説明

紫外線照射装置

【課題】 希ガス蛍光ランプを高密度実装した構成のものにおいて、希ガス蛍光ランプを十分かつ均一に冷却することができ、電源回路部が希ガス蛍光ランプからの光および外部の雰囲気の影響を受けることのない紫外線照射装置を提供すること。
【解決手段】 この紫外線照射装置は、筺体の内部空間が各々複数の開口を有する少なくとも2枚以上の開口板によって区画されて複数本の希ガス蛍光ランプが収容される一方の空間と複数の電源回路部が収容される他方の空間に分割され、送風手段から送出されて一方の空間から他方の空間に流通される冷却風によって電源回路部および希ガス蛍光ランプを冷却する構成とされた光源ユニットを具え、各々の開口板における開口の位置は、希ガス蛍光ランプの点灯時において、一方の空間に対面する一の開口板における開口を通過する光が、他の開口板の開口を通過して電源回路部に当たらない状態となるよう設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の棒状の希ガス蛍光ランプを具えた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射は、被照射物(以下、ワークともいう。)の表面改質、露光、成形、硬化、接着および洗浄などの光照射処理プロセスや、光照射試験等の様々な分野で使用されており、ワークに対する光照射処理プロセスによっては、今後、ワークの光照射面における紫外線の放射強度の更なる高出力化が求められる。また、紫外線照射装置における紫外線光源(例えば紫外線ランプ)の更なる長寿命化も求められる。
【0003】
光照射処理プロセスとしては、例えば太陽電池モジュールへの紫外線照射処理プロセスなどが挙げられる。現在、太陽電池市場においては、太陽電池モジュールの長寿命化が要請されている。太陽電池モジュールの寿命には、例えば、P型半導体、N型半導体、電極からなる太陽電池セルをパネル内に封止する封止剤や、太陽電池セルや封止材を保護する保護シート(バックシート)等の有機材料の紫外線照射による劣化が影響を及ぼすことが知られており、太陽電池モジュールの寿命試験方法としては、太陽電池モジュールに対する紫外線照射試験が採用されている。このような紫外線照射試験としては、自然太陽光の紫外線照射量を考慮した擬似太陽光源(ランプ)を用いて光照射する方法が一般的である。
【0004】
近年、太陽電池モジュールの寿命試験に要する時間の短縮化を実現するため、太陽電池モジュールの寿命加速試験方法の検討が進められている。具体的には、ワークである太陽電池モジュールの表面上の紫外線照度が、太陽光が照射される場合の紫外線照度より大きくなるよう、ワークの表面に紫外線を照射することが検討されており、このような要請に対応した、より高い照度でワークの光照射面に紫外線を照射することが可能な紫外線照射装置が望まれている。
【0005】
紫外線を放出する紫外線光源としては、一般的に、キセノンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの放電ランプが知られており、例えば太陽電池モジュールの寿命試験に用いられる擬似太陽光源としての紫外線光源としては、ショートアークキセノンランプやメタルハライドランプが用いられている。
【0006】
このようなショートアークキセノンランプやメタルハライドランプを具えた紫外線照射装置によれば、一本あるいは少数本の放電ランプで、ワーク(例えば太陽電池モジュール)上にて比較的高い紫外線放射照度を得ることが可能となる。しかしながら、これらの放電ランプのランプ寿命は、例えば1500時間〜2000時間程度であり、太陽電池モジュールを長時間試験する際には、放電ランプの交換を頻繁に行う必要があるという問題がある。
【0007】
このような問題に対して、ショートアークキセノンランプやメタルハライドランプなどに比して比較的長寿命である、例えば液晶表示装置の液晶パネルのバックライトとして使用される希ガス蛍光ランプを採用することが考えられ、このような希ガス蛍光ランプによれば、太陽電池モジュールを長時間試験する場合であっても、ランプの交換頻度が低くなることが期待される。
【0008】
図1は、希ガス蛍光ランプがバックライト用光源として採用された液晶パネルの一構成例を概略的に示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
この液晶パネル23のバックライト用光源は、複数本の棒状の希ガス蛍光ランプ10が、一方が開口するランプハウス20内において、互いに管軸が同一平面内に位置されて平行に延びる状態で並んで配置されて構成されている。各々の希ガス蛍光ランプ10は、両端が封止されて内部に放電空間Sが形成された直管状のガラス管11を具えている。このガラス管11の外周面には、各々帯状の一対の外部電極12が誘電体であるガラス管11と当該ガラス管11内の放電空間Sとが介在された状態で対向して配設されている。また、ガラス管11の内周面には蛍光体層13が設けられており、ガラス管11の内部には、例えばキセノン、アルゴン、クリプトンなどの希ガスが封入されている。
各々の希ガス蛍光ランプ10は、図示を省略した給電手段によって、一対の外部電極12に高周波電圧が印加されることにより外部電極12間に誘電体を介在させた誘電体バリア放電(以下、希ガス放電ともいう。)が放電空間S内で形成され、この希ガス放電により発生する紫外光(ガラス管11内に封入された希ガスがキセノンガスである場合には、波長172nmの紫外光)が蛍光体層13に照射され、所定の波長の紫外線を含む光が放射される。そして、希ガス蛍光ランプ10からの光は、直接的に、あるいは、ランプハウス20の内面に設けられた拡散反射鏡20Aによって反射されてランプハウス20の開口を覆うよう設けられた拡散部材21に入射され、この拡散部材21によって、拡散光として液晶パネル23に照射される。
【0009】
希ガス蛍光ランプの寿命は、約10000時間以上であるので、上述したように、ショートアークキセノンランプやメタルハライドランプの寿命より圧倒的に長い。
従って、希ガス蛍光ランプを紫外線照射光源として用い、太陽電池モジュールの長期寿命試験のようなワークへの紫外線照射を長時間の間にわたって行う場合には、希ガス蛍光ランプのランプ交換頻度は、ショートアークキセノンランプやメタルハライドランプを使用する場合の交換頻度より低くなる。従って、このような紫外線照射条件の場合、ランプ寿命の観点においては、希ガス蛍光ランプは実用的な紫外線照射光源であるといえる。
【0010】
しかしながら、希ガス蛍光ランプから放出される紫外線を含む光の強度は小さいため、紫外線照射光源として、ショートアークキセノンランプやメタルハライドランプに替えて希ガス蛍光ランプを使用する場合、ショートアークキセノンランプやメタルハライドランプを紫外線照射光源として使用する場合と比較してワーク上の紫外線照度が低いという問題がある。
【0011】
このようなワーク上の紫外線照度が低いという問題への対応策としては、例えば、特許文献1に記載の希ガス蛍光ランプのように、外部電極に透光部を設け、当該透光部を通過する光を反射鏡により反射させて特定の光照射領域に照射させて、希ガス蛍光ランプから放出される光の利用効率を増加させることが考えられる。図2に特許文献1に記載の技術を利用して構成した紫外線照射光源の一例を示す。この紫外線照射光源においては、ランプハウス20内における光照射方向に対して希ガス蛍光ランプ10の背面側の位置に、凹面状の反射面26Aを有する反射鏡26が各々の希ガス蛍光ランプ10のそれぞれに設けられている。このような構成を採ることにより、希ガス蛍光ランプ10がチャンバ25内に配置されるワークWと対面する側と反対側に放出される光も効率よくワークに照射されるので、ワークW上の照度を増加させることが可能となる。
【0012】
しかしながら、図2に示す紫外線照射光源は、比較的狭い照射領域に光を効率的に照射するように構成されているので、ワークW上の希ガス蛍光ランプ10の直下付近のみで照度が高くなり、ワークWの光照射面において照度ムラが発生するという不具合が発生する。
【0013】
このような不具合を克服するために、図3に示すように、各々希ガス放電を励起光とする複数本の外部電極型の希ガス蛍光ランプ10を互いに管軸が同一平面内に位置された状態で並列に配列し、各希ガス蛍光ランプ10間の間隔を小さくして実装密度を上げて構成を採用することが考えられる。このように構成することにより、希ガス蛍光ランプ10の本数が多くなるので、個々の希ガス蛍光ランプ10自体から放出される紫外線の強度は小さくてもワークWの照射面全体の照度を増大させることが可能となり、更には、ワークWの光照射面における照度ムラも比較的小さくすることが可能となる。
【0014】
先に述べたように、希ガス蛍光ランプ10における一対の外部電極12には、高周波電圧が給電手段によって印加される。給電手段は、例えば、直流電源と、直流電源と電気的に接続されたインバータ回路と、インバータ回路と電気的に接続された昇圧トランスとからなり、直流電源から出力される直流電圧は、インバータ回路によって高周波交流電圧等の高周波電圧に変換された後、昇圧トランスによって昇圧されて希ガス蛍光ランプ10における一対の外部電極12に印加される。
