説明

紙葉類繰り出し集積機構

【目的】 小型で簡素、かつ保守作業時の効率化を可能とし、しかも低価格な優れた紙葉類の繰り出し集積機構を提供するものである。
【構成】 紙幣収納庫5の上部ほぼ中央に位置して、紙幣Pの集積時は上方に退避し、かつ繰り出し時は下降して紙葉類の最上部に当接するピックアップローラ51と、紙幣収納庫5の上面開口部の一端に設けた紙幣の出入口に設けられ、所定方向にのみ回転可能としたフィードローラ58と、このフィードローラ58と同軸上に設けられ、外側面に可撓性を有する複数枚の押下片66を放射状に備えた搬送ローラ64と、前記フィードローラ58に圧接して紙葉類の重送を防止する分離ローラ62と、この分離ローラ62から分離されてきた紙幣Pを搬送路へと搬送する搬送ベルト98および搬送ローラ92と、搬送路を搬送される紙幣Pの搬送方向を切り換える切替えゲート99とにより紙葉類繰り出し機構を構成して、集積動作と繰り出し動作とを共用して行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は銀行等の金融機関に設置され、紙幣や帳票等の紙葉類を取り扱う紙葉類取り扱い装置において、投入された紙葉類を集積して紙葉類収納庫へ収納したり、あるいは紙葉類を発行するために前記紙葉類収納庫から紙葉類を繰り出して給送する紙葉類繰り出し集積機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図6は従来の紙葉類取り扱い装置の概略内部構造を示す断面図であり、ここでは紙葉類として紙幣を取り扱って入出金等の取引を行う自動取引装置に組み込まれている入出金装置を例にとって説明する。図6において、1は入出金装置の右端側上部に配置された接客部であり、顧客が入金紙幣を投入したり、あるいは返却紙幣や支払い紙幣を顧客に出金するようになっている。2はこの接客部1内に投入された紙幣を1枚ずつ分離して下方の搬送路へと送り出す分離給送部、3は接客部1の斜め下方に設けられた鑑別部であり、搬送されてきた紙幣の真偽,表裏,正損,及び金種等を鑑別する。
【0003】4は前記鑑別部3で真券であると鑑別された出金用の紙幣を接客部1に送り込む手前で表側に揃えるための表裏反転部であり、この表裏反転部4で顧客に出金する紙幣は全て表側に揃える。5〜7は入出金装置の下部に並べて設けた複数個の紙葉類収納庫としての紙幣収納庫であり、それぞれ金種別に紙幣を収納しており、ここでは5を万円紙幣用,6を5千円紙幣用,7は千円紙幣用としている。
【0004】8は各金種別の紙幣収納庫5〜7へ紙幣を取り込んで収納したり、紙幣を1枚づつ繰り出して給送する入出金機構、9は前記鑑別部3にて出金に不適と鑑別された紙幣を収納するリジェクト紙幣収納庫、10は複数種の紙幣を一括して収納している一括紙幣収納庫であり、始業時および運用時において前記各紙幣収納庫5〜7への紙幣の装填及び補充並びに、終業時において紙幣を回収して一括収納し、紙幣収納庫5〜7を入出金装置から取り出すことなく紙幣の装填及び補充、そして回収を可能としている。
【0005】なお、上述した各構成要素間は紙幣を挟持して搬送するベルトと、このベルトを支持して駆動するローラからなる搬送路によって連絡されている。次に、上記構成における入出金装置の処理動作を、入金取引と出金取引とを例にとって説明する。まず、入金取引が顧客により図示せぬ顧客操作部の入力キーにより選択されると、入出金装置は入金取引モードとなり、接客部1の図示せぬシャッタが開放されるので、顧客は入金用の紙幣を接客部1に一括して投入する。紙幣が投入されるとシャッタは閉じ、接客部1内に設けた分離給送部2により紙幣が1枚づつ分離給送されて搬送路へと送りだされる。
【0006】搬送路に送りだされた紙幣は、1枚づつ鑑別部3へと送り込まれ、この鑑別部3において真偽,正損,及び金種等が鑑別され、その結果、偽券と鑑別された紙幣は搬送路により前記接客部1へと戻されて顧客に返却される。一方、真券と鑑別された紙幣のうち疲労度が小さく出金用に紙幣として再利用可能な正券と判定された紙幣は金種別の結果に基づいて搬送路を入出金機構8へと送られ、各紙幣収納庫5〜7に金種別に収納され、また疲労度が大きく出金用としては不適と判定された紙幣は搬送路によりリジェクト紙幣収納庫9に搬送されて収納される。
