説明

紙片の送り出し装置

【目的】 紙片収容部に積重状に収容された紙片に反り癖などがあっても、紙片の送り出し動作を確実かつスムースに行なえるようにする。
【構成】 紙片収容部1に積重状に収容された紙片Mの幅方向に並設されるとともに、直線往復運動機構15に前進および後退駆動される紙片かき出し用の係合爪部材6を、上記直線往復運動機構15に連結される取付片部61と、この取付片部61から後方へ向かって送出待機位置の紙片Mの後端Ma側へ近づくように延設された弾性変形可能な腕片部62と、この腕片部62の先端に段状に形成されて上記紙片Mの後端Maに係合する爪部63とから構成している。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、タグなどの紙片に印字する印字装置などに適用される紙片の送り出し装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばタグの印字装置に用いられる紙片の送り出し装置では、図5に示すように、多数のタグMを積重状に収容したタグ収容部101内の送出待機位置のタグMに対応して、その幅方向に並設された複数のタグかき出し用の係合爪部材102と、この係合爪部材102を所定の送り出し方向へ沿って前進および後退させる直線往復運動機構103とを備えており、上記係合爪部材102はタグMの後端に係合する剛性の鉤形片で構成されていた。
【0003】
そして、上記直線往復運動機構103により、複数の係合爪部材102を前進させると、この係合爪部材102の先端爪部材102aに係合された上記送出待機位置のタグMがタグ収容部101からかき出されて前方の印字部104側に送り出される。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記したような構成の従来の紙片送り装置は、係合爪部材102が剛性の鉤形片により構成されているので、タグMが、例えば図6のように、反り癖などがついて変形していると、上記送出待機位置に変位したタグMの後端に上記係合爪部材102の先端部102aが十分に係合しないままで送り動作が行なわれ、空送り状態となり、2枚のタグMが係合されて共づれするなどの送り出しミスを発生しやすいものであった。
【0005】
本考案は上記実情に鑑みてなされたもので、積重状に収容された紙片に反り癖などがあっても、紙片を1枚ごと確実に送り出すことができる信頼性の高い紙片の送り出し装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案に係る紙片の送り出し装置は、紙片収容部に積重状に収容された多数の紙片の幅方向に並設されて、上記紙片収容部の送出待機位置に変位した紙片を所定の送り出し方向へ沿って送出する複数の紙片かき出し用係合爪部材と、この係合爪部材を上記送り出し方向へ沿って前進および後退させる直線往復運動機構とを備え、上記係合爪部材は、上記直線往復運動機構側に連結される取付片部と、上記取付片部から後方へ向って上記送出待機位置の紙片の後端側まで漸次近づく状態に延設されて、紙片の厚さ方向へ弾性変形可能な腕片部と、この腕片部の先端に段状に形成されて、上記送出待機位置の紙片の後端に係合する爪部とから構成されたものである。
【0007】
【作用】
本考案によれば、紙片収容部の紙片が送出待機位置に変位すると、紙片かき出し用係合爪部材の先端の爪部が上記紙片の後端に係合し、直線往復運動機構により上記係合爪部材を前進させると、上記紙片が係合爪部材によってかき出されて所定方向へ送り出される。ここで、上記紙片の送り出し時には、係合爪部材における弾性腕片の先端側が紙片に厚さ方向から弾性的に当接するので、上記紙片に反り癖などがあっても、上記爪部が紙片の後端に確実に係合し、順調な紙片の送り出し動作が行なわれる。
【0008】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面にもとづいて説明する。
図1は本考案の一実施例による紙片の送り出し装置を、タグの印字装置に適用した状態で示す縦断側面図である。
【0009】
図1において、1は紙片としてのタグMを多数枚積重状に収容したタグ収容部(収容カセット)、2はタグ収容部1の前方側に配置されて、該収容部1内から送り出されたタグMに所定の印字を行なう印字部であり、該印字部2は、プラテンローラ3、印字ヘッド4およびインクリボン5などから構成されている。
【0010】
上記タグ収容部1内のタグMのうちの送出待機位置(最下段位置)にあるタグMの幅方向には、図2に示すように、上記タグMの後端に係合して該タグMをタグ収容部1から所定の送り出し方向へ沿ってかき出すための複数、たとえば3つの係合爪部材6…が配設されている。これら係合爪部材6は、後述する可動台に連結される取付片部61と、この取付片部61から後方へ向かって送出待機位置のタグMの後端側へ漸次近づく状態に延設されて、タグMの厚さ方向へ弾性変形可能な腕片部62と、腕片部62の先端を上面側に折返して段状に形成されて、上記タグMの後端Ma(図2)に係合する爪部63とからなり、全体は板ばね材料から成形されている。なお、上記腕片部62を2又状にしているのは、弾性変形を容易にさせるためである。
【0011】
