説明

紫外線吸収フィルムおよびこれを用いたパネル用フィルター

【課題】生産性に優れ、波長410nmの光を遮断しても透明感に優れ、可視領域の透過率に優れた紫外線吸収フィルム、及び、該フィルムを用いた赤外線吸収色素の劣化防止性能に優れ、赤外線吸収層及びハードコート層に対する接着性に優れたプラズマディスプレイパネル用フィルターを提供する。
【解決手段】蛍光増白剤及び紫外線吸収剤を含有するフィルムであって、波長410nmの光線透過率が30%以下であり、且つ、波長430nmの光線透過率が70%以上である紫外線吸収フィルム。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物及び環状イミノエステル系化合物が、蛍光増白剤としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。一般式(1)中R及びRは水素原子、アルキル基等を表し、R及びRはアルキル基を表す。[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線吸収フィルム及びそれを用いたパネル用フィルターに関する。より詳しくは、紫外線吸収性と可視光透過率に優れた、プラズマディスプレイ用フィルターに好適な紫外線吸収フィルム及びそれを用いたプラズマディスプレイから放射される近赤外線によるリモコンや伝送系光通信における誤動作を防止する目的でディスプレイ前面に設置されている赤外線吸収層の紫外線による劣化が抑制されたプラズマディスプレイパネル用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年大型の壁掛けテレビをはじめ、種々の電子機器の表示パネルとしてプラズマディスプレイパネルが使用され、その需要が増大している。今後もその数はますます増加するものと考えられる。
プラズマディスプレイパネル用フィルターは、近赤外線カット層、電磁波カット層、表面への蛍光灯等の外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止層などの機能を有する層を目的に応じて複数層組み合わせて構成される。特に、近赤外線カット層は、プラズマディスプレイパネルから放射される近赤外線に起因するリモコンや伝送系光通信における誤動作を防止する目的でディスプレイ前面に設置され、重要な機能を有している。
【0003】
しかしながら、近赤外線カット層に含有される所謂赤外線吸収色素、例えば、ジインモニウム化合物や含フッ素フタロシアニン系化合物などは、太陽光、白熱灯、ハロゲン電球、水銀灯等に由来する紫外線によって徐々に分解し、その性能が長期間の使用によって低下するという問題があった。
【0004】
このため、パネル用フィルターを構成する基材フィルムに紫外線吸収剤を含有する層をコーティングにより塗工する方法が提案され、例えば、プラズマディスプレイパネル用フィルターの片面に、紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル))ベンゾトリアゾールのシクロヘキサノン溶液をバーコーダーで塗工、乾燥するすることで紫外線吸収層を積層する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)が、この紫外線吸収層では、赤外線吸収色素の劣化を防止するのに実用上十分な紫外線遮断効果を得ることができないのが現状である。
【0005】
また、他の方法として、基材フィルムに直接紫外線吸収剤を練りこんで、基材フィルム自体に紫外線吸収能を付与する方法が開示されており(例えば、特許文献2参照。)、この方法によれば赤外線吸収色素の劣化を防止するのに十分な紫外線遮断効果を得ることができる。しかし、ここで紫外線吸収剤として例示されている環状イミノエステル系化合物は、一般的な紫外線吸収剤に比較すると昇華しにくい点では好適な材料であるが、樹脂の押し出し工程において溶融押し出しされた場合には昇華物はゼロではなく、またフィルム表面にブリードアウトする性質を有するため、製造装置に昇華物等が付着し、製膜時間の経過とともに工程を汚染するという問題が生じる。このような紫外線吸収剤は、フィルムに付着し異物欠点を生じる、或いは、製膜後の縦延伸工程での予熱、延伸、冷却ロールに付着しキズを発生させる等の問題を引き起こす。汚染物質の影響を低減するため、例えば、ロール清掃作業を頻繁に行うことができるが、この方法ではコストアップや生産性低下の原因となる。また、紫外線吸収剤の所望されない昇華を抑制するためには、低温で樹脂を溶解、押し出す方法も考えられるが、低温では十分な樹脂の流動性が得られないため、フィルターの濾過圧が上昇し、高精度の濾過が困難となるといった他の問題を生じる。
【0006】
さらに、このような紫外線吸収フィルムでは、横延伸工程で再度高温にさらされるために、この工程でも紫外線吸収剤のが昇華が起こり、長期にわたり設備内に蓄積、その後フィルムに落下、付着し異物欠点となる懸念があり、これら異物欠点、キズは要求品質の厳しい光学用フィルムとしては致命的な欠陥となる。
【0007】
一般に、紫外線吸収能を有する光学フィルムは、黄色味を抑えるために吸収端が380nmより短波となっているものが大部分である(特許文献1乃至特許文献3参照。)。吸収端が短波であるということは紫外線遮断効果が低いことを意味するため、特にUVAを遮断するため410nmまでの光をカットすることが望まれている。
【0008】
しかしながら410nmまでの光をカットすると、通常黄色味が強くなる。これは色調調整用の染顔料を添加することで改善できるが、可視領域の透過率を犠牲にする短所がある。このため、紫外線吸収剤とともに蛍光増白剤を配合し、紫外線照射による黄変度を抑えた耐候性、白色性に優れた白色積層ポリエステルフイルムが提案されているが(例えば、特許文献4、5参照)、この方法によっても、可視領域における光透過性は十分とは言い難い。
【0009】
以上述べた通り、ロール汚れ等の工程汚染がなく生産性に優れ、410nmまでをカットしても黄色味がなく透明感に優れ、可視領域の透過率を犠牲にすることなく、十分な赤外線吸収色素の劣化防止性能を有し、赤外線吸収層及びハードコート層に対する接着性に優れたプラズマディスプレイパネル用フィルターの基材及びプラズマディスプレイパネル用フィルターの製造は困難であった。
【特許文献1】特開2002−71942号公報
【特許文献2】特開2003−1703号号公報
【特許文献3】特開2005−189553号公報
【特許文献4】特開平11−291432号公報
【特許文献5】特開平11−268214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来技術の問題点を解消するために完成されたものであり、その目的とするところは、生産性に優れ、紫外線吸収剤に起因する工程汚染がなく製造することができ、380nmより長波域である410nmまでの紫外線吸収性を達成しながらも、フィルム自体に黄色味がなく透明感に優れ、可視領域の透過率を犠牲にすることのない、プラズマディスプレイパネル用フィルターの基材として有用な紫外線吸収フィルム、及び、本発明の紫外線吸収フィルムを用いた、赤外線吸収色素の劣化防止性能に優れたプラズマディスプレイパネル用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は以下の構成を有する。
<1> 蛍光増白剤及び紫外線吸収剤を含有するフィルムであって、波長410nmの光線透過率が30%以下であり、且つ、波長430nmの光線透過率が70%以上であることを特徴とする紫外線吸収フィルム。
<2> 前記フィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムであり、且つ、波長430nmの光線透過率が75%以上であることを特徴とする<1>に記載の紫外線吸収フィルム。
<3> 前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系化合物及び環状イミノエステル系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記二軸配向ポリエステルフィルムが実質的に粒子を含まないことを特徴とする<2>に記載の紫外線吸収フィルム。
<4> 前記蛍光増白剤が、下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする<2>又は<3>に記載の紫外線吸収フィルム。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(I)中R及びRは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表わし、R及びRはアルキル基を表わす。[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表す。
