説明

紫外線カット機能を付与する繊維処理剤

【課題】紫外線吸収剤が分散性に優れるので柄物や色物などの繊維製品が白化せず、紫外線吸収剤が安定であるので白色や淡色の繊維製品が黄変せず、また、紫外線吸収剤が衣類などから人体の肌に移行した場合でも、DNA損傷などを引き起こさず、しかも、皮膚を刺激せず、アレルギー症状などを引き起こすおそれがない、紫外線カット機能を付与する繊維処理剤を提供すること。
【解決手段】紫外線カット機能を付与する繊維処理剤は、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子と界面活性剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に紫外線カット機能を付与する繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フロン・ハロン類によるオゾン層の破壊に伴い、人体の肌に対する有害な紫外線の影響が懸念されている。
【0003】
そこで、繊維製品に紫外線カット機能を付与するために、繊維加工用の樹脂に紫外線カット機能を有する金属酸化物の微粒子を配合することが提案されている。例えば、特許文献1には、アクリル系、グリオキザール系、シリコーン系、ウレタン系、メラミン系、フッ素系などの繊維加工用の水溶性樹脂またはエマルション樹脂に金属酸化物の微粒子を特定の割合で配合して得られる、繊維製品に紫外線カット機能を付与する繊維処理剤が開示されている。
【0004】
しかし、この繊維処理剤は、金属酸化物の微粒子が凝集して柄物や色物などの繊維製品が白化するという問題点を有する。また、光触媒活性を有する金属酸化物の微粒子を用いると、繊維製品から人体の肌に移行した場合、光を受けて発生した活性酸素がDNA損傷などを引き起こすおそれがある。
【0005】
また、例えば、各種の衣類に紫外線カット機能を付与するために、衣類を洗濯する際に用いる洗剤や柔軟剤に紫外線吸収剤を添加することが提案されている。例えば、特許文献2には、洗剤成分の噴霧乾燥粒子に紫外線吸収剤を添加し、液体バインダーと共に攪拌造粒し、洗剤ビルダーを添加して粒子を整えた後、炭酸ナトリウムやその他の成分をドライブレンドして得られる、洗濯後の衣類に紫外線カット機能を付与する洗剤組成物の製造方法が開示されている。また、特許文献3には、柔軟剤の基剤である長鎖アルキルエステル短鎖アルキル型第4級アンモニウム塩と紫外線吸収剤と粘度調整剤とを特定の割合で配合し、25℃における初期粘度を特定の範囲内に限定して得られる、紫外線カット機能を付与する柔軟剤組成物が開示されている。
【0006】
しかし、これらの洗剤または柔軟剤組成物は、いずれも、紫外線吸収剤が分解して白色や淡色の衣類が黄変するという問題点を有する。また、有機系の紫外線吸収剤を用いているので、衣類から人体の肌に移行した場合、皮膚を刺激し、アレルギー症状などを引き起こすおそれがある。
【特許文献1】特開平5−179568号公報
【特許文献2】特開2004−43663号公報
【特許文献3】特開2003−301374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、紫外線吸収剤が分散性に優れるので柄物や色物などの繊維製品が白化せず、紫外線吸収剤が安定であるので白色や淡色の繊維製品が黄変せず、また、紫外線吸収剤が衣類などから人体の肌に移行した場合でも、DNA損傷などを引き起こさず、しかも、皮膚を刺激せず、アレルギー症状などを引き起こすおそれがない、紫外線カット機能を付与する繊維処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々検討の結果、紫外線吸収剤として、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子を配合すれば、上記課題が解決されることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子と界面活性剤とを含有することを特徴とする紫外線カット機能を付与する繊維処理剤を提供する。
【0010】
本発明による紫外線カット機能を付与する繊維処理剤において、前記コア粒子は、好ましくは、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムから選択される金属酸化物の微粒子である。また、前記金属酸化物の微粒子は、好ましくは、シリカおよび/またはアルミナで被覆されている。さらに、前記ポリマー被覆微粒子の配合量は、好ましくは、組成物の全質量に対して、0.1質量%以上、10質量%以下であり、前記界面活性剤の配合量は、好ましくは、組成物の全質量に対して、10質量%以上、50質量%以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子を紫外線吸収剤として配合することにより、紫外線吸収剤が分散性に優れるので柄物や色物などの繊維製品が白化せず、紫外線吸収剤が安定であるので白色や淡色の繊維製品が黄変せず、また、紫外線吸収剤が繊維製品から人体の肌に移行した場合でも、DNA損傷などを引き起こさず、しかも、皮膚を刺激せず、アレルギー症状などを引き起こすおそれがない、紫外線カット機能を付与する繊維処理剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
≪紫外線カット機能を付与する繊維処理剤≫
本発明の紫外線カット機能を付与する繊維処理剤(以下、単に「本発明の繊維処理剤」ということがある。)は、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子と界面活性剤とを含有することを特徴とする。ここで、「繊維処理剤」とは、繊維製品の処理に用いられる機能性付与剤、または、洗濯に用いられる機能性付与剤であり、後者の具体的な形態としては、液体洗剤、固体洗剤、柔軟剤、漂白剤などが挙げられる。なお、本発明において、「繊維製品」とは、繊維から製造される衣類などの製品だけでなく、繊維それ自体を含む概念である。
【0013】
<ポリマー被覆微粒子>
本発明の繊維処理剤には、紫外線吸収剤として、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子が配合される。ポリマー被覆微粒子の配合量は、組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上、9質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上、8質量%以下である。ポリマー被覆微粒子の配合量が0.1質量%未満であると、繊維製品に充分な紫外線カット機能を付与できないことがある。逆に、ポリマー被覆微粒子の配合量が10質量%を超えると、繊維製品に充分な紫外線カット機能を付与できるが、必要以上にポリマー被覆微粒子を使用することになり、製造コストが上昇することがある。
【0014】
ポリマー被覆微粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm以上、200nm以下、より好ましくは15nm以上、150nm以下、さらに好ましくは20nm以上、100nm以下である。ポリマー被覆微粒子の平均粒子径が10nm未満であると、繊維製品に充分な紫外線カット機能を付与できないことがある。逆に、ポリマー被覆微粒子の平均粒子径が200nmを超えると、柄物や色物などの繊維製品を白化させることがある。なお、ポリマー被覆微粒子の平均粒子径とは、動的光散乱粒子径測定装置で測定したGaussian解析体積平均粒子径を意味する。ただし、ポリマー被覆微粒子には、単一のコア粒子がポリマーで被覆されている場合と、凝集したコア粒子の集団がポリマーで被覆されている場合とがある。
【0015】
紫外線カット機能を有するコア粒子としては、例えば、紫外線カット機能を有する金属酸化物の微粒子(以下、単に「金属酸化物微粒子」ということがある。)や紫外線吸収基を有する重合性モノマーを共重合したポリマーの微粒子(以下、単に「ポリマー微粒子」ということがある。)が挙げられる。これらのコア粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのコア粒子のうち、紫外線カット機能を有する金属酸化物の微粒子が好適である。
【0016】
<金属酸化物微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子>
