説明

紫外線分解装置

【課題】安全に紫外線ランプが交換可能な安全機構を具備した紫外線分解装置を提供する。
【解決手段】紫外線を遮光する材料で形成された廃液収容器42と、該廃液収容器の中に隙間をもって設置され、紫外線を透過する材料で形成された紫外線ランプ収容器50と、該紫外線ランプ収容器への該紫外線ランプの出し入れを阻害する閉位置と、該紫外線ランプ収容器への該紫外線ランプの出し入れを可能とする開位置との間で選択的に位置付け可能なカバー60と、電源72と、該電源及び該紫外線ランプに接続され、該紫外線ランプを選択的に該電源に通電して発光させるスイッチ74と、該電源と該スイッチと該紫外線ランプとが直列に接続された電気回路上に設置され、該カバーが開位置に位置づけられている際に該電気回路を遮断し、該カバーが閉位置に位置づけられた際に該電気回路を接続して閉回路とするインターロック機構65と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液に含まれる有機物を紫外線を照射して分解する紫外線分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスにおいては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画されたそれぞれの領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハ雄トリートに沿って切断することにより、デバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
また、サファイア基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより、個々の発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)等の光デバイスに分割され、各種電気機器に広く利用されている。
【0004】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削ブレードを有する切削手段と、切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段とを具備している。
【0005】
切削水供給手段によって切削水を回転する切削ブレードに供給することにより切削ブレードを冷却すると共に、切削ブレードによる被加工物の切削部に切削水を供給しつつ切削作業を実施する。
【0006】
一方、半導体ウエーハ等の被加工物の切削装置による切削に先立ち、被加工物は研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、切削装置によって切削されて個々のデバイスに分割される。
【0007】
研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石を有する研削ホイールが回転可能に装着された研削手段と、研削ホイールに研削水を供給する研削水供給手段とを備えていて、被加工物を高精度に所望の厚みに研削できる。
【0008】
ところで、切削装置による切削時に供給された切削水又は研削装置による研削時に供給された研削水には、シリコンや窒化ガリウム系化合物半導体を切削又は研削することによって発生する切削屑又は研削屑が混入される。
【0009】
半導体材料からなる切削屑が混入された加工廃液は環境を汚染することから、廃液処理装置を用いて切削屑又は研削屑を除去した後に、加工水として再利用したり廃棄している(例えば、特開2004−230527号公報参照)。
【0010】
そして、これらの廃液処理装置においては、廃液に含まれる有機物を分解するために紫外線を廃液に照射する機構も含まれ、更に紫外線を照射する紫外線ランプの交換作業も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−230527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
