説明

紫外線照射用光源

【課題】紫外線照射ランプの高温化防止を図った紫外線照射用光源を提供する
【解決手段】外管22の外面には、T,C,Z,S,Zのうちの1種以上から構成される金属酸化物を含む金属酸化物膜4が被着されている。こうして、金属酸化物膜4の被着を外管22に行ったことで、金属酸化物膜4の面積が広くなり、冷却液による金属酸化物膜4の冷却効果が高まり、その結果、紫外線照射ランプ1の高温化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射ランプと熱線カットフィルターを二重管形の水冷ジャケットに保持した紫外線照射用光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光化学反応用光源は、例えば、樹脂の硬化に用いる。樹脂の硬化に有効な波長域は、一般的には300〜400nmあるいは300〜430nmと考えられている。一方、それ以外の波長域の光は、樹脂の硬化に有効でないばかりか、樹脂の温度上昇と劣化をまねくことがある。よって、照射対象には所望の波長成分の紫外線だけを照射するのが望ましい。
【0003】
従来の紫外線照射用光源(以下、「従来光源」という)は、特許文献1にも記載されているように、紫外線照射ランプと紫外域選択波長透過フィルターが、二重管形の水冷ジャケット2において、内管の内表面に300nm以下の波長成分を吸収するT ,Ce2 等の金属酸化物膜を被着した石英ガラス管で構成している。
【0004】
従来光源では、内管の内側の紫外線照射ランプから光が放射され、そのうちの300nm以下の波長成分が金属酸化物膜で吸収される。これにより、300nm以下の波長成分は照射対象には達せず、こうして、照射対象である樹脂の温度上昇と劣化を防止することができる。
【特許文献1】特開平06−267509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、従来光源では、水などの冷却液が、水冷ジャケット内を循環する。
【0006】
紫外線照射ランプの消費電力は数kWと大きく、紫外線照射ランプが自身の温度上昇により損傷するのを防止すべく、こうして、冷却水により紫外線照射ランプが冷却される。また、冷却により紫外線照射ランプの出力特性を安定させることができる。
【0007】
しかしながら、従来光源では、300nm以下の波長成分が金属酸化物膜で吸収されるので、内管の内表面に金属酸化物膜が被着されているために、ランプが収容された水冷ジャケット内の空間の内部に熱がこもる傾向がある。そのため、紫外線照射ランプが高温になり、紫外線照射ランプが損傷する虞がある。また、高温化により、紫外線照射ランプにおける紫外線の出力特性が不安定になる虞がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、紫外線照射ランプの高温化防止を図った紫外線照射用光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る紫外線照射用光源は、紫外線照射ランプと、前記紫外線照射ランプを内包する内管および該内管の外側に設けられた外管を備える二重管形の水冷ジャケットと、この水冷ジャケットの前記外管の内面或いはは外面または前記内管の外面に設けられ、前記紫外線照射ランプから放射される300nm以下の波長成分を吸収する手段と、を備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る紫外線照射用光源によれば、300nm以下の波長成分を吸収する手段を二重管形の水冷ジャケットの外管の内面或いは外面または内管の外面に設けたことで、内管と外管の間に循環する冷却液による冷却効果が高まり、もって、紫外線照射ランプの高温化防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る紫外線照射用光源(第1の実施の形態の説明においては「本光源」という)の概略側面図である。
【0013】
本光源は、紫外線照射ランプ1と水冷ジャケット2と熱線カットフィルター3を備えている。紫外線照射ランプ1は直管状の石英ガラス製発光管の両端に一対の電極を封着し、管内に希ガスと水銀及びFe,Sn,Co,Mgなど紫外域に有効な発光が得られる金属ハロゲン化物が一種以上封入されている。水冷ジャケット2は円筒状の石英ガラス等の透明な材料よりなり、内管21とその外側に設けられた外管22を備え、二重管構造となっている。紫外線照射ランプ1は、内管21に内包されている。