<5> <2>乃至<4>のいずれか1項に記載の紫外線吸収フィルムの少なくとも片面に赤外線吸収層が設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用フィルター。
【0014】
一般に、蛍光増白剤は約320〜約410nmの波長の光を吸収して、約410〜約500nmの波長の光を放射する性質を有する化合物よりなる。これらの蛍光増白剤で染められた織物は、本来の黄色い反射光の他に新たに蛍光増白剤により発光される約410〜約500nmの波長の青色光が付加されるため反射光は白色になり、かつ蛍光効果による分だけ可視光のエネルギーが増加するため、結果として染められた織物自体は目視で白色が増したように感じられ、増白されることは知られているが、本発明者らは検討の結果、紫外線吸収剤を含有する樹脂材料でも同様の効果が生じることを見出した。即ち、熱可塑性樹脂に紫外線吸収剤を添加した成形品で、410nm以下の紫外線をカットするように紫外線吸収剤の添加量を調整すると反射光は黄色く感じられるが、この樹脂材料に蛍光増白剤を適量添加することで反射光が白色化することを見出して、本発明を完成したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生産性に優れ、紫外線吸収剤に起因する工程汚染がなく製造することができ、380nmより長波域である410nmまでの紫外線吸収性を達成しながらも、フィルム自体に黄色味がなく透明感に優れ、可視領域の透過率を犠牲にすることのない、プラズマディスプレイパネル用フィルターの基材として有用な紫外線吸収フィルム、及び、本発明の紫外線吸収フィルムを用いてなる赤外線吸収層の経時劣化が抑制され、紫外線吸収能と可視光透過性に優れたプラズマディスプレイパネル用フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
<紫外線吸収フィルム>
まず、本発明の紫外線吸収フィルムについて述べる。本発明の紫外線吸収フィルムは、蛍光増白剤及び紫外線吸収剤を含有するフィルムであって、波長410nmの光線透過率が30%以下であり、且つ、波長430nmの光線透過率が70%以上であることを特徴とする。このフィルムは、フィルム基材として用いられる樹脂材料に紫外線吸収剤と傾向増箔剤とを含有させ、製膜されてなる。
【0017】
本発明において用いられる紫外線吸収フィルムを構成するフィルムとしては、所望の強度と可視光透過性を有する樹脂からなるフィルムを適宜選択して使用しうるが、例えば、熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、非晶質オレフィン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ケイ素樹脂、フッ素樹脂等から選択される樹脂からなるフィルムが挙げられ、ポリエステルフィルムが好ましい。
フィルム基材は、複数種の樹脂からなるもの、複数の構成成分を含む共重合体、或いは、複数層からなる積層体であってもよい。
ポリエステルフィルムとしては、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、若しくはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体よりなるフィルムが挙げられるが、これらの中でも2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが力学的性質、耐熱性、透明性、価格等の点から特に好適である。
以下、好ましいフィルム基材であるポリエステル系樹脂を用いた態様について説明する。
【0018】
前記ポリエステル系構成成分を主成分とする共重合体を用いる場合、他の構成成分としては、ジカルボン酸成分が挙げられ、より具体的には、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリト酸及びピロメリト酸等の多官能カルボン酸等が用いられる。またグリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が用いられる。
本発明においては、フィルム基材は、ポリエステル系の構成成分が主成分であることが好ましく、ポリエステル系樹脂の有するフィルム強度、透明性、耐熱性を維持するといった観点からは、前記の如き併用可能な共重合成分の重量比率は、20重量%未満であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るフィルム基材としてのポリエステル系フィルムの形成に使用する樹脂ペレットの固有粘度は、0.45〜0.70gl/gの範囲が好ましい。この範囲において、耐引き裂き性向上効果が達成され、且つ、濾過圧を適切な範囲に維持しうるため、高精度濾過を行うことができる施しうる。
【0020】
本発明に係る基材フィルムは、後述するように通常フィルム状に溶融押出し、これを金属ロールでキャストして製膜する。このキャストの際に、溶融フィルムと金属ロールとの密着性を高めるべく、静電密着させることが推奨される。よって基材を構成するポリエステル樹脂は溶融比抵抗値が低いことが望ましい。
具体的には上記ポリエステル樹脂の275℃における溶融比抵抗値は、0.45×10Ωcm以下であることが好ましく、0.30×10Ωcm以下であることがさらに好ましい。他方ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値があまり低過ぎると基材フィルムが静電気の影響を受け易くなり、ハンドリング性が低下する傾向にある。よって上記ポリエステル樹脂の275℃における溶融比抵抗値は0.10×10Ωcm以上であることが好ましく、0.12×10Ωcm以上であることがさらに好ましい。なお本発明で規定する溶融比抵抗値は、後述する実施例において採用する方法によって測定される値である。
【0021】
ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値は、該ポリエステル樹脂中にマグネシウム化合物およびリン化合物を含有させることでを前記好ましい範囲に制御することができる。
マグネシウム化合物中のマグネシウムは、ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値を低下させる作用を有する。このような作用を有効に発揮させると共に、マグネシウム化合物に起因する異物の生成やポリエステル樹脂の着色を抑える観点から、ポリエステル樹脂中のマグネシウム化合物量は、マグネシウム原子換算で40ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは45ppm以上であって、70ppm以下、好ましくは65ppm以下とすることが推奨される。
【0022】
リン化合物は、それ自体ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値を低下させる作用は有しないが、前記マグネシウム化合物と組み合わせることにより、溶融比抵抗値の低下に寄与し得る。その理由は明らかではないが、リン化合物を含有させることにより異物の生成を抑制し、電荷担体の量を増大させることができるのではないかと考えられる。よって、マグネシウム化合物に起因する前記作用を有効に発揮させると共に、リン化合物に起因する異物の生成を抑える観点から、ポリエステル樹脂中のリン化合物量は、リン原子換算で10ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは15ppm以上であって、55ppm以下、好ましくは50ppm以下とすることが推奨される。
【0023】
本発明では、基材フィルム中に易滑性を付与するための粒子を含んでもよい。基材フィルムが多層である場合、該基材フィルムの中間層、及び最外層各層に前記粒子を含んでもよいが、透明性の観点から最外層にのみ前記粒子を含むのが好ましい。この場合の粒子としては、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アンモニウム、リン酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、炭化珪素、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。
これらのなかでも、シリカがポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適である。
これらの平均粒径は1〜3μmであることが好ましい。また、粒子の添加量は透明性と滑りの観点から0.003〜0.01重量%が好ましい。
