説明

紫外線殺菌装置及び紫外線殺菌方法

【課題】透過性の低い切削油であっても殺菌効率が良い紫外線殺菌装置を提供すること。
【解決手段】紫外線殺菌装置100は、紫外線照射によりクーラントを殺菌する紫外線殺菌装置であって、クーラントの薄膜が形成される網目部材121が複数連設されて、輪状に形成された薄膜形成部120と、薄膜形成部120が巻き回された複数のローラー部130と、ローラー部130を回転駆動する回転駆動装置102と、薄膜形成部120に対向配置され、紫外線を照射する紫外線ランプ140と、を備え、クーラントの薄膜が形成される網目部材121を複数連接し輪状に形成した薄膜形成部120を、ローラー部130に巻き回し、このローラー部130を回転駆動装置102により回転駆動し、この薄膜形成部120に対向配置した紫外線ランプ140により紫外線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線殺菌装置及び紫外線殺菌方法に関し、詳しくは紫外線照射により切削油を殺菌する紫外線殺菌装置及び紫外線殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、切削及び研削等の金属加工をする加工装置において、潤滑や冷却を目的とした水溶性油剤であるクーラントと称される切削油が用いられている。このクーラントは、クーラント供給装置により加工装置に供給され、この加工装置において潤滑や冷却に用いられた後、再び加工装置からクーラント供給装置に戻される。
このクーラント供給装置は、加工装置から戻されたクーラントを貯留する一次クーラントタンクと、一次クーラントタンクに貯留されたクーラントを濾過する濾過装置と、濾過装置を経たクーラントを貯留する二次クーラントタンクを備え、この二次クーラントタンクに貯留されたクーラントを加工装置に供給する。
【0003】
ところで、このクーラントは、循環して使用していると、加工装置における熱や、外気温の上昇に伴う熱により、細菌が発生し、異臭を発生する場合がある。このような異臭は、作業環境を悪化させることがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、クーラントを循環して使用する際、循環経路中にクーラントの深さが浅くなる部分を設け、この部分を通過するクーラントに紫外線を照射し、クーラントを殺菌する紫外線殺菌方法が提案されている。
【0005】
この紫外線殺菌方法によれば、透過性の悪いクーラントであっても、クーラントの深さが浅くなる部分において紫外線を照射することで、クーラントを殺菌できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−264199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の紫外線殺菌方法では、クーラントの深さが浅くなる部分を循環経路中に設けているので、クーラントを所定の流速で循環させると、クーラントの深さを紫外線が届く深さより浅くできないことや、紫外線による殺菌作用を得るための照射時間が短くなることがあり、殺菌効率が低下する場合があった。
【0008】
本発明は、透過性の低い切削油であっても殺菌効率が良い紫外線殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紫外線殺菌装置(例えば、後述の紫外線殺菌装置100)は、紫外線照射により切削油(例えば、後述のクーラント)を殺菌する紫外線殺菌装置であって、切削油の薄膜が形成される網目部材(例えば、後述の網目部材121)が複数連設されて、輪状に形成された薄膜形成部(例えば、後述の薄膜形成部120)と、前記薄膜形成部が巻き回された複数のローラー部(例えば、後述のローラー部130)と、前記ローラー部を回転駆動する回転駆動装置(例えば、後述の回転駆動装置102)と、前記薄膜形成部に対向配置され、紫外線を照射する照射手段(例えば、後述の紫外線ランプ140)と、を備えた。
【0010】
この発明によれば、切削油の薄膜が形成される網目部材を複数連接し輪状に形成した薄膜形成部を、ローラー部に巻き回し、このローラー部を回転駆動装置により回転駆動する。そして、この薄膜形成部に対向配置した照射手段により紫外線を照射する。
これにより、切削油を薄膜にしてから紫外線を照射できるので、透過性の低い切削油であっても確実に紫外線が届き切削油を殺菌できる。また、ローラー部の回転速度を回転駆動装置により調整することで、切削油の薄膜が形成された網目部材が照射手段に対向する位置を通過する時間を、紫外線による殺菌作用を得るのに適切な照射時間に調整することができる。
よって、透過性の低い切削油であっても殺菌効率が良い紫外線殺菌装置を提供できる。
【0011】
