説明

紡糸用スリーブの製造方法

【課題】軽量で、折り曲げ易い紡糸用スリーブが容易にできる紡糸用スリーブの製造方法を提供すること。
【解決手段】モールド90に帆布1を被せる第1工程と、前記帆布1上に心線3を螺旋状に巻き付ける第2工程と、ゴム板4が貼り合わされた帆布2中のゴム板4側を心線3に対向させる態様で被せる第3工程と、第3工程でできた積層体を加硫缶91に投入し、加熱・加圧して加硫成形する第4工程とを備えるものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス繊維を巻き取るための紡糸用スリーブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維を巻き取るための紡糸用スリーブとしては、例えば、帆布/コード/ゴム/帆布を積層した4層構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。この紡糸用スリーブは、従来の紙製のスリーブと比較して耐久性において非常に優れている。
【0003】
しかしながら、この紡糸用スリーブでは重量が大きいことから作業性の低下を招き、また厚みが大きいことから折り曲げにくくガラス繊維を分離しにくいという問題がある。そして、この紡糸用スリーブは4層構造であるので製造工程が複雑である。
【0004】
したがって、紡糸用スリーブを使用する業界では、軽量で、折り曲げ易い紡糸用スリーブが容易にできる紡糸用スリーブの製造方法が開発されることを待ち望んでいる。
【特許文献1】特開2004−83391
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明では、軽量で、折り曲げ易い紡糸用スリーブが容易にできる紡糸用スリーブの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1記載の発明)
この発明の紡糸用スリーブの製造方法は、モールドに帆布を被せる第1工程と、前記帆布上に心線を螺旋状に巻き付ける第2工程と、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を心線に対向させる態様で被せる第3工程と、第3工程でできた積層体を加硫缶に投入し、加熱・加圧して加硫成型する第4工程とを備えるものとしている。
【0007】
(請求項2記載の発明)
この発明の紡糸用スリーブの製造方法は、モールドに、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を外面として被せる第1工程と、前記ゴム板上に心線を螺旋状に巻き付ける第2工程と、前記心線上に帆布を被せる第3工程と、第3工程でできた積層体を加硫缶に投入し、加熱・加圧して加硫成型する第4工程とを備えるものとしている。
【0008】
(請求項3記載の発明)
この発明の紡糸用スリーブの製造方法は、モールドに、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を外面として被せる第1工程と、前記ゴム板上に心線を螺旋状に巻き付ける第2工程と、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を心線に対向させる態様で被せる第3工程と、第3工程ででき積層体を加硫缶に投入し、加熱・加圧して加硫成型する第4工程とを備えるものとしている。
【0009】
(請求項4記載の発明)
この発明の紡糸用スリーブの製造方法は、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の発明に関し、帆布に貼り合わされるゴム板の厚みは、0.25〜0.5mmである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の紡糸用スリーブの製造方法によると、軽量で、折り曲げ易い紡糸用スリーブが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明の紡糸用スリーブSの製造方法を実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例1】
【0012】
図1はこの発明の実施例1の製造方法によって成形された紡糸用スリーブSの一部断面斜視図、図2は前記紡糸用スリーブSの断面図、図3は前記紡糸用スリーブSの製造工程図を示している。
【0013】
(この紡糸用スリーブSついて)
この紡糸用スリーブSは、図1や図2に示すように、内外の帆布1,2と、これら帆布1,2で挟み込まれた心線3及びゴム部4a(後述するゴム板4から形成されたもの)から成るものであり、全体の厚みが1.4mmの円筒状に成形されている。
【0014】
ここで、帆布1、2は共にナイロン66(商標)により構成されているが、帆布1が単独で構成されているのに対して、帆布2は片面にEPDM製のゴム板4を貼り合わされたもの(以下、トッピング帆布という)としてある。また、心線3は、アラミドで構成したものである。
【0015】
(この紡糸用スリーブSの製造方法について)
この紡糸用スリーブSは、以下の工程を経て製造される。
(1) 第1工程
円筒状のモールド90に帆布1を被せる(図3の(A))。
【0016】
(2) 第2工程
前記帆布1上に心線3を螺旋状に巻き付ける(図3の(B))。
