紙葉類処理装置及び取引装置
【課題】 紙幣の出入のための構成が簡単で密に配置され、小形で廉価な紙幣入出金機を提供する。
【解決手段】 本発明の紙幣入出金機は、利用者との間で紙幣を授受する口部となっている紙幣入出金口部と、利用者との間で授受する紙幣を判別する紙幣判別部と、紙幣を収納する少なくとも一つの紙幣収納部と、紙幣を搬送する紙幣搬送路を有する。紙幣入出金口部は、利用者との間で授受する紙葉類を一時的にプールする紙幣プール部と、この紙幣プール部にプールされた紙幣から1枚ずつ分離して繰出し、紙幣搬送路に供給する紙幣分離部とを有する。そして、紙幣プール部だけでなく紙幣分離部を含めて紙幣入出金口部が回転可能になっていることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の紙幣入出金機は、利用者との間で紙幣を授受する口部となっている紙幣入出金口部と、利用者との間で授受する紙幣を判別する紙幣判別部と、紙幣を収納する少なくとも一つの紙幣収納部と、紙幣を搬送する紙幣搬送路を有する。紙幣入出金口部は、利用者との間で授受する紙葉類を一時的にプールする紙幣プール部と、この紙幣プール部にプールされた紙幣から1枚ずつ分離して繰出し、紙幣搬送路に供給する紙幣分離部とを有する。そして、紙幣プール部だけでなく紙幣分離部を含めて紙幣入出金口部が回転可能になっていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉類処理装置及び取引装置に関し、例えば、自動取引装置(いわゆるATM)に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
自動取引装置には、紙幣の取り扱いを行う紙幣入出金機が搭載されている。従来、この種の紙幣入出金機として、利用者が投入した紙幣を受け入れ、装置内部に1枚ずつ取り込み、また利用者に払い出す紙幣を収納する紙幣入出金口部と、紙幣を判別する紙幣判別部と、入金した紙幣を一時的に収納する一時保留部と、入金された紙幣を収納し、出金用として繰出す紙幣収納庫と、紙幣収納庫より繰出された紙幣のうち、出金に適さない紙幣を収納するリジェクト収納庫と、各部を接続し紙幣を搬送する紙幣搬送路で構成されるものが提案されている。紙幣入出金口部の構成としては、特許文献1や特許文献2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の紙幣入出金口部は、紙幣を収納し、投入された紙幣に混入している異物(例えば硬貨)を底部から落下できるようにした紙幣ガイド(紙幣プール壁)と、投入された紙幣を繰出しローラに押付けるビルプレスと、紙幣ガイドとビルプレスで形成された紙幣プール部と、紙幣プール部の下方に設けられた異物回収箱と、入金された紙幣を1枚ずつ分離し、第1搬送路へ繰出す紙幣分離部と、出金や入金リジェクトなどの利用者に渡す紙幣を、紙幣プール部に搬送する第2搬送路とで構成されている。特許文献1に記載の紙幣入出金口部においては、利用者に紙幣を投入させる「入金時」には、投入される紙幣の長辺が下向きで紙幣がほぼ直立するように紙幣プール部を配置し、入金紙幣を分離し搬送路へ繰出す「入金紙幣の分離・繰出時」や、利用者に渡すため出金紙幣を集積し収納する「出金時」には、紙幣がほぼ水平になるように紙幣プール部を配置する。すなわち、紙幣プール部は回動可能になされており、「入金時」、「入金紙幣の分離・繰出時」、「出金時」などに応じた配置をとるように適宜回動される。
【0004】
特許文献2に記載の紙幣入出金口部も、紙幣プール部と異物回収箱と分離部で構成され、「入金時」には、投入される紙幣の長辺が下向きで紙幣がほぼ直立するように回動自在な紙幣プール部を配置し、「入金紙幣の分離・繰出時」や「出金時」には紙幣がほぼ水平になるように紙幣プール部を配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−199914
【特許文献2】特開平8−194861
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の紙幣入出金機では、紙幣プール部に投入された紙幣の分離・繰出しを行う場合、紙幣束の重力方向最下位の紙幣から分離するため、分離直後に紙幣の搬送異常を検知して紙幣プール部に戻す「分離戻し」の際、紙幣プール部にある紙幣を上昇させ、収納されている紙幣と分離戻しされた紙幣が衝突しないようにする可動板が必要となり、紙幣入出金機が複雑化し、コスト増加になるという課題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の紙幣入出金機では、紙幣束の重力方向最上位の紙幣から分離し繰出しを実行できるため、「分離戻し」の際、紙幣プール部内の紙幣は、ビルプレスを降下させることで退避でき、分離戻しされた紙幣がそれら紙幣と衝突しない。なお、特許文献2にはビルプレスを降下させることは記載されていないが、ビルプレスを降下させる従来方法を特許文献2の技術思想に組み合わせることは容易である。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の紙幣入出金機では、紙幣分離部が紙幣プール部の上部近傍に設けられるため、入金時に投入された紙幣のうち、紙幣判別部で“不適”と判別された紙幣、すなわち「入金リジェクト紙幣」を一時収納する入金リジェクトプール部を、紙幣入出金口部より離れた位置に配置することが必要となる。紙幣入出金口部より離れた位置に配置された入金リジェクトプール部から入金リジェクト紙幣を利用者に返却するためには、入金リジェクト紙幣を長距離搬送するので、複数枚あっても1枚ずつ搬送しなければならず、入金リジェクトプール部に分離部が必要となってしまい、紙幣入出金機の大形化しコスト増加になるという課題があった。入金リジェクト紙幣の返却をも含めた入金処理時間が長期化してしまうという課題もある。
【0009】
なお、入金リジェクトプール部を紙幣入出金口部の近傍に設けた場合には、入金リジェクトプール部の位置を考慮して、紙幣入出金口部における紙幣分離部の位置を定めなければならず、このように定められた紙幣分離部の位置が、他の構成を最適位置からずらして配置させるようなことも生じている。
【0010】
そのため、紙葉類の出入のための構成が簡単で密に配置され、小形で廉価な紙葉類処理装置や取引装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、第1の本発明は、利用者との間で紙葉類を授受する口部となっている紙葉類授受口部と、利用者との間で授受する紙葉類を判別する紙葉類判別部と、紙葉類を収納する少なくとも一つの紙葉類収納部と、紙葉類を搬送する紙葉類搬送路を有する紙葉類処理装置において、上記紙葉類授受口部は、利用者との間で授受する紙葉類を一時的にプールする紙葉類プール部と、この紙葉類プール部にプールされた紙葉類から1枚ずつ分離して繰出し、上記紙葉類搬送路に供給する紙葉類分離部とを有し、紙葉類プール部及び紙葉類分離部を含めて回転可能になっていることを特徴とする。
【0012】
第2の本発明は、紙葉類処理装置を備え、利用者が所望した取引に応じ、利用者から紙葉類を取り込み、若しくは、利用者へ紙葉類を供給する取引装置において、上記紙葉類処理装置として、第1の本発明の紙葉類処理装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙葉類の出入のための構成が簡単で密に配置され、小形で廉価な紙葉類処理装置や取引装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の紙幣入出金機の内部構成を示す概略側面図である。
【図2】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入出金口部及び入金リジェクト部の詳細を示す概略側面図である。
【図3】紙幣入金を伴う取引で、利用者が投入した紙幣を判別、計数するときの紙幣の基本的な流れを示す、実施形態の紙幣入出金機の概略側面図である。
【図4】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その1)である。
【図5】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その2)である。
【図6】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その3)である。
【図7】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その4)である。
【図8】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その5)である。
【図9】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その6)である。
【図10】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その7)である。
【図11】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その8)である。
【図12】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その9)である。
【図13】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その10)である。
【図14】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その11)である。
【図15】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その12)である。
【図16】紙幣入金を伴う取引の成立後に、一時保留部内の紙幣を紙幣収納部へ収納するときの紙幣の流れを示す、実施形態の紙幣入出金機の概略側面図である。
【図17】紙幣出金を伴う取引時に、紙幣収納部内の紙幣を紙幣入出金口部へ搬送するときの紙幣の流れを示す、実施形態の紙幣入出金機の概略側面図である。
【図18】実施形態の紙幣入出金機における紙幣出金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部1の側面図である。
【図19】実施形態の紙幣入出金機の効果を説明するための、従来、考えられている紙幣入出金機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による紙葉類処理装置及び取引装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態の取引装置は、自動取引装置(ATM)であり、実施形態の紙葉類処理装置は紙幣入出金機である。
【0016】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態の紙幣入出金機の内部構成を示す概略側面図である。図1はまた、実施形態の自動取引装置における紙幣入出金機の配置をも示している。図1における右側が利用者に面する手前側であり、左側が奥側である。実施形態の自動取引装置及び紙幣入出金機は、紙幣の幅方向の搬送や分離、繰り出しに特徴を有し、図1の紙面法線方向(言い換えると、紙幣の長手方向)の配置についてはその図示や説明を省略する。後述する図2以降の図面についても同様である。
【0017】
図1において、自動取引装置20は、概ね直方体形状を有するが、利用者が面する側面側は、下側から、紙幣入出金機21に投入された硬貨などの異物を利用者に返却するための異物返却口23を有する第1立設部、利用者へ情報を表示したり利用者に入力操作をさせたりする表示入力操作部24を有する水平部、及び、水平部の奥側端部から天井板に向かっている第2立設部を備えている。
【0018】
紙幣入出金機21は、自動取引装置20の上述した形状を有する筐体内の下側かつ奥側に寄って設けられている。上述した水平部における、表示入力操作部24より奥側位置には、紙幣入出金機21の一要素となっているシャッタ2が設けられており、シャッタ2の下方には、紙幣入出金口部1が位置している。紙幣入出金口部1に投入された硬貨などの異物を利用者側に案内落下させるように、紙幣入出金口部1と上述した異物返却口23とを連絡する異物ダクト22とが設けられている。
【0019】
次に、紙幣入出金機21の内部構成について説明する。
【0020】
紙幣入出金口部1は、利用者からの入金紙幣を一括で受入れ、また、出金紙幣及び入金に適さない紙幣を一括で利用者へ受け渡すものである。ここで、入金紙幣とは、入金取引のために紙幣入出金口部1に投入された紙幣だけでなく、他の取引(例えば、現金による振込取引)のために紙幣入出金口部1に投入された紙幣をも含むものである。同様に、出金紙幣も、出金取引のために紙幣入出金口部1に排出される紙幣だけでなく、他の取引(例えば、振込取引の残金返却)のために紙幣入出金口部1に排出される紙幣をも含むものである。
【0021】
紙幣入出金口部1は、後述するように、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を有する。紙幣入出金口部1は、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を含めた全体が、図示しない機構により両方向共に回転可能な回転体構造となっている(なお、回転方向が一方向だけであっても良い)。見方を変えれば、後述する分離戻しに関係する構成は全て、回転可能な要素に含まれていることになる。
