説明

紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットの製造方法

【課題】紫外線硬化型インキに含まれるモノマーやオリゴマーの浸透によるブランケットの膨潤を防ぎ、その浸透によるインキのタックアップを防ぎ、インキの印刷基材への転移性を確保すると共に、ブランケットの洗浄容易性と耐用性を確保する。
【解決手段】ブランケットの表面層を多塩基性有機酸とポリオールとから成るポリエステル系ポリオールとジイソシアネートによって合成されたポリウレタンゴムによって構成する。多塩基性有機酸にはコハク酸を主成分として使用し、ポリオールにはエチレングリコールを主成分として使用し、ジイソシアネートには4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを主成分として使用する。コハク酸にはアジピン酸を併用することが出来、エチレングリコールにはプロピレングリコールを併用することが出来る。ポリウレタンゴムにはイオン性界面活性剤系帯電防止剤を配合するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版面から転写されたインキを紙、プラスチック、フイルム、金属板(シート)等の印刷基材へと転写する印刷機のブランケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機のブランケットは、布帛やプラスチックシート、金属板等に成る基層の表面にエラストマーによる表面層を積層して構成される。
そのエラストマーには、印刷インキに含まれる有機溶剤に対する耐用性の点で、耐油性に優れたアクリロニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(UR)、シリコーンゴム(SiR)、ポリエビクロルヒドリンゴム(CHR)、エピクロルヒドリン・エチレンオキシド共重合ゴム(CHC)等が使用されている(例えば、特許文献1と2参照)。
【0003】
ブランケット用エラストマーには、印刷基材(特に再生紙)から発生する紙粉やインキミスト(インキ微粒子)の静電気による付着を防止するために、導電性カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチエンブラック、グラファイトカーボン)や金属粉末(例えば、銀、ニッケル、銅、鉄、ステンレス、アルミニウム、導電性金属酸化物(例えば、亜鉛華、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム)、帯電防止剤(例えば、リチウム化合物アルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩)等の導電性付与剤が配合される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−001964号公報
【特許文献2】特開2000−168259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時、印刷インキとして感光性アクリル系モノマーやオリゴマーを含む紫外線硬化型インキ(以下、UVインキと言う。)が普及しつつあるが、感光性アクリル系モノマーやオリゴマー(以下、これらを感光性モノマーと言う。)はブランケット表面層に浸透し易く、印刷後のブランケットの洗浄に浸透性の強い溶剤を必要とし、その溶剤によってブランケットの耐久性が損なわれる等の不具合が生じている。
【0006】
そこで、在来のNBRよりも耐油性に優れたエラストマー、例えば、側鎖に二重結合を含む低極性のエチレン・プロピレン三元共重合ゴム(EPDM)や超高極性NBR等の超耐油性エラストマーの使用が検討された。
【0007】
しかし、これらの超耐油性エラストマーでは、その分子量が極めて大きく100万を超えることから、ブランケット表面層の網目が粗くなり、その微細な網目に感光性モノマーが侵入してUVインキのインキタックが上昇し、印刷転移性が損なわれ、印刷後には浸透性の強い溶剤が必要になり、結果的にブランケットを傷めると言う欠点がある。
【0008】
そして、エチレン・プロピレン三元共重合ゴム(EPDM)は、UVインキ以外の一般油性インキに触れて大きく膨潤するので、油性インキを使用するブランケットには全く使用することは出来ない。
【0009】
そこで本発明は、UVインキ中の感光性モノマーが浸透し難く、その浸透によるインキタックの上昇がなく、UVインキが印刷基材に転写し易く、印刷後には洗浄し易い印刷機ブランケットを主たる目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、水を使用しないUVインキによる水無し印刷においても、印刷基材との接触による静電気の発生がなく、紙粉やインキミストによって印刷物が汚染されることのない印刷機ブランケットを得ることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、UVインキを使用する場合でも、一般油性インキを使用する場合でも使用することが出来る印刷機ブランケットを得ることにある。
【0012】
