説明

紫外線放射ナノ粒子を用いた放射線治療および医学画像

本発明は、放射線治療目的のための紫外線放射ナノ粒子に関する。ナノ粒子を間接的または直接的に病変組織にもたらされるならば、高エネルギー放射線での励起は、真空紫外線または短波長紫外線を導く。この紫外線放射線は、周囲の有機基質によって吸収され、その結果、物質の分解が生じる。ナノ粒子はまた、化学的な結合またはコーティングにより抗体を粒子に付着させることによって、改良されることもできる。これらの抗体は、がん細胞の細胞膜に特異的に結合して、病変組織を高い効率で局所的に破壊し、周囲の健常な組織はあまり破壊しないことが望ましい。紫外線放射の内視鏡的検出は、病変組織の位置決めをし、かつ研究するための画像診断技術として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療または医学画像で用いられる材料および方法に関する。より具体的には、本発明は、病変組織の治療において、または画像組織のために用いられるナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放出型断層撮影法(PET)、単一光子放出型断層撮影法(SPECT)、核スピン磁気共鳴断層撮影法(MRI)、超音波技術のような画像技術は、医学の診断において広く使用されている。それにもかかわらず、これらの断層撮影法のほとんどは、システムを購入するときと、専門家が測定を行い、その結果を説明するために専門家に支払うための双方の場合に多額の財政投資を必要とする。光学技術は、多くの場合、より安価であり、さらには結果の解釈をより簡単にするという利点を有する。
【0003】
病変組織または癌性腫瘍は、多くの場合、電離放射線を用いて治療されるが、このプロセスは、放射線治療として知られている。がんに対する放射線治療法は、典型的には、数keVから数MeVのエネルギーをもつ電磁放射線を用い、典型的には、急速に成長する細胞を高透過性の電離放射線でアタックすることによって効果がある。X線の使用は、特に、病変組織が、骨または他の高密度もしくは不透明な構造物にあるか、または、骨または他の高密度もしくは不透明な構造物内に位置するならば、組織内へと深く透過する能力のために魅力的である。不幸にも、急速成長を唯一の対象基準として使用することは、そのような治療の効果をがん細胞のみに制限されるわけではない。結果的に、健常組織もまた損傷するであろう。
【0004】
その結果、そのような放射線の効果をがん組織の全領域に制限するように、電離放射線を癌性腫瘍の部位に供給するための多くの方法が開発されてきた。しかしながら、健常組織およびがん組織は、典型的には放射線に対して同様の生物学的反応を示すので、周囲の健常組織に影響を及ぼすことなく、供給された放射線の効力または前記放射線に対する生物学的反応を、腫瘍内および腫瘍の近傍において向上させる必要性がある。X線線量を減少することを可能にする既知の方法は、競合代謝物質の量を減らし、それによって、放射線に対してより鋭敏である特定の代謝物質を有利に働かせることによって、腫瘍を放射線に対しさらに敏感にすることである。
【0005】
放射線治療に対する代案の方法は、放射線核種の適用であり、これは病変組織の治療、または患者体内の深い位置または骨や他の不透明の構造物の内部に位置する腫瘍の治療に特に有用である。例えば212Bi3+を用いれば、ビスマス粒子はタリウム粒子へと崩壊し、それによって、α粒子を放出する。
[化1]
212Bi→α+208Tl
【0006】
がん細胞に対する高い特異度を達成するため、放射線核種陽イオンは、例えばエチレンジアミン4酢酸(EDTA)のような有機部分によってキレートされ、すなわち、しっかりと結合され、EDTAは、がん細胞に対し高い特異度をもつ抗体に共役している。図1は、放射線核種を用いることによって、がん治療のための治療方法の模式的なメカニズムを示したものである。放射線核種2、例えば212Bi3+は、がん細胞膜4の周囲で崩壊する。それに加えて、放射線核種2は、例えばメチレンロイシンLeu-CH2またはロイシンのような有機部分8によって、これらのがん細胞に対して高い特異度を有する抗体6に結合される。しかしながら、この方法の問題は、患者に注入されるべき薬剤の毒性、および有用な放射線核種の短い半減期であり、この半減期は、例えば212Biの場合は1時間、123Iの場合は13.3時間、そして212Atの場合は7時間である。
【0007】
電離放射線の使用に対する代替案として、光力学療法(PDT)が開発された。PDTにおいては、放射線源に感光性物質が結合しており、非電離性の光学的放射線を発することで、病変組織において治療反応を生み出す。PDTにおいては、感光性物質の顕著な濃縮が、病変組織に位置すべきであり、健常な周囲の組織には位置すべきではない。これは、自然過程によってか、または注射による局部的な適用を介してのいずれかによって行なわれる。病変組織に対する感光性物質の特異度を高めるために、感光性物質は、通常、対象部分と共役しており、この対象部分は、健常細胞/組織に対してよりも、がん細胞/組織に対し、高い結合定数を示す、抗体あるいは有機官能基でありうる。これは、標準的な放射線治療によって達成可能な特異度のレベルに比べて付加的なレベルを提供する。なぜなら、感光体が組織中に存在する部位のみにPDTが有効であるためである。結果として、周囲及び健常組織に対するダメージを、薬剤の分布を制御することによって回避することができる。不幸にも、PDTにおける照明ステップにおいて従来の方法を用いると、そのような治療に必要とされる光は、組織内に深く侵入することができない。加えて、医者は、病変腫瘍が体内の深部に位置しているならば、厄介である治療部位の制限された空間制御しかない。
【0008】