【0014】
ジャケットの外周端部に設けられた接続管23a,23bを通して外部から水などの冷却液が循環される。熱線カットフィルター3は管状の低軟化点ガラスからなり、ランプから放射される光のうち、例えば樹脂の硬化に有効な430nm以下の波長域の光を透過し、430nm以上の波長の可視光を吸収する特性があり、かつランプからの熱による温度上昇を最小限にとどめるため内管21と外管22の間に配置され冷却液中に浸漬される。
【0015】
外管22の外面には、金属酸化物を含む金属酸化物膜4が被着されている。この金属酸化物は、T,C,Z,S,Zの少なくとも1種以上より構成される。
【0016】
金属酸化物膜4は、紫外線照射ランプ1から放射される光のうちの300nm以下の波長成分を吸収するように成分調整がなされている。
【0017】
そして、紫外線照射ランプ1から光が放射されると、まず、熱線カットフィルター3が、430nm以上の波長成分を吸収する。次に、外管22の外面に被着した金属酸化物膜4が300nm以下の波長成分を吸収する。したがって、樹脂の硬化に有効な300〜430nmの波長域の紫外線が水冷ジャケット2を透過し、樹脂などの照射対象に照射される。
【0018】
図2は、紫外線照射ランプ1の管壁の温度(発光管管壁温度という)を本光源と従来光源とで比較した図である。
【0019】
図2から明らかなように、本光源では、外管22の外面に金属酸化物膜4を被着したことにより、その発光管管壁温度を、従来光源の発光管管壁温度より低くすることができる。
【0020】
これは、金属酸化物膜4を外管22に被着したことで、金属酸化物膜4の面積が広くなり、冷却液による金属酸化物膜4の冷却効果が高まったことによるものと考えることができる。
【0021】
したがって、本光源によれば、紫外線照射ランプ1の高温化を防止でき、よって、紫外線照射ランプ1の損傷を防止し、紫外線照射ランプ1における紫外線の出力特性を安定化させることができる。
【0022】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態に係る紫外線照射用光源(第2の実施の形態の説明においては「本光源」という)の概略側面図である。
【0023】
本光源は、第1の実施の形態に係る紫外線照射用光源の構成要素と同様なものを備えるので、その要素には同一符号を付与して説明を簡略化し、相違点を中心に説明する。
【0024】
本光源は、紫外線照射ランプ1と水冷ジャケット2と熱線カットフィルター3を備えている。
【0025】
内管21の外面には、金属酸化物を含む金属酸化物膜4aが被着されている。また、外管22の内面には、同じ金属酸化物を含む金属酸化物膜4aが被着されている。この金属酸化物は、T,C,Z,S,Zの少なくとも1種以上より構成される。
【0026】
金属酸化物膜4a、4bは共に、紫外線照射ランプ1から放射される光のうちの300nm以下の波長成分を吸収するように成分調整がなされている。
【0027】
しかも、その波長成分が外側の金属酸化物膜4bでも吸収されるように、内側の金属酸化物膜4aは、その波長成分に対しての透過性を有する。
【0028】
そして、紫外線照射ランプ1から光が放射されると、まず、内管21の外面に被着した金属酸化物膜4aが300nm以下の波長成分の一部を吸収する。次に、熱線カットフィルター3が、430nm以上の波長成分を吸収する。次に、外管22の内面に被着した金属酸化物膜4bが、金属酸化物膜4aを通過した300nm以下の波長成分を吸収する。したがって、樹脂の硬化に有効な300〜430nmの波長域の紫外線が水冷ジャケット2を透過し、樹脂などの照射対象に照射される。
【0029】
図示しないが、本光源では、内管21の外面と外管22の内面に金属酸化物膜を被着したことにより、その発光管管壁温度が、従来光源の発光管管壁温度より低くなるという実験結果が得られた。
【0030】
これは、内管21の外面と外管22の内面に金属酸化物膜を被着したことで、金属酸化物膜の面積が広くなり、冷却液による金属酸化物膜の冷却効果が高まったことによるものと考えることができる。
【0031】
したがって、本光源によれば、紫外線照射ランプ1の高温化を防止でき、よって、紫外線照射ランプ1の損傷を防止し、紫外線照射ランプ1における紫外線の出力特性を安定化させることができる。