【0007】次に出金取引の場合は、顧客操作により顧客操作部の入力キーにより出金取引が選択されると、入出金装置は出金取引モードとなり、顧客は誘導表示に従い出金金額を入力する。これにより入出金装置は顧客の要求金額及び金種に応じて入出金機構8により金種別の紙幣収納庫5〜7から紙幣を1枚ずつ要求金額分だけ繰り出し、この繰り出した紙幣を搬送路により鑑別部3へと搬送し、紙幣の二重送りや金種等の鑑別を行う。
【0008】鑑別部3において、二重送り等の異常が検出された紙幣は搬送路によりリジェクト紙幣収納庫9へ搬送され収納される、また、異常が検出されなかった紙幣は搬送路により矢印に沿って搬送され表裏反転部4へと搬送され、前記鑑別部3において裏面側であると鑑別された紙幣はここで反転処理されて表側に揃えられ、前記要求金額分の紙幣が集積されると、一括して集積前記接客部1へと搬送される。この後、図示せぬシャッタが開き、顧客は出金紙幣を受け取る。
【0009】図7は上述した紙幣の入出金装置における従来の入出金機構の構造を示す拡大図で、ここでは代表として万円紙幣用の紙幣収納庫5を例にして説明する。この図に見られるように紙幣収納庫5内にはステージ11が設けられていて、紙幣の集積や繰り出しの際にこのステージ11を上下動させて紙幣を上下方向の所定の位置に移動させるようになっている。
【0010】12と13はそれぞれ一対のプーリに張設した搬送ベルトであり、各プーリの回転に伴って回転駆動することで紙幣を両面から挟持して搬送する搬送路の一部を構成している。14は紙幣収納庫5の上端開口部の一端、図においては右端側に設けた紙幣集積機構であり、圧接対向させた一対のローラ15,16と、このローラ15と16のうちの下方に位置するローラ16とローラ17間に張設した搬送ベルト18とより成っており、前記搬送ベルト12と13とより成る搬送路の一端、図においては右端から紙幣を受け渡され、これを紙幣収納庫5の上部に移動してきているステージ11上に集積する。
【0011】19は紙幣収納庫5の上端の中央に上下動可能に配置されたピックアップローラであり、図中矢印方向に回転することにより、ステージ11上に集積されている紙幣を最上層から繰り出す。20はこのピックアップローラ19と所定の間隔を確保して紙幣収納庫5の開口部上端の左端側に配置されたフィードローラ、21はこのフィードローラ20の下面側に圧接配置した紙幣重送防止手段としての分離ローラ、22は前記フィードローラ20に紙幣収納庫5の外側で当接させている中継ベルトであり、これら19〜22により紙幣収納庫5内の紙幣を繰り出して、一枚づつ分離給送し、前記搬送ベルト12と13とより成る搬送路の他端、図においては左端側へと搬送する紙幣繰り出し機構23を構成している。
【0012】なお、ここで分離ローラ21にはワンウェイベアリングが組み込まれていて、これにより分離ローラ21は図中時計方向には回転するが反時計方向にはロックされて回転できないようになっている。このように従来の入出金装置は、入金取引時に紙幣の集積収納を行う紙幣集積機構14と、出金取引時に紙幣の繰り出し分離を行う紙幣繰り出し機構23とをそれぞれ独立させて別個に設け、かつこれらの動作はそれぞれ集積動作時、および繰り出し動作時とに区別して、処理動作に応じて独自に駆動させて対応していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述したように従来の技術においては、紙葉類を紙葉類収納庫に集積するための紙葉類集積機構と、また紙葉類収納庫から紙葉類を繰り出して給送する紙葉類繰り出し機構とを、各紙葉類収納庫毎に、該紙葉類収納庫の上面両端に対向させるようにしてそれぞれ別体として具備しているために、装置の大型化,複雑化と共に高価格化を招き、近年各種分野の機器において要望されている装置の小型化,構成の簡素化,保守の効率化,低価格化に対応することができないという問題があった。