【0024】
なお、更に高い透明性を確保するためには、基材フィルム中に易滑性を付与するための粒子を実質的に存在しないことが好ましい。なお「粒子が実質的に存在しない」とは、接着性改質樹脂層を積層しないフィルム基材自体において、粒子の存在量が蛍光X線分析法の検出限界以下であることを意味する。
【0025】
ポリエステル系基材フィルムに易滑性を付与する手段としては、前記の如くフィルム基材自体に粒子を添加する方法の他、フィルム基材にインラインで易接着層を積層する方法がある。このように、インラインで積層される易接着層に均一な粒径の微小粒子含有により滑り性をもたせておけば、良好な巻き取り性、キズ発生防止機能を付与できるため、ポリエステル系基材フィルム中への易接着性を目的とした粒子の添加は特に必要はない。
【0026】
フィルム基材に積層される易接着層中に含有させうる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができ、なかでも、シリカがポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く、高い透明性が得やすいため最も好適である。
易接着層中に含まれる粒子の平均粒径は1μm〜3μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明の紫外線吸収フィルムの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、最適な用途であるプラズマディスプレイ用フィルターのベースフィルムとして用いる場合、優れた強度、寸度安定性、取り扱いやすさの観点から、厚さ50μm以上の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましく、基材フィルムの厚みの上限も特に限定されないが、取り扱い性や光学用部材としての価格の面から、300μm以下であることが推奨される。
上記厚みであれば、その構成素材である熱可塑性樹脂の種類は特に限定されない。
【0028】
次に本発明の紫外線吸収フィルムにおいて基材フィルムに添加される紫外線吸収剤について説明する。
一般に紫外線吸収剤は紫外線を吸収して熱に返還する性質を有する化合物であり、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤に分類されるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。さらに有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、環状イミノエステル系等、及びこれらの化合物の組み合わせが挙げられる。
【0029】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、アデカスタブLA−31(商品名:旭電化社製)等のように、紫外線吸収骨格がメチレン等を介して2量化した分子量の大きい化合物もまた好ましく用いられる。
【0030】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2、2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4オン)。
【0031】
1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン。
【0032】
2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)。
【0033】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0034】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、p−n−オクチルフェニルサリチレート等を挙げることができる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば2−エチルへキシルー2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等を挙げることが可能である。
【0035】
また2種以上の紫外線吸収剤を併用することも、本発明の好ましい実施形態の1つである。以上説明した紫外線吸収剤の中でも、耐久性の観点からベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。又別の観点から、紫外線吸収剤は分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。
【0036】
次に、本発明において用いられる蛍光増白剤について説明する。
フィルム基材に添加される蛍光増白剤は、通常市販されている化合物、あるいは新規物質の中から、耐久性、溶解性の観点から紫外線吸収フィルムの使用目的に応じて任意に選択することができる。以下にそれらの具体例〔例示化合物(1)〜例示化合物(12)〕を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
本発明において使用しうる他の蛍光増白剤としては、下記一般式(I)で表わされるものが挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
一般式(I)中R及びRは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表わし、R及びRはアルキル基を表わす。[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表す。
【0042】
本発明の一般式(I)におけるR、R、R、R及び[A]について以下に説明する。R及びRは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表わすが、好ましくは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルコキシ基を表わす。具体的なR及びRとしては水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。より好ましいR及びRは水素原子またはアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0043】
及びRはアルキル基を表わすが、好ましくは炭素数1〜16のアルキル基である。具体的なR及びRとしてはメチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−ヘキサデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。より好ましいRはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基であり、さらに好ましくはt−ブチル基またはシクロヘキシル基である。より好ましいRはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−ヘキサデシル基、2−エチルヘキシル基であり、さらに好ましくはメチル基、n−ブチル基、n−オクチル基または2−エチルヘキシル基である。
【0044】
[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表すが、好ましくは炭素数6〜40の置換アリール基または炭素数8〜40の置換エテニル基である。より好ましくは以下に示す置換アリール基またはエテニル基である。
【0045】
【化5】

【0046】
前記、各式中R1’、R2’、R3’、R4’は前記一般式(I)におけるR、R、R、Rと同義である。mは1〜5の整数を表わす。X及びYはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基または水酸基を表わす。
【0047】
アミノ基、水酸基以外のX及びYを詳しく述べれば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、1−ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、オクチルアミノ基、ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基等のアルキルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基等のアリールアミノ基等を挙げることができる。より好ましいX及びYはアリール基、アルコキシ基またはアニリノ基である。
Zはシアノ基、アルコキシカルボニル基を表わす。
【0048】