7は上記タグ収容部1の下方側に位置して、上記タグMの送り出し方向に沿って前後移動可能に配設された可動台であり、その前側面には、ねじ8などにより上記係合爪部材6の取付片部61が固定されている。9,9は上記可動台7の移動をガイドするガイド部材である。10は上記可動台7の下面に垂設された被駆動杆であり、この被駆動杆10には、後述する駆動ピンの回転運動を直線運動に変換するために上下方向に沿った長孔11が形成されている。12はモータ13で回転駆動される原動円板であり、その偏心位置に上記長孔11内に遊嵌する駆動ピン14が固設されている。これら可動台7、被駆動杆10および原動円板12などにより、上記係合爪部材6に対する直線往復運動機構15が構成されている。
【0012】
つぎに、上記構成の装置の動作について説明する。
いま、直線往復運動機構15により係合爪部材6が後退位置にあると、この係合爪部材6の先端の爪部63が上記タグ収容部1内における送出待機位置に変位したタグMの後端Maに係合している。
【0013】
モータ13を介して原動円板12を図1の状態から半回転させると、駆動ピン14が旋回し、その半回転分の円運動が長孔11を介して直線運動に変換されて被駆動杆10に伝達されて、上記可動台7が上記半回転分に相当する距離だけ前進する。この可動台7の前進によって、上記係合爪部材6も一体に前進するので、上記タグMは係合爪部材6により上記タグ収容部1から前方へかき出されて印字部2に送出される。
【0014】
上記係合爪部材6がタグMをかき出す際には、図3に示すように、その腕片部62の先端側が該タグMの後部下面側に弾性的に当接するので、上記タグMが図6のように、反り癖などで変形したりしても、係合爪部材6の先端の爪部63はタグMの後端に確実に係合し、このため、タグMを空送りすることなく、確実にスムースに送り出すことができる。
【0015】
上記タグMがタグ収容部1から印字部2側へ送り出された後、再び、上記モータ13により原動円板12を半回転させると、駆動ピン14が旋回して上記被駆動杆10を後方へ駆動させるので、上記可動台7と共に係合爪部材6が後退し、この係合爪部材6の爪部63がタグ収容部1の送出待機位置に変位した次のタグMの後端Maに係合することになる。
【0016】
なお、上記タグMの幅方向に並設される複数の係合爪部材6…は、図4に示すように、取付片部61を介して一体に連成して1つのブロック41として構成してもよく、この場合は、組付性を向上することができる。
【0017】
また、上記の実施例では、タグMを送り出すもので説明したが、タグ以外の各種の紙片の送出用として適用できることは勿論である。
【0018】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、紙片かき出し用の係合爪部材を、直線往復運動機構に連結される取付片部と、この取付片部から紙片の後端へ向かって延びる弾性変形可能な腕片と、この腕片の先端に段状に形成されて紙片の後端に係合する爪部とで構成したことにより、紙片収容部に積重状に収容された紙片に反り癖などがついている場合でも、上記腕片部の弾性力で爪部を紙片の後端に確実に係合させて、1枚ごとの紙片の送り出しをミスなく確実に、かつ円滑に行なわせることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例による紙片の送り出し装置を、タグの印字装置に適用した状態で示す縦断側面図である。
【図2】同上実施例における紙片の送り出し装置における係合爪部材を示す拡大斜視図である。
【図3】同上係合爪部材の動作説明用の側面図である。
【図4】複数の係合爪部材を一体に連成してなるブロックの斜視図である。
【図5】従来の紙片の送り出し装置を示す縦断側面図である。
【図6】紙片の空送り状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1 紙片収容部
6 係合爪部材
15 直線往復運動機構
61 取付片部
62 腕片部
63 爪部
M 紙片
Ma 紙片の後端

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 紙片収容部に積重状に収容された多数の紙片の幅方向に並設されて、上記紙片収容部の送出待機位置に変位した紙片を所定の送り出し方向へ沿って送出する複数の紙片かき出し用係合爪部材と、この係合爪部材を上記送り出し方向へ沿って前進および後退させる直線往復運動機構とを備え、上記係合爪部材は、上記直線往復運動機構側に連結される取付片部と、この取付片部から後方へ向って上記送出待機位置の紙片の後端側まで漸次近づく状態に延設されて、紙片の厚さ方向へ弾性変形可能な腕片部と、この腕片部の先端に段状に形成されて、上記送出待機位置の紙片の後端に係合する爪部とから構成されたことを特徴とする紙片の送り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【登録番号】第3003782号
【登録日】平成6年(1994)8月24日
【発行日】平成6年(1994)11月1日
【考案の名称】紙片の送り出し装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−1405
【出願日】平成6年(1994)1月18日
【出願人】(390006161)オリジン工業株式会社 (3)