ここで、インバータ回路を構成する回路基板や昇圧トランスといった電気部品は、インバータ基板上に装着されることが一般的である。そして、電気エネルギーの送電損失を小さくするために、インバータ基板は希ガス蛍光ランプの比較的近くに設置される。すなわち、希ガス蛍光ランプおよびインバータ基板は、同一の光源ユニット(筐体)内に配置されることが多い。
【0015】
一方、上記したように、希ガス蛍光ランプの実装密度を上げて紫外線照射光源を構成した場合には、隣接するランプ同士の輻射熱により希ガス蛍光ランプ自体が高温になるので、例えば冷却風を送出するなどして希ガス蛍光ランプおよび当該希ガス蛍光ランプに対する給電手段の冷却が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平09−325707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
而して、希ガス蛍光ランプの実装密度を上げて紫外線照射光源を構成する場合には、例えば、複数の希ガス蛍光ランプと各々の希ガス蛍光ランプに対応するインバータ基板を含む給電手段とを同一の筐体内に収容し、共通の送風手段よりの冷却風によって各々の希ガス蛍光ランプと給電手段とを冷却する構成とすることが考えられるが、このような構成とすると、希ガス蛍光ランプから放射される紫外線の影響によってインバータ基板等が劣化するという問題がある。一方、希ガス蛍光ランプから放射される紫外線が当たらないよう例えばインバータ基板を区画された空間内に収容し、当該空間の内部空間が冷却風流通用開口を介して希ガス蛍光ランプが配置される空間と空間的に連続するよう構成した場合には、希ガス蛍光ランプの冷却が不十分となるおそれがあり、希ガス蛍光ランプの冷却を考慮してインバータ基板が収容される空間を形成しようとすると、光源ユニット自体の構造が複雑化するという問題がある。
【0018】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであって、その目的は、希ガス蛍光ランプと電源回路部を高密度実装した構成のものにおいて、比較的コンパクトでありながら希ガス蛍光ランプを十分にかつ全体を均一に冷却することができ、給電手段が希ガス蛍光ランプから放出される紫外線を含む光や、ワークが設置される空間雰囲気の影響を受けない紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の紫外線照射装置は、一方に光照射口が開口する筺体と、当該筐体の内部において当該筐体の開口端面と平行に延びるよう互いに離間して配設されて当該筐体の内部空間を分割する、各々複数の開口を有する少なくとも2枚以上の開口板と、当該筐体の内部における前記光照射口側に位置される一方の空間内において並列に配列された複数の棒状の希ガス蛍光ランプと、当該筐体内部における他方の空間内に配設された、前記各々の希ガス蛍光ランプに対応する複数の電源回路部を含む給電手段と、冷却風が前記一方の空間から他方の空間に流通されるよう当該筐体の内部に冷却風を送出する送風手段とを有する光源ユニットを具えてなり、
前記各々の開口板における開口の位置は、前記希ガス蛍光ランプの点灯時において、前記一方の空間に対面する一の開口板における開口を通過する光が、他の開口板の開口を通過して前記電源回路部に当たらない状態となるよう設定されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の紫外線照射装置においては、前記筐体の内部空間が互いに離間する2枚の開口板によって区画されて、前記希ガス蛍光ランプが配設される一方の空間および前記電源回路部が配設される他方の空間が形成されており、
前記2枚の開口板のうちの一方の開口板を、他方の開口板と一定間隔で離間した状態とする第1の位置と、他方の開口板と対接された状態とする第2の位置との間で、当該一方の開口板に垂直な方向に駆動する開口板駆動手段が更に設けられており、
当該開口板駆動手段は、前記一方の開口板を前記第2の位置に移動させることにより前記他方の開口板における開口の各々を当該一方の開口板によって遮蔽させて前記筐体の内部における一方の空間および他方の空間を空間的に隔離する構成とされていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の紫外線照射装置においては、前記筐体の内部空間が互いに離間する2枚の開口板および一方の開口板に対接された状態で配置された補助開口板によって区画されて、前記希ガス蛍光ランプが配設される一方の空間および前記電源回路部が配設される他方の空間が形成されており、
前記補助開口板は、前記一方の開口板における複数の開口の形成パターンと同一の形成パターンで複数の開口が形成されてなり、
当該補助開口板を、当該補助開口板が配置される平面内において、当該補助開口板における各々の開口が前記一方の開口板における各々の開口と一致した状態とされる第1の位置と、前記一方の開口板における開口の各々が当該補助開口板によって遮蔽される第2の位置との間で、移動させる補助開口板駆動手段が更に設けられており、
当該補助開口板駆動手段は、前記補助開口板を前記第2の位置に移動させることにより前記筐体の内部における一方の空間および他方の空間を空間的に隔離する構成とされていることが好ましい。
【0022】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、前記筐体には、前記一方の空間と当該筐体の外部空間とを空間的に接続する冷却風流通用開口が形成されており、
当該筐体の内部には、当該冷却風流通用開口を開放する開位置と、当該冷却風流通用開口を遮蔽する閉位置との間で駆動可能とされたシャッターが更に設けられており、当該シャッターは、前記一方の空間と前記他方の空間とが空間的に隔離された状態において、前記開位置に移動される構成とされていることが好ましい。
【0023】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、前記希ガス蛍光ランプの各々は、内部に放電空間が形成されたガラス管を具え、当該ガラス管の内表面に蛍光体層が設けられると共に当該蛍光体層が形成されていないことにより前記ガラス管の管軸に沿って延びるアパーチャが形成されており、当該アパーチャが前記筐体における光照射口方向を向く姿勢で配置された構成とされていることが好ましい。
【0024】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、前記筐体における一方の空間内において、当該筐体の開口端面に対する離間距離が互いに異なる当該開口端面に平行な複数のランプ配置面の各々に、複数の希ガス蛍光ランプが当該複数の希ガス蛍光ランプの管軸が互いに平行に延びるよう等間隔毎に並設されており、一のランプ配置面に並ぶ希ガス蛍光ランプの各々は、他のランプ配置面に並ぶ希ガス蛍光ランプの各々に対して、管軸が希ガス蛍光ランプの並ぶ方向に相対的に変位した状態とされた構成とされていることが好ましい。
【0025】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、希ガス蛍光ランプの各々は、前記ガラス管と、当該ガラス管が内部に配置された透光性を有する直管状の外管と、当該外管の両端開口の各々を塞ぐ蓋部材とにより構成された二重管構造を有するものであることが好ましい。
【0026】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、少なくとも1枚の開口板にヒータが設けられた構成とされていることが好ましい。
【0027】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、前記電源回路部は、前記筐体の光照射口と対向する壁に設けられた給電ポートを介して電源に電気的に接続される構成とすることができる。
【0028】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、複数台の前記光源ユニットと、当該光源ユニットの各々に対応する複数の電源とを具えており、
前記光源ユニットの各々は、前記筐体における開口端面が同一の平面内に位置されると共に前記希ガス蛍光ランプの管軸が互いに平行に延びる姿勢で、縦横に並んで配置された構成とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の紫外線照射装置によれば、筐体の内部空間が少なくとも2枚以上の開口板によって区画されて希ガス蛍光ランプが配設される一方の空間と電源回路部が配設される他方の空間とが形成され、複数の希ガス蛍光ランプおよび当該希ガス蛍光ランプに対応する複数の電源回路部が共通の送風手段から送出される冷却風によって冷却される構成とされていることにより、他方の空間を一方の空間と完全に隔離することなしに、希ガス蛍光ランプからの光が直接的に照射されることが防止された構造とされているので、他方の空間内を冷却風が流通されることによる圧力損失の程度を低減することができ、従って、希ガス蛍光ランプの実装密度を比較的大きくした場合であっても、各々の希ガス蛍光ランプを十分にかつ比較的均一に冷却することが可能となり、しかも、一方の空間側に位置される一の開口板の開口を通過する、各々の希ガス蛍光ランプから放出される紫外線を含む光は、他の開口板によって遮光されて他方の空間内の電源回路部等に到達することが防止されるので、当該電源回路部が紫外線の影響で劣化するという不具合が生ずることを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】希ガス蛍光ランプがバックライト用光源として採用された液晶パネルの一構成例を概略的に示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図2】希ガス蛍光ランプを用いた紫外線照射光源の一例における構成の概略を、希ガス蛍光ランプの配列方向における照度分布と共に示す説明図である。