本発明は、ウレタンゴムの原料となる活性水素化合物の多塩基性有機酸に2塩基性有機酸のコハク酸、又は、コハク酸とシュウ酸との混合物を使用するときは、NBRに比して耐溶剤性に優れ、UVインキに汚染されることがなく、付着したUVインキを洗浄除去し易いウレタンゴムが得られるとの知見を得て完成された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットの製造方法は、(a) 版面から転写された紫外線硬化型インキを印刷基材へと転写するブランケットの表面層を、多塩基性有機酸とポリオールとから成るポリエステル系ポリオールとジイソシアネートによって合成されたポリウレタンゴムによって構成することとし、(b) その多塩基性有機酸を2塩基性有機酸のコハク酸、又は、コハク酸とシュウ酸との混合物を主成分として構成し、(c) ポリオールをエチレングリコールを主成分として構成し、(d) ジイソシアネートを4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを主成分として構成することを第1の特徴とする。
【0014】
本発明に係る紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットの製造方法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、2塩基性有機酸がコハク酸を主成分とするアジピン酸との混合物であり、ポリオールがエチレングリコールを主成分とするプロピレングリコールとの混合物である点にある。
【0015】
本発明に係る紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットの製造方法の第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、ポリウレタンゴムが導電性金属酸化物、金属粉末、導電性カーボンブラック、リチウム化合物アルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩の何れかの帯電防止剤を含有している点にある。
【0016】
本発明に係る紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットの製造方法の第4の特徴は、上記第3の特徴に加えて、帯電防止剤にリチウムイオン系帯電防止剤を使用する点にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明(第1の特徴)によると、ブランケットのポリウレタンゴムと感光性モノマーの極性には大差があり、UVインキ中の感光性モノマーが浸透し難く、その浸透によるインキタックの上昇がなく、ブランケットにおけるインキ本来の転移性が損なわれることがない。
又、ブランケット表面への感光性モノマーの拡散が起きないことからブランケットの表面強度が維持され、従って、ブランケット表面の平滑性も維持され、インキのブランケット表面への着肉性が損なわれることもない。
そして又、一般油性インキに触れても膨潤することがなく、UVインキ以外の一般油性インキやハイブリットインキにも使用することが出来、インキ中のモノマーやUVインキ洗浄液中の溶剤成分のブランケットへの浸透がないことからUVインキと油性インキおよびハイブリットインキの何れのインキを使用するときでも印刷後には洗浄し易く、ブランケットに浸透したモノマーや溶剤成分の残留成分によって新たに使用するインキの速乾性が損なわれることもない紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットが得られる。
更に又、UVインキを使用する印刷機では、紫外線によるブランケットの劣化を避けるために印刷機(ブランケット)の周囲を紫外線遮蔽カバーで囲むことになるが、その際、NBR系ブランケットでは遮蔽カバーの隙間からの漏光によって劣化するとしても、本発明のブランケットでは、そのような不具合は生じない。
加えて、本発明のブランケットは、紫外線から副次的に発生するオゾンに対しても、NBR系ブランケットに比して優れた耐久性を示す点でも効果的である。
【0018】
本発明(第2の特徴)によると、ポリウレタンゴムの極性が高く、耐溶剤性・耐モノマー性に優れた紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットが得られる。
【0019】
ポリウレタンゴムは、極性が高く、その電気抵抗値も1010〜1012と高めの導電性を示すが、本発明(第3の特徴)では、ポリウレタンゴムに帯電防止剤を配合したので、湿し水を使用しないUVインキによる水無し印刷においても、印刷基材との接触による静電気の発生がなく、紙粉やインキミストによって印刷物が汚染されることのない紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットが得られる。
【0020】
