説明

紙搬送機構を含む装置

【課題】 紙搬送系の効率の良いリサイクルシステムを作成する。
【解決手段】 個別部品にRFIDを実装、計時変化履歴および故障情報などを書き込んでおき、部品リサイクルの支援を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ、スキャナ、レーザープリンタおよびその周辺装置等の、紙搬送系といった可動部を含む装置の再利用性管理に関する。
【背景技術】
【0002】
地球というクローズドな環境において、我々の行っている産業活動は人類自身の生存環境を悪化させるのに十分な環境変動を引き起こすことが明らかになってきている。
【0003】
本来、惑星というものは明らかに閉じた環境であるが、従来の考え方は、我々の産業活動の規模は十分小さい物と仮定して、産業活動の副産物である老廃物、熱、使用済みの産業生成物などを廃棄し続けていっても環境の変動が生じない開放系とみなしていたわけである。
【0004】
しかし、実際には我々の産業活動の規模は地球という閉じた環境に対して十分大きく、それらの廃棄によって環境が変化する狭い閉じた系と考えるのが合理的である。
【0005】
実際に紀元前の文明段階でも、都市近郊の砂漠化現象などを容易に引き起こしていることは歴史から明らかである。
【0006】
このために、現自然環境の保全の立場から、産業活動全般、工業製品全般に対して、自然環境に対する負荷を下げることが求められてきている。
【0007】
製品に対するリサイクル性の要求はその一環である。そしてそのリサイクルにおいても実効性の高い品質が求められて来ている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平9−281862号公報
【特許文献2】特開平8−87211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のリサイクルは、重量再利用率を追求し、金属部品やプラスチック樹脂製部品を溶融しより品質の低い部材として再利用するような程度の措置が多かった。
【0009】
しかしこのレベルのリサイクルは再利用といっても新規部品製造と同レベルの多大なエネルギーを浪費し、かつエネルギーの投入率に対する部品品質、という点では新規部品に劣り、環境負荷の低減に対する実効性が疑われる行為であった。
【0010】
現時点の技術において、主たるエネルギー供給源は化石燃料の燃焼による。すなわち、過去に大気中から取り除かれ、蓄積された大気中の二酸化炭素の再解放と引き替えにエネルギーを得ている。
【0011】
二酸化炭素の再解放による環境の変化はすなわち人類にとっての生存環境の悪化であり、エネルギーの消費自体を抑制してやる必要がある。
【0012】
リサイクルの品質はエネルギーの費用対効果をも考慮して推し量るべき物であり、重量や容積の再利用率で量るのはリサイクルの品質を十分に考慮していないことになる。
【0013】
完成された製品をそのまま丸ごと長時間使い続けることが究極のリサイクルであるが、通常、実際に廃棄された製品は何らかの実使用に耐えない故障が発生したり完動品でも要求性能が及ばなかったり、同じ製品に対するユーザー要求水準が高まったりして、多くの場合そのままの形では再利用できない。
【0014】
その一方、エネルギー効率を考慮した場合、複雑な製造加工組み立て行程を経た個別部品は素材まで戻さず、機能部品のままで可能な限りの再利用を行うことが望ましい。
【0015】
そこで、製品を個別部品に分解し、そのなかで再使用可能な個々の部品を利用するという方法が、エネルギー消費の費用対効果を考慮するときに望ましいものとなる。
【0016】
このようなリサイクルを行う場合において、製品製造段階から、個々の個別部品についてリサイクル運用性に配慮した部品構成によってリサイクルコストを下げる設計が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、本発明においてはリサイクルコストを下げるための設計の適用対象として紙搬送系を含む製品における実装を示す。
【0018】
その構成要素部品に対して非接触の情報記録手段を内包させ、その非接触の情報記憶手段において部品自身の寿命や再利用性を管理させリサイクル運用の支援を行う。
【0019】
非接触性の情報記憶手段を導入することによって、個別部品の再利用性の確認を容易にし、リサイクル作業時の作業コストの低減を支援する。
【0020】
接触性の情報記憶手段は金属接点の確保とリサイクル時の部品検査の際の設置作業の手間がかかるために、非接触性の情報記録手段の導入することによって作業コスト低減のメリットがある。
【0021】
紙搬送系を含む製品機構においては、搬送系に伴う可動部分が多く、摩耗や動力伝達系の欠損等で再利用が不可能になる部品が発生する。
【0022】