【0022】
紙幣入出金口部1は、図示しない制御による回転制御によって、利用者との紙幣の授受を行う「顧客ポジション」と、紙幣を1枚ずつ分離して紙幣入出金機21内へ送り出す「分離ポジション」と、紙幣入出金機21内から当該紙幣入出金口部1に紙幣を1枚ずつ又は一括して集積させる「集積ポジション」のいずれかのポジションをとるものであり、これらポジション間の移動を、紙幣入出金口部1の回転により実行できるようになっている。
【0023】
この実施形態の紙幣入出金機21は、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を含めた紙幣入出金口部1の全体が回転可能になっていることが1つの特徴となっている。
【0024】
シャッタ2は、紙幣入出金口部1の上方に開閉可能に配置されている。シャッタ2は、利用者が紙幣入出金口部1と紙幣の授受を行うときには開いた状態になり、それ以外のときには閉じた状態になる。
【0025】
紙幣判別部30は、紙幣の金種、真偽、正損、表裏、重走、連鎖、斜行などを検出、判別するものである。紙幣判別部30は、図示しないローラを備え、このローラによって紙幣を搬送する構造となっている。また、このローラは、後述する第1紙幣搬送路38若しくは第2紙幣搬送路39と連動して紙幣を搬送する構造となっている。さらに、紙幣判別部30は、図1の左右どちらから搬送されてきた紙幣をも判別できるようになっている。
【0026】
一時保留部31は、紙幣入金時、紙幣判別部30にて、金種が確定した紙幣を取引が成立するまで一旦保留しておくものである。一時保留部31は、1枚ずつ搬送されてきた紙幣を集積すると共に、紙幣を1枚ずつ分離・繰出す分離集積部31aと、紙幣の集積、分離に応じて昇降移動する紙幣ステージ31bなどで構成されている。
【0027】
図1の紙幣入出金機21の場合、5つの紙幣収納部(いわゆる金庫)32〜36を有する。各紙幣収納部32〜36はそれぞれ、利用者に払い出す紙幣を収納するものであり、紙幣収納部32〜36は同一構成を有する。各紙幣収納部32〜36はそれぞれ、搬送されてきた紙幣を集積すると共に、紙幣を1枚ずつ分離・繰出す分離集積部32a〜36aと、紙幣の集積、分離に応じて昇降移動する紙幣ステージ32b〜36bなどで構成されている。紙幣収納部32〜36は異なる金種の紙幣を収容するものであっても良く、また、2つ以上の紙幣収納部が、入出金頻度が高い同一金種の紙幣を収容するものであっても良い。
【0028】
リジェクト部37は、紙幣出金時に、紙幣判別部30によって出金に適さないと判定された紙幣を収納するものである。リジェクト部37は、搬送されてきた紙幣を集積する集積部37aと、紙幣の集積に応じて昇降移動するステージ37bなどで構成されている。
【0029】
分離集積部31a〜36aや集積部37aの詳細構成には、この実施形態の特徴はなく、どのような構成のものを適用しても良い。
【0030】
紙幣入出金機21は、第1〜第4の紙幣搬送路38〜41の4つの紙幣搬送路を有する。
【0031】
第1紙幣搬送路38は、紙幣入出金口部1より分離・繰出された紙幣を紙幣判別部30へ搬送し、また、紙幣判別部30から紙幣入出金口部1へ逆経路で紙幣を搬送するものである。第1紙幣搬送路38は、図示しないが、紙幣判別部30から搬送されてきた紙幣を紙幣入出金口部1又は第4紙幣搬送路41のどちらかに送るための搬送路切替手段が設けられている。
【0032】
第2紙幣搬送路39は、紙幣判別部30から紙幣入出金口部1へ入金リジェクト部10経由で紙幣を搬送し、また、第3紙幣搬送路39から紙幣判別部3へ紙幣を搬送するものである。第2紙幣搬送路39は、紙幣入出金口部1と接続する位置に入金リジェクト部10を有する。入金リジェクト部10は、紙幣入金時に、紙幣判別部30で金種不確定と判定された紙幣を一旦保留するものである。第2紙幣搬送路39は、図示しないが、紙幣判別部30から搬送されてきた紙幣を紙幣入出金口部1又は第3紙幣搬送路40のどちらかに送るための搬送路切替手段がある。
【0033】
この実施形態の場合、紙幣入出金口部1と接続する位置に入金リジェクト部10を有することを1つの特徴としている。
【0034】
第3紙幣搬送路40は、一方の端部が第2紙幣搬送路39に接続され、紙幣出金時には、紙幣判別部30によって出金に適さないと判断された紙幣をリジェクト部37へ搬送し、紙幣入金時には、紙幣判別部30によって金種確定された紙幣を一時保留部31へ搬送し、その後、一時保留部31より繰出された紙幣を第2紙幣搬送路39へ搬送するものである。第3紙幣搬送路40は、図示しないが、第2紙幣搬送路39から搬送されてきた紙幣を一時保留部31又はリジェクト部37のどちらかに送るための搬送路切替手段を有する。
【0035】
第4紙幣搬送路41は、一方の端部が第1紙幣搬送路38に接続され、紙幣出金時には、紙幣収納部32〜36のいずれかから繰出された紙幣を第1紙幣搬送路38を経由して紙幣判別部30へ搬送し、紙幣入金処理を伴う取引の成立後は、一時保留部31から繰出された紙幣を紙幣判別部30の金種判定結果に応じて各紙幣収納部32〜36に搬送するものである。第4紙幣搬送路41は、図示しないが、第1紙幣搬送路38から搬送されてきた紙幣を各紙幣収納部32〜36のいずれかに送るための搬送路切替手段を有する。
【0036】
搬送路切替手段を含め第1〜第4の紙幣搬送路38〜41の詳細構成には、この実施形態の特徴はなく、どのような構成のものを適用しても良い。
【0037】
図2は、実施形態の紙幣入出金機21における紙幣入出金口部1及び入金リジェクト部10の詳細を示す側面図である。図2は、紙幣入出金口部1については、回転体構造によって一体的に回転される内部構造を示している。図2において、符号1が付されている「円」内の部分が回転し得る部分(構造)である。また、図2は、紙幣入出金口部1が、顧客ポジションをとっている場合を示している。
【0038】
図2において、紙幣入出金口部1は紙幣溜りとして機能する紙幣プール部15を有し、紙幣プール部15は、紙幣の長手方向を、自己の長手方向としているアッパガイド3、第1ステージ4、第2ステージ5、ボトムガイド6などを有する。
【0039】
アッパガイド3は、紙幣プール部15の回転体に固定的に設けられたガイドである。すなわち、アッパガイド3は、回転体と一体となって回転するが、回転体内における位置は変化しないものである。アッパガイド3は、その右端側において、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときや紙幣プール部15から紙幣を取り出すときに(顧客ポジション)、紙幣の移動を案内するものである。また、アッパガイド3は、その下面において、第1ステージ4及び第2ステージ5によって紙幣プール部15内の紙幣を紙幣の法線方向にスライド移動するときに紙幣を案内するものである。
【0040】
第1ステージ4は、図示しないスライド駆動部によって図2の左右方向に移動可能な構造のものとなっている。すなわち、第1ステージ4は、回転体と一体となって回転し、しかも、回転体内において、自己の法線方向に沿って位置を変化し得るものである。第1ステージ4は、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときや紙幣プール部15から紙幣を取り出すときに(顧客ポジション)、自己の内面(第2ステージ5に対向している面)で紙幣の移動を案内する。また、第1ステージ4は、紙幣プール部15内の紙幣を繰出すときに(分離ポジション)、紙幣分離部7の繰出しローラに紙幣を押し付ける。さらに、第1ステージ4は、第2紙幣搬送路39から搬送された紙幣を紙幣プール部15に受入れるときは(集積ポジション)、第2ステージ5より上に位置し、確実に受け入れられるように自己の内面で紙幣を案内する。
【0041】
第2ステージ5も、図示しないスライド駆動部によって図2の左右方向に移動可能な構造のものとなっている。すなわち、第2ステージ5も、回転体と一体となって回転し、しかも、回転体内において、自己の法線方向に沿って位置を変化し得るものである。第2ステージ5は、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときや紙幣プール部15から紙幣を取り出すときに(顧客ポジション)、自己の内面(第1ステージ4に対向している面)で紙幣の移動を案内する。また、第2ステージ5は、紙幣プール部15内の紙幣を繰出すときに(分離ポジション)紙幣を確実に繰出すように案内する。さらに、第2ステージ5は、第2紙幣搬送路39から搬送された紙幣を紙幣プール部15に受入れるときは(集積ポジション)、第1ステージ4より下に位置し、確実に受け入れられるように自己の内面で紙幣を案内する。
【0042】
ボトムガイド6は、紙幣プール部15の回転体に固定的に設けられたガイドである。すなわち、ボトムガイド6は、回転体と一体となって回転するが、回転体内における位置は変化しないものである。ボトムガイド6は、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときに(顧客ポジション)、紙幣をその下端縁で受け止めると共に、投入紙幣に混入した硬貨などの異物を落下させて排除できように、例えば、図2の左側から右側へ歯が延びているクシ歯状の構造になっている。また、ボトムガイド6は、第1ステージ4及び第2ステージ5によって紙幣プール部15内の紙幣をスライド移動させるときに紙幣を案内する構造となっている。実施形態のボトムガイド6は、図2に示すように、左右方向の延長部から左下方向への延長部へ折曲した構造を有しており、ボトムガイド6における左下方向への延長部は、紙幣プール部15から紙幣を繰出すときに(分離ポジション)、紙幣を案内するようになっている。
【0043】
紙幣分離部7は、上述したように、紙幣プール部15内の紙幣を1枚ずつに分離し、繰出すものである。分離搬送路8は、紙幣分離部7から繰出された紙幣を第1紙幣搬送路38へ搬送し、また、第1紙幣搬送路38から紙幣プール部15へ紙幣を搬送するものである。分離搬送路8は、図示しないモータにより紙幣分離部7と連動する構造になっている。また、分離搬送路8には、紙幣の連鎖、斜行、幅方向異常、長さ方向異常などを検知するセンサ8aが1ヶ所若しくは複数箇所配置されている。
【0044】
異物ガイド9は、ボトムガイド6から排除された硬貨などの異物を筐体に配置された異物ダクト22に案内するものである。
【0045】
入金リジェクト部10は、下部搬送路機構11、上部搬送路機構12、ビルストッパ13及び羽根車14を有する。
【0046】
下部搬送路機構11及び上部搬送路機構12はそれぞれ、ベルト及びローラなどで構成されている。下部搬送路機構11は、図示しない昇降駆動部により昇降し得るものである。下部搬送路機構11が上昇したときに、下部搬送路機構11及び上部搬送路機構12との間に紙幣が挟持され、図示しない搬送モータにより紙幣が紙幣入出金口部1に搬送されるようになっている。
【0047】
ビルストッパ13は、入金リジェクト部10に紙幣を集積するときに、搬送されてきた紙幣の先端を押さえるものである。ビルストッパ13は、下部搬送路機構11の昇降動作に連動するものであり、下部搬送路機構11が上昇するときに下降し、下部搬送路機構11が下降するときに上昇するものである。例えば、入金リジェクト部10に紙幣を集積するときには、下部搬送路機構11が下方に移動し、これに連動してビルストッパ13が搬送されてきた紙幣の先端を押さえる位置に上昇する。
【0048】
羽根車14は、可撓性のある羽根を径方向に配置した構造のものであり、紙幣入出金口部1の近傍で、かつ下部搬送路機構11に配置されている。羽根車14は、上述した搬送モータにより下部搬送路機構11と連動して回転し、紙幣プール部15に紙幣を送り込むときに紙幣の後端を押し退け、後続紙幣との衝突を回避するものである。
【0049】
自動取引装置20は、上述のような構成を有する紙幣入出金機21に加え、利用者の操作を受け入れたり、処理の段階や利用者の操作に応じて各部を制御する電気的な制御構成(制御手段他)も備えているが、図1では図示を省略している。制御手段の機能については、以下の動作説明の項で明らかにする。
【0050】
(A−2)実施形態の動作
次に、上述した構成を有する実施形態の紙幣入出金機21における紙幣の流れについて説明する。
【0051】
まず、紙幣入金時の紙幣の流れについて説明する。入金取引、両替取引、現金振込取引など、紙幣の入金を伴う取引が選択された場合には、紙幣の入金について同様な処理が実行される。
【0052】
図3は、紙幣入金を伴う取引で、利用者が投入した紙幣を判別、計数するときの紙幣の基本的な流れを示す紙幣入出金機21の概略側面図である。図3において、太い実線及び太い破線が紙幣の流れを示している。
【0053】
図4〜図15はそれぞれ、紙幣入金時における、紙幣入出金口部1の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部1の側面図である。これら動作は、自動取引装置20の図示しない制御手段によって起動される。
【0054】
