紙製表面立体造形物の製作方法
【課題】複雑に入組んだ大小各種凹凸のある多様な造形物の外形が、紙素材独特の柔らかく暖かい感触を持って継ぎ目のない紙で再現できる紙製表面立体造形物の製作方法を提供する。
【解決手段】全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程(A)と、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程(B)と、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程(C)と、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程(D)と、で構成され、この工程によって複雑に入組んだ大小各種凹凸があり且つ継ぎ目のない紙製表面立体造形物が製作される。
【解決手段】全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程(A)と、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程(B)と、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程(C)と、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程(D)と、で構成され、この工程によって複雑に入組んだ大小各種凹凸があり且つ継ぎ目のない紙製表面立体造形物が製作される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な形状を成す表面の造形物を紙素材で継ぎ目なく形成して製作する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙を繋ぎ目なく立体的に形成して内部が空洞の造形物を得る方法として、下記特許文献1には「和紙形成体の製造方法」が、また下記特許文献2は「紙形成体の製造方法」が開示されている。
前記特許文献1の「和紙形成体の製造方法」には、ゴム風船や石膏などの容易に破壊可能な素材からなる立体的な原型を用い、その原型の表面に毛羽立った紐状部材を交差させて巻きつけてその上に紙料液を付着させ、これを乾燥させた後、原型部分を破壊して取り出すことで、内部が空洞で全体に継ぎ目のない和紙形成体を得ることが記載されている。
また前記特許文献2には、立体形状にした網を紙原料の溶液中に浸漬し、網の内部から溶液を抜いて網の表面に紙原料を堆積させ、乾燥後、網を抜取って、シームレスな紙形成体を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−156594号公報
【特許文献2】特開2006−9203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の「和紙形成体の製造方法」では、原型の表面に付着させた紐状部材が和紙形成体内に残されたままで得られるため、内部を照明するとその紐状部材がレントゲン照射で表れる骨状に浮き上がり、綺麗な地肌の和紙の風味が損なわれるという問題があり、これがデザインを行う上での大きな制約となって、自由で多様な造形を得ようとしても困難であった。
また、原型自体が細かく入り組んだ立体的な造形の表面である場合には、これに紐を掛けると凹んだ部分に紐が入らず紐が直線的に張られてしまうため、凹凸部分の正確な表現ができず、その結果、風船などのように全体が原型が崩れてのっぺりした形状になってしまうという問題があった。
また、上記特許文献2の「紙形成体の製造方法」では、造形物の形状が網で決まり、乾燥後にその網を潰して抜き取るのものなので、網を複雑な立体形状に作ることができず複雑な凹凸を形成した造形物が製作できないという難点があった。
【0005】
そこで、本発明は、複雑に入り組んだ大小各種凹凸のある多様な造形物の外形が、紙素材独特の柔らかく暖かい感触を持って継ぎ目のない紙で再現できる紙製表面立体造形物の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の紙製表面立体造形物の製作方法は、請求項1に記載の発明にあっては、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程Aと、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程Bと、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程Cと、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程Dと、から成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明にあっては、上記発明において、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物のうち突起部分を造形物の本体から分離し、一旦、前記突起部分と本体部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物の本体を複数に分割し、一旦、前記本体と本体の分割部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記石膏型作成工程Aにおいて、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作るに際し、石膏型の原型となる立体造形物を容器内で液体状のシリコン樹脂内に埋没させ、該シリコン樹脂が硬化した後にシリコン樹脂を容器から取り出し、これを切り開いて中の原型の立体造形物を取り出し、立体造形物の外形を模る内型のシリコン樹脂型を作成し、該シリコン樹脂型に石膏を内型の空洞の嵩よりも半分以下の少ない量で流し込み、空洞内の全表面に石膏の膜を張らせるようにゆっくりと該シリコン樹脂型を数分掛けて四方に回転を継続して石膏の流動性が停止した後に静置し、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作ることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を網で抄いて水切りをした紙原料であり、網から剥がして千切った紙の小片を、濡れたままで前記石膏型の表面全体に略均等厚になるように複数層に付着することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を水切りした紙原料であり、濡れた紙原料を石膏型に吹き付けて付着することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、着色した泥漿を使用して、単色又は複数の色に着色した紙原料を用いることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、付着する紙原料の付着層間に、紙原料とは異なった紙、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの素材を封じ込めることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記石膏排出工程Dにおいて、紙に設けた孔又は切れ目から粉砕工具を差し込んで小片の石膏をさらに小さく砕いて排出することを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明にあっては、上記請求項1〜10のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙付着工程B後又は紙乾燥工程C後に、石膏型に付着した紙の表面の一部又は全部を均し工具で均し加圧して、該均し加圧した部分の紙表面を薄く平滑に形成することを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明にあっては、上記請求項1〜11のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙乾燥工程C後又は石膏排出工程D後に、乾燥した紙の表面に印刷を施すことを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明にあっては、上記請求項1〜12のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、石膏排出工程D後に、紙の表面の一部又は全部に塗装を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紙製表面立体造形物の製作方法は、石膏型作成工程Aにおいて、石膏型の表面を薄く形成するので、後の石膏排出工程Dにおいて、小さな力で容易に中の石膏を細かく粉砕でき、目立たないように紙に小さく形成した孔や切れ目から、内部の石膏を容易に除去することが可能となる。
また、紙付着工程Bにおいて、濡れている状態の紙原料を石膏型の表面全体に略均等厚になるように付着させることによって、石膏型を排出して得られる紙製表面立体造形物の全体が一枚の繋ぎ目のない紙の美しい立体造形物を得ることが可能となる。
【0020】
特に、紙付着工程Bでは、立体造形物の石膏型表面の凹凸が、紙自体の素材面の凹凸よりも大きければ、極めて細かい凹凸であっても表現することが可能となる。そしてこのことで、複雑に入り組んだ大小各種凹凸のある多様な造形物の外形を、紙素材独特の柔らかく暖かい感触を持って継ぎ目なく再現することが可能となる。