通常使用時に使用履歴、故障履歴情報を各構成部品に記録させておくことにより、個別の構成部品が再利用可能か不可能か否かを判断する情報として利用する。
【0023】
構成部品自体に使用履歴、故障履歴等を記憶させておくことによって、リサイクル作業の仕分け労力を低減させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の特徴である構成部品に非接触性の情報記憶手段を与え、使用履歴を記憶させることによって、構成部品再利用のリサイクル作業の効率化を支援することが可能になる。
【0025】
また、再利用を前提とした設計によって、より信頼性の高い部材の使用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に本発明の実施構成図を示す。本実施例は印字装置における構成例を示す。
【0027】
100が製品全体である。製品は多くの個別部品によって構成される。
【0028】
101は給紙機構であり、何種類かの紙の中から一種類の紙を選択し、紙搬送系へと送出する機能を有する。
【0029】
102は印字機構であり、画像イメージを生成し、そのイメージを用紙に転写する機構である。
【0030】
103は転写された用紙上に転写されたイメージを定着、乾燥などの過程で安定させるための機構である。
【0031】
104はイメージの転写された用紙に対して分配、紙折り、のり付け、裁断などの処理を行う製本機構である。
【0032】
200〜が製品を構成する個別部品である。
【0033】
本実施例では三系統の紙を扱う構成として210〜212の3つの給紙カセットを保有する給紙機構を示す。
【0034】
実際の装置構成によっては給紙カセットなどの数は変化する。
【0035】
213は給紙選択手段である。
【0036】
214〜217、221、223、227、228は紙搬送部を構成する部品である。実際の紙搬送形状、機器構成によって、これらの数や材質は変化する。
【0037】
例えば製品のサイズを小型化する為に、紙搬送部(矢印で示される)を屈曲させることによって数を増やしたり、表面の摩擦を調整したり、あるいは描画の補助機構として除電帯電処理をおこなう必要がある場合には導電体や帯電体が追加されることもある。
【0038】
材質やサイズの面で、情報記憶手段を保有できない部品も存在する。そのような部品の例として220,222を示す。
【0039】
紙搬送系の構成部品は実際に使用される紙のサイズが数種類に限定されているので、紙搬送系の機構部品の搬送幅もそれに合わせた限られたサイズの物が使用される。すなわち共用性が高く、再利用の可能性が大きい。しかしその一方、紙搬送系の構成部品は機械的摩耗が発生する部品でもあり、寿命がある。
【0040】
このために情報記憶手段によって実使用履歴を取り、再利用可能か、再使用不可能であるかを判断することが構成部品単位でのリサイクル上重要になる。
【0041】
再利用が可能であると判断された部品は、現行生産品の構成部品一覧と比較参照を行い、現行品の中で使用されていることが確認できれば、生産ラインに還元する。再利用可能品でも、現行生産品から外れており、再使用の見込みが無い場合は、保守部品として保持するか、再利用不可能品と同じリサイクルラインに流すかの選択がおこなわれる。
【0042】
218,219は印字装置における画像描画機構である。
【0043】
たとえば電子写真方式の印字装置においては、218は光描画装置であり、219は感光体である。あるいは同じ印字装置でもインクジェット方式の印字装置の場合は218は駆動回路であり、219は描画ヘッドである。
【0044】
220は非接触型の情報読み出し手段に対する給電および情報の読み込みおよび書き出し手段である。
【0045】
220は外部接続および給電手段105を有する。本体の電源部、制御部に異常が生じたときに独立にデータ読み出しを行うことが可能である。
【0046】
229,230は給電手段である。
【0047】
給電系の構成部品は機械的摩耗は無いために、パソコン用の電源ユニットの用に形状や給電電圧が規格化されていれば再利用性が生じる。ただし、電気回路を構成するコンデンサーやスイッチ等には計時劣化および累積電力による劣化が生じる。このためにリサイクル時には通電された累積電力量によって、消耗部品の交換の有無などを判断し再利用に回す。
【0048】
パーツの交換無しで再利用可能な場合は情報記憶手段の履歴情報は維持される。部品の一部交換が再利用において必要な場合は、部品交換の後対応する履歴情報を更新し、再利用される。長期間利用され、構成部品全体に劣化がおよんでいる場合は、構成部品としての再利用をあきらめ、素材レベルのリサイクルに回される。
【0049】
222は画像生成手段である。
【0050】
226は制御手段である。
【0051】
制御、演算系の電子回路基板等は製品の機能向上が続いている限りは実装されている部品の機能向上が著しいために、再利用が困難な部材である。