ウェスト(West)氏らによる米国特許第6,530,944号は、画像診断および熱を用いたがんの局所治療に関する。細胞は、赤外線光で照射後に、ナノ粒子から生成される熱の誘導によって死滅させる。これらのナノ粒子は、例えば希土類放射体でドープされたシリカとすることができる。提示した治療方法は、病変組織へのこれらの赤外線放射ナノ粒子の供給を有する。このことは、例えば、ナノ粒子を、病変組織に対する高い特異度を有する抗体に結合することによって行うことができる。その後、ナノ粒子は、好適には580nm〜1400nmの波長をもつ赤外線を用いることによって励起され、熱を放出する。ナノ粒子の周囲にある細胞は、発熱によって細胞タンパク質の変性のために死滅する。従って、この技術は、生きている細胞に損傷を与える目的で、赤外線を他のエネルギーに変換するような特定の化合物の使用を含有する。さらに、可視光線および近赤外線を放射するナノ粒子は、スピンコートやフォトリソグラフィーの用途に使用される。この場合、粒子は、発光性三価ランタニドイオンEu3+, Nd3+, Er3+, Pr3+, Ho3+またはYb3+でドープされたLaF3およびLaPO4からなり、これは有機溶媒中での分散性を許容する。
【0009】
それにもかかわらず、米国特許第6,530,944号にはいくつかの欠点を有する。放射線の有機物への侵入深さは、可視光線から赤外線へとエネルギーが減少するにつれて増加し、深赤外線および近赤外線(deep red and near IR)はほとんど吸収されない。これによって、生成された赤外線は高い侵入深さを有する。従って、生成された赤外線を病変組織の部位に制限することは難しく、放射線が健常組織にも到達する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、好ましくは健常組織へのダメージ量を制限すると同時に、おそらく人体内の深部に位置する病変組織を局所治療するための手段および方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、健常組織へのダメージ量を制限すると同時に、おそらく人体内の深部に位置する病変組織を画像診断するための手段および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、本発明による治療上の処置および画像診断のための材料、方法および手段によって達成される。
【0013】
本発明は、例えば病変組織の放射線治療のような、生体材料の画像または放射線治療に試用されるナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、高エネルギー放射線を吸収し、真空紫外線(VUV)または短波長紫外線(UV−C)の放射線を放出する、真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料を有し、例えば寄生虫のような微生物や、例えばタンパク質、DNA、RNA、細胞、細胞オルガネラのような生体分子といった生物対象特定薬剤(bio-target specific agent)に共役している。生物対象は、治療に関連する対象であることが望ましい。高エネルギー放射線はX線であってもよい。生物対象特定薬剤は、例えば、病変組織のような関連生物対象に対して特異度を有することができる、抗体または抗体フラグメントであってもよい。
【0014】
さらに、ナノ粒子の紫外線放射材料に被覆層を設けることもできる。この被覆層は、紫外線放射材料の加水分解を防止したり、細胞膜中の侵入を高めたりするであろう。
【0015】
真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料は、M2SiO5:X, MAlO3:X, M3Al5O12:X, MPO4:X, MBO3:X, MB3O6:X (ただしM=Y, La, Gd, LuおよびX=Pr, Ce, Bi, Nd)、またはMM´O3:X (ただしM=Y, La, Gd, Lu,M’=Y, La, Gd, Lu, BiおよびX=Pr, Ce, Bi)のいずれか、またはMSO4:Z (ただしM=Sr, CaおよびZ=Nd, Pr, Ce, Pb)のいずれか、または、LuPO4:Nd, YPO4:Nd, LaPO4:Nd, LaPO4:Pr, LuPO4:Pr, YPO4:Pr, YPO4:Biのいずれか、からなるグループから選択される1種以上の物質であればよい。
【0016】
特定の実施形態においては、真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射物質は、三価リン酸塩でもよい。
【0017】
他の実施形態においては、ナノ粒子は活性剤でドープされていてもよい。そ活性剤は、100ナノ秒よりも短い減衰時間を有することができる。特定の実施形態においては、その活性剤はPr3+またはNd3+であってもよい。
【0018】
さらに、本発明は、造影剤として、または生体材料の放射線治療薬剤としてのナノ粒子の使用、例えば病変組織に対する放射線治療薬剤としてのナノ粒子の使用を提供し、ナノ粒子は、高エネルギー放射線を吸収し、真空紫外線または短波長紫外線の放射線を放出する、真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料を有する。この使用は薬剤の製造を含む。高エネルギー放射線はX線であってもよい。ナノ粒子は、例えば寄生虫のような微生物や、例えばタンパク質、DNA、RNA、細胞、細胞オルガネラのような生体分子といった生物対象特定薬剤、または組織対象薬剤に共役させることができる。一の実施形態においては、生物対象特定薬剤は、抗体または抗体フラグメントであってもよく、例えば病変組織のような関連生物対象に対して特異度を有することができる。
【0019】
他の実施形態においては、ナノ粒子の紫外線放射材料に被覆層を設けることができる。この被覆層は、紫外線放射材料の加水分解を防止することができる。
【0020】
