説明

紙幣識別装置

【課題】 コストをアップさせることなく紙幣挿入口を明るくして視認性を向上させるようにした紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】 紙幣挿入口を構成するように離間して対向配置された上部ガイドと下部ガイド12とを有する紙幣挿入部において、下部ガイド12を透明部材によって形成し、その背面に設けられたLEDにより下部ガイド12を照射するようにした。下部ガイド12の裏面には、入射壁16から接客面側先端の出射壁に至る範囲にわたって三角リブカット19が形成され、その三角リブカット19の表面全体にシボ加工21を施している。これにより、既存のプリント板に設けられたLEDの光は、下部ガイド12の全面にわたって効率よく拡散され、出射壁を均一な明るさで発光させることが可能となり、紙幣挿入口の位置を商品購入者に認識し易くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣識別装置に関し、特に自動販売機などに設けられて投入された紙幣を識別する紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機においては、その前面扉に、硬貨を投入する硬貨挿入口、紙幣を投入する紙幣挿入口、投入された硬貨や紙幣を返却するための返却レバー、釣銭や返却される硬貨を取り出す硬貨返却口などが設けられている。硬貨挿入口および紙幣挿入口は、前面扉の裏側にそれぞれ硬貨識別装置および紙幣識別装置が取り付けられている。
【0003】
自動販売機が設置されている場所または利用時間帯によっては、暗くて硬貨挿入口および紙幣挿入口の位置が商品購入者にとってわかりにくい場合があった。このため、硬貨挿入口を照らして硬貨挿入口を利用者が容易に視認することができるようにしたものが知られている(たとえば、特許文献1参照。)。紙幣挿入口についても同様に、紙幣挿入口に光を照射することが従来より行われている。
【0004】
図6は紙幣挿入口への光照射例を示す従来の紙幣識別装置を示す斜視図、図7は紙幣挿入口への別の光照射例を示す従来の紙幣識別装置を示す斜視図である。
図6に示す紙幣識別装置は、紙幣を挿入するための紙幣挿入口を構成するように上下に対向配置された不透明部材からなる上部ガイド101と下部ガイド102とを有しており、上部ガイド101の上側(背面側)には、照明用の発光ダイオード(以下LEDという)103を搭載したプリント板104が配置されている。そのプリント板104には、コネクタ105が搭載され、ケーブル106を介して紙幣識別装置の内部に設けられた図示しないプリント板と接続されている。
【0005】
上部ガイド101には、LED103の光軸上に穿設された貫通孔107が設けられていて、上部ガイド101に対向する下部ガイド102の面に向けて光の通路108を形成するようにし、これによって、下部ガイド102の面にスポット光109を光らせるようにしている。
【0006】
したがって、自動販売機の設置環境が暗い場合でも、下部ガイド102の面にスポット光109が当たることにより、紙幣挿入口を商品購入者に容易に視認させることができるようになる。
【0007】
また、図7に示す紙幣識別装置では、上部ガイド101と下部ガイド102とで構成される紙幣挿入口の奥に配置されたプリント板110にLED103が搭載されている。このLED103から放射された光は、上部ガイド101にて反射され、その反射光が紙幣挿入口の下部ガイド102に届くようにしてある。このように、紙幣挿入口の中に光の通路108を形成し、上部ガイド101にて反射された反射光を下部ガイド102に当てて下部ガイド102の面をスポット光109で光らせるようにしたことで、紙幣挿入口の位置を商品購入者に認識し易いようにしていた。
【特許文献1】特開2004−157791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の紙幣識別装置では、紙幣挿入口の下部ガイドにスポット光が一部分光るだけで、紙幣挿入口の位置の視認性について良好とは言い難く、また、上部ガイドに設けたLEDで下部ガイドを直接照らす構成では、反射光による場合よりもスポット光を明るくすることができるが、LEDを配置するために既存のプリント板とは別に、新規のプリント板およびケーブルが必要となり、コストアップとなってしまうという問題があり、紙幣挿入口の奥に設けたLEDで下部ガイドを間接的に照らす構成では、直接照らす構成に比べてコストが安く済む反面、一旦光を上部ガイドに反射させているため、スポット光が暗いという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、コストをアップさせることなく紙幣挿入口を明るくして視認性を向上させるようにした紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記問題を解決するために、紙幣挿入部を上部ガイドと下部ガイドとによって形成された紙幣識別装置において、前記下部ガイドを透明部材により形成し、その裏面側から発光ダイオードによる照射光を入射して正面側の先端部まで透過させるようにしたことを特徴とする紙幣識別装置が提供される。
【0011】
このような紙幣識別装置によれば、透明部材からなる下部ガイドの全体を発光ダイオードにより光らせ、挿入口の位置を商品購入者に認識し易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紙幣識別装置は、透明部材からなる下部ガイドの全体を発光ダイオードにより光らせ、表面に光が透過する構造としているため、紙幣挿入口の視認性を向上させることができるという利点がある。また、発光ダイオードは従来品を用い、既存のプリント板に搭載しているので、コストアップすることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、自動販売機に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は紙幣識別装置の斜視図を示す図である。
【0014】