利用者によって紙幣を投入させるときには、制御手段は、図4に示すように、シャッタ2を閉じた状態で、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ移動させ、かつ、第1ステージ4及び第2ステージ5を、投入された紙幣を受入れるポジションへ移動させる。このとき、利用者が投入した紙幣と一緒に混入している硬貨などの異物が紙幣分離部7に入り込まないように、第2ステージ5は紙幣分離部7と隔離する配置となっている。また、紙幣入出金口部1が顧客ポジションをとっているときには、紙幣入出金口部1の異物ガイド9と、異物ダクト22とが連通するようになっている。
【0055】
次に、制御手段は、図5に示すように、シャッタ2を開き、利用者から紙幣50を受入れる。このとき、アッパガイド3、第1ステージ4、第2ステージ5により、投入紙幣は確実に案内され、ボトムガイド6に受け止められ、紙幣プール部15に収納される。ここで、投入された紙幣50と一緒に硬貨などの異物が混入している場合には、その異物は、重力によって、ボトムガイド6のクシ歯状構造の隙間から落下し、異物ガイド9によって利用者側(図5の右下方向)へ案内され、異物ダクト22へ受け渡される。その後、異物は異物ダクト22によって異物返却口23(図1参照)へ案内され、利用者へ返却される。なお、制御手段は、紙幣入出金口部1を多少揺動させたり、若しくは、第1ステージ4及び第2ステージ5を多少前後動させたりし、異物の落下を促すようにしても良い。
【0056】
異物の異物返却口23への案内を重力に委ねていることは、異物を搬送させるためのモータなどが不要となって消費電力や構成の簡易化から好ましいことである。また、異物を収容する異物収容部を、自動取引装置20の内部に設けるようにしても良いが、この場合には、異物が混入している毎に、金融機関の係員などが異物を取り出すことを要し、利用者及び係員の双方にとって不都合である。
【0057】
利用者が紙幣を投入したことを図示しないセンサが検知すると、制御手段は、図6に示すようにシャッタ2を閉じる。
【0058】
次に、制御手段は、投入された紙幣50を紙幣プール部15より1枚ずつ分離し、装置内へ繰出す前準備(分離準備)を行う。すなわち、制御手段は、図7に示すように、第2ステージ5を、紙幣分離部7の繰出しに影響がなく、かつ、繰出された紙幣を紙幣分離部7に確実に案内する位置に移動させ、第1ステージ4を、紙幣50が紙幣分離部7の繰出しローラに当接するように移動させる。このとき、第1ステージ4と第2ステージ5は同時に移動し、紙幣50を確実に案内する。
【0059】
次に、制御手段は、図8に示すように、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって分離ポジションへ回転させ、分離搬送路8と第1紙幣搬送路38を接続する。このとき、紙幣分離部7の繰出しローラが紙幣50の重力方向最上位の紙幣に当接するようになる。また、制御手段は、入金リジェクト部10の下部搬送路機構11を下方向へ、ビルストッパ13を上方向へ移動させ、入金リジェクト紙幣を集積し得るようにする。
【0060】
また、制御手段は、一時保留部31の紙幣ステージ31bを紙幣集積するポジションへ移動させ、第1紙幣搬送路38内の図示しない搬送路切替手段を動作させ、紙幣入出金口部1から繰出された紙幣を紙幣判別部30へ搬送できるように接続する。制御手段は、第3紙幣搬送路40内の図示しない搬送路切替手段を動作させ、第2紙幣搬送路39から搬送されてきた紙幣を一時保留部31へ搬送できるように接続する。
【0061】
各構成において紙幣分離時の準備が完了したら、制御手段は、一時保留部31の分離集積部31aを図示しないモータによって集積方向へ動作させ、第1紙幣搬送路38、第2紙幣搬送路39、第3紙幣搬送路40、紙幣判別部30を図示しないモータによって搬送方向へ動作させ、その後、図9に示すように、紙幣入出金口部1の紙幣分離部7を図示しないモータによって繰出し方向へ動作させる。
【0062】
紙幣入出金口部1から繰出された紙幣は、図3に示すように、第1紙幣搬送路38によって紙幣判別部30へ搬送され、紙幣判別部30において、紙幣の金種、真偽、正損などの判別や紙幣の搬送状態(重走、連鎖、斜行など)の検出が実行される。紙幣判別部30の判別結果により入金紙幣として自動取引装置20に受入れ可能なものは、図示しない搬送路切替手段の動作により、第3紙幣搬送路40を経由して一時保留部31へ搬送され、紙幣ステージ31b上に集積される。紙幣判別部30の判別結果により、入金紙幣として自動取引装置20に受入れ不可能なものは、図示しない搬送路切替手段の動作により、入金リジェクト部10へ搬送され、下部搬送路機構11上に集積される。
【0063】
紙幣入出金口部1に投入された全ての紙幣の繰り出し、判別が終了したときに、入金リジェクト部10に受入れ不可能な紙幣(入金リジェクト紙幣)があれば、一括して紙幣入出金口部1に送り込まれ、利用者に返却される。
【0064】
図10〜図15はそれぞれ、入金リジェクト紙幣を利用者へ返却する際の動作を示している。
【0065】
図10は、入金リジェクト紙幣を紙幣プール部15へ受け渡す前準備動作の状態を示している。制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって集積ポジションへ回転させると共に、第1ステージ4及び第2ステージ5を入金リジェクト紙幣を受入れるポジションへ移動させる。
【0066】
図11は、入金リジェクト紙幣を紙幣プール部15へ受け渡している状態を示している。制御手段は、入金リジェクト部10の下部搬送路機構11を上方向、ビルストッパ13を下方向へ移動させて、上部搬送路機構12と下部搬送路機構11とで入金リジェクト紙幣を挟持させる。その後、制御手段は、図示しないモータにより上部搬送路機構12及び下部搬送路機構11に搬送動作させ、入金リジェクト紙幣を一括で紙幣プール部15に送り込む。
【0067】
図12は、入金リジェクト紙幣を利用者へ返却している状態を示している。制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ回転させると共に、第1ステージ4及び第2ステージ5を、入金リジェクト紙幣を利用者に返却する際のポジションへ移動させる。この第1ステージ4及び第2ステージ5のポジションは、投入された紙幣を受入れるポジションと同じであっても良い。その後、制御手段は、シャッタ2を開き、入金リジェクト紙幣を利用者へ返却する。なお、制御手段は、紙幣入出金口部1を顧客ポジションへ回転させる前に、第1ステージ4及び第2ステージ5を移動させ、紙幣を挟持させるようにしても良い。
【0068】
図13〜図15はそれぞれ、紙幣プール部15の紙幣を1枚ずつに分離し、繰出した紙幣の状態が異常な場合に、紙幣プール部15に戻す分離戻し処理時における、紙幣入出金口部1の各構成要素の動作を示している。この種の紙幣入出金機21では、利用者が投入した紙幣を紙幣入出金口部1から1枚ずつ繰出す際に、紙幣の状態を検知し、装置内に取込むと搬送ジャムなどのエラーを引き起こす可能性がある紙幣状態の場合(例えば、買物レシートが紙幣間に挟まっており、この買い物レシートが繰り出された場合)には、繰出しを中断して、紙幣入出金口部1に戻し、利用者へ返却するようになっており、できるだけ装置エラーにしないように制御されている。
【0069】
繰出された紙幣の先端の斜行状態や紙幣幅や紙幣長さの検知結果に異常があった場合には、制御手段は、図13に示すように、紙幣分離部7及び分離搬送路8の駆動モータを停止させ、繰出された紙幣を停止させる。なお、例えば、異常の種類によって検知に機能するセンサ8aは異なっている。次に、制御手段は、図14に示すように、第1ステージ4を紙幣分離部7から離れる方向(図14の右下方向)へ移動させる。このとき、紙幣プール部15内の紙幣は、重力の影響により第1ステージ4の移動に追従して移動し、紙幣分離部7との間に空間ができる。その後、制御手段は、図15に示すように、紙幣分離部7及び分離部搬送路8の駆動モータを紙幣プール部15方向へ動かし、これにより、異常紙幣は紙幣プール部15内に戻る。
【0070】
この実施形態の場合、分離戻し紙幣を戻すための空間は、第1ステージ4を移動させることで容易に形成させることができる。
【0071】
分離戻し処理後、制御手段は、図示は省略するが、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ回転させ、第1ステージ4及び第2ステージ5を、投入された紙幣を受入れるポジションへ移動させる。さらに、その後、制御手段は、シャッタ2を開き、分離戻しの紙幣や繰出しが実行されていない投入紙幣を利用者へ返却する。なお、異常紙幣の状態によっては、利用者に返却することなく、再度、紙幣分離部7により分離、繰出しを実施することもある。
【0072】
図16は、紙幣入金を伴う取引の成立後に、一時保留部31内の紙幣を紙幣収納部32〜36へ収納するときの紙幣の流れを示す紙幣入出金機21の概略側面図である。図16において、太い実線が紙幣の流れを示している。
【0073】
制御手段は、一時保留部31の紙幣ステージ31bを紙幣が分離集積部31aの繰出しローラに当接するように移動させる。また、制御手段は、第1紙幣搬送路38の図示しない搬送路切替手段を動作させ、紙幣判別部30から搬送された紙幣を第4紙幣搬送路41へ搬送できるように接続する。さらに、制御手段は、第2紙幣搬送路39の図示しない搬送路切替手段を動作させ、第3紙幣搬送路40から搬送されてきた紙幣を紙幣判別部30へ搬送できるように接続する。さらにまた、制御手段は、第3紙幣搬送路40の図示しない搬送路切替手段を動作させ、一時保留部31から繰出された紙幣を第2紙幣搬送路39へ搬送できるように接続する。制御手段は、紙幣収納部32〜36の紙幣ステージ32b〜36bをそれぞれ、紙幣を集積するポジションへ移動させる。
【0074】
以上のような一時保留部31における分離や紙幣収納部32〜36における集積の準備や、搬送経路の設定が完了すると、制御手段は、紙幣収納部32〜36の分離集積部32a〜36aをそれぞれ図示しないモータによって集積方向へ動作させ、第1紙幣搬送路38、第2紙幣搬送路39、第3紙幣搬送路40、第4紙幣搬送路41、紙幣判別部30を図示しないモータによって搬送方向へ動作させ、その後、一時保留部31の分離集積部31aを図示しないモータによって繰出し方向へ動作させる。
【0075】
一時保留部31から繰出された紙幣は、図16に示すように、第3紙幣搬送路40、第2紙幣搬送路39を順に経由して紙幣判別部30へ搬送され、紙幣判別部30において、少なくとも紙幣の金種の判別が実行される。紙幣判別部30から第1紙幣搬送路38を経由して第4紙幣搬送路41へ搬送された紙幣は、紙幣判別部30の判別結果に応じて切替内容が指示された図示しない搬送路切替手段の動作により、いずれかの紙幣収納部32〜36へ搬送され、その紙幣ステージ32b〜36b上に集積される。
【0076】
一時保留部31内の紙幣を紙幣収納部32〜36へ収納する動作時においては、紙幣入出金口部1はその直前のポジションを継続するようにしても良く、また、この動作時のために予め定められたポジションをとるようにしても良い。紙幣入金を伴う取引が両替取引であれば、予め定められたポジションを集積ポジションとするようにしても良い。また、当該自動取引装置20が入金専用機であれば、予め定められたポジションを顧客ポジションとするようにしても良い。
【0077】
図17は、紙幣出金を伴う取引時に、1又は複数の紙幣収納部32〜36内の紙幣を紙幣入出金口部1へ搬送するときの紙幣の流れを示す紙幣入出金機21の概略側面図である。図17において、太い実線及び太い破線が紙幣の流れを示している。
【0078】
図18は、紙幣出金時における、紙幣入出金口部1の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部1の側面図である。
【0079】
制御手段は、図示しないモータにより、紙幣の出金に係る紙幣収納部32〜36の紙幣ステージ32b〜36bを、集積紙幣が分離集積部32a〜36aの繰出しローラに当接するように移動させる。制御手段は、第1紙幣搬送路38の図示しない搬送路切替手段を動作させ、紙幣を第4紙幣搬送路41から紙幣判別部30へ搬送できるように接続させる。また、制御手段は、第2紙幣搬送路39の入金リジェクト部10に出金ポジションをとらせ、紙幣判別部30から搬送されてきた、出金可能な紙幣を直接紙幣プール部15へ搬送できるように接続させる。さらに、制御手段は、第3紙幣搬送路40の図示しない搬送路切替手段を動作させ、第2紙幣搬送路39から搬送されてきた紙幣をリジェクト部37へ搬送できるように接続させる。さらにまた、制御手段は、第4紙幣搬送路41の図示しない搬送路切替手段を動作させ、各紙幣収納部32〜36から繰出された紙幣を第1紙幣搬送路38へ搬送できるように接続させる。制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部により集積ポジションへ回転させると共に、図18に示すように、第1ステージ4と第2ステージ5を紙幣集積するポジションへ移動させる。
【0080】
各構成要素について以上のような出金準備が完了すると、制御手段は、第1紙幣搬送路38、第2紙幣搬送路39、第3紙幣搬送路40、第4紙幣搬送路41、紙幣判別部30を図示しないモータによって搬送方向へ動作させ、その後、出金する金種に応じた紙幣収納部32〜36の分離集積部32a〜36aのいずれかを図示しないモータによって繰出し方向へ動作させる。