而して、一般的に有機物を分解するための紫外線は非常に波長が短く(例えば185nm)空気中に照射されるとオゾンを発生させる。波長が非常に短い紫外線やオゾンは人体に悪影響を及ぼすために、紫外線ランプの交換作業を行う際などに紫外線ランプが人体に紫外線を照射し得る位置で動作しないための安全装置が必要である。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安全に紫外線ランプの交換ができる安全機構を具備した紫外線分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、廃液に含まれる有機物を紫外線照射により分解する紫外線分解装置であって、紫外線を遮光する材料で形成された廃液収容器と、該廃液収容器の中に隙間をもって設置され、紫外線を透過する材料で形成された紫外線ランプ収容器と、該廃液収容器と該紫外線ランプ収容器との間の空間に廃液を流動させるポンプと、該紫外線ランプ収容器の一部に設けられ、該紫外線ランプ収容器に該紫外線ランプの出し入れを許容する紫外線ランプ搬入出口と、該紫外線ランプ収容器への該紫外線ランプの出し入れを阻害する閉位置と、該紫外線ランプ収容器への該紫外線ランプの出し入れを可能とする開位置との間で選択的に位置付け可能なカバーと、電源と、該電源及び該紫外線ランプに接続され、該紫外線ランプを選択的に該電源に通電して発光させるスイッチと、該電源と該スイッチと該紫外線ランプとが直列に接続された電気回路上に設置され、該カバーが開位置に位置づけられている際に該電気回路を遮断し、該カバーが閉位置に位置づけられた際に該電気回路を接続して閉回路とするインターロック機構と、を具備したことを特徴とする紫外線分解装置が提供される。
【0015】
好ましくは、紫外線分解装置は、一端が該紫外線ランプに接続されたランプ側コードと、該ランプ側コードの他端に接続されたランプ側コネクタと、該電源に接続され、該ランプ側コネクタに選択的に係合可能な電源側コネクタとを更に具備し、該電源側コネクタは、該カバーが閉位置に位置づけられた際に該カバーの内側に位置するように配置され、該ランプ側コードの長さは、該ランプ側コネクタと該電源側コネクタとが係合した際に、該紫外線ランプが該紫外線ランプ収容器に収容された状態でないと該カバーを閉位置に位置づけることができない長さに設定されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、カバーが開いている状態ではインターロック機構が動作しないため、紫外線ランプが点灯することがなく、安全に紫外線ランプを交換できる安全機構を具備した紫外線分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の紫外線分解装置を備えた加工廃液処理装置の透視的斜視図である。
【図2】紫外線ランプが紫外線ランプ収容器から取り出されている状態の本発明実施形態に係る紫外線分解装置の縦断面図である。
【図3】紫外線ランプが紫外線ランプ収容器中に収容されている状態の紫外線分解装置の縦断面図である。
【図4】紫外線分解装置の電気回路図である。
【図5】蓋を閉じた状態の紫外線分解装置の電流経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態の紫外線分解装置を具備した加工廃液処理装置2の透視的斜視図が示されている。4は加工廃液処理装置2のフレームであり、このフレーム4に取り付けられて加工廃液処理装置2のハウジングを構成する各パネルを省略した状態が図1に示されている。
【0019】
加工廃液処理装置2は、加工廃液を収容する廃液タンク6と、廃液タンク6に収容された加工廃液を送給する廃液送給ポンプ8を具備している。廃液タンク6には、図示しない切削装置等の加工装置に装備された加工廃液送出手段から送られる加工廃液が図示しない配管を介して導入される。廃液タンク6の上部に加工廃液を送給する廃液送給ポンプ8が配設されている。
【0020】
廃液送給ポンプ8によって送給される加工廃液は、フレキシブルホースからなる図示しない配管を介して廃液濾過装置10に送られる。廃液濾過装置10は、清水受けパン12と、清水受けパン12上に配置された第1フィルタ14a及び第2フィルタ14bを具備している。第1フィルタ14a及び第2フィルタ14bは、清水受けパン12上に着脱可能に搭載される。
【0021】
第1フィルタ14a又は第2フィルタ14bに導入された加工廃液は、第1フィルタ14a又は第2フィルタ14bによって濾過され、加工廃液に混入している切削屑が補足されて清水に精製され、清水受けパン12に流出する。
【0022】
清水受けパン12はフレキシブルホースからなる配管16によって清水貯水タンク18に接続されており、清水受けパン12に流出した清水はフレキシブルホースからなる配管16を介して清水貯水タンク18に送られ貯水される。
【0023】
貯水タンク18に貯水された清水は、清水送給ポンプ54(図2参照)によって送給され、図示しない配管を介して純水生成装置20に送られる。純水生成装置20は、支持台22と、支持台22に立設された仕切り板24と、仕切り板24の後ろ側の支持台22上に配置された紫外線分解装置26と、仕切り板24の前側の支持台22上に配置されたそれぞれイオン交換樹脂を供えた第1及び第2イオン交換装置28a,28bと、仕切り板24の後ろ側の支持台22上に配置された精密フィルタ30を具備している。