これを照明器具として、電灯などを入れて内部で発光させれば、継ぎ目のない造形物が紙の繊維独特の自然の繊維質が凹凸分で光のグラデーションを表現しつつ上品で穏やかな雰囲気を醸し出すことが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明にあっては、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物のうち小さい突起部分を造形物の本体から分離し、一旦それぞれに別の、内部に空洞が形成された薄い石膏型が製作でき、それらの石膏型を元の原型に位置を合わせて復元し一体的化すれば、どのような複雑な凹凸形状はあってもその中に空洞が存在することによって容易に砕くことができ且つその部分の小片を外部に排出が可能となる石膏型が得られ、この石膏型によって、その後、乾いた紙の中の石膏型を細かく入り組んだ凹凸形状の先端部分まで容易に砕くことが可能となる。
【0022】
請求項3に記載の発明にあっては、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物の本体を複数に分割し、一旦、前記本体と本体の分割部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型が製作でき、それらの石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる照明具などの大きなものをいれるに復元した石膏型が得られる。
このため極めて大きい立体造形物であっても小さく分割することで容易に製作が可能となる。
また、分割部分を結合する前に、接合面に割り孔を設ければ、復元した本体の空洞内に照明具などの大きなものを入れた石膏型が得られる。こうすれば、空洞内部に照明具などの大きなものをいれた場合、完成後の紙製立体造形物の表面に照明具などを入れるための大きな切れ目を入れる必要がなくなるので紙製立体造形物の美観を損なうことが防げる。
【0023】
請求項4に記載の発明にあっては、前記石膏型作成工程Aにおいて、液状のシリコン樹脂内に原型の立体造形物を沈めれば立体造形物の原型と殆ど等しい立体的造形物のシリコン樹脂型が得られ、またそのシリコン樹脂型からは、水に溶かした石膏を表面に薄く流して内部に薄い表面に形成した石膏型が容易に得られる。
そして、その石膏型からは、原型と殆ど等しい紙製の立体造形物が得られる。たとえ原型が細かく入り組んだ凹凸であっても複雑な形状をそのままで容易に復元して製作することが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を網で抄いて水切りをした紙原料を網から剥がし、これを千切った紙の小片を、濡れたままで前記石膏型の表面全体に略均等厚になるように複数層に付着させることによって、濡れて原料の繊維同士が弛んだ状態のままとなっている紙の小片同士の境目が目立たなくなり、この結果、最後に、全体が一枚の紙となった繋ぎ目のない紙製表面立体造形物を得るこが可能となる。
また、抄いた紙を細かく千切れば、その千切る大きさが小さいほど石膏型の表面が細かな凹凸であっても、その凹凸部分に入り組んだ状態で積層させることが可能となるので、紙自体の素材の凹凸よりも大きければ、極めて小さい凹凸まで表現することが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を水切りして濡れている紙原料を石膏型に吹き付けて付着することで、最後に、全体に全く繋ぎ目のない紙製表面立体造形物を得ることが可能となる。
また、紙抄きや千切る手間もないので紙付着工程Bを速く簡単に完了させることが可能となる。
この場合、吹き付けて得られる紙表面は、抄いた紙よりも柔らかなクッション性を生じ、用途によってはこの柔らかな素材感を生かすこともできる。
【0026】
請求項7に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することで、復元された造形物の表面の一部に、任意に薄い透かし部や影部を形成することが可能となる。
【0027】
請求項8に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、着色した泥漿を使用して、単色又は複数の色に着色した紙原料を用いることで、カラフルな造形物が得られる。
【0028】
請求項9に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、付着する紙原料の付着層間に、封じ込められた紙原料とは異なった紙、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの素材が淡い陰影となって浮き出される。
この図柄部分はシールを表面に貼り着けるように周囲をくっきり区別させるものではなく、図柄全体が紙に馴染むように一体化されて、また後から剥がれる虞もなくなる。
平面的な自然の物、例えば、植物の葉や花びらなどの素材を用いれば、筆で描いたものとは異なった自然の風情を容易に楽しむことができる。
また、金属やプラスチックなどを封じ込める場合、底部に線材や板材を埋め込めば、紙製表面立体造形物を飾る台上部分に安定的に設置できようになり、このような素材の使用位置によっては部分的な補強が可能となる。
また紙製表面立体造形物の本体を複数のパーツに分割させた場合、後に連結させるべき部分の対向した両側に金属の線や板材を嵌合可能に対応させて埋め込むことや、鉄などの金属と永久磁石とを併用することにより紙同士による場合よりも確実で強い結合が可能となる。
【0029】
請求項10に記載の発明にあっては、前記石膏排出工程Dにおいて、石膏型に被着して乾燥した紙の表面から、木槌などで叩いたり、握り潰す等して力を加えて中の石膏型を壊して砕いた後で、さらに紙の一部にあけた小さな孔や切れ目から、ペンチなどの先で細い破砕工具を差し込んで、小さな孔や切れ目を小さくしたい場合でも、その孔や切れ目の大きさに合わせて中の石膏の小片をさらに細かく砕いて排出することが可能となる。
【0030】
請求項11に記載の発明にあっては、上記紙付着工程B後又は紙乾燥工程C後に、石膏型に付着させた紙の表面の一部又は全部を鏝などの均し工具で均し加圧することで、該均し加圧した部分の繊維の凹凸を均して紙表面を薄く平滑に形成することが可能となり、より細かく小さい凹凸の表現が可能となる。
【0031】
請求項12に記載の発明にあっては、 上記紙乾燥工程C後又は石膏排出工程D後に、乾燥した紙の表面に印刷を施すもので、例えば立体表面に立体印刷を施すことで、より多様なデザインを得ることが可能となる。
その際、中に石膏型がある場合では、紙の表面にプレスにより印刷を施すことができ、また空洞の紙の表面からはインクの吹付けドットにより多様なデザインの印刷を施すことが可能となる。
【0032】
請求項13に記載の発明にあっては、前記石膏排出工程D後、紙の表面を樹脂などで塗装して、その樹脂で紙の繊維を固めて、紙の強度や耐水性を高めることと、塗料の色で着色することが可能となる。そして、雨水に曝される室外での装飾も可能となる
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の紙製表面立体造形物の製作工程を示すフロー図である。
【図2】石膏型作成工程を示すフロー図である。
【図3】紙付着工程の(イ)は通常の泥漿を、(ロ)は着色した泥漿を、それぞれ用いる形態を示す各フロー図である。
【図4】吹き付ける形態の紙付着工程を示すフロー図である。
【図5】石膏排出工程を示すフロー図である。
【図6】粉砕工具を用いる形態の石膏排出工程のフロー図である。
【図7】石膏型作成工程のフロー図である。
【図8】紙付着工程を示すフロー図である。
【図9】別の紙付着工程を示すフロー図である。
【図10】乾燥工程後の工程を示すフロー図である。
【図11】石膏排出工程後に印刷する場合を示すフロー図である。
【図12】石膏排出工程後に塗装する場合を示すフロー図である。
【図13】原型となる立体造形物(イ)と容器(ロ)を示す各斜視図である。
【図14】立体造形物をシリコン樹脂中に埋没させた状態を示す斜視図である。
【図15】立体造形物を入れたシリコン樹脂を容器から取り出した状態を示す斜視図である。
【図16】立体造形物が抜き取られたシリコン樹脂型を示す斜視図である。
【図17】シリコン樹脂型に石膏注ぎ孔を設けた状態を示す斜視図である。
【図18】シリコン樹脂型から石膏型を取り出す状態を示す斜視図である。
【図19】石膏型に濡れた紙の小片を付着している状態を示す(イ)が付着中を示し(ロ)付着が完了した状態を示す各斜視図である。
【図20】石膏型に付着した紙の立体造形物の底部に切れ目を設けた状態を示す斜視図である。
【図21】(イ)は石膏型に付着した紙の立体造形物の底部に孔を設けた状態を示し、(ロ)は底部に孔から石膏の小片を取り出している状態を示す各斜視図である。
【図22】立体造形物の本体と突起部分とを分離した状態を示す斜視図である。
【図23】立体造形物の本体を分割した状態を示す斜視図である。
【図24】石膏型に電球を入れた状態を示す斜視図である。
【図25】金属を紙に埋め込み中の状態を示す斜視図である。
【図26】本発明を照明として用いた例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の紙製表面立体造形物の製作方法を実施するための形態を以下図で説明する。
本発明の製作工程は、図1に示すように、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程Aと、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程Bと、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程Cと、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程Dとに、各工程により構成する。
上記工程の最後に紙製表面立体造形物が得られる。
【0035】
次に上記各工程について詳述する。
上記前記石膏型作成工程Aでは、シリコン樹脂を用いる方法とその他の方法とが可能である。