紙幣識別装置1は、自動販売機の前面扉にその裏側から取り付けられる。その際、正面扉の接客面には、紙幣を挿入する紙幣挿入口2が設けられた紙幣挿入部3が露出される。紙幣挿入部3の奥には、紙幣挿入口2に挿入された紙幣を取り込んで、その紙幣の金種および真贋を判断する図示しない紙幣識別部を備え、その紙幣識別部に隣接して紙幣収納庫4が着脱自在に設けられている。紙幣収納庫4は、紙幣識別部で識別された紙幣を収納するもので、回収時には、取り外して収納された紙幣を紙幣収納庫4ごと回収できるようになっている。
【0015】
図2は紙幣挿入部を側面から示す断面図、図3は図2のA部拡大図である。
紙幣挿入部3は、図2に示したように、紙幣を挿入するための紙幣挿入口2を構成するように上下に離間して対向配置された上部ガイド11と下部ガイド12とを有している。上部ガイド11は、不透明部材によって形成され、下部ガイド12は、透明部材によって形成されている。下部ガイド12の背面には、紙幣識別装置1を制御する既存のプリント板13が配置され、そのプリント板13にはLED14が搭載されている。
【0016】
透明部材の下部ガイド12は、図3に詳細に示されるように、裏面側にLED14の照射光15が入光し易いようLED14の光軸に対して直角をなす入射壁16が形成され、さらに入射壁16より入射された照射光15を紙幣挿入部3の正面側に案内する反射壁17と、内部を通ってきた照射光15が紙幣挿入部3の正面側に出射する先端の出射壁18とを有している。
【0017】
以上の構成により、プリント板13に設けたLED14より照射された照射光15は、入射壁16から下部ガイド12に入射する。入射した照射光15は、下部ガイド12の中において、まず反射壁17で反射し、その後、下部ガイド12の表面にて反射を繰り返しながら下部ガイド12の内部を進んでいき、下部ガイド12の出射壁18に届く。照射光15が出射壁18より出射することにより、紙幣挿入部3の表面から出ている下部ガイド12の出射壁18は、その幅方向の全体が明るくなり、紙幣挿入口2の視認性を向上させることができる。
【0018】
図4は紙幣挿入部を背面から示す斜視図、図5は図4のB部拡大図である。
下部ガイド12は、また、上部ガイド11と反対側の面、すなわちプリント板13が設置されている側の面が加工されて、内部を進む照射光15が外部に漏れにくいようにすることと、下部ガイド12の内部構造が商品購入者に透けて見えることを防止するようにしている。このために、下部ガイド12の上部ガイド11と反対側の面において、入射壁16から先端の出射壁18に至る範囲にわたって三角リブカット19が形成されている。これにより、LED14によって2箇所の入射壁16より入射された照射光15は、下部ガイド12の内部を反射しながら進む際に三角リブカット19によって乱反射することにより下部ガイド12の全体に広がり、拡散光20となって先端の出射壁18へ進むようになる。このため、先端の出射壁18には乱反射した拡散光20が到達することになるので、出射壁18は、その幅方向全体にわたって均一な明るさになる。
【0019】
さらに、三角リブカット19の表面全体には、梨地やサンドブラストなどの半透明加工であるシボ加工21が施されている。これにより、LED14の光は、下部ガイド12の全面にわたって効率よく拡散され、先端の出射壁18の全面をむらのない均一な明るさで発光させることが可能となり、紙幣挿入口2の位置を商品購入者に認識し易くしている。なお、下部ガイド12は、照射光15を拡散させるために三角リブカット19を形成したが、これに代えてダイヤモンドカットを形成しても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】紙幣識別装置の斜視図を示す図である。
【図2】紙幣挿入部を側面から示す断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】紙幣挿入部を背面から示す斜視図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】紙幣挿入口への光照射例を示す従来の紙幣識別装置を示す斜視図である。
【図7】紙幣挿入口への別の光照射例を示す従来の紙幣識別装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 紙幣識別装置
2 紙幣挿入口
3 紙幣挿入部
4 紙幣収納庫
11 上部ガイド
12 下部ガイド
13 プリント板
14 LED
15 照射光
16 入射壁
17 反射壁
18 出射壁
19 三角リブカット
20 拡散光
21 シボ加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣挿入部を上部ガイドと下部ガイドとによって形成された紙幣識別装置において、
前記下部ガイドを透明部材により形成し、その裏面側から発光ダイオードによる照射光を入射して正面側の先端部まで透過させるようにしたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記発光ダイオードは、前記下部ガイドの裏面側に配置された制御用のプリント板に直接搭載されていることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記下部ガイドは、前記発光ダイオードの照射光の光軸に対して直角な面を有する入射壁を有していることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
前記下部ガイドは、前記照射光が入射される部分から正面側の前記先端部に至る前記上部ガイドと反対側の面に前記照射光を全面に拡散させる三角リブカットまたはダイヤモンドカットが形成されていることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項5】
前記三角リブカットは、その表面がシボ加工されていることを特徴とする請求項4記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−34577(P2007−34577A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215619(P2005−215619)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】