真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料は、M2SiO5:X, MAlO3:X, M3Al5O12:X, MPO4:X, MBO3:X, MB3O6:X (ただしM=Y, La, Gd, LuおよびX=Pr, Ce, Bi, Nd)、またはMM´O3:X (ただしM=Y, La, Gd, Lu,M’=Y, La, Gd, Lu, BiおよびX=Pr, Ce, Bi)のいずれか、またはMSO4:Z (ただしM=Sr, CaおよびZ=Nd, Pr, Ce, Pb)のいずれか、または、LuPO4:Nd, YPO4:Nd, LaPO4:Nd, LaPO4:Pr, LuPO4:Pr, YPO4:Pr, YPO4:Biのいずれか、からなるグループから選択される1種以上の物質であればよい。
【0021】
特定の実施形態においては、真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料は三価リン酸塩であってもよい。
【0022】
他の実施形態においては、ナノ粒子は活性剤でドープされることができる。活性剤は、100ナノ秒よりも短い減衰時間を有することができる。特定の実施形態においては、活性剤をPr3+またはNd3+であってもよい。
【0023】
本発明は、さらに、本発明に従うナノ粒子を提供し、該ナノ粒子を人間または動物の罹患生物に投与し、そして、前記罹患生物に高エネルギー放射線を照射することによって前記罹患生物を治療する方法を提供する。放射線は、体の特定の部位に局在化させることが望ましい。
【0024】
前記の手段および方法は、ナノ粒子の発光を内視鏡的に検出することによって光学的画像を得るためにも使用可能であることは、本発明の利点である。さらに、本発明は、画像診断および治療処置の双方を1つの技術に組み合わせるという点で利点を有する。
【0025】
さらに、微生物または細胞、例えば病変組織を局所治療するための手段は、そのような微生物、細胞または病変組織を破壊する上で高い有効性と低毒性とを有することは、本発明の利点である。そのうえ、病変組織の局所治療のための手段は、安価な素材からなる。
【0026】
この分野では、治療方法の一定の改良、変化および進化がなされているけれども、本概念は、実質的に新しく斬新な改良がなされていると考えられており、以前の慣行からの逸脱を含み、結果として、より効率的で、安定した、信頼性の高いこの種の装置を提供する。
【0027】
本発明の教示は、病変組織またはがん腫瘍の治療のための改良された治療法および画像法のデザインを可能にする。
【0028】
本発明の、これらのおよび他の特性、特徴および利点は、一例として本発明の原理を説明する添付図面と併せて参照する以下の詳細な記述から明らかになるであろう。この記載は、本発明の範囲を制限することなしに、実施例のみの目的のために与えられる。
[実施例]
【0029】
本発明は、特定の実施形態に関し、特定の図面を参照しながら説明するが、本発明は、それらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。描かれた図面は概略的なものにすぎず、限定されない。図面においては、説明目的のため、構成要素の中には、大きさが誇張されて示されているものもあり、実際の大きさ通りには描かれていない。本明細書および特許請求の範囲で「有する(comprising)」という用語を用いる場合、他の構成要素または工程を除外しない。例えば、単数名詞に関して、「1つの」("a"または"an")や「その」("the")のような不定冠詞または定冠詞を用いるとき、何かほかのことを特別に述べない限りは、その名詞の複数形をも含む。
【0030】
さらに、本明細書および特許請求の範囲においては、第1、第2、第3というような用語が、同様の構成要素間を区別するために用いられ、必ずしも連続的または時系列の順番で用いるとは限らない。このように使用される用語は、適当な状況下で相互に変換可能であり、ここで記載されている本発明の実施形態が、本明細書において記載され、または説明されている順序とは異なる順序で操作することができることは理解されるべきである。
【0031】
以下では、例えばがん治療における、細胞または組織の型の治療について触れるであろう。しかしながら、本発明は、このような型の細胞やこのような型の治療には限定されず、いかなる生物学的材料の放射線治療や、放射線治療、診断、画像、特に画像診断における幅広い適用がありうる。
【0032】
一般的に、例えば、食品のような生物学的材料において、もしくは人間や動物の治療において、特定の生物対象の活動能力をなくし、あるいは破壊することが必要である。これらの生物対象は、例えば、がん細胞のような病変細胞や、例えば、線虫、細菌、ウイルスのような寄生虫のような微生物であることができる。これらの生物対象の各々に対して、その対象に対するいくつかの特異度で結び付け、あるいは結合するような薬剤を供給することができる。この特異度は、相対的なものであって、すなわち、生物対象に属さない局所的な生体材料や組織に対するものである。一例は、病変組織付近の健常組織である。生物対象薬剤は、健常組織に対し、減じた特異度をもつか、あるいは、本質的に特異度をもたないと同時に、例えば病変細胞のような生物対象に対する特異度を持つべきである。そのような結合薬剤の良好な一の実施例は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、またはそれらのフラグメントである。他の好適な対象薬剤は、寄生虫によって特異的に摂取される物質であることができる。本発明の一態様によると、生物対象薬剤は、X線のような他のタイプの放射線で照射された時に、紫外線スペクトルの特定の波長の放射線を放射する材料に結合され、あるいは結び付けられる。放射された紫外線放射線は、例えば寄生虫または病変細胞を破壊するという、局所的な治療効果を提供する。本発明は、健常な細胞または組織がこのプロセスにおいて損傷を受ける可能性を除外しないが、低い侵入深さの紫外線放射線は、このような損傷は最小限に減少する。
【0033】