紫外線カット機能を有する金属酸化物の微粒子をコア粒子として用いる場合、本発明の繊維処理剤には、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子が配合される。
【0017】
かかるポリマー被覆微粒子は、紫外線カット機能を有する金属酸化物の微粒子の表面がポリマーで被覆されているので、金属酸化物微粒子をそのまま用いるよりも分散性が著しく向上し、ポリマー被覆微粒子が凝集して柄物や色物などの繊維製品を白化させることがなく、また、有機系の紫外線吸収剤のように光により分解して白色や淡色の繊維製品が黄変することがなく、しかも、金属酸化物の触媒活性やイオン溶出が抑制され、人体の肌への影響が少ないという利点を有する。
【0018】
紫外線カット機能を有する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム微粒子などが挙げられる。これらの金属酸化物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、これらの金属酸化物の微粒子は、その表面をポリマーで被覆する際の効率が向上することや、光触媒活性やイオン溶出が抑制され、人体の肌への影響が少なくなることから、シリカおよび/またはアルミナで被覆されていることが好ましい。
【0019】
金属酸化物微粒子は、従来公知の方法により、自ら調製してもよいし、市販品を利用してもよい。例えば、シリカ被覆酸化チタンおよびシリカ被覆酸化亜鉛の微粒子は、特開2003−252916号公報や特開平11−302015号公報などに記載された方法を用いて調製することができる。他方、市販品を利用する場合、酸化チタンの微粒子としては、例えば、昭和電工(株)製の「NTBナノチタニア」、石原産業(株)製の「超微粒子酸化チタンTTO−Vシリーズ」、堺化学工業(株)製の「STR−100C」などが挙げられる。酸化亜鉛の微粒子としては、例えば、堺化学工業(株)製の「FINEX−25」、「FINEX−50」、「FINEX−75」、本荘ケミカル(株)製の「ナノジンク60」、ハクスイテック(株)製の「ZINCOX SUPER F2」などが挙げられる。酸化セリウムの微粒子としては、例えば、シーアイ化成(株)製の「NanoTek」などが挙げられる。また、シリカ被覆酸化チタンの微粒子としては、例えば、昭和電工(株)製の「マックスライトTS−01」、「マックスライトTS−04」、「マックスライトTS−043」、マックスライト「F−TS20」などが挙げられる。シリカ被覆酸化亜鉛の微粒子としては、例えば、堺化学工業(株)製の「NANOFINE−50A」、昭和電工(株)製の「マックスライトZS−032」、住友大阪セメント(株)製の「SIH−20 ZnO−350」などが挙げられる。さらに、アルミナ被覆酸化チタンの微粒子としては、石原産業(株)製の「TTO−51(A)」、「TTO−55(A)」、「TTO−55(B)」などが挙げられる。
【0020】
金属酸化物微粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、100nm以下、より好ましくは5nm以上、80nm以下、さらに好ましくは10nm以上、50nm以下である。金属酸化物微粒子の平均粒子径が1nm未満であると、金属酸化物微粒子が凝集して高次構造を形成するので、所定の平均粒子径を有するポリマー被覆微粒子を得るのが困難になることがある。逆に、金属酸化物微粒子の平均粒子径が100nmを超えると、ポリマー被覆微粒子の平均粒子径が大きくなり、例えば、柄物や色物などの繊維製品が白化することがある。なお、金属酸化物微粒子の平均粒子径とは、動的光散乱粒子径測定装置で測定したGaussian解析体積平均粒子径を意味する。
【0021】
金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子は、下記のような方法により製造することができる。
【0022】
<金属酸化物微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子の製造>
金属酸化物微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子は、水性媒体中、金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーを乳化重合することにより、製造することができる。
【0023】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理すれば、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基とカップリング剤とが反応して、前記金属酸化物微粒子の表面に化学結合を介して官能基が導入される。金属酸化物微粒子の表面に官能基を導入した後、前記官能基と反応しうる反応性基を有する重合性モノマーを反応させて、金属酸化物微粒子の表面において前記重合性モノマーからポリマーを合成することにより、前記金属酸化物微粒子の表面が前記ポリマーで被覆される。
【0024】
カップリング剤としては、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基と反応する反応性部位と、反応性基を有する重合性モノマーの前記反応性基と反応する官能基とを有する化合物である限り、特に限定されるものではないが、例えば、様々な官能基を有するシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を用いた場合には、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基と反応して、−O−Si−結合を介して、前記金属酸化物微粒子の表面に様々な官能基が導入される。また、チタネート系カップリング剤を用いた場合には、−O−Ti−結合を介して、前記金属酸化物微粒子の表面に様々な官能基が導入される。カップリング剤としては、様々な官能基を有するものが市販されており、入手し易いことから、シランカップリング剤が好適である。カップリング剤が有する官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などが挙げられる。
【0025】
シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などを含有するシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;γ―メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのシランカップリング剤のうち、金属酸化物微粒子の表面からポリマー合成を効率よく行えることから、ビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤が好適である。
【0026】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理するには、例えば、水性媒体中で、金属酸化物微粒子とカップリング剤とを混合して攪拌すればよい。その際、金属酸化物微粒子とカップリング剤との反応を促進させるために、必要に応じて、好ましくは30℃以上、100℃以下、より好ましくは40℃以上、80℃以下の温度に加温または加熱することができる。カップリング剤の使用量は、金属酸化物微粒子に対して、好ましくは0.05質量%以上、20質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上、15質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上、10質量%以下である。カップリング剤の使用量が0.05質量%未満であると、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで充分に被覆できないことがある。逆に、カップリング剤の使用量が20質量%を超えると、反応液の粘度が上昇したり、反応液がゲル化を起こしたりすることがある。