一般式(I)で表わされる化合物は、より好ましくは下記一般式(II)で表わされる化合物である。
【0049】
【化6】

【0050】
一般式(II)中、R及びRは前記一般式(I)におけるRと同義であり、R及びRは前記Rとそれぞれ同義である。nは1又は2を表わす。これらの化合物は特開平11−29556号公報に記載の方法で合成することが可能である。
【0051】
以下に、本発明に使用しうる一般式(II)で表される蛍光増泊剤の具体例〔例示化合物(13)〜例示化合物(30)〕を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
本発明においてポリエステルに添加される蛍光増白剤及び紫外線吸収剤の量は、蛍光増白剤、紫外線吸収剤それぞれの分子量、物性、性質等によって変化するので一義的に定めることはできないが、当業者はいくらかの試験をすることによって容易にこれを決定することができる。
前記蛍光増白剤及び紫外線吸収剤の添加量は、ポリエステルに対し、両者の総量で0.1〜5重量%が好ましく、さらには0.3〜3重量%が好ましい。添加量が0.1重量%未満では紫外線劣化防止効果が小さく、逆に5重量%を越えるとポリエステルフィルムの製膜性が低下し、いずれも好ましくない。
また、十分な紫外線吸収能の発現、及び、後述するパネル用フィルターに適用した場合の赤外線吸収層の保護の観点から、フィルム基材中の紫外線吸収剤の含有量は、少なくとも0.1重量%であることが好ましい。
前記蛍光増白剤及び紫外線吸収剤の混合比は、通常モル比で10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、30/70〜70/30 の範囲であることがより好ましい。
【0057】
基材フィルムに蛍光増白剤及び紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を適宜組み合わせて採用し得る。例えば、予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリエステル原料とをブレンドしマスターバッチを作製しておき、基材フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリエステル原料を混合する方法などによって配合することができる。
【0058】
この時、マスターバッチの蛍光増白剤及び紫外線吸収剤濃度はこれらを均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5〜30重量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間で押し出すのが好ましい。
上記温度範囲においてマスターバッチの粘度が適切に維持され、均一な分散性の確保が可能となる。また、押し出し時間がこの範囲において、蛍光増白剤及び紫外線吸収剤の均一な混合が可能となる。このマスターバッチの調製時に、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤などをを添加してもよい。
【0059】
このマスターバッチを常法により製膜することで本発明の紫外線吸収フィルムが得られる。本発明においては二軸配向熱可塑性フィルムが好適であるため、フィルムの製膜は二軸延伸法により実施されることが好ましい。
かくして得られた本発明の紫外線吸収フィルムは、紫外線吸収剤と蛍光増白剤とを含有するため、波長410nmの光線透過率が30%以下であり、且つ、波長430nmの光線透過率が70%以上、好ましくは75%以上が達成される。
この光透過率は、公知の分光光度計などを用いて測定することができる。
【0060】
(紫外線吸収の製造方法)
本発明のプラズマディスプレイ用フィルタに有用な紫外線吸収フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、製造方法は当然これに限定されるものではない。
【0061】
PETペレットを移送するには通常、所定の配管を用いて空送で行うが、この際の空気は埃混入防止のためHEPAフィルターを用い、清浄化された空気を用いることが好ましい。用いるHEPAフィルターは公称濾過精度0.5μm以上の埃を95%以上カットの性能を有するフィルターを用いるのが好ましい。
【0062】
まず、PETのペレット、蛍光増白剤及、及び、紫外線吸収剤を所定の割合でブレンドしてなるマスターバッチを十分に混合する。上記マスターバッチは、易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないペレットである。混合した原料ペレットを十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、シート状に溶融押し出しし、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸PETシートを製膜する。この際、押出機熔融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280〜290℃、その後のポリマー管、フラットダイまでの樹脂温度は270〜280℃とすることが好ましい。
また、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れるという観点から、ステンレス焼結体の濾材を用いることが好適である。
【0063】
高精度濾過処理における濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことで生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で重要な工程である。
【0064】
原料ポリマー中に存在する異物、あるいは蛍光増白剤及び紫外線吸収剤が昇華しロールを汚染し、それらがフィルムに付着したものが存在すると、製膜時の延伸工程でこの異物の周囲でポリエステル分子の配向が乱れ、光学的歪みが発生する。この光学的歪みのため、実際の異物の大きさよりもかなり大きな欠点として認識されるため、著しく品位を損なう。例えば大きさ20μmの異物でも、光学的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。高透明なフィルムを得るためには、基材フィルム中に易滑性を付与するための粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度に少量しか含有させないことが望ましいが、粒子含有量が少なくフィルムの透明性が高くなるほど、微小な異物による光学欠点はより鮮明となる傾向にある。また、フィルムが厚手になるほど、フィルム単位面積当たりの異物の含有量が薄手のフィルムより多くなる傾向にあり、一層この問題は大きくなる。
【0065】
一方、フィルムの透明性を高くするために、基材フィルム中に粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度に少量しか含有させないと、フィルムの易滑性が不十分となりハンドリング性が悪化する。そのため、易接着層に易滑性付与を目的とした粒子を添加する必要があり、これらの粒子は透明性を確保するために可視光線の波長以下の極めて平均粒径が小さい粒子を用いる必要がある。しかし、これらの微細粒子は粗大凝集物となりやすく、この粗大凝集物を含有する易接着層を基材フィルムに積層すると光学欠点の原因となる。
【0066】
前記基材フィルム表面には、凸部の高さが1μm以上で最大径が20μm以上の形状を有し、凸部に隣接している所から100μm以内の凹部の深さが0.5μm以上の異物が、10個/m以下であることが好ましく、更には5個/m以下であることが好ましい。
【0067】
次に最外層用としてPETのペレット単独、中間層用として蛍光増白剤及び紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとPETのペレットを所定の割合で混合、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合の積層比率について、最外層(片側)の全厚みに対する比率は3〜15%が好ましく、更には5〜10%がより好ましい。最外層(片側)の比率が3%より低い場合、中間層に含まれる有機系蛍光増白剤及び紫外線吸収剤のブリードアウトを十分に防止することができない。逆に15%より高いと、中間層の紫外線吸収効果が不足する場合があり好ましくない。また最外層の紫外線劣化防止を目的として、最外層にブリードの問題がない公知の高分子タイプの紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0068】