本発明に従う治療上の処置は、上述したように、がん、非悪性腫瘍、自己免疫病などの治療に利用することができる。改良されたがん治療アプローチは、改良された明暗細胞毒性の比率(light-to-dark cytotoxicity ratio)を得るため、低毒性をもつ感光性物質に基づくことが望ましく、そして、骨内または人体内の深部に位置する病変組織に対する治療効果を達成するため、対応する励起源は、十分に大きな侵入深さをもつべきである。さらに、励起源による破壊を制限するように、励起源の種類またはエネルギー量を設定すべきである。これらの相反する要求を達成するのは難しいことが分かってきた。
【0034】
がんの最も一般的な医学的定義に言及すると、その病気は、異常細胞の制御不能な成長および拡大によって特徴づけられる。非悪性腫瘍は、それらが増殖し始めたところの体の部分にとどまる一方で、他の体の部分に圧力を加えるような良性腫瘍と称される。自己免疫病は、細胞および細胞構成成分の複雑なネットワークである免疫系が、自分自身の体の細胞、組織、および/または器官を誤って攻撃してしまうところの病気である。そのような病気の実施例は、多発性硬化症である。自己免疫病に侵される良性の腫瘍および細胞のみならず、癌性腫瘍もまた、病変組織と称されるであろう。
【0035】
本発明の治療方法は、生体外または生体内のいずれかで用いることができる。本方法は、人体および動物の両方に適用することができ、また、例えば、移植されるべきである腎臓や肝臓のような器官といった、動物から摘出した組織や器官にも適用可能である。
【0036】
本発明による第1の実施形態においては、病変組織20の放射線治療のために、紫外線放射性材料を用いる。この実施形態では、前記材料が、1nm〜100nmの範囲の直径というような、一の寸法を典型的に有するナノ粒子22を有する。このナノ粒子22は、図面では球として描かれているけれども、ナノ粒子22は、四辺形、円筒形、棒状、楕円形、または、より不不規則な形状および形態を包む、いずれかの適当な形状を持つことができる。ナノ粒子22は、典型的には、意図的にドープされたホストマトリックスを有する。ドーパント原子またはドーパント原子のクラスターのエネルギーレベルは、周囲の母材によって強く影響を受けうる。本発明の一態様によると、母材およびドーパントは、ドープされたホストマトリックスが紫外線領域の光を放射するように選択される。原則として、励起時に紫外線または真空紫外線の領域における効率的な放射が達成される限りは、粒子22は、意図しないドープされた母材を有していてもよい。後者は、例えば、再結合放射により得ることができる。短波長紫外線は、280nm〜100nmの波長領域として定義され、一方、真空紫外線領域は、200nm〜10nmの波長領域として定義される。
【0037】
ナノ粒子22は、抗体、抗体フラグメント(FABフラグメント)、または、健常な細胞/組織に対してよりも、対象の微生物/細胞/組織などに対してより高い結合定数を示す有機官能基のような対象薬剤(target agents)26に共役(結合)している。抗体または抗体フラグメントは、例えばがん細胞のような病変組織20といった生物対象に対して特異的であることが好ましい(図2参照)。対象薬剤は、体または器官の同じ領域内の健常な細胞よりも病変細胞により結合しやすいのであれば、病変細胞に対し強く特異性がある必要はない。その後、ナノ粒子22は、例えば、血液への注入や消化器系への投与によって患者(罹患生物)に供給することができる。ナノ粒子22が、例えば抗体26のような対象薬剤に共役させたときは、ナノ粒子が人体内を広がり、例えば抗体26のような対象薬剤は、例えば特定の抗体−抗原反応によって、病変組織20に結合し、病変組織または腫瘍20が存在する領域内で、増加したナノ粒子22の量および密度をもたらす。この結合は、例えば細胞膜上の細胞および/または組織20の表面上、または細胞内部位置のいずれかで生じうる。抗体26のような対象薬剤は、ナノ粒子22に化学的に結合するか、または、抗体26のような対象薬剤の層が、ナノ粒子22の表面上にコーティングされることができる。抗体26、およびそれらを使用する対応特定疾病の実施例の限定されないリストを表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
抗体26に加えて、ナノ粒子22は、細胞膜を通じて入ることができるタンパク質に共役することもできる。代案として、病変細胞に存在することが知られている特定のDNAまたはRNA配列を対象とするために、アンチセンスDNAを用いることができる。
【0040】
内部または外部のソースからのエネルギーを吸収することによって、本発明に従って使用されるナノ粒子22は、真空紫外線または短波長紫外線の放射線を放射する。内部ソースとしては、例えばYPO4:Prのような放射性元素を有するナノ粒子材料を用いることができるが、ここで、Y, PまたはPrは、32P, 90Y, 88Y, 143Prのような放射性同位体によって部分的に置換される。これは、短波長紫外線ルミネセンスの自己活性化をもたらす。好適な外部ソースは、体内の病変細胞の位置に対する必要な侵入深さを有するX線源、例えば7keVよりも高いエネルギーをもつX線源である。前記X線は、ナノ粒子によって吸収され、エネルギーは紫外光として再放射される。使用されうる装置は、例えばX線管(制動放射、CuまたはMoのK, L‐線)、60Co源(2.82MeV)、または波長可変単色X・γ線を供給するシンクロトロンである。ナノ粒子から放射される放射線は、周囲の病変細胞20の有機基質によって吸収され、有機物質の分解を生じ、最終的には細胞死をもたらす。上述したように、本発明による放射の波長領域は、典型的には280nmの上限を有する。これは、周囲の組織への限定された侵入深さをもたらし、病変組織20に隣接した健常組織はより損傷を受けにくいため好ましい。そのうえ、280nm未満の波長を有する光子に対応するエネルギーは、効果的な治療結果を得るために必要である。280nm未満の波長を有する光子は、RNAおよびDNAによって効率よく吸収され、一方、190nm未満の波長を有する光子は、水分子によって吸収される。190nmの光子の水中での典型的な侵入深さは約1cmである。190nmと280nmの間の放射線は、少なくとも一部は、アミノ酸によって吸収される。DNAまたはRNAによる光子が吸収は、それらの分裂をもたらし、細胞内での転写および翻訳のプロセスが妨げられる。水による光子の吸収は、OH‐ラジカルおよびH−ラジカルが生じ(H2O→OH・+H・)、その結果、例えば、細胞質内のタンパク質が酸化分解される。両方のプロセスが細胞増殖を妨げ、または、露光した細胞を死滅させさえする。このように真空紫外線/短波長紫外線の放射線は有害であり、高い光化学効率を有する。この効果は、ナノ粒子22に隣接する細胞に限定される。短波長紫外線および真