本発明の紫外線殺菌方法は、紫外線照射により切削油を殺菌する紫外線殺菌方法であって、網目部材に対して切削油を滴下し、前記網目部材において切削油の薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜形成工程を経た前記網目部材を連れ回す連れ回し工程と、前記連れ回し工程により連れ回された前記網目部材に形成された前記薄膜に対して紫外線を照射する紫外線照射工程と、を備える。
【0012】
この発明によれば、網目部材に対して切削油を滴下し、網目部材において切削油の薄膜を形成し、この網目部材を連れ回し、この連れ回された網目部材に形成された薄膜に対して紫外線を照射できる。
これにより、網目部材に対して切削油を滴下することで、網目部材において切削油の薄膜を形成できる。そして、この切削油の薄膜に対して紫外線を照射できるので、透過性の低い切削油であっても確実に紫外線が届き切削油を殺菌できる。また、網目部材を連れ回す速度を調整することで、紫外線照射工程の時間を、紫外線による殺菌作用を得るのに適切な照射時間に調整することができる。
よって、透過性の低い切削油であっても殺菌効率が良い紫外線殺菌装置を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透過性の低い切削油であっても殺菌効率が良い紫外線殺菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るクーラント供給システムの構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係る紫外線殺菌照射部の上面図である。
【図3】前記実施形態に係る紫外線殺菌照射部の図2中AA’断面を示す図である。
【図4】前記実施形態に係る薄膜形成部及びローラー部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1を参照してクーラント供給システム1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクーラント供給システム1の構成を示す図である。
【0016】
本実施形態に係るクーラント供給システム1は、一次クーラントタンク11からのクーラントを供給する一次クーラント供給部10と、使用済みのクーラントを濾過し、濾過したクーラントの供給を行う二次クーラント供給部2と、から構成され、濾過済みのクーラントを工作機械部6に供給する。そして、工作機械部6で使用された使用済みのクーラントは、工作機械60及び一次側ライン20から一次クーラントタンク11に連通するクーラント回収トラフ61を通って一次クーラントタンク11に流入し、再利用される。
【0017】
一次クーラント供給部10は、使用済みのクーラントを貯留する一次クーラントタンク11と、一次フィルタ12と、一次ポンプ13と、一次フィルタ12及び一次ポンプ13の動作を制御する一次クーラント制御部14と、から構成される。
【0018】
一次クーラントタンク11は、工作機械60で使用された使用済みのクーラントが貯留されるタンクである。使用済みのクーラントに含まれる加工滓は、一次クーラントタンク11内に沈殿して分離される。
一次フィルタ12は、クーラント回収トラフ61から流入するクーラントに含まれるスラッジや工作機械60から出る加工滓を除去するものであり、除去したスラッジや加工滓はチップコンベアにより一次クーラントタンク11の外に運搬され、加工滓集積部15に集積される。
【0019】
一次ポンプ13は、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30へクーラントを流通させるポンプである。
一次クーラント制御部14は、一次クーラント供給部10を制御する。具体的には、一次クーラント制御部14は、一次フィルタ12及び一次ポンプ13の始動や停止を制御する。
【0020】
二次クーラント供給部2は、一次クーラント供給部10に連通して一次クーラントタンク11内のクーラントを供給する一次側ライン20と、一次側ライン20から供給されたクーラントが貯留される二次クーラントタンク30と、二次クーラントタンク30から工作機械60それぞれにクーラントを供給する二次ライン40と、二次クーラント供給部2を制御する二次クーラント制御部50と、二次クーラントタンク30に貯留されたクーラントを殺菌する紫外線殺菌装置100と、により構成される。
【0021】
一次側ライン20は、一次クーラントタンク11内のクーラントを、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30に供給するラインである。
