説明

紫外線描画カード

【課題】本発明の課題は、カードに記載された署名について、筆記したときの状態を保持して、また、署名の追記や書き換えを防止するカード媒体を提供することである。
【解決手段】カード基材(101)上の所定領域に筆記部(103)を備えたカードにおいて、前記カードは、紫外線をスポット上に照射する紫外線描画ペン(300)を用いて、所定情報を筆記するための紫外線変色層が形成された筆記部(103)と、可視透明性を有し、かつ、紫外線遮断特性を有するカバーフィルム(109)と、を備え、前記筆記部に対して紫外線描画ペン(300)で所定情報を筆記した後に、当該筆記部(103)を前記カバーフィルム(109)で覆うようにしたことを特徴とする紫外線描画カード(100)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射により手書き文字を描画するカードに関するものである。

本発明は特にカードに記載された署名(サイン)の安全性(セキュリティ)を確保・維持させる場合に有用である。
【背景技術】
【0002】
現代のカード社会においては、カードの不正利用を防止するために、カードの利用者に対して、カード所有者本人であることを確実に確認することが重要である。
そこで、以下に、本人確認方法とその問題点を説明する。
《1.署名による本人確認》
署名照合方法は、カード記載のサインを用いて本人確認する方法がある。
署名照合方法では、カードの署名欄に、予め、所有者サインを記入しておき、カードの利用時に、利用者にサインをしてもらい、両者のサインを照合して、本人確認をする。
カード最表面に署名欄には、インキが定着しやすいサインパネルが最表面に装備されている。カードの署名は、最表面のサインパネルに直接署名されていることから、外部からの衝撃で傷が付いたり、汚れが付いたりして、署名が不鮮明になり、照合が困難になる。
また、カードの署名がカードの最表面に直接に記載されていることから、署名後に他人が書き加えたり、署名を消して書き加えたりすることも可能である。不正に署名を書き換えることも可能である。
【0003】
《2.顔画像による本人確認》
顔画像照合方法は、カード所有者の顔画像をカードに付しておき、カードの利用時に、本人の顔とカードの顔画像を照合して、本人確認をする。
たとえば、特許文献1では、画像付カードにおいて、レーザー光の照射により顔料を変色させることで、所有者本人の顔画像を形成させる技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−86967号公報(段落0012−段落0019、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、
顔の画像が個人情報として、露出しているので、たとえば、紛失したカードを他人が拾得したときに、改竄されて不正利用される恐れがある。
【0006】
本発明は以上のような点を解決するためになされたものであって、本発明の課題は、カードに記載された署名について、筆記したときの状態を保持して、また、署名の追記や書き換えを防止するカード媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の各態様に記載の手段により、前記課題を解決する。
すなわち、本願発明の第1の発明は、
カード基材(101)上の所定領域に筆記部(103)を備えたカードにおいて、
前記カードは、
紫外線をスポット上に照射する紫外線描画ペン(300)を用いて、所定情報を筆記するための紫外線変色層が形成された筆記部(103)と、
可視透明性を有し、かつ、紫外線遮断特性を有するカバーフィルム(109)と、
を備え、
前記筆記部に対して紫外線描画ペン(300)で所定情報を筆記した後に、当該筆記部(103)を前記カバーフィルム(109)で覆うようにした
ことを特徴とする紫外線描画カード(100)
である。
【0008】
このように、紫外線照射により紫外線変色層上に筆記された所定情報(=署名、サイン)は、筆記後に紫外線遮断特性を有するカバーフィルムによって覆われて紫外線の照射が防止されるために、筆記されたときの状態を維持することが可能である。
【0009】
本願発明の第2の発明は、前記紫外線変色層は、
少なくとも、インキビヒクルとロイコ染料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線描画カードである。
【0010】
本願発明の第3の発明は、
前記カバーフィルム(109)は、
可視透明性を有する紫外線遮断フィルム(109b)と前記フィルムの一方の面に可視透明性を有するヒートシール層(109a)を積層してなり、
ヒートシール層(109a)をカード基材面(101)と対向する側に設け、
前記フィルム(109)の一辺をカード基材面(101)の端部近傍に接着してなる
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の紫外線描画カード
である。
【0011】
あるいは、筆記された所定情報は、熱により接着により剥離不可能なカバーフィルムで覆われているために、追記や書き換えが不可能である。
また、外部からの傷、汚れからも保護される。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、カード署名欄の署名について、
(1)紫外線遮断フィルムで覆うことで、通常の使用環境下において、署名の状態を保持することが可能である。
(2)剥離が不可能なカバーフィルムで覆うことで、他人による不正な追記や書き換えなどの改竄を防止することが可能である。
(3)カバーフィルムで覆うことで、外部からの傷や汚れから保護することが可能である。
従って、本発明によれば、署名を、筆記したときの状態を長期間にわたって保持することが可能であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明による紫外線描画カード100の外観を説明する図である。
紫外線描画カード100は、筆記部103に対して紫外線描画ペンで所定情報を筆記した後に、当該筆記部を前記カバーフィルム109で覆うようにしたカードである。