【0081】
いずれかの紙幣収納部32〜36から繰出された紙幣は、図17に示すように(図17は紙幣収納部32から紙幣を繰出した状態を示している)、第4紙幣搬送路41、第1紙幣搬送路38を経由して紙幣判別部30へ搬送され、紙幣判別部30において、紙幣の金種、真偽、正損などの判別及び紙幣の搬送状態(重走、連鎖、斜行など)の検出が実行される。紙幣判別部30から第2紙幣搬送路39へ搬送された紙幣は、紙幣判別部30の判別結果に応じて切替動作された図示しない搬送路切替手段により、出金可能なものは紙幣入出金口部1へ搬送され、出金不可能なものは第3紙幣搬送路40を経由してリジェクト部37の紙幣ステージ37b上に集積される。このとき、入金リジェクト部10は搬送された出金可能な紙幣をそのまま通過させて紙幣入出金口部1へ送り込む。
【0082】
紙幣出金を伴う取引で必要な、金種毎に要求されている枚数の紙幣が紙幣入出金口部1に集積されると、制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ回転させると共に、第1ステージ4及び第2ステージ5を、出金紙幣を利用者に供与する際のポジションへ移動させる(図12参照)。その後、制御手段は、シャッタ2を開き、出金紙幣を利用者へ供与する(図12参照)。
【0083】
(A−3)実施形態の効果
実施形態の紙幣入出金機21によれば、紙幣プール部15だけでなく、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を含めた紙幣入出金口部1の全体を回転可能にしたため、以下のような効果を奏することができる。
【0084】
投入紙幣の分離、繰出し(分離戻しを含む)や、入金リジェクト紙幣の返却を共に、簡易な構成で、紙幣プール部15に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して行うことができる。この際、異物の利用者への返却構成を損なうことがない。
【0085】
投入紙幣の分離、繰出し(分離戻しを含む)を、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側から行うことは、分離直後に紙幣の搬送異常や紙幣の形状異常を検知して紙幣プール部15に紙幣を戻す(分離戻し)ときに、第1ステージ4の下降に追従して投入紙幣も下降して戻すための空間が形成でき、強制的に空間を作るような可動板が不要となって好ましい。
【0086】
また、入金リジェクト紙幣の返却を、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側から行うことは、第1ステージ4及び第2ステージの移動により返却紙幣を受け入れる空間が形成でき、強制的に空間を作るような構成が不要となって好ましい。
【0087】
しかしながら、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して処理を行う2つの構成、すなわち、投入紙幣の分離、繰出し構成と、入金リジェクト紙幣の返却構成とを、紙幣プール部だけが回転し得る紙幣入出金機で紙幣プール部の同一の側に設けることは難しい。そのため、図19に示すように、投入紙幣の分離、繰出し構成60と、入金リジェクト紙幣の返却構成61とを、紙幣プール部62を挟んで反対側に設け、紙幣判別部63を中間に配置して紙幣搬送路で連絡することも考えられている。しかしながら、この場合には、自動取引装置の前面側に紙幣搬送路を敷設することを要し、異物を利用者側に重力を利用して返却する経路を形成することはできない。異物が落下して収容される異物収容部64が、自動取引装置の内部に設けられた場合には、投入紙幣に異物が混入している毎に、金融機関の係員などが取り出すことになり、その間待っている利用者共々、使い勝手に不満を抱いてしまう。
【0088】
上記実施形態の紙幣入出金機21によれば、紙幣分離部7(及び分離搬送部8)が回転して位置を変えることができ、投入紙幣の分離、繰出しと、入金リジェクト紙幣の返却とで紙幣分離部7が位置を変えるため、入金リジェクト部10を、顧客ポジションの紙幣プール部15から見て紙幣分離部7と同一側に設けても、両者がそれぞれ有効に動作することができる。
【0089】
すなわち、重力を利用することで構成を簡易化し得る、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して処理を行う2つの構成、紙幣分離部7と入金リジェクト部10とを同一側に設けて両者共に有効に動作することができる。
【0090】
これにより、図1に示すように、異物返却口23を装置前面に設けても、投入紙幣に混入されていた異物を重力だけを利用して利用者に返却することができる。
【0091】
実施形態の入金リジェクト部10は、入金リジェクト紙幣の返却機能だけでなく、入金リジェクト紙幣の一時保留機能をも発揮するものである。一時保留機能をも発揮する入金リジェクト部10を、紙幣入出金口部1に接近して設けたので、上述したように、入金リジェクト紙幣が複数枚でも一括して紙幣入出金口部1に返却することができる。
【0092】
入金リジェクト紙幣の返却に係る構成のうち、返却そのものを行う構成として紙幣出金時に出金紙幣を紙幣入出金口部1に送り込む構成を適用し、入金リジェクト紙幣の一時保留機能を発揮する構成を、紙幣入出金口部1から離して設ける従来例がある(特許文献2参照)。この場合、複数枚の入金リジェクト紙幣の一括搬送は実際上できず、1枚ずつ分離して搬送し、紙幣入出金口部1に返却することになる。この場合、入金リジェクト紙幣の分離構成分だけ構成が複雑となると共に、返却に要する時間も長いものとなる。
【0093】
実施形態によれば、入金リジェクト部10を紙幣入出金口部1に接近して設けて、入金リジェクト紙幣を一括して紙幣入出金口部1に返却するので、構成の簡易化に寄与しており、しかも、返却時間(従って、入金処理時間)を短くすることができる。
【0094】
以上のように、上記実施形態によれば、紙幣入出金機21(従って、自動取引装置20)の小型化、低廉化を図ることができる。
【0095】
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明では言及しなかったが、自動取引装置20は紙幣だけ扱うことができるものであっても良く、また、紙幣と硬貨の両方を扱うことができるものであっても良い。
【0096】
ここで、自動取引装置20が1種類の金種の紙幣だけを扱うことができるものであっても良い(言い換えると、例えば、該当金種以外の金種の紙幣は異常紙幣として処理されるものであっても良い)。このような場合であれば、一時保留部を省略し、取込可能と判別された入金紙幣を紙幣収容部に直接搬送して収容させる構成としても良い。
【0097】
上記実施形態では、一般ユーザが操作を実行する自動取引装置を示したが、金融機関の係員が操作するテラー用の取引装置に対しても、本発明の技術思想を適用することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、紙幣入金を伴う取引(例えば入金取引)及び紙幣出金を伴う取引(例えば出金取引)を実行可能な自動取引装置20を示したが、紙幣入金を伴う取引だけを実行可能な自動取引装置や、紙幣出金を伴う取引だけを実行可能な自動取引装置に、本発明の技術思想を適用することができる。後者の場合であっても、取引が途中で中止された際には、紙幣出金口部から出金紙幣を回収することを要し、紙幣分離部を設けるようにすることもできる。
【0099】
さらに、上記実施形態では、入金リジェクト部10を紙幣入出金口部1に接近して設けたものを示したが、入金リジェクトの返却に係る構成のうち、入金リジェクト紙幣の一時保留部を紙幣入出金口部1から離して設けるようにしても良い。例えば、出金用の一時保留部31を入金リジェクト紙幣の一時保留部として兼用するようにしても良い。このようにした場合であっても、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して、投入紙幣の分離、繰出しと、入金リジェクト紙幣の返却とを行うことができる。
【0100】
上記実施形態においては、紙幣入出金口部1が回転によって、「顧客ポジション」、「分離ポジション」、「集積ポジション」の3ポジションをとり得るものを示したが、とり得るポジション数は3に限定されるものではない。例えば、ボトムガイド6に対する第1ステージ4や第2ステージ5の角度を、利用者側に多少倒した角度に選定し、紙幣入出金口部1の「顧客ポジション」と「分離ポジション」とを同じポジションとするようにしても良い。また、分離戻し時のポジションを、「分離ポジション」より第1ステージ4や第2ステージ5がより水平に近くなるようにしても良い。
【0101】
また、上記実施形態においては、紙幣プール部15だけでなく、紙幣分離部7、分離搬送部8及び異物ガイド9も回転するものを示したが、少なくとも紙幣プール部15及び紙幣分離部7を一緒に回転可能とすれば良い。例えば、紙幣プール部15のボトムガイド6の下側を単なる空間としておき、顧客ポジションのボトムガイド6の下側であって回転体の外部に異物ガイド9を設けるようにしても良い。また例えば、分離搬送部8に該当する構成を第1紙幣搬送路38の構成と一体にして、回転体の外部に設けるようにしても良い。
【0102】
さらに、上記実施形態においては、紙幣分離部7が重力方向の最上位の紙幣から分離、繰出しを行うものを示したが、最下位からの紙幣から分離、繰出しを行うが、分離戻し時には第1ステージ4の下降を利用して最上位に戻す紙幣分離部を適用するようにしても良い。
【0103】
上記実施形態においては、紙幣を取り扱う紙幣入出金機及び自動取引装置を示したが、対象となる紙葉類は紙幣に限定されず、小切手、証券、証書、チケットなどの他の紙葉類であっても良い。
【符号の説明】
【0104】
1:紙幣入出金口部、3:アッパガイド、4:第1ステージ、5:第2ステージ、6:ボトムガイド、7:紙幣分離部、8:分離搬送路、9:異物ガイド、10:入金リジェクト部、15:紙幣プール部、10:入金リジェクト部、20:自動取引装置、21:紙幣入出金機、22:異物ダクト、23:異物返却口、30:紙幣判別部。
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉類処理装置及び取引装置に関し、例えば、自動取引装置(いわゆるATM)に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
自動取引装置には、紙幣の取り扱いを行う紙幣入出金機が搭載されている。従来、この種の紙幣入出金機として、利用者が投入した紙幣を受け入れ、装置内部に1枚ずつ取り込み、また利用者に払い出す紙幣を収納する紙幣入出金口部と、紙幣を判別する紙幣判別部と、入金した紙幣を一時的に収納する一時保留部と、入金された紙幣を収納し、出金用として繰出す紙幣収納庫と、紙幣収納庫より繰出された紙幣のうち、出金に適さない紙幣を収納するリジェクト収納庫と、各部を接続し紙幣を搬送する紙幣搬送路で構成されるものが提案されている。紙幣入出金口部の構成としては、特許文献1や特許文献2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の紙幣入出金口部は、紙幣を収納し、投入された紙幣に混入している異物(例えば硬貨)を底部から落下できるようにした紙幣ガイド(紙幣プール壁)と、投入された紙幣を繰出しローラに押付けるビルプレスと、紙幣ガイドとビルプレスで形成された紙幣プール部と、紙幣プール部の下方に設けられた異物回収箱と、入金された紙幣を1枚ずつ分離し、第1搬送路へ繰出す紙幣分離部と、出金や入金リジェクトなどの利用者に渡す紙幣を、紙幣プール部に搬送する第2搬送路とで構成されている。特許文献1に記載の紙幣入出金口部においては、利用者に紙幣を投入させる「入金時」には、投入される紙幣の長辺が下向きで紙幣がほぼ直立するように紙幣プール部を配置し、入金紙幣を分離し搬送路へ繰出す「入金紙幣の分離・繰出時」や、利用者に渡すため出金紙幣を集積し収納する「出金時」には、紙幣がほぼ水平になるように紙幣プール部を配置する。すなわち、紙幣プール部は回動可能になされており、「入金時」、「入金紙幣の分離・繰出時」、「出金時」などに応じた配置をとるように適宜回動される。
【0004】
特許文献2に記載の紙幣入出金口部も、紙幣プール部と異物回収箱と分離部で構成され、「入金時」には、投入される紙幣の長辺が下向きで紙幣がほぼ直立するように回動自在な紙幣プール部を配置し、「入金紙幣の分離・繰出時」や「出金時」には紙幣がほぼ水平になるように紙幣プール部を配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−199914
【特許文献2】特開平8−194861
