説明

紙幣鑑別方法

【課題】判別機構の機密事項を守ることができ、紙幣変更に容易に対応でき、各自動取引装置のコスト低減が可能となる。
【解決手段】従来、自動取引装置10側にある紙幣の判別を行う鑑別処理部50を、上位装置30側にのみ実装することとし、自動取引装置10から上位装置30にセンサ部40で得られる特徴データを転送する手段と、上位装置30から自動取引装置10に鑑別処理部50で得られる判別結果を転送する手段とを設ける。複数の自動取引装置10に対して1台ないし数台の上位装置30で鑑別処理を行う場合には、自動取引装置10から上位装置30に特徴データと装置を識別するための装置ID番号を転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関などにおいて、利用者の操作により入出金などの様々な取引を行う現金自動支払機や現金自動預け払い機などの紙幣鑑別機構を備えた自動取引装置に関し、特に鑑別処理を上位装置側で行うことにより、セキュリティを向上させた自動取引装置および紙幣鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金融機関等で使用される自動取引装置は、顧客と紙幣の受渡しをする紙幣入出部、投入された紙幣の鑑別を行う鑑別部、紙幣集積部等のユニットから構成されており、これらのユニットの間には紙幣の搬送路やどの搬送路へ紙幣を送るかを決めるゲート等が設けられている。これらのうち、投入された紙幣の金種を判別したり、偽券でないかを判定したりする鑑別部は、その紙幣の様々な特徴を得るセンサ部と、そのセンサ部で得た特徴データを格納しておくメモリと、その特徴データを用い紙幣の判別を行う鑑別処理部とからなり、共に自動取引装置内に設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のように、従来の自動取引装置では、紙幣の判別を行う鑑別処理部が自動取引装置の内部に実装されているため、(イ)装置が盗難された際に、鑑別を行う機密部分である判別機構が公開されてしまう点で問題がある。(ロ)紙幣の特徴が変わったり、各国紙幣の対応を追加したりするときには、鑑別処理部を変更する必要があるが、その変更作業を自動取引装置の各装置ごとに行う必要があるという点で問題である。(ハ)自動取引装置の各々に鑑別処理部を実装するため、格納するメモリや、ワーク用メモリ等が必要となり、それに伴うコストが必要となる。
そこで、本発明の目的は、これら従来の問題を解消し、自動取引装置が盗難された場合でも、機密部分のセキュリティを保持することができる現金自動取引システムおよび紙幣鑑別方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、紙幣の特徴が変わったり、他の種別の紙幣を追加する場合にも、1箇所で変更するだけで済み、その際の作業効率を向上させることが可能な現金自動取引システムおよび紙幣鑑別方法を提供することにある。
また、本発明のさらに他の目的は、鑑別処理部を実装する場合に、装置のコストを低減することが可能な現金自動取引システムおよび紙幣鑑別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の現金自動取引システムは、紙幣の鑑別を行う鑑別部のうち、紙幣の様々な特徴を得るセンサ部のみを自動取引装置側に実装し、その特徴を用いて紙幣の判別を行う鑑別処理部を上位装置(例えば、ホストコンピュータ等)側に実装することとし、自動取引装置から上位装置にセンサ部で得られる特徴データを転送する手段と、上位装置から自動取引装置に紙幣の判別を行う鑑別処理部で得られた判別結果を転送する手段とを備えることを特徴としている。また、複数の自動取引装置とデータ転送、鑑別処理を行うために、装置IDを管理する手段と、他の自動取引装置と交信している際には待機する手段を備えることも特徴としている。
また、本発明の紙幣鑑別方法は、各自動取引装置で紙幣の様々な特徴を読取るステップと、読取った特徴データを上位装置に転送するステップと、上位装置で、転送された特徴データを受取り、紙幣鑑別処理を行った後に、鑑別結果を転送元の自動取引装置へ返送するステップと、各自動取引装置で、返送された鑑別結果により確認画面を表示するステップとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明によれば、(イ)鑑別を行う判別機構が上位装置にのみ存在する為、セキュリティー性が向上する。(ロ)紙幣の特徴が変わった時や各国紙幣の対応を追加する時に、上位装置側の鑑別処理部の変更を行うだけでよく、1箇所ないし数箇所の変更だけとなるため、作業効率が向上する。(ハ)各自動取引装置に鑑別処理部(鑑別プログラム)を実装しなくてもよくなるため、メモリ、ワーク用メモリ等は必要なくなり、各装置のコストを低減するこが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を、図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る現金自動取引システムの構成図である。