【0014】本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、紙葉類の繰り出し及び集積機構による装置の大型化,複雑化並びに高価格化を防いで、小型でかつ簡素な構成を実現し、保守作業の効率が良くしかも低価格で優れた紙葉類の繰り出し集積機構を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するため本発明は、従来の構成にある紙葉類の集積機構と繰り出し機構とを別体として配置することなく一体の構成として、集積機構と繰り出し機構とを共用するようにしたものである。すなわち、搬送路により搬送されてきた紙葉類を取り込んで紙葉類収納庫内に収納するべく紙葉類収納庫上部の紙葉類集積部に紙葉類を集積すると共に、前記紙葉類収納庫内に集積して収納している紙葉類を最上層から1枚づつ繰り出して前記搬送路へ給送する紙葉類繰り出し集積機構において、前記紙葉類収納庫の上部ほぼ中央に位置して、紙葉類の集積時は上方に退避し、かつ繰り出し時は下降して紙葉類の最上部に当接する紙葉類繰り出し手段と、前記紙葉類収納庫の上面開口部の一端に設けた紙葉類の出入口に設けられ、駆動手段により所定方向にのみ回転可能として前記紙葉類繰り出し手段により繰り出された紙葉類を取り込む紙葉類取り込み手段と、この紙葉類取り込み手段と同軸上に設けられ、外側面に可撓性を有する複数枚の押下片を放射状に備えた紙葉類集積手段とを設ける。
【0016】さらに、前記紙葉類取り込み手段に圧接し、取り込んだ紙葉類を紙葉類集積部方向へと戻す方向にのみに回転して紙葉類の重送を防止する紙葉類重送防止手段と、この紙葉類重送防止手段により1枚づつ分離されて取り込まれた紙葉類を前記紙葉類取り込み手段とにより挟持して搬送路へと搬送する紙葉類搬送手段と、この紙葉類搬送手段から紙葉類を搬送路へ送り込む紙葉類送り込み手段と、前記搬送路を搬送される紙葉類の搬送方向を切り換える搬送方向切り換え手段とを備えることとしたものである。
【0017】
【作用】上述した構成により、紙葉類を集積する場合は、紙葉類繰り出し手段を上方に退避させると共に搬送方向切り換え手段を集積位置に切り換えることにより紙葉類繰り出し集積機構を集積動作時とし、搬送路から送られてきた紙葉類を、搬送路から搬送方向切り換え手段により紙葉類集積手段方向へと案内する。そしてこの紙葉類集積手段が回転することにより、紙葉類は紙葉類集積部方向へと搬送され、そしてこの紙葉類集積手段の外側面に設けられた押下片によって紙葉類の後端が押下されるため、紙葉類は紙葉類集積部上に順次集積される。
【0018】また、紙葉類を繰り出す場合は、紙葉類繰り出し手段を下降させて紙葉類に当接させると共に搬送方向切り換え手段を繰り出し位置に切り換えると共に紙葉類取り込み手段を前記紙葉類集積時と同方向に回転駆動することで、紙葉類繰り出し集積機構を繰り出し動作時とする。これにより紙葉類は、紙葉類取り込み手段方向へと繰り出され、紙葉類取り込み手段により取り込まれる際に紙葉類重送防止手段により重送防止された後、紙葉類搬送手段及び紙葉類送り込み手段を経て前記搬送路へと給送される。
【0019】従って、紙葉類繰り出し手段と搬送方向切り換え手段とを、それぞれの処理時に対応する各位置に移動させた後、紙葉類繰り出し集積機構全体を所定の一定方向にのみ回転駆動すれば、集積と繰り出し動作とは同一機構により共用して行うことができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は紙葉類の繰り出し集積機構を示す入出金装置の概略側面図、図2は同じく紙葉類の繰り出し集積機構を示す入出金装置の概略平面図、図3は紙葉類の繰り出し手段の一部を示す斜視図である。なお、本実施例においても、紙葉類は紙幣を一例としており、従って以下の説明は紙幣入出金装置に組み込んだ紙幣繰り出し集積機構となる。
【0021】図1〜図3において、5は入出金装置の底部に配列されている複数個の金種別収納庫のうちのひとつである紙幣収納庫であり、ここでは万円券用の紙幣収納庫を代表として示す。11はこの万円券用の紙幣収納庫5内に上下動可能に備えられたステージであり、図に示すように上面に紙葉類として万円券の紙幣Pを複数枚集積している。
【0022】51は紙幣収納庫5の上部ほぼ中央部に配置され、前記ステージ11上に集積されている紙幣Pを繰り出すための紙葉類繰り出し手段としてのピックアップローラで、外周の一部に高摩擦部材53を有しており、シャフト52に所定の間隔で例えば2個固定している。そして、このピックアップローラ51をシャフト52を介して回転することにより、前記高摩擦部材53により紙幣Pを摩擦力でその最上層から開口させた収納庫上面の出入口方向、図においては左方向へと繰り出すものである。