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の紙幣入出金機では、紙幣プール部に投入された紙幣の分離・繰出しを行う場合、紙幣束の重力方向最下位の紙幣から分離するため、分離直後に紙幣の搬送異常を検知して紙幣プール部に戻す「分離戻し」の際、紙幣プール部にある紙幣を上昇させ、収納されている紙幣と分離戻しされた紙幣が衝突しないようにする可動板が必要となり、紙幣入出金機が複雑化し、コスト増加になるという課題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の紙幣入出金機では、紙幣束の重力方向最上位の紙幣から分離し繰出しを実行できるため、「分離戻し」の際、紙幣プール部内の紙幣は、ビルプレスを降下させることで退避でき、分離戻しされた紙幣がそれら紙幣と衝突しない。なお、特許文献2にはビルプレスを降下させることは記載されていないが、ビルプレスを降下させる従来方法を特許文献2の技術思想に組み合わせることは容易である。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の紙幣入出金機では、紙幣分離部が紙幣プール部の上部近傍に設けられるため、入金時に投入された紙幣のうち、紙幣判別部で“不適”と判別された紙幣、すなわち「入金リジェクト紙幣」を一時収納する入金リジェクトプール部を、紙幣入出金口部より離れた位置に配置することが必要となる。紙幣入出金口部より離れた位置に配置された入金リジェクトプール部から入金リジェクト紙幣を利用者に返却するためには、入金リジェクト紙幣を長距離搬送するので、複数枚あっても1枚ずつ搬送しなければならず、入金リジェクトプール部に分離部が必要となってしまい、紙幣入出金機の大形化しコスト増加になるという課題があった。入金リジェクト紙幣の返却をも含めた入金処理時間が長期化してしまうという課題もある。
【0009】
なお、入金リジェクトプール部を紙幣入出金口部の近傍に設けた場合には、入金リジェクトプール部の位置を考慮して、紙幣入出金口部における紙幣分離部の位置を定めなければならず、このように定められた紙幣分離部の位置が、他の構成を最適位置からずらして配置させるようなことも生じている。
【0010】
そのため、紙葉類の出入のための構成が簡単で密に配置され、小形で廉価な紙葉類処理装置や取引装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、第1の本発明は、利用者との間で紙葉類を授受する口部となっている紙葉類授受口部と、利用者との間で授受する紙葉類を判別する紙葉類判別部と、紙葉類を収納する少なくとも一つの紙葉類収納部と、紙葉類を搬送する紙葉類搬送路を有する紙葉類処理装置において、上記紙葉類授受口部は、利用者との間で授受する紙葉類を一時的にプールする紙葉類プール部と、この紙葉類プール部にプールされた紙葉類から1枚ずつ分離して繰出し、上記紙葉類搬送路に供給する紙葉類分離部とを有し、紙葉類プール部及び紙葉類分離部を含めて回転可能になっていることを特徴とする。
【0012】
第2の本発明は、紙葉類処理装置を備え、利用者が所望した取引に応じ、利用者から紙葉類を取り込み、若しくは、利用者へ紙葉類を供給する取引装置において、上記紙葉類処理装置として、第1の本発明の紙葉類処理装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙葉類の出入のための構成が簡単で密に配置され、小形で廉価な紙葉類処理装置や取引装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の紙幣入出金機の内部構成を示す概略側面図である。
【図2】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入出金口部及び入金リジェクト部の詳細を示す概略側面図である。
【図3】紙幣入金を伴う取引で、利用者が投入した紙幣を判別、計数するときの紙幣の基本的な流れを示す、実施形態の紙幣入出金機の概略側面図である。
【図4】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その1)である。
【図5】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その2)である。
【図6】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その3)である。
【図7】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その4)である。
【図8】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その5)である。
【図9】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その6)である。
【図10】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その7)である。
【図11】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その8)である。
【図12】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その9)である。
【図13】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その10)である。
【図14】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その11)である。
【図15】実施形態の紙幣入出金機における紙幣入金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部の側面図(その12)である。
【図16】紙幣入金を伴う取引の成立後に、一時保留部内の紙幣を紙幣収納部へ収納するときの紙幣の流れを示す、実施形態の紙幣入出金機の概略側面図である。
【図17】紙幣出金を伴う取引時に、紙幣収納部内の紙幣を紙幣入出金口部へ搬送するときの紙幣の流れを示す、実施形態の紙幣入出金機の概略側面図である。
【図18】実施形態の紙幣入出金機における紙幣出金時の、紙幣入出金口部の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部1の側面図である。
【図19】実施形態の紙幣入出金機の効果を説明するための、従来、考えられている紙幣入出金機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による紙葉類処理装置及び取引装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態の取引装置は、自動取引装置(ATM)であり、実施形態の紙葉類処理装置は紙幣入出金機である。
【0016】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態の紙幣入出金機の内部構成を示す概略側面図である。図1はまた、実施形態の自動取引装置における紙幣入出金機の配置をも示している。図1における右側が利用者に面する手前側であり、左側が奥側である。実施形態の自動取引装置及び紙幣入出金機は、紙幣の幅方向の搬送や分離、繰り出しに特徴を有し、図1の紙面法線方向(言い換えると、紙幣の長手方向)の配置についてはその図示や説明を省略する。後述する図2以降の図面についても同様である。
【0017】
図1において、自動取引装置20は、概ね直方体形状を有するが、利用者が面する側面側は、下側から、紙幣入出金機21に投入された硬貨などの異物を利用者に返却するための異物返却口23を有する第1立設部、利用者へ情報を表示したり利用者に入力操作をさせたりする表示入力操作部24を有する水平部、及び、水平部の奥側端部から天井板に向かっている第2立設部を備えている。
【0018】
紙幣入出金機21は、自動取引装置20の上述した形状を有する筐体内の下側かつ奥側に寄って設けられている。上述した水平部における、表示入力操作部24より奥側位置には、紙幣入出金機21の一要素となっているシャッタ2が設けられており、シャッタ2の下方には、紙幣入出金口部1が位置している。紙幣入出金口部1に投入された硬貨などの異物を利用者側に案内落下させるように、紙幣入出金口部1と上述した異物返却口23とを連絡する異物ダクト22とが設けられている。
【0019】
次に、紙幣入出金機21の内部構成について説明する。
【0020】
紙幣入出金口部1は、利用者からの入金紙幣を一括で受入れ、また、出金紙幣及び入金に適さない紙幣を一括で利用者へ受け渡すものである。ここで、入金紙幣とは、入金取引のために紙幣入出金口部1に投入された紙幣だけでなく、他の取引(例えば、現金による振込取引)のために紙幣入出金口部1に投入された紙幣をも含むものである。同様に、出金紙幣も、出金取引のために紙幣入出金口部1に排出される紙幣だけでなく、他の取引(例えば、振込取引の残金返却)のために紙幣入出金口部1に排出される紙幣をも含むものである。
【0021】
紙幣入出金口部1は、後述するように、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を有する。紙幣入出金口部1は、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を含めた全体が、図示しない機構により両方向共に回転可能な回転体構造となっている(なお、回転方向が一方向だけであっても良い)。見方を変えれば、後述する分離戻しに関係する構成は全て、回転可能な要素に含まれていることになる。
【0022】
紙幣入出金口部1は、図示しない制御による回転制御によって、利用者との紙幣の授受を行う「顧客ポジション」と、紙幣を1枚ずつ分離して紙幣入出金機21内へ送り出す「分離ポジション」と、紙幣入出金機21内から当該紙幣入出金口部1に紙幣を1枚ずつ又は一括して集積させる「集積ポジション」のいずれかのポジションをとるものであり、これらポジション間の移動を、紙幣入出金口部1の回転により実行できるようになっている。
【0023】
この実施形態の紙幣入出金機21は、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を含めた紙幣入出金口部1の全体が回転可能になっていることが1つの特徴となっている。
【0024】
シャッタ2は、紙幣入出金口部1の上方に開閉可能に配置されている。シャッタ2は、利用者が紙幣入出金口部1と紙幣の授受を行うときには開いた状態になり、それ以外のときには閉じた状態になる。
【0025】
紙幣判別部30は、紙幣の金種、真偽、正損、表裏、重走、連鎖、斜行などを検出、判別するものである。紙幣判別部30は、図示しないローラを備え、このローラによって紙幣を搬送する構造となっている。また、このローラは、後述する第1紙幣搬送路38若しくは第2紙幣搬送路39と連動して紙幣を搬送する構造となっている。さらに、紙幣判別部30は、図1の左右どちらから搬送されてきた紙幣をも判別できるようになっている。
【0026】
一時保留部31は、紙幣入金時、紙幣判別部30にて、金種が確定した紙幣を取引が成立するまで一旦保留しておくものである。一時保留部31は、1枚ずつ搬送されてきた紙幣を集積すると共に、紙幣を1枚ずつ分離・繰出す分離集積部31aと、紙幣の集積、分離に応じて昇降移動する紙幣ステージ31bなどで構成されている。
【0027】
図1の紙幣入出金機21の場合、5つの紙幣収納部(いわゆる金庫)32〜36を有する。各紙幣収納部32〜36はそれぞれ、利用者に払い出す紙幣を収納するものであり、紙幣収納部32〜36は同一構成を有する。各紙幣収納部32〜36はそれぞれ、搬送されてきた紙幣を集積すると共に、紙幣を1枚ずつ分離・繰出す分離集積部32a〜36aと、紙幣の集積、分離に応じて昇降移動する紙幣ステージ32b〜36bなどで構成されている。紙幣収納部32〜36は異なる金種の紙幣を収容するものであっても良く、また、2つ以上の紙幣収納部が、入出金頻度が高い同一金種の紙幣を収容するものであっても良い。
【0028】
リジェクト部37は、紙幣出金時に、紙幣判別部30によって出金に適さないと判定された紙幣を収納するものである。リジェクト部37は、搬送されてきた紙幣を集積する集積部37aと、紙幣の集積に応じて昇降移動するステージ37bなどで構成されている。
【0029】
分離集積部31a〜36aや集積部37aの詳細構成には、この実施形態の特徴はなく、どのような構成のものを適用しても良い。
【0030】
紙幣入出金機21は、第1〜第4の紙幣搬送路38〜41の4つの紙幣搬送路を有する。
【0031】
第1紙幣搬送路38は、紙幣入出金口部1より分離・繰出された紙幣を紙幣判別部30へ搬送し、また、紙幣判別部30から紙幣入出金口部1へ逆経路で紙幣を搬送するものである。第1紙幣搬送路38は、図示しないが、紙幣判別部30から搬送されてきた紙幣を紙幣入出金口部1又は第4紙幣搬送路41のどちらかに送るための搬送路切替手段が設けられている。
【0032】
第2紙幣搬送路39は、紙幣判別部30から紙幣入出金口部1へ入金リジェクト部10経由で紙幣を搬送し、また、第3紙幣搬送路39から紙幣判別部3へ紙幣を搬送するものである。第2紙幣搬送路39は、紙幣入出金口部1と接続する位置に入金リジェクト部10を有する。入金リジェクト部10は、紙幣入金時に、紙幣判別部30で金種不確定と判定された紙幣を一旦保留するものである。第2紙幣搬送路39は、図示しないが、紙幣判別部30から搬送されてきた紙幣を紙幣入出金口部1又は第3紙幣搬送路40のどちらかに送るための搬送路切替手段がある。
【0033】
