説明

紙紐原紙、紙紐及び紙紐網状体

【課題】環境保全性に優れた紙紐原紙、紙紐、及び紙紐網状体を提供すること。紙紐に撚るとき、作業性にすぐれた紙紐原紙を提供すること。紙紐網状体に編むとき作業性に優れた紙紐を提供すること。
【解決手段】本発明の紙紐原紙は、植物繊維を主成分とし、滑剤を含有し、静摩擦係数が0.15〜0.50であることが好ましい。該紙紐原紙からなる紙紐である。該紙紐からなる紙紐網状体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙紐原紙、紙紐及び紙紐網状体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙紐は古来から水引、紙布、紙縒りなどに使用されてきたが、工芸品の域を脱せず、工業的に生産される紐の原料としては、麻や綿などの植物繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維などが使用されている。綿、麻などの天然繊維を原料とするものにあっては、何分にも高価であり、最近ではほとんど合成繊維が使用されているのが実情である。そして、このような紐は、紐単独で結束用に使用されるのは勿論だが、編網され網状体として、袋などの収納体、植生用網状体、植物栽培用ネット、建築工事用ネット、スポーツ用ネットなどに広く使用されている。ところが、合成繊維は、廃棄する時に、焼却処理すると環境に悪影響を及ぼすガスの発生が懸念され、地中に埋立処理すると微生物により分解しがたいので、半永久的に消滅せず環境を汚染するという問題を有する。また、合成繊維は石油や石炭などの化石資源を原料としているので資源の枯渇を招く。
【0003】
一方、環境保全の観点から紙紐を使用した紙紐網状体が提案されている(特許文献1〜5)。紙紐は植物繊維を主成分とする紙を撚って作られるので、燃焼処理時に発生する炭酸ガスは植物体の成長時に吸収され地球環境の炭酸ガス濃度の増加につながらない。また、地中に埋立処理すると、微生物により容易に分解する。しかし、紙は、紙紐に撚る時や、紙紐を網状体に編む時に、撚紐機や編網機の部材に引っ掛って安定走行しがたく切れやすく、工業的生産に対応しがたいという問題があった。
【特許文献1】特開2004−115957号公報
【特許文献2】特開2004−173568号公報
【特許文献3】特開2004−173886号公報
【特許文献4】特開2004−183417号公報
【特許文献5】特開2005−105511号公報
【特許文献6】特開昭59−173329号公報
【特許文献7】特開平10−1166号公報
【特許文献8】特開2000−32852号公報
【特許文献9】特開2005−23483号公報
【特許文献10】特開昭52−143117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境保全性に優れた紙紐原紙、紙紐、及び紙紐網状体を提供すること。紙紐に撚るとき、作業性にすぐれた紙紐原紙を提供すること。紙紐網状体に編むとき、作業性に優れた紙紐を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の紙紐原紙は、植物繊維を主成分とし、滑剤を含有する(請求項1)。前記滑剤は、ポリオレフィン系、パラフィン系、ワックス系、アルキルケテンダイマー系から選ばれた少なくとも1種である(請求項2)。本発明の紙紐原紙は、静摩擦係数が0.15〜0.50である(請求項3)。本発明の紙紐原紙は、サイズ剤を含有する(請求項4)。本発明の紙紐原紙は、湿潤紙力増強剤を含有する(請求項5)。本発明の紙紐原紙は、引張強さの縦/横比が、5〜15である(請求項6)。
【0006】
本発明の紙紐は、前記紙紐原紙からなり、また 本発明の紙紐網状体は、前記紙紐からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙紐原紙は、植物繊維を主成分とするので、それを使用した紙紐や紙紐網状体の廃棄処理に当たって、焼却処理しても有害物質を発生しない。また、燃焼により発生した炭酸ガスは植物体に吸収されるので、地球環境の炭酸ガス濃度を高めない。土中に埋立処理した場合、微生物により分解され土中への同化性に優れている。従って、環境保全性や人体への安全性に優れるものである。また、石油系、石炭系の合成繊維を使用していないので、化石資源を枯渇させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の紙紐原紙について説明する。