【図3】希ガス蛍光ランプを用いた紫外線照射光源の他の例における構成の概略を、希ガス蛍光ランプの配列方向における照度分布と共に示す説明図である。
【図4−A】本発明に係る紫外線照射装置の一例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図4−B】図4−AのA−A線における部分断面図である。
【図5】本発明の紫外線照射装置における給電手段の一例における構成の概略を示すブロック図である。
【図6】図4−Aに示す紫外線照射装置における冷却風の流れを示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図7】図4−Aに示す紫外線照射装置における希ガス蛍光ランプからインバータ収容空間側に放射される光、および、希ガス蛍光ランプから放射された光がワークによって反射された反射光の光線追跡線を概略的に示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図8】本発明に係る紫外線照射装置の他の例における構成の概略を一部を拡大して示す、(a)が上部開口板と下部開口板とが離間した状態(シャッター閉状態)、(b)が上部開口板と下部開口板とが接触した状態(シャッター開状態)をそれぞれ示す断面図である。
【図9】図8に示す紫外線照射装置において、上部開口板と下部開口板とが接触された状態を冷却風の流れと共に示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図10】本発明に係る紫外線照射装置の他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図11】図10に示す紫外線照射装置において、(a)インバータ基板収容空間とランプ収容空間とが空間的に接続された状態、(b)インバータ基板収容空間とランプ収容空間とが空間的に独立して分割された状態をそれぞれ示す断面図である。
【図12】アパーチャを有する希ガス蛍光ランプが用いられた紫外線照射装置の構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図13】本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図14−A】本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に沿った断面図である。
【図14−B】図14−AのA−A線における拡大断面図である。
【図14−C】図14−AのB−B線における断面図である。
【図15−A】本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
【図15−B】図15−AにおけるB方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図4−Aは、本発明に係る紫外線照射装置の一例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図、図4−Bは、図4−AのA−A線における部分断面図である。
この例における紫外線照射装置は、一方(図4−Aにおいて下方)に光照射口51Aが開口する略直方体の箱型形状の筐体51と、この筐体51の内部における光照射口51A側の領域において、管軸が光照射口51Aの開口端面と平行な同一平面内に位置されると共に互いに平行に延びる状態で並列に配置された複数本の棒状の希ガス蛍光ランプ10と、各々の希ガス蛍光ランプ10に電力を供給する給電手段40と、筐体51の内部に冷却風を供給する送風手段とを有する光源ユニット50を具えている。
【0032】
この例における希ガス蛍光ランプ10は、図1に示すものと同様の構成とされており、両端が封止されて内部に放電空間Sが形成された直管状のガラス管11を具えている。このガラス管11の外周面には、各々帯状の一対の外部電極12が誘電体であるガラス管11と当該ガラス管11内の放電空間Sとが介在された状態で対向して配設されている。また、ガラス管11の内周面には蛍光体層13が設けられており、ガラス管11の内部には、例えばキセノン、アルゴン、クリプトンなどの希ガスが封入されている(図5参照。)。
蛍光体層13を構成する蛍光体物質としては、例えば、Ce−Mg−Al−O,La−Ce−Mg−Al−Oなどを例示することができる。
【0033】
希ガス蛍光ランプ10の本数は、ワークのサイズ、ワークの光照射面での放射照度に応じて適宜定められる。例えば、ワークが太陽電池モジュールであって、光照射面の放射照度が3〜5Sun(1Sunは100mW/cm2 )で太陽電池モジュールの寿命試験を行う場合には、インバータ入力40Wの希ガス蛍光ランプが10〜33本用いられる。
【0034】
給電手段40は、図5に示すように、例えば、直流電源45と、この直流電源45と電気的に接続されたインバータ回路46と、このインバータ回路46に電気的に接続された昇圧トランス47とにより構成される。直流電源45から出力される直流電圧は、インバータ回路46によって高周波交流電圧等の高周波電圧に変換された後、昇圧トランス47によって昇圧されて希ガス蛍光ランプ10の一対の外部電極12に印加される。
【0035】
インバータ回路46を構成する回路基板や、昇圧トランス47といった電気部品が装着されたインバータ基板41は、希ガス蛍光ランプ10の各々に対応する複数のものが光源ユニット50の筐体51の内部に配置される。この理由は、できるだけインバータ基板41を希ガス蛍光ランプ10の比較的近くに設置することにより、電気エネルギーの送電損失の低減を図るためである。
具体的には、図4−Aおよび図4−Bに示すように、インバータ基板41は、平板状の支持板42に取り付けられ、この支持板42は、光源ユニット50の筐体51の内部において、希ガス蛍光ランプ10のランプ配置面に垂直に延びる姿勢で、支持板保持手段43によって保持される。この例においては、筐体51を構成する、希ガス蛍光ランプ10の管軸に沿って延びる一対の側壁52A側の領域の各々にそれぞれ2つの支持板42が互いに平行に延びるよう所定の間隔で設けられており、各々の支持板42に複数のインバータ基板41が設けられる。
また、インバータ基板41上の電気部品と直流電源45とは、筐体51を構成する上壁53に設けられた給電ポート44を介して電気的に接続される。
【0036】
上記したように、例えばワークが太陽電池モジュールであって光照射面の放射照度が3〜5Sun(1Sunは100mW/cm2 )での太陽電池モジュールの寿命試験に対応するため、希ガス蛍光ランプ10の実装密度を比較的大きくした場合には、隣接する希ガス蛍光ランプ10同士の輻射熱によるランプ自体の高温化を招き、希ガス蛍光ランプ10の発光効率が低下するなどの不具合が発生する。このような不具合を抑制するため、この例における紫外線照射装置においては、光源ユニット50に、送風手段60を設け、当該送風手段60から希ガス蛍光ランプ10の各々に対して冷却風が送出される構成とされている。
【0037】
送風手段は、例えば軸流ファン、クロスフローファン等から構成され、光源ユニット50の筐体51における上壁53に取り付けられる。この例においては、送風手段が複数の軸流ファン60により構成されており、上壁53における各々の軸流ファン60に対応する位置に設けられた開口53Aより空気を取り入れ、下方に向けて空気を冷却風として送出する。
【0038】
この例における紫外線光源装置は、図6に示すように、インバータ基板41、希ガス蛍光ランプ10およびワークWを共通の送風手段からの冷却風(白抜きの矢印で示す。)によって冷却する構造となっている。これにより、例えば、筐体51の内部においてインバータ基板41と希ガス蛍光ランプ10とが空間的に分離された構成とされ、各々の希ガス蛍光ランプ10およびインバータ基板41に対して冷却風を送出するための別個の送風手段が設けられた構造のものと比べると、冷却風が流通される風路空間における圧力損失を小さくすることができるので、希ガス蛍光ランプ10の実装密度を比較的大きくした場合であっても、各々の希ガス蛍光ランプ10を十分にかつ比較的均一に冷却することが可能となる。よって、希ガス蛍光ランプ10自体の寿命も短くならず、またワークWの温度不均一化といった不具合が生ずることも抑制することができる。
【0039】