この実施形態の場合、紙幣入出金口部1と接続する位置に入金リジェクト部10を有することを1つの特徴としている。
【0034】
第3紙幣搬送路40は、一方の端部が第2紙幣搬送路39に接続され、紙幣出金時には、紙幣判別部30によって出金に適さないと判断された紙幣をリジェクト部37へ搬送し、紙幣入金時には、紙幣判別部30によって金種確定された紙幣を一時保留部31へ搬送し、その後、一時保留部31より繰出された紙幣を第2紙幣搬送路39へ搬送するものである。第3紙幣搬送路40は、図示しないが、第2紙幣搬送路39から搬送されてきた紙幣を一時保留部31又はリジェクト部37のどちらかに送るための搬送路切替手段を有する。
【0035】
第4紙幣搬送路41は、一方の端部が第1紙幣搬送路38に接続され、紙幣出金時には、紙幣収納部32〜36のいずれかから繰出された紙幣を第1紙幣搬送路38を経由して紙幣判別部30へ搬送し、紙幣入金処理を伴う取引の成立後は、一時保留部31から繰出された紙幣を紙幣判別部30の金種判定結果に応じて各紙幣収納部32〜36に搬送するものである。第4紙幣搬送路41は、図示しないが、第1紙幣搬送路38から搬送されてきた紙幣を各紙幣収納部32〜36のいずれかに送るための搬送路切替手段を有する。
【0036】
搬送路切替手段を含め第1〜第4の紙幣搬送路38〜41の詳細構成には、この実施形態の特徴はなく、どのような構成のものを適用しても良い。
【0037】
図2は、実施形態の紙幣入出金機21における紙幣入出金口部1及び入金リジェクト部10の詳細を示す側面図である。図2は、紙幣入出金口部1については、回転体構造によって一体的に回転される内部構造を示している。図2において、符号1が付されている「円」内の部分が回転し得る部分(構造)である。また、図2は、紙幣入出金口部1が、顧客ポジションをとっている場合を示している。
【0038】
図2において、紙幣入出金口部1は紙幣溜りとして機能する紙幣プール部15を有し、紙幣プール部15は、紙幣の長手方向を、自己の長手方向としているアッパガイド3、第1ステージ4、第2ステージ5、ボトムガイド6などを有する。
【0039】
アッパガイド3は、紙幣プール部15の回転体に固定的に設けられたガイドである。すなわち、アッパガイド3は、回転体と一体となって回転するが、回転体内における位置は変化しないものである。アッパガイド3は、その右端側において、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときや紙幣プール部15から紙幣を取り出すときに(顧客ポジション)、紙幣の移動を案内するものである。また、アッパガイド3は、その下面において、第1ステージ4及び第2ステージ5によって紙幣プール部15内の紙幣を紙幣の法線方向にスライド移動するときに紙幣を案内するものである。
【0040】
第1ステージ4は、図示しないスライド駆動部によって図2の左右方向に移動可能な構造のものとなっている。すなわち、第1ステージ4は、回転体と一体となって回転し、しかも、回転体内において、自己の法線方向に沿って位置を変化し得るものである。第1ステージ4は、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときや紙幣プール部15から紙幣を取り出すときに(顧客ポジション)、自己の内面(第2ステージ5に対向している面)で紙幣の移動を案内する。また、第1ステージ4は、紙幣プール部15内の紙幣を繰出すときに(分離ポジション)、紙幣分離部7の繰出しローラに紙幣を押し付ける。さらに、第1ステージ4は、第2紙幣搬送路39から搬送された紙幣を紙幣プール部15に受入れるときは(集積ポジション)、第2ステージ5より上に位置し、確実に受け入れられるように自己の内面で紙幣を案内する。
【0041】
第2ステージ5も、図示しないスライド駆動部によって図2の左右方向に移動可能な構造のものとなっている。すなわち、第2ステージ5も、回転体と一体となって回転し、しかも、回転体内において、自己の法線方向に沿って位置を変化し得るものである。第2ステージ5は、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときや紙幣プール部15から紙幣を取り出すときに(顧客ポジション)、自己の内面(第1ステージ4に対向している面)で紙幣の移動を案内する。また、第2ステージ5は、紙幣プール部15内の紙幣を繰出すときに(分離ポジション)紙幣を確実に繰出すように案内する。さらに、第2ステージ5は、第2紙幣搬送路39から搬送された紙幣を紙幣プール部15に受入れるときは(集積ポジション)、第1ステージ4より下に位置し、確実に受け入れられるように自己の内面で紙幣を案内する。
【0042】
ボトムガイド6は、紙幣プール部15の回転体に固定的に設けられたガイドである。すなわち、ボトムガイド6は、回転体と一体となって回転するが、回転体内における位置は変化しないものである。ボトムガイド6は、利用者が紙幣プール部15に紙幣を投入するときに(顧客ポジション)、紙幣をその下端縁で受け止めると共に、投入紙幣に混入した硬貨などの異物を落下させて排除できように、例えば、図2の左側から右側へ歯が延びているクシ歯状の構造になっている。また、ボトムガイド6は、第1ステージ4及び第2ステージ5によって紙幣プール部15内の紙幣をスライド移動させるときに紙幣を案内する構造となっている。実施形態のボトムガイド6は、図2に示すように、左右方向の延長部から左下方向への延長部へ折曲した構造を有しており、ボトムガイド6における左下方向への延長部は、紙幣プール部15から紙幣を繰出すときに(分離ポジション)、紙幣を案内するようになっている。
【0043】
紙幣分離部7は、上述したように、紙幣プール部15内の紙幣を1枚ずつに分離し、繰出すものである。分離搬送路8は、紙幣分離部7から繰出された紙幣を第1紙幣搬送路38へ搬送し、また、第1紙幣搬送路38から紙幣プール部15へ紙幣を搬送するものである。分離搬送路8は、図示しないモータにより紙幣分離部7と連動する構造になっている。また、分離搬送路8には、紙幣の連鎖、斜行、幅方向異常、長さ方向異常などを検知するセンサ8aが1ヶ所若しくは複数箇所配置されている。
【0044】
異物ガイド9は、ボトムガイド6から排除された硬貨などの異物を筐体に配置された異物ダクト22に案内するものである。
【0045】
入金リジェクト部10は、下部搬送路機構11、上部搬送路機構12、ビルストッパ13及び羽根車14を有する。
【0046】
下部搬送路機構11及び上部搬送路機構12はそれぞれ、ベルト及びローラなどで構成されている。下部搬送路機構11は、図示しない昇降駆動部により昇降し得るものである。下部搬送路機構11が上昇したときに、下部搬送路機構11及び上部搬送路機構12との間に紙幣が挟持され、図示しない搬送モータにより紙幣が紙幣入出金口部1に搬送されるようになっている。
【0047】
ビルストッパ13は、入金リジェクト部10に紙幣を集積するときに、搬送されてきた紙幣の先端を押さえるものである。ビルストッパ13は、下部搬送路機構11の昇降動作に連動するものであり、下部搬送路機構11が上昇するときに下降し、下部搬送路機構11が下降するときに上昇するものである。例えば、入金リジェクト部10に紙幣を集積するときには、下部搬送路機構11が下方に移動し、これに連動してビルストッパ13が搬送されてきた紙幣の先端を押さえる位置に上昇する。
【0048】
羽根車14は、可撓性のある羽根を径方向に配置した構造のものであり、紙幣入出金口部1の近傍で、かつ下部搬送路機構11に配置されている。羽根車14は、上述した搬送モータにより下部搬送路機構11と連動して回転し、紙幣プール部15に紙幣を送り込むときに紙幣の後端を押し退け、後続紙幣との衝突を回避するものである。
【0049】
自動取引装置20は、上述のような構成を有する紙幣入出金機21に加え、利用者の操作を受け入れたり、処理の段階や利用者の操作に応じて各部を制御する電気的な制御構成(制御手段他)も備えているが、図1では図示を省略している。制御手段の機能については、以下の動作説明の項で明らかにする。
【0050】
(A−2)実施形態の動作
次に、上述した構成を有する実施形態の紙幣入出金機21における紙幣の流れについて説明する。
【0051】
まず、紙幣入金時の紙幣の流れについて説明する。入金取引、両替取引、現金振込取引など、紙幣の入金を伴う取引が選択された場合には、紙幣の入金について同様な処理が実行される。
【0052】
図3は、紙幣入金を伴う取引で、利用者が投入した紙幣を判別、計数するときの紙幣の基本的な流れを示す紙幣入出金機21の概略側面図である。図3において、太い実線及び太い破線が紙幣の流れを示している。
【0053】
図4〜図15はそれぞれ、紙幣入金時における、紙幣入出金口部1の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部1の側面図である。これら動作は、自動取引装置20の図示しない制御手段によって起動される。
【0054】
利用者によって紙幣を投入させるときには、制御手段は、図4に示すように、シャッタ2を閉じた状態で、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ移動させ、かつ、第1ステージ4及び第2ステージ5を、投入された紙幣を受入れるポジションへ移動させる。このとき、利用者が投入した紙幣と一緒に混入している硬貨などの異物が紙幣分離部7に入り込まないように、第2ステージ5は紙幣分離部7と隔離する配置となっている。また、紙幣入出金口部1が顧客ポジションをとっているときには、紙幣入出金口部1の異物ガイド9と、異物ダクト22とが連通するようになっている。
【0055】
次に、制御手段は、図5に示すように、シャッタ2を開き、利用者から紙幣50を受入れる。このとき、アッパガイド3、第1ステージ4、第2ステージ5により、投入紙幣は確実に案内され、ボトムガイド6に受け止められ、紙幣プール部15に収納される。ここで、投入された紙幣50と一緒に硬貨などの異物が混入している場合には、その異物は、重力によって、ボトムガイド6のクシ歯状構造の隙間から落下し、異物ガイド9によって利用者側(図5の右下方向)へ案内され、異物ダクト22へ受け渡される。その後、異物は異物ダクト22によって異物返却口23(図1参照)へ案内され、利用者へ返却される。なお、制御手段は、紙幣入出金口部1を多少揺動させたり、若しくは、第1ステージ4及び第2ステージ5を多少前後動させたりし、異物の落下を促すようにしても良い。
【0056】
異物の異物返却口23への案内を重力に委ねていることは、異物を搬送させるためのモータなどが不要となって消費電力や構成の簡易化から好ましいことである。また、異物を収容する異物収容部を、自動取引装置20の内部に設けるようにしても良いが、この場合には、異物が混入している毎に、金融機関の係員などが異物を取り出すことを要し、利用者及び係員の双方にとって不都合である。
【0057】
利用者が紙幣を投入したことを図示しないセンサが検知すると、制御手段は、図6に示すようにシャッタ2を閉じる。
【0058】
次に、制御手段は、投入された紙幣50を紙幣プール部15より1枚ずつ分離し、装置内へ繰出す前準備(分離準備)を行う。すなわち、制御手段は、図7に示すように、第2ステージ5を、紙幣分離部7の繰出しに影響がなく、かつ、繰出された紙幣を紙幣分離部7に確実に案内する位置に移動させ、第1ステージ4を、紙幣50が紙幣分離部7の繰出しローラに当接するように移動させる。このとき、第1ステージ4と第2ステージ5は同時に移動し、紙幣50を確実に案内する。
【0059】
次に、制御手段は、図8に示すように、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって分離ポジションへ回転させ、分離搬送路8と第1紙幣搬送路38を接続する。このとき、紙幣分離部7の繰出しローラが紙幣50の重力方向最上位の紙幣に当接するようになる。また、制御手段は、入金リジェクト部10の下部搬送路機構11を下方向へ、ビルストッパ13を上方向へ移動させ、入金リジェクト紙幣を集積し得るようにする。
【0060】
また、制御手段は、一時保留部31の紙幣ステージ31bを紙幣集積するポジションへ移動させ、第1紙幣搬送路38内の図示しない搬送路切替手段を動作させ、紙幣入出金口部1から繰出された紙幣を紙幣判別部30へ搬送できるように接続する。制御手段は、第3紙幣搬送路40内の図示しない搬送路切替手段を動作させ、第2紙幣搬送路39から搬送されてきた紙幣を一時保留部31へ搬送できるように接続する。
【0061】
各構成において紙幣分離時の準備が完了したら、制御手段は、一時保留部31の分離集積部31aを図示しないモータによって集積方向へ動作させ、第1紙幣搬送路38、第2紙幣搬送路39、第3紙幣搬送路40、紙幣判別部30を図示しないモータによって搬送方向へ動作させ、その後、図9に示すように、紙幣入出金口部1の紙幣分離部7を図示しないモータによって繰出し方向へ動作させる。
【0062】
紙幣入出金口部1から繰出された紙幣は、図3に示すように、第1紙幣搬送路38によって紙幣判別部30へ搬送され、紙幣判別部30において、紙幣の金種、真偽、正損などの判別や紙幣の搬送状態(重走、連鎖、斜行など)の検出が実行される。紙幣判別部30の判別結果により入金紙幣として自動取引装置20に受入れ可能なものは、図示しない搬送路切替手段の動作により、第3紙幣搬送路40を経由して一時保留部31へ搬送され、紙幣ステージ31b上に集積される。紙幣判別部30の判別結果により、入金紙幣として自動取引装置20に受入れ不可能なものは、図示しない搬送路切替手段の動作により、入金リジェクト部10へ搬送され、下部搬送路機構11上に集積される。