【0023】54は一端側で、前記シャフト52をピックアップローラ51の外側において支承している支持部材で、他端側は支軸55に取り付けていて、この支軸55を支点としてピックアップローラ51側を回動自在な構造としている。56はこの支持部材54を支軸55を支点として回動させる駆動手段としてのソレノイドであり、前記紙幣収納庫5の出入口とは反対側に位置するようにリンク57を介して前記支持部材54の他端に取り付けている。すなわち、ソレノイド56に通電することによりリンク57を介して支持部材54の他端を下方に引っ張って支持部材54を時計方向に回動し、図中二点鎖線にて示した位置にピックアップローラ51を上昇させると共に、またソレノイド56への通電を停止することでリンク57を突出させて支持部材54を反時計方向に回動させて、ピックアップローラ51を図中実線にて示すように紙幣Pの最上層に当接させる。
【0024】58は紙幣収納庫5の出入口の上部、つまり紙幣が繰り出し方向に設けられた紙葉類取り込み手段としてのフィードローラで、前記ピックアップローラ51と同様に外周の一部に高摩擦部材59を有しており、また円周面には円周方向全域に渡ってリング状の溝60が所定間隔で2本並設している。61はこのフィードローラ58を所定の間隔で2個支持しているシャフトであり、前記シャフト52と平行となるようにして回動可能に配置されている。
【0025】62は前記フィードローラ58の下面側に圧接している紙幣重送防止手段としての分離ローラであり、この分離ローラ62には円周方向全域に渡ってリング状の溝63が形成されていて、この溝63と前記フィードローラ58の2本の溝60とにより両ローラ58と60は互いに僅かに噛み合っている。また、この分離ローラ62には図示しないがワンウェイベアリングが組み込まれていて、フィードローラ58が回転する時計方向と同方向にのみ回転して、ピックアップローラ51により2重送りされてきた紙幣Pのうち下面側の紙幣Pを紙幣収納庫5の出入口側へと押し戻して分離し、2重送りを防止する。
【0026】64は前記フィードローラ58と同軸上となるようにシャフト61に固定した搬送ローラであり、64aは2個のフィードローラ58のそれぞれ外側に、また64bは2個のフィードローラ58間に配設している。65は前記搬送ローラ64aのそれぞれ外側に一体に設けた押下ローラであり、その外周面には等間隔に配置した3か所から可撓性を有する材質より形成した3枚の押下片66を突設しており、搬送ローラ64の回転に伴って回転することにより繰り出されてきた紙幣Pを下方に押し付ける。なお、この押下片66はその先端の位置で、搬送ローラ64の直径より僅かに小さい径としており、これら64〜66により紙幣集積手段を構成している。
【0027】67はこの搬送ローラ64の上面側に図示せぬ圧接手段により圧接配置させたテンションローラであり、紙葉類収納庫5内へと集積するために搬送されてきた紙幣Pを搬送ローラ64との間で挟持すると共に押下片66により押下してステージ11上へと搬送して集積する。そして、これら各ローラを支持している支軸55とシャフト61は、図3に示すようにサイドフレーム68により支持されており、かつこのサイドフレーム68から外側に突出させた端部には、それぞれプーリ69,70を取り付けており、かつこのプーリ69と70間には後述するモータからの動力をプーリ70に伝達するための搬送ベルト71を張設している。72は支軸55の端部、つまりプーリ69と同軸上に設けたギヤ、73はこのギヤ72と噛合させたモータギヤであり、第1のモータ74の回転軸に取り付けられている。
【0028】75は前記支持部材54を挟むようにして支軸55上に設けたプーリ、76はこの支軸55と平行に設けたシャフト52の両端部に設けたプーリ、77はこれらプーリ75と76間に張設したベルトであり、このベルト77によってシャフト52は前記第1のモータ74からの回転力が伝達されるようになっており、これによりピックアップローラ51を所定方向に回転させて紙幣Pを繰り出す。
【0029】図1に戻り、78は第2のモータであり、突出させた回転軸にはモータギヤ79を取り付けており、ギヤ80と噛合している。81はこのギヤ80を軸支しているシャフトであり、図3に示すように対向配置した一対のサイドフレーム82Lと82R間に支持されており、このシャフト81には所定の間隔で3個のプーリ83が固定されている。84はこれら3個のプーリ83と対応して水平に位置に設けられたプーリで、やはりサイドフレーム82Lと82R間に支持されたシャフト85に固定されており、これら各プーリ83と84にはそれぞれ上側搬送ベルト86が張設されていて、第2のモータ78からの回転力を伝達するようになっている。