本発明の紙紐原紙は、植物繊維を主成分とする。
植物繊維とは、木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ、コットンパルプ、大麻パルプ、ジユートパルプ、三椏パルプ、楮パルプ、雁皮パルプ、リントパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、エスパルトパルプ、ワラパルプ、古紙パルプ、及びぼろパルプなどが挙げられる。
木材パルプとしては化学パルプ、セミケミカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、機械パルプなどが挙げられる。また、樹種としては針葉樹、広葉樹を問わない。化学パルプとしては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ等が挙げられ、漂白パルプ、未漂白パルプを問わない。
本発明の紙紐原紙に使用する前記植物繊維は、それぞれ単独で使用するか、2種類以上を適宜混合して使用してもよい。
また、合成パルプ、レーヨン繊維、合成繊維などを併用することもできる。併用する場合は、生分解性を有するものが好ましい。
【0009】
前記植物繊維は、土中で紙紐が形態を容易に崩壊できるように紙紐原紙中の全繊維成分中30重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含まれることである。
【0010】
また、紙紐の強度が必要な場合、植物繊維は、繊維長が大きく、アスペクト比(繊維長/繊維幅)が大きいことが好ましい。このような植物繊維としては、針葉樹パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ、大麻パルプ、ジユートパルプ、三椏パルプ、楮パルプ、雁皮パルプなどが挙げられる。針葉樹パルプとしては化学パルプが好ましく、クラフトパルプがより好ましい。紙紐の強度が必要な場合は、上記の繊維長及びアスペクト比が大きい植物繊維の1種または2種以上を紙紐原紙中の構成材料(繊維+填料)中に70重量%以上含有することが好ましく、85重量%以上がより好ましく、100重量%であることが特に好ましい。繊維長及びアスペクト比が大きいと縦方向の引張強さが発現しやすく、引張強さの縦/横比を5〜15にし易い。
【0011】
また、本発明の紙紐原紙として、日本古来から製造されている「和紙」も含まれる。「和紙」には、三椏パルプ、楮パルプ、マニラ麻パルプおよび雁皮パルプ等が使用され、特有の強度を有している。機械すき和紙および手すき和紙のいずれも含まれ、木材化学パルプを使用した機械すき和紙も含まれる。
【0012】
植物繊維は、叩解機で叩解して使用される。叩解機としては、ビーター、コニカル型リファイナー、ドラム型リファイナー、シングルデスクリファイナー、ダブルデスクリファイナーなどが使用できる。叩解の程度は、目的に応じて適宜調整するが、スリッター性、撚紐性、編網性、紙紐の強度や紙紐網状体の強度、紙紐や紙紐網状体としての取り扱いのし易さ等を鑑みるとJIS P8121:1995に記載のショッパーろ水度で20〜75°SRが好ましく、25〜70°SRがより好ましく、30〜60°SRがさらに好ましい。75°SRを越えると、原紙が硬くなる、引裂強さ・引張強さが低下する等のため、撚紐工程や編網工程で切断する可能性が増し、作業性が低下するし、紙紐や紙紐網状体としての使用する時に強度不足や取扱い性が悪くなるなどの支障をきたす。20°SR未満では原紙の引張強さが不足し、スリッター工程、撚紐工程や編網工程で切断が生じ易くなり作業性が低下するし、紙紐や紙紐網状体としての強度も低下するなどの問題を生じる。
【0013】
また、本発明の紙紐原紙には、必要に応じて、サイズ剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、定着剤、撥水剤、各種の填料、および歩留り向上剤、染料、着色顔料等を使用することも出来る。