而して、本実施例の紫外線光源装置は、光源ユニット50の筐体51の内部空間を、各々複数の開口を有する複数枚の開口板によって、インバータ基板41が収容される空間であるインバータ基板収容空間S2と、希ガス蛍光ランプが収容される空間であるランプ収容空間S1とに分割された構成とされている。具体的には、図4−Aおよび図4−Bに示すように、ランプ配置面に垂直な方向(図4−Aにおいて上下方向)に一定間隔で離間した位置において互いに平行に配置された第1の開口板(以下、「上部開口板」という。)55および第2の開口板(以下、「下部開口板」という。)56の2枚の開口板によって筐体51の内部空間が区画されてインバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とが形成されている。
ここで、上部開口板55に設けられた複数の開口55Aは、ランプ点灯時に下部開口板56に設けられた開口56Aを通過して上部開口板55へ到達する通過光が、当該上部開口板55に設けられたいずれの開口55Aも通過せず、インバータ基板41等に当たらないよう(上部開口板55により遮光されるよう)形成されている。
【0040】
光源ユニット50を構成する筐体51の内部における、各々のインバータ基板41より上方領域に備えられた送風手段である軸流ファン60の各々から送出される冷却風は、図6に示すように、インバータ基板収容空間S2を流過して各々のインバータ基板41を冷却して上部開口板55に衝突する。上部開口板55に衝突した冷却風は、上部開口板55に設けられた複数の開口55Aを介して下部開口板56側へ供給される。このとき、上部開口板55に設けられる複数の開口55Aの位置を略均一に分布させることにより、上部開口板55の開口55Aの各々を通過する冷却風は略均一な風量分布の状態で下部開口板56側へと供給される。更に、下部開口板56に設けられた複数の開口56Aの位置を略均一に分布させることにより、上部開口板55の複数の開口55Aの各々から送出される冷却風は、下部開口板56に設けられた複数の開口56Aの各々を介して、各々の希ガス蛍光ランプ10に対して略均一な風量分布で供給されて各々の希ガス蛍光ランプ10を冷却し、その後、ワークWの表面に供給されてワークWを冷却する。
【0041】
一方、図7に示すように、ランプ収容空間S1に収容されている各々の希ガス蛍光ランプ10から放出される光のうち、下部開口板56側に進行する光の一部は当該下部開口板56に設けられた複数の開口56Aの各々を介して、上部開口板55側へと進行する。しかしながら、上記したように、上部開口板55の開口55Aの位置は、ランプ点灯時に下部開口板56を通過して上部開口板55へ到達する通過光が当該上部開口板55に設けられた複数の開口55Aのいずれも通過せず、上部開口板55により遮光されるように設定されているので、上部開口板55側に進行した光が、インバータ基板41に当たることが防止される。
【0042】
以上のように、上記構成の紫外線照射装置によれば、上部開口板55および下部開口板56の2枚の開口板によって筐体51の内部空間が区画されてインバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とが形成され、複数の希ガス蛍光ランプ10および当該希ガス蛍光ランプに対応する複数のインバータ基板41が共通の送風手段から送出される冷却風によって冷却される構成とされていることにより、インバータ基板収容空間S2をランプ収容空間S1と完全に隔離することなしに、希ガス蛍光ランプ10からの光が直接的に照射されることが防止された構造とされているので、インバータ基板収容空間S2での圧力損失を小さくできる。よって、希ガス蛍光ランプ10の実装密度を比較的大きくすることに伴って隣接する希ガス蛍光ランプ10間の空間における圧力損失が大きくなっても、各々の希ガス蛍光ランプ10を十分にかつ比較的均一に冷却することが可能となり、従って、希ガス蛍光ランプ10自体に所期の寿命が得られ、例えば太陽電池モジュールの長期寿命試験のようなワークWへの紫外線照射を長時間の間にわたって行う場合などにおいては、希ガス蛍光ランプ10のランプ交換頻度を低くすることができる。また、希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41との距離をより近づける事が可能となり、給電手段40から希ガス蛍光ランプ10への電気エネルギーの送電損失の更なる低減を図ることが可能となる。
【0043】
また、上部開口板55および下部開口板56のそれぞれに設けられる複数の開口55A,56Aの位置を略均一に分布させた構成とされることにより、2枚の開口板により分流される冷却風が、各々の希ガス蛍光ランプ10に対して略均一な風量分布(流速分布)で供給されて希ガス蛍光ランプ10が全体的に冷却され、更に、熱交換により希ガス蛍光ランプ10を冷却した冷却風が、例えば大面積のワークWの光照射面に対して当該光照射面と略垂直な方向から吹き付けられるので、当該ワークWの表面の温度分布のばらつきを低減するように当該ワークWを冷却することが可能となり、この状態で、ワークWに対する光照射が可能となる。
【0044】
また、上部開口板55に設けられた開口55Aの位置は、ランプ点灯時に下部開口板56に設けられた開口56Aを通過して上部開口板55へ到達する通過光が上部開口板55に設けられた複数の開口55Aのいずれをも通過せず、上記通過光が上部開口板55により遮光されるように設定されているので、各々の希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光は上部開口板55により遮光され、当該紫外線を含む光がインバータ基板収容空間S2内のインバータ基板41等に到達することが確実に防止され、当該インバータ基板41が紫外線の影響で劣化するという不具合が生じることを回避することができる。
【0045】
また、各々の希ガス蛍光ランプ10からワークWに照射された紫外線を含む光の一部がワークWの光照射面により反射されて下部開口板56の開口56Aを通過したとしても、このワークWからの反射光も上部開口板55によって遮光することができるといった効果を得ることもできる。
【0046】
なお、ランプ収容空間S1を区画する下部開口板56のランプ側表面、筐体51を構成する希ガス蛍光ランプ10の管軸に沿って延びる一対の側壁52A、希ガス蛍光ランプ10の管軸に垂直に延びる一対の側壁52Bの表面であって下部開口板56から光照射口51A側(下側)に位置する表面は、希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光を反射するような表面であることが望ましい。ランプ収容空間S1を区画する内壁表面をこのような特性を有する表面にすることにより、希ガス蛍光ランプ10から直接的にワークWへ照射されない光の少なくとも一部が当該表面にて反射されてワークWに照射される。すなわち、ワークWに対する光照射において、希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光の利用効率が向上する。
【0047】
また、上記した例では、上部開口板55と下部開口板56の2枚の開口板により、インバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とが分割されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、3枚以上の開口板により、両空間を分割してもよい。
すなわち、インバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とは、少なくとも2枚以上の開口板により分割される。そして、少なくとも2枚以上の開口板のうち、インバータ基板収容空間S2に対面する開口板に設けられた開口の位置は、ランプ点灯時にランプ収容空間S1に対面する開口板を通過してインバータ基板収容空間S2に対面する開口板へ到達する通過光が当該インバータ基板収容空間S2に対面する開口板に設けられた開口を通過せず、上記通過光がインバータ基板収容空間S2に対面する開口板により遮光されるように設定される。
【0048】
本発明に係る紫外線光源装置においては、上部開口板55と下部開口板56の2枚の開口板により、インバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とが分割された構成のものにおいて、上部開口板55および下部開口板56が互いに接触するように一方が他方に対して相対的に駆動可能とされた構成とされていること好ましい。
【0049】
図8は、開口板の駆動機構の一例における構成の概略を示す断面図である。
この例においては、図8(a)に示すように、下部開口板56は、その両端面(希ガス蛍光ランプ10と対面する側の面に垂直な面)が光源ユニット50の筐体51における希ガス蛍光ランプ10の管軸に沿って延びる一対の側壁52Aに固定されており(図8(a)において一点鎖線で囲まれた領域)、一方、上部開口板55は、筐体51における側壁52A,52Bに対して固定されず、分離している。
【0050】