紫外線描画カード100は、カード基材101と、カバーフィルム109と備える。
カード基材101の端部近傍は、カバーフィルム109の一辺と接着する。
【0015】
カード基材101は、筆記部103を有する。
筆記部103は、紫外線変色層により形成された筆記領域である。
紫外線変色層は、紫外線により変色(=発色)する感光材料である。
【0016】
カバーフィルム109は、可視透明性を有し、筆記部103に筆記された所定情報を目視することができる。
【0017】
図2は、紫外線描画カード100の構成図である。
紫外線描画カード100は、筆記部103を有するカード基材101と、カバーフィルム109とが、接着層102によって、接着して構成される。
紫外線描画カードの接着部付近の部分拡大図100aには、この紫外線描画カードの層構成が示されている。
このようにカバーフィルム109とカード基材101を接着させることは、カバーフィルム109をカード基材101上の所定の位置に設けておくために有用である。
【0018】
筆記部103は、紫外線の感光材料である紫外線変色層により形成される。
紫外線変色層の感光材料は、たとえば、特許3787381号公報(段落0008−段落0013)に開示されている紫外線量検知インキを用いればよい。この紫外線量検知インキは、赤外線吸収剤と、ロイコ染料と、インキビヒクルなどからなる感光材料である。
【0019】
なお、ロイコ染料は、通常、無色または淡色の有機色素(発色剤)である。ブレンステッド酸、ルイス酸等の活性種の作用で発色する性質を有し、酸化されて濃色の染料となるが反応は不可逆である。
従って、発色したロイコ染料は、無色の状態に戻すことは不可能である。
このロイコ染料は、トリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、フェノチアジン類、インドリルフタリド類、ロイコオーラミン類、ローダミンラクタム類、ローダミンラクトン類、インドリン類、トリアリールメタン類から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。これらの化合物は、色調や発色性能に応じて選択する。
【0020】
カバーフィルム109は、可視透明性を有する紫外線遮断フィルム109bの一方の面に、可視透明性を有するヒートシール層109aを積層する。
【0021】
ヒートシール層109aは、カード基材面101と対向する側に設ける。
ヒートシール層109aは、カード基材101と、カバーフィルム109とを重ねて加熱することにより、両者を剥離不可能に熱接着する。
【0022】
紫外線遮断フィルム109bは、自動車や家のウィンドウ用に使用されている紫外線カットフイルムなどである。たとえば、特開平7−3217号公報(段落0009−段落0011、図1)に開示されている紫外線吸収性透明粘着シートを用いればよい。この紫外線吸収性透明粘着シートは、粘着成分にベンゾトリアゾール系化合物の紫外線吸収剤を混合して、PETフィルムに塗布したものである。なお、この紫外線吸収性透明粘着シートは、可視光成分は透過する。
【0023】
図3は、紫外線描画ペン300の外観図である。
紫外線描画ペン300は、紫外線描画カード100の筆記部103に紫外線を照射して、所定情報(=署名、サイン)を筆記する。
紫外線描画ペン300は、外線照射開口部301を有する。
紫外線描画ペン300は、紫外線光源を備えて、外線照射開口部301から紫外線を照射する。
【0024】
紫外線描画ペン300は、紫外線光源のON/OFFスイッチを備えても良い。(図示せず)
あるいは、紫外線描画ペン300は、外線照射開口部301に圧力センサーを具備させて、所定情報を筆記するときの筆圧を圧力センサーで感じて、紫外線光源をON/OFFさせてもよい。
【0025】
(変形例)
以上のように、紫外線描画カード100について説明したが、以下に変形例を説明する。
(1)筆記部103は、カード基材101の全体でも良い。
(2)カバーフィルム109は、筆記部103を覆う大きさであれば良い。
(3)カバーフィルム109は、カード基材101の全体を覆うものでなく、少なくともカード基材面101の端部近傍に接着してなる一辺以外の辺に、仮止め接着層を設けて、カード基材面101に仮止めしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による紫外線描画カード100の外観図
【図2】紫外線描画カード100の構成図
【図3】紫外線描画ペン300の外観図
【符号の説明】
【0027】
100 紫外線描画カード
101 カード基材
102 接着層
103 筆記部
109 カバーフィルム
109a 可視透明性なヒートシール層
109b 可視透明性な紫外線遮断フィルム
300 紫外線描画ペン
301 外線照射開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材上の所定領域に筆記部を備えたカードにおいて、
前記カードは、
紫外線をスポット上に照射する紫外線描画ペンを用いて、所定情報を筆記するための紫外線変色層が形成された筆記部と、
可視透明性を有し、かつ、紫外線遮断特性を有するカバーフィルムと、
を備え、
前記筆記部に対して紫外線描画ペンで所定情報を筆記した後に、当該筆記部を前記カバーフィルムで覆うようにした
ことを特徴とする紫外線描画カード。
【請求項2】
前記紫外線変色層は、
少なくとも、インキビヒクルとロイコ染料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線描画カード。
【請求項3】
前記カバーフィルムは、
可視透明性を有する紫外線遮断フィルムと前記フィルムの一方の面に可視透明性を有するヒートシール層を積層してなり、
ヒートシール層をカード基材面と対向する側に設け、
前記フィルムの一辺をカード基材面の端部近傍に接着してなる
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の紫外線描画カード。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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