向を走査して紙幣2の磁気情報を抽出するわけである。
【0025】
(実施の形態2)
実施の形態1では、センサ27aとして、コイル27を用いたが、実施の形態2は、センサ27aとしてコンデンサ28bを用いたものである。何れにしても、共振器29b(実施の形態1の共振器29aに該当する)の共振周波数を変化するようにして、発振器38a(実施の形態1の発振器38に該当する)の発振周波数を変えるものである。このことにより、紙幣の種類によっては、より精密にその特徴を抽出することができる。
【0026】
図5は、紙幣74の平面図であり、この紙幣74はアルミ71に磁性体72が一定間隔おいて複数個塗布されたセキュリティ線73が紙幣74の短手方向に設けられたものである。このような紙幣74を識別する場合において、実施の形態1の識別装置でも識別することができる。しかし、紙幣74に含まれたアルミを検出するには、電界の変化を検出できるキャパシタンス素子で抽出することが望ましい。
【0027】
なお、紙幣に誘電体が付着された場合には、インダクタンス素子で検出するより、キャパシタンス素子で検出することが望ましい。
【0028】
即ち、図6に示すように、通路23の上方と下方に電極75a,75bを設け、この電極75a,75b間を走行する紙幣74のセキュリティ線73をコンデンサ28bの容量変化で抽出するものである。76はコンデンサ28bと並列接続されるインダクタである。
【0029】
また、この電極75a,75bとは、図5の点線で示すように、紙幣74の短手方向の両端に配置しても良い。この場合、セキュリティ線73全体を含むコンデンサ28bの変化を検出することができるので、特定の位置にのみ設けられたセンサ27aに比べて安定した検出ができる。
【0030】
(実施の形態3)
実施の形態1,2では、発振器38をコルピッツ型とし、並列接続体29に片側をグランドに接続して用いたが、実施の形態3では、発振器38を2つ用いて差動タイプの発振器とし、これら発振器の平衡出力間にコイル27とコンデンサ28からなる並列接続体29を接続した発振回路としている。
【0031】
このように、発振器38を2つ用いて差動タイプの発振器とすることにより、発振動作が安定する。また、これら発振器の平衡出力間には、コイル27とコンデンサ28からなる並列接続体29を接続しているので、コイル27およびコンデンサ28は、共にグランドに接続されることがない。
【0032】
これにより、コイル27およびコンデンサ28には不要な浮遊容量をなくすことができ、並列接続体29として損失を小さくできる。つまり、コイル27のインダクタンスあるいはコンデンサ28の容量の微小な変化による発振回路の周波数感度を高めることができる。
【0033】
また、このように2つの発振器38を用いた平衡タイプの発振器と並列接続体29により発振回路を構成しているので、紙幣識別装置以外からの制御ノイズ等に対しても妨害を受けにくい紙幣識別装置を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる紙幣識別装置は、高精度に紙幣の真偽と金種を識別することができるので、自動販売機や券売機等の各種自動サービス機器に使用される紙幣識別装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における紙幣識別装置のブロック図
【図2】同、センサと発振器の回路図
【図3】同、電圧制御発振器の回路図
【図4】紙幣の平面図
【図5】本発明の実施の形態2における紙幣の平面図
【図6】同、紙幣識別装置の要部断面図
【図7】従来の紙幣識別装置のブロック図
【符号の説明】
【0036】
2 紙幣
21 挿入口
23 通路
24 搬送手段
27 コイル
27a センサ
28 コンデンサ
29 並列接続体
38 発振器
39 位相比較器
42 ループフィルタ
43 電圧制御発振器
60 ループアンプ
61 識別部
62 出力端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の真偽等を識別する紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動販売機や券売機などで販売される商品の多様化と高額化に伴い、千円紙幣以上の高額紙幣を使用できる紙幣識別装置が広く使用されるようになってきた。特に高額紙幣を使用する機器が一般的になりつつある。一方、複写機やカラープリンターなどOA機器の進歩に伴い、これら高精度の複写装置を用いた偽造紙幣が行使される犯罪も増加傾向にあり、紙幣識別装置に対しては識別能力を一層向上させて犯罪を未然に防止することが求められている。
【0003】
以下、従来の紙幣識別装置について説明する。図7は従来の紙幣識別装置のブロック図である。図7において、1は紙幣2の挿入口であり、この挿入口1には、紙幣2の通路3が連結して設けられている。4はプーリ5とタイミングベルト6とで構成された搬送手段であり、通路3上に設けられるとともに、紙幣2を搬送するものである。
【0004】
7は、MR(マグネチックレジスタンス)素子で形成されたセンサであり、通路3の壁面に設けられている。このMR素子7の出力は増幅器8に接続されており、その出力はピークホールド回路9を介して識別部10に接続されている。また、この識別部10の出力は、出力端子11に接続されている。12は、搬送手段4を駆動する駆動部であり、識別部10からの出力で制御されるものである。
【0005】