【0027】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する際に用いる水性媒体は、下記で説明する重合反応に用いる水性媒体と同様であるが、重合反応に用いる水性媒体と同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する際には、水性媒体中に金属酸化物微粒子を分散させることが好ましいので、必要に応じて、分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、従来公知の界面活性剤や、ポバールなどの高分子分散安定剤などが挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。分散安定剤の使用量は、水性媒体に対して、好ましくは0.01質量%以上、5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上、4質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上、3質量%以下である。分散剤安定剤の使用量が0.01質量%未満であると、水性媒体中に金属酸化物微粒子を分散させる効果が小さいことがある。逆に、分散安定剤の使用量が5質量%を超えると、金属酸化物微粒子をカップリング剤で効率よく処理できないことがある。
【0029】
重合性反応基を有するカップリング剤の場合、金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理した後、未反応のカップリング剤が存在すると、重合工程で架橋剤として作用し、金属酸化物微粒子の表面を被覆するポリマーが架橋構造を有するようになり、溶媒や樹脂などに対する分散性が低下することがある。それゆえ、金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理した後、未反応のカップリング剤を除去するために、カップリング剤で処理した金属酸化物微粒子を洗浄することができる。カップリング剤で処理された金属酸化物微粒子を洗浄するには、例えば、適当な溶媒に再分散させ、遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを回収すればよい。この再分散、遠心分離および沈降物のみの回収という操作は、経済的観点からは必ずしも行う必要はないが、この操作を行う場合には、1回だけ行っても複数回行ってもよいが、3回またはそれ以上繰り返すことが好適である。
【0030】
重合反応は、水性媒体中、金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で行われる。重合反応をカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で行う場合には、重合反応には、金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理して得られた分散体をそのまま用いてもよいし、カップリング剤で処理した後で洗浄した金属酸化物微粒子を水性媒体に再分散させて得られた分散体を用いてもよい。
【0031】
重合反応に用いる重合性モノマーは、金属酸化物微粒子の表面に導入された官能基と反応しうる反応性基を有する重合性モノマーから前記官能基に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などの官能基と反応しうる反応性基を含有する重合性モノマー、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などを含有する重合性モノマーが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
(メタ)アクリロイル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0033】
ビニル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合体モノマーのうち、スチレンなどのスチレン誘導体が好適である。
【0034】
アミノ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン類;アリルアミン、α−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミンなどのアリルアミン類;(メタ)アクリルアミド,N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0035】
エポキシ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類が好適である。
【0036】
カルボキシル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸;これらの不飽和ジカルボン酸のモノエステル化物;これらの不飽和ジカルボン酸の無水物;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸が好適である。
【0037】
水酸基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリカプロラクトン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリオキシエチレン変性やポリオキシプロピレン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0038】
重合性モノマーの使用量は、金属酸化物微粒子の使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物微粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、200質量部以下、より好ましくは2質量部以上、100質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上、50質量部以下である。重合性モノマーの使用量が1質量部未満であると、重合反応が速やかに進行せず、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで効率よく被覆できないことがある。逆に、重合性モノマーの使用量が200質量部を超えると、金属酸化物微粒子を含まないポリマー粒子が多く生成することがある。
【0039】
反応器に重合性モノマーを添加する際には、重合性モノマーそのものを添加してもよいし、重合性モノマーを乳化剤と水とで乳化させたプレエマルション組成物として添加してもよい。重合性モノマーまたはプレエマルション組成物の添加方法は、一括添加、分割添加、滴下添加のいずれであってもよいが、金属酸化物微粒子の表面にポリマーを形成させる効率が高いことから、滴下添加が最も好ましい。
【0040】
重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤である限り、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウムなどの過酸化物;これらの過酸化物に、アスコルビン酸およびその塩、エリソルビン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、クエン酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ロンガリットC(NaHSO・CHO・HO)、ロンガリットZ(ZnSO・CHO・HO)、デクロリン(Zn(HSO・CHO))などの還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤;t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類;ジベンゾイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジドデカノイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
重合開始剤の使用量は、重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重合性モノマーに対して、好ましくは0.001質量%以上、3質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上、2質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下である。