【0014】
本発明の紙紐原紙は殆どの用途において水に濡れにくく水が浸み込みにくいことが要求されるので、サイズ剤を含有することが好ましい。湿潤紙力増強剤と併用する場合は、湿潤紙力を増強する効果も有する。
サイズ剤には内添サイズ剤と表面(外添)サイズ剤とがある。内添サイズ剤としては、ロジン系のほかアルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、合成高分子型等の内添サイズ剤が挙げられる。
内添サイズ剤は中性サイズ剤が好ましい。中性サイズ剤は原紙のPHを中性とし、光や熱による原紙の劣化を防止し、紙紐及び紙紐網状体として、長期使用を可能とする。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、合成高分子型が主だが、ロジン系を使用することも出来る。
表面サイズ剤としては、合成高分子型の表面サイズ剤が多いが、アルキルケテンダイマー系を表面サイズ剤として使用することもできる。
上記各種サイズ剤のうち、アルキルケテンダイマー系は、内添においても、外添においても滑剤としての機能も有する。
【0015】
内添サイズ剤の添加量は、構成材料(繊維+填料)に対して0.1〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがより好ましく、0.1〜0.7重量%であることがさらに好ましい。0.1重量%未満では十分な耐水性が得られず、1.5重量%を越えると添加量が過剰となり、耐水性向上効果が上がらないばかりでなく、他の添加剤とのバランスが狂って、繊維の凝集や、浮種の発生を招くとか、他の添加剤(例えば湿潤紙力増強剤)の効果を減じるなどの弊害を生じる。
【0016】
本発明の紙紐原紙には、必要に応じて湿潤紙力増強剤を使用することが好ましい。本発明の紙紐や紙紐網状体が屋外で使用される場合、また、水で濡れる用途に使用される場合、例えば植生用網状体、植物栽培用ネット、建築工事用ネット、スポーツ用ネット等に使用される場合においては水が浸み込んでも強度を維持することが必要である。特に建築工事用ネットや屋外スポーツ用ネットに使用される場合は湿潤紙力増強剤を使用する必要がある。
【0017】
この場合の、湿潤紙力増強剤は、特に限定されるものではないが、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアルデヒドデンプン、ポリアクリルアミド系樹脂及びポリエチレンイミン等から選択された少なくとも1種が本発明に好適に適用出来る。これらの中、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、メラミン系樹脂が好ましく使用できる。
【0018】
湿潤紙力増強剤の使用量は、構成材料(繊維+填料)に対して0.1〜2.5重量%が好ましく、0.15〜1.5重量%がより好ましく、0.2〜1.0重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では湿潤紙力が不足し使用上支障をきたす。一方、2.0重量%越えて使用しても構成材料に定着せず単にコストアップになるだけでなく、紙料中の添加剤のバランスが狂ってパルプを凝集させ地合を悪化させるとか、泡や浮種の発生をきたすとか、他の添加剤(例えばサイズ剤)の効果を低下させるなどの逆効果をもたらす。
なお、外添において、塗工液中に耐水化剤を含有させることによっても湿潤紙力を付与することも可能である。
塗工用の耐水化剤としては、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、グリオキザール、エポキシ系ポリアミド系樹脂、ジアルデヒド澱粉などが挙げられる。
【0019】
本発明の紙紐原紙は滑剤を含有することが必要である。滑剤を含有させることによって、原紙及び紙紐に滑り性を付与でき、撚紐機や編網機で引っ掛かることもなく走行が安定し、撚紐工程での原紙テープの切断や編網工程での紙紐の切断を防止することができる。特に編網工程においては強い力が掛かることが多く、切断しにくいことは重要である。
【0020】