シリコン樹脂を用いた方法では、図2に示すように、原型となる立体造形物を容器に入れた液体シリコン樹脂内に沈めて硬化を促がし、硬化したシリコン樹脂を容器から取り出し、該シリコン樹脂を切り開いて中の原型の立体造形物を取り出してシリコン樹脂型を得る。
これを、具体的に立体造形物がポットである場合を例にとって説明すると、図13に示すように、原型となるポットである立体造形物1を、それより多きな容器2に全てが納まるように入れ、図14に示すように、その容器2内に液体のシリコン樹脂3aを満たし、しばらくそのままで硬化を待つ。そしてその後、図15に示すように、硬化したシリコン樹脂3bを容器2から取り出す。
次に、図16に示すように、該シリコン樹脂3bを半分割るなどして切り開き、中の原型としたポットを取り出してシリコン樹脂型4を得る。図16中の符号5はポットを取り出して空洞となった内型空洞部5である。
【0036】
次に、図17に示すように、二つに割ったシリコン樹脂型4a、4bを元の位置に合体させ、そのシリコン樹脂型4の一部に外から内型空洞部5内に繋がる石膏を流し込むための石膏注ぎ孔6を設け、該石膏注ぎ孔6から水に溶かした石膏を中に流し込む。
この石膏注ぎ孔6の位置は図17ではポットの蓋部分に設けたことを示したが、その後の切除で完成したときに段差や継ぎ目のように表れる可能性があるので、できるだけ目立たない部分、例えば立体造形物の底部分(ポットの底面など)などに設けると良い。
このとき、中を空洞にして表面に水に溶かした石膏を薄く形成するために、内型空洞5の嵩よりも約1/4以下となる少ない石膏の量で流し込むのを停止し、ゆっくりと四方に回転させて、全表面に石膏に膜を張らせるように数分掛けて回転を継続する。
すると、表面が薄く形成された状態で石膏が硬化し、回転を止めて静置すると薄い表面のままで硬化した石膏型8が得られる。
そして、硬化した石膏の強度の発現を待って、シリコン樹脂型4を割れ目から分離して、図18に示すように、中の石膏型8を取り出す。
前記石膏注ぎ孔6で形成された石膏注ぎ孔充填部分7は切除して、石膏型作成工程Aにおける石膏型8が完成する。
【0037】
このシリコン樹脂を用いた方法では、液状のシリコン樹脂3a内に立体造形物1の原型を全部沈めるので、殆ど原型と等しい立体造形物1のシリコン樹脂型4が得られ、これから殆ど原型と等しい薄い表面に形成したポットの石膏型8が得られる。
このようにして得られる石膏型8は、原型が細かく入り組んだ凹凸を有する立体造形物1であっても、同じようにその立体的で複雑な形状の凹凸をリアルに復元した物が製作可能となる。
【0038】
また、シリコン樹脂を用いない方法では、図2に示すようにように、原型となる立体造形物を加熱して溶かすことができるロウで製作し、その立体造形物の表面に石膏を薄く塗って石膏が硬化後、加熱して中のロウを溶かし出し、内部が空洞で表面が薄い石膏型を得ることも可能である。
さらに、原型となる立体造形物は、粘土で製作して、その粘土の立体造形物の表面に石膏を薄く塗り、石膏が硬化後、中の粘土を掻き出して内部が空洞の石膏型を製作することも可能である。
【0039】
次に、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する前記紙付着工程Bについて説明する。
前記紙付着工程Bは、図3の(イ)及び(ロ)に示すように、抄いた紙を使用する場合と、図4に示すように、紙原料を吹き付ける場合のいずれでも可能である
【0040】
抄いた紙を使用する場合では、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの和紙の原料となる樹皮と繋ぎ材とを混合した泥漿から作られる和紙が使用に適している。
また、紙原料がパルプや糊など濡れた状態の紙の小片が得られれば良いので、古紙などの紙製品の繊維を水で戻して泥漿を作り、これの泥漿を網上に抄いたものも使用可能である。
そして、図3の(イ)に示すように、抄いた紙を、濡れたまま網から剥がして小片に千切る。そして千切るときには、抄いた紙を網から剥がした紙を小片に千切ってから水を切るか又は水を切ってから小片に千切る等し、そのいずれであっても濡れた状態の紙の小片が得られる。
挟みで切ることもできるが、手で千切るようにした方が、切り口が直線的とはならないので張り付けたときに継ぎ目がより目立たなくなる。
【0041】
そして、図19の(イ)に示すように、前記濡れた紙の小片9aを、前記石膏型8の表面全体に略均等厚になるように複数層張り付ける。
この際、紙の小片9aの一部が相互に重なるよう一層目を全面に貼り付け、次に二層目以降も同じように重ねて張る。
こうして数層に貼ると、図19の(ロ)に示すように、小片同士9aの繋ぎ目はできなくなって表面が均一状態に張り上がる。
またその際、抄いた紙を細かく千切って張れば、その千切る大きさが小さいほど石膏型の表面の細かな凹凸に対応して緻密に積層することが可能となる。この結果、極めて小さい凹凸までもが表現可能となる。
【0042】
また、図4に示す、紙原料を吹き付ける場合では、上記和紙の原料と同じ原料の泥漿や、パルプや糊などを混合した泥漿などを使用することで、吹き付け装置で石膏型の全表面にムラがでないように均一に泥漿を吹き付けることが可能である。こうすれば当然繋ぎ目なく紙原料が付着することになる。
【0043】
次に前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程Cについて説明する。
この乾燥方法は、放置して自然乾燥させることと強制的に乾燥機で乾燥させることができる。
いずれの乾燥方法でも、紙の乾燥に伴って収縮しようとする紙が石膏型を締め付けるように紙の層が薄くなって乾燥し、このとき細かい凹凸がより明確に現れてくる。
このとき、図3の(ロ)に示すように、泥漿に着色材を混合しておけば、この時点で単色又は複数の色に着色した紙原料が得られ、全体の着色が可能となり、カラフルな造形物が得られる。
【0044】
次に、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程Dについて説明する。
【0045】
この工程は、図5に示すように、乾燥した紙9bの表面から力を加えて中の石膏型8を細かく砕いてから紙9bの一部にあけた孔10(図21の(イ)に示す)又は切れ目11(図20に示す)から砕かれた石膏の小片8aを排出するか、又は紙9bの一部に孔10又は切れ目11を開けてから乾燥した紙9bの表面から力を加えて中の石膏型8を細かく砕いて、図21の(ロ)に示すように、砕かれた石膏の小片8aを全て排出するか、いずれでも良い。
【0046】
また、前記石膏排出工程Dにおいて、図6に示すように、紙の一部に孔10又は切れ目11を開けて砕くに際し、孔10又は切れ目11から先の細いペンチなどの破砕工具を差し込んで石膏を小片に砕くことによって、粉砕工具の先が入るような目立たない小さな孔10又は切れ目11であっても中の石膏を粉砕することが可能となる。
特に、孔10や切れ目11をできるだけ目立たないように小さくしたい場合にはこの方法が有効である。
【0047】
本発明では以上の工程で石膏型が砕かれて排出されて紙製表面立体造形物が出来上がる。
こうしてできた本発明の紙製表面立体造形物は全体に継ぎ目がなく美しく仕上がるのみならず、紙素材の独特の柔らかく暖かい感触を持って多様な造形物の外形が再現できるようになる。
その際、立体造形物の原型が複雑に入り組んだ大小各種形状の凹凸を有する多様な造形物であっても、細部まで再現できるようになる。
このため、本発明の用途は観賞用の室内のオブジェとするのに最適であり、特に、図26に示すように、照明器具に用いて、内部に設けた電灯などの光源を発光させれば、継ぎ目のない美しい多様な造形物が、紙の自然繊維独特の肌地を透過した光のグラデーションが表現されて室内空間に上品で穏やかな雰囲気を醸し出すことが可能となる。
【0048】
次に、本発明にあっては、以下の各種形態が可能である。
【0049】
その1つは、図7に示すように、前記石膏型作成工程Aにおいて、図22に示すように、原型となる立体造形物1のうち小さい突起部分1bを造形物の本体1aから分離し、全ての切り口を粘土などで塞ぎ、一旦それぞれに別の、内部に空洞が形成された薄い石膏型が製作し、それらの石膏型を元の原型に位置を合わせて復元し一体化する方法が可能である。
この方法は、原型が複雑に入り組んだ大小各種形状の凹凸を有する多様な立体造形物を細部まで再現しようとする場合に適している。
原型の立体造形物に、図22に示すように、小さい突起部分があると、本体1aと一体の場合には、その突起部分の内部に石膏が詰まってその内部に空洞を形成することが困難となる。空洞がないと突起部分に詰まっている石膏が容易に取り出すことができない。
なぜなら、石膏を砕こうとすると紙が変形したり破れるなどの損傷が発生し、その損傷を避けようとすると砕くこともできないからである。
そこで、突起部分1bを造形物の本体1aから分離し、その突起部分1bを別の石膏型を作れば、突起部分1bが小さくとも表面を薄く形成してその内部に空洞を設けるのは容易となる。
こうして内部が空洞となって表面を薄く形成した石膏は小片又は粉状にまで容易に砕くことが可能となって、その突起部分1bの基部が細く繋がっている場合であっても、細かく砕かれた石膏の小片は外部に排出させることが可能となる。
【0050】
また、原型となる立体造形物1を、図23に示すように、本体1aと本体の分割部分1cとに大きく複数に分割し、全ての切り口を粘土などで塞ぎ、一旦それぞれに別に分離して全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、それらの石膏型を元の原型に位置を合わせて復元し一体化する方法も可能である。
この方法では、完成した紙の立体造形物の空洞中に、石膏の粉砕された小片を排出するための孔10よりも大きい電球14などの照明具などを、照明具などの大きさに合わせて紙を大きく切ることなく収納することが可能となる。こうして、空洞中に大きな照明具などが収納された表面に継ぎ目のない美しい紙製立体造形物が得られる。