【0030】87はこの上側搬送ベルト86の一端から中央部にかけてその下面側に圧接させて紙幣Pの搬送路を構成している下側搬送ベルトであり、プーリ83の斜め左下方に配置されるようにシャフト88を介してサイドフレーム82Lと82R間に設けられたプーリ89と、前記プーリ83と84とのちょうど中間位置に配置されるようにシャフト90を介してサイドフレーム82Lと82R間に設けられたプーリ91との間に張設している。
【0031】92は前記上側搬送ベルト86の他端側の下面に圧接させた紙葉類送り込み手段としての搬送ローラであり、シャフト93に所定の間隔で3個固定されていて、このシャフト93はサイドフレーム82Lと82Rに回転可能に支持されている。94と95はやはりサイドフレーム82Lと82R間に支持したシャフトであり、上方のシャフト94には前記搬送ローラ92と略水平方向に圧接するプーリ96が、そして下方のシャフト95には前記フィードローラ58と斜め下方から圧接するプーリ97がそれぞれ固定されており、搬送ベルト98がこれらプーリ96と97間に張設されている。そして、これらプーリ96と97及び搬送ベルト98とにより、前記フィードローラ58と分離ローラ62とにより1枚づつ分離されて繰り出されてきた紙幣Pを、搬送ローラ92と上側搬送ベルト86間へと搬送する紙葉類搬送手段を構成している。
【0032】99は前記搬送ローラ92とプーリ89間に位置するように設けた搬送方向切り換え手段としての切替えゲートであり、シャフト100により回動可能に支持されている。そして、このシャフト100は図2に示すようにサイドフレーム82Rの外側でカップリング101を介してロータリーソレノイド102に連結されており、このローターソレノイド102の駆動により図中実線で示した集積位置と、二点鎖線にて示した繰り出し位置とに回動して位置付けされるようになっている。
【0033】以上の構成による本実施例の紙葉類繰り出し集積機構の作用を説明する。まず、出金取引時や、終業時における紙幣回収時のように、紙幣Pを紙幣収納庫から繰り出す場合の紙葉類繰り出し動作について説明する。ソレノイド56への通電をOFFすることによりピックアップローラ51を図1の実線にて示す繰り出し位置とし、またロータリーソレノイド102への通電をOFFし、カップリング101を介してシャフト100を回転させることで、切替えゲート99を回転させて図中実線にて示す繰り出し位置に位置させる。
【0034】この状態で、図3に示す第1のモータ74に通電して駆動開始すると、モータギヤ73が図中矢印E方向に回転駆動し、このモータギヤ73と噛合しているギヤ72を図中矢印F方向に回転させる。これにより、支軸55が同方向に回転して、プーリ75及びベルト77を介してプーリ76へと回転力を伝達し、このプーリ76の回転によりシャフト52を介してピックアップローラ51が図中矢印F方向に回転駆動される。
【0035】また、同様にしてギヤ72の回転によって、プーリ69及びベルト71を介してプーリ70を回転し、このプーリ70の回転によりシャフト61を介してフィードローラ58および搬送ローラ64が、前記ピックアップローラ51と同じく図中矢印F方向に回転駆動される。そして、この時、搬送ローラ64の回転に伴って、該搬送ローラ64に上方から圧接しているテンションローラ67も回転する。
【0036】また、フィードローラ58の下側に圧接している分離ローラ62は、図示せぬ駆動手段により回転されるが、この分離ローラ62の回転方向は図示せぬワンウェイベアリングにより紙幣Pを分離するため、紙幣収納庫5へと押し戻す方向に回転開始される。このような状態により紙幣を繰り出す場合は、まず、紙幣収納庫5内のステージ11を、該ステージ11上に集積されている紙幣Pの最上面がピックアップローラ51の下面と当接する所定の高さまで、図1に示すように上昇させる。
【0037】この後、ソレノイド56の通電をOFFすることでピックアップローラ51を下降させて繰り出し位置とし、その下面側を所定の高さまで上昇されている紙幣Pの最上部に当接させる。次に、第1のモータ74を駆動開始して、モータギヤ73、ギヤ72、支軸55,プーリ75,ベルト77,プーリ76、シャフト52を介してピックアップローラ51を図中矢印F方向に回転開始する。