【0052】
ただし製品の機能向上がこれ以上求められない安定した製品分野においては、再生産品、保守部品として利用可能である。
【0053】
筐体、外装部品等は流行等によって求められる形状が変化するので、部品としての再利用性は低く高次のリサイクルは出来ない。金属素材への還元等の処理がおこなわれる。
【0054】
300〜が個別部品にそれぞれ実装される非接触型の情報記憶手段である。300〜は全ての個別部品に実装されているわけではない。その製品において個別部品としての再利用が望めない部品には実装されず、また技術的に実装不可能な部品も存在しうる。
【0055】
300〜は生産時にそれぞれ組み込めれる部品に応じて初期化され、製品動作時にその履歴情報を書き込んでいく。また、故障発生時には自己診断情報の書き込みを行い、直接故障した構成部品ないし故障によって信頼性の低下見込みがある部品に対して再生使用不可の情報を記録する。
【0056】
400〜は情報記憶手段への書き込み手段である。一つの書き込み手段は複数の情報記憶手段に対して選択的に書き込みをおこなうことが出来るために、400〜と300〜は一対一対応とはなっておらず、書き込み手段の実装数の方が少ない実装で問題はない。
【0057】
複数の情報記憶手段の選択は、デジタルに行ってもアナログ処理で行ってもよい。
【0058】
個々の情報記憶手段に個体識別用のIDを割り振り自分のIDが指定されない限り書き込み読み出し動作を実施しないようなプログラム無いしロジックを実装しておく。あるいは個々の情報識別手段のアンテナの共振周波数を変えておいて、選択的に通信を行っても良い。
【0059】
また、搬送系の部品において回転軸からずらした位置に情報記憶手段を実装することによって、回転角によって送受信回路の距離を調整でき、選択的な読み込み、書き出しを行うことが可能になる。
【0060】
通常動作シーケンスおよび異常動作時のシーケンスにおいて、各構成部品上の情報記憶手段に対する書き込み情報の生成および書き込み手順が含まれており、動作時に生成された情報記憶手段の履歴情報が更新される。
【0061】
通常の製品稼働時の動作シーケンスを図2に示す。通常の印字装置における手順は灰色枠で概略を示し、本発明に特有の手順を黒枠で示す。紙搬送系を含む印字装置等においては全ての可動部品が同時に動作するわけではなく、紙搬送に伴い対応する構成部品が動作する。
【0062】
例えば、まず給紙機構が動作し、用紙が所定の位置まで搬送されてから描画メカニズムが動作する。描画終了後に乾燥機構や定着機構等が動作を始め、その後で紙折り、切断、製本機構等の動作が発生する。
【0063】
もしも故障が発生したときにはその時点で動作していた機構部品にトラブルが発生した可能性が高い。たとえば給紙動作時にエラーが発生したときに、後段のまだ動作していない乾燥機構や定着機構にトラブルが発生したとは考えにくい。
【0064】
同様に定着機構が動作時にエラーが生じ、描画メカニズムは正常終了していた場合、給紙系の機構トラブルの可能性は小さい。
【0065】
動作タイミングの時間軸精度は使用しているデバイスの性能によって左右される。
【0066】
情報記憶手段の書き換えが高速で実行できるデバイスを使用している場合には動作フラグ情報を用意し、機構部品の駆動シーケンス前に、動作フラグを立て、駆動が正常に終了後フラグ情報をリセットすることによって該当構成部品の動作状況を把握する。
【0067】
また、使用履歴情報も動作フラグとともに記録を行う。
【0068】
動作フラグの使用により、動作途中で電気回路の自己診断回路が破損した場合、あるいは給電回路の損傷等のトラブルが発生したタイミング情報を正確に残せる可能性は高い。
【0069】
情報記憶手段の書き換えが高速で出来ないデバイスの場合、あるいは書き換え回数に限りのあるデバイスの場合には異常終了時のシーケンス内での書き換えとなるので電気回路の自己診断機構まで破損した場合は異常発生部を判断出来ず、自己診断履歴情報の信頼性は高速書き換えタイプを使用したときほど信頼性の高い物にはならない。
【0070】
図3においては印字機構の駆動タイミング内で情報の書き換えが可能なデバイスを使用しているときの手順を示す。
【0071】
電源投入後、印字機構の初期化、設定手順を実施してから、本発明に特有の各構成部品内の情報記憶手段の履歴情報の読み出しを行う。履歴情報に矛盾がある場合、異常動作状態で電源が遮断されている可能性があるので、復元動作に入り、復帰可能かどうか確認を行う。
【0072】
復帰可能ならば通常処理手順に戻る。不可能ならば異常状態を通知して停止する。
【0073】
初期化が正常に終了した時点で、印字機構は画像情報の入力待ちに入る。
【0074】
画像情報を受信すると、画像生成を行い、紙搬送の各段階の動作を決められたタイミングで実行する。タイマー回路、位置センサ等を含む印字シーケンス生成回路によって生成された印字シーケンスが発効され、ソフトウェアはそれによって対応する紙搬送部の動作を起動させたり、終了させたりする。