滑剤としては、ポリオレフィン系(ポリエチレン系など)、パラフィン系、ワックス系、シリコーン系、アルキルケテンダイマー系、フッ素系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系および脂肪酸金属塩系などの化合物が挙げられる。これらの中で、ポリオレフィン系、パラフィン系、ワックス系、アルキルケテンダイマー系が好ましい。ポリオレフィン系ではポリエチレン系が好ましい。滑剤は、離型剤、撥水剤、ダスティング防止剤、サイズ剤などとして市販されているものから適宜選択できるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
滑剤を含有させる方法は、内添、外添を問わないし、内添、外添を併用してもよい。
外添方法は、オンマシン処理であっても、オフマシン処理でもあってもよいが、製造コストの点でオンマシン処理であることが好ましい。
オンマシン処理には、サイズプレス、ゲートロールコーター、メタリングサイズプレス、ビルブレードコーター等が使用できる。
オフマシン処理には、ロールコーター、メイヤーバーコーター、ブレードコーター、含浸機などを使用することができる。
【0022】
外添の場合、滑剤の塗工量は、塗工前原紙に対して0.005〜2.0g/mであることが好ましく、0.01〜1.5g/mであることがより好ましく、0.01〜1.0g/mであることがさらに好ましい。0.005g/m未満であると原紙に滑り性を付与する効果が少ない。2.0g/mを越えると原紙が滑り過ぎて、原紙の巻取り工程、原紙のスリット工程、撚紐工程、編網工程で支障をきたすばかりでなく、紙紐及び網状体として取扱いにくくなる。
【0023】
外添の塗工液には、必要に応じて、表面サイズ剤、撥水剤、表面紙力増強剤、耐水化剤、顔料、低抵抗処理剤(静電気防止剤)、柔軟化剤、防黴剤、抗菌剤、顔料、着色剤、難燃剤などを混合して塗工することができる。
【0024】
内添の場合、滑剤の添加量は、構成材料(繊維+填料)に対して0.1〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがより好ましく、0.1〜0.7重量%であることがさらに好ましい。0.1重量%未満では十分な滑り性が得られず、1.5重量%を越えると添加量が過剰となり、滑り性向上効果が上がらないばかりでなく、他の添加剤とのバランスが狂って、繊維の凝集や、浮種の発生を招くとか、他の添加剤(例えば湿潤紙力増強剤)の効果を減じるなどの弊害をも生じる。
【0025】
内添の滑剤は、サイズ剤としての効果をも有するものが好ましく、アルキルケテンダイマー系が特に好ましい。内添でアルキルケテンダイマー系を使用し、外添でポリエチレン系またはパラフィン系を使用することが特に好ましい。
【0026】
更にまた、定着剤は、抄紙工程において、微細繊維,薬品類及び填料等のロスを少なくし収率向上と薬品の有効利用のために添加され、例えばポリアクリルアミドを代表とする有機高分子系電解質や、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)に代表される無機塩類等が本発明の紙紐原紙に適用可能である。
【0027】
本発明においては、紙料の分散性やろ水性の制御のために必要に応じて粘剤を使用することが好ましい。紙料の分散性やろ水性を制御することにより紙紐原紙の地合を良好とすることが出来る。地合が良いことは紙紐原紙中の構成材料(繊維+填料)の分布が均一であり、原紙強度が向上し、また、均一な紙紐が得られ、スリット性、撚紐性、編網性が向上する。さらに、紙紐や紙紐網状体の取り扱いもし易い。
粘剤としては、例えばトロロアオイのような植物から得られる粘液、高分子量のポリエチレンオキサイド系やポリアクリルアミド系のような水溶性合成高分子があるが、特性の安定性や価格面から水溶性合成高分子が好ましい。
水溶性合成高分子の中、ポリエチレンオキサイド系は、紙料液を発泡させるとか、紙の強度を出にくくするので好ましくない。本発明においては、発泡性がなく、かつ紙の強度を増強する傾向にあるポリアクリルアミド系を使用することが好ましい。