【0038】この回転によりピックアップローラ51の高摩擦部材53が、ステージ11上に集積されている紙幣Pを摩擦力によりフィードローラ58方向へと繰り出す。繰り出された紙幣Pは、フィードローラ58と分離ローラ62間へと送り込まれ、重送されてきた紙幣Pはここで1枚づつ分離されてフィードローラ58と搬送ベルト98間へと送り込まれる。
【0039】前記第1のモータ74の駆動開始と同時に第2のモータ78も駆動開始し、フィードローラ58から搬送されてくる紙幣Pを、上側搬送ベルト86と搬送ローラ92および下側搬送ベルト87とを回転駆動させる。これにより搬送ローラ92及び搬送ベルト98が回転するので、紙幣Pは搬送ベルト98と搬送ローラ92間に挟持されて搬送され、さらに搬送ローラ92と上側搬送ベルト86間に送り込まれる。この時、切替えゲート99は図中実線にて示したように倒れた繰り出し位置にあるので、紙幣Pはこの切替えゲート99と上側搬送ベルト86間を進み、上側搬送ベルト86と下側搬送ベルト87により挟持されながら搬送され、入出金機構外へと搬送されて繰り出されていき、これにより繰り出し動作は終了する。
【0040】なお、この繰り出し動作を行う場合の一例として入出金装置における出金取引時の紙幣の流れを、図4に示した入出金装置の概略側断面図を用いて簡単に説明する。まず顧客が図示せぬ顧客操作部から出金取引を選択すると、紙幣取引装置は出金モードとなり、これに従って入出金機構の各紙葉類繰り出し集積機構が、上述したようにソレノイド56及びロータリーソレノイド102への通電をOFFとして、ピックアップローラ51及び切替えゲート99を繰り出し動作時に位置させる。
【0041】顧客により出金金額が入力されると、この出金金額に応じた金種を収納している紙幣収納庫5〜7に対応する紙葉類繰り出し集積機構の第1のモータ74および第2のモータ78の駆動が開始され、上述した紙幣Pの繰り出し動作が開始され、出金金額に応じた枚数分を動作を繰り返す。紙幣収納庫5〜7から繰り出された紙幣Pは、図4に示すように入出金機構からから搬送路により鑑別部3へと搬送され、この鑑別部3において表裏,正損,及び金種等が鑑別され、損券あるいは走行異常と鑑別された紙幣は出金リジェクト紙幣としてリジェクト紙幣収納庫9へと搬送されて収納さ、また、鑑別部3にて出金可能と鑑別された紙幣Pは鑑別部3上方の表裏反転部4へと送られて表裏を揃えられる。そして、この表裏反転部4に出金金額分の全紙幣が揃ったら、一括して接客部1へと送り込み、この接客部1から顧客へと支払う。これにより、出金取引処理が終了する。
【0042】次に、入金取引時や、運用中に収納紙幣が足りなくなった場合の補充・装填時のように、紙幣Pを紙幣収納庫へ集積する場合の集積動作について説明する。紙幣Pの繰り出しは、最初にソレノイド56に通電するとによりリンク57をソレノイド56側に引っ張って支持部材54を支軸55を支点として図中時計方向に回動し、ピックアップローラ51を二点鎖線にて示した上方の集積位置に退避させる。
【0043】同時に、ロータリーソレノイド102に通電して駆動し、カップリング101を介してシャフト100を所定角度だけ回転させることで、切替えゲート99を二点鎖線にて示す立ち上がった状態の集積動作位置とする。この状態で、第1のモータ74および第2のモータ78に通電して回転駆動する。これにより、まず第2のモータ78によりモータギヤ79を図中矢印C方向に回転駆動し、このモータギヤ79と噛合しているギヤ80に回転力を伝達し、このギヤ80を回転させることで、シャフト81,プーリ83を回転させ、このプーリ83の回転力が上側搬送ベルト86を介してプーリ85へ伝達する。こうして上側搬送ベルト86が回転開始すると、この上側搬送ベルト86に下側から圧接している下側搬送ベルト87が、ベルトの摩擦力により回転を開始し、また、同様に上側搬送ベルト86に下側から圧接している搬送ローラ92も互いの摩擦力により図中矢印方向、つまり紙幣Pを紙幣収納庫5の上部に搬送する方向に回転開始する。
【0044】さらに、この搬送ローラ92に圧接している搬送ベルト98がやはり摩擦力によって回転を開始する。この時、フィードローラ58は前記第1のモータ74のの回転駆動により図中矢印D方向に回転しており、搬送ベルト98はこのフィードローラ58と圧接している摩擦力によっても回転されることになる。また、前記フィードローラ58の回転と同時に、該フィードローラ58と同軸上に取り付けられている搬送ローラ64a,64bも同方向に回転し、この回転い伴って搬送ローラ64a,64bに上方から圧接しているテンションローラ67も回転する。