【0075】
本実施例に特有な処理として紙搬送部の各段の起動時と終了時に動作フラグの書き込み動作とフラグ消去動作が付加されている。
【0076】
動作フラグの書き込みによって、リサイクル時において異常部品の判別が容易となる。
【0077】
また、異常検知時にも、本発明特有の処理として、紙搬送機構の各段のフラグ情報を読み出し、推定される異常部分情報の保存を行う。
【0078】
この情報も同様にリサイクル時において異常部品の判別を容易にする。
【0079】
ユーザーの使用が終了し、回収行程をへた製品は構成部品に分解され、部品種毎により分けられる。非接触型の情報読みとり手段によって構成部品上の情報が読みとられ、履歴情報によって再利用性の状態を判断し、選別される。
【0080】
選別された個別部品はそのまま部材として再利用されたり、パーツの一部交換を行ってから再利用したり、素材還元行程にまわされる。
【0081】
本実施例の構成による回収行程の概略を図3に示す。
【0082】
まず、製品が故障品であるか、正常動作品であるかを判定し、正常品ならば個別部品に分解しする。
【0083】
個別部品履歴と、その部品が再使用可能であるか、部品データベースを確認し、再利用可能であるかどうかを確認する。
【0084】
再利用可能の場合、無条件で再利用可能であるか、計時変化部材の交換等、多少の再生行程が必要であるかを判定し、再利用を行う。
【0085】
再利用不可能な場合は、従来のように素材への還元処理を行う。
【0086】
製品が故障品の場合は故障部品を取り除く必要がある。情報記憶手段内の履歴情報を読み出して、故障部品か否かの判定を行う。
【0087】
故障していない部品と明らかになった部品は通常の処理工程に回す。故障部品は従来リサイクルと同様に素材還元処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施構成例である。
【図2】本発明の実施構成におけるソフトウェア制御手順を示す。
【図3】本発明の実施構成におけるリサイクル行程における処理手順を示す。
【符号の説明】
【0089】
100が製品全体である。製品は多くの個別部品によって構成される。
101は給紙機構である。
102は印字機構である。
103は転写されたイメージを安定させるための機構である。
104は製本機構である。
105は220の外部接続および給電手段である。
200〜が製品を構成する個別部品である。
210〜212は給紙カセットである。
実際の装置構成によっては給紙カセットなどの数は変化する。
213は給紙選択手段である。
214〜217,221,222,223,227,228は紙搬送部を構成する部品である。
218,219は印字装置における画像描画機構である。
220は非接触型の情報読み出し手段に対する給電および情報の読み込みおよび書き出し手段である。
229,230は本装置の給電手段である。
222は画像生成手段である。
226は制御手段である。
300〜が個別部品にそれぞれ実装される非接触型の情報記憶手段である。
400〜は情報記憶手段への書き込み手段である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙搬送系を有する装置であって、
装置を構成する一つないしそれ以上の前記装置の構成要素部品において、非接触型の情報格納手段を有し、
前記装置は前記情報格納手段に対する情報の書き込みおよび読み出し手段を有し、
前記非接触型の情報格納手段において、装置使用時に構成要素の自己診断履歴を記憶更新することを特徴とする。
上記自己診断履歴は、少なくとも動作回数情報と、故障該当部位情報を含む。
上記装置を分解した際の構成要素の可動性確認において、上記非接触型の情報格納手段に格納されている自己診断履歴に基づいて判断を行う。
紙搬送系を有する装置の再資源化行程において、装置構成部品に含まれる非接触型情報格納手段内部の情報の読み出し機構を用意し、取り出した自己診断履歴情報に基づいて再資源化分別を行うことを特徴とする。
【請求項2】
上記紙搬送系を有する装置において、上記の情報格納手段に対する情報の書き込みおよび読み出し手段において、独立した給電および入出力手段を有し、本体動作不可能な状態においても内部情報格納手段の格納情報が読み出せることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−137523(P2006−137523A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327646(P2004−327646)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】