粘剤の添加量は、構成材料(繊維+填料)に対して0.1〜1.5重量%が好ましく、0.5〜1.3重量%が好ましく、0.7〜1.2重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では効果が不足し、1.5重量%を越えるとスラリーの粘度が高くなり過ぎて、かえって分散不良になるとか、ろ水性が悪くなるなどの弊害が生じる。
【0028】
次に、本発明の紙紐原紙の物理特性について説明する。
本発明の紙紐原紙の坪量は、15〜80g/mであるのが好ましく、は20〜50g/mであることがより好ましく、25〜45g/mであることがさらに好ましく、30〜45g/mであることが特に好ましい。坪量が15g/mに満たないと撚紐時に原紙テープが切断しやすく、80g/mを超えると剛性が高くなって特に細い紙紐を撚りにくくなる。
【0029】
本発明の紙紐原紙の厚さは、坪量及び密度によって決まるものである。
本発明の紙紐原紙の密度は、0.50〜0.80g/cmであることが好ましく、0.55〜0.75g/cmであることがより好ましく、0.60〜0.70g/cmであることがさらに好ましい。密度が0.50g/cm未満では原紙が嵩ばっているため均一な紙紐を作りにくい。また、紙紐や紙紐網状体が軟らかいものになり硬さが要求される用途に適さなくなる。0.80g/cmを越えると原紙が硬くなるので均一な紙紐を作りにくい。また、紙紐や紙紐網状体に加工しにくい。さらに紙紐や紙紐網状体として取り扱いにくくなる。
【0030】
本発明の紙紐原紙の静摩擦係数は、0.15〜0.50であることが好ましく、0.20〜0.45であることがより好ましく、0.25〜0.40であることがさらに好ましい。静摩擦係数が0.15未満では、原紙が滑り過ぎて、原紙の巻き取り工程、スリット工程、撚紐工程、編網工程で作業性が低下するばかりでなく、紙紐や網状体として使用する際、取扱いにくくなる。特にスリット工程ではテープ状の小巻が横ズレし易く作業性が悪い。静摩擦係数が0.50を越えると、撚紐工程、編網工程中で引っ掛かりやすくなり走行が乱れ、切断を起しやすくなる。特に編網工程では強い力を受けるので紙紐が切断しやすい。
静摩擦係数は、滑剤の種類及び添加量を適宜調節し制御できる。
例えばポリエチレン系を外添する場合は、塗工前の原紙に対して0.005〜0.20g/mであることが好ましく、0.01〜0.15g/mであることがより好ましく、0.01〜0.10g/mであることがさらに好ましい。
パラフィン系を外添する場合は、塗工前の原紙に対して0.01〜2.0g/mであることが好ましく、0.20〜1.0g/mであることがより好ましく、0.30〜0.90g/mであることがさらに好ましい。
アルキルケテンダイマー系を内添する場合は、構成材料(繊維+填料)に対して0.1〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがより好ましく、0.1〜0.7重量%であることがさらに好ましい。
複数種類の滑剤を併用する場合は、相乗効果を加味して適宜調節すればよい。
い。
【0031】
本発明の紙紐原紙の縦方向の引張強さが50N/15mm以上であることが好ましく、70N/mm以上であることがより好ましく、100N/15mm以上がさらに好ましい。縦方向の引張強さが50N/15mm未満では、原紙のスリット工程及び撚紐工程で紙切れするおそれがあるし、編網工程で紙紐が切断するおそれがある。
横方向の引張強さは5N/15mm以上であることが好ましく、8N/15mm以上であることがより好ましい。横方向の引張強さが5N/15mm未満では、撚紐工程にてテープ状原紙が縦に裂けるおそれがある。
【0032】
本発明の紙紐原紙は、縦方向の引張り強さと横方向の引張り強さの比(縦/横比)が5〜15であることが好ましく、7〜15であることがより好ましく、10〜15であることがさらに好ましい。当該引張強さの縦/横比が5未満では、原紙の原反からテ−プ状にスリットする時、撚紐時に紙切れのおそれがあるとともに、紙紐の強度が小さくなり、編網に十分な張力が掛けられず編網工程の効率に支障をきたすとか、紙紐網状体として使用した時に強い負荷に耐えられないなどの問題を生じる。一方、15を超えて大きいとテ−プ状にスリットする時、撚紐時に縦方向に裂けるおそれがあり、また、原紙の縦方向の剛性が大きくなり過ぎて紙紐に撚りにくくなったり、紙紐としての剛性も大きくなりすぎて巻き取りにくくなったり、編網しにくくなる。また、紙紐網状体を使用するとき取扱いにくくなる。