この一次側ライン20は、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30に連通する一次供給管21と、一次供給管21の途中に設けられ、一次クーラントタンク11に貯留されたクーラントの不純物を分離するフィルタ22と、一次供給管21の途中であってフィルタ22の上流側に設けられる上流側開閉バルブ23と、同様にフィルタ22の下流側に設けられる下流側開閉バルブ24と、フィルタ22の排出口からクーラント回収トラフ61にクーラントを流入させる排出流路221と、により構成される。
【0022】
一次供給管21は、一次クーラント供給部10から、上流側開閉バルブ23、フィルタ22、下流側開閉バルブ24及び二次クーラントタンク30をそれぞれ連通する供給管であり、一次ポンプ13により取水されたクーラントが通過する管である。
【0023】
フィルタ22は、本実施形態ではサイクロン式の濾過装置である。このフィルタ22は、二次クーラント制御部50によりその始動又は停止が制御される。フィルタ22は、クーラントに含まれる固形粒子等の不純物を除去するフィルタである。
【0024】
排出流路221は、フィルタ22それぞれの排出口から、クーラント回収トラフ61にクーラントを流入させるように形成された排出用の流路である。この流路は、パイプ状の部材又はトラフのような溝状の部材により形成される。この排出流路221には、フィルタ22がクーラントから分離した不純物を高濃度に含む廃液が排出され、クーラント回収トラフ61にこれらの廃液が導出される。排出流路221の出口は、クーラント回収トラフ61の上流側となるように設けられることが好ましい。この上流側とは、クーラント回収トラフ61において、工作機械60からクーラント回収トラフ61に接続する部分近傍か、これよりも遠い位置であることを示す。
この排出流路221の途中には、ドレインバルブ222が設けられており、排出流路221に流れるクーラントの流量を調節する。
【0025】
上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24は、一次供給管21を遮断又は開放するバルブであり、本実施形態では電磁弁が使用され、二次クーラント制御部50により制御される。
【0026】
二次クーラントタンク30は、フィルタ22により不純物が除去されたクーラントが貯留されるタンクである。二次クーラントタンク30には、二次クーラントタンク30内のクーラント量を検知するフロートスイッチ31が設けられる。
【0027】
フロートスイッチ31は、二次クーラントタンク30内に貯留されるクーラントの液面を検知する。詳細には、二次クーラントタンク30内のクーラントの液面の高さを検知して、その高さを示す信号を二次クーラント制御部50に送信する。液面が上昇又は下降するのに応じて、液面に浮かぶフロート(図示せず)も同様に上昇又は下降し、フロートの位置で液面を検知する。
【0028】
二次ライン40は、工作機械60に二次クーラントタンク30内のクーラントを供給するラインであり、工作機械60に連通する二次供給管41と、二次供給管41の途中に設けられて二次クーラントタンク30内のクーラントを二次ライン40に流通させる二次ポンプ42と、二次供給管41の途中であって、二次ポンプ42と工作機械60の間に設けられる圧力センサ43とにより構成される。
【0029】
二次供給管41は、二次クーラントタンク30と工作機械60とを連通して、二次クーラントタンク30内のクーラントを工作機械60に供給する管である。
【0030】
二次ポンプ42は、二次クーラントタンク30から工作機械60へクーラントを流通させるポンプである。また、二次ポンプ42は、二次クーラント制御部50により始動や停止が制御される。
二次ポンプ42は、本実施形態においては、インバータ44を有しており、二次クーラント制御部50はこのインバータ44に指令信号を送信することで二次ポンプ42を制御する。
【0031】
圧力センサ43は、二次供給管41の途中であって、二次ポンプ42と工作機械60との間に設けられるセンサである。この圧力センサ43は、二次ポンプ42から工作機械60までの二次供給管41の圧力を測定する。また、圧力センサ43が測定した圧力は、常時二次ポンプ42のインバータ44にフィードバックされ、インバータ44を通じて二次クーラント制御部50が当該圧力をモニタするとともに、最適な圧力を維持するように二次ポンプ42の回転数が制御される。
【0032】
二次クーラント制御部50は、二次クーラント供給部2を制御する。具体的には、一次側ライン20では、二次クーラント制御部50は、フィルタ22の始動や停止、回転数等を制御し、上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24及びドレインバルブ222の開閉を制御する。また、二次ライン40では、二次クーラント制御部50は、インバータ44を介して二次ポンプ42の始動や停止、回転数等を制御する。圧力センサ43は、測定した圧力値を二次ポンプ42のインバータ44に送信し、二次ポンプ42のインバータ44を通じて二次クーラント制御部50が間接的に制御する。