上部開口板55の駆動は、例えばソレノイドアクチュエータ65からなる開口板駆動手段により行われる。図8(a)に示すように、ソレノイドアクチュエータ65の本体66は上部開口板55のインバータ基板収容空間S2側の表面上に固定される。ここで、ソレノイドアクチュエータ65の駆動部分であるシリンダ67は、上部開口板55に設けられたシリンダ用開口55Bを貫通して下部開口板56側に突出して、先端部が下部開口板56と接続、固定される。すなわち、シリンダ67は上部開口板55とは独立に駆動可能となっている。ここに、ソレノイドアクチュエータ65は、例えば、上部開口板55の四隅の位置、および、上部開口板55の、希ガス蛍光ランプ10の管軸方向における両端縁部の中央位置の6箇所に設けられており(図14−C参照。)、すべてのソレノイドアクチュエータ65が互いに同期がとられた状態で動作される。
【0051】
このような構成で、シリンダ67が図8(a)において下方向に移動するようにソレノイドアクチュエータ65を動作させる場合を考える。
上記したように、ソレノイドアクチュエータ65のシリンダ67は上部開口板55とは独立に駆動可能であるが、先端部は下部開口板56と接続、固定されている。よって、シリンダ67は下部開口板56とともに、ソレノイドアクチュエータ65の本体66内部側へ移動しようとする。しかしながら、下部開口板56は筐体51における側壁52Aに固定されているので、図8(a)の下方向には移動できない。よって、シリンダ67の先端部の位置は固定された状態のまま、ソレノイドアクチュエータ65の本体66が図8(a)において下方向に移動することによって、シリンダ67は本体66内部側へ移動することになる。すなわち、ソレノイドアクチュエータ65の本体66は下部開口板56側に向かって移動することになる。
ここで、上記したように、ソレノイドアクチュエータ65の本体66は上部開口板55に固定されており、上部開口板55は筐体51における側壁52A,52Bと分離しているので、シリンダ67を図8(a)において下方向に移動するようにソレノイドアクチュエータ65を動作させると、上部開口板55は、ソレノイドアクチュエータ65の本体66とともに下部開口板56側に向かって移動する。
【0052】
なお、この例における上部開口板55には、図8(a)および図8(b)に示すように、筐体51における側壁52Aに形成された冷却風の一部を排気するための複数の冷却風流通用開口54を開放する開位置と、冷却風流通用開口54を遮蔽する閉位置との間で駆動可能とされたシャッター63が固定されている。よって、ソレノイドアクチュエータ65は、上部開口板55と連動してシャッター63を駆動することが可能となる。ここで、上部開口板55が図8(a)の位置にある場合(下部開口板56と一定間隔で離間した状態)にシャッター63によって筐体51における側壁52Aの各々の冷却風流通用開口54が遮蔽され、上部開口板55が図8(b)の位置にある場合(上部開口板55と下部開口板56とが接触された状態)にシャッター63による冷却風流通用開口54の遮蔽が解除されるように構成することにより、ランプ収容空間S1とインバータ基板収容空間S2とが空間的に隔離された状態において、シャッター63を開状態にすることが可能となる。
【0053】
光照射処理プロセスによってはワークWへの光照射を間欠的に実施し、ワークWへの光照射を行わない場合にワークWが設置される空間であるチャンバ25内の雰囲気を変更する場合がある。例えば、上記雰囲気温度や湿度を変更したり、雰囲気中に特定の媒質を充填したりすることがある。
本実施例の紫外線光源装置においては、上記したように、例えば上部開口板55が下部開口板56と接触するように駆動することが可能なように構成されており、上部開口板55に設けられた各々の開口55Aの位置は、ランプ点灯時に下部開口板56に設けられた各々の開口56Aを通過して上部開口板55へ到達する通過光が当該上部開口板55に設けられた各々の開口55Aのいずれをも通過せず、上記通過光が上部開口板55により遮光されるように設定されている。
すなわち、垂直方向から上部開口板55または下部開口板56を見たとき、上部開口板55の開口55Aの位置と下部開口板56の開口56Aの位置とは互いにずれているので、上部開口板55と下部開口板56とを接触させると、一方の開口板の開口は、他方の開口板により遮蔽されることとなる。
【0054】
したがって、ワークWへの光照射を停止後、上部開口板55が下部開口板56と接触するように駆動すると、図9に示すように、インバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とは空間的に完全に隔離される。すなわち、インバータ基板収容空間S2はワークWが収容されるチャンバ25の内部空間とも空間的に隔離されるので、インバータ基板収容空間S2は、チャンバ25内の雰囲気の影響を受けない。よって、インバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とを含む光源ユニット50とワークWが設置されるチャンバ25とを空間的に分離するために、例えば光源ユニット50とチャンバ25とを空間的に分離するための光透過性窓部材を設けずとも、インバータ基板収容空間S2とチャンバ25の内部空間とを空間的に分割することが可能となる。
【0055】
例えば、非光照射時、チャンバ25内の雰囲気を高湿度とする場合においても、ランプ収容空間S1は高湿度となるものの、インバータ基板収容空間S2は高湿度とはならない。そのため、光照射を再開する場合、希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41上の回路構成部分(インバータ回路を構成する回路基板や昇圧トランスといった電気部品)において、不所望な絶縁破壊などの不具合が生じることを回避することができる。
【0056】
また、例えば、ワークWが大型の太陽電池モジュールである場合であっても、それに対応した大型の光透過性窓部材を設ける必要がないので、窓部材を支持するための大掛かりな支持構造も不要となり、紫外線光源装置としては構造がコンパクトになる。
【0057】
ここで、上記したように、上部開口板55と下部開口板56との接触時にシャッター63が開状態となるように上部開口板55と連動してシャッター63が駆動するよう構成されていることから、シャッター63が開状態とされた状態で、軸流ファン60によって冷却風を送出することにより、図9に示すように、冷却風(図9において白抜きの矢印で示す。)はインバータ基板41を冷却した後、筐体51における側壁52Aに設けられた複数の冷却風流通用開口54より外部へと排出される。すなわち、上記構成により、インバータ基板収容空間S2のみを独立して冷却することが可能となる。
【0058】
よって、ワークWへの光照射停止後、例えばソレノイドアクチュエータ65からなる開口板駆動手段により上部開口板55を駆動して下部開口板56に接触させることにより、インバータ基板収容空間S2とワークWが設置されるチャンバ25の内部空間とを空間的に隔離して上記インバータ基板収容空間S2をチャンバ25内の雰囲気から独立させることが可能となるとともに、ランプ収容空間S1やチャンバ25内の雰囲気に影響を与えることなく、光照射停止直後においても比較的高温状態にあるインバータ基板41を個別に冷却することが可能となる。
【0059】
なお、上記した例では、非光照射時にワークWが設置されるチャンバ25内に、例えば、特定の媒質を充填して、チャンバ25内の雰囲気を変更する際、上部開口板55と下部開口板56とを接触させてインバータ基板収容空間S2とチャンバ25の内部空間とを分割した。ここで、両開口板55,56に設けられた複数の開口55A,56Aの位置が互いにずれていることにより、上部開口板55と下部開口板56の接触時は、一方の開口板の開口が他方の開口板により遮蔽されることとなる。よって、上部開口板55と下部開口板56とを接触させることにより、インバータ基板収容空間S2はチャンバ25から空間的に独立して分割される。ここで、非光照射時にインバータ基板収容空間S2をチャンバ25の内部空間から空間的に独立して分割するには、他の構造を採用してもよい。
【0060】
図10は、本発明に係る紫外線照射装置の他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
この紫外線照射装置における光源ユニット50においては、各々複数の開口55A,56A,57Aを有する上部開口板55、下部開口板56および補助開口板57によって、筐体51の内部空間がインバータ基板収容空間S2とランプ収容空間S1とに分割された構成とされている。
補助開口板57は、例えば下部開口板56における複数の開口56Aの形成パターンと同一の形成パターンで複数の開口57Aが形成されてなり、図11(a)および図11(b)に示すように、下部開口板56の上部開口板55側の表面上において、1次元方向(図11(a)において矢印で示す方向、希ガス蛍光ランプ10の配列方向)に移動可能に設けられている。具体的には、補助開口板57が、補助開口板駆動機構70によって、補助開口板57における各々の開口57Aの位置と下部開口板56の各々の開口56Aの位置が一致した状態とされる開位置と、下部開口板56の各々の開口56Aを遮蔽した状態とされる閉位置との間で駆動される。
【0061】