以上のように構成された紙幣識別装置について、以下にその動作を説明する。挿入口1から挿入された紙幣2は通路3に導かれる。そして、この紙幣2は、搬送手段4により搬送される。このとき、通路3の壁面に設けられたMR素子7により、紙幣2に付着された磁気情報のレベルが検出される。
【0006】
このMR素子7により検出された磁気情報は、増幅器8で増幅される。こうして増幅された磁気情報はピークホールド回路9でピーク情報が抽出されて、識別し易い形態に変換される。そして、識別部10内のメモリに格納された基準情報と比較され、挿入された紙幣2の真偽と金種が判別される。判別された情報は、出力端子11から出力される。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−85612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来の紙幣識別装置は、MR素子7で紙幣2に付着された磁気のレベルを検出しているので、その磁気レベルの微小な変化を読み取ることはできなかった。即ち、近年の複写機やカラープリンターなどOA機器の進歩に伴い、高精度に偽造された紙幣を磁気レベルの変化では識別することは困難であった。
【0009】
そこで本発明は、高精度の識別能力を有する紙幣識別装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そしてこの目的を達成するために本発明の紙幣識別装置の特徴抽出部は、インダクタンス素子とキャパシタンス素子が並列接続された並列接続体と、この並列接続体に接続された発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続された位相比較器と、この位相比較器の出力が接続されたループフィルタと、このループフィルタの出力と前記識別部との間に接続されたループアンプと、このループアンプの出力と前記位相比較器の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器とを有し、前記並列接続体を形成する前記インダクタンス素子或いは前記キャパシタンス素子の内、少なくとも何れか一方の素子が紙幣に近接するように設けられたものである。この構成により、初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明の特徴抽出部は、インダクタンス素子とキャパシタンス素子が並列接続された並列接続体と、この並列接続体に接続された発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続された位相比較器と、この位相比較器の出力が接続されたループフィルタと、このループフィルタの出力と前記識別部との間に接続されたループアンプと、このループアンプの出力と前記位相比較器の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器とを有し、前記並列接続体を形成する前記インダクタンス素子或いは前記キャパシタンス素子の内、少なくとも何れか一方の素子が紙幣に近接するように設けられたものである。
【0012】
従って、紙幣に付着された磁気情報を並列接続体で形成された発振器のリアクタンスの変化として捕らえ、このリアクタンスの変化に応じた周波数を発振器で発振させることにより、発振周波数を変化させ、この変化した発振周波数の位相の変化と、前記電圧制御発振器の発振周波数と位相比較することにより、紙幣の磁気情報の微小な位相のレベルでの変化を電圧変化分として検出することができる。即ち、高精度の紙幣識別が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態における紙幣識別装置のブロック図である。図1において、21は紙幣2の挿入口であり、この挿入口21には、紙幣2の通路23が連結して設けられている。24は、プーリ25にタイミングベルト26が架けられて構成された搬送手段であり、通路23上に設けられるとともに、紙幣2を搬送するものである。
【0014】
29は、インダクタンス素子としてのコイル27と、キャパシタンス素子としてのコンデンサ28が並列接続された並列接続体である。この並列接続体29を形成するコイル27が通路23の壁面に設けられて、紙幣2の磁気情報の特徴を抽出するセンサ27aを形成している。コイル27はフェライトに巻かれ、図2に示すように並列接続されたコンデンサ28とで、略8MHzの共振器(並列接続体29)29aを形成している。
【0015】
並列接続体29の一方は、結合コンデンサ30を介してトランジスタ31のベースに接続されるとともに、他方はグランドに接続されている。32は電源であり、トランジスタ31のコレクタに接続されるとともに、コンデンサ33を介してグランドに接続されている。また、トランジスタ31のベースとエミッタとの間にはコンデンサ34が接続されている。また、トランジスタ31のエミッタとグランドとの間には抵抗35とコンデンサ36が接続されている。37は、抵抗35とトランジスタ31のエミッタの接続点から導出された出力端子であり、いわゆるコルピッツ型の発振器38を形成している。
【0016】
この発振器38の出力端子37は、図1に示すように、位相比較器39の一方の入力に接続されている。この位相比較器39の出力は、カットオフ周波数3kHzのループフィルタ42とループアンプ60を介して、電圧制御発振器43の制御電圧入力端子45(後述)に接続されている。また、この電圧制御発振器43の出力は、位相比較器39の他方の入力に接続されている。
【0017】