【0045】このようなことから、入出金機構の手前まで搬送されてきた紙幣Pは、上側搬送ベルト86と搬送ローラ92との間に挟持されて搬送された後、切替えゲート99によりテンションローラ67と搬送ローラ64a,64b間に導かれ、この両ローラ67と64とにより図中矢印方向へと搬送されて、紙幣収納庫5の上部へと搬送される。
【0046】そして、この紙葉類を紙幣収納庫5上部へと搬送する際、搬送ローラ64aの該側面の押下片が66が紙幣Pの後端を上方から押下して、紙幣を順次集積していく。なお、この時、紙幣収納庫5の上部には紙幣Pを一時的に集積するための一時集積部としての一時集積板が待機しており、搬送されてきた紙幣Pはこの一時集積板上に一時的に集積され、これにより集積動作は終了する。
【0047】なお、上述した集積動作を行う一例として入出金装置における入金取引時の紙幣の流れを、図5に示した入出金装置の概略側断面図に基づいて簡単に説明すると、入金取引は、まず顧客が図示せぬ顧客操作部によって入金取引を選択する。これにより紙幣取引装置は入金モードとなり、これに従って入出金機構の各紙葉類繰り出し集積機構が、上述したようにソレノイド56通電してピックアップローラ51を集積動作時に位置させ、紙幣が搬送されてくるのを待つ。また、紙幣の一時集積部となる一時集積板は、図に示すように各紙幣収納庫5〜7の上部に移動させて待機させておく。
【0048】顧客により入金紙幣が接客部1に投入されると、この入金紙幣は接客部1から図中矢印方向への繰り出されて鑑別部3へと搬送され、この鑑別部3において紙幣の真偽,表裏,正損,及び金種等が鑑別され、偽券あるいは走行異常と鑑別された紙幣は入金リジェクト紙幣として紙幣集積機構14を介して、接客部1へと送り込み顧客に返却する。
【0049】また、鑑別部3において異常なしと鑑別された紙幣は鑑別部3下方に配置されている入出金機構へと搬送路を搬送されていく。鑑別部3において鑑別された金種ごとにそれぞれの紙幣収納庫5〜7上の紙葉類繰り出し集積機構の位置まで搬送されてくると、上述した集積動作を開始し、顧客が投入した紙幣がすべて一時集積板上に集積されるまで上記集積動作を繰り返す。
【0050】このようにして、顧客が投入した全紙幣が各紙幣収納庫5〜7上の一時集積板上に集積されて集積動作が終了すると、この一時集積板は図中矢印J方向へとスライド移動させて退避させ、集積していた紙幣を各紙幣収納庫5〜7内へと落とし込む。紙幣収納庫5〜7内には紙幣集積用のステージ11が設けられているので、紙幣はこのステージ11上に集積され、紙幣収納庫5〜7内に収納される。この後、退避させておいた一時集積板を再び紙幣収納庫5〜7上に戻すと、入金取引処理は終了する。
【0051】なお、上述した実施例においては、紙幣を取り扱う紙幣入出金装置を例にとって説明したが、むろんこの紙葉類繰り出し集積機構は、紙幣の入出金装置に限るものではなく、紙幣以外にも、帳票,OCR用紙等の他の各種紙葉類を取り扱う紙葉類取り扱い装置における収納部分の紙葉類の集積及び繰り出し動作に適用可能である。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、紙葉類収納庫の上部ほぼ中央に位置して、紙葉類の集積時は上方に退避し、かつ繰り出し時は下降して紙葉類の最上部に当接する紙葉類繰り出し手段と、前記紙葉類収納庫の上面開口部の一端に設けた紙葉類の出入口に設けられ、駆動手段により所定方向にのみ回転可能として前記紙葉類繰り出し手段により繰り出された紙葉類を取り込む紙葉類取り込み手段とを設け、かつこの紙葉類取り込み手段と同軸上に設けられ、外側面に可撓性を有する複数枚の押下片を放射状に備えた紙葉類集積手段と、前記紙葉類取り込み手段に圧接し、取り込んだ紙葉類を紙葉類集積部方向へと戻す方向にのみに回転して紙葉類の重送を防止する紙葉類重送防止手段と、この紙葉類重送防止手段により1枚づつ分離されて取り込まれた紙葉類を前記紙葉類取り込み手段とにより挟持して搬送路へと搬送する紙葉類搬送手段と、この紙葉類搬送手段から紙葉類を搬送路へ送り込む紙葉類送り込み手段と、前記搬送路を搬送される紙葉類の搬送方向を切り換える搬送方向切り換え手段とを備えることとした。