ワークWに光照射する際は、チャンバ25内には例えば特定の媒質が充填されないので、インバータ基板収容空間S2はチャンバ25から空間的に独立して分割する必要はない。よって、補助開口板57は、図11(a)に示すように、補助開口板57の各々の開口57Aが下部開口板56の各々の開口56Aと一致するように、補助開口板駆動機構70により位置決めされる。ここで、上部開口板55に設けられた各々の開口55Aの位置は、ランプ点灯時に下部開口板56および補助開口板57設けられた開口56A,57Aを通過して上部開口板55へ到達する通過光が当該上部開口板55に設けられた各々の開口55Aのいずれをも通過せず、上記通過光が上部開口板55により全て遮光されるように設定されている。
【0062】
よって、先に述べた実施例と同様、軸流ファン60からの冷却風は、各々の希ガス蛍光ランプ10に対して、略均一な風量分布(流速分布)で供給され、すべての希ガス蛍光ランプ10を全体的に冷却する。一方、ランプ収容空間S1に収容されている希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光や、ワークWによって反射されてインバータ基板収容空間S2側に進行する紫外線を含む光は、下部開口板56の開口56Aおよび補助開口板57の開口57Aを通過後、上部開口板55により遮光されるため、当該紫外線を含む光がインバータ基板収容空間S2内のインバータ基板41等に到達することがなく、当該インバータ基板41が紫外線の影響で劣化するという不具合が生ずることを回避することができる。
【0063】
一方、非光照射時にワークWが設置されるチャンバ25内に、例えば、特定の媒質を充填して、チャンバ25内の雰囲気を変更する場合には、チャンバ25内の雰囲気の影響をインバータ基板収容空間S2が受けないように、インバータ基板収容空間S2をチャンバ25の内部空間から空間的に独立して分割させる必要がある。よって、補助開口板57は、図11(b)に示すように、下部開口板56の開口56Aが補助開口板57で遮蔽することが可能なように、補助開口板駆動機構70により位置決めされる。このように補助開口板57を補助開口板駆動機構70により位置決めすることにより、非光照射時にインバータ基板収容空間S2をチャンバ25から空間的に独立して分割することが可能となる。
【0064】
なお、上記した実施例のように、光源ユニット50をチャンバ25から空間的に分離した状態でインバータ基板収容空間S2を独立して冷却する場合は、筐体51における側壁52Aに形成された冷却風流通用開口54を遮蔽および開放するシャッター63と当該シャッター63を駆動するシャッター駆動機構71を設け、このシャッター駆動機構71によりシャッター63を駆動して冷却風流通用開口54を開放状態にすればよい。すなわち、補助開口板57を駆動して下部開口板56の開口56Aが補助開口板57により遮蔽された状態で、シャッター駆動機構71によりシャッター63を駆動して筐体51における側壁52Aの冷却風流通用開口54を開放することにより、送風手段60から送出される冷却風は、インバータ基板41を冷却後、側壁52Aの冷却風流通用開口54より外部へと排出される。すなわち、上記構成により、インバータ基板収容空間S2のみを独立して冷却することが可能となる。
【0065】
上記の紫外線照射装置においては、希ガス蛍光ランプ10として、図1に示す液晶パネルのバックライト光源を構成するものと同様に、蛍光体層13がガラス管11の内周面の全体に設けられた構成のものを用いている。このような希ガス蛍光ランプ10においては、ガラス管11内の希ガス放電より得られる紫外光によって励起された蛍光体層13からの紫外線を含む光は、ガラス管11のほぼ全表面から放出されるので、当該光の発光効率が良好である。よって、ランプ収容空間S1の内壁表面を希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光を反射するような表面とすることにより、希ガス蛍光ランプ10から直接的にワークWに照射されない光の少なくとも一部が当該表面にて反射されてワークWに照射され、ワークWに光照射する場合の光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0066】
ここで、希ガス蛍光ランプ10としては、図12に示すように、ガラス管11の内表面の一部に蛍光体層13が形成されていないことによりガラス管11の管軸に沿って延びるアパーチャ14が形成された構造のものを採用しもよい。このような構造の希ガス蛍光ランプ10においては、ガラス管11内の希ガス放電より得られる紫外光によって励起された蛍光体層13からの紫外線を含む光は、主としてアパーチャ14から放出される。すなわち、蛍光体層13からの紫外線を含む光のうち、ガラス管11内を進行してアパーチャ14を通過する光や、ガラス管11内を進行して蛍光体層13自体に反射されてアパーチャ14を通過する光が、アパーチャ14から放出される。
【0067】
このようなアパーチャ14を有する希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光の光量は、ガラス管11の内周面全体に蛍光体層13を設けた希ガス蛍光ランプから放出される紫外線を含む光の光量の70%程度となる。これは、アパーチャ14がない希ガス蛍光ランプ10では利用できなかったガラス管11の内表面側に蛍光体層13から放出される紫外線を含む光の利用が可能となるものの、ガラス管11の内面に塗布された蛍光体層13全体の表面積が小さくなり、蛍光体層13から放出される紫外線を含む光の光量が低下するためである。
【0068】
しかしながら、アパーチャ14を設けた希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光の大部分はアパーチャ14から放出される。よって、各々アパーチャ14を有する複数の希ガス蛍光ランプ10を、アパーチャ14が筐体51における光照射口51A方向を向く姿勢、すなわちワークWの表面と対面する姿勢で、並列に並べて配置して紫外線照射光源を構成することにより、ワークWの表面での放射照度を、ガラス管11の内周面全体に蛍光体層13を設けた希ガス蛍光ランプを用いたときのワークWの表面での放射照度とほぼ同等にすることができる。
また、アパーチャ14以外の部分から放出される紫外線を含む光の光量は著しく小さいので、ランプ収容空間S1を区画する内壁表面を希ガス蛍光ランプ10から放出される紫外線を含む光を反射するような表面としなくてもよい。
なお、希ガス蛍光ランプ10から直接下部開口板56に照射されて下部開口板56の開口56Aを通過する光は殆どないが、希ガス蛍光ランプ10からワークWに照射された紫外線を含む光の一部がワークWにより反射されて下部開口板56の開口56Aを通過することがあるので、本発明の紫外線照射装置においては、上記したような上部開口板55は必須となる。
【0069】
図13は、本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に垂直な断面図である。
この例の紫外線照射装置は、筐体51の開口端面に対する離間距離の大きさが互いに異なる、すなわちワークWの表面に対するレベル位置が互いに異なる複数のランプ配置面の各々において、複数の希ガス蛍光ランプ10が当該複数の希ガス蛍光ランプ10の管軸が互いに平行に延びるよう並列に配置された構成とされている。この例においては、例えば互いにレベル位置の異なる第1のランプ配置面L1および第2のランプ配置面L2の各々に、複数本の希ガス蛍光ランプ10が例えば等間隔で並設されており、第1のランプ配置面L1に並ぶ第1の希ガス蛍光ランプ群G1は、第2のランプ配置面L2に並ぶ第2の希ガス蛍光ランプ群G2に対して、希ガス蛍光ランプ10の並ぶ方向に相対的に変位した状態とされている。よって、第1の希ガス蛍光ランプ群G1に属する各希ガス蛍光ランプ10のアパーチャ14から放出される紫外線を含む光が、できるだけ第2の希ガス蛍光ランプ群G2に属する各希ガス蛍光ランプ10に遮光されないように適宜設定されている。
このような構成とすることにより、紫外線照射光源を構成する希ガス蛍光ランプ10の本数を増やすことができるので、ワークW上の照度を更に増大させることが可能となる。
【0070】
ところで、本発明の紫外線照射装置においては、非光照射時にインバータ基板収容空間S2をチャンバ25から空間的に独立して分割することが可能な構造となっている。一方、ランプ収容空間S1はチャンバ25と空間的に接続されている。そのため、希ガス蛍光ランプ10はチャンバ25内の雰囲気と接触することになる。希ガス蛍光ランプ10の外表面は、ガラス管11、外部電極12等により構成され、比較的外部雰囲気に対して安定である。しかしながら、例えば、チャンバ25内の雰囲気が高湿度状態である場合、希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41上の回路構成部分(インバータ回路46を構成する回路基板や昇圧トランス47といった電気部品)との間の配線部分に結露が発生することがある。よって光照射を再開する場合、希ガス蛍光ランプ10に入力する電力の大きさによっては、希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41上の回路構成部分とを結線する給電線部分(希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41上の回路構成部分との間の配線部分)や両者の電気的な接点部分において、不所望な絶縁破壊などの不具合が発生するおそれもある。