縦/横比を5〜15の範囲に調整するには、繊維長及びアスペクト比が大きい植物繊維を使用し、順流式円網抄紙機を使用して抄造することが好ましく、プレスパート、ドライヤーパートでのドローを大きくとることがより好ましい。
【0033】
本発明の紙紐原紙の縦方向の湿潤引張強さは15N/15mm以上であることが好ましく、20N/15mm以上であることがより好ましく、23N/15mm以上であることがさらに好ましい。湿潤引張強さが15N/15mm未満では、屋外で使用される用途、特にスポーツ用ネットや建築工事用ネットでの使用に耐えない。
【0034】
本発明の紙紐原紙のサイズ度(ステキヒト・サイズ度)は3秒以上が好ましく、5秒以上がより好ましく、7秒以上がさらに好ましい。サイズ度が3秒未満では水で濡れると不都合な用途に使用し難い。
本発明の紙紐原紙のPHは5.7〜10.0であることが好ましく、6.0〜9.0であることがより好ましい。PHが5.7未満であると、光や熱で劣化し易く、10.0を越えると繊維中のヘミセルロースの劣化を促すので好ましくない。
【0035】
本発明の紙紐原紙の製造方法について説明する。
本発明の紙紐原紙を製造は、前記の植物繊維を主成分とするスラリーに前記各種添加剤を順次所定の割合で配合した抄紙原料のスラリ−を湿式抄紙機にて抄造することにより行われる。
添加剤の添加順序は、添加剤を有効に作用させるために重要である。本発明においては湿潤紙力増強剤→サイズ剤→(定着剤)→粘剤の順が好ましい。外添の滑剤は、[0021]に記載の方法で添加される。
本発明の紙紐原紙を抄造する湿式抄紙機は、一般の抄紙技術に適用されている長網抄紙機および円網抄紙機等特に限定されるものではないが、紙紐原紙に必要な強度、特に縦方向の引張強さを十分に確保することと、引張強さの縦/横比を5〜15とするためには繊維長及びアスペクト比が大きい植物繊維を使用し、円網抄紙機を使用することが好ましく、順流型バットによる円網抄紙機がより好ましく、さらには、プレスパート、ドライヤーパートでのドローを大きくとることが好ましい。また、ドライヤーはドロー調整箇所が多い多筒式ドライヤーが好ましい。
また、本発明の紙紐原紙は、単層紙のほか、2層以上の抄き合わせ紙とした構成でもよく、2層抄き以上であるとより均一な原紙となるので好ましい。
【0036】
次に、本発明の紙紐及び紙紐網状体について説明する。
上記の抄紙工程によって得られた原紙は幅5〜50mmで巻長さが500m程度にスリット加工されテープ状とされ小幅の巻取りとされ、撚紐機にセットして撚りをかけることにより紙紐に加工される。本発明の紙紐は、コストの点から原紙テープ1本で作製することが好ましいが、必要に応じ何本かを編んで使用しても良い。紙紐の太さは特に限定はないが、取扱いやすさや、編網しやすさの点で、直径が1〜10mm位が好適である。
【0037】
上記の工程で得られた本発明の紙紐を使用して本発明の紙紐網状体を作製するには、編網機を用いて通常の網製造技術により、有結節網若しくは無結節網に編網すればよい。またメッシュ状及び織物状に織ってもよい。
本発明の紙紐網状体は、特に無結節網であることが好ましい。無結節網は、結び目がなく連接部が平面的になり、かつ重量が軽く嵩張らないために使用の際、取扱い易い。網を部分修理することも可能で、その作業性がよい。又、無結節網は網目が正確で落目がないために紙紐網状体にした場合、外観が良い。更に又、無結節網は結節が無いのであるから有結節網に比べて、使用後土中に埋立処理した時、連結部が容易に分解しやすく土に同化しやすいという利点も有する。
【0038】
本発明の紙紐網状体に適用可能な無結節網の事例を、図1〜7として挙げておく。すなわち、図1は貫通型と称され2子の網糸の子糸を互いに交叉させ、網糸とは連接部を貫通して直線的に伸びる構造を有し、図2は千鳥型で2子の網糸の子糸を2〜3回交差させたもので、網糸はジグザグに伸びた構造を有し、図3は亀甲型で2子の網糸の子糸を2〜3回交差させたもので、網糸は連接部を経て直線的に伸びる構造を有し、図4はラッセル網と称され、いわゆる「レース網」にてつくられた網地であり、図5はもじ網(普通もじ網)と称され縦糸を撚り合わせ、その間に横糸を通して網目としたもので、図6はもじ網(改良もじ網)と称され上記横糸を撚り合わせたものを用い、目ずれを小さくしたもので、図7は織網で糸を単純に交差させたものである。何れも本発明の紙紐網状体の実施態様であり、用途に応じて適宜選択することができる。