【0051】
即ち、この工程では、本体1aと分割部分1cとの石膏型8の接合面を合わせて一体に復元した立体造形物を作成するが、石膏型同士を繋ぐに際し、図24の(イ)に示すように、電球などお入れるための大きさとなるように接合する境界面の石膏を破壊して割り孔13を作成する。
そして該割り孔13を貫通させて電球14などの照明具を収納してから、図24の(ロ)に示すように、分割の切り口である両者の石膏型の接合面を合わせて一体に復元した立体造形物を作成する。
その後、前記紙付着工程Bで石膏型の表面に紙を付着させ、その後紙の乾燥が行われ、さらにその後、電球14などの照明具を破損しないように注意して石膏型が砕かれて底の孔10から中の細かい石膏が排出されると大きな照明具が収納された継ぎ目がなく美しい紙製表面立体造形物が出来上がる。
また、この分割して分離した石膏型を得る方法では、極めて大きい立体造形物であっても小さく分割することで容易に製作が可能となる。
【0052】
また、前記紙付着工程Bにおいて、図8に示すように、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することで、復元された造形物の表面の一部に、任意に薄い透かし部や影部を形成することが可能となる。
前記透かし部や影部は、中に照明を入れて使用したときに、前記透かし部では周囲よりも明るくなり、影部では周囲よりも暗くなり、その濃淡の変化を楽しめる。
その際前記透かし部では中に模様や図柄を入れるとそれが周囲よりも浮き上がって綺麗に見える。
一部を厚層に形成する場合には、細長い部分や、側方に突出した屈曲し易い部分の強度を高めることができ、紙という曲げ強度の低い素材の弱点を補い部分的に変形や損傷を防止可能となる。
【0053】
さらに、前記紙付着工程Bにおいて、付着する紙原料の付着層間に、異種の紙又は異種の紙以外の意匠的素材を封じ込めることもでき、この部分はシールを表面に貼り着けるように周囲をくっきり区別させるものではなく、それらの素材の図柄全体が紙に馴染むように一体化されて淡い陰影となって浮き出るように形成することもできる。この素材は紙の層間に封入されているので後で剥がれる虞もない。
例えば、素材として植物の葉や花びらなどの素材を用いれば、筆で描いたものとは異なった自然の風情が楽しむことができる。
また、封じ込める素材が、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの強度のある素材では、その使用部分を強化し、薄く変形しやすい紙の弱い部分を補強するこが可能となる。
また、金属を封じ込める場合、図25に示すように、底部に環状の金属板12を埋め込めば、紙製表面立体造形物を飾る台上部分に安定的に設置できようになり、このような素材の使用位置によっては部分的な補強が可能となる。
なお、前記図25の(イ)は石膏型8に濡れた紙9aの1層目を付着中であることを示し。図25の(ロ)は金属板12をその1層目の上に被せて、この上から2層目の紙9aを付着し埋め込む工程を示している。
また紙製表面立体造形物の本体を複数のパーツに分割させた場合、後に連結させるべき部分の対向した両側に金属の線や板材を嵌合可能に対応させて埋め込むことや、鉄などの金属と永久磁石とを併用することにより紙同士に結合よりも確実で強い結合が可能となる。
【0054】
また、図9に示すように、上記紙付着工程B後又は、図10に示すように、紙乾燥工程C後に、石膏型に付着させた紙の表面の一部又は全部を鏝などの均し工具で均し加圧することで、該均し加圧した部分の繊維の凹凸を均して紙表面を薄く平滑に形成することが可能となり、紙の表面をより細かく小さい凹凸で表現することが可能となる。
【0055】
さらに、図11に示すように、上記紙乾燥工程C後又は石膏排出工程D後に、乾燥した立体的な紙の表面に印刷を施せば、より多様なデザインを得ることが可能となる。その際、中に石膏型がある場合では、紙の表面にプレスにより印刷を施すことができ、また空洞の紙の表面からはインクの吹付けドットにより多様なデザインの印刷を施すことが可能となる。
【0056】
そしてまた、図12に示すように、前記石膏排出工程D後、紙の表面を樹脂などで塗装することができる。紙の塗装なので塗装の材料は多種選択可能であるが、アクリル樹脂などを塗布して紙の繊維を固めれば、紙の強度や耐水性を高めることとができ、また塗料の色で着色も可能となる。そして、できた製品は雨水に曝される室外であっても設置が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の紙製表面立体造形物の製作方法は、中が空洞で表面が立体的な紙製の造形物の製作方法に関するものであるが、立体造形物の表面の全部を紙以外のシート状物を用いた表面の立体造形物の製作に応用することも可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 原型となる立体造形物
1a 立体造形物の本体部分
1b 立体造形物の突起部分
1c 立体造形物の本体分離部分
2 容器
3a 液体のシリコン樹脂
3b 硬化したシリコン樹脂
4 シリコン樹脂型
4a シリコン樹脂型
4b シリコン樹脂型
5 内型空洞部
6 石膏注ぎ孔
7 石膏注ぎ孔充填部分
8 石膏型
8a 石膏の小片
9 紙の小片
9a 濡れた紙の小片
9b 乾燥した紙
10 孔
11 切れ目
12 金属板
13 割り孔
14 電球
A 石膏型作成工程
B 紙付着工程
C 紙乾燥工程
D 石膏排出工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な形状を成す表面の造形物を紙素材で継ぎ目なく形成して製作する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙を繋ぎ目なく立体的に形成して内部が空洞の造形物を得る方法として、下記特許文献1には「和紙形成体の製造方法」が、また下記特許文献2は「紙形成体の製造方法」が開示されている。
前記特許文献1の「和紙形成体の製造方法」には、ゴム風船や石膏などの容易に破壊可能な素材からなる立体的な原型を用い、その原型の表面に毛羽立った紐状部材を交差させて巻きつけてその上に紙料液を付着させ、これを乾燥させた後、原型部分を破壊して取り出すことで、内部が空洞で全体に継ぎ目のない和紙形成体を得ることが記載されている。
また前記特許文献2には、立体形状にした網を紙原料の溶液中に浸漬し、網の内部から溶液を抜いて網の表面に紙原料を堆積させ、乾燥後、網を抜取って、シームレスな紙形成体を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−156594号公報
【特許文献2】特開2006−9203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の「和紙形成体の製造方法」では、原型の表面に付着させた紐状部材が和紙形成体内に残されたままで得られるため、内部を照明するとその紐状部材がレントゲン照射で表れる骨状に浮き上がり、綺麗な地肌の和紙の風味が損なわれるという問題があり、これがデザインを行う上での大きな制約となって、自由で多様な造形を得ようとしても困難であった。
また、原型自体が細かく入り組んだ立体的な造形の表面である場合には、これに紐を掛けると凹んだ部分に紐が入らず紐が直線的に張られてしまうため、凹凸部分の正確な表現ができず、その結果、風船などのように全体が原型が崩れてのっぺりした形状になってしまうという問題があった。
また、上記特許文献2の「紙形成体の製造方法」では、造形物の形状が網で決まり、乾燥後にその網を潰して抜き取るのものなので、網を複雑な立体形状に作ることができず複雑な凹凸を形成した造形物が製作できないという難点があった。
【0005】
そこで、本発明は、複雑に入り組んだ大小各種凹凸のある多様な造形物の外形が、紙素材独特の柔らかく暖かい感触を持って継ぎ目のない紙で再現できる紙製表面立体造形物の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の紙製表面立体造形物の製作方法は、請求項1に記載の発明にあっては、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程Aと、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程Bと、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程Cと、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程Dと、から成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明にあっては、上記発明において、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物のうち突起部分を造形物の本体から分離し、一旦、前記突起部分と本体部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物の本体を複数に分割し、一旦、前記本体と本体の分割部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記石膏型作成工程Aにおいて、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作るに際し、石膏型の原型となる立体造形物を容器内で液体状のシリコン樹脂内に埋没させ、該シリコン樹脂が硬化した後にシリコン樹脂を容器から取り出し、これを切り開いて中の原型の立体造形物を取り出し、立体造形物の外形を模る内型のシリコン樹脂型を作成し、該シリコン樹脂型に石膏を内型の空洞の嵩よりも半分以下の少ない量で流し込み、空洞内の全表面に石膏の膜を張らせるようにゆっくりと該シリコン樹脂型を数分掛けて四方に回転を継続して