【0071】
このような不具合発生の可能性を回避するためには、上記したように、ランプ収容空間S1とワークWが設置されるチャンバ25との間に、不図示の光透過性窓部材を設けることが考えられるが、ワークWの大型化に対応して大型となる光透過性窓部材を使用する場合、窓部材を支持するための支持構造を大がかりとなる。
【0072】
このような事情に鑑み、ランプ収容空間S1とチャンバ25との間に大型の光透過性窓部材を設けることなく、希ガス蛍光ランプ10や、希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41上の回路構成部分とを結線する給電線部分や、希ガス蛍光ランプ10とインバータ基板41上の回路構成部分との電気的な接点部分が、チャンバ25内の雰囲気の影響を受けないようにするために、希ガス蛍光ランプを二重管構造にしてもよい。
【0073】
図14−Aは、本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に沿った断面図、図14−Bは、図14−AのA−A線における拡大断面図、図14−Cは、図14−AのB−B線における断面図である。以下、この紫外線照射装置について、図8および図9に示す実施例を前提にして説明するが、便宜上、図14−Cにおいては、1本の希ガス蛍光ランプのみを図示している。
この例の紫外線照射装置は、各々、棒状のガラス管11と、このガラス管11が内部に配置された外管16とにより構成された二重管構造の複数の希ガス蛍光ランプ10Aを紫外線光源として備えている。外管16は、ガラス管11から放出される紫外線に対して透光性を有し、かつ、電気的な絶縁性を有する材料からなり、その両端が、耐熱性、電気的な絶縁性を有する材料からなる蓋部材17によって封止されている。従って、ガラス管11の全体が外管16に覆われた構成とされている。
ガラス管11における一対の外部電極12は給電端子75と接続され、この給電端子75の一部は蓋部材17を貫通して突出し、この突出部分が給電線76Aに接続される。ここで、蓋部材17と外管16、蓋部材17と給電端子75は、例えば、耐熱性および電気的な絶縁性に富む接着剤等により封止される。
【0074】
一方、上記したように、この紫外線照射装置においては、一方(この例においては下方)に光照射口51Aが開口する略直方体の箱型形状の筐体51の内部空間が各々複数の開口55A,56Aを有する上部開口板55および下部開口板56によって区画されてインバータ基板収容空間S2およびランプ収容空間S1が形成されている。ランプ収容空間S1においては、上記の希ガス蛍光ランプ10Aが当該複数の希ガス蛍光ランプ10の管軸がワークWの表面に平行な同一平面内に位置された状態で配置されている。そして、上部開口板55および下部開口板56の一方が他方に対してランプ配置面に垂直な方向に移動可能に設けられており、上部開口板55と下部開口板56とを接触させることにより、上部開口板55および下部開口板56の開口55A,56Aの各々が互いに遮蔽されてインバータ基板収容空間S2がランプ収容空間S1およびチャンバ25の内部空間と空間的に独立して分割される構成とされている。
【0075】
而して、この例の紫外線照射装置においては、図14−Aおよび図14−Cに示すように、光源ユニット50を構成する筐体51の内部において、インバータ基板収容空間S2およびランプ収容空間S1の両方にまたがる領域に、インバータ基板収容空間S2およびランプ収容空間S1から空間的に独立した給電用空間S4が設けられている。
この給電用空間S4は、筐体51における希ガス蛍光ランプ10の管軸に垂直な方向に延びる一対の側壁52Bのうちの一方の一部分と、各々当該一方の側壁52Bに対して垂直に延びる互いに対向する平板状の一対の端壁部58Aと、当該端壁部58A間の領域の周囲を囲むよう設けられた断面形状がコの字型の周側壁部58Bとにより包囲されて形成されており、周側壁部58Bの一端側が下部開口板56に対してランプ収容空間S1に突出しており、他端側が下部開口板56に対してインバータ基板収容空間S2に突出している。
【0076】
そして、図14−Aに示すように、希ガス蛍光ランプ10Aはその管軸方向における一端が周側壁部58Bを気密に貫通して給電用空間S4の内部に突出する状態で設けられている。ここで、周側壁部58Bと希ガス蛍光ランプ10Aの外管16は、図示を省略した公知のシール構造(例えば、Oリングを使用))によりシールされる。また、希ガス蛍光ランプ10Aの管軸方向における他端は、筐体51における給電用空間S4の一部を形成する側壁52Bと対向する他方の側壁に固定されたランプ支持手段78によって支持されている。
【0077】
また、インバータ基板収容空間S2側に位置する一方の端壁部58Aには、当該端壁部58Aと気密にシールされた電力導入端子77が設けられる。この電力導入端子77の一端は、希ガス蛍光ランプ10Aにおける蓋部材17を貫通して突出した給電端子75と一端が接続された給電線76Aの他端と接続されている。また、電力導入端子77の他端は、給電線76Bによってインバータ基板41の回路要素と接続されている。
【0078】
以上のように構成することにより、希ガス蛍光ランプ10Aにおける一対の外部電極12と接続されその一部が蓋部材17から突出している給電端子75はインバータ基板収容空間S2およびランプ収容空間S1から空間的に独立した給電用空間S4内に露出し、この給電端子75と接続される給電線76Aは、給電用空間S4を経由し、インバータ基板収容空間S2側に位置する一方の端壁部58Aに設けられた電力導入端子77および給電線76Bを介してインバータ基板41の回路要素と接続される。
【0079】
よって、希ガス蛍光ランプ10Aとインバータ基板41上の回路構成部分(インバータ回路46を構成する回路基板や昇圧トランス47といった電気部品)との間の配線部分は、ランプ収容空間S1とチャンバ25との間に光透過性窓部材を設けずとも、チャンバ25内の雰囲気から空間的に独立して分離される。そのため、例えば、チャンバ25内の雰囲気が高湿度状態であったとしても、上記配線部分は高湿度に晒されることはなくなり、当該配線部分における結露の発生が抑制される。よって、光照射を再開時において、希ガス蛍光ランプ10Aとインバータ基板41上の回路構成部分との間の配線部分(給電線部分)や両者の電気的な接点部分において、不所望な絶縁破壊などの不具合が発生することが抑制される。
【0080】
上記の構成は、図8および図9に示す実施例に係る構成のもののみに適用されるものではなく、図10に示す実施例に係る構成のものにおいても適用することができる。このような構成のものにおいても、給電用空間S4は、光源ユニット50を構成する筐体51の内部において、インバータ基板収容空間S2およびランプ収容空間S1の両方にまたがる領域において、インバータ基板収容空間S2およびランプ収容空間S1から空間的に独立した状態で形成される。なお、希ガス蛍光ランプ、給電用空間等の構成自体は、上記したものと同様であるので説明を省略する。
【0081】
なお、図14−Aおよび図14−Cに示すように、下部開口板56の外周面部は、筐体51における希ガス蛍光ランプ10Aの管軸に沿って延びる一対の側壁52Aおよび希ガス蛍光ランプ10Aの管軸に直交して延びる一対の側壁52B、並びに、給電用空間S4を形成する周側壁部58Bと接触、固定されている。一方、上部開口板55は、ソレノイドアクチュエータ65により上下方向に駆動されるので、下部開口板56より一回り小さく構成されており、その外周面部は、筐体51における希ガス蛍光ランプ10Aの管軸に沿って延びる一対の側壁52Aおよび希ガス蛍光ランプの管軸に直交して延びる一対の側壁52B、並びに、給電用空間S4を形成する周側壁部58Bのいずれとも接触しない。
【0082】
ここで、光照射プロセス条件によっては、非光照射時、インバータ基板収容空間S2をチャンバ25から空間的に独立して分割した後、チャンバ25内の雰囲気を低温(例えば、マイナス数十度)にする場合がある。この場合、インバータ基板収容空間S2の内部は室温雰囲気であるので、上部開口板55の表面が結露する場合がある。これを回避するために、図14−Cに示すように、上部開口板55における周縁部近傍にヒータ80を埋設し、チャンバ25内の雰囲気を低温にする際、ヒータ80を動作させて結露を回避するようにしてもよい。なお、ヒータ80を埋設する位置は、必ずしも上部開口板55における周縁部近傍に限定されるものではなく、必要に応じて、周縁部近傍以外にも設けてもよい。また、上部開口板55だけではなく、下部開口板56にヒータ80を設けるようにしてもよい。
【0083】
ところで、光照射するワークWが大型であって、上記の一の光源ユニット50の光照射領域よりワークWの被光照射面が大きい場合には、例えば、複数台の上記の光源ユニット50を並べて光照射可能面積(光照射領域)を増大させることにより、大型のワークWの光照射に対応することができる。
【0084】
図15−Aは、本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の例における構成の概略を示す、希ガス蛍光ランプの管軸に沿った断面図、図15−Bは、図15−AにおけるB方向矢視図である。