空紫外線の放射線の、有機物質に損傷を与える高い効果は、例えば標準的な放射線治療と比較して有利である。
【0041】
本発明の方法において有用な波長領域で放射するナノ粒子22材料の、限定されないリストを表2に示す。いくつかの特定の実施例に関し、有用な紫外線領域における最高放射ピークの波長を第3欄に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
ナノ粒子22の製造方法は、原則として重大ではなく、従って、いずれの従来製造技術を利用することが可能である。いくつかの製造技術が知られており、これによって、最適な技術の選択が、ナノ粒子22中に存在する特定の構成成分、サイズ分散、純度、合成速度などに依存する場合が多い。これらの技術は、気相合成法のような従来技術に基づくことができ、燃焼炎、レーザアブレーション、化学蒸気凝縮、噴霧熱分解、エレクトロスプレー、およびプラズマスプレー、または、ゲル化、析出および水熱処理に基づく湿式化学合成法であるゾル・ゲル処理を含むことができる。音響化学的処理、マイクロエマルジョン処理、高エネルギーボールミル粉砕、キャビテーション処理のような他の技術を用いることもまた可能である。さらに他の作製技術を用いることも可能であることは、当業者であれば理解されるであろう。作製技術は、ナノ粒子22の質によってのみ制限される。すなわち、好適には、得られたナノ粒子22は、放出特性において十分な均質性を有するべきである。発光(放射)スペクトルはかなり均質であるが、これは、発光スペクトルがかなり狭い単一の発光帯域を有するためである。粒子サイズ分布のばらつきも小さいことが好ましく、例えば、適用される粒子22は直径10nmと20nmとの間の粒子のみを有することが望ましい。この均質性は、通常、病変組織20へ運ばれる線量を知りたいときに、特に有利である。
【0044】
図3は、LaPO4:Pr粒子の例に関し、ナノ粒子22の走査型電子顕微鏡写真を示したものである。この写真から、粒子は約100nmの直径を有することが分かる。写真中のスケール・マーカーは1μmの長さに対応する。
【0045】
他の実施形態では、第1の実施形態のナノ粒子は、血液中に注射する代わりに、病変組織20へと直接もたらし、治療に用いることができる。例えば、ナノ粒子22の懸濁液は、注射器によって腫瘍組織20へと注入することができる。例えば2時間後に、各々の部位は、例えば7keVよりも高いエネルギーをもつX線のような好適なソースによって照射される。病変組織20が完全に分解されるまで、この治療を何度でも繰り返すことが可能である。この治療は、適用される単一の処理であってもよいし、あるいは、他の治療技術と組み合わせて用いることもできる。
【0046】
典型的には、直径が減少するにつれて、ナノ粒子22の溶解度は増加する。それゆえ、ナノ粒子が小さくなればなるほど、体内からより速く排除あるいは除去されることができる。このサイズ効果は、クリアランス時間の調整に有用であるかもしれない。
【0047】
本発明の方法は、病変組織または器官を人体から取り出し、本発明による方法に従って治療し、その後、体内へ戻すというようなある特定の場合にも適用することができる。
【0048】
さらに、本発明の方法は、特定の結合部位を設けたナノ粒子22でなくとも適用することができる。この場合、健常な組織への拡散および/または体の他の部分への拡散は、ナノ粒子の輸送を血液中に限定するコーティングまたはシェルを適用することによって抑制してもよい。
【0049】
好適な実施形態においては、母材は三価リン酸塩であることが望ましい。三価の陽イオンは、例えばLaPO4の場合はpksp=22.4というように、低い溶解度定数を有するという利点がある。さらに、血液緩衝剤の1つがHPO42-/H2PO4-イオン対であるとき、リン酸塩はほとんど毒性がない。従って、希土類リン酸塩化合物の毒性は低い。これらの好適なナノ粒子22は、非常に短い放射減衰時間、すなわち100ナノ秒よりも短い放射減衰時間をもつ活性剤として、例えばPr3+および/またはNd3+のような活性剤に依存する。これらの短い減衰時間は、吸収プロセスの後にナノ粒子22表面に対するエネルギー移行を制限し、この結果、マイクロ粒子の蛍光体のエネルギー効率に近いエネルギー効率を有するナノ粒子22の蛍光体が生じる。エネルギー移行は、どんな蛍光体においても、活性剤または増感剤(ドーパント)でのエネルギーの吸収後に生じるプロセスである。エネルギー移行の平均距離は、一のイオンから別のイオンへのエネルギー伝達効率、および、励起状態の崩壊定数に依存する。励起したイオンの崩壊が速くなるほど、エネルギー伝達が生じる可能性は低くなる。このようにして、崩壊定数が減少するにつれて、平均エネルギー移動距離は減少する。従って、一旦エネルギーが表面へと移動してしまうと、励起状態は非放射性に消滅するため、小さな粒子では、活性剤(Pr3+, Nd3+, Ce3+, Bi3+) の短い減衰時間が必要とされる。これは、Eu3+およびTb3+のような遅い活性剤を有する標準的なリン酸塩粒子が、消滅しすぎないようにするため、また、高い量子効率を達成するため、マイクロメーターの範囲のなければならない理由である。このことは、これらの遅い活性剤が、低い量子効率をもつナノ材料を生じることを同様に意味する。
【0050】