また、二次クーラント制御部50は、一次クーラント供給部10の一次クーラント制御部14及び工作機械部6とそれぞれ通信を行い、工作機械60の稼働に合わせて二次ポンプ42、フィルタ22、上流側開閉バルブ23、下流側開閉バルブ24等の動作を制御する。
さらに、二次クーラント制御部50は、紫外線殺菌装置100の動作を制御する。
【0033】
紫外線殺菌装置100は、クーラントを紫外線殺菌する紫外線殺菌照射部101と、紫外線殺菌照射部101を駆動する回転駆動装置102と、二次クーラントタンク30から紫外線殺菌照射部101に延びる往き配管103と、往き配管103に設けられ二次クーラントタンク30からクーラントを揚水する殺菌用ポンプ104と、紫外線殺菌照射部101から二次クーラントタンク30に延びる戻り配管105と、から構成される。
【0034】
図2は、前記実施形態に係る紫外線殺菌照射部101の上面図である。図3は、前記実施形態に係る紫外線殺菌照射部101の図2中AA’断面を示す図である。
【0035】
紫外線殺菌照射部101は、本体110と、本体110の内部に収容された薄膜形成部120と、薄膜形成部120が巻き回された2つのローラー部130と、薄膜形成部120に対向配置され、紫外線を照射する紫外線ランプ140と、薄膜形成部120にクーラントを滴下するクーラント滴下部150と、クーラント滴下部150の下方に設けられた一次クーラント受け部160と、一次クーラント受け部160の外側に設けられた二次クーラント受け部170と、から構成される。
本体110は、箱状に形成され、底面に一次クーラント受け部160及び二次クーラント受け部170が設けられ、上面に紫外線ランプ140が設けられている。
【0036】
図4は、前記実施形態に係る薄膜形成部120及びローラー部130の斜視図である。
薄膜形成部120は、クーラントの薄膜が形成される複数の網目部材121と、網目部材121を保持するベルト122と、から構成される。
【0037】
網目部材121は、網目が形成された略長方形のシート体である。網目部材121は、複数枚が所定の間隔を空けて、ベルト122に連接されている。網目部材121は、網目を介してクーラントが通過可能であり、クーラントが通過することで、この網目においてクーラントの薄膜が形成される。
【0038】
ベルト122は、輪状に形成され、網目部材121の両端にそれぞれ1本ずつ配置される。ベルト122の表面には、網目部材121の網目と係合するフック122aが形成されている。ベルト122は、このフック122aにより網目部材121の両端近傍の網目と係合することで、網目部材121を保持する。また、網目部材121は、劣化等した場合にはこのベルト122のフック122aとの係合が外され交換される。
また、ベルト122の裏面には、ローラー部130と係合するベルト側歯122bが形成されている。
【0039】
図2及び図3に戻って、ローラー部130は、回転軸となるシャフト131と、シャフト131と同心に固定されたホイール132と、から構成される。
シャフト131は、その両端において、支持部材131aにより二次クーラント受け部170に回転可能に軸支されている。
ホイール132は、円筒状に形成され、両端外周面にベルト122のベルト側歯122bと係合するホイール歯132aが形成されている。ホイール132は、ホイール歯132aがベルト側歯122bと係合しつつ回転することで、ホイール132及びベルト122にクーラントが付着しても確実にベルト122を回転できる。
【0040】
また、2つのローラー部130のうち一方のローラー部130は、ホイール132の一部が一次クーラント受け部160を通過する位置で軸支され、他方のローラー部130は、一方のローラー部130より高い位置で軸支されている。
【0041】
紫外線ランプ140は、薄膜形成部120の上部において、薄膜形成部120に沿って配置されている。紫外線ランプ140は、殺菌効果の高い波長(例えば、260nm近辺)の光を効率良く発光するランプ(例えば、低圧水銀ランプ等)が用いられている。薄膜形成部120において形成されたクーラントの薄膜は、紫外線ランプ140の下を通過時に紫外線が照射され殺菌される。この紫外線ランプ140は、照射開始及び停止を二次クーラント制御部50(図1参照)により制御される。
【0042】
クーラント滴下部150は、クーラントが流入されるクーラント滴下部本体151において、流入されたクーラントを下方に滴下するためのスリット152が形成され、オーバーフロー管153が設けられている。クーラント滴下部150は、2つのローラー部130の間に配置されている。