得られた未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向( 縦方向: 積層フィルム製造時の走行方向)に2.5〜5.0倍延伸し、一軸配向フィルムを得る。なお、この一軸延伸を行う工程を「縦延伸工程」という場合がある。
【0069】
該積層フィルムの表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上のキズは、100個/m以下である。好ましくは、上記キズの個数は30個/m以下、さらに好ましくは10個/m以下である。上記キズの個数をこのような範囲とすれば、光学欠点による問題は生じない。
【0070】
この際、フィルムのキズの発生を防止するためには、(a)フィルム表面そのものやロール表面、特にフィルムと接触するロール表面にキズの原因となる「欠点」を発生させないこと、(b)接触するロールの表面上でフィルムが縦方向および横方向にずれないようにすることが重要である。
【0071】
上記の「欠点」とは、ロール表面に形成されるキズ、堆積物、付着物、異物などの、フィルムと接触することによりフィルムに微細なキズを発生させるすべての要因を指す。よって、これらの欠点を無くすことで、フィルム表面へのキズの発生を低減できる。上記欠点の発生を防止するためには、例えば、下記に挙げる方法を採用することができる。
【0072】
積層フィルム製造時に用いるロールの表面粗度をRaで0.1μm以下とする方法や、堆積物、付着物、異物などのキズ発生要因のロール表面への堆積を防止するため、縦延伸工程(以下、「MD工程」という)の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置する方法が挙げられる。
【0073】
また、積層フィルム製造工程におけるクリーン度をクラス1000以下(1立方フィート当たりの体積中に0.5μm以上の粒子が1000個以下)とする方法があり、特にロール周りはクラス100以下、キャスト工程で反ロール面を冷却するための送風冷却装置についても、クラス100以下のクリーンエアを使用することが好ましい。
【0074】
さらに、積層フィルム製造前に、研磨材を用いてロール上の欠陥を削り取る作業などによりロールの掃除を行う方法も挙げられる。また、静電気の発生によってフィルムがゴミなどを吸着し、欠点となることを避けるため、フィルムの帯電量が全工程で±1500V以下になるよう除電装置を設ける方法も挙げられる。基材フィルムのキャストから後述するテンターまでの工程はキズが主に発生し易い工程であり、この区間をコンパクトにレイアウトし、通過時間を5分以下にすることも欠点の発生抑制に寄与し得る。
【0075】
ロールについては、ロール表面に水膜を形成する、或いは、エアフローティングタイプのロールを使用するなどの手段により、フィルムにロール表面の欠点が直接接触しない構造にすることができる。
ここで、フィルムから析出するオリゴマー量を1000ppm以下とすることで、ロール表面への欠点の付着を減少させ、ロール表面の欠点を低減することができる。
また、後述する延伸後の巻き取り工程において、フィルムの幅方向(横方向:積層フィルム製造時の走行方向に垂直な方向)の端部側の表面を突起付きのローラで押圧して、その部分に凹凸部を形成すると共に、該凹凸部が形成されたフィルムを巻取り機構でロール状に巻き取るよう構成し、さらに該突起付きのローラにおける突起を先窄まり状に形成し、該突起の頂部に丸みをつけ、その頂面の曲率半径を0.4mm以下に設定することで、フィルムの巻取り装置において、フィルムと欠点が接触しないようにすることもできる。
【0076】
フィルム成形に際し、ロール表面上におけるフィルムのずれやフィルム上のキズを抑制する方法としては、例えば下記に挙げる方法が採用可能である。
ロールの小径化、サクションロールの使用、静電密着、パートニップの密着装置の使用、などの手段を適用してフィルムのロールへの密着力を増大させることにより、長いキズの発生を抑えることができる。特にロールを小径化することは、フィルムのずれ量の細分化にもなり、長いキズの発生防止に寄与し得る。また、キズの多くはロール幅方向の端部に向かうほど、長さおよび頻度が増加し、ロール幅方向の端部においてはキズのない部分を得ることが困難であるため、キズの少ないロール幅方向の中央付近をトリミングすることで、キズの少ないフィルムを得ることが可能となる。
【0077】
縦方向キズまたは横方向キズの発生要因としては、夫々フィルムの縦方向または横方向での、膨張、収縮などの変形も挙げられる。これらのフィルムの変形は、主としてフィルムの温度変化によって生じる。よって、例えば、ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制することで、こうした温度によるフィルム変形量を小さくでき、縦方向キズや横方向キズの発生を防止できる。具体的には、ロール1本当たりでのフィルムの温度変化を40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下、特に好ましくは5℃以下とすることが推奨される。
【0078】
ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制する方法としては、例えば、ロール間での空中冷却、水槽を通過させる水中冷却などが挙げられる。さらに、ロール本数を多くすることにより、1本当たりのロール表面でのフィルムの温度変化を低減できる。好ましくは、MD工程でのロール数を10本以上とするのがよい。
【0079】
また、複数のロールの相対的な速度の関係を、フィルムの温度や張力による変形量に対して最も近い速度プロファイルに設定することでフィルムの縦方向のズレを低減することができる。
【0080】
さらに、後述する接着性改質樹脂層形成用の塗布液の塗布工程において、乾燥条件をドライヤー区間の初期で乾燥を完了し、出口にかけて冷却することにより、ドライヤー出口でのフィルム温度を40℃以下として、温度変化によるフィルムのずれを低減することもできる。
【0081】
フィルム走行時の張力は、低すぎると把持力が下がってずれが発生し、高すぎても応力変形が大きくなってずれが発生するため、最適な張力範囲である4.9〜29.4MPaになるように駆動ロール速度と張力調整手段によって調節することが好ましい。また、製造時の使用温度におけるフィルムとロール間の摩擦係数を0.2以上とすることでロール表面でのフィルムのずれを抑制することができる。
【0082】
一軸延伸後のフィルムには、フィルムを搬送するために縦方向に応力がかかり、さらにこの直交方向にポアソン比と弾性率に見合った変形応力が発生するため、横方向のずれが生じる。この応力を下げるため、およびフィルムが持つ熱収縮応力を下げるため、フィルム物性に悪影響を与えない範囲で低配向化させることが好ましい。具体的には、X軸方向の屈折率差[(一軸延伸フィルムのX軸方向の屈折率)−(未延伸フィルムのX軸方向の屈折率)]の値が0.01〜0.12となる低配向の一軸延伸フィルムとすることが推奨される。
【0083】
本発明の紫外線吸収フィルムをプラズマディスプレイパネル用フィルターなどに適用する場合など、この紫外線吸収フィルムを適切な他のフィルムや硬質基材に接着して用いる場合には、このフィルムの延伸工程中または工程後の任意の段階で、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、赤外線吸収層やハードコート層に対する十分な接着性を得るために易接着層を塗布法により形成し、積層してもよい。
以下、任意に設けられる紫外線吸収フィルム上の易接着層について詳細に説明する。
上記易接着層を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えばリバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0084】
易接着層塗布液を塗布する工程は、通常の塗布工程、すなわち二軸延伸し熱固定した基材フィルムに塗布する工程でもよいが、該フィルムの製造工程中に塗布するのが好ましい。さらに好ましくは結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水溶液中の固形分濃度は通常30重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。該水性塗布液は、走行しているフィルム1mあたり0.01〜5g、好ましくは0.2〜4gが付着されるように塗工される。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、延伸および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、ポリエステル系績層フィルムとなる。十分な赤外線吸収層やハードコート層との密着性を得るためには、この時のコート量がフィルム1mあたり0.01g/m以上であって、100℃/1分以上の熱処理が好ましい。上記、塗布液を塗布する際のクリーン度は埃の付着を少なくするためクラス1000以下が好ましい。