本実施形態は、安価な無機リン酸塩の適用によって低コストに抑えられているという利点もある。いくつかの典型的なリン酸塩材料の発光スペクトルを図4および図5に示す。図4は、高エネルギーの励起下における、LaPO4:Prナノ粒子22(実線)、およびYPO4:Prナノ粒子22(破線)の発光スペクトルを示す。これらのリン酸塩材料は、200nmと280nmの間の領域内で放出し、LaPO4:Prでは、225nm付近に最高発光ピーク位置を有し、YPO4:Prでは、233nm付近に最高発光ピーク位置を有することが分かる。図5は、ドーパントとしてNdを有する同じ母材に対する発光スペクトルを示す。両リン酸塩材料に対する発光(放射)は、主に220nmと175nmの間の範囲にある。
【0051】
さらに、リン酸塩の小さな粒子は容易に代謝させ、すなわち、2,3日以内に分解して最終的には体から除去される。
【0052】
上記実施形態の発光性ナノ粒子22の励起は、例えばヘリウム核(α線)または電子(β線)のようなX線照射線または高エネルギー粒子の適用によって達成される。ナノ粒子22の密度が高いために、ナノ粒子22のX線断面積は、周囲の組織のX線断面積よりもはるかに大きい。例示として、いくつかの典型的なナノ粒子22の密度を表3に示す。ナノ粒子22密度は、ハロゲンで置換されたフルオレセインまたはエリスロシンのような、標準的な放射能感受性増強物質の密度よりもずっと高い。典型的には、これらの有機放射能感受性増強物質は1g/cm3と2g/cm3の間の密度を有する。高X線断面積は、適用されるX線量が、標準的な放射線治療で必要とされる線量よりも著しく少なくできるという点で、大きな利点を有する。このことにより、健常な組織に対するダメージの減少をもたらす。
【0053】
【表3】

【0054】
吸収強度は、組織20の密度の関数として、公式(1)によって定義される。
【0055】
[数1]
Ix=I0・exp[−(μ/ρ)・ρ・x] (1)
【0056】
ここで、μ/ρは定数であり、μは線吸収係数、ρは材料密度、そしてxは組織20内の侵入深さである。従って、この公式から、高密度は、X線吸収に対する大きな断面積をもたらすのが分かる。結果として、標準的な放射線治療によって得られる治療効果と同様の効果が、はるかに低いX線量で達成することができる。
【0057】
さらなる実施形態では、ナノ粒子22の発光材料が加水分解しやすいならば、または輸送中に照射物質から成分が拡散する傾向があるならば、コーティング24を、ナノ粒子22に塗布することが可能である。このコーティング24は発光(放射)粒子22を完全に取り囲み、典型的には、1〜200nmの厚さ、好適には5〜20nmの厚さを有する。コーティング24は、単一の金、SiO2,例えばポリリン酸カルシウムのようなポリリン酸塩、例えばアスパラギン酸のようなアミノ酸、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリカルバミドのような有機ポリマー、例えばデキストラン、キシラン、グリコーゲン、ペクチン、セルロースのような多糖類、もしくはコラーゲンやグロブリンのようなポリペプチドのような生体高分子、システイン、例えば、アスパラギン酸量が多いペプチド、またはリン脂質で構成されうる。使用されるコーティング24のタイプに依存する加水分解や拡散を回避することに加えて、コーティング24は、X線の吸収を改良することができる。これはまた、ナノ粒子22の吸収に対する断面積を増やすのに有利になりうる。
【0058】
図6は、本発明に従って使用される薬剤の概略説明図の実施例を示したものであって、真空紫外線または短波長紫外線の領域にて発光する蛍光体であるナノ粒子22と、ナノ蛍光体の成分の加水分解および外部拡散を防止するコーティング24である第1のコーティング24と、第2のコーティングの抗体26とを有する。
【0059】
図7は、真空紫外線または短波長紫外線を放射する蛍光体ナノ粒子22を用いた、治療上の処置のメカニズムについての概略図を示したものである。この図は、部分28(moiety)で抗体26に結合されるナノ粒子蛍光体22を示す。部分28は、例えばカルボキシル基を有する有機分子でありうる。これは、例えばオリック(olic)酸やビオチンのような、芳香族化合物または脂肪族化合物であってもよい。後者は、アビジンに強く結合するので広く利用されており、特定の種類の抗体によって認識される。抗体26は、細胞および/または組織20の表面、またはその内部位置のいずれかに結合することが可能である。ナノ粒子蛍光体22は、X線放射線30を用いて活性化され、その結果、ナノ粒子蛍光体22によって真空紫外線または短波長紫外線の放射32が生じる。抗体26は病変組織20に選択的に結合するので、真空紫外線または短波長紫外線の放射32は、病変組織20の細胞を破壊する。この方法は単独で、または他の治療上の処置と組み合わせて適用することができる。
【0060】
本発明による他の実施形態では、人体内に埋め込まれる前に、ナノ粒子22にあらかじめエネルギーが与えられ(活性化され)、そして、後の段階でにエネルギーが放出されうる。この現象は残光と呼ばれ、蛍光材料で知られている特性である。X線照射によって、エネルギーは、格子欠陥内に、低温、例えば250K以下の温度で蓄えられる。その後、放射の開始は、人体内で37℃で生じることができ、活性剤の短波長紫外線発光が生じるようになる。この実施形態の利点は、活性剤(活性化)が治療と切り離されていることである。それゆえに、本実施形態では、人体がX線照射に曝されなくてすむ。
【0061】
細胞を破壊するために紫外線または真空紫外線の放射を用いることに加えて、上述の実施形態に記載したように、光学的画像のために前記放射を用いることもできる。内視鏡的に、すなわち、例えば肺、胃、膀胱および腸を含む管腔臓器の内部を検査するための細長い医療機器を用いることによって、紫外光を検出することができる。ナノ粒子22は、抗原−抗体反応に起因して、主に病変組織20に位置するので、病変組織20が存在する部位で、著しく高い発光強度が得られるであろう。励起するX線照射に対する放射ナノ粒子22の高感度に起因して、画像診断は、低いX線線量を用いて同じ感度を得るか、もしくは、高いX線線量を用いて増加する感度を得るかのいずれかのための行うことができる。より高い検出感度を得るための可能性は、改良された画像診断を可能にする。より高い検出感度が、病変組織20をできるだけ早期の検出できるようにすることを得ることができるという特定の利点がある。これは、例えば急速に進展するがんの早期診断にとって、非常に重要でありえる。(医学)画像診断技術は、例えばがんによって生じる損傷の程度を研究したり、あるいは、既に行われた治療処置の効果を評価したりするために用いることができる。