本発明(第4の特徴)によると、ポリウレタンゴム・エラストマーの流動性低下や硬度上昇がなく、ブランケットの注型加工時に流動性が低下してエラストマーに空気の連れ込みによる気泡やピンホールがブランケットに発生するようなことがなく、帯電防止剤がブリードすることのない紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において、「多塩基性有機酸が2塩基性有機酸のコハク酸を主成分として含む」とは、2塩基性有機酸であるコハク酸の使用量60重量部に対し40重量未満、好ましくはコハク酸の使用量75重量部に対し25重量未満となる範囲において他の2塩基性有機酸を使用することが出来ることを意味する。
しかし、2重結合を有する2塩基性有機酸、例えばマレイン酸を用いると、ポリウレタンゴムの化学的性質が不安定になり、変色等の問題が生じる。
又、ベンゼン環を有する2塩基性有機酸、例えばフタル酸を用いると、ポリウレタンゴムの硬度が高くなり過ぎる。
従って、2重結合を有する2塩基性有機酸やベンゼン環を有する2塩基性有機酸は、本発明には不向きである。
【0022】
本発明に好ましい2塩基性有機酸は、アジピン酸やセバチン酸に比して分子量の低いコハク酸やシュウ酸、グルタル酸である。
その中でも好ましい2塩基性有機酸は、低分子量のコハク酸である。
【0023】
しかし、ブランケットの硬度を調整するためには、それら低分子量の2塩基性有機酸と高分子量の2塩基性有機酸、例えばアジピン酸やセバチン酸を混用するとよい。
その場合、好ましい低分子量の2塩基性有機酸はコハク酸であり、好ましい高分子量の2塩基性有機酸はアジピン酸であり、それらの混用率は、コハク酸80重量部に対しアジピン酸20重量部未満とする。
【0024】
本発明において、「ポリオールがエチレングリコールを主成分として含む」とは、ポリウレタンゴムの硬度調整やブランケットの注型加工時の作業性、取り扱い易さ等の点からして、エチレングリコール80重量部に対し20重量部未満、好ましくはエチレングリコール90重量部に対し10重量部以下となる範囲においてプロピレングリコールその他のポリオール、例えば、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチルグリコール、2・ブテン・1・4・ジオール等のジオールを使用することが出来ることを意味する。
ブランケット(ポリウレタンゴム)の硬度調整のためには、2種類以上のジオールを併用するとよい。
しかし、トリメチロールプロパンやグリセリン等のトリオール、ヘキサオール等の水酸基の多いものを併用するとブランケット(ポリウレタンゴム)の硬度が非常に高くなる。
又、1・4・ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の極性が高くないものを多量に使用すると、耐溶剤性・耐モノマー性の点で好結果は得られない。
【0025】
ポリウレタンゴムの極性を高め、耐溶剤性・耐モノマー性に優れたブランケットを効率的に得るためには、分子量の低いエチレングリコールとプロピレングリコールを併用するとよい。
【0026】
本発明において、「ジイソシアネートが4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを主成分として含む」とは、4−4’ジフェニルメタンジイソシアネート80重量部に対し20重量部未満となる範囲において他のジイソシアネートを併用することが出来ることを意味する。
【実施例】
【0027】
[ゴム硬度試験]
ブランケットのポリウレタンゴムのゴム硬度は、JIS−K−6253に従って測定され、その測定値は「度(°)」を単位として表示される。
本発明では、紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットのゴム硬度の目標値を硬度60〜70°にしている。
【0028】
[耐溶剤性・耐モノマー性試験]
ブランケットのポリウレタンゴムの耐溶剤性・耐モノマー性は、JIS−K−6258に従って測定され、その測定値は「重量%(wt%)」を単位として表示される。
本発明では、UVインキやUVインキ用洗浄溶剤に対するブランケットの適性を調べる方法を簡便に行うために、芳香族系溶剤としてトルエンを使用し、トルエンに対する24時間後の重量変化率(トルエン重量変化率(重量%・wt%)として耐溶剤性・耐モノマー性を表示することにしている。
トルエンに対する24時間後の重量変化率(トルエン重量変化率)が15wt%以上であると、UVインキに対して影響があり、反面、ブランケット自体の膨潤が大きく、実用には適さないことが経験上判明している。
そこで、本発明では、ブランケットのポリウレタンゴムのトルエン重量変化率の目標値を15wt%、好ましくは10wt%以下にする。
【0029】
[引張強度試験]
ブランケットのポリウレタンゴムの引張強度は、JIS−K−6251に従って測定され、その測定値は「MPa」を単位として表示される。
【0030】
[引裂強度試験]
ブランケットのポリウレタンゴムの引裂強度は、JIS−K−6252に従って測定され、その測定値は「N/mm」を単位として表示される。
【0031】
[電気抵抗値測定試験]
ブランケットのポリウレタンゴムの電気抵抗値は、JIS−K−6911に従って測定され、その測定値(電気抵抗値)は「Ω」を単位として表示される。