次に、電圧制御発振器43について、図3に基づいて説明する。図3において、45は制御電圧入力端子であり、この制御電圧入力端子45と接続点46との間には、抵抗47が接続されている。また、この接続点46とグランドとの間には、バリキャップダイオード48とインダクタ49の並列接続回路50が接続されている。
【0018】
接続点46からは、結合コンデンサ51を介してトランジスタ52のベースに接続されている。32は電源であり、トランジスタ52のコレクタに接続されるとともに、コンデンサ53を介してグランドに接続されている。また、このトランジスタ52のベースとエミッタとの間にはコンデンサ54が接続されている。また、トランジスタ52のエミッタとグランドとの間には抵抗55とコンデンサ56が接続されている。57は、トランジスタ52のエミッタと抵抗55の接続点から導出された出力端子であり、位相比較器39の他方の入力に接続されて、いわゆるコルピッツ型の電圧制御発振器43を構成している。以上のように構成された制御電圧入力端子45から入力電圧により、並列接続回路50の共振周波数が8MHzを中心に略100Hz変化するものである。従って、電圧制御発振器43から出力される周波数は、8MHzを中心に100Hz変化するものである。
【0019】
図1に示すループアンプ60の出力は、識別部61に接続されている。この識別部61の出力は、出力端子62に接続されている。63は、搬送手段24を駆動する駆動部であり、識別部61からの出力で制御されるものである。この搬送手段24の搬送速度は、1秒間に紙幣1枚を搬送する一定の速度に設定している。なお、並列接続体29と発振器38と位相比較器39とループフィルタ42と電圧制御発振器43とループアンプ60とで紙幣2の特徴を抽出する特徴抽出部を構成している。
【0020】
以上のように構成された紙幣識別装置について、以下にその動作を説明する。挿入口21から挿入された紙幣2は、通路23に導かれる。そして、この紙幣2は、搬送手段24により搬送される。このとき、通路23の壁面に設けられたセンサ27aは、紙幣2に付着された磁気情報により、コイル27のインダクタンス値が変化する。インダクタンス値が変化すると、このコイル27と並列に接続されたコンデンサ28とで構成される並列接続体29(共振器29a)の共振周波数が変化する。即ち、発振器38の発振周波数が紙幣2に付着された磁気情報に応じて変化することになる。
【0021】
このように、紙幣2が搬送されると、この紙幣2に付着された磁気情報が変化して位相比較器39の一方の入力に供給される。また、位相比較器39の他方の入力には電圧制御発振器43の出力が供給されているので、この変化した発振周波数の位相の変化と、電圧制御発振器43の発振周波数と位相比較することにより、紙幣2の磁気情報の微小な位相のレベルでの変化を電圧の変化分として検出することができる。従って、高精度の紙幣2の磁気情報を検出することができる。このことにより、高精度の紙幣2の真偽情報と金種情報を高精度に検出することができる。
【0022】
この位相比較器39から出力される紙幣2の特徴情報は、識別部61に送られる。そして、この識別部61で紙幣の真偽と金種が識別される。位相の変化による電圧の変化分は、0.15mm以下の磁気情報を区別することができる。また、このセンサ27aではアルミ(アルミニウム)の検出をすることもできる。従って、紙幣2の真偽や金種識別の特徴情報を識別部61に提供することができるものである。
【0023】
この識別部61では、メモリに格納された紙幣の基準情報と比較されて、挿入された紙幣2の真偽と金種が判別される。判別された情報は、出力端子62から出力される。
【0024】
図4は、紙幣2の平面図である。この紙幣2を搬送手段24で搬送することにより、センサ27aで紙幣2の長手方向を走査して紙幣2の磁気情報を抽出するわけである。
【0025】
(実施の形態2)
実施の形態1では、センサ27aとして、コイル27を用いたが、実施の形態2は、センサ27aとしてコンデンサ28bを用いたものである。何れにしても、共振器29b(実施の形態1の共振器29aに該当する)の共振周波数を変化するようにして、発振器38a(実施の形態1の発振器38に該当する)の発振周波数を変えるものである。このことにより、紙幣の種類によっては、より精密にその特徴を抽出することができる。
【0026】
図5は、紙幣74の平面図であり、この紙幣74はアルミ71に磁性体72が一定間隔おいて複数個塗布されたセキュリティ線73が紙幣74の短手方向に設けられたものである。このような紙幣74を識別する場合において、実施の形態1の識別装置でも識別することができる。しかし、紙幣74に含まれたアルミを検出するには、電界の変化を検出できるキャパシタンス素子で抽出することが望ましい。
【0027】
なお、紙幣に誘電体が付着された場合には、インダクタンス素子で検出するより、キャパシタンス素子で検出することが望ましい。
【0028】
即ち、図6に示すように、通路23の上方と下方に電極75a,75bを設け、この電極75a,75b間を走行する紙幣74のセキュリティ線73をコンデンサ28bの容量変化で抽出するものである。76はコンデンサ28bと並列接続されるインダクタである。
【0029】
また、この電極75a,75bとは、図5の点線で示すように、紙幣74の短手方向の両端に配置しても良い。この場合、セキュリティ線73全体を含むコンデンサ28bの変化を検出することができるので、特定の位置にのみ設けられたセンサ27aに比べて安定した検出ができる。
【0030】
(実施の形態3)
実施の形態1,2では、発振器38をコルピッツ型とし、並列接続体29に片側をグランドに接続して用いたが、実施の形態3では、発振器38を2つ用いて差動タイプの発振器とし、これら発振器の平衡出力間にコイル27とコンデンサ28からなる並列接続体29を接続した発振回路としている。