【0085】
易接着層を構成する樹脂としては、例えば共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂などが挙げられ、少なくとも1つ以上を使用することが好ましい。なかでも、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂が優れた接着性を有し特に好ましい。
【0086】
易接着層形成に用いる塗布液調整について、以下に共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる塗布液の一例について説明する。
本発明の易接着層に用いる共重合ポリエステル系樹脂とは、分岐したグリコール成分を構成成分とする。ここで分岐したグリコール成分とは、例えば2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。これら分岐したグリコール成分は、全グリコール成分の中に好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。
【0087】
共重合ポリエステル系樹脂に構成成分として含有されるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。
【0088】
上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、その他のものとしてスルホテレフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルフォフェノキシ)イソフタル酸及びその塩類等を挙げることができる。
【0089】
本発明の易接着層に用いるポリウレタン樹脂とは、例えばブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下ブロックと言う)した熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに上記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0090】
上記樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる末端イソシアネート基を有する化合物である。
【0091】
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。
【0092】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキシド及び、プロピレンオキシド等アルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、あるいはそれらのランダム重合、ブロック重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物がある。ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。
【0093】
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
【0094】
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。上記(3)のウレタンポリマーを合成するには通常、上記鎖伸長剤を用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、数分から数時間反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。遊離のイソシアネート基の含有量は10重量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7重量%以下であるのが好ましい。
【0095】
得られた上記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下が好ましい。その後水で希釈、適当な濃度にして熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成したり、また他の官能基へ付加する性質を有するようになる。
上記に説明したブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)の1例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロンが代表的に例示される。
【0096】
本発明で使用される、分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル樹脂(A)およびブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の重量比は(A):(B)=90:10〜10:90が好ましく、更に好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。固形分重量に対する上記樹脂(A)の割合が10%未満では、基材フィルムへの塗布性が不適で、表面層と該フィルムとの間の接着性が不十分となる。
【0097】
本発明で使用される水性塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
【0098】
上記水性塗布液を基材フィルム表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を上げ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選択される界面活性剤を必要量添加して用いることができる。
【0099】
塗布液の溶液粘度は1.0PaS(パスカルセック)以下が好ましい。これ以上ではスジ状の塗布厚み斑が発生しやすい。
【0100】
本発明では基材フィルム中に易滑性付与を目的とした滑剤を添加しないため、上記水性塗布液には、粒子を添加しフィルム表面に適度な突起を形成するのが好ましい。かかる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。中でもシリカがポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適である。
【0101】
上記水性塗布液に添加する粒子の平均粒径は、通常1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。平均粒径が1.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化し、フィルムの透明性が低下する傾向がある。また上記塗液中に含まれる粒子含有量は、通常、塗布、乾燥後で塗布膜の粒子含有量が60重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下になるよう添加する。塗布膜の粒子含有量が60重量%を超えるとフィルムの易接着性が損なわれることがある。またフィルム中に上記粒子を2種類以上配合してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよい。いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記した範囲を満足することが好ましい。塗布液を塗布する際には塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するため、塗布直前に塗布液が精密濾過されるように濾材を配置する必要がある。
【0102】
本発明で用いられる塗布液を精密濾過するための濾材は濾過粒子サイズ225μm以下(初期濾過効率95%)であることが必要である。塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。
塗布液を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
【0103】
上記水性塗布液の組成物には、その効果を消失しない限りにおいて帯電防止剤、顔料、有機フィラーおよび潤滑剤等の種々の添加剤を混合してもよい。さらに塗布液が水性であるため、その寄与効果を消失しない限りにおいて、性能向上のために、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂およびエマルジョン等を塗布液に添加してもよい。
【0104】