石膏の流動性が停止した後に静置し、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作ることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を網で抄いて水切りをした紙原料であり、網から剥がして千切った紙の小片を、濡れたままで前記石膏型の表面全体に略均等厚になるように複数層に付着することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を水切りした紙原料であり、濡れた紙原料を石膏型に吹き付けて付着することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、着色した泥漿を使用して、単色又は複数の色に着色した紙原料を用いることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記紙付着工程Bにおいて、付着する紙原料の付着層間に、紙原料とは異なった紙、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの素材を封じ込めることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記石膏排出工程Dにおいて、紙に設けた孔又は切れ目から粉砕工具を差し込んで小片の石膏をさらに小さく砕いて排出することを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明にあっては、上記請求項1〜10のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙付着工程B後又は紙乾燥工程C後に、石膏型に付着した紙の表面の一部又は全部を均し工具で均し加圧して、該均し加圧した部分の紙表面を薄く平滑に形成することを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明にあっては、上記請求項1〜11のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙乾燥工程C後又は石膏排出工程D後に、乾燥した紙の表面に印刷を施すことを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明にあっては、上記請求項1〜12のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、石膏排出工程D後に、紙の表面の一部又は全部に塗装を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紙製表面立体造形物の製作方法は、石膏型作成工程Aにおいて、石膏型の表面を薄く形成するので、後の石膏排出工程Dにおいて、小さな力で容易に中の石膏を細かく粉砕でき、目立たないように紙に小さく形成した孔や切れ目から、内部の石膏を容易に除去することが可能となる。
また、紙付着工程Bにおいて、濡れている状態の紙原料を石膏型の表面全体に略均等厚になるように付着させることによって、石膏型を排出して得られる紙製表面立体造形物の全体が一枚の繋ぎ目のない紙の美しい立体造形物を得ることが可能となる。
【0020】
特に、紙付着工程Bでは、立体造形物の石膏型表面の凹凸が、紙自体の素材面の凹凸よりも大きければ、極めて細かい凹凸であっても表現することが可能となる。そしてこのことで、複雑に入り組んだ大小各種凹凸のある多様な造形物の外形を、紙素材独特の柔らかく暖かい感触を持って継ぎ目なく再現することが可能となる。
これを照明器具として、電灯などを入れて内部で発光させれば、継ぎ目のない造形物が紙の繊維独特の自然の繊維質が凹凸分で光のグラデーションを表現しつつ上品で穏やかな雰囲気を醸し出すことが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明にあっては、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物のうち小さい突起部分を造形物の本体から分離し、一旦それぞれに別の、内部に空洞が形成された薄い石膏型が製作でき、それらの石膏型を元の原型に位置を合わせて復元し一体的化すれば、どのような複雑な凹凸形状はあってもその中に空洞が存在することによって容易に砕くことができ且つその部分の小片を外部に排出が可能となる石膏型が得られ、この石膏型によって、その後、乾いた紙の中の石膏型を細かく入り組んだ凹凸形状の先端部分まで容易に砕くことが可能となる。
【0022】
請求項3に記載の発明にあっては、前記石膏型作成工程Aにおいて、原型となる立体造形物の本体を複数に分割し、一旦、前記本体と本体の分割部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型が製作でき、それらの石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる照明具などの大きなものをいれるに復元した石膏型が得られる。
このため極めて大きい立体造形物であっても小さく分割することで容易に製作が可能となる。
また、分割部分を結合する前に、接合面に割り孔を設ければ、復元した本体の空洞内に照明具などの大きなものを入れた石膏型が得られる。こうすれば、空洞内部に照明具などの大きなものをいれた場合、完成後の紙製立体造形物の表面に照明具などを入れるための大きな切れ目を入れる必要がなくなるので紙製立体造形物の美観を損なうことが防げる。
【0023】
請求項4に記載の発明にあっては、前記石膏型作成工程Aにおいて、液状のシリコン樹脂内に原型の立体造形物を沈めれば立体造形物の原型と殆ど等しい立体的造形物のシリコン樹脂型が得られ、またそのシリコン樹脂型からは、水に溶かした石膏を表面に薄く流して内部に薄い表面に形成した石膏型が容易に得られる。
そして、その石膏型からは、原型と殆ど等しい紙製の立体造形物が得られる。たとえ原型が細かく入り組んだ凹凸であっても複雑な形状をそのままで容易に復元して製作することが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を網で抄いて水切りをした紙原料を網から剥がし、これを千切った紙の小片を、濡れたままで前記石膏型の表面全体に略均等厚になるように複数層に付着させることによって、濡れて原料の繊維同士が弛んだ状態のままとなっている紙の小片同士の境目が目立たなくなり、この結果、最後に、全体が一枚の紙となった繋ぎ目のない紙製表面立体造形物を得るこが可能となる。
また、抄いた紙を細かく千切れば、その千切る大きさが小さいほど石膏型の表面が細かな凹凸であっても、その凹凸部分に入り組んだ状態で積層させることが可能となるので、紙自体の素材の凹凸よりも大きければ、極めて小さい凹凸まで表現することが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を水切りして濡れている紙原料を石膏型に吹き付けて付着することで、最後に、全体に全く繋ぎ目のない紙製表面立体造形物を得ることが可能となる。
また、紙抄きや千切る手間もないので紙付着工程Bを速く簡単に完了させることが可能となる。
この場合、吹き付けて得られる紙表面は、抄いた紙よりも柔らかなクッション性を生じ、用途によってはこの柔らかな素材感を生かすこともできる。
【0026】
請求項7に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することで、復元された造形物の表面の一部に、任意に薄い透かし部や影部を形成することが可能となる。
【0027】
請求項8に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、着色した泥漿を使用して、単色又は複数の色に着色した紙原料を用いることで、カラフルな造形物が得られる。
【0028】
請求項9に記載の発明にあっては、前記紙付着工程Bにおいて、付着する紙原料の付着層間に、封じ込められた紙原料とは異なった紙、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの素材が淡い陰影となって浮き出される。
この図柄部分はシールを表面に貼り着けるように周囲をくっきり区別させるものではなく、図柄全体が紙に馴染むように一体化されて、また後から剥がれる虞もなくなる。
平面的な自然の物、例えば、植物の葉や花びらなどの素材を用いれば、筆で描いたものとは異なった自然の風情を容易に楽しむことができる。
また、金属やプラスチックなどを封じ込める場合、底部に線材や板材を埋め込めば、紙製表面立体造形物を飾る台上部分に安定的に設置できようになり、このような素材の使用位置によっては部分的な補強が可能となる。
また紙製表面立体造形物の本体を複数のパーツに分割させた場合、後に連結させるべき部分の対向した両側に金属の線や板材を嵌合可能に対応させて埋め込むことや、鉄などの金属と永久磁石とを併用することにより紙同士による場合よりも確実で強い結合が可能となる。
【0029】
請求項10に記載の発明にあっては、前記石膏排出工程Dにおいて、石膏型に被着して乾燥した紙の表面から、木槌などで叩いたり、握り潰す等して力を加えて中の石膏型を壊して砕いた後で、さらに紙の一部にあけた小さな孔や切れ目から、ペンチなどの先で細い破砕工具を差し込んで、小さな孔や切れ目を小さくしたい場合でも、その孔や切れ目の大きさに合わせて中の石膏の小片をさらに細かく砕いて排出することが可能となる。
【0030】
請求項11に記載の発明にあっては、上記紙付着工程B後又は紙乾燥工程C後に、石膏型に付着させた紙の表面の一部又は全部を鏝などの均し工具で均し加圧することで、該均し加圧した部分の繊維の凹凸を均して紙表面を薄く平滑に形成することが可能となり、より細かく小さい凹凸の表現が可能となる。
【0031】