【0031】
このように、発振器38を2つ用いて差動タイプの発振器とすることにより、発振動作が安定する。また、これら発振器の平衡出力間には、コイル27とコンデンサ28からなる並列接続体29を接続しているので、コイル27およびコンデンサ28は、共にグランドに接続されることがない。
【0032】
これにより、コイル27およびコンデンサ28には不要な浮遊容量をなくすことができ、並列接続体29として損失を小さくできる。つまり、コイル27のインダクタンスあるいはコンデンサ28の容量の微小な変化による発振回路の周波数感度を高めることができる。
【0033】
また、このように2つの発振器38を用いた平衡タイプの発振器と並列接続体29により発振回路を構成しているので、紙幣識別装置以外からの制御ノイズ等に対しても妨害を受けにくい紙幣識別装置を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる紙幣識別装置は、高精度に紙幣の真偽と金種を識別することができるので、自動販売機や券売機等の各種自動サービス機器に使用される紙幣識別装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における紙幣識別装置のブロック図
【図2】同、センサと発振器の回路図
【図3】同、電圧制御発振器の回路図
【図4】紙幣の平面図
【図5】本発明の実施の形態2における紙幣の平面図
【図6】同、紙幣識別装置の要部断面図
【図7】従来の紙幣識別装置のブロック図
【符号の説明】
【0036】
2 紙幣
21 挿入口
23 通路
24 搬送手段
27 コイル
27a センサ
28 コンデンサ
29 並列接続体
38 発振器
39 位相比較器
42 ループフィルタ
43 電圧制御発振器
60 ループアンプ
61 識別部
62 出力端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣が挿入される挿入口と、この挿入口に連結して設けられた紙幣の通路と、前記紙幣の特徴を抽出する特徴抽出部と、この特徴抽出部の出力に接続された識別部と、この識別部の出力に接続された出力端子とを備え、前記特徴抽出部は、インダクタンス素子とキャパシタンス素子が並列接続された並列接続体と、この並列接続体に接続された発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続された位相比較器と、この位相比較器の出力が接続されたループフィルタと、このループフィルタの出力と前記識別部との間に接続されたループアンプと、このループアンプの出力と前記位相比較器の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器とを有し、前記並列接続体を形成する前記インダクタンス素子或いは前記キャパシタンス素子の内、少なくとも何れか一方の素子が前記紙幣に近接するように設けられた紙幣識別装置。
【請求項2】
インダクタンス素子が紙幣に近接するように通路の壁面に設けられた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
キャパシタンス素子が紙幣に近接するように通路の壁面に設けられた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
発振器を差動タイプとし、この差動タイプの発振器の平衡出力間に並列接続体を設けた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項1】
紙幣が挿入される挿入口と、この挿入口に連結して設けられた紙幣の通路と、前記紙幣の特徴を抽出する特徴抽出部と、この特徴抽出部の出力に接続された識別部と、この識別部の出力に接続された出力端子とを備え、前記特徴抽出部は、インダクタンス素子とキャパシタンス素子が並列接続された並列接続体と、この並列接続体に接続された発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続された位相比較器と、この位相比較器の出力が接続されたループフィルタと、このループフィルタの出力と前記識別部との間に接続されたループアンプと、このループアンプの出力と前記位相比較器の他方の入力との間に接続された電圧制御発振器とを有し、前記並列接続体を形成する前記インダクタンス素子或いは前記キャパシタンス素子の内、少なくとも何れか一方の素子が前記紙幣に近接するように設けられた紙幣識別装置。
【請求項2】
インダクタンス素子が紙幣に近接するように通路の壁面に設けられた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
キャパシタンス素子が紙幣に近接するように通路の壁面に設けられた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
発振器を差動タイプとし、この差動タイプの発振器の平衡出力間に並列接続体を設けた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2006−318455(P2006−318455A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110657(P2006−110657)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]