【0042】
モノマー成分の重合反応は、水性媒体中で行われる。ここで、「水性媒体」とは、水、または、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を意味する。水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いると、界面活性剤などの分散安定剤を用いなくても、原料の金属酸化物微粒子や生成するポリマー被覆微粒子の分散状態を充分良好に保持することができる。しかし、有機溶媒がポリマー被覆微粒子の分散体に混入することが望ましくない場合は、界面活性剤など分散安定剤を用いることにより、原料の金属酸化物微粒子や生成するポリマー被覆微粒子の分散状態を充分良好に保持することができる。
【0043】
水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、水に対する水混和性の有機溶媒の割合は、好ましくは0.1質量%以上、40質量%以下、より好ましくは1質量%以上、30質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上、20質量%以下である。
【0044】
水と併用しうる水混和性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、モノマー成分から合成されるポリマーに対して貧溶媒となる有機溶媒、すなわちモノマー成分は溶解するが、モノマー成分から合成されるポリマーは溶解しない有機溶媒が好適である。
【0045】
分散安定剤を用いる場合、分散安定剤としては、例えば、従来公知の界面活性剤や、ポバールなどの高分子分散安定剤などが挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。分散安定剤の使用量は、水性媒体に対して、好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上、4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上、3質量%以下である。分散安定剤の使用量が0.1質量%未満であると、原料の金属酸化物微粒子や生成するポリマー被覆微粒子の分散状態を充分良好に保持できないことがある。逆に、分散安定剤の使用量が5質量%を超えると、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで効率よく被覆できないことがある。
【0046】
重合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは40℃以上、90℃以下、より好ましくは50℃以上、80℃以下である。また、反応時間も、金属酸化物微粒子や重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されることはないが、例えば、好ましくは1時間以上、24時間以下、より好ましくは3時間以上、12時間以下である。
【0047】
重合反応後、金属酸化物微粒子の表面がポリマーで被覆されてなるポリマー被覆微粒子の分散体が得られる。なお、濾過などの従来公知の方法により、ポリマー被覆微粒子の分散体から粒子径が200nmを超える粗大粒子を除去しておくことが好ましい。
【0048】
得られた分散体は、そのまま用いてもよいし、例えば、重合反応液を遠心分離にかけて上澄み液と沈降物に分離し、この沈降物を回収して乾燥させることにより、ポリマー被覆微粒子を得て、粉体として用いてもよい。なお、ポリマー被覆微粒子を乾燥させる方法としては、従来公知の乾燥方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。得られたポリマー被覆微粒子は、粉体のままで用いてもよいし、適当な溶媒に再分散させた分散体として用いてもよい。
【0049】
ポリマー被覆微粒子を分散媒に再分散させる方法としては、従来公知の分散方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、攪拌機、ボールミル、サンドミル、超音波ホモジナイザーなどを用いた方法が挙げられる。
【0050】
また、ポリマー被覆微粒子が分散体の形態であり、前記ポリマー被覆微粒子を異なる分散媒に分散させる場合には、例えば、分散体を濾過、遠心分離、分散媒の蒸発などにより、ポリマー被覆微粒子を分離した後、置換したい分散媒に混合した後、上記のような方法を用いて分散させるか、あるいは、分散体を加熱することにより、分散体を構成する分散媒の一部または全部を蒸発させて留去しながら、置換したい分散媒を混合する、いわゆる加熱溶媒置換法などを採用することができる。
【0051】
<ポリマー微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子>
紫外線吸収基を有する重合性モノマーを共重合したポリマーの微粒子をコア粒子として用いる場合、本発明の繊維処理剤には、ポリマー微粒子の表面をさらにポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子が配合される。
【0052】
かかるポリマー被覆微粒子は、紫外線吸収基を有する重合性モノマーを共重合したポリマーの微粒子の表面がポリマーで被覆されているので、ポリマー微粒子をそのまま用いるよりも分散性が著しく向上し、ポリマー被覆微粒子が凝集して柄物や色物などの繊維製品を白化させることがなく、また、紫外線吸収基を有する重合性モノマーを共重合したポリマーが光により分解して白色や淡色の繊維製品が黄変することがなく、しかも、衣類などから人体の肌に移行した場合、紫外線吸収基が直接的に接触せず、人体の肌への影響が少ないという利点を有する。
【0053】
ポリマー微粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、250nm以下、より好ましくは5nm以上、150nm以下、さらに好ましくは10nm以上、100nm以下である。ポリマー微粒子の平均粒子径が1nm未満であると、ポリマー微粒子が凝集して高次構造を形成するので、所定の平均粒子径を有するポリマー被覆微粒子を得るのが困難になることがある。逆に、ポリマー微粒子の平均粒子径が250nmを超えると、ポリマー被覆微粒子の平均粒子径が大きくなり、例えば、柄物や色物などの繊維製品が白化することがある。なお、ポリマー微粒子の平均粒子径とは、動的光散乱粒子径測定装置で測定したGaussian解析体積平均粒子径を意味する。
【0054】
ポリマー微粒子は、紫外線吸収基を有する重合性モノマーと、その他の重合性モノマーとを含有するモノマー混合物を乳化重合することにより、製造することができる。乳化重合は、通常、水性媒体中、モノマー混合物をラジカル重合することにより行われ、ポリマー微粒子が水性媒体中に分散した状態のエマルションが得られる。
紫外線吸収基を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(1):
【0055】
【化1】

【0056】
[式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基、−R’−O−(ここで、R’は炭素数2または3の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基を表す)または水素結合を形成し得る元素を有する基(例えば、−NH−、−CHNH−、−OCHCH(OH)CHO−、−CHCHCOOCHCH(OH)CHO−など)を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]
で示されるベンゾトリアゾール系モノマー、下記式(2):
【0057】
【化2】

【0058】
[式中、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、Rは、−O−、−OCHCHO−または−OCHCH(OH)CHO−を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]
で示されるベンゾフェノン系モノマー、下記式(3):
【0059】
【化3】

【0060】
[式中、R10は、直接結合、−(CHCHO)−または−CHCH(OH)−CHO−を表し、nは1〜5の整数を表し、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18およびR19は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニル基またはアルキル基を表す]