請求項12に記載の発明にあっては、 上記紙乾燥工程C後又は石膏排出工程D後に、乾燥した紙の表面に印刷を施すもので、例えば立体表面に立体印刷を施すことで、より多様なデザインを得ることが可能となる。
その際、中に石膏型がある場合では、紙の表面にプレスにより印刷を施すことができ、また空洞の紙の表面からはインクの吹付けドットにより多様なデザインの印刷を施すことが可能となる。
【0032】
請求項13に記載の発明にあっては、前記石膏排出工程D後、紙の表面を樹脂などで塗装して、その樹脂で紙の繊維を固めて、紙の強度や耐水性を高めることと、塗料の色で着色することが可能となる。そして、雨水に曝される室外での装飾も可能となる
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の紙製表面立体造形物の製作工程を示すフロー図である。
【図2】石膏型作成工程を示すフロー図である。
【図3】紙付着工程の(イ)は通常の泥漿を、(ロ)は着色した泥漿を、それぞれ用いる形態を示す各フロー図である。
【図4】吹き付ける形態の紙付着工程を示すフロー図である。
【図5】石膏排出工程を示すフロー図である。
【図6】粉砕工具を用いる形態の石膏排出工程のフロー図である。
【図7】石膏型作成工程のフロー図である。
【図8】紙付着工程を示すフロー図である。
【図9】別の紙付着工程を示すフロー図である。
【図10】乾燥工程後の工程を示すフロー図である。
【図11】石膏排出工程後に印刷する場合を示すフロー図である。
【図12】石膏排出工程後に塗装する場合を示すフロー図である。
【図13】原型となる立体造形物(イ)と容器(ロ)を示す各斜視図である。
【図14】立体造形物をシリコン樹脂中に埋没させた状態を示す斜視図である。
【図15】立体造形物を入れたシリコン樹脂を容器から取り出した状態を示す斜視図である。
【図16】立体造形物が抜き取られたシリコン樹脂型を示す斜視図である。
【図17】シリコン樹脂型に石膏注ぎ孔を設けた状態を示す斜視図である。
【図18】シリコン樹脂型から石膏型を取り出す状態を示す斜視図である。
【図19】石膏型に濡れた紙の小片を付着している状態を示す(イ)が付着中を示し(ロ)付着が完了した状態を示す各斜視図である。
【図20】石膏型に付着した紙の立体造形物の底部に切れ目を設けた状態を示す斜視図である。
【図21】(イ)は石膏型に付着した紙の立体造形物の底部に孔を設けた状態を示し、(ロ)は底部に孔から石膏の小片を取り出している状態を示す各斜視図である。
【図22】立体造形物の本体と突起部分とを分離した状態を示す斜視図である。
【図23】立体造形物の本体を分割した状態を示す斜視図である。
【図24】石膏型に電球を入れた状態を示す斜視図である。
【図25】金属を紙に埋め込み中の状態を示す斜視図である。
【図26】本発明を照明として用いた例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の紙製表面立体造形物の製作方法を実施するための形態を以下図で説明する。
本発明の製作工程は、図1に示すように、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程Aと、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程Bと、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程Cと、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程Dとに、各工程により構成する。
上記工程の最後に紙製表面立体造形物が得られる。
【0035】
次に上記各工程について詳述する。
上記前記石膏型作成工程Aでは、シリコン樹脂を用いる方法とその他の方法とが可能である。
シリコン樹脂を用いた方法では、図2に示すように、原型となる立体造形物を容器に入れた液体シリコン樹脂内に沈めて硬化を促がし、硬化したシリコン樹脂を容器から取り出し、該シリコン樹脂を切り開いて中の原型の立体造形物を取り出してシリコン樹脂型を得る。
これを、具体的に立体造形物がポットである場合を例にとって説明すると、図13に示すように、原型となるポットである立体造形物1を、それより多きな容器2に全てが納まるように入れ、図14に示すように、その容器2内に液体のシリコン樹脂3aを満たし、しばらくそのままで硬化を待つ。そしてその後、図15に示すように、硬化したシリコン樹脂3bを容器2から取り出す。
次に、図16に示すように、該シリコン樹脂3bを半分割るなどして切り開き、中の原型としたポットを取り出してシリコン樹脂型4を得る。図16中の符号5はポットを取り出して空洞となった内型空洞部5である。
【0036】
次に、図17に示すように、二つに割ったシリコン樹脂型4a、4bを元の位置に合体させ、そのシリコン樹脂型4の一部に外から内型空洞部5内に繋がる石膏を流し込むための石膏注ぎ孔6を設け、該石膏注ぎ孔6から水に溶かした石膏を中に流し込む。
この石膏注ぎ孔6の位置は図17ではポットの蓋部分に設けたことを示したが、その後の切除で完成したときに段差や継ぎ目のように表れる可能性があるので、できるだけ目立たない部分、例えば立体造形物の底部分(ポットの底面など)などに設けると良い。
このとき、中を空洞にして表面に水に溶かした石膏を薄く形成するために、内型空洞5の嵩よりも約1/4以下となる少ない石膏の量で流し込むのを停止し、ゆっくりと四方に回転させて、全表面に石膏に膜を張らせるように数分掛けて回転を継続する。
すると、表面が薄く形成された状態で石膏が硬化し、回転を止めて静置すると薄い表面のままで硬化した石膏型8が得られる。
そして、硬化した石膏の強度の発現を待って、シリコン樹脂型4を割れ目から分離して、図18に示すように、中の石膏型8を取り出す。
前記石膏注ぎ孔6で形成された石膏注ぎ孔充填部分7は切除して、石膏型作成工程Aにおける石膏型8が完成する。
【0037】
このシリコン樹脂を用いた方法では、液状のシリコン樹脂3a内に立体造形物1の原型を全部沈めるので、殆ど原型と等しい立体造形物1のシリコン樹脂型4が得られ、これから殆ど原型と等しい薄い表面に形成したポットの石膏型8が得られる。
このようにして得られる石膏型8は、原型が細かく入り組んだ凹凸を有する立体造形物1であっても、同じようにその立体的で複雑な形状の凹凸をリアルに復元した物が製作可能となる。
【0038】
また、シリコン樹脂を用いない方法では、図2に示すようにように、原型となる立体造形物を加熱して溶かすことができるロウで製作し、その立体造形物の表面に石膏を薄く塗って石膏が硬化後、加熱して中のロウを溶かし出し、内部が空洞で表面が薄い石膏型を得ることも可能である。
さらに、原型となる立体造形物は、粘土で製作して、その粘土の立体造形物の表面に石膏を薄く塗り、石膏が硬化後、中の粘土を掻き出して内部が空洞の石膏型を製作することも可能である。
【0039】
次に、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する前記紙付着工程Bについて説明する。
前記紙付着工程Bは、図3の(イ)及び(ロ)に示すように、抄いた紙を使用する場合と、図4に示すように、紙原料を吹き付ける場合のいずれでも可能である
【0040】
抄いた紙を使用する場合では、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの和紙の原料となる樹皮と繋ぎ材とを混合した泥漿から作られる和紙が使用に適している。
また、紙原料がパルプや糊など濡れた状態の紙の小片が得られれば良いので、古紙などの紙製品の繊維を水で戻して泥漿を作り、これの泥漿を網上に抄いたものも使用可能である。
そして、図3の(イ)に示すように、抄いた紙を、濡れたまま網から剥がして小片に千切る。そして千切るときには、抄いた紙を網から剥がした紙を小片に千切ってから水を切るか又は水を切ってから小片に千切る等し、そのいずれであっても濡れた状態の紙の小片が得られる。
挟みで切ることもできるが、手で千切るようにした方が、切り口が直線的とはならないので張り付けたときに継ぎ目がより目立たなくなる。
【0041】
そして、図19の(イ)に示すように、前記濡れた紙の小片9aを、前記石膏型8の表面全体に略均等厚になるように複数層張り付ける。
この際、紙の小片9aの一部が相互に重なるよう一層目を全面に貼り付け、次に二層目以降も同じように重ねて張る。
こうして数層に貼ると、図19の(ロ)に示すように、小片同士9aの繋ぎ目はできなくなって表面が均一状態に張り上がる。
またその際、抄いた紙を細かく千切って張れば、その千切る大きさが小さいほど石膏型の表面の細かな凹凸に対応して緻密に積層することが可能となる。この結果、極めて小さい凹凸までもが表現可能となる。
【0042】
また、図4に示す、紙原料を吹き付ける場合では、上記和紙の原料と同じ原料の泥漿や、パルプや糊などを混合した泥漿などを使用することで、吹き付け装置で石膏型の全表面にムラがでないように均一に泥漿を吹き付けることが可能である。こうすれば当然繋ぎ目なく紙原料が付着することになる。
【0043】
次に前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程Cについて説明する。
この乾燥方法は、放置して自然乾燥させることと強制的に乾燥機で乾燥させることができる。
いずれの乾燥方法でも、紙の乾燥に伴って収縮しようとする紙が石膏型を締め付けるように紙の層が薄くなって乾燥し、このとき細かい凹凸がより明確に現れてくる。
このとき、図3の(ロ)に示すように、泥漿に着色材を混合しておけば、この時点で単色又は複数の色に着色した紙原料が得られ、全体の着色が可能となり、カラフルな造形物が得られる。
【0044】
次に、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程Dについて説明する。
【0045】