【0063】
紙幣入出金口部1に投入された全ての紙幣の繰り出し、判別が終了したときに、入金リジェクト部10に受入れ不可能な紙幣(入金リジェクト紙幣)があれば、一括して紙幣入出金口部1に送り込まれ、利用者に返却される。
【0064】
図10〜図15はそれぞれ、入金リジェクト紙幣を利用者へ返却する際の動作を示している。
【0065】
図10は、入金リジェクト紙幣を紙幣プール部15へ受け渡す前準備動作の状態を示している。制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって集積ポジションへ回転させると共に、第1ステージ4及び第2ステージ5を入金リジェクト紙幣を受入れるポジションへ移動させる。
【0066】
図11は、入金リジェクト紙幣を紙幣プール部15へ受け渡している状態を示している。制御手段は、入金リジェクト部10の下部搬送路機構11を上方向、ビルストッパ13を下方向へ移動させて、上部搬送路機構12と下部搬送路機構11とで入金リジェクト紙幣を挟持させる。その後、制御手段は、図示しないモータにより上部搬送路機構12及び下部搬送路機構11に搬送動作させ、入金リジェクト紙幣を一括で紙幣プール部15に送り込む。
【0067】
図12は、入金リジェクト紙幣を利用者へ返却している状態を示している。制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ回転させると共に、第1ステージ4及び第2ステージ5を、入金リジェクト紙幣を利用者に返却する際のポジションへ移動させる。この第1ステージ4及び第2ステージ5のポジションは、投入された紙幣を受入れるポジションと同じであっても良い。その後、制御手段は、シャッタ2を開き、入金リジェクト紙幣を利用者へ返却する。なお、制御手段は、紙幣入出金口部1を顧客ポジションへ回転させる前に、第1ステージ4及び第2ステージ5を移動させ、紙幣を挟持させるようにしても良い。
【0068】
図13〜図15はそれぞれ、紙幣プール部15の紙幣を1枚ずつに分離し、繰出した紙幣の状態が異常な場合に、紙幣プール部15に戻す分離戻し処理時における、紙幣入出金口部1の各構成要素の動作を示している。この種の紙幣入出金機21では、利用者が投入した紙幣を紙幣入出金口部1から1枚ずつ繰出す際に、紙幣の状態を検知し、装置内に取込むと搬送ジャムなどのエラーを引き起こす可能性がある紙幣状態の場合(例えば、買物レシートが紙幣間に挟まっており、この買い物レシートが繰り出された場合)には、繰出しを中断して、紙幣入出金口部1に戻し、利用者へ返却するようになっており、できるだけ装置エラーにしないように制御されている。
【0069】
繰出された紙幣の先端の斜行状態や紙幣幅や紙幣長さの検知結果に異常があった場合には、制御手段は、図13に示すように、紙幣分離部7及び分離搬送路8の駆動モータを停止させ、繰出された紙幣を停止させる。なお、例えば、異常の種類によって検知に機能するセンサ8aは異なっている。次に、制御手段は、図14に示すように、第1ステージ4を紙幣分離部7から離れる方向(図14の右下方向)へ移動させる。このとき、紙幣プール部15内の紙幣は、重力の影響により第1ステージ4の移動に追従して移動し、紙幣分離部7との間に空間ができる。その後、制御手段は、図15に示すように、紙幣分離部7及び分離部搬送路8の駆動モータを紙幣プール部15方向へ動かし、これにより、異常紙幣は紙幣プール部15内に戻る。
【0070】
この実施形態の場合、分離戻し紙幣を戻すための空間は、第1ステージ4を移動させることで容易に形成させることができる。
【0071】
分離戻し処理後、制御手段は、図示は省略するが、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ回転させ、第1ステージ4及び第2ステージ5を、投入された紙幣を受入れるポジションへ移動させる。さらに、その後、制御手段は、シャッタ2を開き、分離戻しの紙幣や繰出しが実行されていない投入紙幣を利用者へ返却する。なお、異常紙幣の状態によっては、利用者に返却することなく、再度、紙幣分離部7により分離、繰出しを実施することもある。
【0072】
図16は、紙幣入金を伴う取引の成立後に、一時保留部31内の紙幣を紙幣収納部32〜36へ収納するときの紙幣の流れを示す紙幣入出金機21の概略側面図である。図16において、太い実線が紙幣の流れを示している。
【0073】
制御手段は、一時保留部31の紙幣ステージ31bを紙幣が分離集積部31aの繰出しローラに当接するように移動させる。また、制御手段は、第1紙幣搬送路38の図示しない搬送路切替手段を動作させ、紙幣判別部30から搬送された紙幣を第4紙幣搬送路41へ搬送できるように接続する。さらに、制御手段は、第2紙幣搬送路39の図示しない搬送路切替手段を動作させ、第3紙幣搬送路40から搬送されてきた紙幣を紙幣判別部30へ搬送できるように接続する。さらにまた、制御手段は、第3紙幣搬送路40の図示しない搬送路切替手段を動作させ、一時保留部31から繰出された紙幣を第2紙幣搬送路39へ搬送できるように接続する。制御手段は、紙幣収納部32〜36の紙幣ステージ32b〜36bをそれぞれ、紙幣を集積するポジションへ移動させる。
【0074】
以上のような一時保留部31における分離や紙幣収納部32〜36における集積の準備や、搬送経路の設定が完了すると、制御手段は、紙幣収納部32〜36の分離集積部32a〜36aをそれぞれ図示しないモータによって集積方向へ動作させ、第1紙幣搬送路38、第2紙幣搬送路39、第3紙幣搬送路40、第4紙幣搬送路41、紙幣判別部30を図示しないモータによって搬送方向へ動作させ、その後、一時保留部31の分離集積部31aを図示しないモータによって繰出し方向へ動作させる。
【0075】
一時保留部31から繰出された紙幣は、図16に示すように、第3紙幣搬送路40、第2紙幣搬送路39を順に経由して紙幣判別部30へ搬送され、紙幣判別部30において、少なくとも紙幣の金種の判別が実行される。紙幣判別部30から第1紙幣搬送路38を経由して第4紙幣搬送路41へ搬送された紙幣は、紙幣判別部30の判別結果に応じて切替内容が指示された図示しない搬送路切替手段の動作により、いずれかの紙幣収納部32〜36へ搬送され、その紙幣ステージ32b〜36b上に集積される。
【0076】
一時保留部31内の紙幣を紙幣収納部32〜36へ収納する動作時においては、紙幣入出金口部1はその直前のポジションを継続するようにしても良く、また、この動作時のために予め定められたポジションをとるようにしても良い。紙幣入金を伴う取引が両替取引であれば、予め定められたポジションを集積ポジションとするようにしても良い。また、当該自動取引装置20が入金専用機であれば、予め定められたポジションを顧客ポジションとするようにしても良い。
【0077】
図17は、紙幣出金を伴う取引時に、1又は複数の紙幣収納部32〜36内の紙幣を紙幣入出金口部1へ搬送するときの紙幣の流れを示す紙幣入出金機21の概略側面図である。図17において、太い実線及び太い破線が紙幣の流れを示している。
【0078】
図18は、紙幣出金時における、紙幣入出金口部1の各構成要素の動作を示す紙幣入出金口部1の側面図である。
【0079】
制御手段は、図示しないモータにより、紙幣の出金に係る紙幣収納部32〜36の紙幣ステージ32b〜36bを、集積紙幣が分離集積部32a〜36aの繰出しローラに当接するように移動させる。制御手段は、第1紙幣搬送路38の図示しない搬送路切替手段を動作させ、紙幣を第4紙幣搬送路41から紙幣判別部30へ搬送できるように接続させる。また、制御手段は、第2紙幣搬送路39の入金リジェクト部10に出金ポジションをとらせ、紙幣判別部30から搬送されてきた、出金可能な紙幣を直接紙幣プール部15へ搬送できるように接続させる。さらに、制御手段は、第3紙幣搬送路40の図示しない搬送路切替手段を動作させ、第2紙幣搬送路39から搬送されてきた紙幣をリジェクト部37へ搬送できるように接続させる。さらにまた、制御手段は、第4紙幣搬送路41の図示しない搬送路切替手段を動作させ、各紙幣収納部32〜36から繰出された紙幣を第1紙幣搬送路38へ搬送できるように接続させる。制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部により集積ポジションへ回転させると共に、図18に示すように、第1ステージ4と第2ステージ5を紙幣集積するポジションへ移動させる。
【0080】
各構成要素について以上のような出金準備が完了すると、制御手段は、第1紙幣搬送路38、第2紙幣搬送路39、第3紙幣搬送路40、第4紙幣搬送路41、紙幣判別部30を図示しないモータによって搬送方向へ動作させ、その後、出金する金種に応じた紙幣収納部32〜36の分離集積部32a〜36aのいずれかを図示しないモータによって繰出し方向へ動作させる。
【0081】
いずれかの紙幣収納部32〜36から繰出された紙幣は、図17に示すように(図17は紙幣収納部32から紙幣を繰出した状態を示している)、第4紙幣搬送路41、第1紙幣搬送路38を経由して紙幣判別部30へ搬送され、紙幣判別部30において、紙幣の金種、真偽、正損などの判別及び紙幣の搬送状態(重走、連鎖、斜行など)の検出が実行される。紙幣判別部30から第2紙幣搬送路39へ搬送された紙幣は、紙幣判別部30の判別結果に応じて切替動作された図示しない搬送路切替手段により、出金可能なものは紙幣入出金口部1へ搬送され、出金不可能なものは第3紙幣搬送路40を経由してリジェクト部37の紙幣ステージ37b上に集積される。このとき、入金リジェクト部10は搬送された出金可能な紙幣をそのまま通過させて紙幣入出金口部1へ送り込む。
【0082】
紙幣出金を伴う取引で必要な、金種毎に要求されている枚数の紙幣が紙幣入出金口部1に集積されると、制御手段は、紙幣入出金口部1を図示しない回転駆動部によって顧客ポジションへ回転させると共に、第1ステージ4及び第2ステージ5を、出金紙幣を利用者に供与する際のポジションへ移動させる(図12参照)。その後、制御手段は、シャッタ2を開き、出金紙幣を利用者へ供与する(図12参照)。
【0083】
(A−3)実施形態の効果
実施形態の紙幣入出金機21によれば、紙幣プール部15だけでなく、紙幣分離部7、分離搬送部8、異物ガイド9及び紙幣プール部15を含めた紙幣入出金口部1の全体を回転可能にしたため、以下のような効果を奏することができる。
【0084】
投入紙幣の分離、繰出し(分離戻しを含む)や、入金リジェクト紙幣の返却を共に、簡易な構成で、紙幣プール部15に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して行うことができる。この際、異物の利用者への返却構成を損なうことがない。
【0085】
投入紙幣の分離、繰出し(分離戻しを含む)を、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側から行うことは、分離直後に紙幣の搬送異常や紙幣の形状異常を検知して紙幣プール部15に紙幣を戻す(分離戻し)ときに、第1ステージ4の下降に追従して投入紙幣も下降して戻すための空間が形成でき、強制的に空間を作るような可動板が不要となって好ましい。
【0086】
また、入金リジェクト紙幣の返却を、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側から行うことは、第1ステージ4及び第2ステージの移動により返却紙幣を受け入れる空間が形成でき、強制的に空間を作るような構成が不要となって好ましい。
【0087】
しかしながら、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して処理を行う2つの構成、すなわち、投入紙幣の分離、繰出し構成と、入金リジェクト紙幣の返却構成とを、紙幣プール部だけが回転し得る紙幣入出金機で紙幣プール部の同一の側に設けることは難しい。そのため、図19に示すように、投入紙幣の分離、繰出し構成60と、入金リジェクト紙幣の返却構成61とを、紙幣プール部62を挟んで反対側に設け、紙幣判別部63を中間に配置して紙幣搬送路で連絡することも考えられている。しかしながら、この場合には、自動取引装置の前面側に紙幣搬送路を敷設することを要し、異物を利用者側に重力を利用して返却する経路を形成することはできない。異物が落下して収容される異物収容部64が、自動取引装置の内部に設けられた場合には、投入紙幣に異物が混入している毎に、金融機関の係員などが取り出すことになり、その間待っている利用者共々、使い勝手に不満を抱いてしまう。
【0088】
上記実施形態の紙幣入出金機21によれば、紙幣分離部7(及び分離搬送部8)が回転して位置を変えることができ、投入紙幣の分離、繰出しと、入金リジェクト紙幣の返却とで紙幣分離部7が位置を変えるため、入金リジェクト部10を、顧客ポジションの紙幣プール部15から見て紙幣分離部7と同一側に設けても、両者がそれぞれ有効に動作することができる。
【0089】
すなわち、重力を利用することで構成を簡易化し得る、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して処理を行う2つの構成、紙幣分離部7と入金リジェクト部10とを同一側に設けて両者共に有効に動作することができる。