【0032】
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施の形態に係る紫外線照射用光源(第3の実施の形態の説明においては「本光源」という)の概略側面図である。
【0033】
本光源は、第2の実施の形態に係る紫外線照射用光源の構成要素と同様なものを備えるので、その要素には同一符号を付与して説明を簡略化し、相違点を中心に説明する。
【0034】
本光源は、紫外線照射ランプ1と水冷ジャケット2を備える一方、熱線カットフィルター3を備えない。
【0035】
内管21の外面には、金属酸化物を含む金属酸化物膜4cが被着されている。また、外管22の内面には、同じ金属酸化物を含む金属酸化物膜4dが被着されている。
【0036】
金属酸化物膜4c、4dは共に、紫外線照射ランプ1から放射される光のうちの300nm以下の波長成分を吸収するように少なくともT,C,Z,S,Zの1種以上を含んで構成されるとともに400nm以上の波長成分を吸収するようにニッケルを添加したリン酸塩とコバルトを添加したリン酸塩の少なくとも1種を含んで構成され成分調整がなされている。
【0037】
しかも、その波長成分が外側の金属酸化物膜4dでも吸収されるように、内側の金属酸化物膜4cは、その波長成分に対しての透過性を有する。
【0038】
そして、紫外線照射ランプ1から光が放射されると、まず、内管21の外面に被着した金属酸化物膜4cが300nm以下の波長成分の一部と400nm以上の波長成分の一部を吸収する。次に、外管22の内面に被着した金属酸化物膜4dが、金属酸化物膜4cを通過した300nm以下の波長成分と400nm以上の波長成分を吸収する。したがって、樹脂の硬化に有効な300〜400nmの波長域の紫外線が水冷ジャケット2を透過し、樹脂などの照射対象に照射される。
【0039】
図示しないが、本光源では、内管21の外面と外管22の内面に金属酸化物膜を被着したことにより、その発光管管壁温度が、従来光源の発光管管壁温度より低くなるという実験結果が得られた。その理由は、第2の実施の形態と同様であると考えることができる。
【0040】
したがって、本光源によれば、紫外線照射ランプ1の高温化を防止でき、よって、紫外線照射ランプ1の損傷を防止し、紫外線照射ランプ1における紫外線の出力特性を安定化させることができる。
【0041】
なお、冷却液による金属酸化物膜の冷却効果が高まることに鑑みれば、上記の実施の形態で用いた金属酸化物膜を外管の内面だけに設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施の形態に係る紫外線照射用光源の概略側面図である。
【図2】発光管管壁温度を本光源と従来光源とで比較した図である。
【図3】第2の実施の形態に係る紫外線照射用光源の概略側面図である。
【図4】第3の実施の形態に係る紫外線照射用光源の概略側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…紫外線照射ランプ
2…水冷ジャケット
21…水冷ジャケット2の内管
22…水冷ジャケット2の外管
23a、23b…接続管
3…熱線カットフィルター
4、4a、4b、4c、4d…金属酸化物膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射ランプと、
前記紫外線照射ランプを内包する内管および該内管の外側に設けられた外管を備える二重管形の水冷ジャケットと、
この水冷ジャケットの前記外管の内面或いは外面または前記内管の外面に設けられ、前記紫外線照射ランプから放射される300nm以下の波長成分を吸収する手段と、
を備えることを特徴とする紫外線照射用光源。
【請求項2】
前記300nm以下の波長成分を吸収する手段は、金属酸化物を含む金属酸化物膜とすることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射用光源。
【請求項3】
前記金属酸化物は、T,C,Z,S,Zの少なくとも1種以上より構成されることを特徴とする請求項2記載の紫外線照射用光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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