【0024】
清水送給ポンプ54によって送給された清水は紫外線分解装置26に導入され、ここで紫外線が照射されることによって清水中に含まれる有機物が分解されるとともに殺菌される。紫外線分解装置26において有機物が分解された清水は、第1イオン交換装置28a又は第2イオン交換装置28bに導入される。第1イオン交換装置28a及び第2イオン交換装置28bは図示しない電磁開閉弁によって切り替えられて使用される。
【0025】
第1イオン交換装置28a又は第2イオン交換装置28bに導入された清水は、イオンが交換されて純水に精製される。清水がイオン交換されて精製された純水には、第1イオン交換装置28a及び第2イオン交換装置28bを構成するイオン交換樹脂の樹脂屑等の微細な物質が混入されている場合がある。このため、清水がイオン交換されて精製された純水を精密フィルタ30に導入し、この精密フィルタ30によって純水に混入されている樹脂屑等の微細な物質を補足する。
【0026】
純水精製装置20によって精製された純水は、図示しない配管を介して純水温度調整装置32に送られる。純水温度調整装置32に送られた純水は、ここで所定温度(例えば23℃)に調整され、配管を介して図示しない切削装置等の加工装置に装備される加工液供給装置に送られる。
【0027】
34は加工廃液処理装置2を制御するコントローラであり、コントローラ34は廃液処理開始情報等の処理情報を入力する操作盤36を有している。操作盤36には、処理情報等を入力する入力部38と、コントローラ34による処理情報を表示するディスプレイ40が設けられている。
【0028】
次に、図2乃至図5を参照して、本発明実施形態に係る紫外線分解装置26について詳細に説明する。図2を参照すると、紫外線分解装置26から紫外線ランプ66を取り出した状態の紫外線分解装置26の縦断面図が示されている。
【0029】
紫外線分解装置26は、紫外線を遮光する材料で形成された廃液収容器42を備えている。廃液収容器42は、廃液導入口44と、廃液排出口46と、紫外線ランプ収容器50の挿入口48を有している。
【0030】
紫外線ランプ収容器50は廃液収容器42の中に隙間を持って設置され、紫外線を透過する材料から形成されている。廃液収容器42と紫外線ランプ収容器50との間には廃液収容室52が画成されている。
【0031】
ポンプ54を駆動することにより、廃液(図1の説明では清水)が矢印Aに示すように廃液導入口44を介して廃液収容室52内に導入され、紫外線照射によって処理された廃液が矢印Bに示すように廃液排出口46から排出される。
【0032】
紫外線ランプ収容器50は、紫外線ランプの出し入れを許容する紫外線ランプ搬入出口52aを有している。廃液収容器42には電源に接続された電源側コネクタ(コンセント)56が搭載されている。廃液収容器42には更に、電源側コネクタ56に隣接してインターロック機構65を構成する雌型コネクタ58が搭載されている。
【0033】
カバー60が蝶番62により回動可能に廃液収容器42に取り付けられている。カバー60は、紫外線ランプ収容器50への紫外線ランプ66の出し入れを阻害する図3に示した閉位置と、紫外線ランプ収容器50への紫外線ランプ66の出し入れを可能とする図2に示した開位置との間で選択的に位置付け可能である。カバー60にはインターロック機構65を構成する雄型コネクタ64が配設されている。
【0034】
紫外線ランプ66はランプ側コード68を介してランプ側コネクタ(プラグ)70に接続されている。紫外線ランプ66は廃液収容器42に形成した紫外線ランプ収容器50の挿入口48の内径よりも僅かばかり小さな外径を有する大径部67を有している。
【0035】
図3に示すように、紫外線ランプ66を紫外線ランプ収容器50内に収容してランプ側コネクタ70を電源側コネクタ56に嵌合し、更にカバー60を閉めてインターロック機構65の雄側コネクタ64を雌側コネクタ58に嵌合すると、図4及び図5に示すような電源72及びスイッチ74を含んだ電気回路が形成される。電源72及びスイッチ74は図1に示す操作盤36に配設されている。
【0036】
よって、操作盤36に設けられたスイッチ74をオンすることにより閉回路が形成され、紫外線ランプ66が点灯し紫外線を照射する。この紫外線は紫外線を透過する材料で形成された紫外線ランプ収容器50を透過して、廃液収容室52内の廃液に照射され、廃液に含まれる有機物を紫外線照射により分解する。