このように、本発明の紫外線吸収フィルムは、紫外線吸収能に優れ、且つ、可視光領域での光透過性に優れることから、所望されないフィルムの着色が抑制され、種々の用途、例えば、建材や自動車分野における窓張り用フィルム、包装材料用フィルムなどに好適に使用し得るが、この光透過率を考慮すれは、プラズマディスプレイパネル用フィルターに適用する場合、その効果が著しい。
【0105】
次に、この紫外線吸収フィルムを用いた本発明のパネル用フィルターについて説明する。
<パネル用フィルター>
本発明のパネル用フィルターは、プラズマディスプレイの表面に配置され、基材フィルムの少なくとも片面に、プラズマディスプレイパネルから放射される近赤外線に起因するリモコンや伝送系光通信における誤動作を防止する目的でディスプレイ前面に設置される近赤外線カット層(近赤外線吸収層)及び、同様にプラズマディスプレイパネルから放射される電磁波を吸収する電磁波カット層と、を備え、さらに必要に応じて、ディスプレイ表面への蛍光灯等の外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止層などの機能を有する層を複数層組み合わせて構成される。本発明のパネルフィルターは、この近赤外線カット層における赤外線吸収色素の経時劣化を抑制する目的で、上記本発明の紫外線吸収フィルムを用いることを特徴とする。
以下、本発明のパネル用フィルターを構成する必須の機能層である赤外線吸収層について説明する。
【0106】
(赤外線吸収層:近赤外線カット層)
本発明のパネル用フィルターに備えられる赤外線吸収層は、プラズマディスプレイなどから放出されるような近赤外領域を充分吸収しうる性能を有していれば特に限定はされないが、例えば特開2002−71942号公報、特開2002−226827号公報記載の赤外線吸収色素を含有する層が挙げられる。
【0107】
近赤外線吸収フィルターの製造において、近赤外線吸収層の基材への積層方法としては特に限定されないが、コーティング法が厚み均一性やコストの点で好ましい。
【0108】
コーティング法の場合、近赤外線吸収化合物と高分子樹脂が溶解できる溶剤にこれらを溶解させてコーティングを行う。この時の溶剤としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソブルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、水などが挙げられ、1つまたは2つ以上併用してもよく、またこれらに限定されるものではない。
【0109】
コーティング法を具体的に説明すると、上記溶剤に、高分子樹脂および少なくとも1つの近赤外線吸収化合物を添加して溶解させ、これを、例えば基材上に高速でコーティングできるグラビアコート法、リバースコート法、キスロールコート法、ロールコート法などを用いて塗布することによって行うことができ、当該方法は加工性や生産性の点も優れている。近赤外線吸収層中の近赤外線吸収化合物は、高分子樹脂に溶解した状態であるのが好ましい。
【0110】
本発明のプラズマディスプレイ用紫外線吸収フィルム基材の片面のみに近赤外線吸収層を積層させた構成を有する近赤外線吸収フィルターは、例えば、基材上に上記の方法で1層目の近赤外線吸収層を設けた後、さらにコーティング法などにより2層目以降の近赤外線吸収層を設けることにより得ることができる。1層目と2層目以降の近赤外線吸収層を形成するのに用いる、溶剤、バインダーおよび方法は同じであっても異なっていてもよい。2層目以降の近赤外線吸収層をコーティング法により設ける場合、層の混合を避けるため1層目の近赤外線吸収層を乾燥後に設けるのが好ましい。
【0111】
近赤外線吸収層には、さらに慣用な各種添加剤が含有されていても良い。当該添加剤としては帯電防止剤、安定剤等が挙げられるが、透明性の点から易滑性付与を目的とした不活性粒子を実質上含有しないことが好ましい。
【0112】
本発明の紫外線吸収フィルムおよびこれを用いたパネル用フィルター、より具体的にはプラズマディスプレイパネル用フィルターは、ディスプレイから放射される不要な近赤外線を遮断する用途に用いることができ、黄色実がなく、透明性が高く、且つ優れた耐久性を有する。
【実施例】
【0113】
以下、本発明のプラズマディスプレイ用に好適な紫外線吸収フィルム及びこれを用いたプラズマディスプレイパネル用フィルターを例に取り、その製造方法について基材としてポリエチレンテレフタレート(PETと略す)を使用した場合を例にとって説明するが、本発明は当然これらに限定されるものではない。
実施例及び比較例中の「部」は、特に断らない限り「重量部」を意味する。
【0114】
(評価方法)
本発明における光透過性、接着性は以下の基準により測定した値を使用している。
(1)光透過率、紫外線カット性
透過率は、島津製作所製分光光度計UV3100PCを使用し、露光光源の波長を選択することで、所定の波長毎に測定した。
【0115】
(2)接着層とハードコート層との接着性
接着層上に光硬化型アクリル系ハードコート層を設けた時の接着性(adH1、adH2)は以下の用にして測定した。
実施例及び比較例で得たプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムの易接着層表面に、大日精化社製ハードコート剤(セイカビームEXF01(B))を#8ワイヤバーを用い塗布し、70℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、高圧水銀灯で80W/cm、照射距離15cm、5m/分の条件下で硬化させ、2μmのハードコート層を形成した。
JIS−K5400の8.5.1記載に準じた試験方法で接着性を求めた(adH1)。具体的には、易接着層を貫通して基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付け、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番24mm幅)を升目状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がして目視により下記の式から接着性を求めた。
adH(%)=(1−剥がれ面積/評価面積)×100
また得られたハードコート層を形成したフィルムを、ハードコート面側からサンシャインウエザメーターを用い、500時間照射した後、JIS−K5400の8.5.1記載に準じた試験方法で接着性を求めた(adH2)。
【0116】
(3)易接着層上に近赤外線吸収層を設けた時の接着性(adNIR)
下記表1に示す塗布液を、実施例及び比較例で得たプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムの易接着層表面に、グラビアロールにより片面にコーティングし、150℃の熱風をフィルム表面に風速5m/秒で送りながら1分間乾燥した。乾燥後のコート層(近赤外線吸収層)の厚みは8.0μmであった。
隣接する易接着層と近赤外線吸収層との接着性を、JIS−K5400の8.5.1記載に準じた試験方法で求めた。
【0117】
【表1】

【0118】
【化11】

【0119】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0120】
〔実施例1〕
(1)マスターバッチ(A)の製造
乾燥させたアデカスタブLA−31〔商品名、旭電化社製:紫外線吸収剤〕5重量部、例示化合物(17)〔蛍光増白剤〕10重量部、粒子を含有しないPET樹脂(東洋紡績社製ME−553)85重量部を混合し、混練押出機を用いてマスターバッチを作製した。この時の押し出し温度は285℃であり、押し出し時間は7分であった。
【0121】
(易接着層形成用の塗布液(A)の調整)
易接着層形成用の塗布液Aを以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95部、ジメチルイソフタレート95部、エチレングリコール35部、ネオペンチルグリコール145部、酢酸亜鉛0.1部および三酸化アンチモン0.1部を反応容器に仕込み、180℃/3時間かけてエステル交換反応を行った。次に5−ナトリウムイソフタル酸6.0部を添加し、240℃/1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0122】
得られたポリエステル樹脂の30%水分散液を6.7部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20%水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH−3)を40部、エラストロン用触媒(Cat64)を0.5部、水を47.8部およびイソプロピルアルコールを5部を混合し、さらにアニオン性界面活性剤を1重量%、滑剤(日産化学工業社製:スノーテックスOL)を5重量%添加し、塗布液Aとした。