本発明では、帯電防止剤を添加した水無しUVインキ印刷用ブランケットの電気抵抗値の目標値を109 Ω以下にしている。
【0032】
以下、(1) コハク酸を多塩基性有機酸の主成分とし、ジイソシアネートとしてイソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)との比が1対1(NCO/OH=1)の4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを使用し、ポリオールの成分を変えた実施例を[表1]に示し、
(2) エチレングリコールをポリオールの主成分とし、ジイソシアネートとしてイソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)との比が1対1(NCO/OH=1)の4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを使用し、多塩基性有機酸の主成分を変えた実施例と比較例を[表2]に示し、
(3) コハク酸を多塩基性有機酸の主成分とし、エチレングリコールをポリオールの主成分とし、ジイソシアネートとしてイソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)との比が1対1(NCO/OH=1)の4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを使用し、帯電防止剤の種類を変えた実施例と、アジピン酸を多塩基性有機酸の主成分とし、エチレングリコールをポリオールの主成分とし、ジイソシアネートとしてイソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)との比が1対1(NCO/OH=1)の4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを使用し、帯電防止剤の種類を変えた比較例を[表3]に示し、それらの実施例と比較例のプランケット(ポリウレタンゴム)の物性の比較の裡に本発明を説明する。
尚、[表1]において、ポリエチレングリコール#200およびポリエチレングリコール#400と表示している”#200”および”#400”は、それぞれポリエチレングリコールの分子量を示す。
又、[表1]〜[表3]において、ポリウレタンゴム成分の数値の単位は「重量部」である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
表1のデータが示す通り、ポリオールとしてエチレングリコール、および、エチレングリコールと少量のプロピレングリコールを併用した場合(実施例1・2)は、ゴム硬度が60〜70°であり、トルエン重量変化率が10wt%以下であり、適度のゴム硬度を有し、耐溶剤性・耐モノマー性に優れた紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットが得られる。
そのプロピレングリコールに代えて水酸基の多いトリメチロールプロパン、グリセリンヘキサオールをエチレングリコールと併用する場合(実施例3・4・5)は、耐溶剤性・耐モノマー性には優れているものの、ゴム硬度が80°以上と硬く、適度のゴム硬度(60〜70°)を有する紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットは得難くなる。
一方、プロピレングリコールに代えて炭素数の多い高分子量のブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールをエチレングリコールと併用する場合(実施例6・7・8・9・10・11)は、ゴム硬度は70°以下であるが、トルエン重量変化率が10wt%以上になり、プロピレングリコールを併用した場合(実施例1・2)に比して耐溶剤性・耐モノマー性が低下する。
特に、分子量200のポリエチレングリコールを併用した実施例10と分子量400のポリエチレングリコールを併用した実施例11を対比して明らかなように、高分子量(分子量400)のポリエチレングリコールを併用する場合(実施例11)は、それよりも低分子量(分子量200)のポリエチレングリコールを併用する場合(実施例10)に比して、耐溶剤性・耐モノマー性が低下するだけではなく、ゴム硬度が柔らかすぎ、トルエン重量変化率が目標値の15wt%以下となる耐溶剤性・耐モノマー性と適度のゴム硬度(60〜70°)を有する紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットは得難くなる。
【0037】
表2のデータが示す通り、ポリオールとしてエチレングリコールを使用し、2塩基性有機酸としてコハク酸75重量部に対しアジピン酸25重量部未満となるコハク酸とアジピン酸の混合物を使用した場合(実施例12)は、ゴム硬度が目標値の60〜70°であり、トルエン重量変化率が目標値の15wt%以下であり、適度のゴム硬度を有し、耐溶剤性・耐モノマー性に優れた紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットが得られる。