で示されるトリアジン系モノマーなどが挙げられる。これらの紫外線吸収基を有する重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの紫外線吸収基を有する重合性モノマーのうち、紫外線吸収性に優れることから、ベンゾトリアゾール系モノマーが特に好適である。
【0061】
上記式(1)で示されるベンゾトリアゾール系モノマーとしては、具体的には、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−2H−メトキシ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−5−(3’−メタクリロイルオキシプロポキシ)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−アクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−2−(2−メタクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−2−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらのベンゾトリアゾール系モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記式(2)で示されるベンゾフェノン系モノマーとしては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。これらのベンゾフェノン系モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記式(3)で示されるトリアジン系モノマーとしては、具体的には、例えば、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ビスジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。これらのトリアジン系モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
その他の重合性モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などを含有する重合性モノマーが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いも2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、ベンゾトリアゾール系モノマーとの共重合性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基を含有する重合性モノマーが好適である。
【0065】
(メタ)アクリロイル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0066】
ビニル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合体モノマーのうち、スチレンなどのスチレン誘導体が好適である。
【0067】
アミノ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン類;アリルアミン、α−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミンなどのアリルアミン類;(メタ)アクリルアミド,N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0068】
エポキシ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類が好適である。
【0069】
カルボキシル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸;これらの不飽和ジカルボン酸のモノエステル化物;これらの不飽和ジカルボン酸の無水物;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸が好適である。
【0070】
水酸基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリカプロラクトン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリオキシエチレン変性やポリオキシプロピレン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0071】
また、モノマー混合物に、その他の重合性モノマーとして、下記式(4):
【0072】
【化4】

【0073】
[式中、R20は水素原子またはシアノ基を表し、R21は酸素原子またはイミノ基を表し、R22およびR23は、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表し、R24は水素原子またはアルキル基を表す]
で示される紫外線安定性モノマーを含めることが好ましい。
【0074】
上記式(4)で示される紫外線安定性モノマーとしては、具体的には、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。これらの紫外線安定性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0075】
重合性モノマーの使用量は、モノマー混合物の全質量に対して、紫外線吸収基を有する重合性モノマーが好ましくは30質量%以上、85質量%以下、より好ましくは40質量%以上、80質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上、75質量%以下であり、その他の重合性モノマーが好ましくは15質量%以上、70質量%以下、より好ましくは20質量%以上、60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上、50質量%以下である。紫外線吸収基を有する重合性モノマーの使用量が30質量%未満であると、繊維製品に充分な紫外線カット機能を付与できないことがある。逆に、紫外線吸収基を有する重合性モノマーの使用量が85質量%を超えると、次の工程で、ポリマー微粒子の表面を被覆するポリマーに、紫外線吸収基を有する重合性モノマーの残留分が組み込まれるので、衣類から人体の肌に移行した場合、皮膚を刺激し、アレルギー症状などを引き起こすおそれがある。なお、紫外線安定性モノマーの使用量は、モノマー混合物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、10質量%以下である。
【0076】
モノマー混合物の使用量は、水性媒体およびモノマー混合物の合計質量に対して、好ましくは25質量%以上、45質量%以下、より好ましくは25質量%以上、35質量%以下である。モノマー混合物の使用量が25質量%未満であると、ポリマー微粒子を効率よく製造できないことがある。逆に、モノマー混合物の使用量が45質量%を超えると、所定の平均粒子径を有するポリマー微粒子を得るのが困難になることがある。
【0077】
反応器に重合性モノマーを添加する際には、重合性モノマーそのものを添加してもよいし、重合性モノマーを乳化剤と水とで乳化させたプレエマルション組成物として添加してもよい。重合性モノマーまたはプレエマルション組成物の添加方法は、一括添加、分割添加、滴下添加のいずれであってもよいが、ポリマー微粒子の表面にポリマーを形成させる効率が高いことから、滴下添加が最も好ましい。
【0078】