【0062】
以下の実施例では、2つの実例が、本発明による放射線治療のためのナノ粒子22を製造するために挙げられる。
【実施例1】
【0063】
1.45gのLu(CH3COO)3×H2O、1.64gのSi(OC2H5)4および10mgのPr(CH3COO)3×H2Oを50mlのジエチレン・グリコール中に懸濁する。懸濁液を連続的にかきまぜ、140℃まで加熱する。その後、0.5mlの1M水酸化ナトリウム水溶液を加える。続いて、この物質を190℃で8時間加熱する。冷却した後、粒子径が約15nmの、ナノスケールのLu2SiO5:Pr粒子22 (0.5mol%) を含む懸濁液が残る。その後、ナノスケールのLu2SiO5:Pr粒子22を前記溶液から分離するために懸濁液を遠心分離する。次の工程で、ナノスケールのLu2SiO5:Pr粒子22を、例えば、固体粒子22をエタノールおよび/またはアセトン中に再度懸濁し、その後に再び遠心分離処理によって粒子22を分離する、というような適当な洗浄プロセス工程で処理する。そのような方法で、形成されたナノ粒子22を第1の懸濁液から分離することができ、水溶液(例えば、等張液の各々はリン酸緩衝液)中へと移す。
【0064】
ジエチレン・グリコールベースの第1の懸濁液、または第2の水溶性懸濁液から開始すると、ナノスケールのLu2SiO5:Pr粒子22をさらに改良することができる。その方法では、前記各々の懸濁液に対し、100mgのアスパラギン酸および500mgのテトラエチル・オルトシリケートを含有する10mlの水溶液を、1時間にわたって滴下すると、アスパラギン酸を含有するSiO2の第1のカバー24をナノ粒子22の上に形成することができ、このカバー24は約15nmの厚みを有する。最後に、例えばベバシズマブのような抗体26、あるいは例えばヒスチヂンで修飾されたベバシズマブのようなヒスチジンで修飾された抗体の、10-4の水溶液を2ml加えることにとって、抗体26はアミド架橋を形成してアスパラギン酸/SiO2の層に付着できる。
【実施例2】
【0065】
6.97gのLu(CH3COO)3×H2O、0.06gのBi(CH3COO)3・H2Oおよび3.45gのNH4H2PO4を500mlのジエチレン・グリコール中に懸濁する。懸濁液を連続的にかきまぜ、140℃まで加熱する。その後、2.0mlの2M水酸化ナトリウム水溶液を加える。続いて、この懸濁液を180℃で4時間加熱する。残留した懸濁液は、粒子径が30nmの、ナノスケールのLuPO4:Bi (1mol%) 粒子22を含む。懸濁液を遠心分離することによって、ナノスケールの粒子22をこの第1の懸濁液から分離することによって、ナノ粒子22を水溶液中へと移し、その後、例えば、固溶体をエタノールおよび/またはアセトン中に再度懸濁し、その後に再び遠心分離する、というような適当な洗浄プロセスで処理される。
【0066】
ジエチレン・グリコールベースの第1の懸濁液、または第2の水溶性懸濁液のいずれかから開始すると、ナノスケールのLuPO4:Bi粒子22をさらに改良することができる。第1または第2の懸濁液に対し、アスパラギン酸で修飾されたデキストランの10-3Mの水溶液20mlを滴下する。その方法では、デキストランの第1のカバー24をナノ粒子22の上に形成することができ、デキストランのカバー24は、約20nmの厚みを有する。最後に、例えば抗CEA抗体のような抗体26、あるいは例えばヒスチヂンで修飾された抗CEA抗体のようなヒスチジンで修飾された抗体の、10-4の水溶液を3ml加えることによって、抗体26はアミド架橋を形成してアスパラギン酸/デキストランの層に付着できる。
【0067】
ここでは、、材料ばかりでなく、好適な実施形態、特定の構成および配置が、本発明に従う装置に関して記載したけれども、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなしに、形式および細部において種々の変更や改良を行うことが可能であることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】放射線核種を用いることにより、がんを治療する従来方法の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に従う抗体に共役した紫外線放射ナノ粒子を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に従う約100nmの粒子サイズを有するLaPO4:Prナノ粒子の、走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施形態に従う、LaPO4:Pr(実線)およびYPO4:Pr(破線)ナノ粒子の高エネルギー励起に対する波長の関数としての発光強度のグラフである。
【図5】本発明の実施形態に従う、LaPO4:Nd(実線)およびYPO4:Nd(破線)ナノ粒子の高エネルギー励起に対する波長の関数としての発光強度のグラフである。
【図6】本発明の実施形態に従う、りん酸塩ナノ粒子のX線励起下での真空紫外線放射を用いた、がんの治療方法についての概略説明図である。