そのコハク酸に代えて高分子量のアジピン酸、セバチン酸、或いは、2重結合を有するマレイン酸を2塩基性有機酸として使用する場合(比較例1・2・3)は、ゴム硬度の点では満足し得てもトルエン重量変化率が30wt%以上と異常に増え、又、アジピン酸、セバチン酸、および、マレイン酸をコハク酸と併用するとしても、その併用する使用量がコハク酸75重量部に対し25重量以上になる場合(比較例4・5・6・7)もトルエン重量変化率が20wt%以上と異常に増え、耐溶剤性・耐モノマー性に優れた紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットは得られない。
【0038】
表3のデータが示す通り、ポリオールとしてエチレングリコールを使用し、2塩基性有機酸としてコハク酸を使用し、帯電防止剤としてリチウム化合物アルカリ金属塩、非イオン系界面活性剤、および、陰イオン系界面活性剤を使用する場合(実施例13・14・15)は、その使用量が僅かであっても電気抵抗値が1010Ω以下であり、ゴム硬度が60〜70°であり、トルエン重量変化率が15wt%以下であり、適度のゴム硬度を有し、耐溶剤性・耐モノマー性と制電性に優れた紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットが得られる。
特に、帯電防止剤としてリチウム化合物アルカリ金属塩を使用する場合(実施例13)は、帯電防止剤がポリウレタンゴムと良好な相溶性を示してブリードすることのない紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットが得られる。
それらの帯電防止剤に代えて導電性酸化亜鉛や導電性酸化チタン等の導電性金属酸化物を使用する場合(実施例16・17)は、その使用量を多くしなければ制電効果は得られず、その多量使用によってポリウレタンゴムの流動性が低下し、硬度が上昇し、ブランケットの注型加工時に空気の連れ込みによる気泡やピンホールがブランケットに発生し、帯電防止剤がブリードすることのない紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットは得難くなる。
このことはコハク酸に代えてアジピン酸を使用する場合(比較例9〜12)も同様であるが、その場合には耐溶剤性・耐モノマー性に優れた紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットは得られず、コハク酸を使用した実施例13〜17に比して引張強度や引裂強度が低下し、又、電気抵抗値が増え制電性の低下の傾向が認められる。
【0039】
上記実施例、特に実施例1と2が示す通り、本発明によると、UVインキ中の感光性モノマーが浸透し難く、その浸透によるインキタックの上昇がなく、インキの着肉性と転移性がよく、印刷後には洗浄し易く、適度なゴム硬度を有し、UVインキ以外の一般油性インキやハイブリットインキにも使用することが出来、UVインキによる水無し印刷においても静電気によるトラブルの発生のない耐溶剤性・耐モノマー性に優れた紫外線硬化型インキ用印刷機ブランケットが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 版面から転写された紫外線硬化型インキを印刷基材へと転写するブランケットの表面層を、多塩基性有機酸とポリオールとから成るポリエステル系ポリオールとジイソシアネートによって合成されたポリウレタンゴムによって構成構成すること、
(b) コハク酸を主成分として多塩基性有機酸を構成すること、
(c) エチレングリコールを主成分としてポリオールを構成すること、
(d) 4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートを主成分としてジイソシアネートを構成することを特徴とする紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項2】
2塩基性有機酸がコハク酸を主成分とするアジピン酸との混合物であり、ポリオールがエチレングリコールを主成分とするプロピレングリコールとの混合物である前掲請求項1に記載の紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項3】
ポリウレタンゴムが導電性金属酸化物、金属粉末、導電性カーボンブラック、リチウム化合物アルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩の何れかの帯電防止剤を含有している前掲請求項1〜2の何れかに記載の紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項4】
帯電防止剤がリチウムイオン系帯電防止剤である前掲請求項3記載の紫外線硬化型インキ印刷用ブランケットの製造方法。

【公開番号】特開2010−94927(P2010−94927A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269242(P2008−269242)
【出願日】平成20年10月18日(2008.10.18)
【出願人】(000109495)テクノロール株式会社 (9)
【Fターム(参考)】