重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤である限り、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウムなどの過酸化物;これらの過酸化物に、アスコルビン酸およびその塩、エリソルビン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、クエン酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ロンガリットC(NaHSO・CHO・HO)、ロンガリットZ(ZnSO・CHO・HO)、デクロリン(Zn(HSO・CHO))などの還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤;t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類;ジベンゾイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジドデカノイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0079】
重合開始剤の使用量は、重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重合性モノマーに対して、好ましくは0.001質量%以上、3質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上、2質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下である。
【0080】
モノマー成分の重合反応は、水性媒体中で行われる。ここで、「水性媒体」とは、水、または、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を意味する。水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いると、界面活性剤などの分散安定剤を用いなくても、原料のモノマー成分や生成するポリマー微粒子の分散状態を充分良好に保持することができる。しかし、有機溶媒がポリマー微粒子の分散体に混入することが望ましくない場合は、界面活性剤など分散安定剤を用いることにより、原料のモノマー成分や生成するポリマー微粒子の分散状態を充分良好に保持することができる。
【0081】
水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、水に対する水混和性の有機溶媒の割合は、好ましくは0.1質量%以上、40質量%以下、より好ましくは1質量%以上、30質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上、20質量%以下である。
【0082】
水と併用しうる水混和性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、モノマー成分から合成されるポリマーに対して貧溶媒となる有機溶媒、すなわちモノマー成分は溶解するが、モノマー成分から合成されるポリマーは溶解しない有機溶媒が好適である。
【0083】
分散安定剤を用いる場合、分散安定剤としては、例えば、従来公知の界面活性剤や、ポバールなどの高分子分散安定剤などが挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。分散安定剤の使用量は、水性媒体に対して、好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上、4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上、3質量%以下である。分散安定剤の使用量が0.1質量%未満であると、原料のモノマー成分や生成するポリマー微粒子の分散状態を充分良好に保持できないことがある。逆に、分散安定剤の使用量が5質量%を超えると、ポリマー微粒子を効率よく製造できないことがある。
【0084】
重合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは40℃以上、90℃以下、より好ましくは50℃以上、80℃以下である。また、反応時間も、重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されることはないが、例えば、好ましくは1時間以上、24時間以下、より好ましくは3時間以上、12時間以下である。
【0085】
重合反応後、ポリマー微粒子の分散体が得られる。このポリマー微粒子は、紫外線吸収基を有する重合性モノマーを共重合したことにより紫外線カット機能を有する。なお、濾過などの従来公知の方法により、ポリマー微粒子の分散体から粒子径が100nmを超える粗大粒子を除去しておくことが好ましい。得られた分散体は、ポリマー微粒子を単離すると、取り扱い性に劣るので、そのままポリマー被覆微粒子の製造に用いることが好ましい。
【0086】
ポリマー微粒子の表面をさらにポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子は、下記のような方法により製造することができる。
【0087】
<ポリマー微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子の製造>
ポリマー微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子は、金属酸化物微粒子をポリマー微粒子に置き換えること以外は、金属酸化物微粒子をコア粒子とするポリマー被覆微粒子の製造と実質的に同様にして、製造することができる。すなわち、ポリマー微粒子の表面をさらにポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子は、水性媒体中、ポリマー微粒子の存在下で、重合性モノマーを乳化重合することにより、製造することができる。それゆえ、ここでは、詳しい説明は省略する。
【0088】
実際には、上記で得られたポリマー微粒子の分散体に、ポリマー微粒子の表面を被覆するためのポリマーを構成するモノマー成分を添加して重合させることにより、ポリマー微粒子の表面をさらにポリマーで被覆することができる。このとき、重合開始剤は、ポリマー微粒子の分散体を製造する際に添加した重合開始剤の残存分を用いてもよいし、また、必要に応じて、重合開始剤を追加投入してもよい。また、モノマー成分の添加は、モノマー成分そのままを添加してもよいし、また、モノマー成分を乳化剤と水とで乳化させたプレエマルション組成物として添加してもよい。さらに、モノマー成分の添加方法は、一括添加、分割添加、滴下添加のいずれであってもよいが、ポリマー微粒子の表面にポリマーを形成させる効率が高いことから、滴下添加が最も好ましい。
【0089】
なお、ポリマー微粒子の表面をさらにポリマーで被覆する際に、ポリマー微粒子の分散体中における紫外線吸収基を有する重合性モノマーの残留分は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。紫外線吸収基を有する重合性モノマーが20質量%より多く残存していると、ポリマー微粒子の表面を被覆するポリマーに、紫外線吸収基を有する重合性モノマーが組み込まれるので、衣類から人体の肌に移行した場合、皮膚を刺激し、アレルギー症状などを引き起こすおそれがある。
【0090】
重合反応後、ポリマー微粒子の表面をさらにポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子の分散体が得られる。なお、濾過などの従来公知の方法により、ポリマー被覆微粒子の分散体から粒子径が300nmを超える粗大粒子を除去しておくことが好ましい。得られた分散体は、ポリマー被覆微粒子を単離すると、取り扱い性に劣るので、そのまま繊維処理剤の製造に用いることが好ましい。
【0091】
<界面活性剤>
本発明の繊維処理剤には、ポリマー被覆微粒子の分散性を向上させるために、界面活性剤が配合される。界面活性剤の配合量は、組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以上、50質量%以下、より好ましくは15質量%以上、48質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上、45質量%以下である。界面活性剤の配合量が10質量%未満であると、ポリマー被覆微粒子の分散性が向上しないことがある。逆に、界面活性剤の配合量が50質量%を超えると、本発明の繊維処理剤で繊維製品を処理した後に、繊維製品を繰り返して水洗する必要があり、作業性が低下することがある。
【0092】
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩などが挙げられる。
【0094】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。
【0095】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0096】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシル型の両性界面活性剤、スルホベタイン型の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0097】
<その他の成分>
本発明の繊維処理剤には、ポリマー被覆微粒子および界面活性剤に加えて、その用途に応じて、その他の成分が配合される。その他の成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよく、また、その機能が発揮される量で配合すればよく、特に限定されるものではない。
【0098】
本発明の繊維処理剤が繊維製品の処理に用いられる機能性付与剤である場合、その他の成分としては、例えば、(メタ)アクリル系、グリオキザール系、シリコーン系、ウレタン系、メラミン系、フッ素系などの繊維加工用の水溶性樹脂またはエマルション樹脂、分散剤、溶剤などが挙げられる。
【0099】
本発明の繊維処理剤が洗濯に用いられる機能性付与剤のうち液体洗剤や固体洗剤である場合、その他の成分としては、洗剤成分のほか、従来公知の洗剤に用いられる添加剤、例えば、洗剤ビルダー、アルカリビルダー、ゼオライトなどのキレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素などの汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶剤などが挙げられる。
【0100】
本発明の繊維処理剤が洗濯に用いられる機能性付与剤のうち柔軟剤である場合、その他の成分としては、柔軟化成分のほか、従来公知の柔軟剤に用いられる添加剤、例えば、汚れ放出剤、風合い付与剤、着色剤、香料、消泡剤、殺菌剤、溶剤などが挙げられる。
【0101】
本発明の繊維処理剤が洗濯に用いられる機能性付与剤のうち漂白剤である場合、その他の成分としては、漂白成分のほか、従来公知の漂白剤に用いられる添加剤、例えば、汚れ放出剤、再汚染防止剤、柔軟化剤、蛍光増白剤、香料、消泡剤、酵素、ビルダー、溶剤などが挙げられる。
【0102】
≪紫外線カット機能を付与する繊維処理剤の製造≫
本発明の繊維処理剤は、紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子と界面活性剤と、その用途に応じて、その他の成分とを混合して攪拌することにより、製造することができる。このとき、ポリマー被覆微粒子は、それを製造した際に得られた分散体の形態で用いてもよいし、得られた分散体から単離した形態で用いてもよい。ただし、コア粒子が紫外線吸収基を有する重合性モノマーを共重合したポリマーの微粒子である場合には、ポリマー被覆微粒子を単離すると、取り扱い性に劣るので、分散体の形態で用いることが好ましい。
【0103】
≪紫外線カット機能を付与する繊維処理剤の用途≫
本発明の繊維処理剤は、繊維製品に紫外線カット機能を付与するために繊維製品の処理に用いられる機能性付与剤、ならびに、洗濯後の衣類などに紫外線カット機能を付与するために洗濯に用いられる機能性付与剤(例えば、液体洗剤、固体洗剤、柔軟剤、漂白剤)などの繊維処理剤として用いられる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下、特に断らない限り、「%」は質量%を表す。
【0105】
まず、ポリマー被覆微粒子の分散体の不揮発分を測定する方法について説明する。
【0106】
<不揮発分測定>
ポリマー被覆微粒子の分散体を約1g秤量し、熱風乾燥機を用いて、105℃で1時間乾燥し、乾燥前の質量に対する乾燥後の質量の割合を百分率で表した値(単位は質量%)を不揮発分とした。
【0107】
次に、ポリマー被覆微粒子の製造例について説明する。
【0108】
≪製造例1≫
攪拌機、滴下口、窒素導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、シリカ被覆酸化チタン微粒子(商品名「マックスライトF−TS20」、昭和電工(株)製;平均一次粒子径34nm)180g、メタノール1,020gを添加し、混合した後、超音波を用いて分散処理を行った。得られた分散体について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、シリカ被覆酸化チタン微粒子の平均粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が90nmであった。
【0109】
この分散体を65℃まで昇温し、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加し、さらにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業(株)製)10gを10分間かけて添加した。その後、50℃で3時間熟成した後、室温まで冷却することにより、微粒子表面がシランカップリング剤で処理されたシリカ被覆酸化チタン微粒子の分散体(ST−1)を得た。
【0110】
分散体(ST−1)に含有されている微粒子を遠心分離により分散媒から分離し、イソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、微粒子表面がシランカップリング剤で処理されたシリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体(DT−1)を得た。
【0111】
次に、攪拌機、滴下口、窒素導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、粉体(DT−1)100g、脱イオン水400g、アニオン系反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−10」、(株)ADEKA製)の20%水溶液2.5g、ノニオン系反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープER−20」、(株)ADEKA製)の20%水溶液2.5gを添加し、混合した後、ディスパーと超音波を用いて分散処理を行った。
【0112】
また、別の容器で、メタクリル酸メチル5g、アクリル酸2−エチルヘキシル4.5g、メタアクリル酸0.5g、アニオン系反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−10」、(株)ADEKA製)の20%水溶液2.5g、脱イオン水4gを乳化し、プレエマルション組成物を調製した。プレエマルション組成物1.5gを上記のガラス製反応器に添加した後、反応槽を75℃まで昇温させ、5%過硫酸カリウム水溶液0.5gを添加した。30分間熟成した後、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、その後、攪拌しながら、5時間保持し、シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子の分散体(PC−1)を得た。得られた分散体(PC−1)について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、ポリマー被覆微粒子の平均粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が130nmであった。
【0113】
分散体(PC−1)は、総回収量が520g、不揮発分が21.2%であった。この分散体(PC−1)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで被覆されたものであることが確認された。
【0114】
分散体(PC−1)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子の粉体(PCP−1)を得た。粉体(PCP−1)について、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、9.7%の質量減少が観察された。
【0115】
次に、繊維処理剤として、液体洗剤の製造例について説明する。