この工程は、図5に示すように、乾燥した紙9bの表面から力を加えて中の石膏型8を細かく砕いてから紙9bの一部にあけた孔10(図21の(イ)に示す)又は切れ目11(図20に示す)から砕かれた石膏の小片8aを排出するか、又は紙9bの一部に孔10又は切れ目11を開けてから乾燥した紙9bの表面から力を加えて中の石膏型8を細かく砕いて、図21の(ロ)に示すように、砕かれた石膏の小片8aを全て排出するか、いずれでも良い。
【0046】
また、前記石膏排出工程Dにおいて、図6に示すように、紙の一部に孔10又は切れ目11を開けて砕くに際し、孔10又は切れ目11から先の細いペンチなどの破砕工具を差し込んで石膏を小片に砕くことによって、粉砕工具の先が入るような目立たない小さな孔10又は切れ目11であっても中の石膏を粉砕することが可能となる。
特に、孔10や切れ目11をできるだけ目立たないように小さくしたい場合にはこの方法が有効である。
【0047】
本発明では以上の工程で石膏型が砕かれて排出されて紙製表面立体造形物が出来上がる。
こうしてできた本発明の紙製表面立体造形物は全体に継ぎ目がなく美しく仕上がるのみならず、紙素材の独特の柔らかく暖かい感触を持って多様な造形物の外形が再現できるようになる。
その際、立体造形物の原型が複雑に入り組んだ大小各種形状の凹凸を有する多様な造形物であっても、細部まで再現できるようになる。
このため、本発明の用途は観賞用の室内のオブジェとするのに最適であり、特に、図26に示すように、照明器具に用いて、内部に設けた電灯などの光源を発光させれば、継ぎ目のない美しい多様な造形物が、紙の自然繊維独特の肌地を透過した光のグラデーションが表現されて室内空間に上品で穏やかな雰囲気を醸し出すことが可能となる。
【0048】
次に、本発明にあっては、以下の各種形態が可能である。
【0049】
その1つは、図7に示すように、前記石膏型作成工程Aにおいて、図22に示すように、原型となる立体造形物1のうち小さい突起部分1bを造形物の本体1aから分離し、全ての切り口を粘土などで塞ぎ、一旦それぞれに別の、内部に空洞が形成された薄い石膏型が製作し、それらの石膏型を元の原型に位置を合わせて復元し一体化する方法が可能である。
この方法は、原型が複雑に入り組んだ大小各種形状の凹凸を有する多様な立体造形物を細部まで再現しようとする場合に適している。
原型の立体造形物に、図22に示すように、小さい突起部分があると、本体1aと一体の場合には、その突起部分の内部に石膏が詰まってその内部に空洞を形成することが困難となる。空洞がないと突起部分に詰まっている石膏が容易に取り出すことができない。
なぜなら、石膏を砕こうとすると紙が変形したり破れるなどの損傷が発生し、その損傷を避けようとすると砕くこともできないからである。
そこで、突起部分1bを造形物の本体1aから分離し、その突起部分1bを別の石膏型を作れば、突起部分1bが小さくとも表面を薄く形成してその内部に空洞を設けるのは容易となる。
こうして内部が空洞となって表面を薄く形成した石膏は小片又は粉状にまで容易に砕くことが可能となって、その突起部分1bの基部が細く繋がっている場合であっても、細かく砕かれた石膏の小片は外部に排出させることが可能となる。
【0050】
また、原型となる立体造形物1を、図23に示すように、本体1aと本体の分割部分1cとに大きく複数に分割し、全ての切り口を粘土などで塞ぎ、一旦それぞれに別に分離して全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、それらの石膏型を元の原型に位置を合わせて復元し一体化する方法も可能である。
この方法では、完成した紙の立体造形物の空洞中に、石膏の粉砕された小片を排出するための孔10よりも大きい電球14などの照明具などを、照明具などの大きさに合わせて紙を大きく切ることなく収納することが可能となる。こうして、空洞中に大きな照明具などが収納された表面に継ぎ目のない美しい紙製立体造形物が得られる。
【0051】
即ち、この工程では、本体1aと分割部分1cとの石膏型8の接合面を合わせて一体に復元した立体造形物を作成するが、石膏型同士を繋ぐに際し、図24の(イ)に示すように、電球などお入れるための大きさとなるように接合する境界面の石膏を破壊して割り孔13を作成する。
そして該割り孔13を貫通させて電球14などの照明具を収納してから、図24の(ロ)に示すように、分割の切り口である両者の石膏型の接合面を合わせて一体に復元した立体造形物を作成する。
その後、前記紙付着工程Bで石膏型の表面に紙を付着させ、その後紙の乾燥が行われ、さらにその後、電球14などの照明具を破損しないように注意して石膏型が砕かれて底の孔10から中の細かい石膏が排出されると大きな照明具が収納された継ぎ目がなく美しい紙製表面立体造形物が出来上がる。
また、この分割して分離した石膏型を得る方法では、極めて大きい立体造形物であっても小さく分割することで容易に製作が可能となる。
【0052】
また、前記紙付着工程Bにおいて、図8に示すように、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することで、復元された造形物の表面の一部に、任意に薄い透かし部や影部を形成することが可能となる。
前記透かし部や影部は、中に照明を入れて使用したときに、前記透かし部では周囲よりも明るくなり、影部では周囲よりも暗くなり、その濃淡の変化を楽しめる。
その際前記透かし部では中に模様や図柄を入れるとそれが周囲よりも浮き上がって綺麗に見える。
一部を厚層に形成する場合には、細長い部分や、側方に突出した屈曲し易い部分の強度を高めることができ、紙という曲げ強度の低い素材の弱点を補い部分的に変形や損傷を防止可能となる。
【0053】
さらに、前記紙付着工程Bにおいて、付着する紙原料の付着層間に、異種の紙又は異種の紙以外の意匠的素材を封じ込めることもでき、この部分はシールを表面に貼り着けるように周囲をくっきり区別させるものではなく、それらの素材の図柄全体が紙に馴染むように一体化されて淡い陰影となって浮き出るように形成することもできる。この素材は紙の層間に封入されているので後で剥がれる虞もない。
例えば、素材として植物の葉や花びらなどの素材を用いれば、筆で描いたものとは異なった自然の風情が楽しむことができる。
また、封じ込める素材が、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの強度のある素材では、その使用部分を強化し、薄く変形しやすい紙の弱い部分を補強するこが可能となる。
また、金属を封じ込める場合、図25に示すように、底部に環状の金属板12を埋め込めば、紙製表面立体造形物を飾る台上部分に安定的に設置できようになり、このような素材の使用位置によっては部分的な補強が可能となる。
なお、前記図25の(イ)は石膏型8に濡れた紙9aの1層目を付着中であることを示し。図25の(ロ)は金属板12をその1層目の上に被せて、この上から2層目の紙9aを付着し埋め込む工程を示している。
また紙製表面立体造形物の本体を複数のパーツに分割させた場合、後に連結させるべき部分の対向した両側に金属の線や板材を嵌合可能に対応させて埋め込むことや、鉄などの金属と永久磁石とを併用することにより紙同士に結合よりも確実で強い結合が可能となる。
【0054】
また、図9に示すように、上記紙付着工程B後又は、図10に示すように、紙乾燥工程C後に、石膏型に付着させた紙の表面の一部又は全部を鏝などの均し工具で均し加圧することで、該均し加圧した部分の繊維の凹凸を均して紙表面を薄く平滑に形成することが可能となり、紙の表面をより細かく小さい凹凸で表現することが可能となる。
【0055】
さらに、図11に示すように、上記紙乾燥工程C後又は石膏排出工程D後に、乾燥した立体的な紙の表面に印刷を施せば、より多様なデザインを得ることが可能となる。その際、中に石膏型がある場合では、紙の表面にプレスにより印刷を施すことができ、また空洞の紙の表面からはインクの吹付けドットにより多様なデザインの印刷を施すことが可能となる。
【0056】
そしてまた、図12に示すように、前記石膏排出工程D後、紙の表面を樹脂などで塗装することができる。紙の塗装なので塗装の材料は多種選択可能であるが、アクリル樹脂などを塗布して紙の繊維を固めれば、紙の強度や耐水性を高めることとができ、また塗料の色で着色も可能となる。そして、できた製品は雨水に曝される室外であっても設置が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の紙製表面立体造形物の製作方法は、中が空洞で表面が立体的な紙製の造形物の製作方法に関するものであるが、立体造形物の表面の全部を紙以外のシート状物を用いた表面の立体造形物の製作に応用することも可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 原型となる立体造形物
1a 立体造形物の本体部分
1b 立体造形物の突起部分
1c 立体造形物の本体分離部分
2 容器
3a 液体のシリコン樹脂
3b 硬化したシリコン樹脂
4 シリコン樹脂型
4a シリコン樹脂型
4b シリコン樹脂型
5 内型空洞部
6 石膏注ぎ孔
7 石膏注ぎ孔充填部分
8 石膏型
8a 石膏の小片
9 紙の小片
9a 濡れた紙の小片
9b 乾燥した紙
10 孔
11 切れ目
12 金属板
13 割り孔
14 電球
A 石膏型作成工程
B 紙付着工程
C 紙乾燥工程
D 石膏排出工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程(A)と、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程(B)と、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程(C)と、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程(D)と、から成ることを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項2】