【0090】
これにより、図1に示すように、異物返却口23を装置前面に設けても、投入紙幣に混入されていた異物を重力だけを利用して利用者に返却することができる。
【0091】
実施形態の入金リジェクト部10は、入金リジェクト紙幣の返却機能だけでなく、入金リジェクト紙幣の一時保留機能をも発揮するものである。一時保留機能をも発揮する入金リジェクト部10を、紙幣入出金口部1に接近して設けたので、上述したように、入金リジェクト紙幣が複数枚でも一括して紙幣入出金口部1に返却することができる。
【0092】
入金リジェクト紙幣の返却に係る構成のうち、返却そのものを行う構成として紙幣出金時に出金紙幣を紙幣入出金口部1に送り込む構成を適用し、入金リジェクト紙幣の一時保留機能を発揮する構成を、紙幣入出金口部1から離して設ける従来例がある(特許文献2参照)。この場合、複数枚の入金リジェクト紙幣の一括搬送は実際上できず、1枚ずつ分離して搬送し、紙幣入出金口部1に返却することになる。この場合、入金リジェクト紙幣の分離構成分だけ構成が複雑となると共に、返却に要する時間も長いものとなる。
【0093】
実施形態によれば、入金リジェクト部10を紙幣入出金口部1に接近して設けて、入金リジェクト紙幣を一括して紙幣入出金口部1に返却するので、構成の簡易化に寄与しており、しかも、返却時間(従って、入金処理時間)を短くすることができる。
【0094】
以上のように、上記実施形態によれば、紙幣入出金機21(従って、自動取引装置20)の小型化、低廉化を図ることができる。
【0095】
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明では言及しなかったが、自動取引装置20は紙幣だけ扱うことができるものであっても良く、また、紙幣と硬貨の両方を扱うことができるものであっても良い。
【0096】
ここで、自動取引装置20が1種類の金種の紙幣だけを扱うことができるものであっても良い(言い換えると、例えば、該当金種以外の金種の紙幣は異常紙幣として処理されるものであっても良い)。このような場合であれば、一時保留部を省略し、取込可能と判別された入金紙幣を紙幣収容部に直接搬送して収容させる構成としても良い。
【0097】
上記実施形態では、一般ユーザが操作を実行する自動取引装置を示したが、金融機関の係員が操作するテラー用の取引装置に対しても、本発明の技術思想を適用することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、紙幣入金を伴う取引(例えば入金取引)及び紙幣出金を伴う取引(例えば出金取引)を実行可能な自動取引装置20を示したが、紙幣入金を伴う取引だけを実行可能な自動取引装置や、紙幣出金を伴う取引だけを実行可能な自動取引装置に、本発明の技術思想を適用することができる。後者の場合であっても、取引が途中で中止された際には、紙幣出金口部から出金紙幣を回収することを要し、紙幣分離部を設けるようにすることもできる。
【0099】
さらに、上記実施形態では、入金リジェクト部10を紙幣入出金口部1に接近して設けたものを示したが、入金リジェクトの返却に係る構成のうち、入金リジェクト紙幣の一時保留部を紙幣入出金口部1から離して設けるようにしても良い。例えば、出金用の一時保留部31を入金リジェクト紙幣の一時保留部として兼用するようにしても良い。このようにした場合であっても、紙幣入出金口部1に投入された紙幣束の重力方向の最上位側に対して、投入紙幣の分離、繰出しと、入金リジェクト紙幣の返却とを行うことができる。
【0100】
上記実施形態においては、紙幣入出金口部1が回転によって、「顧客ポジション」、「分離ポジション」、「集積ポジション」の3ポジションをとり得るものを示したが、とり得るポジション数は3に限定されるものではない。例えば、ボトムガイド6に対する第1ステージ4や第2ステージ5の角度を、利用者側に多少倒した角度に選定し、紙幣入出金口部1の「顧客ポジション」と「分離ポジション」とを同じポジションとするようにしても良い。また、分離戻し時のポジションを、「分離ポジション」より第1ステージ4や第2ステージ5がより水平に近くなるようにしても良い。
【0101】
また、上記実施形態においては、紙幣プール部15だけでなく、紙幣分離部7、分離搬送部8及び異物ガイド9も回転するものを示したが、少なくとも紙幣プール部15及び紙幣分離部7を一緒に回転可能とすれば良い。例えば、紙幣プール部15のボトムガイド6の下側を単なる空間としておき、顧客ポジションのボトムガイド6の下側であって回転体の外部に異物ガイド9を設けるようにしても良い。また例えば、分離搬送部8に該当する構成を第1紙幣搬送路38の構成と一体にして、回転体の外部に設けるようにしても良い。
【0102】
さらに、上記実施形態においては、紙幣分離部7が重力方向の最上位の紙幣から分離、繰出しを行うものを示したが、最下位からの紙幣から分離、繰出しを行うが、分離戻し時には第1ステージ4の下降を利用して最上位に戻す紙幣分離部を適用するようにしても良い。
【0103】
上記実施形態においては、紙幣を取り扱う紙幣入出金機及び自動取引装置を示したが、対象となる紙葉類は紙幣に限定されず、小切手、証券、証書、チケットなどの他の紙葉類であっても良い。
【符号の説明】
【0104】
1:紙幣入出金口部、3:アッパガイド、4:第1ステージ、5:第2ステージ、6:ボトムガイド、7:紙幣分離部、8:分離搬送路、9:異物ガイド、10:入金リジェクト部、15:紙幣プール部、10:入金リジェクト部、20:自動取引装置、21:紙幣入出金機、22:異物ダクト、23:異物返却口、30:紙幣判別部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者との間で紙葉類を授受する口部となっている紙葉類授受口部と、利用者との間で授受する紙葉類を判別する紙葉類判別部と、紙葉類を収納する少なくとも一つの紙葉類収納部と、紙葉類を搬送する紙葉類搬送路を有する紙葉類処理装置において、
上記紙葉類授受口部は、利用者との間で授受する紙葉類を一時的にプールする紙葉類プール部と、この紙葉類プール部にプールされた紙葉類から1枚ずつ分離して繰出し、上記紙葉類搬送路に供給する紙葉類分離部とを有し、紙葉類プール部及び紙葉類分離部を含めて回転可能になっている
ことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
上記紙葉類プール部及び上記紙葉類分離部は、回転により、顧客ポジション、分離ポジション及び集積ポジションのいずれかをとるものであり、
上記顧客ポジションにおいて、上記紙葉類プール部は、利用者との間で紙葉類を授受するのに適した姿勢になっており、
上記分離ポジションにおいて、上記紙葉類分離部及び上記紙葉類プール部は、上記紙葉類分離部が上記紙葉類プール部の重力方向の最上位の紙葉類から分離して繰出す姿勢になっており、
上記集積ポジションにおいて、上記紙葉類プール部は、上記紙葉類搬送路側から供給された紙葉類を受け入れて集積させるのに適した姿勢になっている
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
上記紙幣プール部は、それぞれ独立して進退動可能な第1ステージ及び第2ステージと、上記顧客ポジションにおいて、プールされている紙幣の重力方向の下側の端縁を支持するボトムガイドとを有し、
上記顧客ポジションにおいて、上記第1ステージ及び上記第2ステージは、紙葉類に混入されている異物が各部の異常動作を引き起こす箇所に行くことを阻止する位置に移動され、
上記分離ポジションにおいて、上記第1ステージは、紙葉類を上記紙葉類分離部へ案内する位置に移動されると共に、上記第2ステージは、紙葉類を上記紙葉類分離部のローラに押し付けるように移動され、
上記集積ポジションにおいて、上記第1ステージは、上記紙葉類搬送路側から供給された紙葉類を受け入れて集積させる位置であって、積層される最上位の紙葉類の位置に応じた位置に移動される
ことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
上記紙葉類授受口部に接近した位置の、しかも、上記紙葉類授受口部に紙葉類を挿入する位置の上記紙葉類搬送路には、上記紙葉類分離部によって繰り出され、上記紙葉類判別部によって不適と判別された取込リジェクト紙葉類を一時的に保留する取込リジェクト紙葉類保持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
上記紙葉類プール部の底面はプールされた紙葉類に混入されている異物を落下可能な異物排除開口を有し、
上記紙葉類授受口部は、上記異物排除開口からの異物を、重力によってのみ所定方向に進行させる異物ガイドを有し、この異物ガイドも、紙葉類プール部及び紙葉類分離部と一緒に回転可能になっている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
紙葉類処理装置を備え、利用者が所望した取引に応じ、利用者から紙葉類を取り込み、若しくは、利用者へ紙葉類を供給する取引装置において、
上記紙葉類処理装置として、請求項1〜5のいずれかに記載の紙葉類処理装置を適用したことを特徴とする取引装置。
【請求項1】
利用者との間で紙葉類を授受する口部となっている紙葉類授受口部と、利用者との間で授受する紙葉類を判別する紙葉類判別部と、紙葉類を収納する少なくとも一つの紙葉類収納部と、紙葉類を搬送する紙葉類搬送路を有する紙葉類処理装置において、
上記紙葉類授受口部は、利用者との間で授受する紙葉類を一時的にプールする紙葉類プール部と、この紙葉類プール部にプールされた紙葉類から1枚ずつ分離して繰出し、上記紙葉類搬送路に供給する紙葉類分離部とを有し、紙葉類プール部及び紙葉類分離部を含めて回転可能になっている
ことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
上記紙葉類プール部及び上記紙葉類分離部は、回転により、顧客ポジション、分離ポジション及び集積ポジションのいずれかをとるものであり、
上記顧客ポジションにおいて、上記紙葉類プール部は、利用者との間で紙葉類を授受するのに適した姿勢になっており、
上記分離ポジションにおいて、上記紙葉類分離部及び上記紙葉類プール部は、上記紙葉類分離部が上記紙葉類プール部の重力方向の最上位の紙葉類から分離して繰出す姿勢になっており、
上記集積ポジションにおいて、上記紙葉類プール部は、上記紙葉類搬送路側から供給された紙葉類を受け入れて集積させるのに適した姿勢になっている
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
上記紙幣プール部は、それぞれ独立して進退動可能な第1ステージ及び第2ステージと、上記顧客ポジションにおいて、プールされている紙幣の重力方向の下側の端縁を支持するボトムガイドとを有し、
上記顧客ポジションにおいて、上記第1ステージ及び上記第2ステージは、紙葉類に混入されている異物が各部の異常動作を引き起こす箇所に行くことを阻止する位置に移動され、
上記分離ポジションにおいて、上記第1ステージは、紙葉類を上記紙葉類分離部へ案内する位置に移動されると共に、上記第2ステージは、紙葉類を上記紙葉類分離部のローラに押し付けるように移動され、
上記集積ポジションにおいて、上記第1ステージは、上記紙葉類搬送路側から供給された紙葉類を受け入れて集積させる位置であって、積層される最上位の紙葉類の位置に応じた位置に移動される
ことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
上記紙葉類授受口部に接近した位置の、しかも、上記紙葉類授受口部に紙葉類を挿入する位置の上記紙葉類搬送路には、上記紙葉類分離部によって繰り出され、上記紙葉類判別部によって不適と判別された取込リジェクト紙葉類を一時的に保留する取込リジェクト紙葉類保持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
上記紙葉類プール部の底面はプールされた紙葉類に混入されている異物を落下可能な異物排除開口を有し、
上記紙葉類授受口部は、上記異物排除開口からの異物を、重力によってのみ所定方向に進行させる異物ガイドを有し、この異物ガイドも、紙葉類プール部及び紙葉類分離部と一緒に回転可能になっている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
紙葉類処理装置を備え、利用者が所望した取引に応じ、利用者から紙葉類を取り込み、若しくは、利用者へ紙葉類を供給する取引装置において、
上記紙葉類処理装置として、請求項1〜5のいずれかに記載の紙葉類処理装置を適用したことを特徴とする取引装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−190138(P2012−190138A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51546(P2011−51546)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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