【0017】
(3) 第3工程
ゴム板4が貼り合わされた帆布2中のゴム板4側を心線3と対向させる態様で被せる(図3の(C))。
【0018】
ところで、背景技術の欄に記載した紡糸スリーブSは、帆布−心線−ゴム−帆布という4層構造になっているが、この中で最も重量が大きいのはゴムであり、ゴムを如何に薄くできるかが軽量化のポイントとなる。しかしながら、ゴムをあまり薄くすると、製造時に皺が入ったりゴム同志が付着したりするトラブルがあるため、ゴムの種類にもよるが厚さを1mm以下にはできない。
【0019】
そこで、この発明の実施例では、ゴムの厚みを0.35mm程度まで薄くすることが可能である、帆布2にゴムを予め貼り合わせたトッピング帆布を採用した。
【0020】
なお、トッピング帆布は、上下貼り合わせ帆布の場合にはゴム厚は0.25mmまで薄くできるが、片側貼り合わせの場合には心線を埋設するためにゴム厚は0.35mm以上必要である。
【0021】
(4) 第4工程
帆布2の上から図3の(D)に示すようにバッグゴム8を外挿しその後、上記第3工程でできた積層体を加硫缶91に投入し、所定の温度及び圧力で加熱・加圧して加硫成型する。
【0022】
(5) 第5工程
加硫缶91から加硫成形物(帆布1、ゴム板4が貼り合わされた帆布2、及び心線3が加硫一体化された物)を取り出して脱型し、所定の幅に裁断すると、紡糸用スリーブSは完成する。
【0023】
(この紡糸用スリーブSの製造方法の優れた点等について)
背景技術の欄に記載した紡糸用スリーブが四層構造であるのに対して、この実施例の紡糸用スリーブSは帆布1、片面にゴム板4を貼り合わされた帆布2、心線3の三層構造であり、よって、この製造方法によると製造工程が簡略化できる。
【0024】
また、この紡糸用スリーブSの製造方法では、ゴムの厚みを0.35mm程度まで薄くすることが可能であり、全体の厚みが薄く且つ重量が軽い紡糸用スリーブを提供できる。
【0025】
そして、この製造方法で形成された紡糸用スリーブSは、全体の厚みが薄く(折り曲げやすく)且つ重量が軽いので、作業時の取り扱いが容易であり、特に巻かれたガラス繊維を抜き取る作業が容易になる。
【0026】
(この紡糸用スリーブSの製造方法の他の態様について)
上記紡糸用スリーブSの製造方法は以下の如く変えることができる。
【0027】
上記実施例では、帆布2側のみをトッピング帆布としたが、これに限定されることなく、帆布1側のみをトッピング帆布としてもよく、また、帆布1、2の両方をトッピング帆布としてもよい。この場合、ゴムの厚みを0.25mm程度まで薄くしたトッピング帆布を使用できる。
【0028】
ここで、帆布1、2は、ナイロン、綿、ポリエステル繊維のいずれか又はこれらを組み合わせたもの、帆布1又は/及び2に貼り合わされルゴムは、EPDM、HNBR、FKMゴムのいずれかのもの、心線3は、アラミド、ガラス、PBO、ポリアリレート繊維のいずれかで構成されたコードとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施例1の製造方法によって成形された紡糸用スリーブの一部断面斜視図。
【図2】前記紡糸用スリーブの断面図。
【図3】前記紡糸用スリーブの製造工程図を示している。
【符号の説明】
【0030】
S 紡糸用スリーブ
1 帆布
2 帆布
3 心線
4 ゴム板
4a ゴム部
8 バッグゴム
90 モールド
91 加硫缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドに帆布を被せる第1工程と、前記帆布上に心線を螺旋状に巻き付ける第2工程と、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を心線に対向させる態様で被せる第3工程と、第3工程でできた積層体を加硫缶に投入し、加熱・加圧して加硫成型する第4工程とを備えることを特徴とする紡糸用スリーブの製造方法。
【請求項2】
モールドに、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を外面として被せる第1工程と、前記ゴム板上に心線を螺旋状に巻き付ける第2工程と、前記心線上に帆布を被せる第3工程と、第3工程でできた積層体を加硫缶に投入し、加熱・加圧して加硫成型する第4工程とを備えることを特徴とする紡糸用スリーブの製造方法。
【請求項3】
モールドに、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を外面として被せる第1工程と、前記ゴム板上に心線を螺旋状に巻き付ける第2工程と、ゴム板が貼り合わされた帆布中のゴム板側を心線に対向させる態様で被せる第3工程と、第3工程ででき積層体を加硫缶に投入し、加熱・加圧して加硫成型する第4工程とを備えることを特徴とする紡糸用スリーブの製造方法。
【請求項4】
帆布に貼り合わされるゴム板の厚みは、0.25〜0.5mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紡糸用スリーブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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