【0037】
尚、図5に示した電流経路を参照すると明らかなように、廃液収容器42には電源側コネクタ56を電源に接続するための回路と、電源側コネクタ56をインターロック機構65の雌型コネクタ58に接続するための回路がパターニングされている。また、カバー60にはインターロック機構65の雄型コネクタ64を電源72の負極に接続するための回路がパターニングされている。
【0038】
ランプ側コード68の長さは、ランプ側コネクタ70と電源側コネクタ56とを嵌合した際に、紫外線ランプ66が紫外線ランプ収容器50に収容された状態でないとカバー60を図3及び図5に示す閉位置に位置づけることができない長さに設定されている。
【0039】
これは、紫外線ランプ66を紫外線ランプ収容器50内に収容しないでカバー60を閉じた場合に、ランプ側コード68が長いとランプ側コード68をカバー60と廃液収容器42との間に挟んだ状態でインターロック機構65が動作してしまう恐れがあるので、このような恐れを完全に防止しようとする観点から設定されているものである。
【0040】
本実施形態の紫外線分解装置26では、インターロック機構65を設けたために、紫外線ランプ66を紫外線ランプ収容器50内に収容し、ランプ側コネクタ70を電源側コネクタ56に嵌合しても、カバー60を開いた状態でスイッチ74をオンしたとしても、インターロック機構65が接続されないため閉回路が形成されず、カバー60を開けた状態で誤って紫外線ランプ66が点灯されることがない。
【0041】
紫外線ランプ66を点灯させるためには、カバー60を必ず閉めてインターロック機構65を接続して閉回路を形成する必要があるため、例えば紫外線ランプ66の交換作業を行う際などに紫外線ランプ66が人体に紫外線を照射し得る位置で動作することを確実に防止することができ、安全に紫外線ランプを交換できる安全機構を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 加工廃液処理装置
26 紫外線分解装置
36 操作盤
42 廃液収容器
50 紫外線ランプ収容器
52 廃液収容室
54 ポンプ
56 電源側コネクタ
58 雌型コネクタ
60 カバー
64 雄型コネクタ
65 インターロック機構
66 紫外線ランプ
68 ランプ側コード
70 ランプ側コネクタ
72 電源
74 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液に含まれる有機物を紫外線照射により分解する紫外線分解装置であって、
紫外線を遮光する材料で形成された廃液収容器と、
該廃液収容器の中に隙間をもって設置され、紫外線を透過する材料で形成された紫外線ランプ収容器と、
該廃液収容器と該紫外線ランプ収容器との間の空間に廃液を流動させるポンプと、
該紫外線ランプ収容器の一部に設けられ、該紫外線ランプ収容器に該紫外線ランプの出し入れを許容する紫外線ランプ搬入出口と、
該紫外線ランプ収容器への該紫外線ランプの出し入れを阻害する閉位置と、該紫外線ランプ収容器への該紫外線ランプの出し入れを可能とする開位置との間で選択的に位置付け可能なカバーと、
電源と、
該電源及び該紫外線ランプに接続され、該紫外線ランプを選択的に該電源に通電して発光させるスイッチと、
該電源と該スイッチと該紫外線ランプとが直列に接続された電気回路上に設置され、該カバーが開位置に位置づけられている際に該電気回路を遮断し、該カバーが閉位置に位置づけられた際に該電気回路を接続して閉回路とするインターロック機構と、
を具備したことを特徴とする紫外線分解装置。
【請求項2】
一端が該紫外線ランプに接続されたランプ側コードと、
該ランプ側コードの他端に接続されたランプ側コネクタと、
該電源に接続され、該ランプ側コネクタに選択的に係合可能な電源側コネクタとを更に具備し、
該電源側コネクタは、該カバーが閉位置に位置づけられた際に該カバーの内側に位置するように配置され、
該ランプ側コードの長さは、該ランプ側コネクタと該電源側コネクタとが係合した際に、該紫外線ランプが該紫外線ランプ収容器に収容された状態でないと該カバーを閉位置に位置づけることができない長さに設定されている請求項1記載の紫外線分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−269234(P2010−269234A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122265(P2009−122265)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】