【0043】
クーラント滴下部本体151は、ローラー部130に沿って延びる箱状に形成され、その両端において、二次クーラント受け部170に支持されている。また、クーラント滴下部本体151には、往き配管103が接続され、殺菌用ポンプ104(図1参照)により二次クーラントタンク30(図1参照)から揚水されたクーラントが流入される。
スリット152は、クーラント滴下部本体151に沿って形成されたスリット孔であり、薄膜形成部120の幅と略同じ長さで形成されている。クーラント滴下部本体151に流入されたクーラントは、このスリット152から落下し、薄膜形成部120に滴下される。
オーバーフロー管153は、クーラント滴下部本体151の略中央において、垂直方向に配置された管である。クーラント滴下部本体151に流入されたクーラントは、所定量が溜まると、このオーバーフロー管153から一次クーラント受け部160に流出する。
【0044】
一次クーラント受け部160は、二次クーラント受け部170の内部に形成された2つの一次クーラント受け部壁160aにより区画された部分である。
二次クーラント受け部170は、上面が開放された箱状体であり、側壁において、ローラー部130のシャフト131を軸支し、またクーラント滴下部150のクーラント滴下部本体151を支持する。また、二次クーラント受け部170には、戻り配管105が接続されている。
一次クーラント受け部160における2つの一次クーラント受け部壁160aは、二次クーラント受け部170において戻り配管105が接続されている方向に設けられた方の一次クーラント受け部壁160aの高さが、他方の一次クーラント受け部壁160aの高さより低い。これにより、一次クーラント受け部160に貯留されたクーラントは、二次クーラント受け部170において戻り配管105が接続されている方向に溢れ出す。
【0045】
一次クーラント受け部160には、クーラント滴下部150から薄膜形成部120に滴下されたクーラントのうち、薄膜形成部120の網目部材121において薄膜となった分の残りのクーラントが貯留される。この一次クーラント受け部160に貯留されたクーラントは、ホイール132の一部が一次クーラント受け部160を通過するときに、薄膜形成部120において殺菌されたクーラントと、交換される。これにより、一次クーラント受け部160には、殺菌されたクーラントが徐々に貯留されていく。
そして、殺菌されたクーラントは、一次クーラント受け部160に徐々に貯留され、その水位が、戻り配管105が接続されている方向に設けられた一次クーラント受け部壁160aより高くなるまで溜まると、二次クーラント受け部170に溢れ出す。この二次クーラント受け部170に溢れ出したクーラントは、戻り配管105に流入し、二次クーラントタンク30(図1参照)に流出する。
【0046】
図1に戻って、回転駆動装置102は、紫外線殺菌照射部101のローラー部130(図2参照)を回転駆動させる。具体的には、ローラー部130のシャフト131(図2参照)を回転ベルト(図示無し)を介して回転させる。この回転駆動装置102は、回転速度や駆動開始及び停止を二次クーラント制御部50により制御される。具体的には、二次クーラント制御部50は、クーラントの薄膜が形成された網目部材121が紫外線ランプ140に対向する位置を通過する時間が、紫外線による殺菌作用を得るのに適切な照射時間となる速度で、回転駆動装置102を回転駆動させる。
往き配管103は、殺菌用ポンプ104により揚水された二次クーラントタンク30内のクーラントを、紫外線殺菌照射部101に供給するための管である。
殺菌用ポンプ104は、作動開始及び停止を二次クーラント制御部50により制御される。
戻り配管105は、紫外線殺菌照射部101において殺菌されたクーラントを、重力により、二次クーラントタンク30に戻すための管である。そして、この殺菌されたクーラントが二次クーラント供給部2から工作機械60に供給される。
【0047】
工作機械60は、工作機械制御部601と、開閉バルブ602とを少なくとも有する。
工作機械制御部601は、工作機械60の動作及び開閉バルブ602の動作を制御する。
開閉バルブ602は、二次クーラント供給部2と工作機械60との間に配置され、二次クーラント供給部2から連通する二次供給管41を遮断又は開放するバルブである。
【0048】
また、工作機械60と一次クーラントタンク11とは、クーラント回収トラフ61により連通する。クーラント回収トラフ61は、工作機械60と一次クーラントタンク11とを連通して、工作機械60で使用された使用済みのクーラントを回収して、一次クーラントタンク11に導出する。また、クーラント回収トラフ61には、フィルタ22の排出流路221がクーラント回収トラフ61の上流側に接続され、フィルタ22の廃液も導入される。