【図7】本発明の実施形態に従う、抗体に共役した紫外線放射ナノ粒子の特定の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像または生体材料の放射線治療において使用するナノ粒子であって、該ナノ粒子が、高エネルギー放射線を吸収しかつ真空紫外線または短波長紫外線の放射線を放出する、真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料を有し、生物対象の特定薬剤と共役させたナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、放射線治療に使用するためのナノ粒子である請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記高エネルギー放射線はX線である請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記生物対象の特定薬剤は抗体または抗体フラグメントである請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記抗体または抗体フラグメントは、病変組織に対して特異度を有する請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
ナノ粒子の前記紫外線放射材料に被覆層を設ける請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記被覆層は、前記紫外線放射材料の加水分解を防止する請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料は、M2SiO5:X, MAlO3:X, M3Al5O12:X, MPO4:X, MBO3:X, MB3O6:X (ただしM=Y, La, Gd, LuおよびX=Pr, Ce, Bi, Nd)、またはMM´O3:X (ただしM=Y, La, Gd, Lu,M´=Y, La, Gd, Lu, BiおよびX=Pr, Ce, Bi)のいずれか、またはMSO4:Z (ただしM=Sr, CaおよびZ=Nd, Pr, Ce, Pb)のいずれか、または、LuPO4:Nd, YPO4:Nd, LaPO4:Nd, LaPO4:Pr, LuPO4:Pr, YPO4:Pr, YPO4:Biのいずれかの群から選択される1種以上の物質である請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料は、三価リン酸塩である請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記ナノ粒子は、活性剤でドープされる請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記活性剤は、100ナノ秒よりも短い減衰時間を有する請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記活性剤は、Pr3+またはNd3+である請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項13】
造影剤または放射線治療薬剤として、高エネルギー放射線を吸収しかつ真空紫外線または短波長紫外線の放射線を放出する、真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料を有するナノ粒子の使用。
【請求項14】
造影剤または放射線治療薬剤の製造における、請求項13に記載のナノ粒子の使用。
【請求項15】
前記高エネルギー放射線はX線である請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記ナノ粒子は、生物対象の特定薬剤と共役させた請求項13に記載の使用。
【請求項17】
前記生物対象の特定薬剤は、抗体または抗体フラグメントである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体または抗体フラグメントは、前記生物対象に関する特異度を有する請求項17に記載の使用。
【請求項19】
ナノ粒子の前記紫外線放射材料に被覆層を設ける請求項13に記載の使用。
【請求項20】
前記被覆層は、前記紫外線放射材料の加水分解を防止する請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記真空紫外線または短波長紫外線の紫外線放射材料は、M2SiO5:X, MAlO3:X, M3Al5O12:X, MPO4:X, MBO3:X, MB3O6:X (ただしM=Y, La, Gd, LuおよびX=Pr, Ce, Bi, Nd)、またはMM´O3:X (ただしM=Y, La, Gd, Lu,M´=Y, La, Gd, Lu, BiおよびX=Pr, Ce, Bi)のいずれか、またはMSO4:Z (ただしM=Sr, CaおよびZ=Nd, Pr, Ce, Pb)のいずれか、または、LuPO4:Nd, YPO4:Nd, LaPO4:Nd, LaPO4:Pr, LuPO4:Pr, YPO4:Pr, YPO4:Biのいずれかの群から選択される1種以上の物質である請求項13に記載の使用。
【請求項22】
前記紫外線放射材料は、三価リン酸塩である請求項13に記載の使用。
【請求項23】
前記ナノ粒子は、活性剤でドープされる請求項13に記載の使用。
【請求項24】
前記活性剤は、Pr3+またはNd3+である請求項23に記載の使用。
【請求項25】
請求項1記載のナノ粒子を提供し、該ナノ粒子を人間または動物の罹患生物に投与し、そして、前記罹患生物に高エネルギー放射線を照射することによって前記罹患生物を治療する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−514736(P2007−514736A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544645(P2006−544645)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052725
【国際公開番号】WO2005/058360
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】