【0039】
なお、本発明の紙紐網状体には、必要に応じて、耐水性の付与又は物理強度の向上を目的に、樹脂成分を塗布若しくは含浸しても良い。この場合の樹脂成分の塗布若しくは含浸はネットに加工する前の段階、すなわち紙紐や原紙に予め施しておいても良い。
また、その他の機能付与剤、例えば屋外での耐候性を高めるために紫外線吸収剤や難燃性とするために難燃剤を含有させてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例にて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。また、内添剤の添加量は、パルプ重量に対する内添剤の固形分の重量%である。
【0041】
使用した原材料は下記のとおりである。
・パルプ:パルプA・・北米産針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)
パルプB・・南米産針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)
パルプC・・古紙パルプ
・内添サイズ剤:内添サイズ剤A・・アルキルケテンダイマー系
(荒川化学社製、商品名「サイズパインK−287」)
内添サイズ剤B・・ロジン系
(荒川化学社製、商品名「サイズパインE」)
・湿潤紙力増強剤:ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂
(昭和高分子社製、商品名「ポリフィックス301」)
・定着剤:硫酸アルミニウム(硫酸バンド)
・外添滑剤:外添滑剤A・・ポリエチレン系離型剤
(サンノプコ社製、商品名「ノプコートPEM−17」)
外添滑剤B・・パラフィン系撥水剤
(星光PMC社製、商品名「WR3908」)
【0042】
<実施例1>
パルプA[北米産針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)]をダブルデスクリファイナーで40゜SRに叩解し水性スラリーとし、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂からなる湿潤紙力増強剤(昭和高分子社製、商品名「ポリフィックス301」)0.3重量%、サイズ剤A[アルキルケテンダイマー系(荒川化学社製、商品名「サイズパインK−287」)]0.3重量%、ポリアクリルアミド系合成粘剤(ダイヤニトリックス社製、商品名「アクリパーズPS」)1.0重量%とを上記の順序で添加し、順流型の円網抄紙機に適用して、坪量約38g/mの2層構成の原紙を作製した。この原紙にサイズプレスにて、滑剤A[ポリエチレン系離型剤(サンノプコ社製、商品名「ノプコートPEM−17」)]を固形分で0.05g/mとなるよう塗布し、本発明の紙紐原紙を作製した。
【0043】
<実施例2〜13、及び比較例1〜3>
表1に記載の原材料配合で実施例1と同様にして実施例2〜13、及び比較例1〜3の紙紐原紙を作製した。なお、実施例8、12、13、比較例1〜3の添加剤の添加順序は、湿潤紙力増強剤→サイズ剤B→硫酸バンド→粘剤の順序である。
なお、比較例1〜3は内添においても外添においても滑剤を使用していないものである。
【0044】
実施例1〜13及び比較例1〜3の紙紐原紙の物理特性を測定し表1に示した。
各物理特性の測定方法は下記のとおりである。なお、試料の調湿及び試験のための標準状態はJIS P8111:1998による。
・坪量:JIS P8124:1998
・厚さ:JIS P8118:1998
・密度:JIS P8118:1998
・静摩擦係数:JIS P8147:1994,3.1
・引張強さ:JIS P8113:1998
・湿潤引張強さ:JIS P8135:1998・・浸せき時間20分
・サイズ度:JIS P8122:2004
・PH:JIS P8133:1998,7.1
【0045】