【0116】
≪実施例1≫
下記の成分を配合し、充分に攪拌することにより、液体洗剤を製造した。
・シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子の分散体(PC−1):18.9%
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名「ソフタール70H」、(株)日本触媒製):11%
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名「ネオペレックスF−65」、花王(株)製):32%
・ジエタノールアミン:10%
・エタノール:5%
・プロピレングリコール:15%
・脱イオン水:残部。
【0117】
得られた液体洗剤について、下記に記載の方法により、洗剤の衣類への着色性評価、洗剤の衣類への紫外線カット機能付与性評価、および、紫外線カット機能付与繊維の黄変性評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
≪比較例1≫
実施例1において、シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子の分散体(PC−1)に代えて、シリカ被覆酸化チタン微粒子(商品名「マックスライトF−TS20」、昭和電工(株)製;平均一次粒子径34nm)4%に脱イオン水14.9%を混合した後、超音波を用いて分散処理して得られる分散体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液体洗剤を製造した。
【0119】
得られた液体洗剤について、下記に記載の方法により、洗剤の衣類への着色性評価、洗剤の衣類への紫外線カット機能付与性評価、および、紫外線カット機能付与繊維の黄変性評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
≪比較例2≫
実施例1において、シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子の分散体(PC−1)に代えて、市販の有機系紫外線吸収剤(商品名「TINOSORB(登録商標)FR」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)4%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液体洗剤を製造した。
【0121】
得られた液体洗剤について、下記に記載の方法により、洗剤の衣類への着色性評価、洗剤の衣類への紫外線カット機能付与性評価、および、紫外線カット機能付与繊維の黄変性評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
≪比較例3≫
実施例1において、シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子の分散体(PC−1)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、液体洗剤を製造した。
【0123】
得られた液体洗剤について、下記に記載の方法により、洗剤の衣類への着色性評価、洗剤の衣類への紫外線カット機能付与性評価、および、紫外線カット機能付与繊維の黄変性評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
<洗剤の衣類への着色性評価>
洗剤2gを水道水200mLに溶解して洗濯浴を仕立てた。この洗濯浴に黒色木綿布10gを投入し、40℃の温度で15分間洗濯した。洗濯後、すすぎ洗いし、遠心脱水し、160℃でアイロンがけした。この洗濯手順を10回繰り返した。洗濯前に対する洗濯後の黒色木綿布の色差変化を目視で評価した。評価基準を以下に示す。
○:ほとんど変化なし
△:わずかに変色
×:完全に変色。
【0125】
<紫外線カット機能付与繊維の黄変性評価>
洗剤の衣類への着色性評価と同様の手順で白色木綿布の洗濯を10回繰り返した。得られた白色木綿布に、2mW/cmの紫外光を48時間照射し、白色木綿布の変色度を目視で評価した。評価基準を以下に示す。
○:ほとんど変化なし
△:わずかに変色
×:完全に変色。
【0126】
<洗剤の衣類への紫外線カット機能付与性評価>
洗剤の衣類への着色性評価と同様の手順で白色木綿布の洗濯を10回繰り返した。得られた白色木綿布をUVチェッカーの上に広げ、ブラックライトを5分間照射し、UVチェッカーの変色度合いを目視で評価した。評価基準を以下に示す。
○:ほとんど変化なし
△:わずかに変色
×:完全に変色。
【0127】
【表1】

【0128】
表1から明らかなように、界面活性剤と共に、紫外線吸収剤として、シリカ被覆酸化チタンのポリマー被覆微粒子を配合した実施例1の液体洗剤は、繰り返し洗濯しても、黒色木綿布を白化させることなく、また、洗濯後に紫外線を照射しても、白色木綿布を黄変させることなく、白色木綿布を洗濯するだけで、この白色木綿布に充分な紫外線カット機能を付与することができた。
【0129】
これに対し、界面活性剤と共に、紫外線吸収剤として、ポリマー被覆していないシリカ被覆酸チタン微粒子を配合した比較例1の液体洗剤は、洗濯後に紫外線を照射しても、白色木綿布を黄変させることはないが、繰り返し洗濯すると、黒色木綿布が白化し、また、白色木綿布を洗濯するだけでは、この白色木綿布に充分な紫外線カット機能を付与することはできなかった。また、界面活性剤と共に、市販の有機系紫外線吸収剤を配合した比較例2の液体洗剤は、繰り返し洗濯しても、黒色木綿布を白化させることなく、また、白色木綿布を洗濯するだけで、この白色木綿布に充分な紫外線カット機能を付与することができるが、洗濯後に紫外線を照射すると、白色木綿布を黄変させた。さらに、界面活性剤を配合したが、紫外線吸収剤を配合しない比較例3の液体洗剤は、繰り返し洗濯しても、黒色木綿布を白化させることはないが、洗濯後に紫外線を照射すると、白色木綿布をわずかに黄変させ、また、紫外線吸収剤を配合していないので、白色木綿布に紫外線カット機能を付与することができなかった。
【0130】
かくして、紫外線吸収剤、すなわち紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子と界面活性剤とを含有する繊維処理剤は、紫外線吸収剤が分散性に優れるので柄物や色物などの繊維製品を白化させることなく、また、紫外線吸収剤が安定であるので白色や淡色の繊維製品を黄変させることなく、繊維製品に紫外線カット機能を付与できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の繊維処理剤は、繊維製品や洗濯後の衣類などに紫外線カット機能を付与することができるので、繊維製品の処理に用いられる機能性付与剤や洗濯に用いられる機能性付与剤(例えば、液体洗剤、固体洗剤、柔軟剤、漂白剤)などの繊維処理剤に関連する分野で多大の貢献をなすものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線カット機能を有するコア粒子の表面をポリマーで被覆してなるポリマー被覆微粒子と界面活性剤とを含有することを特徴とする紫外線カット機能を付与する繊維処理剤。
【請求項2】
前記コア粒子が酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムから選択される金属酸化物の微粒子である請求項1記載の繊維処理剤。
【請求項3】
前記金属酸化物の微粒子がシリカおよび/またはアルミナで被覆されている請求項2記載の繊維処理剤。
【請求項4】
前記ポリマー被覆微粒子の配合量が、組成物の全質量に対して、0.1質量%以上、10質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維処理剤。
【請求項5】
前記界面活性剤の配合量が、組成物の全質量に対して、10質量%以上、50質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維処理剤。

【公開番号】特開2009−13518(P2009−13518A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174475(P2007−174475)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】