【0123】
(2)プラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムの製膜
中間層用原料として固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂の粒子を含有しないペレット(東洋紡績社製ME−553)90重量部とマスターバッチ(A)10部とを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層B層用)に供給した。粒子を含有しないPETペレット(東洋紡績社製ME−553)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機1(外層A層用及び外層C層用)にそれぞれ供給し、押出機熔融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)を用いて濾過した。またフラットダイは、樹脂温度が275℃になるようにした。
押し出した樹脂を、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラム(ロール径400φ、Ra0.1μm以下)に巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時の吐出量は48kg/hrであり、得られた未延伸シートは幅300mm、厚さ1400μmであった。
【0124】
また最外層(A層及びC層)の厚さの比率は、全厚みに対して10%となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
次に、上記キャストフィルムを加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。
【0125】
なおフィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
【0126】
その後、易接着層形成用の塗布液Aを濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で両面に塗布、乾燥した。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に4.0倍に延伸し230℃にて5秒間熱処理し、この熱処理工程中で必要に応じて幅方向に3%の弛緩処理し、プラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムを得た。この時のフィルム厚さ100μmであり、この時の易接着層のコート量は0.01g/mであった。
【0127】
〔実施例2〕
実施例1のマスターバッチ(A)の製造に記載の方法に準じ、乾燥させたアデカスタブLA−31(商品名)5重量部、例示化合物(3)〔蛍光増白剤〕5重量部、例示化合物(13)〔蛍光増白剤〕5重量部、粒子を含有しないPET樹脂(東洋紡績社製ME−553)85重量部を混合し、以下同様の操作を行ってマスターバッチ(B)を得た。以下は同様の方法でプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムを得た。
【0128】
〔実施例3〕
実施例1のマスターバッチ(A)の製造に記載の方法に準じ、乾燥させたアデカスタブLA−31(商品名)8重量部、例示化合物(3)〔蛍光増白剤〕3重量部、例示化合物(16)〔蛍光増白剤〕4重量部、粒子を含有しないPET樹脂(東洋紡績社製ME−553)85重量部を混合し、以下同様の操作を行ってマスターバッチ(C)を得た。以下は同様の方法でプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムを得た。
【0129】
〔実施例4〕
実施例1のマスターバッチ(A)の製造に記載の方法に準じ、乾燥させたCYASORBUV−3638〔商品名、サイアテック社製、化学名2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン):紫外線吸収剤〕5重量部、例示化合物(3)〔蛍光増白剤〕5重量部、例示化合物(17)〔蛍光増白剤〕5重量部、粒子を含有しないPET樹脂(東洋紡績社製ME−553)85重量部を混合し、以下同様の操作を行ってマスターバッチ(D)を得た。以下は同様の方法でプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムを得た。
【0130】
〔実施例5〕
実施例1のマスターバッチ(A)の製造に記載の方法に準じ、乾燥させたCYASORBUV−3638〔商品名、サイアテック社製、化学名2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン):紫外線吸収剤〕8重量部、例示化合物(3)〔蛍光増白剤〕7重量部、粒子を含有しないPET樹脂(東洋紡績社製ME−553)85重量部を混合し、以下同様の操作を行ってマスターバッチ(E)を得た。以下は同様の方法でプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムを得た。
【0131】
〔比較例1〕
実施例1のマスターバッチ(A)の製造に記載の方法に準じ、乾燥させたCYASORBUV−3638〔商品名、サイアテック社製、化学名2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン):紫外線吸収剤〕10重量部、粒子を含有しないPET樹脂(東洋紡績社製ME−553)90重量部を混合し、以下同様の操作を行ってマスターバッチ(E)を得た。以下は同様の方法でプラズマディスプレイ用紫外線吸収ポリエステルフィルムを得た。
【0132】
実施例1〜5、比較例1につき、波長380nm、410nm、430nmでの光線透過率、及び前記評価法で評価した隣接層との接着性測定結果を下記表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
表2に明らかなように、実施例1〜5の紫外線吸収フィルムはいずれも紫外線吸収能と可視光透過性に優れ、且つ、隣接する易接着層、ハードコート層との接着性も良好であり、プラズマディスプレイパネル用フィルター用途に有用であることがわかる。他方、フィルム基材中に蛍光増白剤を用いない比較例1の紫外線吸収フィルムは、波長410nmの光遮断性に劣り、プラズマディスプレイパネル用フィルターに用いた場合、赤外線吸収層の保護性が不十分であることが予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光増白剤及び紫外線吸収剤を含有するフィルムであって、波長410nmの光線透過率が30%以下であり、且つ、波長430nmの光線透過率が70%以上であることを特徴とする紫外線吸収フィルム。
【請求項2】
前記フィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムであり、且つ、波長430nmの光線透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線吸収フィルム。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系化合物及び環状イミノエステル系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記二軸配向ポリエステルフィルムが実質的に粒子を含まないことを特徴とする請求項2に記載の紫外線吸収フィルム。
【請求項4】
前記蛍光増白剤が、下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の紫外線吸収フィルム。
【化1】

一般式(I)中R及びRは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表わし、R及びRはアルキル基を表わす。[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表す。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の紫外線吸収フィルムの少なくとも片面に赤外線吸収層が設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用フィルター。

【公開番号】特開2008−195830(P2008−195830A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32459(P2007−32459)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】