次いで実施例1〜13及び比較例1〜3の紙紐原紙をボビンワインダ−にて幅40mmの細長いテ−プ状にスリット加工した。
スリット性を走行性、紙切れの有無、巻取り性等の点から評価し、結果を表1に示した。評価基準は下記のとおりである。
○:問題なし、△:若干問題あるが実用可能、×:作業上トラブルあり。
【0046】
スリット加工したテープ状原紙を撚紐機にセットして28回/30cmの撚りをかけて、直径が3mmの紙紐を作製した。
撚紐特性を走行性、切断の有無、巻取り性等の点から評価し結果を表1に示した。評価基準は下記のとおりである。
○:問題なし、△:若干問題あるが実用可能、×:作業上トラブルあり。
【0047】
前記紙紐を市販の編網機に供し、図1に示す貫通型であって開口率の少ない無結節網を作成した。
編網機での編網性を走行性、切断の有無等の点から評価し、結果を表1に示した。評価基準は下記のとおりである。
○:問題なし、△:若干問題あるが実用可能、×:作業上トラブルあり。
【0048】
【表1】

【0049】
本発明の紙紐原紙はスリット時、撚紐時、及び編網時の加工性が優れていることが確認された。
比較例1〜3の紙紐原紙は撚紐時に走行性がやや不安定であり、編網時に紙紐の切断が頻発し、作業性が劣り、工業的量産に不向きであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の紙紐原紙は、スリット工程、撚紐工程、編網工程でトラブルを起さず、紙紐及び紙紐網状体を工業的に量産できる。
本発明の紙紐は、結束用などの紐としての用途にも使用できる。また、包装用の紙バンドにも使用できる。中空紐状とすれば畳表の材料等にも使用できる。また、織って、工芸品や紙布などにも使用できる。
本発明の紙紐網状体は、植生用網状体、植物栽培用ネット、収納体(袋など)、建築工事用ネット、スポーツ用ネットなどに広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の紙紐網状体の一例:貫通型の無結節網の平面図
【図2】本発明の紙紐網状体の一例:千鳥型の無結節網の平面図
【図3】本発明の紙紐網状体の一例:亀甲型の無結節網の平面図
【図4】本発明の紙紐網状体の一例:ラッセル網の平面図
【図5】本発明の紙紐網状体の一例:普通もじ網の平面図
【図6】本発明の紙紐網状体の一例:改良もじ網の平面図
【図7】本発明の紙紐網状体の一例:織網からなる無結節網の平面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維を主成分とし、滑剤を含有することを特徴とする紙紐原紙。
【請求項2】
前記滑剤は、ポリオレフィン系、パラフィン系、ワックス系、アルキルケテンダイマー系から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の紙紐原紙。
【請求項3】
静摩擦係数が0.15〜0.50であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙紐原紙。
【請求項4】
サイズ剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紙紐原紙。
【請求項5】
湿潤紙力増強剤を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紙紐原紙。
【請求項6】
引張強さの縦/横比が、5〜15であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の紙紐原紙。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の紙紐原紙からなることを特徴とする紙紐。
【請求項8】
請求項7に記載の紙紐からなることを特徴とする紙紐網状体。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−336115(P2006−336115A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158284(P2005−158284)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】