この例の紫外線照射装置においては、各々の光源ユニット50における希ガス放電ランプ10の管軸が同一平面内に位置されると共に互いに平行に延びる姿勢で、ワークWの大きさに対応して縦横に並べられた状態で、ユニットホルダ85によって保持された複数台の光源ユニット50を具えている。
隣接する光源ユニット50間の間隔は、各光源ユニット50の筐体51における側壁52Aに設けられている冷却風流通用開口54から冷却風が外部へ放出可能であって、ワークW上の放射照度のむらができるだけ小さくなるように構成される。
【0085】
ここで、各光源ユニット50の筐体51における冷却風流通用開口54が設けられていない側壁(希ガス蛍光ランプの管軸に垂直に延びる一対の側壁)52B側については、図15−Bに示すように、隣接する光源ユニット50間の間隔を設けず、各光源ユニット50の当該側壁52B同士を接触させてもよい。
なお、この例の紫外線照射装置においては、給電ポート44が光源ユニット50の上壁53側に設けられているので、図示を省略した直流電源と光源ユニット50の内部に設けられるインバータ基板41とを結線する給電線の位置を考慮することなく、複数の光源ユニット50を並べることが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
10,10A 希ガス蛍光ランプ
11 ガラス管
12 外部電極
13 蛍光体層
14 アパーチャ
16 外管
17 蓋部材
20 ランプハウス
20A 拡散反射鏡
21 拡散部材
23 液晶パネル
25 チャンバ
26 反射鏡
26A 反射面
40 給電手段
41 インバータ基板
42 支持板
43 支持板保持手段
44 給電ポート
45 直流電源
46 インバータ回路
47 昇圧トランス
50 光源ユニット
51 筐体
51A 光照射口
52A,52B 側壁
53 上壁
53A 開口
54 冷却風流通用開口
55 上部開口板(第1の開口板)
55A 開口
55B シリンダ用開口
56 下部開口板(第2の開口板)
56A 開口
57 補助開口板
57A 開口
58A 端壁部
58B 周側壁部
60 軸流ファン(送風手段)
63 シャッター
65 ソレノイドアクチュエータ
66 本体
67 シリンダ
70 補助開口板駆動機構
71 シャッター駆動機構
75 給電端子
76A,76B 給電線
77 電力導入端子
78 ランプ支持手段
80 ヒータ
85 ユニットホルダ
S 放電空間
S1 ランプ収容空間
S2 インバータ基板収容空間
S4 給電用空間
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に光照射口が開口する筺体と、当該筐体の内部において当該筐体の開口端面と平行に延びるよう互いに離間して配設されて当該筐体の内部空間を分割する、各々複数の開口を有する少なくとも2枚以上の開口板と、当該筐体の内部における前記光照射口側に位置される一方の空間内において並列に配列された複数の棒状の希ガス蛍光ランプと、当該筐体内部における他方の空間内に配設された、前記各々の希ガス蛍光ランプに対応する複数の電源回路部を含む給電手段と、冷却風が前記一方の空間から他方の空間に流通されるよう当該筐体の内部に冷却風を送出する送風手段とを有する光源ユニットを具えてなり、
前記各々の開口板における開口の位置は、前記希ガス蛍光ランプの点灯時において、前記一方の空間に対面する一の開口板における開口を通過する光が、他の開口板の開口を通過して前記電源回路部に当たらない状態となるよう設定されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記筐体の内部空間が互いに離間する2枚の開口板によって区画されて、前記希ガス蛍光ランプが配設される一方の空間および前記電源回路部が配設される他方の空間が形成されており、
前記2枚の開口板のうちの一方の開口板を、他方の開口板と一定間隔で離間した状態とする第1の位置と、他方の開口板と対接された状態とする第2の位置との間で、当該一方の開口板に垂直な方向に駆動する開口板駆動手段が更に設けられており、
当該開口板駆動手段は、前記一方の開口板を前記第2の位置に移動させることにより前記他方の開口板における開口の各々を当該一方の開口板によって遮蔽させて前記筐体の内部における一方の空間および他方の空間を空間的に隔離することを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記筐体の内部空間が互いに離間する2枚の開口板および一方の開口板に対接された状態で配置された補助開口板によって区画されて、前記希ガス蛍光ランプが配設される一方の空間および前記電源回路部が配設される他方の空間が形成されており、
前記補助開口板は、前記一方の開口板における複数の開口の形成パターンと同一の形成パターンで複数の開口が形成されてなり、
当該補助開口板を、当該補助開口板が配置される平面内において、当該補助開口板における各々の開口が前記一方の開口板における各々の開口と一致した状態とされる第1の位置と、前記一方の開口板における開口の各々が当該補助開口板によって遮蔽される第2の位置との間で、移動させる補助開口板駆動手段が更に設けられており、
当該補助開口板駆動手段は、前記補助開口板を前記第2の位置に移動させることにより前記筐体の内部における一方の空間および他方の空間を空間的に隔離することを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記筐体には、前記一方の空間と当該筐体の外部空間とを空間的に接続する冷却風流通用開口が形成されており、
当該筐体の内部には、当該冷却風流通用開口を開放する開位置と、当該冷却風流通用開口を遮蔽する閉位置との間で駆動可能とされたシャッターが更に設けられており、当該シャッターは、前記一方の空間と前記他方の空間とが空間的に隔離された状態において、前記開位置に移動されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記希ガス蛍光ランプの各々は、内部に放電空間が形成されたガラス管を具え、当該ガラス管の内表面に蛍光体層が設けられると共に当該蛍光体層が形成されていないことにより前記ガラス管の管軸に沿って延びるアパーチャが形成されており、当該アパーチャが前記筐体における光照射口方向を向く姿勢で配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記筐体における一方の空間内において、当該筐体の開口端面に対する離間距離が互いに異なる当該開口端面に平行な複数のランプ配置面の各々に、複数の希ガス蛍光ランプが当該複数の希ガス蛍光ランプの管軸が互いに平行に延びるよう等間隔毎に並設されており、一のランプ配置面に並ぶ希ガス蛍光ランプの各々は、他のランプ配置面に並ぶ希ガス蛍光ランプの各々に対して、管軸が希ガス蛍光ランプの並ぶ方向に相対的に変位した状態とされていることを特徴とする請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
希ガス蛍光ランプの各々は、前記ガラス管と、当該ガラス管が内部に配置された透光性を有する直管状の外管と、当該外管の両端開口の各々を塞ぐ蓋部材とにより構成された二重管構造を有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
少なくとも1枚の開口板にヒータが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記電源回路部は、前記筐体の光照射口と対向する壁に設けられた給電ポートを介して電源に電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
複数台の前記光源ユニットと、当該光源ユニットの各々に対応する複数の電源とを具えており、
前記光源ユニットの各々は、前記筐体における開口端面が同一の平面内に位置されると共に前記希ガス蛍光ランプの管軸が互いに平行に延びる姿勢で、縦横に並んで配置されていることを特徴とする請求項9に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−A】
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【図14−B】
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【図14−C】
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【図15−A】
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【図15−B】
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【公開番号】特開2013−93107(P2013−93107A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232675(P2011−232675)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)