【0049】
次に、図1を参照して、クーラント供給システム1の動作について説明する。
まず、二次クーラント制御部50は、二次クーラントタンク30の液面高さを、フロートスイッチ31から液面高さを示す信号に基づき検知し、液面が所定の高さであれば、上流側開閉バルブ23を開ける。これにより、フィルタ22に一次クーラントタンク11内のクーラントが供給される。
次に、二次クーラント制御部50は、フィルタ22に始動信号を送信してフィルタ22を始動させて濾過を開始させ、下流側開閉バルブ24をオンにして開けた状態にし、フィルタ22を通過したクーラントを二次クーラントタンク30に供給する。次に、二次クーラント制御部50は、工作機械制御部601から工作機械60が稼働を開始する旨の信号を受信すると、工作機械60に連通する二次供給管41に設けられた二次ポンプ42の稼働を開始する。また、工作機械制御部601は、開閉バルブ602を開けた状態とし、当該工作機械60にクーラントの供給を開始する。そして、工作機械制御部601は、工作機械60の潤滑や冷却に用いたクーラントをクーラント回収トラフ61に導出する。クーラント回収トラフ61に導出されたクーラントは、一次クーラントタンク11に戻される。
【0050】
次に、図3を参照して、紫外線殺菌装置100により二次クーラントタンク30のクーラントを殺菌する工程について説明する。
まず、二次クーラント制御部50(図1参照)は、殺菌用ポンプ104(図1参照)を動作させ、二次クーラントタンク30(図1参照)内のクーラントを、揚水し紫外線殺菌照射部101のクーラント滴下部本体151に供給する。クーラント滴下部本体151に供給されたクーラントは、薄膜形成部120の網目部材121に滴下され、網目部材121においての薄膜となる。
そして、二次クーラント制御部50(図1参照)は、回転駆動装置102を動作させ、ローラー部130を回転駆動させる。これにより、ローラー部130のホイール132が回転し、薄膜が形成された網目部材121を連れ回し、紫外線を照射する紫外線ランプ140の下を通過させる。このように、クーラントの薄膜に対して紫外線を照射することで、クーラントが殺菌される。この殺菌されたクーラントは、一次クーラント受け部160に徐々に貯留され、二次クーラント受け部170に溢れ出す。そして、この二次クーラント受け部170に溢れ出したクーラントは、戻り配管105に流入し、二次クーラントタンク30に流出される。
【0051】
本実施形態によれば、以下のような作用効果がある。
本実施形態によれば、クーラントを薄膜にしてから紫外線を照射できるので、透過性の低いクーラントであっても確実に紫外線が届きクーラントを殺菌できる。また、ローラー部130の回転速度を回転駆動装置102により調整することで、クーラントの薄膜が形成された網目部材121が紫外線ランプ140に対向する位置を通過する時間を、紫外線による殺菌作用を得るのに適切な照射時間に調整することができる。
よって、透過性の低いクーラントであっても殺菌効率が良い紫外線殺菌装置を提供できる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
100 紫外線殺菌装置
102 回転駆動装置
120 薄膜形成部
121 網目部材
130 ローラー部
140 紫外線ランプ(照射手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射により切削油を殺菌する紫外線殺菌装置であって、
切削油の薄膜が形成される網目部材が複数連設されて、輪状に形成された薄膜形成部と、
前記薄膜形成部が巻き回された複数のローラー部と、
前記ローラー部を回転駆動する回転駆動装置と、
前記薄膜形成部に対向配置され、紫外線を照射する照射手段と、を備える紫外線殺菌装置。
【請求項2】
紫外線照射により切削油を殺菌する紫外線殺菌方法であって、
網目部材に対して切削油を滴下し、前記網目部材において切削油の薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜形成工程を経た前記網目部材を連れ回す連れ回し工程と、
前記連れ回し工程により連れ回された前記網目部材に形成された前記薄膜に対して紫外線を照射する紫外線照射工程と、を備える紫外線殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225676(P2011−225676A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95228(P2010−95228)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】