石膏型作成工程(A)において、原型となる立体造形物のうち突起部分を造形物の本体から分離し、一旦、前記突起部分と本体部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする請求項1に記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項3】
石膏型作成工程(A)において、原型となる立体造形物の本体を複数に分割し、一旦、前記本体と本体の分割部分からそれぞれ別に分離して全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項4】
石膏型作成工程(A)において、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作るに際し、石膏型の原型となる立体造形物を容器内で液体状のシリコン樹脂内に埋没させ、該シリコン樹脂が硬化した後にシリコン樹脂を容器から取り出し、これを切り開いて中の原型の立体造形物を取り出し、立体造形物の外形を模る内型のシリコン樹脂型を作成し、該シリコン樹脂型に石膏を内型の空洞の嵩よりも半分以下の少ない量で流し込み、空洞内の全表面に石膏の膜を張らせるようにゆっくりと該シリコン樹脂型を数分掛けて四方に回転を継続して石膏の流動性が停止した後に静置し、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作ることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項5】
紙付着工程(B)において、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を網で抄いて水切りをした紙原料であり、網から剥がして千切った紙の小片を、濡れたままで前記石膏型の表面全体に略均等厚になるように複数層に付着することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項6】
紙付着工程(B)において、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を水切りした紙原料であり、濡れた紙原料を石膏型に吹き付けて付着することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項7】
紙付着工程(B)において、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項8】
紙付着工程(B)において、着色した泥漿を使用して、単色又は複数の色に着色した紙原料を用いることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項9】
紙付着工程(B)において、付着する紙原料の付着層間に、紙原料とは異なった紙、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの素材を封じ込めることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項10】
石膏排出工程(D)において、紙に設けた孔又は切れ目から粉砕工具を差し込んで小片の石膏をさらに小さく砕いて排出することを特徴とする請求項1〜9のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙付着工程(B)後又は紙乾燥工程(C)後に、石膏型に付着した紙の表面の一部又は全部を均し工具で均し加圧して、該均し加圧した部分の紙表面を薄く平滑に形成することを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙乾燥工程(C)後又は石膏排出工程(D)後に、乾燥した紙の表面に印刷を施すことを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、石膏排出工程(D)後に、紙の表面の一部又は全部に塗装を施すことを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項1】
全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作る石膏型作成工程(A)と、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿から得た紙原料を、前記石膏型の表面全体に付着する紙付着工程(B)と、前記石膏型の表面に付着した前記紙原料を乾燥する紙乾燥工程(C)と、前記石膏型を覆おう乾燥した紙の表面から力を加えて中の石膏型を細かく砕き、紙の一部に設けた孔又は切れ目から砕かれた石膏の小片を排出する石膏排出工程(D)と、から成ることを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項2】
石膏型作成工程(A)において、原型となる立体造形物のうち突起部分を造形物の本体から分離し、一旦、前記突起部分と本体部分からそれぞれ別に全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする請求項1に記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項3】
石膏型作成工程(A)において、原型となる立体造形物の本体を複数に分割し、一旦、前記本体と本体の分割部分からそれぞれ別に分離して全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を製作し、各石膏型を元の原型の位置に一体的に固着して原型となる立体造形物に復元した石膏型を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項4】
石膏型作成工程(A)において、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作るに際し、石膏型の原型となる立体造形物を容器内で液体状のシリコン樹脂内に埋没させ、該シリコン樹脂が硬化した後にシリコン樹脂を容器から取り出し、これを切り開いて中の原型の立体造形物を取り出し、立体造形物の外形を模る内型のシリコン樹脂型を作成し、該シリコン樹脂型に石膏を内型の空洞の嵩よりも半分以下の少ない量で流し込み、空洞内の全表面に石膏の膜を張らせるようにゆっくりと該シリコン樹脂型を数分掛けて四方に回転を継続して石膏の流動性が停止した後に静置し、全表面を薄く形成した内部が空洞の石膏型を作ることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項5】
紙付着工程(B)において、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を網で抄いて水切りをした紙原料であり、網から剥がして千切った紙の小片を、濡れたままで前記石膏型の表面全体に略均等厚になるように複数層に付着することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項6】
紙付着工程(B)において、紙原料が、繊維質材と繋ぎ材とを含む泥漿を水切りした紙原料であり、濡れた紙原料を石膏型に吹き付けて付着することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項7】
紙付着工程(B)において、石膏型に付着した紙原料の一部を周囲よりも薄層又は厚層に形成することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項8】
紙付着工程(B)において、着色した泥漿を使用して、単色又は複数の色に着色した紙原料を用いることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項9】
紙付着工程(B)において、付着する紙原料の付着層間に、紙原料とは異なった紙、金属、プラスチック、植物のうちいずれかの素材を封じ込めることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項10】
石膏排出工程(D)において、紙に設けた孔又は切れ目から粉砕工具を差し込んで小片の石膏をさらに小さく砕いて排出することを特徴とする請求項1〜9のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙付着工程(B)後又は紙乾燥工程(C)後に、石膏型に付着した紙の表面の一部又は全部を均し工具で均し加圧して、該均し加圧した部分の紙表面を薄く平滑に形成することを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、紙乾燥工程(C)後又は石膏排出工程(D)後に、乾燥した紙の表面に印刷を施すことを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれかに記載の紙製表面立体造形物の製作方法において、石膏排出工程(D)後に、紙の表面の一部又は全部に塗装を施すことを特徴とする紙製表面立体造形物の製作方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図26】
【公開番号】特開2011−162923(P2011−162923A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29137(P2010−29137)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(510040721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(510040721)
【Fターム(参考)】
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