【0053】これにより、紙葉類の集積時には、前記紙葉類繰り出し手段を上方に退避させると共に搬送方向切り換え手段を集積位置に切り換えることで、紙葉類を搬送路から紙葉類集積手段方向へと案内して前記押下片により紙葉類後端を押下して紙葉類集積部への集積動作を行い、また繰り出し時には紙葉類繰り出し手段を下降させて紙葉類に当接させると共に搬送方向切り換え手段を繰り出し位置に切り換えると共に紙葉類取り込み手段を前記紙葉類集積時と同方向に回転駆動することで、紙葉類を搬送路へ給送するようにしたので、紙葉類は集積動作時においても、また繰り出し動作時においても、紙葉類収納庫上端の出入口を利用して出し入れされることになる。
【0054】すなわち、紙葉類繰り出し手段並びに搬送方向切り換え手段とを、それぞれを集積時と繰り出し時に対応した位置に移動させた後、紙葉類取り込み手段を始めとして紙葉類を搬送するための搬送手段は全て同一方向に回転させることで、集積動作も繰り出し動作も同一機構を共用させて処理可能としている。従って、紙葉類収納庫の上部には、集積及び繰り出し動作を共用する一体構造とした紙葉類繰り出し集積機構のみを備えれば良いので、従来のように集積機構と繰り出し機構とを別体として対向配置する必要が無くなり、その結果、装置の大型化,複雑化並びに高価格化を防ぎ、小型で簡素、かつ保守性を向上させてしかも低価格な優れた紙葉類の繰り出し集積機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紙葉類の繰り出し集積機構を示す入出金装置の概略側面図である。
【図2】紙葉類の繰り出し集積機構を示す入出金装置の概略平面図である。
【図3】紙葉類の繰り出し手段の一部を示す斜視図である
【図4】出金取引時の紙幣の流れを示した入出金装置の概略側断面図である。
【図5】入金取引時の紙幣の流れを示した入出金装置の概略側断面図である。
【図6】従来の紙葉類取り扱い装置の概略内部構造を示す断面図である。
【図7】入出金装置における従来の入出金機構の構造を示す拡大図である。
【符号の説明】
51 ピックアップローラ
56 ソレノイド
58 フィードローラ
62 分離ローラ
64 搬送ローラ
66 押下片
67 テンションローラ
74 第1のモータ
78 第2のモータ
86 上側搬送ベルト
87 下側搬送ベルト
92 搬送ローラ
99 切替えゲート
102 ロータリーソレノイド
P 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】 搬送路により搬送されてきた紙葉類を取り込んで紙葉類収納庫内に収納するべく紙葉類収納庫上部の紙葉類集積部に紙葉類を集積すると共に、前記紙葉類収納庫内に集積して収納している紙葉類を最上層から1枚づつ繰り出して前記搬送路へ給送する紙葉類繰り出し集積機構において、前記紙葉類収納庫の上部ほぼ中央に位置して、紙葉類の集積時は上方に退避し、かつ繰り出し時は下降して紙葉類の最上部に当接する紙葉類繰り出し手段と、前記紙葉類収納庫の上面開口部の一端に設けた紙葉類の出入口に設けられ、駆動手段により所定方向にのみ回転可能として前記紙葉類繰り出し手段により繰り出された紙葉類を取り込む紙葉類取り込み手段と、この紙葉類取り込み手段と同軸上に設けられ、外側面に可撓性を有する複数枚の押下片を放射状に備えた紙葉類集積手段と、前記紙葉類取り込み手段に圧接し、取り込んだ紙葉類を紙葉類集積部方向へと戻す方向にのみに回転して紙葉類の重送を防止する紙葉類重送防止手段と、この紙葉類重送防止手段により1枚づつ分離されて取り込まれた紙葉類を前記紙葉類取り込み手段とにより挟持して搬送路へと搬送する紙葉類搬送手段と、この紙葉類搬送手段から紙葉類を搬送路へ送り込む紙葉類送り込み手段と、前記搬送路を搬送される紙葉類の搬送方向を切り換える搬送方向切り換え手段とを備え、紙葉類の繰り出し時には紙葉類繰り出し手段を紙葉類に当接させて所定方向に回転することで紙葉類を繰り出し、また集積時には紙葉類繰り出し手段を紙葉類から退避させると共に紙葉類を搬送路から取り込んで紙葉類集積部に集積する紙葉類繰り出し集積機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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