各銀行において、自動取引装置10が複数台ホストコンピュータ11に通信回線12で接続されている。さらに、管理センタ14等のホストコンピュータがそれぞれの通信回線13で接続されている。
本発明においては、自動取引装置10内に紙幣の画像データなどの特徴を読み取るセンサを備え、その特徴データを用いて紙幣の鑑別を行う鑑別処理部は上位装置11または14内に備えておく。なお、入金取引や出金取引、あるいは振込みなどのときに、口座番号や残高などを記憶しておくデータベースを備えた上位装置(管理センタ)内に上記鑑別処理部を設けることも可能である。また、上記管理センタとは別個の上位装置に鑑別処理部を設けることも、勿論可能である。
【0007】
図2は、図1における自動取引装置と上位装置の詳細構成を示す図である。
図2では、図1の4台の自動取引装置10のうちの1台のみと、図1の上位装置11,14のうちのいずれか1台(上位装置30とする)のみが示されている。
上位装置30は、金融機関等のホストコンピュータ11、または管理センタ14等のホストコンピュータを総称するものとする。自動取引装置10は、紙幣入出金部20、硬貨入出金部21、制御部22、インタフェイス部23、操作案内画面を表示し、処理入力を行う表示入力部24、記憶部25、電源部26、カード読取部27、通帳明細票印字部28から構成されている。紙幣入出金部20には、さらにセンサ部40、入出金口41、リジェクトボックス42、リサイクルボックス43等で構成されている。自動読取装置10と上位装置30との間を接続するものとして、通信媒体である通信回線29がある。
従来の自動取引装置では、紙幣入出金部20内に必ず鑑別部が備えられるのに対して、本発明の自動取引装置は、鑑別部を構成する要部の1つであるセンサ部のみが自動取引装置10内に備えられている。
また、上位装置30は、転送されてきたデータや鑑別処理を行う際に参照すべき基準データなどを記憶する記憶部31、全体を制御する制御部32、自動取引装置10との交信を行うインタフェイス部33、電源部34、紙幣の鑑別処理を行う鑑別処理部50から構成されている。
【0008】
図3は、本発明の一実施例を示す自動取引方法の動作フローチャートである。
図3では、中央の破線より左側が自動取引装置10の処理動作が、破線より右側が上位装置30の処理動作が示されている。
利用者は、自動取引装置10の表示入力部24に表示された取引名称キーの中から、入金または出金を行うキーを選択する(取引選択60)。
取引が選択されると、取引内容が入金の場合、制御部22は、入出金口41にある紙幣を搬送路へ移動させ(61)、取引内容が出金の場合、制御部22は、リサイクルボックス43にある紙幣を搬送路へ移動させる(62)。
制御部22は、移動途中にあるセンサ部40を紙幣が通過する際に、各紙幣に対する特徴データを記憶部25に取得する(63)。制御部22は、取得した各紙幣の特徴データのうち、1紙幣分の特徴データを自動取引装置10のインターフェイス部23に接続されている通信回線29を介して上位装置30の記憶部31へ転送する(64)。この場合、上位装置30は、金融機関等のホストコンピュータ11でも、管理センタ14等のホストコンピュータでもよい。また、複数台の自動取引装置に対応できるように、装置IDをもたせ、特徴データの転送と同時に、装置IDを転送するようにする。
【0009】
上位装置30の制御部32は、割込み待ち状態にあり(70)、自動取引装置10からの特徴データ転送を契機として次の動作に移る。
上位装置30の制御部32は、記憶部31にある特徴データを用い、鑑別処理部50により、その紙幣がどの金種か(金種判定)、偽券でないか(真偽判定)等の鑑別処理を行う(71)。鑑別処理部50で得られた判定結果を上位装置30のインターフェイス部33に接続されている通信回線29を介して特徴データ転送元の自動取引装置10の記憶部25へ転送する(72)。上位装置30側は、そのまま割込み待ち状態へと遷移する。特徴データ転送元は、特徴データを転送する際に、同時に転送する装置IDを元に判断する。これにより、複数の自動取引装置から、1つの鑑別処理部が利用可能となる。
【0010】
自動取引装置10の制御部22は、今回の取引における全ての紙幣に対する特徴データについて、判定結果が転送されているか否かを確認し(65)、転送されていなければ、次の紙幣の特徴データを上位装置30へ同様に転送する(64)。
全ての紙幣に対する特徴データの判定結果が転送されていれば、金額確認画面を表示入力部24に表示する(66)。利用者が自動取引装置10の表示入力部24の確認キーを選択したか否かを確認し、確認キーを選択した場合は、制御部22は、取引終了とし、違った場合は、再度利用者に操作し直してもらう(67)。
【0011】
図4は、本発明の他の実施例として振込み処理の場合の動作フローチャートである。
上位装置側の処理は図3の場合と同じであるので、記載を省略し、自動取引装置側の処理のみを詳細に記載する。利用者は、先ず自動取引装置10内の表示入力部24を操作して、取引選択画面において「振込み」を選択する(81)。次に、ガイダンス画面に従って、利用者は現金振込みか、あるいはカード振込みかの選択を行い、現金振込みを選択する(82)。次に、手数料のみをカードで支払う場合、手数料カードを挿入する(83)。次に、振込み金額を入力し(84)、振込み先指定方法の選択を行う。例えば、個別指定による振込みを指定し(85)、振込み先指定入力用のタッチキー画面による入力の指示・誘導に従って、振込み先口座番号その他を入力する(86)。ここまでの入力操作が完了すると、自動取引装置10はインターフェイス部23に接続されている通信回線29を介して管理センタ40と交信し、管理センタ40から取引可の回答メッセージを受信する(87)。
【0012】
管理センタ40の処理は、データベースの該当口座番号の内容を参照するだけであるので、中央交信にかかる時間は僅かである。取引可の回答メッセージが受信されると、次に表示入力部24に振込み取引内容を確認させるための確認用画面を表示して、利用者に振込み取引内容の確認を求める(88)。利用者がこれに従って確認結果を入力すると、画面から現金を投入するように指示・誘導する。利用者がこれに従って現金を投入すると(89)、自動取引装置10はセンサ部40で画像データを含む紙幣の特徴データを読取り、インターフェイス部23に接続されている通信回線29を介して管理センタ40またはそれ以外の上位装置30に特徴データと装置ID番号とを送信する。
【0013】
ここでは、上位装置30に送信する場合を実線矢印で示し、管理センタ40に送信する場合を破線矢印で示している。鑑別処理(金種判定、真偽判定)にかかる時間は比較的長くかかり、また複数の自動取引装置の鑑別をそれより少ない数ないし1台の上位装置で行っている場合には、待時間があるため更に長くなる。
しかし、1台の上位装置が受け持つ自動取引装置の台数を少なくすることにより、待時間を減少させることができる。
自動取引装置10では、全ての紙幣のデータが上位装置30または40から返送されると、確認用画面を表示入力部24に表示して利用者に確認を求める(90)。利用者が投入金額を確認して確認結果を入力すると、自動取引装置10は上位装置30または40と交信し、上位装置から取引終了の回答メッセージを受信する(91)。次に、入力表示部24に振込み取引が終了した旨および取引明細票および手数料カードなどの受取りを指示・誘導する(92)。利用者がこれに従って取引明細票および手数料カードを抜き取ることにより、処理全体が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す現金自動取引システムの構成図である。
【図2】図1における自動取引装置と上位装置の詳細ブロック図である。
【図3】本発明の一実施例を示す自動取引方法の処理フローチャートである。
【図4】本発明の他の実施例を示す振込み処理の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0015】
10:自動取引装置
11:金融機関等のホストコンピュータ
12〜13:通信回線
14:管理センタ
20:紙幣入出金部
21:硬貨入出金部
22:制御部
23:インターフェイス部
24:表示入力部
25:記憶部
26:電源部
27:カード読取部
28:通帳明細票印字部
29:通信回線
30:上位装置
31:記憶部
32:制御部
33:インターフェイス部
34:電源部
40:センサ部
41:入出金口
42:リジェクトボックス
43:リサイクルボックス
50:鑑別処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動取引装置の入出金時に行う紙幣鑑別方法において、
各自動取引装置で紙幣の様々な特徴を読取るステップと、
読取った特徴データを上位装置に転送するステップと、
上位装置では、転送された特徴データを受取り、紙幣鑑別処理を行った後に、鑑別結果を転送元の自動取引装置へ返送するステップと、
各自動取引装置では、返送された鑑別結果により確認画面を表示するステップとを有することを特徴とする紙幣鑑別方法。
【請求項2】
請求項1記載の紙幣鑑別方法であって、
前記紙幣鑑別処理は紙幣の金種判定および真偽判定を行う処理であり、該紙葉鑑別処理は上位装置でのみ行われるものであることを特徴とする紙幣鑑別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−286017(P2006−286017A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165660(P2006−165660)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【分割の表示】特願2000−188803(P2000−188803)の分割
【原出願日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【復代理人】
【識別番号】100102587
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 昌幸
【Fターム(参考)】